Film Music

シリーズ《映画音楽の巨匠たち》第7回/ミクロス・ローザ(ロージャ・ミクローシュ)篇

まず最初に、シリーズ《映画音楽の巨匠たち》過去記事をご紹介しよう。

今回ご紹介したいのはハンガリー出身の作曲家ミクロス・ローザ。ハンガリー読みでは日本語同様に姓・名の順で表記するのでロージャ・ミクローシュとなる。アカデミー作曲賞に17回ノミネートされ、「白い恐怖」「二重生活」「ベン・ハー」で3度受賞した。

ローザといえば泣く子も黙る《史劇の達人》である。「ベン・ハー」「エル・シド」「クォ・ヴァディス」「ジュリアス・シーザー」「ヤング・ベス」「黒騎士」「円卓の騎士」「キング・オブ・キングス」「ソドムとゴモラ」など枚挙に暇がない。ローマ帝国時代の音楽の雰囲気を巧みに醸し出しながらも、しっかりとハンガリー民謡の節回しを仕込んでいるところがさすが匠の技である。

僕の考えるローザの映画音楽ベストを挙げる。

  1. ボヴァリー夫人(1949)
  2. 白い恐怖(1945)
  3. ベン・ハー(1959)
  4. 針の眼(1981)
  5. 炎の人ゴッホ(1956)
  6. キング・オブ・キングス(1961)
  7. エル・シド(1961)
  8. 失われた週末(1945)
  9. シャーロック・ホームズの冒険(1970)
  10. ヤング・ベス(1953)
  11. 悲愁(1979)
  12. ジャングル・ブック(1942)
  13. リディアと四人の恋人(1941)
  14. シンドバッド黄金の航海(1973)
  15. プロビデンス(1979)

「ボヴァリー夫人」は、ミュージカル映画「巴里のアメリカ人」「バンド・ワゴン」「恋の手ほどき」で知られるヴィンセント・ミネリ監督作品だが、僕はミネリの最高傑作だと信じて疑わない。本作についてはフランスの哲学者ジル・ドゥルーズによる卓越した分析があるので、そちらを是非ともお読み頂きたい。下記事に引用している。

ローザの音楽も実に素晴らしい。特に圧巻なのが舞踏会シーンで流れるワルツ。狂気が疾走する。ミネリはこの音楽をThe "Neurotic Waltz"(神経症的円舞曲)と呼んだ。途轍もない渦の中に呑み込まれる印象。ヒロイン(ジェニファー・ジョーンズ)が夢に貪り喰われる瞬間が描かれる。お勧めはエルマー・バーンスタイン/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏(ステレオ録音。オリジナル音源はモノラル)。iTune Storesで「Madame Bovary」「バーンスタイン」というキーワードを入力し検索すれば購入出来る。また映画のDVDはAmazonで入手可能。

ボヴァリー夫人」が公開された1940年代、ハリウッドでは映画にフロイトの精神分析を絡めることが流行っていた。アルフレッド・ヒッチコック監督の「白い恐怖」もその一つである。幻想シーンのイメージはシュルレアリスムの画家サルバドール・ダリが起用された。この映画のテーマもズバリNeurosis(神経症)である。「白い恐怖」は電子楽器テルミンが使用された。映画でテルミンを初めて使用したのはローザである。これに関しては面白いエピソードがあるので下記事で紹介した。

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一方で「白い恐怖」の音楽はとてもロマンティックだ。映画を元に再構成した、華麗なピアノ協奏曲版もあるのでお聴きあれ。

ローザの遺作は「スティーブ・マーティンの四つ数えろ」(1982)だが、「針の眼」はその一つ前、晩年の大傑作である。スパイ・スリラーとして映画の出来もよく、これを観たジョージ・ルーカスは監督のリチャード・マーカンドを「スター・ウォーズ ジェダイの帰還」に抜擢した。高校生の時、僕は「針の眼」のサウンドトラックLPレコードを購入し、繰り返し聴いた(その時点で映画は未見だった)。成人してCDで買い直そうと考え、輸入CDショップ(タワーレコードかHMV)で見つけたのだが、何と値段が5,000円以上もした!多分、限定版(limited edition)だったのだろう。迷いに迷った挙げ句、断念した。結局その後一切お目にかかることは出来なかった。四半世紀探し求め続けた……そして今ではiTune Storesでダウンロード出来るようになった。良い時代になったものである。

イエス・キリストの生涯を描く「キング・オブ・キングス」はもう冒頭の「ホザンナ」の合唱からその荘厳さに圧倒される。

「エル・シド」は中世スペイン地方のムード満点。

「シャーロック・ホームズの冒険」はヤッシャ・ハイフェッツが初演したローザのヴァイオリン協奏曲 第2番が流用されている。ホームズは趣味でヴァイオリンを弾くので。ハイフェッツの演奏はCDで聴くことが出来る。

「ヤング・ベス(悲恋の王女エリザベス)」は若き日のエリザベス一世を描く。後日《Fantasy on Themes from "Young Bess "》(「ヤング・ベス」の主題による幻想曲)というコンサート・ピースに再構成された。パイプ・オルガンが前面に押し出され、重厚な金管アンサンブルに対峙する。また映画半ばでグレゴリオ聖歌「怒りの日」が立ち現れる。

ビリー・ワイルダー監督「悲愁(Fedora)」は、もうひとつの「サンセット大通り」。どちらもウィリアム・ホールデンが出演している。

「ジャングル・ブック」の魅力は野性味。

「リディアと四人の恋人」は「舞踏会の手帖」「パリの空の下セーヌは流れる」などで知られるフランスの巨匠ジュリアン・デュヴィヴィエ監督が第2次世界大戦勃発により、アメリカに疎開している際に撮った作品。同時期に彼は「運命の饗宴」も製作した。ピアノ協奏曲仕立てなのが素敵。

「シンドバッド黄金の航海」は「シンドバッド七回目の航海」(1958)の続編で、前者の音楽を担当したのはヒッチコック映画で名高いバーナード・ハーマン。両者を聴き比べてみるのも一興だろう。

というわけで次回《映画音楽の巨匠たち》はバーナード・ハーマンか、エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト、あるいは久石譲を取り上げたいと考えている。誰がいい?リクエストお待ちしています。

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デュメイが弾くコルンゴルト!!「終の棲家、アメリカ」関西フィル定期(余談:テルミン秘話)

4月29日(日)ザ・シンフォニーホールへ。関西フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会を聴く。

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指揮はインドネシアに生まれ、ハノーファー高等音楽院で大植英次に師事したアドリアン・プラバーヴァ。アムステルダム・ロイヤル・コンセルトヘボウ管ではベルナルト・ハイティンクの副指揮者を務めた。ヴァイオリン独奏はオーギュスタン・デュメイ(関西フィル音楽監督)で、プラバーヴァの招聘はデュメイの指名だという

  • ミクロス・ローザ:映画「深夜の告白」組曲
  • コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲
  • バルトーク:管弦楽のための協奏曲(オケコン)

ミクロス・ローザはハンガリー出身で(ハンガリー式読みはロージャ・ミクローシュ)、映画「白い恐怖」「二重生活」「ベン・ハー」で3度アカデミー作曲賞を受賞している。

大指揮者ブルーノ・ワルター(ベルリンに生まれたユダヤ人)はロージャの「主題と変奏、フィナーレ」をしばしば演奏会で取り上げており、レナード・バーンスタインがワルターの代役でニューヨーク・フィルに華々しいデビューを飾った折も、この曲を振った。

「深夜の告白」(1944)はビリー・ワイルダー監督の映画で、ワイルダーの「シャーロック・ホームズの冒険」(1970)ではハイフェッツが初演したロージャのヴァイオリン協奏曲 第2番が流用されている(ホームズの趣味はヴァイオリン演奏なので)。二人の最後の共同作業は78年の「悲愁」Fedora。「サンセット大通り」の焼き直しであり、ウィリアム・ホールデンも出演している。僕はロージャ晩年の「針の目」(1981)の音楽が大好きで、15歳の時にサントラのLPレコードを買った。後にCDで買い直そうと血眼になって探したのだが結局手に入らず、漸く昨年、iTunes Storeで発見し、早速ダウンロードして聴いた。感無量だった。

「深夜の告白」の”前奏曲”は重々しく感じるが、続く”面会”になると甘美な音楽となり、チェロのソロがこよなく美しい。「白い恐怖」を彷彿とさせる。余談だがここで面白いエピソードをご紹介しよう。

映画音楽に電子楽器テルミンを使用したのはロージャが史上初だった。

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で、テルミンが登場するのが北米で1945年11月16日に公開されたビリー・ワイルダー監督「失われた週末」(アル中が主人公)と同年12月28日に公開されたアルフレッド・ヒッチコック監督「白い恐怖」の2作品である。「白い恐怖」のプロデューサーは「風と共に去りぬ」や「レベッカ」で知られるデヴィッド・O・セルズニック。「失われた週末」公開直後にロージャのもとにセルズニックの秘書から電話がかかってきたそうだ。曰く「セルズニック氏は自分の作品より先にテルミンが使用された別の映画が公開されたと聞き、大変怒っておられます」どうやら作品の完成自体は「白い恐怖」の方が先だったようである。

驚かされたのはプラバーヴァが「深夜の告白」とオケコンを暗譜で振ったこと。演奏頻度が高いバルトークは理解できるが、ロージャまでとは恐れ入った。新作でも暗譜で振る大植イズムが弟子にも浸透しているのか!?

21世紀に入り、漸くコルンゴルトの時代が到来した。

東京に遅れた関西だが、コルンゴルトのコンチェルトは大阪交響楽団、大フィルに続いて関西フィルでも遂に取り上げられた。しかも名手デュメイで!!10月には日本センチュリー交響楽団の定期で演奏される。

デュメイはたっぷりと豊かに歌う。繊細だが決して甘過ぎない。第2楽章は硬質な抒情があった。pp(最弱音)、ハーモニクス(倍音)の美しさが際立つ。最後は澄み切った青空に、音がスーッと消えていった。ロンド形式の第3楽章はキレッキレ。カミソリのような鋭さがあった。オケはリズミカルで弾け、間奏でデュメイが金管に向い満足そうに頷く姿も見られた。特にヴァイオリンとフルート・ソロとの掛け合いは最高!圧巻の演奏だった。嘗てデュメイはEMIや独グラモフォンから沢山のアルバムをリリースしていたが、最近はとんと音沙汰がない。是非コルンゴルトはレコーディングして貰いたいものだ。

オケコンも切れ味鋭く、緊張とその緩和のメリハリ、コントラストが鮮烈だった。第3楽章「エレジー」は夜の静寂(しじま)を切り裂く悲痛な鳥の叫び。正直、師匠である大植さんのオケコンより良かった。さすがデュメイが見込んだ男だけのことはある。プラバーヴァ、恐るべき才能だ。

この演奏会の直後、福島駅からJR環状線に飛び乗って京橋駅まで大阪桐蔭高等学校吹奏楽部を聴きに行ったのだが、それはまた、別の話。

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尾高忠明/大フィルの奏でる武満徹とジョン・ウィリアムズ

2月9日(金)ザ・シンフォニーホールへ。尾高忠明/大阪フィルハーモニー交響楽団で、

【第1部】武満徹の世界

  • 3つの映画音楽(「ホゼー・トレス」から”訓練と休息の音楽”〜「黒い雨」から”葬送の音楽”〜「他人の顔」から”ワルツ”)
  • 夢千代日記
  • 「波の盆」組曲

【第2部】ジョン・ウィリアムズの世界

  • 「未知との遭遇」組曲
  • 「ハリー・ポッターと賢者の石」ヘドウィグのテーマ
  • 「シンドラーのリスト」メイン・テーマ
  • 「E.T.」フライング・シーン
  • 「ジョーズ」メイン・テーマ
  • 「スター・ウォーズ」メイン・テーマ

補助席も出て満席。会場内は熱気に満ち溢れていた。

何よりありがたかったのは武満徹の音楽を沢山聴けたこと。東京と比較すると関西で武満が聴ける機会は稀だ。大フィルも関西の作曲家、例えば大栗裕とか貴志康一の作品ならたまに「義務感」で仕方なしに演奏するのだが、関東の作曲家になるとからっきし駄目。黛敏郎とか芥川也寸志など皆無に等しい。京都市出身の松村禎三ですら1989年(平成元年)3月の定期で1回取り上げられたきりという惨状である。

だから武満と親交が深かった尾高が音楽監督に就任するのは大歓迎である。特に聴きたいのが究極の名曲「系図(Family Tree)  ー若い人たちのための音楽詩ー」。頼みまっせ!!!

ただ尾高が今年2月札幌交響楽団の定期で「ファミリー・トゥリー」を取り上げたときの語りは中井貴惠(60歳)だったのだが、どうか老人は勘弁して下さい。若い人たちのための音楽詩ーなので。日本の初演は遠野凪子(なぎこ)で、当時15歳。今なら上白石萌音/萌歌 姉妹あたりを推薦しておく(萌歌は山田和樹/日本フィルで「系図」の経験あり)。

ホゼー・トレス」は劇的でダイナミック。「乱」はオーボエ・ソロが諸行無常を嘆き、無意識・混沌が描かれる。

武満が「乱」の音楽を担当した時、黒澤明はロンドン交響楽団かハリウッドのスタジオ・オケを起用するよう要望した。それに対し武満は岩城宏之/札幌交響楽団がいいと主張、喧嘩になった。結局武満が黒澤を札幌のホールまで連れていき音を聴かせたところ、漸く納得したという。そんなエピソードを尾高は披露した。

ノスタルジックな「波の盆」は塗り薬がひたひたと傷口から体内に浸透し、全身をゆったり癒やすような雰囲気。

ジョン・ウィリアムズの世界では会場に来ている子供たちをステージに上がらせ、奏者の間近で聴かせた。これが前衛的な「未知との遭遇」というのがイカしてる!尾高は確信犯だね。

ハリー・ポッターはチェレスタの後の繊細な最弱音がキレッキレだった。

E.T.は流麗。

大フィルの「スター・ウォーズ」は大植英次・音楽監督時代に何度か聴いているのだが、今回の演奏が最もレベルが高かった。これはホルン首席・高橋将純氏の功績が大だろう。大植時代に高橋さんはいなかったからね。

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クラシック音楽業界の虚飾を剥ぐ〜大フィル初演!コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲

1月18日(木)フェスティバルホールへ。

角田鋼亮/大阪フィルハーモニー交響楽団による定期演奏会で、

  • コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲
  • マーラー:交響曲第1番「巨人」

を聴く。ヴァイオリン独奏は竹澤恭子(ソリスト・アンコールはレイフ・ヴォーン・ウィリアムズ:揚げひばり)。

僕がエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトが作曲した映画音楽「シー・ホーク」を初めて聴いたのは高校生の時。スタンリー・ブラック指揮、ロンドン・フェスティバル管弦楽団によるLPレコードだった。そして「なんて壮大な楽曲だろう、この人は天才だ!」と想った。

それから時を経て彼のヴァイオリン協奏曲を初めてCDで聴いたのが今から約30年前。その濃厚なロマンティシズムにいっぺんに魅了された。パールマン、プレヴィン/ピッツバーグ響の演奏で、EMIの輸入盤。当時、国内盤は一切なかった。0である。初演者ヤッシャ・ハイフェッツの名盤ですら手に入らなかった。コルンゴルトは完全に忘れ去られた(日本人は端から知らない)存在だったのだ。

今では東京で五嶋みどり、神尾真由子、諏訪内晶子らがこのコンチェルトを演奏するなど、すっかり市民権を得た。しかし大阪は東京より遥かに遅れていて、大阪交響楽団が定期演奏会で取り上げたのが漸く2016年末。

大フィルに至ってはそもそもコルンゴルトの楽曲を演奏すること自体、今回が初めてである。なお関西フィルは今年4月29日の定期演奏会で(独奏:オーギュスタン・デュメイ!)、日本センチュリー交響楽団は10月25日の定演で(独奏:荒井英治)で同曲を取り上げる。遂にコルンゴルトの時代が来たのだ。

このコンチェルトがアメリカで初演されたのが1947年。70年も経過している(日本初演は1989年)。どうしてこれ程までに適正な評価が遅れてしまったのか?その理由は大きく2つある。

  1. 初演された当時はアルノルト・シェーンベルクの十二音技法を経て、無調音楽が主流の時代になっており、「調性音楽は過去の遺物、時代錯誤だ!」と楽壇から無視された。
  2. 全楽章の主題(テーマ)全てがコルンゴルトが過去に手掛けた映画音楽から採られており、聴衆からも「映画に身を売った作曲家」と蔑まれた。

映画音楽を馬鹿にする風潮は今のクラシック音楽業界にも根強くあり、例えばオーケストラの定期演奏会で映画音楽が取り上げることは極めて稀である。要するにお高くとまっているのだ。プロコフィエフ「アレクサンドル・ネフスキー」「キージェ中尉」は例外中の例外。彼の場合、映画はあくまで副業であり、主軸がコンサート・ピースだからだろう。

現在はウィーン・フィル、ベルリン・フィル、NHK交響楽団も「スター・ウォーズ」や「E.T.」「ハリー・ポッター」などを演奏するようになったが、あくまでポップス・コンサートや野外コンサートに限られている。大フィルも今度、武満徹とジョン・ウィリアムズの特集を組むが、やはり枠外(「Enjoy !オーケストラ」)だ。定期演奏会では歌劇の序曲やチャイコフスキーのバレエ音楽が演奏されるのに、映画音楽はどうして無視されるのか?そこには偏見以外の理由があろう筈がない。

つまりアメリカ合衆国においてアフリカ系アメリカ人による公民権運動が始まる前(20世紀前半)の状態、人種隔離政策ならぬ「音楽隔離政策」が未だにクラシック音楽の世界では当たり前のように蔓延(はびこ)っているのである。マーティン・ルーサー・キング牧師の有名な演説"I Have a Dream"(1963)じゃないけれど、僕も次のように叫びたい。

わたしには夢がある!何時の日にか映画音楽がジャンルの色で差別されることなく、ベートーヴェンやチャイコフスキー、マーラーらの作品と肩を並べ、オーケストラの定期演奏会で取り上げられる日が来ることを。

闘いの日々は続く。TO BE CONTINUED...

さて、本日の演奏についてだがまず第1,2楽章の異様に遅いテンポに驚いた。僕は今までにこのコンチェルトのCDをハイフェッツ含め10種類以上聴いているが(ヒラリー・ハーンのDVDも)、竹澤は史上最遅である。豊穣な響きでたっぷりと歌うが、些か間延びした印象を受けたことも否めない。第3楽章は標準的な速さになり、引き締まった。力強く張りがあり、雄弁だった。そしてオーケストラを含め音色は美しく、総論として満足した。

マーラーについては歌い方、テンポ、ダイナミズム、どれをとっても良く言えば「中庸」、悪く言えば「中途半端」。楷書的な解釈で、はっきり言って「おもろない」。シンフォニーの冒頭から、盛り上がりに欠けたフィナーレまで頭の中では「この指揮者、一体何を表現したいの??」という疑問符がグルグル回り続けていた。彼の描こうとするヴィジョンが全く見えて来ない。

これは僕の持論だが、クラシック音楽はあくまで欧米の文化なんだから、若い指揮者は日本国内のポストだけで満足していたのでは駄目だ(その良い例が金聖響)。若い時こそ海外に武者修行に飛び出さなくちゃ!小澤征爾だって、大野和士や尾高忠明だって、一流の人たちは皆そうしてきた。角田鋼亮よ、旅に出て揉まれて来い!!

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シリーズ《映画音楽の巨匠たち》第6回/ミシェル・ルグラン篇(+大阪桐蔭高校吹部「キャラバンの到着」)

過去のシリーズは以下。

まずは昨年全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞し、全国の頂点に立った大阪桐蔭高等学校吹奏楽部が精緻華麗にマーチング演奏する「キャラバンの到着」をお聴きください→こちら(本当はこのフラワーコンサートに行く筈だったのだが、連れていく予定だった息子が当日朝に発熱し、断念した)。ミシェル・ルグランが作曲し、ジャック・ドゥミが監督した港町三部作のひとつ「ロシュフォールの恋人たち」冒頭のナンバーで、三菱ランサー・エボリューションのCMでもお馴染みだろう。

僕は映画「ラ・ラ・ランド」を観る前にまずiTuneでサントラをダウンロードした。そして最初の"Another Day of Sun"のイントロを聴いた瞬間に「アッ、キャラバンの到着だ!」と思わず叫んだ(映画の動画はこちら)。実際に若者たちが遠方から町にやって来て、車を降りるやいなや踊りだすというシュチュエーションも両者で完全に一致している。さて、ジャズが大好きな「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督(音楽学校でプロを目指しジャズ・ドラムを学ぶが、才能の欠如を感じ諦めたという)と、この作品でアカデミー歌曲賞及び作曲賞を受賞したジャスティン・ハーウィッツがこよなく敬愛するフランスの作曲家ミシェル・ルグラン(1932ー 、パリ生まれ)とは一体何者なのか?

ルグランの出発点は1958年(26歳)に新婚旅行でニューヨークに渡航した際に録音されたアルバム「ルグラン・ジャズ」である。

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参加しているミュージシャンが凄い。ジョン・コルトレーン(Sax)、ビル・エヴァンス(Pf)、そしてマイルス・デイヴィス(Tp)!!ジャズ・ジャイアンツが一堂に会するという壮観さ。ルグランは卓越したアレンジャーとしての才能を開花させた。これ必聴。

そして彼は丁度その頃、台頭してきたフランス・ヌーベルバーグ(新しい波)の映画作家たちと深く関わるようになる。

ではルグランが作曲した映画音楽ベスト10を選んでみよう。

  1. ロシュフォールの恋人たち (1967)
  2. 恋 The Go-Between (1971)
  3. 愛のイエントル Yentl (1983)
  4. シェルブールの雨傘 (1963)
  5. 華麗なる賭け (1968)
  6. 天使の入江 (1963)
  7. おもいでの夏 (1971)
  8. エヴァの匂い (1962)
  9. 愛と哀しみのボレロ (1981)
  10. ベルサイユのばら (1979)

多分、誰もが知っいるのは「シェルブールの雨傘」だろうが、真のルグラン・ファンなら10人中10人が「ロシュフォールの恋人たち」を真っ先に推すだろう。唯一無二。彼のエッセンスがギュウギュウに詰まっている。

ピアノの音がキラキラ煌めき、そして切ない協奏曲仕立ての「 (The Go-Between)」の音楽はこちら。映画のクライマックスではフーガも登場し、クラシカルなルグラン音楽の代表作である。

アカデミー賞で編曲・歌曲賞を受賞した「愛のイエントル」の白眉"Papa, Can You Hear Me?"の試聴はこちら。星空の下、死んだ父に対して謝り、でもこの生き方しかないの、分かってと訴える歌。バーブラ・ストライサンドが製作・監督・脚本・主演した、けったいな【ひとりミュージカル】映画である。最初から最後までバーブラがひとりで歌いまくる。ブロードウェイ・ミュージカルに主演したこともあるマンディ・パティンキンが相手役なのに、彼には一切歌わせない。最初観た時は開いた口が塞がらなかったが、次第にバーブラの人となりが判ってきて、好きになった。20世紀初頭ポーランドのユダヤ人コミュニティ。女は学問をすることが許されず、それに抗ったイエントルは男装して神学校(イェシーバー)に入学する。そして自分のついた嘘を貫き通すために女性と結婚までする。"It is written."がこの物語のキーワードとなる。女は書物を読まなくていい。男に従属するのが女の幸せ。そう「旧約聖書(またはユダヤ教の律法)に書いてある」。イエントルはこの「常識」に対して徹底的に反抗する。「予め定められた運命(It is written.)」なんてない。自らの手で書くのだ。彼女の生き様は後にディズニーの「アナと雪の女王」の"Let It Go"に流れ込み、国連の親善大使として活躍するエマ・ワトソン(「ハリー・ポッター」シリーズ、「美女と野獣」)へと継承されてゆく。映画のフィナーレで歌われる感動的な"A Piece of Sky"はこちら。イエントルは移民船に乗り込み、新大陸を目指す。コンサートでこの名曲をFilm上の自分自身と気持ちよくデュエットする愛すべきバーブラの姿はこちら(1分30秒あたりから)。どれだけ自分のことが好きやねん!!ここには写っていないけれど、実はコンサート会場にスティーヴン・スピルバーグも来ています(「イエントル」に出演しアカデミー賞にノミネートされたエイミー・アーヴィングは元スピルバーグ夫人で89年に離婚)。

華麗なる賭け」は「風のささやき」がアカデミー歌曲賞を受賞。スティーブ・マックィーンとフェイ・ダナウェイが格好いい。この歌が流れ、マックィーンが黄色いグライダーを操縦するシーンには痺れる→こちら!別のシーンだけれど、スプリットスクリーンもお洒落。

ジャック・ドゥミとの「天使の入江」は何かに急き立てられるかのような疾走感・焦燥感がある。試聴は→こちら。ギャンブルに明け暮れる男女の茫漠とした満たされない想い、空虚さが胸を打つ。

ルグランがアカデミー作曲賞を受賞した「おもいでの夏」はこちら

愛と哀しみのボレロ」は長年フランシス・レイとコンビを組んできたクロード・ルルーシュ監督(「男と女」)の大作で、なんと音楽はレイ×ルグランという豪華版。そしてルグランの曲では”世紀末の香り”にとどめを刺す!!→こちら。これはオーケストラバージョンだけれど、本編では歌バージョンあり。僕は本作を祖母と一緒に映画館(SY松竹文化@岡山市、2005年に閉館)で観た。中学3年生の時だった。そして初めて20世紀を代表する振付家モーリス・ベジャールと稀代のダンサー、ジョルジュ・ドンの名を知った。その御蔭で1985年3月4日に岡山市民会館でジョルジュ・ドン&東京バレエ団で「ボレロ」を観たのも鮮烈な体験だった。忘れもしない、大学入試の合格発表があった夜だった。その後ドンは1992年にAIDSで亡くなった。享年45歳。またルグランの朋友ジャック・ドゥミもAIDSで90年に命を落とした。そういう時代だった。

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池田理代子(漫画)原作「ベルサイユのばら」(実写版)はジャック・ドゥミが監督しているが、作品自体は惨憺たる出来であった。もう泣きたくなった。ドゥミは「金のために撮った」と赤裸々に告白している。身も蓋もない。プロデューサーは山本又一朗、総製作費10億円を投じ、ベルサイユ宮殿でロケされた。資生堂がタイアップし、こんなCMもTVで放送された。原題が何故か"Lady Oscar"で、ダイアログも英語。意味不明。しかしルグランの音楽は掛け値なしの傑作だと僕は今でも確信している。是非聴いてみて→こちら!演奏はロンドン交響楽団。この佳曲を人知れず埋もれさせてしまうなんて勿体なさ過ぎる。Jazz Version(こちら)とか、対位法で作曲された雄大なフィナーレもどうぞ→こちら

番外編として手塚治虫原作、市川崑監督「火の鳥」実写版(1978)の音楽も素晴らしい。こちら!演奏はやはりロンドン交響楽団。ルグランはメイン・テーマのみ作曲している。

また彼はリナ・ホーン、キリ・テ・カナワ、ジェシー・ノーマンら一流歌手たちと組んでソング・アルバムをレコーディングしている。中でも一押しなのがナタリー・デセイとのアルバム。

Nat

デセイは「魔笛」「椿姫」などに出演する本格的オペラ歌手だが、ルグランの曲ではちゃんと柔らかいシャンソンの歌い方に切り替えている。キリ・テ・カナワやジェシー・ノーマンはオペラティック過ぎる(ヴィブラートがキツイ)のだ。

最後にルグランの舞台ミュージカルをご紹介しよう。劇団四季が上演した「壁抜け男」である。

Kabe

地味だけど愛すべき逸品。劇伴の奏者は3人だけ。後に拡大したオーケストレーション版でブロードウェイ上演もされた。

Amour

壁抜け男」は1999年に博多の福岡シティ劇場で日本初演された(ここは現在、劇団四季の専用劇場ではなくなりキャナルシティ劇場に名を変えた)。僕はこの初日に観ている。主演のデュティユルは現在、テレビ朝日「題名のない音楽会」で司会を務める石丸幹二。他に井料留美、光枝明彦、丹靖子ら。この4人は全員、既に四季を退団している。同メンバーでVHSビデオも出ていたのだけれど、現在Amazon.co.jpで購入出来るDVD/Blu-ray (23% OFF)は2012年の再演版で別キャストである。

シリーズ《映画音楽の巨匠たち》次回はバーナード・ハーマン(「めまい」「北北西に進路を取れ」「サイコ」「タクシー・ドライバー」)か、「スター・ウォーズ」の生みの親エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト辺りを考えている。どちらかもし、ご希望があればコメントをお寄せください。

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Film Musicへの扉を開いてくれたスタンリー・ブラックのことを語ろう。

僕が映画音楽に目覚めたのは小学校5年生の頃。ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィルの演奏する「スター・ウォーズ」組曲をFMで聴いた時だった。第一作「エピソード4」公開前の話である。

高校生の頃購入したLPレコードに「フィルム・スペクタキュラー(FILM SPECTACULAR)」シリーズがあった。廉価版で確か1枚1,500円くらいだったと記憶している。

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スタンリー・ブラック/ロンドン祝祭管弦楽団・合唱団(London Festival Orchestra & Chorus)の演奏で、効果音も入り、なにより録音が抜群に良かった。

【フェイズ(phase)4】という1963年にデッカ・アメリカが開発した録音方式で、20チャンネルのマルチ・マイク・システムで収録した音を特別なミキサーを通してアンペックスの4トラック・レコーダーで録音、2チャンネルのステレオにミックスダウンするというものだった。ストコフスキーの一連の録音(シェエラザード、チャイコフスキー5番、J.S.バッハ編曲集)やバーナード・ハーマンの自作自演(北北西に進路を取れ、サイコ、めまい)、フィードラー/ボストン・ポップスのアルバムなどに採用されている。

ロンドン・フェスティバル管弦楽団は録音のために特別編成されたオーケストラらしい(似た例としてコロンビア交響楽団やRCAビクター交響楽団がある)。実力は折り紙付きで、ロンドン交響楽団やロンドン・フィルと同等。恐らくそれら楽員たちが参加していたのだと想われる。少なくともハレ管弦楽団、フルハーモニア管弦楽団より上。

編曲も見事で、格調高いシンフォニックな映画音楽を堪能した。

特に鮮烈な印象を受けたのがエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトが作曲した「シー・ホーク」組曲。兎に角冒頭トランペット・ソロが勇壮で格好いい!「スター・ウォーズ」の作曲に際し、ジョン・ウィリアムズがコルンゴルトの多大な影響を受けていることをそれで知った(後に聴いたコルンゴルト「嵐の青春(King's Row)」のテーマは「スター・ウォーズ」と瓜二つだった)。

他にフィルム・スペクタキュラー・シリーズで大のお気に入りになった映画音楽は、

  • ハインツ・プロヴォスト:「間奏曲」←独奏ヴァイオリンとピアノのみ。
    I・バーグマン主演のスウェーデン映画及びハリウッド・リメイク版「別離」に流れた。
  • マックス・スタイナー:「風と共に去りぬ」「カサブランカ」
  • ウィリアム・ウォルトン:「スピットファイア」〜前奏曲とフーガ
  • アーネスト・ゴールド:「栄光への脱出」
  • ジェローム・モロス:「大いなる西部」
  • ディミトリー・ティオムキン:「アラモ」←合唱が素晴らしい!
  • ロン・グッドウィン:「633爆撃隊 」←スカッとする!

このフィルム・スペクタキュラー・シリーズのごく一部は現在、ナクソス・ミュージック・ライブラリー NML でも聴くことが出来る。→こちら

大学生になりCD時代となり、そこで出会ったのがRCAレコードからリリースされていたチャールズ・ゲルハルト/ナショナル・フィルハーモニック管弦楽団の"Classic Film Scores"シリーズである。ナショナル・フィルも録音専用の臨時編成で、ロンドン5大オーケストラの首席奏者らが集められた。こちらの録音も優れものだった(ドルビー・サラウンド)。

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衝撃的だったのがエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト作品集(「シー・ホーク」含む)。プロデューサーはジョージ・コルンゴルトで1928年ウィーン生まれ。言うまでもなくエーリヒの息子である。ジョージは晩年にジョン・ウィリアムズ/ボストン・ポップス・オーケストラの録音プロデューサーも務めている。

スタンリー・ブラックもチャールズ・ゲルハルトも棒捌きが巧みで、いずれもスマートでシャープ。洗練されている。彼ら以上の解釈に今までお目にかかったことはない。またゲルハルト/ナショナル・フィルにはハワード・ハンソン:交響曲第2番「ロマンティック」の超名演もある。是非機会があれば彼らの演奏を耳にして頂きたいものである。

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「君の名は。」とRADWIMPSのうた

昨日(9月2日)iTune Storeへ行ったら、アルバムの売り上げ第1位が「君の名は。」サントラで、ソングの第1位が「前前前世」、2位:「スパークル」、3位:「なんでもないや」、4位:「夢灯籠」だった。なんとトップ4をロックバンド・RADWIMPSが歌った「君の名は。」の楽曲が独占!いやはや大変なことになっている。

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これはもう、「アナと雪の女王」の主題歌"LET IT GO(ありのままで)"クラスの社会現象だから、紅白歌合戦出場の可能性も出てきたのではないだろうか?で新海誠監督がゲストとして登場したりして。ファンの妄想はどんどん広がっていく。

思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを
(小野小町/古今和歌集)

夢だけど、夢じゃなかった!(サツキ、メイ/「となりのトトロ」)

僕は冗談抜きで「君の名は。」が「千と千尋の神隠し」に続いて米アカデミー賞の長編アニメーション部門を受賞出来るだけの潜在能力を持っていると確信している。後は海外上映に向けての戦略、マーケティング次第である。でこれから英語版が製作されるわけだが、ここで一つ提言をしたい。

新海誠のアニメは音楽(歌)が重要な役割を果たす。「秒速5センチメートル」で山崎まさよしが歌う「One more time, One more chance」しかり、「言の葉の庭」で秦基博が歌う「Rain」(作詞/作曲:大江千里)しかり。歌が出てくるとまるでミュージカル映画のように主役の座を奪う。これは当然、「君の名は。」にも当てはまるのだが、だからこそ英語版の歌は英語歌詞を用意したらどうだろう?「外人に媚びへつらう必要はない」という意見もあろう。仰ることはご尤も。それでも僕は「新世紀エヴァンゲリオン」のミサトさんじゃないけれど、「サービス、サービスぅ!」も大切だとも想うのである。お・も・て・な・しの心ね。因みにRADWIMPSの全楽曲の作詞・作曲を担当してる野田洋次郎はアメリカ育ちであり、 Mr.Childrenの桜井和寿はRADWIMPSデビュー前にデモテープを貰った際、ほとんどの楽曲が英語詞だった中に、1曲だけ日本語詞があり、「日本語でやったほうがいいですよ」と事務所社長に伝えたという。つまり野田洋次郎は英語の歌詞も書けるということだ。

野田の詞は「ぼく」と「君」の関係が宇宙的規模にまで広がり、新海誠ワールドにぴったりと寄り添っている。そのことを英語圏の人達にも是非感じてもらいたいんだ。

また、SF作家から指摘があった彗星の軌道については(2回目に観た時に確認したが)確かに作画ミスなので、海外に出す時までには修正しておくほうが無難だろう。こんなしょーもないことで足を引っ張られたくないからね。

2回目の鑑賞は9月1日(木)映画の日、21時30分ー23時30分のレイトショー@兵庫県西宮北口TOHOシネマズだったのだが、満席だったので仰天した。こんなこと初めて!空前の大ヒットを実感した次第である。

そして「秒速5センチメートル」第2話コスモナウト(@種子島)に登場するコンビニが「君の名は。」の田舎町・糸守町にも出現していることを発見した。帰宅して調べてみるとアイSHOPという鹿児島県にしかないお店だった。昔からのファンに対する監督からの「サービス、サービスぅ!」だね。

以下余談。「君の名は。」にも繰り返し登場するNTTドコモ代々木ビル(通称ドコモタワー)だが、「秒速5センチメートル」の第3話には出てくるが、やはり東京を舞台とした第1話桜花抄(おうかしょう)では見えない。第3話は2006年のお話で、主人公の貴樹は26歳になっている。ということは彼が中学生だった第1話は1990年代前半ということになる。ドコモタワーの竣工は2000年9月なのでその時は未だ存在しなかったのだ。東京という都市の時間の流れがこうして新海アニメに刻まれているのである。

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アカデミー歌曲賞 オールタイム・ベスト25/裏ベスト8

まず誤解している人が多いのだが、アカデミー「主題歌賞」ではなく「歌曲賞」である。例えば「ライオンキング」からは3曲が歌曲賞にノミネートされた。「主題歌」なら1曲しかない筈でしょ?つまり「挿入歌」も含まれるということ。

  1. 虹の彼方に(「オズの魔法使い」1939)
  2. Let It Go(「アナと雪の女王」2013)
  3. 星に願いを(「ピノキオ」1940)
  4. The Way We Were(「追憶」 1973)
  5. Lose Yourself(「8 Mile」 2002)
  6. Glory(「グローリー/明日への行進」 2014)
  7. Let the River Run(「ワーキング・ガール」 1988)
  8. White Christmas(「スイング・ホテル」1942)
  9. 風のささやき(「華麗なる賭け」1968)
  10. Moon River(「ティファニーで朝食を」1961)
  11. A Whole New World(「アラジン」 1992)
  12. モナ・リザ(「別働隊」1950)
  13. Skyfall(「007 スカイフォール」2012)
  14. My Heart Will Go On(「タイタニック」1997)
  15. 雨にぬれても(「明日に向って撃て!」 1969)
  16. ブロードウェイの子守唄(「ゴールド・ディガーズ36年」1935)
  17. Falling Slowly(「ONCE ダブリンの街角で」 2007)
  18. 今宵の君は(「有頂天時代」1936)
  19. Sooner or Later(「ディック・トレイシー」1990)
  20. Colors of the Wind(「ポカホンタス」 1995)
  21. The Shadow of Your Smile(「いそしぎ」 1965)
  22. チム・チム・チェリー(「メリー・ポピンズ」1964)
  23. What a Feeling(「フラッシュダンス」1983)
  24. 美女と野獣(「美女と野獣」 1991)
  25. ニューヨーク・シティ・セレナーデ(「ミスター・アーサー」 1981)

「裏ベスト」とは歌曲賞にノミネートされるも、惜しくも受賞を逃した楽曲から厳選した。

  1. アルフィー(「アルフィー」 1966)
  2. The Man That Got Away 去っていった彼(「スター誕生」1954)
  3. If We Were In Love(「イエス、ジョルジョ」 1982)
  4. Somewhere in my Memory(「ホーム・アローン」 1990)
  5. Papa,Can You Hear Me?(「愛のイエントル」 1983)
  6. Looking Through the Eyes of Love(「アイス・キャッスル」 1979)
  7. Somewhere Out There(「アメリカ物語」1986)
  8. Circle of Life(「ライオンキング」 1994)

「虹の彼方に」は「ストーミー・ウェザー」で有名なハロルド・アーレンの作曲。映画「オズの魔法使い」の編集段階になってスタジオの幹部から「14歳の少女が歌うには大人びていて相応しくない」と物言いがつきカットされかけた。しかしプロデューサーのアーサー・フリードはこの歌を気に入っておりカットに猛反対をし、何とか免れたという。曲は大ヒットし、ジュディ・ガーランドの代表曲になった。そして2001年に全米レコード協会の投票による「20世紀の名曲」では第1位に選ばれた。また僕が「裏ベスト」で取り上げたThe Man That Got Away(去っていった彼)もハロルド・アーレンが作曲し、ジュディが歌った。こちらは正に「大人の味わい」がしっかり染みこんだ夜の音楽だ。ジュディの絶唱を聴け。

「アナ雪」の「レリゴー」が世界中で巻き起こしたムーヴメントは凄まじかった。それは文字通り旋風だった。

「星に願いを」は映画「未知との遭遇」でも重要な役割を果す。

上記事では「ピノキオ」と旧約聖書との関わりについても触れた。

「追憶」の主題歌は何と言ってもバーブラ・ストライザンドの歌唱が素晴らしい。彼女以外の歌手は考えられない。

「8 Mile」はエミネムの半自伝的映画。ラップが格好いい。

キング牧師を主人公に据えた「グローリー/明日への行進」はラップとゴスペルの融合。新しい。胸熱。これぞ21世紀の音楽!

「ワーキング・ガール」の主題歌は颯爽と肩で風切って歩いている感じがいい。映画冒頭にバーン!と登場。

クリスマスの定番、アーヴィング・バーリンの「ホワイト・クリスマス」の初出が映画だったということを知らない人は多いのでは?「スイング・ホテル」の出来もいい。

「華麗なる賭け」はなんてったってスティーブ・マックィーンが格好いいんだよね。「風のささやき」は彼がエンジンのないグライダーを操縦している場面に流れる。

「ムーン・リヴァー」を知らない人はいないよね?ヘンリー・マンシーニの音楽は都会的でお洒落。ただ僕が一番好きなのは1967年の「いつも2人で(Two for the Road)」。村上春樹のお気に入りの映画だったりする。あと「ピンクパンサー2」の"The Greatest Gift"も素敵。関光夫がパーソナリティーを務め、NHK-FMで土曜日の午後10時20分から放送されていた「夜のスクリーンミュージック」のテーマ曲として使われていた。毎週耳を傾けていたなぁ。

「美女と野獣」「アラジン」「ノートルダムの鐘」の頃が、作曲家アラン・メンケンの全盛期だった。僕の友人の結婚式で、新婦側の友達がピアノで「美女と野獣」を弾くのを聴いて、「これじゃぁまるで新郎を野獣と言っているのと同じじゃない?失礼な」と感じたことを憶えている。もうあれから20年経った。

「モナ・リザ」を入れたのはナット・キング・コールの歌声が大好きだから。とっても優しくて、柔らかい感情に包まれる感じ。つまり包容力がある。癒されるんだ。

007の主題歌に名曲は多い。しかし驚くべきことに初期の「ロシアより愛をこめて」とか「ゴールドフィンガー」なんか、歌曲賞にノミネートすらされていないんだよね。多分イギリス映画だからだ。「女王陛下の007」の劇中にサッチモ(ルイ・アームストロング)が歌う、"We Have All The Time In The World( 愛はすべてをこえて)"なんかもグッと来るなぁ。ジョン・バリーによる傑作。

「タイタニック」におけるジェームズ・ホーナーの音楽はアイリッシュ・テイスト満載(エンヤもね)。ホーナーなら「アメリカ物語」の"Somewhere Out There"も好き。エッ、「虹の彼方に」に似てるって?【パクリのホーナー】だから許してあげて。

「雨にぬれても」は作詞ハル・デヴィッド、作曲バート・バカラックによる代表作。のんびりした田園風景に似合っている。でもこのコンビ作で僕がもっともっと好きなのは「アルフィー」と、カーペンターズが歌い「遙かなる影」の邦題で知られる"(They Long to Be) Close to You"だ。映画「アルフィー」(1966年版)はマイケル・ケイン演じるプレイボーイ(ヒモ男)の主人公が魅力的なんだ。付き合う女を取っ替え引っ替えしても心の虚空は埋まらない。ラストシーンで日がどっぷりと暮れたロンドンの川を眺めながら「一体俺は何をやっているんだ」と呆然と立ち尽くすアルフィー。そこに流れる主題歌の歌詞がグサッと胸を抉る。

What's it all about, Alfie?
Is it just for the moment we live?
What's it all about when you sort it out, Alfie?
Are we meant to take more than we give?
Or are we meant to be kind?

アルフィー、人生って何だろう?
私たちって刹那的に生きているだけってこと?
いろんなことを選り分けていく中で
人に与える以上に人から奪うのが私たちの宿命なの?
それとも親切にすることが人間本来の姿かしら?

And if only fools are kind, Alfie
Then I guess it is wise to be cruel
And if life belongs only to the strong, Alfie
What will you lend on an old golden rule?

もし親切にするのは愚か者だけだというのなら
残酷になる方が賢いよね、アルフィー
強い者のためだけに人生があるというのなら
「人からしてもらいたいことを、人にしてあげなさい」
という黄金律に則ると、あなたは何を人に与える?

As sure as I believe there's a heaven above, Alfie
I know there's something much more
Something even non-believers can believe in

私は天国が存在すると信じているけれど
たとえ無神論者でも信じることが出来る
もっともっと素晴らしいものがあるのよ、アルフィー

I believe in love, Aflie
Without true love we just exist, Alfie

私は愛を信じているわ、アルフィー
真実の愛がなかったら私達は単にこの世に「ある」だけじゃない

Until you find the love you've missed you're nothing, Alfie

あなたがいままで取り逃がしてきた愛を見つけなければ
あなたは「無」に過ぎないのよ、アルフィー

When you walk let your heart lead the way
And you'll find love any day, Alfie, Alfie

歩くときには心が趣くままに進んでごらんよ
そしたら愛を見つけられるんじゃないかな、いつの日かきっと
アルフィー、アルフィー

(日本語訳:雅哉/無断転載禁止)

「アルフィー」はディオンヌ・ワーウィックの歌でよく知られるが、映画のオリジナル(イギリス公開版)はシラ・ブラックが歌い、アメリカ公開時に配給元のユナイテッドの要請でシェールに変わった。僕が好きなのは1996年にTBSで放送されたテレビドラマ「協奏曲」(脚本:池端俊策、出演:田村正和、宮沢りえ、木村拓哉)で使用されたヴァネッサ・ウィリアムズによるバージョン。

「ブロードウェイの子守唄」は舞台ミュージカル「42nd Street」の第1幕フィナーレにも登場する。激しいタップの群舞が圧巻。なんか興奮する。

「ONCE ダブリンの街角で」はジョン・カーニー脚本・監督による音楽映画。カーニーが後に撮った「はじまりのうた」@ニューヨーク、「シング・ストリート」@ダブリンも素晴らしい。

「今宵の君は(The Way You Look Tonight )」のオリジナルを歌ったのはフレッド・アステア。僕がものすごく印象に残っているのはジュリア・ロバーツ主演の映画「ベスト・フレンズ・ウェディング」での使い方。とっても切なくなった。「ベスト・フレンズ・ウェディング」はハル・デヴィッド&バート・バカラックのコンビによる「小さな願い」(I Say a Little Prayer)が歌われる場面も感動する。

「ディック・トレイシー」の"Sooner or Later"はブロードウェイ・ミュージカルの巨匠スティーヴン・ソンドハイム節が堪能出来る。ソンドハイムは「スウィーニー・トッド」や「イントゥ・ザ・ウッズ」の作曲家としても知られる。洗練されて粋な楽曲。ハードボイルドな味わい。

「メリー・ポピンズ」は「イントゥ・ザ・ウッズ」のロブ・マーシャルが監督し、エミリー・ブラントやメリル・ストリープが出演する続編の製作が決定したと聞いて驚いている。オリジナル版の楽曲はシャーマン兄弟が作曲したが、兄は死去しているので多分別人が書くのだろう。「アナ雪」のクリスティン・アンダーソン & ロバート・ロペス夫妻あたりかな?

「フラッシュダンス」の主題歌"What a Feeling"は僕が高校生の時、すごく流行った。吹奏楽部でも演奏したな。前向きな主人公で、女の子たちから圧倒的な支持を受けた。明るい曲だ。

「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」Arther's Theme(The Best That You Can Do)はクリストファー・クロスとバート・バカラックの共作。クリストファー・クロスって絹のように滑らかで綺麗なハイトーン・ボイスの持ち主なんだ。

「裏ベスト」の"The Man That Got Away"(去っていった彼)と「アルフィー」については既に熱く語った。

"If We Were In Love"(「イエス、ジョルジョ」 1982)は日本未公開。「スター・ウォーズ」「ハリー・ポッター」の巨匠ジョン・ウィリアムズが作曲し、三大テノールの一人ルチアーノ・パヴァロッティが歌った(主演も務めた)。とってもロマンティックな佳曲。

"Somewhere in my Memory"(「ホーム・アローン」 1990)の作曲もジョン・ウィリアムズ。今やクリスマスには欠かせない。温かい気持ちになれる。

「愛のイエントル」については下記記事で縦横無尽に語り尽くした。作詞はアラン&マリリン・バーグマン夫妻、作曲は「華麗なる賭け」「シェルブールの雨傘」のミシェル・ルグラン。

"Looking Through the Eyes of Love"の作曲は「追憶」「コーラスライン」のマーヴィン・ハムリッシュ。知られざる名曲だ。映画「アイス・キャッスル」はフィギュアスケーターが主人公の物語。

「ライオンキング」といえば歌曲賞を受賞した「愛を感じて」じゃなくて、断然"Circle of Life"でしょう!歌詞の内容=映画の主題でもあるし。作詞はティム・ライス、作曲はエルトン・ジョン。

これから先の人生で、 どんなことがあるのか知らないけれど、いとしい歌の数々よ、どうぞぼくを守りたまえ。  
(芦原すなお 著「青春デンデケデケデケ」より)

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「ジョン・ウィリアムズの夕べ」スラットキン/フランス国立リヨン管弦楽団

6月27日(月)フェスティバルホールへ。

レナード・スラットキン/フランス国立リヨン管弦楽団によるオール・ジョン・ウィリアムズ・プログラムを聴く。

どうしてフランスのオケが映画音楽のコンサートをするのかという疑問に対して、スラットキンは次のように答えた。「リュミエール兄弟により映画(シネマトグラフ)が発明されたのはリヨンだから」世界初の実写記録映像「工場の出口」(1895)が撮影されたのもリヨンにあった兄弟の所有する工場である。ここは現在、リュミエール美術館になっている。

スラットキンはロサンゼルスで生まれた。父フェリックスは20世紀フォックス・オーケストラのコンサートマスターであり、母はワーナー・ブラザースのオケの首席チェリストで、「ジョーズ」のサウンド・トラックに参加している。また彼らはハリウッド弦楽四重奏団の創設者でもある。フランク・シナトラの伴奏を務めたこともあり、シナトラがスラットキン家を訪問した際、レナードに子守唄を歌ってくれたという。

レナード・スラットキンが1986年にセントルイス交響楽団を率いて来日公演を行った際、プログラムは通常のクラシック音楽だったのだが(ロデオ、メンコン with 五嶋みどり、ショスタコ5番)、なんとアンコールでは「ダース・ベイダーのテーマ」がサントリーホールに鳴り響いた!サービス精神が旺盛な指揮者だなと僕はすごく嬉しくなった。

さて、今回のプログラムは、

  • 「フック」ネヴァーランドへの旅立ち
  • 「ジュラシック・パーク」テーマ
  • 「ジョーズ」組曲
  • 「シンドラーのリスト」テーマ
  • 「レイダーズ 失われたアーク《聖櫃》」マーチ
  • 「E.T.」地上の冒険
       休憩
  • ロサンゼルス五輪 開会式のファンファーレとテーマ
  • 「ハリー・ポッターと賢者の石」ハリーの不思議な世界
  • 「未知との遭遇」組曲
  • 「スーパーマン」マーチ
  • 「スター・ウォーズ」組曲
    メイン・タイトル、王女レイア、帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)
    ヨーダのテーマ、王座の間とエンド・タイトル
  • 「SAYURI(Memoirs of a Geisha)」テーマ(アンコール)
  • 「S・W ジェダイの帰還」イウォーク族のパレード(アンコール)

「ジョーズ」以外は皆、公開時に映画館で観ている。また全作サントラCDを所有。

このオケは余りトランペットが上手じゃなかった。大阪フィルと同レベル。多分N響とか読響、東響など東京のオーケストラの方が格上だろう。しかしホルンはすごく良かったし、「シンドラーのリスト」のコンサートミストレスは太い音で咽び泣き、確かな聴き応えがあった。

スラットキンの指揮は流麗でサウンドはゴージャス。「ネヴァーランドへの旅立ち」からは壮大なロマンを感じた。ホルン・ソロで始まる「ジュラシック・パーク」は気高い(noble)。僕は1993年6月19日にジョン・ウィリアムズ/ボストン・ポップス・オーケストラの来日公演でこの曲を聴いたことを想い出した。当時は岡山に住んでいて、旧フェスティバルホールまで新幹線に乗って遥々やって来たのである。「ジュラシック・パーク」が日本で公開されたのはその年の7月17日。つまり映画公開前に音楽に触れるという貴重な体験をしたのだった。

その時僕は高校吹奏楽部からの親友と一緒だった。演奏会では「E.T.」から”地上の冒険”も演奏され、その後で彼が僕の肩を叩いてそっと囁いた。「隣に座っている女の子が、聴きながら感極まって泣いていた」と。音楽って凄い!と嘆息したことを今でも鮮明に憶えている。

その友は新婚旅行から帰ってきて直ぐに慢性骨髄性白血病を発症した。アトランタ・オリンピックが開催された1996年の夏のことだった。彼は兄弟から骨髄幹細胞移植を受けることになり、僕はジョン・ウィリアムズがオリンピックのために作曲した「Summon the Heros(英雄たちを招集せよ)」のCDを入院見舞いとして病院に持参した。手術は無事成功したのだが術後感染症から敗血症に至り、結局彼は亡くなった。そんな事どもの記憶が演奏を聴きながら僕の脳裏を駆け巡った。

ロサンゼルス五輪が開催された時に僕は高校生で、うちの吹奏楽部が運動会でジョンのオリンピック・ファンファーレを演奏した。勇壮な曲。

「未知との遭遇」の前半はリゲティやペンデレツキみたいな現代音楽なのだが、後半のクライマックスはとってもロマンティック。「スーパーマン」は躍動感溢れ、「イウォーク族のパレード」は軽妙洒脱。曲調が多岐に渡るジョンの魅力をたっぷり堪能した。

クラシックの音楽家たちは未だに映画に対する偏見を根強く持っている。エリック・ウォルフガング・コルンゴルトの再評価が非常に遅れたのも「ハリウッド(大衆娯楽)に魂を売った唾棄すべき作曲家」という烙印を押されたからだし、オーケストラの定期演奏会でジョン・ウィリアムズの映画音楽が取り上げられることはない。漸くウィーン・フィルやベルリン・フィルが野外コンサートで「スター・ウォーズ」や「E.T.」を演奏する時代になったので、今後さらに状況が変化していくことを期待したい。付随音楽という意味では、バレエやオペラと何ら違いはないのだから。

ディーク・エリントンはこう言った。

音楽には2種類しかない。「いい音楽(good music)」と「それ以外(and else)」だ。

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宮川彬良/オオサカ・シオンによる「アメリカの夢」

2月12日(金)ザ・シンフォニーホールへ。宮川彬良/オオサカ・シオン・ウィンド・オーケストラの定期演奏会を聴く。

  • J.ウィリアムズ(J.カーナウ編):映画「11人のカウボーイ」
  • J.ボック(宮川彬良編):ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」
  • スーザ:行進曲集 ①海を超える握手②ワシントン・ポスト
    ③美中の美④雷神(以上F.フェネル校訂)⑤星条旗よ永遠なれ
  • ガーシュウィン(J.バーンズ編):「ガール・クレイジー」より
    エンブレイサブル・ユー〜チャンスを待ちながら〜アイ・ガット・リズム
    〜私のためじゃない(But Not For Me)
  • D.エリントン(J.バリー/宮川彬良編):映画「コットン・クラブ」より
    ①ミニエ・ザ・ムーチ②ムード・インディゴ③ソリチュード
    ④ザ・ムーチ⑤コットン・クラブ・ストンプ・ナンバー2
  • 若いってすばらしい(アンコール)

まず最初に宮川彬良からの挨拶があった。「久しぶりにシンフォニーホールに帰ってきました。私がプロのオーケストラを初めて指揮したのはこのホールで開催された大阪フィル・ポップス・コンサートでした。その後大阪市音楽団と出会い、何度かここで演奏し、彼らがオオサカ・シオン・ウインド・オーケストラとして再出発する時に音楽監督就任を請われました。私はこの楽団の音楽監督になって本当に良かった。リハーサルでも彼らは涙がでるくらい一生懸命に練習します」と。

ジョン・ウィリアムズの「11人のカウボーイ」「屋根の上のヴァイオリン弾き」(アカデミー編曲賞受賞)については下記記事で語った。

「11人のカウボーイ」吹奏楽版は全日本マーチングコンテストでも演奏される人気曲だ。そちらの感想はこちら。宮川彬良の指揮は生き生きしたリズム感で、しなやかな歌に満ちている。ただライヴ・レコーディングされていたのだが、トランペットとホルン・ソロのミスが目立ったので、本番をそのまま使う訳にはいかないだろう(多分ゲネプロのテイクが採用される筈)。

「屋根の上のヴァイオリン弾き」の編曲は宮川彬良の書き下ろし。①しきたり②サンライズ・サンセット③結婚式の踊り〜ボトル・ダンスという構成。「しきたり」はフルートのソロで開始され、途中からクラリネット・ソロが加わる。「サンライズ・サンセット」はイングリッシュ・ホルンのソロとファゴットが印象的。色彩感豊かなアレンジで難易度もしっかりあり、これは全日本吹奏楽コンクールの自由曲として勝負出来る内容になっているのではないだろうか?

スーザのマーチは堅固なリズムに乗り、キレとメリハリのある演奏。くっきりと浮かび上がる対旋律。聴き慣れた曲の筈なのに、とても新鮮だった。なお「美中の美」の原題は"The Fairest of the Fair"で、これは「博覧会の美女」と解釈も出来るとのこと。成る程。「星条旗よ永遠なれ」は強弱のニュアンスが豊かだった。

「アルヴァマー序曲」や交響曲第3番が有名なジェイムズ・バーンズによるガーシュウィンの編曲はJazzyで都会的。ハーモニーが凝っていて最後はゴージャスに締め括られた。素晴らしいアレンジだった。

「コットン・クラブ」ではピアノを弾き振りした宮川彬良の解説によると、それまでラグライムとかディキシー・ランド・ジャズしか無かった1920年代にディーク・エリントンが彗星のごとく現れ、新風を吹き込み、このジャンルは芸術に昇華する第一歩を踏み出したと(ストイックなジャズの誕生)。禁酒法時代(1920-1933)のナイトクラブは黒人が演奏し、踊り、観客は全員白人。黒人たちには内面からフツフツと沸き起こる怒りがあっただろうし、そこには何かしら緊張感があったろう。客が踊り出すのはそれから30年後のグレン・ミラーの登場を待たなければならなかった。

ここでダイナマイトしゃかりきサ~カスという3人のボーカル・グループが加わった。「ムード・インディゴ」はクラリネットとミュートを付けたトランペット、トロンボーンの3重奏が印象的。「ソリチュード」は女声ソロ。「コットン・クラブ・ストンプ・ナンバー2」は最後シオンの楽員全員が起立し、ノリノリの演奏。これぞビッグバンド・ジャズ!客席も大いに盛り上がった。

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