アニメーション・アニメーション!

ぶっちぎりのロケットスタート!「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」

前代未聞、桁外れの特大ヒットである。僕が観た兵庫県西宮市のTOHOシネマズでは公開初日金曜日の上映回数が30回!レイトショーは20時00分、10分、20分、30分、40分と10分刻みの上映開始で、「電車の時刻表か!」と呆れた。TOHOシネマズ新宿は全12スクリーンのうち11スクリーンを稼働し、1日で42回上映したという。週末3日間の興行収入は46億円を突破。日本国内で公開された映画(洋画含む)の興行収入と動員の歴代1位となった。昨年の興収トップだった『天気の子』と比較して、約3倍とぶっちぎりである。最終的に『天気の子』の記録、141億9000万円を超えるのではないだろうか。

東宝は『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』に社運を賭けており、新型コロナ禍で落ち込んだ収益をここで一気に挽回するぞと鼻息が荒い。

評価:A

Kime

京アニ『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、テレビ・シリーズを観ていなくてもこれまでの経緯がわかるような親切な構成だったが、『鬼滅の刃』はそんなことを一切斟酌しない。テレビ・シリーズを観ていることが大前提で話は展開する。僕も当然、全26話を鑑賞した上で映画館に臨んだ。

原作者・吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)は覆面漫画家であり、その正体は男なのか女なのかが議論の的になっている。僕は女性だと確信している。漫画家・きたがわ翔と山田玲司も対談(『れいとしょう』)の中で、女性説を支持している。その根拠となっているのが鬼殺隊に退治された鬼の死に際。人間だった頃の回想が長々とあり、この世の未練を切々と語る。それを傾聴した主人公・炭治郎が「可哀想に。辛かったろう」と涙を流す。その共感性の高さが女性作家ならではだというのだ。つまりemotional、今流行りの言葉で表現するなら「エモい」。

『無限列車編』も過剰なまでにエモい、そして熱い、いや、熱苦しい。些かtoo muchで辟易すると言えなくもないが、それは本シリーズ一貫した特徴なので、肯定的に受け取りたい。僕は幼少期から女性作家と相性が良いのだ(マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ」、ルイーザ・メイ・オルコット『若草物語』、エミリー・ブロンテ『嵐が丘』、シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』、アガサ・クリスティの推理小説、紫式部『源氏物語』、角田光代『対岸の彼女』『八日目の蝉』、宮部みゆき『火車』)。

夢と無意識がテーマという点でも大いに気に入った。とってもカール・グスタフ・ユング的。そういう意味で『君の名は。』『インセプション』『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』『劇場版 まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』に近い。テレビ・アニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』なら第14話〈魔女はささやく〉が該当する。こういうの、大好物です。

あと本作は、煉獄さんの〈承認欲求〉が満たされるまでの物語という捉え方も可能だろう。

客層の男女比はほぼ半々で、やや女性が多めか。クライマックスではあちらこちらからすすり泣く声が聞こえてきた。

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「愛してる」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

評価:A+

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映画公式サイトはこちら

テレビ・アニメ版が全13話、そして第4話と第5話の間に位置するExtra Episodeが1話、さらに映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 ー永遠と自動手記人形ー』があり、全てNetflixが独占配信している。本作はそれらを受けての大団円である。

僕は当然ながら全ての作品を観て臨んだが、今回の劇場版が初体験となる人でも今までの経緯が理解出来るよう配慮されており、抜かりがない。

もう大満足。観たいと思っていたものを、しっかりと観せてくれた。パーフェクト、感無量である。

アニメ映画『リズと青い鳥』『若おかみは小学生!』に続き、吉田玲子の脚色が圧倒的に素晴らしい!ヴァイオレットが生きた時代の(恐らく)100年後から、物語を照射するという趣向が鮮烈である。

とはいえ、些か不満がないではない。例えばヴァイオレットが少女兵だった陸軍時代の上官で、大戦で大怪我を負って安否不明「未帰還兵扱い」となっているギルベルト・ブーゲンビリア少佐の生死の謎もミエミエだし(そもそも上のポスターが既にネタバレになっている!ここまで引っ張るほどのネタではないだろう)、クライマックスの海の場面では「エエッ、この島こんなに遠浅なん??これじゃ船を接岸出来ないでしょ!」とかツッコミを入れたくもなるが、それは野暮というもの。大目に見よう。あと『涼宮ハルヒの憂鬱』の時代から『響けユーフォニアム』にしても京アニ作品には必ず巨乳キャラが登場し、それば『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も例外ではない(自動手記人形のカトレア)。しかし「そこまでヲタクに媚びなくても」という気もするのである。閑話休題。

僕はこの作品の世界観が好きだ。衣装デザインが美しいし、ヴァイオレットちゃんは健気だしね。吹奏楽ファンなので『響けユーフォニアム』も大のお気に入りだが、やはり『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』こそ京アニの最高傑作では?と思うのだ。

「大切なことは言葉にならない」は映画『海獣の子供』のキャッチコピーだが、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は「言葉にしなければ自分の想いをしっかりと相手に伝えられない」ということを教えてくれる。

痛ましく辛いあの事件を乗り越え、スタジオの総力を結集して金字塔を打ち立てた!京都アニメーション、「心から、愛してる」。

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わが心の歌 25選 ②「One more time, One more chance」「なんでもないや」

「歌はいいね。歌は心を潤してくれる。リリン(=人類)の生み出した文化の極みだよ」渚カヲル〜『新世紀エヴァンゲリオン』より

One more time, One more chance(山崎まさよし)”を初めて聴いたのは 1996年12月に公開された映画『月とキャベツ』の主題歌としてだった。歌手・山崎まさよしの俳優デビュー作であり、彼は後に韓国映画のリメイク『8月のクリスマス』でも主演を務めている。

ぶっちゃけ『月とキャベツ』は死にそうなくらい退屈で、最早どんな物語だったかすら記憶にない。しかし主題歌はしみじみ「いい曲だなぁ」と想った。「でも映画の出来が悪くてもったいない。宝の持ち腐れだ」

それからすっかり忘却の彼方にあったのだが、久しぶりにこの歌を耳にしたのが2013年。DVDで鑑賞した新海誠監督のアニメーション映画『秒速5センチメートル』のクライマックスで大々的に使用されていたのである。

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これにはぶっ飛んだ。新海監督は音楽の小節ごとにピッタリ合わせて畳み掛けるようにショットを積み重ねていくので、編集にキレがある。ロバート・ワイズ監督のミュージカル映画『ウエストサイド物語』や『サウンド・オブ・ミュージック』を彷彿とさせる。この特徴は『君の名は。』や『天気の子』も同様。

長い年月を経て遂にこの歌の真価を十二分に発揮する映像にめぐり逢った、という感慨を覚えた。なんて切なくて、心にズシンと来るのだろう。Spotifyではこちら

新海監督が本作の後に世に問うた『言の葉の庭』では、主人公たちの感情が爆発する場面で大江千里(作詞・作曲)"Rain"がすこぶる印象的に使われた。槇原敬之はこの曲を2度もカヴァーしており、映画では秦基博によるカヴァー・バージョンが流れる。Spotifyはこちら。大江は大阪府に生まれ、関西学院大学(兵庫県西宮市)入学後に音楽活動を始めているので、"Rain"で歌われているのは大学のある阪急今津線(宝塚ー西宮北口)沿線の情景かな?と想像している。ちなみにこの路線は映画『阪急電車』の舞台となった。

「なんでもないや -movie ver. (RADWIMPS - 上白石萌音)」は言うまでもなく、映画『君の名は。』の幸福感溢れるエンディングに流れる歌。

ただしRADWIMPSはサブスクリプション型(定額制)音楽ストリーミングサービスで聴けないので……と書く予定だったのだが、な、な、なんと2020年5月15日から電撃的に全シングル・アルバム作品が一挙解禁となった!サウンドトラック盤の彼らのパフォーマンスはこちら。「夢灯籠」や、『天気の子』の「大丈夫」も甲乙つけ難い。加えて上白石萌音がしっとりと歌い上げるカヴァー盤も素晴らしい(こちら)。『君の名は。』三葉の声で聴けるという至福。僕は彼女の生パフォーマンスも体験している。

なおRADWIMPSの野田洋次郎が再び作詞作曲・プロデュースし、上白石萌音が歌ったのが映画『楽園』の主題歌「一縷」(Spotifyはこちら)。また野田洋次郎が楽曲提供・プロデュースしたAimerの「蝶々結び」は明らかに『君の名は。』のために書かれ、採用されなかった楽曲と思われる(こちら)。

更に、彼らが新型コロナウィルスが蔓延したこの世の中に対峙し生まれた最新曲「新世界」には衝撃を受けた(こちら)。圧倒的な絶望の闇の中に、微かに垣間見える希望の光。

僕ら長いこと 崩れる足元を
「上を向いて歩けよ」と 眼をそらしすぎた

歌詞が刺さる。あたかも宮本亜門が立ち上げた「上を向いて~SING FOR HOPE プロジェクト」に対する強烈なアンチテーゼのように耳朶に響く。『天気の子』にも通ずる社会性がある。

「希望は残っているよ。どんな時にもね」渚カヲル〜『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』より

次回はフランスのシャンソン「聞かせてよ愛の言葉を」と、20世紀の日本を代表する作曲家・武満徹との密接な関係について語る予定。

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高校生の間に一度は絶対観ておけ、この映画!/ジャンル別ベスト

高校生の三年間でこれだけは是非観ておいてほしい、君たちにとってこれからの人生が変わるかもしれないという映画を厳選した。

【青春映画】

  • ふたり
  • 廃市
  • 青春デンデケデケデケ
  • 幕が上がる
  • ヒポクラテスたち
  • 太陽の少年
  • 冒険者たち
  • ブレックファスト・クラブ
  • ヤング・ゼネレーション
  • スウィングガールズ

いつも青春は時をかけるー大林宣彦監督「時をかける少女」のキャッチコピーである。

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赤川次郎原作「ふたり」は事故死してしまったしっかり者の姉と、姉に頼ってばかりいた妹との、奇妙な共同生活を描いている。表面上は幽霊譚になっているけれど、一人の少女の意識(自我)と無意識(自己)という二面性および、その融合(自己実現)の物語であるとも言える。それを象徴するのがラストシーン。まず丘を登ってくる妹・美加(石田ひかり)をカメラが正面から捉える。次のショットで歩き去ってゆく後ろ姿を捉えるのだが、よくよく観るとそれは姉・千津子(中嶋朋子)なのだ。ふたりでひとり。実は、僕も初めてこの作品に出会ってから10年間くらい全く気が付かなかった。その間、繰り返し観ていたのに。このシーンで流れ出すのが大林宣彦作詞、久石譲作曲の主題歌「草の想い」。名曲中の名曲である。大林監督と久石さん本人が歌う。

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僕にとって我が生涯ベスト・ワンである大林宣彦監督「はるか、ノスタルジィ」も似たような構造を持っている。東京で小説家になった中年の主人公・綾瀬慎介(ペンネーム)は数十年ぶりに故郷・小樽を訪ねる。そこでバンカラ姿の学生・佐藤弘に出会う。それは青年時代の慎介そのものだった(佐藤弘は本名)。これはユング心理学でいうところの無意識に存在する子供元型(The Child Archetype)に遭遇する物語であり、最後に自我(意識)と元型(無意識)は融合され、自己実現に至る。どんなに年令を重ねても、人は変われるのだ。

僕が映画「廃市」と出会ったのは18歳だった。それから原作者・福永武彦の文学にのめり込み、20代の時に全小説を読破した。大林監督がライフワークとしていた福永の小説「草の花」映画化が実現しなかったことが無念で仕方ない。

幕が上がる」は全国高等学校演劇大会という特殊な世界が描かれている。火傷するくらい熱いぞ!

京都府立医科大学を卒業した大森一樹監督「ヒポクラテスたち」は医学生たちの群像劇。僕は高校生の時にこれを観て、「医学部って面白そう」と興味を持ち、進学を決めた。そして現在は医学博士である。やはり医師免許を持つ手塚治虫が映画で小児科教授を演じ(学生のひとりが手塚漫画「ブラック・ジャック」を読んでいたりもする)、怪盗役で映画監督の鈴木清順が登場する。

「太陽の少年」は中国映画の傑作。岩井俊二監督「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」に通じるものがある。

Lesaventuriers

「冒険者たち」はフランスのフィルム・ノワール。でも暗黒ではなくロマンティック。なんと言っても口笛で奏でられる〈レティシアのテーマ〉!→こちら

ジョン・ヒューズ監督「ブレックファスト・クラブ」は恐らく世界で初めてスクール・カーストを描いた映画だと思う。画期的なディスカッションが展開され、ワクワクする。併せて「フェリスはある朝突然に」もどうぞ。映画「デッドプール」の元ネタだ。

「ヤング・ゼネレーション」はアカデミー脚本賞受賞。自転車レースに青春を賭ける若者たちを描く。心に翼を持て。

【恋愛映画】

  • ラ・ラ・ランド
  • 太陽がいっぱい
  • Love Letter(岩井俊二監督)
  • ボヴァリー夫人(ヴィンセント・ミネリ監督)
  • ライアンの娘
  • ある日どこかで
  • フォロー・ミー
  • いつも2人で
  • ピアノ・レッスン
  • めまい

「ラ・ラ・ランド」については以下の記事をご参照あれ。

「太陽がいっぱい」はアラン・ドロンが主演した1960年のフランス映画。パトリシア・ハイスミス原作でミステリとしても大傑作なのだが、ゲイ映画という観点で見直すと全く別の物語が浮かび上がってくるという驚くべき仕掛けが施されている。その構造を世界で最初に見抜いたのがテレビ「日曜洋画劇場」の解説を長年勤め、「サヨナラ」おじさんと呼ばれた映画評論家・淀川長治氏で、彼もゲイだった。パトリシア・ハイスミスも同性愛者で偽名を使って「キャロル」を書き、そちらも映画化された。

アラン・ドロンはロミー・シュナイダーと同棲・婚約したり、ナタリー・ドロンと結婚・離婚するなど華麗な女性遍歴があるので多分ストレート(ノン気)なのだろう。しかしバイセクシャルだったイタリアのルキノ・ヴィスコンティ監督から愛され、その切実な想いは「若者のすべて」や「山猫」といった芸術映画に昇華された。ヴィスコンティがアラン・ドロンとロミー・シュナイダー主演で計画していたマルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の映画化が頓挫したことは大変惜しまれる。そして、小説「失われた時を求めて」は岩井俊二の映画「Love Letter」で極めて重要な役割を果たす。映画は繋がっている。「Love Letter」の25年後に撮られた姉妹編「ラストレター」も併せてどうぞ。

ヴィンセント・ミネリの「ボヴァリー夫人」については下記事をお読み頂きたい。狂気が疾走する。

そしてデイヴィッド・リーン監督の名作「ライアンの娘」は「ボヴァリー夫人」を下敷きにしている。

「ある日どこかで」については、

「フォロー・ミー」については、

「いつも2人で」の監督は「雨に唄えば」「シャレード」のスタンリー・ドーネン。キネマ旬報社から発行された「私の一本の映画」という本があり、そこに村上春樹がエッセイを書いたのが本作。彼が高校生の時、当時のガールフレンドと神戸の映画館でこれを観たそうだ。主演はオードリー・ヘップバーンとアルバート・フィニー(「オリエント急行殺人事件」のポアロ役)。中年夫婦の危機を描くが、ふたりの12年間を5つの時間軸が交差する形で描く凝った構成になっている。何より僕は"Two for the Road"という原題が好き!味がある。

ホリー・ハンターがアカデミー主演女優賞を受賞し、カンヌ国際映画賞では最高賞のパルム・ドールに輝いたフランス、ニュージーランド、オーストラリアによる合作映画「ピアノ・レッスン」の主人公エイダを一言で評するならば〈女ヒースクリフ〉。本作が描いているのはエミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」と同じ、狂恋。不用意に触ると火傷する。だから「嵐が丘 」を事前に読んでおくことは必須。ジェーン・カンピオン監督にはいつか映画「嵐が丘」を撮って貰いたい。

Vertigo

「めまい」はアルフレッド・ヒッチコック監督の最高傑作。過去の女の記憶に囚われて目の前の女を愛すことが出来ず、自分の持つ理想像(ユング心理学におけるアニマ・アニムス)を投影してそれに女を近づけようと画策する男の異常心理を描いている。これは大林宣彦監督「時をかける少女」冒頭に掲げられるテロップと、密接な関係がある。

ひとが、現実よりも、
理想の愛を知ったとき、
それは、ひとにとって、
幸福なのだろうか?
不幸なのだろうか?

【深く人生を考える/哲学的映画】

  • メッセージ
  • 桐島、部活やめるってよ
  • タクシー・ドライバー
  • ブレードランナー
  • 山の音
  • 市民ケーン
  • イヴの総て
  • サンセット大通り
  • カビリアの夜
  • ベニスに死す
  • ピクニック at ハンギング・ロック
  • いまを生きる
  • 生きる(黒澤明監督)
  • ミツバチのささやき/エル・スール
  • ギルバート・グレイプ
  • フィールド・オブ・ドリームス

SF映画「メッセージ」は時間とは何か?を深く考えさせてくれる。そして思考はその人が学んだ言語と密接に結びついているという説が非常に興味深かった。これを〈サピア=ウォーフの仮説(言語相対性仮説)〉という。あと〈非ゼロ和 non zero sum〉!

桐島、部活やめるってよ」はキネマ旬報ベストテンで第2位、ヨコハマ映画祭では作品賞・監督賞など4冠を獲得した。高校生ではちょっと難しいかも知れない。ある意味フェデリコ・フェリーニ監督「甘い生活」に似たところがある。正直僕も高校生の時に「甘い生活」に歯が立たなかったからね。真の傑作だと漸く理解出来たのは40歳くらい。まぁ挑戦してみて。時には背伸びしてみることも必要、当たって砕けろ!だ。

「タクシー・ドライバー」はベトナム帰りの元兵士が主人公なので、社会派ジャンルとも言える。

「ブレードランナー」(1982)は近未来都市のヴィジュアル造形が秀逸。ただ映画の設定は2019年11月なので、既に現実が追い越しているのだけれど。本作には、レプリカント(人造人間/人工知能)は人の心を持てるのか?という問いがある。主人公デッカードが人なのか、レプリカントなのか?ということもしっかり考えてみてください。「メッセージ」のドゥニ・ヴィルヌーブ監督が撮った続編「ブレードランナー 2049」も傑作。

川端康成原作「山の音」は鎌倉を舞台に初老の男(山村聡)が息子の嫁(原節子)に対して抱く、淡い恋心を繊細に描いている。死への恐怖、そして色恋沙汰に進展するかどうかの境界で揺れ動く心理描写が絶妙。大人の世界を垣間見よう。

「市民ケーン」といえば〈バラのつぼみ Rosebud〉。これは隠れキリシタンをテーマとする遠藤周作原作、マーティン・スコセッシ監督「沈黙 -サイレンス-」のラストシーンにも引用されている。

アカデミー作品賞・監督賞・脚本賞などを受賞した「イヴの総て」は食うか食われるかという、芸能界における生存競争の苛烈さを、鮮やかに描いている。これを下敷きにしたのがポール・バーホーベン監督「ショーガール」で、こちらの方は最低の映画を選ぶラジー(ゴールデン・ラズベリー)賞で7部門を制覇した。

ビリー・ワイルダー監督「サンセット大通り」は後世の映画に多大な影響を与えた。例えばロバート・アルドリッチ監督「何がジェーンに起ったか?」とか、デヴィッド・リンチ監督「マルホランド・ドライブ」は、完全に「サンセット大通り」のヴァリエーションである(そもそもマルホランド・ドライブとサンセット・ブルーバードはどちらもロサンゼルスを走る道路の名称)。また死者が語り始めるという手法はサム・メンデス監督「アメリカン・ビューティ」(アカデミー作品賞・監督賞受賞)に引き継がれた。

「ベニスに死す」については、次のようなことを書いた。

「ピクニック at ハンギング・ロック」については下記。

「いまを生きる」はこちら。

黒澤明「生きる」は進行がん患者への病名告知やquality of lifeの問題をテーマとしている。

「ミツバチのささやき/エル・スール」については、

「ギルバート・グレイプ」は当時未だ10代だったレオナルド・デカプリオの演技に注目!時には束縛にもなる家族から解き放たれて、主人公(ジョニー・デップ)が旅立つ物語。

「フィールド・オブ・ドリームス」に登場する作家テレンス・マン(ダース・ベイダーの声で有名なジェームズ・アール・ジョーンズが演じる)は原作小説で「ライ麦畑でつかまえて」のサリンジャーであることは重要。だから映画「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」と併せて観ると、より理解が深まるだろう。

【歴史を知る映画】

  • 大いなる西部
  • 死刑執行人もまた死す
  • 大いなる幻影
  • 灰とダイヤモンド
  • 無防備都市
  • 第三の男
  • アンネの日記
  • アラビアのロレンス
  • ドクトル・ジバゴ
  • 僕の村は戦場だった
  • ひとりぼっちの青春
  • さらばわが愛/覇王別姫
  • 善き人のためのソナタ

イタリア映画「無防備都市」はネオレアリズモの代表選手。大きな歴史のうねりとしてネオレアリズモ(イタリア)の精神は→ヌーヴェル・ヴァーグ(フランス)→アメリカン・ニューシネマと伝播した。共通する志は〈既成の価値観・体制の破壊〉である。ハリウッドで「無防備都市」を観て感激したイングリッド・バーグマンは直ちにロベルト・ロッセリーニ監督にファン・レターを書き、夫や娘を捨ててローマに旅立った。一大スキャンダルになったことは言うまでもない。イングリッドとロベルトの間に生まれたのがイザベラ・ロッセリーニで、長じて女優となり「ブルーベルベット」や「フィアレス」などに出演した。イングリットも〈既成の価値観の破壊者〉であった。

「第三の男」は第二次世界大戦後、敗戦国オーストリア(首都:ウィーン)が勝者である連合国ーアメリカ、ソ連、イギリス、フランスの4国によって分割統治されていた時代のお話。白黒映像美の極致。

「アンネの日記」は1959年にジョージ・スティーヴンスが監督・製作したもの。アンネを演じたミリー・パーキンスが素晴らしい!1995年に日本が製作したアニメーション版もあるが、こちらはイマイチ。但し、マイケル・ナイマンによる音楽は◯。

「ひとりぼっちの青春」の原題は"They Shoot Horses, Don't They?"つまり「彼らは廃馬を撃つ」。1932年、大恐慌時代の悲惨を描くアメリカン・ニューシネマの傑作。ここでアメリカン・ニューシネマについて説明しておこう。1960年代後半から1970年代前半までのムーブメントで、ベトナム戦争に対する反戦運動や、ヒッピー文化と連動している。反抗的な若者が体制に敢然と闘いを挑むのだが、最後は大人・社会に圧殺されるなど、悲劇的な結末で幕を閉じる。基本的に挫折する物語だ。「俺たちに明日はない」「明日に向って撃て!」「イージー・ライダー」が代表格。

カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝いた「さらばわが愛/覇王別姫」が描くのは中国・文化大革命の悪夢。コン・リーとレスリー・チャン最高。また、僕たちが知らない京劇の世界を垣間見ることができる。

ドイツ映画「善き人のためのソナタ」はアカデミー外国語映画賞を受賞。冷戦時代の東ドイツが舞台で、監視社会の実像に迫る。

【コメディ/ブラック・ユーモア】

  • 雨に唄えば
  • プロデューサーズ
  • 博士の異常な愛情
  • まぼろしの市街戦
  • チャップリンの独裁者
  • 恋はデジャ・ブ
  • 生きるべきか死ぬべきか

フランス映画「まぼろしの市街戦」(1966)は第一次世界大戦末期、フランスの田舎町が舞台。人々が町から逃亡し、取り残された精神病院の患者たちと、町を取り巻く軍隊の人間と、どちらが〈狂気〉でどちらが〈正気〉なのかという問いが本作にはある。

「恋はデジャ・ブ」(1993)の原題はGroundhog Day。Groundhogはウッドチャックを意味し、2月2日に開催される春の訪れを予想する占い行事のこと。 ある一日をエンドレスに繰り返す男の話である。ビル・マーレイがすっとぼけた、いい味を出している。同じネタで押井守監督「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(1984)という先達があり、こちらも傑作。さらに派生作品として京アニ「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンドレスエイト(第12-19話)や、「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ【新編】叛逆の物語」がある。こうしたループものとして、ケン・グリムウッドのSF小説「リプレイ」が有名だが、1987年の出版であり、やはり「ビューティフル・ドリーマー」が元祖と言えるだろう。

【社会を知る映画】

  • 真昼の暗黒
  • 橋のない川 
  • バトル・ロワイアル
  • ブラッド・ダイヤモンド
  • シティ・オブ・ゴッド
  • 風の丘を越えて/西便制
  • トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
  • 殺人の追憶
  • パラサイト 半地下の家族

「真昼の暗黒」(1956)は冤罪事件を扱う。橋本忍のシナリオが秀逸。

部落差別を扱う「橋のない川」は1969-70年の今井正監督版(第一部・第二部)と、1992年東陽一監督版がある。どちらも見応えあり。

「バトル・ロワイアル」(2000)は劇薬だ。中学生どうしが国家命令により殺し合いをするという衝撃的な内容で、R-15指定のため中学生は劇場で観ることが出来なかった。公開当時、この映画に対する政府の見解を求める質疑が国会で行われるなど物議を醸した。そもそも高見広春が書いた原作自体、日本ホラー小説大賞の最終候補まで残るが、選考委員から猛烈な非難を浴び落選した。その後高見は一切作品を発表していない。深作欣二監督は太平洋戦争中、学徒動員に駆り出されたときの「国家への不信」「大人への憎しみ」といった自分の想いを本作に託した。

レオナルド・ディカプリオ主演「ブラッド・ダイヤモンド」を観れば、アフリカは地獄だ、と思い知るだろう。

「シティ・オブ・ゴッド」はブラジルに住むストリートチルドレンたちの抗争を描く。

韓国映画「風の丘を越えて/西便制」では朝鮮文化における恨(ハン)という感情について学ぼう。

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」は赤狩りの勉強として。本作の後でダルトン・トランボがシナリオを書いた「ローマの休日」や「パピヨン」(1973年版)を鑑賞しよう。隠された寓意が見えてくる。

アカデミー作品賞・監督賞・国際長編映画賞を受賞した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が光を当てるのは格差社会である。

【アニメーション映画】

「秒速5センチメートル」については以下を参照されたし。

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【2020年最新版】選定!中学生に観せたい映画・アニメ

選定!中学生に観せたい映画」という記事を書いたのが2013年。あれから7年経過した。些か内容が古びた感があるので、ここでアップデートすることにした。新型コロナウィルスで非常事態宣言が発令され、遊びに出ることもままならない子どもたちを持て余している親御さんも少なくないだろう。何かの参考になれば幸いである。

新しい作品を優先して選んだが、「これだけは絶対に落とせない!」という古典的名作も残している。なお、過去にレビューを書いている作品は、タイトルをクリックすると該当記事に飛ぶようにしている。気に入るかどうかに性差があると思われる作品には男の子向け/女の子向けを明記した。

まずは基本中の基本、実写部門BEST 10。

ここで紹介している「ちはやふる」は広瀬すず主演の実写映画だが、テレビ・アニメ(シリーズ)版も良い。競技かるたと百人一首(和歌)の世界を垣間見よう。

蜜蜂と遠雷」は音楽映画の傑作中の傑作。恩田陸の原作小説も併せて読みたい。

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「遠い空の向こうに」の原題はOctober Skyで、アルファベットの順番を入れ替えると原作小説のタイトルRocket Boysになる。アナグラムだ。NASAの技術者になったホーマー・ヒッカムの自伝である。

「リトル・ダンサー」(原題:ビリー・エリオット Billy Elliot)は後に舞台化され、トニー賞でミュージカル作品賞・演出賞など10部門を独占した。「ビリー・エリオット ミュージカルライブ/リトル・ダンサー」というタイトルでBlu-ray/DVDが発売されている。男らしさ/女らしさ って、一体何?という問いが本作にはある。映画の最後に名ダンサー、アダム・クーパーが踊るのにも注目!

沈黙 -サイレンス-」は遠藤周作原作。篠田正浩監督版もあるが、マーティン・スコセッシ監督版の方が俄然出来が良い。キリシタン弾圧の歴史を学ぼう。

おくりびと」では死と向き合うことで、生についてしっかり考えよう。

舟を編む」は辞書編纂という作業を通して、日本語について学べる。

ドリーム」は邦題が酷い。原題は"Hidden Figures"つまり「隠された姿」という意味で、NASAでアポロ計画に先立つマーキュリー(有人宇宙飛行)計画に携わった3人の黒人女性にスポットライトを当てる。「ライト・スタッフ」と併せて観ることで、より深く味わうことが出来るだろう。

英国王のスピーチ」はアカデミー作品賞・監督賞を受賞。人前で上手に話すコツが詰まっている。そして、吃音の原因として幼児虐待があることを教えてくれる。

ゼロ・グラビティ」は宇宙を舞台にしているが、物語構造は受精卵→胎児→誕生のメタファーとなっており、同時に海洋生物が陸に上がり、直立歩行するまでの人の進化についても語っている(人間の胎児は進化の過程を繰り返すー反復説)。

続いてBEST 20まで。

シン・ゴジラ」はダイアログの洪水。繰り返し観て社会勉強をしよう。

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「大人は判ってくれない」の切実さを理解するのは中学生には難しいかも知れない。しかし将来きっと判る日が来る。諦めないで。

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 」と「スタンド・バイ・ミー」は精神的に繋がっている。原作者が同じスティーヴン・キングだしね。そしてNetflixのドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」も、J・J・エイブラムス監督「SUPER 8/スーパーエイト」も「スタンド・バイ・ミー」なくして生まれなかった。

アカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画「ボーリング・フォー・コロンバイン」は銃社会アメリカについて考えさせられる。

ファースト・マン」はアポロ11号の船長ニール・アームストロングを主人公とする実話。トム・ハンクスが主演した「アポロ13」も併せて観よう。

ソロモンの偽証」は宮部みゆき原作のミステリ。中学生たちが主人公で、学校内裁判を開廷するという展開がユニーク。

Ganba

「がんばっていきまっしょい」は愛媛県松山市の高校を舞台に、ボート部の活動に打ち込む5人の女子高校生たちの姿を描いた物語。テレビドラマにもなった(放送途中で内博貴が不祥事を起こし降板、第4話から役者が変わった)。これに似た青春映画として「幕が上がる」とか「青春デンデケデケデケ」「ヤング・ゼネレーション」も取り上げたかったのだが、どちらかといえば高校生向きかなと思い直した。特に高校演劇を扱う「幕が上がる」なんか、ニッチでディープだからね。

尾道三部作「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」は言わずと知れた大林宣彦監督の名作中の名作。まずは黙って観ろ!後悔なんてさせないから。

Senjo

1917 命をかけた伝令」と「戦場の小さな天使たち」は、戦争とは何か?について学ぶテキストとして最適。残酷描写もないしね。

さらにBEST30。

グローリー ー明日への行進ー」を観て、マーティン・ルーサー・キング牧師のことを知ろう。その際、是非キング牧師の歴史的なスピーチ"I Have A Dream"も勉強しよう。動画はこちら!併せてアカデミー作品賞・監督賞を受賞した「ガンジー」も観ておきたい。

「インファナル・アフェア」は香港映画の金字塔。フィルム・ノワールの大傑作で後にハリウッドでリメイクされた。→マーティン・スコセッシ監督「ディパーテッド」

「不都合な真実」は地球温暖化について学べるドキュメンタリー映画。アカデミー賞受賞。

北野武監督の「キッズ・リターン」はラストの決め台詞に痺れろ!中学生たちよ、大志を抱け。

あと古典的名作として、

  • 風と共に去りぬ
  • 嵐が丘(1939年版)
  • カサブランカ (男の子)
  • ローマの休日 (女の子)
  • 赤い靴 (女の子)
  • 七人の侍 (男の子)
  • アラバマ物語
  • シベールの日曜日
  • まぼろしの市街戦
  • 屋根の上のバイオリン弾き
  • ハロルドとモード/少年は虹を渡る
  • ゴッドファーザー/ゴッドファーザー PART Ⅱ
  • 砂の器
  • ジョーズ
  • 未知との遭遇
  • ロッキー
  • ポセイドン・アドベンチャー
  • タワーリング・インフェルノ
  • バックドラフト
  • アマデウス
  • ショーシャンクの空に
  • 櫻の園(1990年版) (女の子)
  • ターミネーター/ターミネーター2 (男の子)
  • リング/仄暗い水の底から

を推しておく。

「櫻の園」は1990年版と2008年版があるので要注意。中島ひろ子やつみきみほが出演している方。キネマ旬報ベスト・ワンに輝いた。

エミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」は繰り返し映画化されており、松田優作主演で舞台を鎌倉時代の日本に置き換えたバージョンまである。僕の一押しはウィリアム・ワイラー監督版。これをハリウッドで撮っていたローレンス・オリヴィエを追っかけてヴィヴィアン・リーが英国から渡米。その時なかなか決まらなかった「風と共に去りぬ」スカーレット・オハラ役をオーディションで勝ち取るという伝説を生んだ。

フランス映画「まぼろしの市街戦」(1966)は第一次世界大戦末期、フランスの田舎町が舞台。人々が町から逃亡し、取り残された精神病院の患者たちと、町を取り巻く軍隊の人間と、どちらが〈狂気〉でどちらが〈正気〉なのかという問いが本作にはある。

「ジョーズ」は当初小学生向けにお勧めしようかと考えたのだが、これを観て水恐怖症になったという人の話を聞き対象年齢を上げた。本多猪四郎監督「マタンゴ」を幼少期に観てキノコが食べられなくなったという人もいて、正にトラウマ映画だね。

「未知との遭遇」については下記事をお読みください。

「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」はパニック映画(Disaster Movies)の代表作。他に「大空港」がある。

そして長編アニメーション映画部門。

テレビ・アニメ(シリーズ)

「君の名は。」については過去に当ブログで語り尽くした。

「天気の子」は以下の通り。

「風立ちぬ」については下記。

〈大切なことは言葉にならない〉〜「海獣の子供」の名台詞。

Maimai

マイマイ新子と千年の魔法」は「この世界の片隅に」の片渕須直監督作品。高校生になったら「この世界の片隅に」も観よう。

響け!ユーフォニアム」2nd seasonは既視(マンネリ)感が強いので、1st seasonのみで十分だろう。続いてスピンオフ「リズと青い鳥」を観よう。

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【2020年最新版】選定!小学生に観せたい映画・アニメ

選定!小学生に観せたい映画」という記事を書いたのが2013年。あれから7年経過した。些か内容が古びた感があるので、ここでアップデートすることにした。新型コロナウィルスで非常事態宣言が発令され、遊びに出ることもままならない子どもたちを持て余している親御さんも少なくなかろう。何かの参考になれば幸いである。

近日中に「【2020年最新版】選定!中学生に観せたい映画・アニメ」も上げる予定なので、乞うご期待。

新しい作品を優先して選んだが、「これだけは絶対に落とせない!」という古典的名作も残している。なお、過去にレビューを書いている作品は、タイトルをクリックすると該当記事に飛ぶようにしている。気に入るかどうかに性差があると思われる作品には男の子向け/女の子向けを明記した。

まずは基本中の基本、実写部門BEST 10。

  • オズの魔法使い
  • やかまし村の子どもたち/やかまし村の春夏秋冬
  • スター・ウォーズ エピソード4-6 (男の子)
  • E.T.
  • リトル・プリンセス (女の子)
  • ハリー・ポッター(シリーズ)
  • サウンド・オブ・ミュージック (3・4年生以上)
  • パディントン/パディントン2
  • 美女と野獣
  • シンデレラ (女の子)

ハーマイオニーこと、エマ・ワトソンが主演したディズニー映画「美女と野獣」(2017)と、絶世の美女リリー・ジェームズが主演した「シンデレラ」(2015)は勿論アニメ版もあるが、こちらは実写版。また「美女と野獣」アニメ版(1991)はアニメーション映画史上初めてアカデミー作品賞にノミネートされた名作中の名作(これを契機に長編アニメーション部門が新設された)。

Oz

ジュディ・ガーランド主演「オズの魔法使い」はスティーブン・スピルバーグ監督が新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために自宅隔離している人々に向けて、お勧めの一本として選んだ作品。詳細はこちら。キーとなる台詞は"There's no place like home."(わが家にまさるところなし)。

「やかまし村」二部作はスウェーデンのラッセ・ハルストレム監督で、原作は児童文学作家アストリッド・リンドグレーン。「長く下のピッピ」が有名。実は高畑勲と宮崎駿は「長くつ下のピッピ」のアニメーション映画化を準備していたが原作者からの許可が降りず、いくつかの設定を流用して製作したのが「パンダコパンダ/パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻」なのだ。

「リトル・プリンセス」のアルフォンソ・キュアロンは後に「ゼロ・グラビティ」と「ローマ」で2度アカデミー監督賞を受賞。撮影監督のエマニュエル・ルベツキは3年連続でアカデミー撮影賞を受賞した。緑が美しい。「女の子はみんな、プリンセスなのよ」

「ハリー・ポッター」は第一作「賢者の石」から第三作「アズカバンの囚人」まで観れば十分だろう。「アズカバンの囚人」はキュアロンが監督している。

続いて実写BEST 20に入るのは、

さらに白黒映画だが、チャップリンの「モダン・タイムズ」や、心温まるクリスマス物語「素晴らしき哉、人生!」も是非観ておきたい名作である。そして特撮もので忘れてはいけないのが平成ガメラ三部作(「ガメラ 大怪獣空中決戦」「ガメラ2 レギオン襲来」「ガメラ3 邪神覚醒」)。

「禁じられた遊び」は子どもたちに、戦争とは何か?を教える教材として極めて重要。

「赤い風船」と「白い馬」はフランスのアルベール・ラモリスが監督したファンタジー映画の秀作。「素晴らしい風船旅行」という素敵な作品もある。

イギリス映画「小さな恋のメロディ」(1971)は既に欧米ですっかり忘れ去られているが、日本でだけ大ヒットして未だに愛されているという不思議な映画。トレイシー・ハイドとマーク・レスターが大変魅力的。あとビー・ジーズの音楽!

マイライフ・アズ・ア・ドッグ」はラッセ・ハルストレムがスウェーデン時代に撮った名作で、人工衛星に乗せられて地球最初の宇宙旅行生物になったライカ犬の話が出てくる。ハルストレムは相当な犬好きらしく、ハリウッドに進出してからも「HACHI 約束の犬」とか「僕のワンダフル・ライフ」を撮っている。

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」は後にアニメ版が制作されたが、こちらは岩井俊二が監督したオリジナル実写版。僕は奥菜恵に胸を射抜かれた。

「GODZILLA ゴジラ」はギャレス・エドワーズが監督した2014年ハリウッド版。ローランド・エメリッヒが監督した1998年版は救いようのない駄作なので絶対に間違わないで!!本来なら本多猪四郎(監督)・円谷英二(特技監督)の1954年オリジナル版を観て欲しいところだが、古い白黒映画だからねぇ……。

「パシフィッ・リム」も怪獣映画。ギレルモ・デル・トロ監督は後に半魚人を主人公とする「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー作品賞・監督賞受賞という快挙を成し遂げた。

レディ・プレーヤー1」はゲーム感覚で楽しめるが、出来れば事前にスタンリー・キューブリック監督「シャイニング」をご覧になっておかれることをお勧めする。

他にも色々あるので旧版「選定!小学生に観せたい映画」も併せてご覧頂きたい。

では、長編アニメーション部門に移ろう。まずBEST 10。

ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」はアイルランドのスタジオ、カートゥーン・サルーンの作品。ケルト神話を題材にしているのがとっても素敵。後で紹介するテレビ・シリーズ「ウーナとババの島」(Netflix)もここが手掛けた。

ティム・バートンのダーク・ファンタジー「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」と併せて、「フランケンウィニー」も是非どうぞ。

怪盗グルー(シリーズ)」の魅力はなんと言ってもサブキャラのミニオンズだろう。

続いてBEST 20は、

さらにBEST30。

「メトロポリス」は手塚治虫原作で、監督が「銀河鉄道999」のりんたろう、脚本が「AKIRA」の大友克洋という強力な布陣。全米で最も影響力のある映画評論家といわれたロジャー・イーバートは満点評価である4つ星を与え、アニメ史上最高の作品の一つであると称えた。

ここまでに入り切らなかった古い名作を下にまとめた。

  • 太陽の王子ホルスの大冒険
  • 空飛ぶゆうれい船
  • パンダコパンダ/パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻
  • ふしぎの国のアリス
  • ダンボ
  • くまのプーさん (1977年完全保存版/2011年版)
  • ルパン三世カリオストロの城
  • 機動警察パトレイバー the movie 1・2
  • アラジン
  • ライオンキング
  • アイアン・ジャイアント
  • ウォレスとグルミット 短編三部作

クレイアニメ「ウォレスとグルミット」短編三部作とは「チーズ・ホリデー」「ペンギンに気をつけろ!」「危機一発!」を指す。長編の「野菜畑で大ピンチ!」は詰まらない。

パンダコパンダ/パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻」は「となりのトトロ」の原点であり、街が水没する設定は「崖の上のポニョ」に流用されている。

最後にテレビ・アニメ(シリーズ)もいくつかご紹介しておこう。

宇宙よりも遠い場所」はニューヨーク・タイムズの「ベストTV 2018 インターナショナル部門」(The Best International Shows)に選出、激賞された。Netflixで配信中。京アニの「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」もNetflixで観れます。

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新型コロナで引きこもっている貴方へー2000年以降の映画ベスト60!おまけでTVアニメ・ベスト10!

新型コロナウィルスが世界的に猛威をふるい、外出を控えている方も多いだろう。こんな時はDVD/Blu-rayやNetflix,Amazonプライム・ビデオなど動画配信サービスで映画を観たい気持ちになる。そんな貴方にお勧めの作品をご紹介しよう。

定義としては2000年1月〜2019年12月末の間に、製作された国で公開された映画を対象とする。例えば「パラサイト 半地下の家族」は日本で2020年1月の公開だが、韓国では2019年に公開されたので候補となる。

ここで20年単位で映画史を最初から振り返ってみよう。

  • 1900-1919:黎明期。メリエス「月世界旅行」、グリフィス「イントレランス」など。
  • 1920-1939:モンタージュ理論の確立(エイゼンシュテイン「戦艦ポチョムキン」)。サイレント(無声)映画の成熟と終焉、トーキーの台頭。チャップリン、キートン、ロイドら三大喜劇王からローレル&ハーディ、マルクス兄弟の時代へ。ミュージカル映画が花盛り。そして39年「風と共に去りぬ」で最高潮へ!
  • 1940-1959:戦争を経て映画の黄金期到来。ハリウッドではワイラー、ワイルダー、ヒッチコック、フォード、ホークスら巨匠たちが精力的に活躍し、ディズニー・アニメも頂点を極めた。一方で赤狩りという暗い影も。日本では黒澤明、溝口健二、小津安二郎、木下惠介らが最も脂が乗っていた時代。イタリアではネオレアリズモ(ロッセリーニ、デ・シーカ、ヴィスコンティ)が盛んに。白黒→カラー、スタンダード→ワイドスクリーン(シネスコ、ビスタビジョン〉へ。
  • 1960-1979:テレビの台頭とともに映画産業は斜陽に。大手スタジオは衰退、撮影機材の軽量化でカメラは撮影所を飛び出して街へ!フランス・ヌーヴェルヴァーグ(トリュフォー、ゴダール、レネ、マル)、松竹ヌーヴェルヴァーグ(大島渚、吉田喜重、篠田正浩)、日活ヌーヴェルヴァーグ(中平康、川島雄三)、大映ヌーヴェルヴァーグ(増村保造、鈴木清順)、独立プロの隆盛(近代映画協会、新生映画社、新東宝など)、ATG(日本アート・シアター・ギルド)設立。アヴァンギャルドの時代。アメリカはベトナム戦争、ヒッピー文化と並行してニューシネマへ。既成の価値観の否定・破壊。音楽はフォーク・ソングやロックンロール主体に。
  • 1980-1999:ヨーロッパ映画やニューシネマの衰退。77年の「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」を経てルーカス、スピルバーグが時代を席巻。ハリウッド・ルネッサンス期到来、オーケストラ演奏によるゴージャスな劇伴復活。メグ・ライアン主演のロマンティック・コメディが花盛り。ハーヴェイ・ワインスタインがミラマックスという帝国を築く(「イングリッシュ・ペイシェント」「恋におちたシェイクスピア」でアカデミー作品賞受賞)。日本では角川映画の台頭、メディアミックス。大林宣彦、大森一樹、森田芳光ら自主映画出身監督が主流に。ぴあフィルムフェスティバル(PFF)アワードの時代。そしてバブル期(ホイチョイ・プロダクション「私をスキーに連れてって」「彼女が水着にきがえたら」「波の数だけ抱きしめて」、桑田佳祐「稲村ジェーン」、小田和正「いつか どこかで」、村上龍「ラッフルズホテル」、椎名桜子「家族輪舞曲」)を経てバブル崩壊。90年代は浮ついた、軽薄な時代だった。

では2000年以降の20年間はどういう時代だったのだろう?僕が選んだ代表作は以下の通り。リンクを張ってあるものは、タイトルをクリックすれば各々のレビューに飛ぶ。

  1. 君の名は。 (2016) 日本
  2. 風立ちぬ (2013) 日本
  3. 千と千尋の神隠し (2001) 日本
  4. ラ・ラ・ランド (2016)
  5. 蜜蜂と遠雷 (2019) 日本
  6. パラサイト 半地下の家族 (2019)
  7. ダークナイト (2008)
  8. 秒速5センチメートル (2007) 日本
  9. 桐島、部活やめるってよ (2012) 日本
  10. インファナル・アフェア (2003)
  11. 天気の子 (2019) 日本
  12. 花筐/HANAGATAM (2017) 日本
  13. マルホランド・ドライブ (2001)
  14. 殺人の追憶 (2003)
  15. インセプション (2010)
  16. 告白 (2010)  日本
  17. 1917 命をかけた伝令 (2019)
  18. シカゴ (2002)
  19. ソーシャル・ネットワーク (2010)
  20. ボウリング・フォー・コロンバイン (2002)
  21. そして父になる (2013) 日本
  22. ペンギン・ハイウェイ (2018) 日本
  23. パンズ・ラビリンス (2006)
  24. ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (2003)
  25. ハート・ロッカー (2008)
  26. ゼロ・グラビティ (2013)
  27. メッセージ (2016)
  28. ソング・オブ・ザ・シー 海のうた (2014)
  29. おくりびと (2008) 日本
  30. 舟を編む (2013) 日本
  31. オールド・ボーイ (2003)
  32. ダンケルク(2017)
  33. シン・ゴジラ (2016) 日本
  34. 時をかける少女 (2006) 日本 ←細田守監督アニメ版
  35. 別離 (2011)
  36. グリーン・デスティニー (2000)
  37. バトル・ロワイヤル (2000) 日本
  38. 沈黙 -サイエンス- (2016)
  39. 007 スカイフォール (2012)
  40. 海獣の子供 (2019) 日本
  41. ハリーポッターとアズカバンの囚人 (2004)
  42. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲 (2001) 日本
  43. マッドマックス 怒りのデス・ロード (2015)
  44. ゆれる (2006) 日本
  45. 野のなななのか (2014) 日本
  46. 八日目の蝉(2011)日本
  47. GO (2001) 日本
  48. はじまりのうた (2013)
  49. ツリー・オブ・ライフ (2011)
  50. マン・オン・ワイヤー (2008)
  51. DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on
    少女たちは傷つきながら、夢を見る (2012) 日本
  52. なごり雪 (2002) 日本
  53. アナと雪の女王 (2013)
  54. ビール・ストリートの恋人たち (2018)
  55. Mr.インクレディブル (2004)
  56. シティ・オブ・ゴッド (2003)
  57. 英国王のスピーチ (2010)
  58. 華麗なるギャツビー (2013)
  59. A.I. (2001)
  60. パシフィック・リム (2013)
  61. 不都合な真実 (2006)
  62. 呪怨 (2000) 日本

総じて、いくつかの特徴を挙げられるだろう。

  • 日本のアニメーションの質の高さが、世界的に認知されるようになった。今や宮崎駿の名を知らない映画人なんて皆無だろう。新海誠の名も浸透しつつある。
  • アジア映画の世界進出。それを象徴する事件が韓国「パラサイト 半地下の家族」のアカデミー作品賞・監督賞受賞だ。また台湾のアン・リーは「ブロークバック・マウンテン」と「ライフ・オブ・パイ/虎と漂流した227日」で2度アカデミー監督賞を受賞し、中国のチャン・イーモウが監督した「HERO 英雄」や「LOVERS」など武侠映画も世界的に大ヒットした(しかしマット・デイモンを主演に迎えた「グレートウォール」は惨憺たる失敗に終わった)。「リング」「呪怨」「仄暗い水の底から」などJ(ジャパニーズ)ホラーも立て続けにハリウッド・リメイクされた。あと「ゴジラ」が2回目のハリウッド・リメイクされ、デル・トロ監督「パシフィック・リム」ではKaijuたちが大暴れした。
  • #MeToo運動が盛り上がり、ハーヴェイ・ワインスタインが逮捕された。帝国の滅亡。
  • 女性監督(「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」のキャスリン・ビグロー、「ゆれる」「夢売るふたり」の西川美和、「グローリー ー明日への行進ー」のエヴァ・デュヴァネイ)や黒人監督(「ムーンライト」「ビール・ストリートの恋人たち」のバリー・ジェンキンス 、「ゲット・アウト」「アス US」のジョーダン・ピール )の躍進。
  • SNS時代の到来。「ソーシャル・ネットワーク」「スティーブ・ジョブズ」など。
  • アメリカのアニメーション映画はフルCGに移行した。そして、ジョン・ラセター復帰によるディズニーの完全復活を高らかに世界に宣言したのが「アナ雪」。しかし #MeToo運動の余波を被り、ラセター再び同社から放逐された。一体これからどうなる、ディズニー!?
  • 映画のVFXもCGで何でも出来るようになり、アメコミ映画が隆盛を極めた。しかし逆に感覚が麻痺してしまい、特撮に対する驚きとか新鮮さを感じることがなくなってしまった(アメコミ・ヒーローの病理)。
  • ここ20年くらいで地球の気候が大きく変わったことを実感し、この先どうなるんだろう?と不安を覚えることが多くなった。「天気の子」「不都合な真実」など。

「君の名は。」については過去に当ブログで語り尽くしたので、ここで繰り返さない。

「風立ちぬ」については下記。

多分、客観的に見れば宮崎駿の最高傑作はベルリン国際映画祭で金熊賞、さらにアカデミー長編アニメーション映画賞を受賞した「千と千尋の神隠し」だろう。文句なしだ。しかし「風立ちぬ」の魅力は宮さんが自分の抱える矛盾を肯定したことにある。ダンテ「神曲」を下敷きにしている点でも深みを増した。たとえ悪魔に魂を売り渡そうと、芸術を突き詰めるのだという覚悟に痺れる。

「ラ・ラ・ランド」については以下の記事をご参照あれ。

蜜蜂と遠雷」は言わずと知れた音楽映画の金字塔。

ダークナイト」はジョーカーのキャラクター造形が秀逸。キーワードは虚無と混沌(カオス)。

「インファナル・アフェア」を超える香港映画は今のところない。究極のフィルム・ノワール。マーティン・スコセッシ監督が「ディパーテッド」としてハリウッド・リメイクし、アカデミー作品賞・監督賞を受賞したが、オリジナルの足元にも及ばない。

「マルホランド・ドライブ」はデヴィッド・リンチ監督の最高傑作。ある意味デヴィッド・フィンチャーの「ファイト・クラブ」と似ているとも言える。またビリー・ワイルダー「サンセット大通り」とイングマール・ベルイマン「仮面/ペルソナ」を下敷きにしている。

インセプション」が秀逸なのは登場人物たちが現実と夢(=深層心理・仮想現実)を行き来し、さらに夢を三層に分けたこと。クリストファー・ノーラン監督は間違いなくユング心理学の影響を受けている。

「殺人の追憶」は「パラサイト 半地下の家族」と並び、紛れもなく韓国映画の金字塔。ヒリヒリとして背筋が凍りつく大傑作。ポン・ジュノ監督恐るべし。岩代太郎の音楽も出色の出来。

「ハリーポッターとアズカバンの囚人」はシリーズ三作目にして頂点を築いた。後に二度アカデミー監督賞を受賞する(「ゼロ・グラビティ」「ローマ」)アルフォンソ・キュアロンの美意識が冴え渡る。クリス・コロンバスが監督した一、二作目の出来も悪くない。

アイルランドのダブリン出身ジョン・カーニー監督の「ONCE ダブリンの片隅で」「はじまりのうた」「シング・ストリート 未来へのうた」は三部作となっている。これらが気に入ったら次はAmazon プライムのドラマ「モダン・ラブ 〜今日もNYの片隅で〜」をどうぞ。

DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」は3・11東日本大震災のドキュメンタリーとして秀逸である。あと〈会いに行けるアイドル〉〈地下アイドル〉が日本を席巻した記憶として。しかし2018年末、新潟で活躍するNGT48のメンバーだった山口真帆に対する暴行事件と、その後の運営会社ASKの対応の拙さから、すっかり世間の熱は冷めてしまった。

「呪怨」は奥菜恵や酒井法子が主演した劇場版ではなく、それより先んじて東映ビデオが発売した東映Vシネマ版(元祖)が一番怖い!これね。

続いて、TVアニメ部門。

  1. 魔法少女まどか☆マギカ
  2. コードギアス 反逆のルルーシュ
  3. 四畳半神話大系
  4. 宇宙よりも遠い場所
  5. 進撃の巨人
  6. 響け!ユーフォニアム
  7. ヴァイオレット・エヴァーガーデン
  8. 甲鉄城のカバネリ
  9. ちはやふる
  10. 鬼滅の刃

「四畳半神話大系」の湯浅政明監督は、2020年1月から放送されたアニメ「映像研には手を出すな!」で一世を風靡した。姉妹編として劇場アニメ「夜は短し歩けよ乙女」も併せてどうぞ。どちらもNetflixで配信中。

「宇宙よりも遠い場所」はニューヨーク・タイムズの「ベストTV 2018 インターナショナル部門」(The Best International Shows)に選出、激賞された。Netflixで配信中。

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岩井俊二監督「ラストレター」と新海誠/大林宣彦

評価:A

映画公式サイトはこちら

Last

アニメーション映画「秒速5センチメートル」を初めて観た時に感じたのは、新海誠監督は大林宣彦と岩井俊二の映画が大好きなんだなということ。例えば踏切の場面に「転校生」の影響が感じられる。それは後に「君の名は。」の男女入れ替わりに「転校生」が、タイムリープや終盤の男女のすれ違いに「時をかける少女」が反映されることで確信に変わることになる(「天気の子」で陽菜の体がふっと消え失せるのは「さびしんぼう」だ)。

「秒速5センチメートル」はさらに、岩井の劇場用長編映画第1作 「Love Letter」への熱烈なオマージュがしっかりと刻印されている。特に学校の教室の窓が開いていて、カーテンが風に揺れる場面。そして図書室の貸出カードを触媒として、男女がつながるアイディア。正に「失われた時を求めて」(マルセル・プルースト著)である。

Lost
岩井俊二「Love Letter」より

5cm
新海誠「秒速5センチメートル」より

その後、岩井と新海は急接近し、何度も対談する仲となる。そして岩井はアニメーション映画「花とアリス殺人事件」で"Special thanks to"として新海誠をクレジットし、その返礼として新海は「君の名は。」のエンドロールで岩井俊二の名を挙げた。

新海は「ラストレター」に対して次のような賛辞を送っている。

ラブレターのいくつもの誤配や錯綜が、人生を作っていく。その美しさを教えてくれるのは、傘をさした二人の少女だ。岩井俊二ほどロマンティックな作家を、僕は知らない。

「君の名は。」で声優を務めた神木隆之介と「天気の子」の森七菜が「ラストレター」に出演していることも見逃せない。クロスオーバーだ。共犯関係と言い換えても良い。

「ラストレター」は紛うことなき岩井俊二の集大成である。「Love Letter」で主演した中山美穂と豊川悦司が中盤で登場するし(トヨエツがユング心理学で言うところの、主人公の影 Shadowの役割を果たしているのが面白い)、学校の教室の開いた窓、揺れるカーテン、そして図書室の場面もちゃんと用意されている。

さらに岩井の過去作「四月物語」から松たか子が、岩井が主演した映画「式日」からは監督・庵野秀明が今度は役者として出演している。なお庵野は漫画家役なのだが、彼が仕事中に聴いているのが芥川也寸志が作曲した映画「八甲田山」のサントラというのが粋だね(ガイナックス元代表取締役社長の岡田斗司夫が「庵野は『日本沈没』とか『八甲田山』が好き」と証言している)。試聴はこちら

あと小学生の男の子たちの使い方が「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を彷彿とさせる。そして嗚呼、浴衣姿の広瀬すずと森七菜が、廃校のプールで花火をする場面!「打ち上げ花火」の奥菜恵を想い出して胸がキュンとなった。

岩井俊二は少女が輝く最高の瞬間を掴み取り、フィルムの中に永遠に閉じ込める才能に長けた人である。その代表例が「打ち上げ花火」の奥菜恵であり、「Love Letter」の酒井美紀、「花とアリス」の蒼井優(特にバレエのシーン!)も挙げられよう。今回「ラストレター」の森七菜がそのリストに加わった。

予告編でショパン作曲「別れの曲」が使われていたので、「ラストレター」は大林映画「さびしんぼう」へのオマージュなのか?と僕は予想を立てていた。しかし本編で「別れの曲」は使用されず、代わりに驚くべき仕掛けが待ち受けていた。

「ラストレター」の主人公・鏡史郎(福山雅治)は中年の小説家で東京に住んでいる。彼はふとしたことから古里の仙台に帰る。そこで、初恋の相手・未咲とそっくりの少女・鮎美(広瀬すずが一人二役)に出会う。鮎美は亡くなった未咲の娘だった。

このプロット、実は大林映画「はるか、ノスタルジィ」とそっくり同じなのだ!!「はるか、ノスタルジィ」の綾瀬慎介も小説家であり、両者とも帰郷時にカメラをストラップで首から胸に下げている

また姉妹が登場し、ひとりの男と三角関係になり、姉が死ぬという物語構造は大林映画「ふたり」(赤川次郎 原作)を彷彿とさせる。

岩井は最近、大林監督と親しくしており、「フィルムメーカーズ ⑳ 大林宣彦」(宮帯出版社)に寄稿している。「ラストレター」は実質的に岩井版「はるか、ノスタルジィ」だった。

そして「ラストレター」の鏡史郎と、「はるか、ノスタルジィ」の綾瀬慎介の(ある意味狂気を感じさせる)妄執は、更に遡ってアルフレッド・ヒッチコック監督の「めまい」に接続している。映画は繋がっている。新海誠の言葉を借りるなら〈ムスビ(産霊)〉ということになるだろう

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アナと雪の女王 2

評価:A

Frozenii

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前作のテーマは、「他者と異なる自分の個性を封じ込めて付和雷同するのは止めて、貴方らしく、ありのままに生きなさい(Let It Go)」だった。それはLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)=性的少数者の生きづらさを解消していこうという社会的機運に直結していた(僕はエルサがLGBTだと確信している)。しかし今回は趣向をガラリと変えてきた。テーマはズバリ「生成変化(transform)しないものに価値はない。勇気を持って未知の世界へ(Into the Unknown)一歩踏み出せ!」である。正にそれを象徴するのがエルサがソロで歌う主題歌というわけ。

本作には風・火・水・大地の精霊が登場する。まるでケルト神話だ、と思った。だから「アナと雪の女王2」が作品の雰囲気的に一番近いのは、アイルランドのアニメーション・スタジオ〈カートゥーン・サルーン〉が制作した「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」(トム・ムーア監督)である。日本の八百万神(やおよろずのかみ)信仰やアミニズムにも通ずる世界観であり、たいへん親しみやすい。

「ソング・オブ・ザ・シー」も海の方から聞こえてくる母の歌に子どもたちが導かれるわけで、すごく似ている。

また、オラフが言う「水には記憶がある」という概念がとっても新鮮で、心惹かれた。洞窟でエルサが体験するのは重層的な記憶の集積であり、その豊穣な時間(の結晶)イメージが魅力的。

「我々は記憶において構成されている。我々は幼年期に、青年期に、老年期に、そして壮年期に同時に存在している。」(by フェデリコ・フェリーニ)

時間(結晶)イメージについて詳しくはフランスの哲学者ベルクソンの逆さ円柱モデルを用いて下記事に解説した。ご参照あれ。

ディズニー・スタジオの底力、恐るべし。

Frozensnowman

また前作同様、ロペス夫妻が作詞・作曲した歌の数々も素晴らしい。ただアナの恋人クリストフにもソロ・ナンバーが用意されているのだが、間が持てないというか些かダレるかな。歌はもっと少なくても良かったのでは?

Frozen2

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超平和バスターズ「空の青さを知る人よ」と新海誠・川村元気

評価:B

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超平和バスターズの話からしよう。長井龍雪(監督)・岡田麿里(脚本)・田中将賀(キャラクターデザイン/総作画監督)の3人によるアニメーション制作チーム。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(略称「あの花」。TVシリーズ全11話と劇場版がある)」、「心が叫びたがってるんだ。(略称「ここさけ」)」、「空の青さを知る人よ」に於いて原作としてクレジットされている。3作品共通して、岡田麿里の出身地・埼玉県秩父市が舞台となっている。なお岡田はアニメーション映画「さよならの朝に約束の花をかざろう」(2018)で監督デビューを果たした(脚本兼任)。

入場者プレゼントで田中将賀描き下ろしA4クリアファイルを貰った。上記3作品のヒロインが描かれている。

Chou

僕は真ん中、今回のヒロイン・あおいが一番好きかも。中二病みたいに不貞腐れたところが可愛い。意地張って強がっているところが健気だしね。「あの花」のめんま(ファイル右)はちょっとロリ過ぎて感情移入し辛いし、「ここさけ」の順(ファイル左)はその自閉症的性格が受け入れ難い。

「あの花」「ここさけ」における田中将賀の仕事ぶりを高く評価した新海誠監督は〈今どきの絵〉を描く田中をキャラクターデザイナーに迎え、Z会CM「クロスロード」(動画はこちら)、「君の名は。」「天気の子」でがっぷり四つに組んだ。余談だが「クロスロード」で声優を務めた佐倉綾音は「天気の子」で陽菜の弟・凪(なぎ)の恋人(元カノ)アヤネを演じている。で児童相談所の訪問者記帳時に「花澤綾音」と記名するのだが、これは凪の今カノ・カナを演じた花澤香菜(「言の葉の庭」「君の名は。」のユキちゃん先生)と姓名を交換したもの。さらに言えば映画にクレジットされていないが、花澤香菜は「天気の子」でお天気ガール(=陽菜)にイベントの当日の晴れを依頼する初代プリキュアのコスプレイヤーの声も当てている。以上トリビアでした〜。

Sora

僕は当然、「あの花」「ここさけ」を全て観ていたのだが、正直、超平和バスターズが特に好きというわけではい。映画館で「空の青さ〜」の予告編を何度も観たが食指は動かず、鑑賞する気は毛頭なかった。しかし巷での評判がえらく高かったので、重い腰を上げたというわけ。

〈井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る〉という言葉が重要な役割を果たす。前半は荘子の「秋水篇」にある「井蛙不可以語於海者、拘於虚也」が出典のようだ。しかし後半部の出典は不明。僕が初めてこの成句を聞いたのが、三谷幸喜が脚本を描いた大河ドラマ『新選組!』の第6回「ヒュースケン逃げろ!」。しかし『新選組!』では〈されど空の高さを知る〉だった。三谷幸喜の創作なのかと思ったが、調べてみると河井寛次郎という陶芸家が大正から昭和初め頃に「井蛙知天」と書いたというのが遡ることが出来る最古の記録らしい。何れにせよ日本人の創作ね。言うまでもなく本作において〈井の中〉とは秩父市のメタファーである。

超平和バスターズ原作の中では、今回の物語が一番上出来だったのではないだろうか。これは新たにチームに加わった川村元気の力が大きいように思う。小説家(「世界から猫が消えたなら」「億男」)でもある川村はプロデューサーとして参加した「君の名は。」で新海誠を覚醒させ、大ブレイクに導いた男である。何しろチューニングが巧みだった。そして「天気の子」と「空の青さ〜」は、「君の名は。」のプロデューサーである古澤佳寛と川村元気が東宝を飛び出して設立した新会社STORYの作品。東宝とは業務提携契約を締結している(こちらにその記事)。

「空の青さ〜」がユニークなのは生霊をテーマとしたこと。死者が幽霊として現れるというのはたくさんアニメであったけれど(「あの花」もそう)、「源氏物語」みたいに生霊というのは珍しい。ただ過去の自分と現在の自分が同時に存在し、対峙するという〈時間イメージ〉の映画はイングマール・ベルイマン「野いちご」とかフェデリコ・フェリーニ「8 1/2」、大林宣彦「さびしんぼう」「はるか、ノスタルジィ」など実写でいくつか前例がある。

しかしながら最後が尻切れトンボというか、今一歩という感じだった。

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