Cinema Paradiso

映画「のだめカンタービレ 最終楽章」への期待

玉木宏上野樹里が主演する映画「のだめカンタービレ」が今週末より公開される。

クラシック・ファンにとって何よりも愉しみなのが、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサート会場としてもお馴染みの、ウィーン楽友協会大ホール(黄金のホール)が登場することであろう。写真はこちら!ここで映画のロケが行われるのは史上初のことである。僕も一度だけ、このホールでコンサートを聴いたことがある。その豪華な内装に興奮したものだった。

映画に流れる音楽を全面的に指揮するのが飯森範親さん。飯森さんと「のだめ」の関係については下記記事に書いた。

ウィーン楽友協会大ホールでのロケにも飯森さんは立ち合われている。

飯森さんが普段、演奏会でモーツァルトやベートーヴェンを指揮される時はピリオド(ノン・ヴィブラート)奏法を選択される。

さて、黄金のホールに響き渡るベートーヴェン/交響曲 第7番は果たして、ノン・ヴィブラートなのか!?この点が注目される。

また映画で上野演じる”のだめ”が演奏するピアノ演奏の吹き替えを、なんと中国NO.1のピアニスト、ラン・ランが担当するという。こちらも大いに期待したい。

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クリスマスに観たい映画

お勧め映画は下記記事にまとめているので、興味のある人はクリックしてみて下さいね。

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ジュリー&ジュリア

評価:B

Juliejulia

これは女性映画である。Women Film Critics Circle Awards(女性映画批評家協会賞)でBEST MOVIE BY A WOMAN(女性が撮った最優秀映画賞) 、BEST EQUALITY OF THE SEXES(性の平等を扱った最良の作品賞)などを受賞。ちなみにBEST WOMAN STORYTELLER(Screenwriting Award)、つまり、最優秀女性脚本家賞は「サンシャイン・クリーニング」が獲った。またニューヨーク・オンライン批評家協会賞およびニューヨーク映画批評家協会賞ではメリル・ストリープが主演女優賞を受賞。

映画公式サイトはこちら

メリル・ストリープエイミー・アダムス主演。このふたりは「ダウト~あるカトリック学校で~」でも共演しているが(両者アカデミー賞ノミネート)、「ジュリー&ジュリア」では同じ空間で演技することが全くない。つまりパリとニューヨーク、しかも50年を隔てた、正に時空を超えた女性同士の共感を描くユニークな作品(なんと実話!)である。

脚本・監督はノーラ・エフロン。僕は彼女の作品で好きなものを問われたら、真っ先に「恋人たちの予感」(When Harry Met Sally...,1989)と「めぐり逢えたら」(Sleepless in Seattle,1993)を挙げる。ただし「恋人たちの予感」は脚本のみで、監督はロブ・ライナーだけれど。

「ジュリー&ジュリア」は決してそれらと肩を並べるような傑作ではない。しかし観終わった後、心地よい余韻が残る佳作だと想う。特に料理好きの女性にお勧めしたい。

まだ《出会い系サイト》といった言葉も存在しなかった1998年、「ユー・ガット・メール」("You've Got Mail")でインターネットのメールを通して出会う男女を描いたノーラだが、本作はブログという新しいコミュニケーション・ツールが映画の中で重要な役割を果たしている。

パリ生まれの作曲家アレクサンドル・デプラ(「真珠の耳飾の少女」「ラスト、コーション」「ライラの冒険/黄金の羅針盤」「ベンジャミン・バトン」)の音楽は、今回初めてフランスらしいスコアを聴いた気がした。トレビアン!

それから髪をショートにしたエイミー・アダムスが超キュート。「魔法にかけられて」の頃から僕が大好きな女優さんだ。彼女はとても素敵な声をしているので、是非またミュージカル映画にも出演して欲しい。

それでは、ボナぺティ(どうぞ召し上がれ)!

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宝塚宙組/カサブランカ

千秋楽を翌日に控え、宝塚大劇場で宙組公演を鑑賞。

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アカデミー作品賞、監督賞、脚本賞に輝いた映画「カサブランカ」(1942)は名台詞の宝庫である。

Here's looking at you, kid.
「君の瞳に乾杯!」
Play it, Sam. Play "As Time Goes By".
「あの曲を弾いて、サム。『時の過ぎ行くままに』を」
We'll always have Paris.
「俺たちにはパリの想い出がある」
Louis, I think this is the beginning of a beautiful friendship.
「ルイ、これが俺たちの美しい友情の始まりだな」
 

男なら、一度は言ってみたい台詞の数々だ。なお、イングリット・バーグマンが言う"PLAY IT AGAIN,SAM"はウディ・アレン脚本・主演した映画「ボギー!俺も男だ」(1972)の原題にもなった。

僕がこの作品を本当に凄いと想うのは、映画が公開された時点でアメリカはドイツと交戦中であり、ナチス・ドイツは未だ負けていなかった(ヒトラーは生きていた)ことにある。そして「カサブランカ」は1998年にアメリカ映画協会(AFI)が選出した「アメリカ映画ベスト100」で第2位、2007年の再選考でも第3位に選ばれている。

今回世界で初めてミュージカル化されるにあたり、台本・演出に当たったのは宝塚歌劇団のエース、小池修一郎である。ミュージカル「エリザベート」や「モーツァルト!」の演出で知られた鬼才であり、昨年の「スカーレット・ピンパーネル」では菊田一夫演劇大賞に輝いた。

小池さんの潤色は原作を生かしながら、回想のパリの場面でカン・カンを登場させるなど宝塚らしい華やかな見せ所も盛り込み、実に見事。パリのシーンはRouge(赤)を基調とした色彩感も洗練されている。盆(回り舞台)やせり(舞台の上下機構)を駆使した場面転換は流れるようで鮮やか。さすがである。

日本人が映画版を観て些か難解に感じるのはラストシーン、 ルノー署長(クロード・レインズ)が「ヴィシー水」と表記されたミネラル・ウォーターを飲み、そのラベルに気が付いて苦々しい顔でボトルごとゴミ箱に捨てる場面である。これはフランスに出来たナチス・ドイツの傀儡・ヴィシー政権の象徴となっている。今回の舞台ではこの描写をカットし、冒頭部でヴィシー政権の解説をするよう変更されている。なかなか賢いアレンジである。

音楽は"As Time Goes By","It Had to Be You" ,"Someone to Watch Over Me"などスタンダード・ナンバーをはじめ、オリジナルの楽曲も中々いい。

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主演の大空祐飛さんは決して歌が上手くない(歴代のスターで言うなら彩輝なお大和悠河 レベル)。しかしそのスッとした立ち姿が美しく、ハッとさせられた。何というか孤独を背負って生きる男の哀愁が漂っている。男役の美学、ここに極まれり。

バーグマンが演じたイルザ役の野々すみ花さんは容姿端麗とはほど遠く、歌も×。何でこんな人がトップになれたのか全く訳が分からない。美貌の檀れい白羽ゆり退団後、娘役氷河期が続く宝塚であった……。

ラズロを演じる蘭寿とむさんは歌唱もダンスもパーフェクト。素晴らしい男役である。聞くところによると、宝塚音楽学校時代は入学から卒業まで主席を他に譲らず、歌劇団へも主席入団だったとか。

また、エトワールに抜擢された七瀬りりこさん(研3)のソプラノがとっても美しかった!これは特筆に値する。

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兎に角、宝塚版「カサブランカ」は映画版をこよなく愛する僕でも納得出来る、素晴らしい舞台である(ただし、娘役を除く)。必見。

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「カールじいさんの空飛ぶ家」3D字幕版

評価:A+

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ピクサー・アニメーション・スタジオの勢いは止まらない。常にクオリティの高い作品を続々と世に送り出すその姿勢は、ウォルト・ディズニーが存命中だった頃のディズニー映画を彷彿とさせる(ウォルトは1931年の「花と木」以降、ほぼ毎年アカデミー短編アニメーション賞を受賞。生涯に26個のオスカーを獲得した。これはアカデミー賞史上、最多記録である)。そしてその中身(プロット、CGで描く技術)はより洗練され、エンターテイメント性を増している。映画公式サイトはこちら

メガネの形、顎の輪郭……まず主人公の顔が宮崎駿そっくりなのに笑ってしまう。ピート・ドクター監督は一応(スタジオ・ジブリの試写室にフィルムを持参し上映した折)、スペンサー・トレイシーの顔を参考にしたと宮崎さんに語っているが、それはまあexcuse(言い訳)に過ぎないだろう。いくらなんでも本人を目の前にして「あなたをモデルにした」とは言えないわな。横からジブリの鈴木プロデューサーが「映画を観ている最中ずっと、このおじいさんは宮さんだと想っていた」と感想を述べているが、正鵠を射た発言である。

ピクサー及びディズニー・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを兼務するジョン・ラセターは「すべてのピクサー作品が宮崎作品へのオマージュ」であると断言している。

だから主人公が南アメリカの目的地に到着する場面で、周囲に立ち込めていた霧が晴れていくと、遠くに滝が見えてくる情景の(静の)表現法、飛行船とのチェイス()、雨雲に近づく場面(”竜の巣”)等は明らかに「天空の城ラピュタ」を彷彿とさせるし、飛行船上で駆け回るアクション・シーンで「未来少年コナン」のギガント(巨大飛行兵器)登場の回を想い出さない人間はいないだろう。

また本作は同時にアルベール・ラモリス監督のフランス映画「赤い風船」(1956)や「素晴らしい風船旅行」('60)へのオマージュにもなっている(ラモリスは1970年、「恋人たちの風」を空撮中にヘリコプターの墜落事故で亡くなった。享年45歳。如何にもらしい最後であった)。

Rouge

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Rouge3

Ballon

「カールじいさんの空飛ぶ家」は、いきなり冒頭部分から魅了される。まず少年時代のカールとエリーの出会が描かれるのだが、ここでのエリーは饒舌で、捲し立てる様に喋る、喋る。ところが、ふたりが結婚する場面になると突然台詞なしで音楽のみのサイレント映画仕立てになり、エリーと死別するところまで一気にスケッチ風に描かれる。ここは涙なしには観られない名場面である。宮崎駿さんもこう語っている。

「実は僕、追憶のシーンだけで満足してしまいました」

前の過剰な台詞の洪水があればこそ、この演出が生きるのである。

マイケル・ジアッチーノ(「Mr.インクレディブル」「レミーのおいしいレストラン」)の音楽も素晴らしい。テーマがディキシーランド・ジャズ風に演奏されたかと想うと、それが優雅なワルツとなり、変幻自在にメタモルフォーゼを繰り返す。彼は今年「スター・トレック」でも卓越した仕事をこなしたし、そろそろアカデミー作曲賞をあげてもいいんじゃないだろうか?

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今回は上の写真のような3Dメガネをかけて鑑賞。字幕は浮き上がったように表記され、決して見にくくはない。ピクサー初の3D作品ということで会社のロゴも、より立体的に見せる工夫が凝らされている。画面が飛び出してくる驚きはないが、CGの質感がよりリアルに感じられ、特に色とりどりの風船が舞い上がる美しさは3Dでしか味わえられない新鮮な肌触りである。お勧め!

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誰も守ってくれない

評価:F

来年の米アカデミー賞外国語映画部門で日本代表としてエントリーすることが決まっている。映画公式サイトはこちら

「踊る大捜査線」シリーズの脚本を手掛けた君塚良一が脚本と監督を兼任。主演は佐藤浩市、志田未来。

加熱するマスコミ報道、ネットの悪意の描き方は自殺した脚本家・野沢尚の小説および映画「破線のマリス」(江戸川乱歩賞受賞)を彷彿とさせる。逆に言うとテーマが紋切り型・陳腐であり、そこからなんら進歩が見られない。この映画に登場する「おたく」「ネット社会」は現実から乖離している。

佐藤が演じる主人公の行動も明らかに変だ。普通、男の刑事が保護すべき少女を自宅に連れ込んだりするか??何故、婦人警官が付き添わない?これはもはや犯罪的行為である。警察が(柳葉敏郎が経営する)一般人のペンションで少女の証言を聴取しようとするのも不自然。つまり、全てがドラマを盛り上げるための《ご都合主義》に過ぎないのである。それから刑事の恋人(木村佳乃)が精神科医という設定は香港ノワール「インファナル・アフェア」(原題「無間道」、ハリウッドリメイク版は「ディパーテッド」)の模倣だろう。はっきり言う、このシナリオは屑だ。

君塚の演出も下手糞で目を背けたくなる。映画冒頭、スローモーションの垂れ流しから辟易した。煽るような佐藤の顔のクローズアップ・ショットにも反吐が出る。1930年代前半、名匠・山中貞雄監督はこう言った。「クローズアップというのは一つの映画で一ヶ所、多くても二、三ヶ所で用いるからこそ効果がある」誰か、君塚に演出の「いろは」を教えてやってくれ!音楽も安っぽくていただけない。

兎に角この映画を日本代表に選ぶなぞ愚の骨頂、国辱ものである。選考委員の目は節穴か?昨年「おくりびと」は見事、外国語映画賞に輝いたが、今年はノミネートすら、かすりもしないだろう。僕は「ヴィヨンの妻」を出品すべきだったと想うし、百歩譲って「ディア・ドクター」や「沈まぬ太陽」の方がまだ可能性があった。むしろ今年はポン・ジュノの傑作「母なる証明」を選出した韓国が、よりアカデミー賞ノミネートに近い位置にあると言えるだろう。

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イングロリアス・バスターズ

評価:B+

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A級の予算とブラッド・ピットという大スターが主演ながら、B級テイストたっぷり!クエンティン・タランティーノ監督(以下タラちゃんと呼ぶ)最新作。映画公式サイトはこちら

冒頭のクレジット・タイトルからいきなりディミトリ・ティオムキン作曲「遥かなるアラモ」(ジョン・ウエイン監督・主演の映画「アラモ」1960年)が高らかに鳴り響くもんだから仰天した。

ナチス占領下のフランス。ファースト・シーンは丘の上の一軒家、洗濯物がはためく向こう側からナチスのジープがやって来る。そこへエンニオ・モリコーネがベートーヴェンの「エリーゼのために」をアレンジし、絡めた「復讐のガンマン」の音楽が流れ出すといった具合。そして復讐の物語が動き始める。第二次世界大戦を舞台にしながら、ノリは完全にマカロニ・ウエスタン

タラちゃんらしく、頭皮を剥ぐなど残酷描写の中に一匙のユーモアがふりかけられ、悪趣味になる一歩手前で踏みとどまっている。三つ子の魂百まで。血みどろの銃撃戦もあるし「レザボア・ドッグス」('92)「パルプ・フィクション」('94)の頃からこの人は少しも変わっていない。

本作のクライマックス(ヒトラー、ゲッベルスらナチス高官皆殺し計画!)は映画館。タラちゃんの映画愛が溢れ(まるでロベール・アンリコの「ラムの大通り」かフランソワ・トリュフォーの「アメリカの夜」みたい)、実に痛快なエンターテイメントに仕上がっている。傑作。

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映画「パンドラの匣」

評価:B+

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太宰治 生誕100年だそうである。だから「ヴィヨンの妻」やこの「パンドラの匣」などが今年、相次いで映画化された。映画公式サイトはこちら

何と言っても映画に流れる空気感がいい。ちゃんと昭和20年代の匂いがして、虚構の中のリアリティが感じられる。冒頭、桶に溜められた水の鏡が映し出す風景から一気に魅了され、僕はこの作品に恋をした。

川上未映子の凛とした佇まい、天真爛漫な笑顔が魅力的な仲里依紗が素晴らしい。主人公を演じる染谷将太もききりとして好感が持てる。なお、川上未映子は作家としても活躍しており、「乳と卵」で芥川賞を受賞している。

音楽はジャズ・ミュージシャンの菊地成孔。一曲の間にどんどん転調していく様はまるでミッシェル・ルグラン(「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」)みたい!そのモダニズムがちゃんとこの作品に似合っているのだから不思議だ。これこそが、太宰が作品の中で目指した「軽み」(現代の言葉に置き換えるなら「ポップさ」)なのかも知れない。


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映画「スペル」

評価:B

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「スペル」って「綴り」じゃないよ、「呪文」の方。でも原題は全然違っていて、"Drag Me to Hell" …つまり「私を地獄に連れてって(引きずり込んで!)」ってとこかな。オフィシャル・サイトはこちら

サム・ライミは、本来B級映画で力を発揮する人だと想う。僕にとって彼はやはりデビュー作「死霊のはらわた」(1981)の監督であり、「XYZマーダーズ」('85)とか「ダークマン」('90)みたいな悪趣味で馬鹿馬鹿しい映画を撮っている初期の彼が好きだった。「シンプル・プラン」('98)の頃から柄にもなく作風が格調高くなってきて、大作「スパイダーマン」シリーズになると全く魅力が感じられなくなった。しかし「スパイダーマン3」でひと段落着いて、ライミが初心に帰るというか低予算でリラックスした気持ちで撮ったのが本作である。

冒頭、昔のユニバーサル映画のロゴから始まるのが何とも粋である。ヒッチコックが「裏窓」「めまい」「鳥」を撮っていた頃のものだ。ユニバーサルといえば怪奇映画。ここにも原点回帰の志向が現れている。

いや~、何なんだろうこの心地よさは!「スペル」にはB-Movieの懐かしい匂い・魅力が満載である。程よい下品さ(いかがわしさ)、チープなプロット(見え見えの伏線)、こけおどしのショッカー演出、見たこともない冴えない役者たち。クリストファー・ヤングの饒舌な音楽も凄く良かった。

考えてみればクリストファー・ヤングは清水崇監督のハリウッド進出作「THE JUON 呪怨」の音楽も担当していたが、その製作総指揮をしたのがサム・ライミだった。

本作では《B級映画の心意気》を久しぶりに堪能させてもらった。映画が終わり、場内が明るくなる直前の暗闇の中、僕は小さく呟いた。「おかえり、サム・ライミ。Welcome!」

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サイドウェイズ

評価:D

映画公式サイトはこちら。アカデミー脚色賞を受賞したアレクサンダー・ペイン監督の映画「サイドウェイ」(原題Sideways, 2004)を日本人キャストでリメイク。

2001年以降公開された作品のうち、Loser(負け犬)を主人公にした傑作を5つ挙げろと言われれば、僕は躊躇なく「サイドウェイ」「リトル・ミス・サンシャイン」「その土曜日、7時58分」「レスラー」「サンシャイン・クリーニング」(←それぞれのタイトルをクリックすると、公開当時僕が書いたレビューに飛ぶ)を選ぶ。これらが全てアメリカ映画だというのが面白い。それは恐らく、アメリカの社会構造と無関係ではないのだろう(日本でトレーラー生活を送っている人なんていないしね)。

さてこのリメイク版だが、一番問題なのは主な登場人物4人に"人生の負け犬"(Loser)感が欠けていることにある。オリジナルにはじわじわと滲み出してくるような哀感があり、それが独特の味わいとなっていたのに。日本人が演じることにも無理がある。日本の酒蔵めぐりに置き換えればいいのに、オリジナル同様カリフォルニア州ナパ・バレーでワイナリーをめぐる物語のままとなっており、設定が余りにも不自然だ。

歯の浮くような台詞の数々も勘弁してもらいたい。そんな格好つけるなよ、小日向さん。全然似合ってないぜ。つまり上杉隆之の脚色が屑なのである。

結論、オリジナル版だけ観れば十分。リメイクは無用の長物だった。

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