スウィングしなけりゃ意味ないね

2009年6月15日 (月)

聴いておきたい映画主題歌 ベスト25

映画音楽ベスト50に続き、今回は主題歌(挿入歌)を選ぼう。やはり1人の作曲家につき1曲という原則を遵守した。また、映画のために書かれたオリジナル作品のみを対象としている。例えば「ボディーガード」"I Will Always Love You"とか「カサブランカ」"As Time Goes By"( 時の過ぎ行くままに)、あるいは「卒業」"The Sound of Silence"などは、映画製作前から存在するヒット曲なので、除外した。なお、各々のタイトルをクリックすれば何かが起こるかも?

  1. 「ふたり」草の想い
  2. 「オズの魔法使い」虹の彼方に
  3. 「ホーム・アローン」Somewhere in My Memory
  4. 「ピノキオ」星に願いを
  5. 「白雪姫」いつか王子様が
  6. 「アラジン」A Whole New World
  7. 「追憶」The Way We Were
  8. 「アルフィー」アルフィー
  9. 「スラムドッグ$ミリオネア」Jai Ho
  10. 「シェルブールの雨傘」I Will Wait For You
  11. 「ライオンキング」Circle of Life
  12. 「ティファニーで朝食を」ムーン・リバー
  13. 「男と女」男と女
  14. 「フラッシュダンス」What a Feeling
  15. 「ワーキング・ガール」Let the River Run
  16. 「トップ・ハット」頬よせて
  17. 「ゴールド・ディガーズ36年」ブロードウェイの子守歌
  18. 「アラモ」遥かなるアラモ(The Green Leaves of Summer)
  19. 「8 Mile」Lose Yourself
  20. 「若草の頃」トロリー・ソング
  21. 「ニューヨーク、ニューヨーク」テーマ
  22. 「アメリカ物語」Somewhere Out There
  23. 「007 ロシアより愛をこめて」ロシアより愛をこめて
  24. 「有頂天時代」今宵の君は
  25. 「踊らん哉」Let's Call the Whole Thing Off

ディズニー映画から4本(ピノキオ白雪姫アラジンライオンキング)。フレッド・アステアが歌ったのが3曲(トップ・ハット有頂天時代踊らん哉)で、ジュディ・ガーランドが2曲(オズの魔法使い若草の頃)、さらにジュディの娘ライザ・ミネリが1曲(ニューヨーク、ニューヨーク)という結果になった。

ジュディ・ガーランドが歌う「スター誕生」('54)"The Man That Got Away"もどうしても入れたかったが、これを作曲したのが「虹の彼方に」のハロルド・アーレンだから断念した。

また番外として、エッダ・デル・オルソによる(歌詞のない)スキャットが限りなく美しい、エンニオ・モリコーネ作曲の「ウエスタン」('68)"Once Upon a Time in the West"を挙げておきたい。

「草の想い」大林宣彦(作詞)、久石 譲(作曲)。久石さんの楽曲なら宮崎 駿(作詞)の「君をのせて」(天空の城ラピュタ)や「となりのトトロ」の方が一般的だろう。勿論、何れも名曲である。なお、「草の想い」の1番の歌詞は大林監督、2番は久石さんが歌っている。

2001年に全米レコード協会が選定した「20世紀の名曲」(Songs of the Century)で堂々第1位に輝いた「虹の彼方に」が、実は世に出なかったかもしれないという誕生秘話がウィキペディアに掲載されている。面白いので是非お読み下さい→こちら

ジョン・ウイリアムズが作曲した「ホーム・アローン」はクリスマスの名曲の宝庫である。"Somewhere in My Memory"も好きだし、"Star of Bethlehem"も捨てがたい。またジョンが書いた歌曲なら映画「イエス・ジョルジョ」 (日本未公開、DVDおよびサントラCD未発売)の"If We Were In Love"もいい。映画に主演した三大テノールの一人、ルチアーノ・パバロッティが英語で歌い、アカデミー賞にノミネートされた。

アラン・メンケンなら代わりに「美女と野獣」、あるいは「リトル・マーメイド」"Part of Your World"や「ポカホンタス」"Color of the Wind"でも良い。なお、「アラジン」でジャスミン姫のパートはミュージカル「ミス・サイゴン」のリア・サロンガが歌っている。

バーブラ・ストライザンドの名唱が印象深い"The Way We Were"を書いたマーヴィン・ハムリッシュはミュージカル「コーラスライン」の作曲家としても名高い。その代表曲"ONE"は「KIRIN一番搾り生ビール」のCMで使用された。そうそう、映画「アイス・キャッスル」の主題歌"Through the Eyes of Love"(この愛に生きる)も好きだなぁ(映画は未見)。

ハル・デヴィッド(作詞)バート・バカラック(作曲)のコンビは珠玉の名曲を沢山生み出した。僕が一番好きなのはカーペンターズ版が有名な"(They Long to be) Close to You"(遥かなる影)。これは映画「愛しのロクサーヌ」「メリーに首ったけ」などにも登場するが、残念なことに映画発祥の曲ではない。主題歌の人気投票で必ず上位に来るのが「明日に向かって撃て」"Raindrops Keep Fallin' On My Head"(雨にぬれても)なのだけれど、僕は余り気が進まない。そこで「アルフィー」を。これなら文句なしにいい。

シェルブールの雨傘」のミッシェル・ルグランに関しては、オスカーを受賞した「風のささやき(華麗なる賭け、The Thomas Crown Affair)とか、僕の偏愛する「愛のイエントル」(バーブラ・ストライザンド 監督・主演・歌)から"Papa, Can You Hear Me ?"や"A Piece of Sky"なんかも入れたかった!

ヘンリー・マンシーニは「ティファニーで朝食を」や「酒とバラの日々」、あるいは「シャレード」「いつも2人で」など選択肢が多くて迷った。

アーヴィング・バーリンが映画「スイング・ホテル」('42)のために書いた、"ホワイト・クリスマス"も入れたかったが、同じバーリンの"Cheek to Cheek"(頬よせて)はどうしても外せなかった。フレッド・アステアがこれを歌う場面は、映画「グリーン・マイル」にも登場する。

ブロードウェイの子守唄はむしろ、舞台ミュージカル「42nd Street」の方でお馴染みかも知れない。第1幕のクライマックスに歌われる、その群舞(タップ・ダンス)の迫力は圧巻。「生きてて良かった!ミュージカル最高!!」と想わず叫びたくなる瞬間だ。

アラモ」を作曲したディミトリー・ティオムキンはロシアのウクライナ出身。だから曲調にどことなく哀愁が漂い、まるでロシア民謡みたいな味わい。アカデミー歌曲賞ノミネート。

エミネムの"Lose Yourself"はヒップホップ(ラップ)・ミュージックが初めてアカデミー歌曲賞を受賞したという意味において、衝撃的だった。新しい時代の到来を告げる歌と言えるだろう。「8 Mile」は彼の半自伝的映画で中々面白い。

若草の頃」には"Have Yourself A Merry Little Christmas"というクリスマスの名曲もある。

ジェームズ・ホーナーの曲なら大概の人が「タイタニック」の"My Heart Will Go On"を挙げるだろう。でもへそ曲がりの僕は、敢えてアニメ「アメリカ物語」から。アカデミー歌曲賞ノミネート。

ジョン・バリー作曲の「ロシアより愛をこめて」は、シャーリー・バッシーのパンチが効いた歌が印象的な「ゴールドフィンガー」に置き換え可。またマット・モンローが歌う、「さらばベルリンの灯」の主題歌も秀逸。

アカデミー賞に輝いた歌「今宵の君は(The Way You Look Tonight)」はジュリア・ロバーツが主演した「ベスト・フレンズ・ウェディング」でも印象的に使われていた。またこの映画はハル・デヴィッド&バート・バカラックの名曲オン・パレード!とてもハッピーな気持ちになれる。お勧め。

踊らん哉」はアイラとジョージのガーシュウィン兄弟による楽曲。2人の掛け合いが愉しい。アステアが歌う"They Can't Take That Away from Me"はアカデミー歌曲賞にノミネートされた。

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好きな歌を選定するという作業はとても愉しく、豊かな時間であった。この記事を締め括るにあたり、やはり次の言葉ほど相応しいのもは他にないだろう。

これから先の人生で、 どんなことがあるのか知らないけれど、いとしい歌の数々よ、どうぞぼくを守りたまえ。  
(芦原すなお 著「青春デンデケデケデケ」より)

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2009年3月21日 (土)

小曽根真 presents No Name Horses

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サンケイホールブリーゼで、ジャズ・ピアニスト小曽根真さん率いるビッグバンド、No Name Horsesを聴いた。

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No Name Horsesは、小曽根さんがプロデュースした伊藤君子(Vo)のアルバムのレコーディングのために2004年に結成された。このハイ・クオリティなサウンドに手ごたえを感じた小曽根さんは継続して活動することに決め、以後1年に1回のペースでツアーを行っている。

トランペット4、トロンボーン3、サクソフォン5、それにベース、ドラムス、ピアノ各1という編成。サクソフォン奏者によるフルートおよびクラリネットへの持ち替えあり。

曲目は(順不同)、

  • Toi & Moi(小曽根真)
  • Midnight Call(三木俊雄)
  • You Always Come Late(小曽根真)
  • Three Wishes(小曽根真)
  • You are not Alone(小曽根真)
  • Carney (Rick Henderson)
  • She(シャルル・アズナブール、ピアノ・ソロ
  • No Siesta(小曽根真)
  • Cave Walk(小曽根真)
  • Three Wishes(小曽根真)
  • No Strings Attached(小曽根真)

5月にリリース予定のアルバム「Jungle」からも2曲、カラフルなラテン・ナンバーが披露された。

Sheは昨年2月、大阪フィルハーモニー交響楽団定期演奏会に小曽根さんが客演したときにアンコールで聴いた。

また大阪クラシック2008ではこんな素敵な出来事もあった。

小曽根さんは高校生の時、旧サンケイホールで秋吉敏子 with ビッグバンドの演奏を聴いて、「何時か自分もこんなバンドをやってみたい」と思われたそうだ。

No Name Horsesのメンバーは、各々がリーダーとして活躍している世界的ミュージシャン揃い。ホーンが唸り、ゴージャスな音色で聴き応えあり。全員のソロがフィーチャーされていたが、皆べらぼうに上手い。日本最高峰のビッグバンドであることは間違いない。

神戸出身の小曽根さんによる関西弁を交えたMCもとても面白い。ある意味、淀工の丸谷明夫先生と似た資質を感じた。この人柄のよさで優秀な音楽家たちが彼のもとに集結したのだろうな、と納得がいった。

また、トロンボーン奏者による《アフリカ象とインド象の鳴き声》というパフォーマンスもとても愉快だった。

No Name Horsesは来る7/2(木)~4(土)に、ビルボードライブ大阪(06-6342-7722)でもステージが予定されているそうである。

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 記事関連blog紹介:同じコンサートを聴かれた方の感想

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2009年2月19日 (木)

村田陽一(Tb) at ロイヤルホース

梅田のライヴハウス「ロイヤルホース」でJazzを聴く。

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今回の出演者は村田陽一(Tb)、竹下清志(P)、三原 脩(B)、東原力哉(Ds)の4人。

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村田陽一さんはテレビ「古畑任三郎」のアレンジや、サウンドトラックの演奏にも参加されている世界的トロンボーン奏者である。

  • 村田陽一/オリジナル曲(タイトル不明)
  • ホレス・シルヴァー/ニカの夢(Nica's Dream)
  • デューク・エリントン/ソリチュード
  • 村田陽一/Please Send Me Someone to Love
  • セロニアス・モンク/エビデンス
  • オーネット・コールマン/Blues Connotation
  • ローランド・カーク/Lady's Blues
  • スティーヴィー・ワンダー/Lately(カラフルなボサノヴァ)
  • 村田陽一/M6 2009(新曲。しっとりとしたバラード)

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村田さんの厚みがあって柔らかい音色に魅了された。また他のメンバーも腕っこきが揃っており、特に力哉さんの鮮やかなスティック捌きには見惚れた。目の前で演奏してくれるのでド迫力だった。

ここ1年くらい、村田さんは毎月のようにここでライヴをされているそうで、先月の模様はこちらのロイヤルホース公式ブログで試聴することが出来る。

前にも書いたがここの食事はとても美味しい。BIO(ビオ)ワインも飲めるし、Jazzを聴くには最高の環境である。僕はちょうど今レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」(村上春樹 訳)を再読中なので、ギムレットがふと飲みたくなり注文した。

"A real gimlet is half gin and half Rose's Lime Juice and nothing else"
「本当のギムレットはジンとローズ社のライム・ジュースを半分ずつ混ぜるんだ。他には何も加えない」
  (「ロング・グッドバイ」より)

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2009年1月13日 (火)

山下洋輔 vs. 佐渡 裕/エクスプローラー

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上の写真は西宮神社の十日戎(えびす)の様子である。

この日、同じ西宮市にある兵庫芸文で佐渡 裕/兵庫芸術文化センター管弦楽団(PAC)の第21回定期演奏会を聴こうと足を運んだ。ゲストはジャズ・ピアニストの山下洋輔さん。プログラムは、

  • 山下洋輔/ピアノ協奏曲第3番「エクスプローラー」
  • ショスタコーヴィチ/交響曲第5番

「エクスプローラー」のオーケストレーションは国立音楽大学在学中の挟間美帆さん(彼女の公式サイトはこちら)が担当した。なかなかの美女で、仕事の出来栄えも申し分ない。

第1楽章はまるで世界の混沌を描いているかのような印象を受けた。冒頭のクラリネットはガーシュウィン/「ラプソディ・イン・ブルー」へのオマージュ。淀工吹奏楽部出身の稲本渡さんが見事なクラリネット・ソロを披露された。また、この楽章の終盤には「パリのアメリカ人」を彷彿とさせる金管群のスウィングもある。

第2楽章は夜の音楽。大都会の夜景が目の前に広がる高層ビル最上階のジャズ・バーで静かにグラスを傾けるような雰囲気が漂う。あるいは北極圏のオーロラとか、星屑の海の中をひとりぼっちで漂っている宇宙船などを連想させられるものもあった。時折、ベートーヴェン交響曲第3番「英雄」第1楽章や「エリーゼのために」の断片も聴こえてくる。

第3楽章は山下さんご自身が書かれた明確な考想メモがある。「宇宙に飛び出して木管猫生物、弦楽器地底生物、金管素粒子生物、疾走打楽器生物に出会う。やがて時間を遡行してビッグバンに遭遇して皆死ぬ」

プレ・トークで山下さんと佐渡さんが仰っていたのだが、この作品はオーケストラの譜面はきっちり書かれているが、山下さんのピアノ・パートは殆ど白紙だそうである。つまり毎回即興演奏でその部分は紡がれていく。僕が聴いたのは定期三日目。一日目と二日目ではまったく弾かれた中身が異なっていたそうだ。

あくまで自由なスタイルなので、例えば一つの楽章に一貫した主題(モティーフ)のようなものは見当たらない。山下さんの楽興(形式にとらわれない自由 な発想)の趣くまま、次から次へと様々な旋律が生まれては消えてゆく。しっかりした構成とか全体の統一感は乏しい。そういう点では、果たして古典的 な三楽章の協奏曲という形式にする意味があるのかという疑問を感じるのも確かである。

僕はこれを聴きながら、1970年にピンク・フロイドがオーケストラと競演した「原子心母」(Atom Heart Mother)のことを想い出した。プログレッシブ・ロックを代表する名盤である。結局「エクスプローラー」は《山下洋輔の山下洋輔による山下洋輔のための》協奏曲なのであって、他のピアニストが演奏しても意味がないし、この曲に挑戦しようとする人は今後も現れないんじゃないか?という気がする。つまりクロスオーバー(Crossover)楽曲としての「ラプソディ・イン・ブルー」、あるいはピアソラ/バンドネオン協奏曲がような普遍性は本作にはなく、あくまで山下さんのフリー・ジャズを愉しむために存在するのであって、その意味では十分目的を果たしていると言えるだろう。

山下さんのパフォーマンスは文句なしに素晴らしい。その半音階の多用は、印象派の作曲家ラヴェルに通じるものを感じた(ラヴェルのピアノ協奏曲はジャズのイディオムを大胆に取り入れている)。

アンコールは2曲あった。

  • 山下洋輔/サドン・フィクションより第5曲 スウィング
  • 枯葉~スィングしなけりゃ意味ないね(メドレー)

1曲目はオーケストラとの共演で2曲目はピアノ・ソロ。オケは最後に全員が立ち上がって演奏しながら動き回ったりというパフォーマンスもあり、大変愉しかった。ソロの方はもう曲の原型を殆ど留めていないくらい崩した、山下さんらしいアグレッシブで尖がったアレンジ。その真骨頂を堪能させて貰った。

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ショスタコは冒頭で弦楽器低音部の主題がホールに鳴った瞬間、これは物足りないなと想った。この曲は2007年に大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会で聴いているが、大フィルの弦楽パートの方が断然、響きに潤いと深みがあった。ホールの違いもあるだろうが、どうもPACは弦が弱い気がする。それから佐渡さんも、明るくあっけらかんとした解釈で違和感が終始付きまとった。確かにこの5番はユニゾンが多く一見単純明快なようだが、どうしてどうしてショスタコーヴィッチはもっと陰鬱で屈折した、アイロニカルな音楽なのではないだろうか?但し、速めのテンポでかっ飛ばした第4楽章は爽快で中々良かった。

PACの管楽器セクションは概ね好演だったが、ホルン・トップ奏者のミスが目立ってお粗末だったことを最後に付け加えておく。

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2008年9月16日 (火)

ジャズ・ピアニスト小曽根真 登場!サプライズの第66公演~大阪クラシック2008 《6日目》

9月12日(金)は予め、休暇を取っていた。

今年の大阪クラシックは当初、全65公演の予定であったが9/9(火)夜の公演で大植英次さんから重大発表があった。急遽、第66公演目が決まったのである!

今年2月の大フィル定期は神戸生まれのジャズ・ピアニスト、小曽根 真さんが登場しガーシュウィン/ラプソディ・イン・ブルーを演奏した。その時の僕の感想はこちらの記事に書いた。これはNHKが映像収録し、BSでも放送された。

今から3週間前、大植さんは主席指揮者を務めるハノーファー北ドイツ放送フルハーモニー(NDR)の演奏会に小曽根さんを招聘し再び共演、地元紙から絶賛を博したそうである。その際に小曽根さんに大阪クラシックの話をしたら、「どうして声を掛けて下さらなかったんです!?是非僕も出演したい」と、とんとん拍子に話が進み、小曽根さんのスケジュールを調整。金曜日朝10時からの出演が決まったそうだ。何と無料公演である。

会場となった大阪市中央公会堂に9時半に入場すると、既に小曽根さんがピアノに向かって指ならしをされていた。

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ピアノの前に群がる人、人、人。

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ステージ前に集まった人々と気さくに会話を交わす小曽根さん。フロアから「モーツァルトをJAZZ風に弾いたらどんな感じになるん?」と質問も飛ぶ。

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そこへ大植さんが登場。小曽根さんと交代しピアノに腰掛けるなり、

  • ベートーヴェン/ピアノソナタ 第14番「月光」〜第1楽章

を弾き始めた。そしてそれが切れ目なく、

  • ガーシュウィン/3つの前奏曲〜2. Andante con moto e poco rubato

へと続く。聴衆は大喜び。携帯カメラのシャッター音が絶え間なく響く。ここで大フィル事務局の人が各自席に着くように促し、いよいよ本番へ。小曽根さんのソロで、

  • ラヴェル/クープランの墓
  • モーツァルト/ピアノ協奏曲 第27番〜第2楽章(JAZZ風)
  • 小曽根 真/Bienvenidos Al Mundo(ようこそ、この世界へ)
  • アントニオ・カルロス・ジョビン/How Insensitive(ボサノヴァ)
  • ピアソラ/ローラの夢(タンゴ)

ラヴェルは最初原曲通りに弾かれていたが、途中からスウィングしてJAZZテイストに。小曽根さん曰く、「ちょっとここから大阪城あたりまで寄り道してきました」

小曽根さんの自作はラテンの曲。途中にフーガもあり聴き応えあり。

アントニオ・カルロス・ジョビンは「イパネマの娘」で有名なブラジルの作曲家。"How Insensitive"はショパン/前奏曲からインスピレーションを得たのではないかと両者を弾き比べてみる小曽根さん。それに対し、大植さんがブラームス/交響曲第1番 第4楽章の主題とマーラー/交響曲第3番 第1楽章 冒頭部の旋律がそっくりであるというお話をピアノで例示しながらされた。成る程、これは面白い!

特に圧巻だったのはピアソラ。ピアノ独奏なのに、タンゴのエッセンスがギュッと濃縮されているのには驚かされた。叩き付けるような低音のリズムが胸に響く。

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ここで大植さんから小曽根さんへプレゼント。手製の金メダル、OZONE MAKOTO in OSAKA CLASSICと縫いこまれたTシャツ、そしてドイツでのコンサートの新聞批評や毎日新聞に掲載された本公演の告知記事を紙バッグに仕立てたものなどが手渡された。早速そのTシャツに着替える小曽根さん。サービス精神旺盛な人だ。

最後はふたりの連弾で締め括られた。

  • ブラームス/ハンガリー舞曲 第5番

記事関連blog紹介:
~snowdome cafe #2~(同じ公演を聴かれた方の感想)

昼食の後、明治安田生命大阪御堂筋ビルに移動して第50公演。

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ヴァイオリン/佐久間聡一、コントラバス/三好哲郎で、

  • J.S.バッハ/アンナ・マグダレーナのためのクラヴィーア小曲集 
  • グリエール/8つのデュエット より

同じメンバーで昨年もグリエールを聴いている。場所はオカムラ大阪ショールームだった。その写真はこちら。あの時はこんな人だかりではなかったんだけれどなぁ……。

お次はフェニックスタワー1Fアトリウムで第51公演。

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  • ドビュッシー/弦楽四重奏曲
  • ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女

どこへ行っても凄い人!立ちっぱなしで疲労困憊し、梅田に移動してプレミアム・モルツ生ビールを飲みながら読書してしばしの休憩。

若干体力を回復し、再びフェニックスタワーに戻って3Fのザ・フェニックスホール(整理券あり、無料)で第54公演。

  • フンメル/七重奏曲 第2番「軍隊」

昨年の大阪クラシックではフンメル/七重奏曲 第1番を聴いた。その時の感想はこちら。同じ七重奏でも楽器編成は異なる。両者に共通するのはピアノ、フルート、チェロ、コントラバスのみで、第1番のオーボエ、ホルン、ヴィオラの代わりに第2番「軍隊」ではクラリネット、トランペット、ヴァイオリンが加わる。

僕はどちらかと言えば第1番の方が名曲だと想った。疲れも手伝って、途中うつらうつらと舟を漕ぐ。

そしてこの後、ザ・シンフォニーホールに向かい児玉 宏/大阪シンフォニカー交響楽団による、奇蹟のブルックナー体験で衝撃を受けることになるのだが……それはまた、別の話。 

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2008年8月30日 (土)

北村英治 at ロイヤルホース

Jazzクラリネットの第一人者、北村英治さんの演奏を聴きにロイヤルホースに足を運んだ。

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吹奏楽が好きな人にとって北村さんは、NHK-BSで放送中の「響け!みんなの吹奏楽」のゲスト・ミュージシャンとしてもお馴染みであろう。

演奏は北村さん以外にビアノ、ドラム、ベースの計4名。演奏されたうち約8割はリクエスト曲で構成された。僕は配られたリクエスト・カードにコール・ポーター作曲の「ビギン・ザ・ビギン」と"So in Love"(ミュージカル「キス・ミー・ケイト」より)を書いたのだが、そのうち1曲が採用されてとても嬉しかった。まず第1ステージ(19:00~)で演奏されたのは、

  • Rose Room
  • 星に願いを
  • 酒とバラの日々
  • Heartaches(ボサノバ)
  • Alice Blue Gown(ワルツ)
  • A列車で行こう
  • All of Me

第2ステージ(20:30~)は

  • Moonglow(映画「ピクニック」より)
  • 五月によせて(作曲:北村英治)
  • ビギン・ザ・ビギン(スウィング)
  • 映画「ひまわり」テーマ
  • ありがちなこと("Just one of those things")
  • Memories of You
  • Sing, Sing, Sing

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コール・ポーターの「ありがちなこと」は初めて聴いたのだが、アップテンポでとっても素敵な曲だった。

食事やワインを愉しみながらリラックスして聴けた。また、ミンチカツや生パスタなどフード・メニューも美味しかった!

Jazzってコンサート会場でかしこまって聴くよりも、こういった雰囲気の方が断然いいなとしみじみ想った夏の終わりの一夜であった。

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2008年5月29日 (木)

落語はJAZZだ!~桂枝雀と上方落語 論

昨年あたりからしばしば落語を聴くようになった。上方落語に腹を抱えて笑い、江戸(東京)落語も聴いてみたのだが、こちらの方はどうも詰まらない。その原因は何なんだろうとしばし考えて、漸く人情噺のせいだという結論に至った。お江戸の人情噺(芝浜、中村仲蔵 、子別れ etc. )を聴いていると、僕は嘗て一世を風靡した「一杯のかけそば」(栗 良平 作)のことを想い出す。あれには閉口した。映画「男はつらいよ」シリーズや「三丁目の夕日」も、そのルーツを遡ると落語の人情噺に行き着くような気がして仕方がない。

立川談志の著書に「現代落語論」がある。そしてその続編「あなたも落語家になれる」に、かの有名な一節が登場する。

 落語というものを、みなさんはどう解釈しているのか……、おそらく落語家を"笑わせ屋"とお思いになってるでしょう。(中略)
 でも、私の惚れている落語は、決して「笑わせ屋」だけではないのです。お客様を笑わせるというのは手段であって、目的は別にあるのです。なかには笑わせることが目的だと思っている落語家もいますが、私にとって落語とは、「人間の業」を肯定してるということにあります。「人間の業」の肯定とは、非常に抽象的な言い方ですが、具体的に言いますと、人間、本当に眠くなると、"寝ちまうものなんだ"といってるのです。分別のある大の大人が若い娘に惚れ、メロメロになることもよくあるし、飲んではいけないと解っていながら酒を飲み、"これだけはしてはいけない"ということをやってしまうものが、人間なのであります。
 こういうことを八っつぁん、熊さん、横丁の隠居さんに語らせているのが落語なのであります。

人間の業」の肯定ーこれこそが江戸落語の本質である。人情噺 が江戸に多いのも「人間の業」を語りたいが為であろうと僕は考える。そして落語家は単なる"笑わせ屋"ではないという東京の噺家たちの矜持が、マクラ(導入部)で政治批判をしたり世相を切ったりすることを好むという行為に繋がっていく。

一方、上方落語には驚くべきことに人情噺がない。正真正銘、皆無である。そういう辛気臭い話はくだらないと関西人は考えているのだろう。むしろ上方は笑いに特化している。社会批判も好まれない。

上方落語の特徴として、アホな奴が登場し賢い人の真似をしようとする。しかしアホだから当然失敗して大混乱となる……つまり「阿呆を馬鹿にして笑う」というパターンが多い(青菜、阿弥陀池、時うどん、ちりとてちん etc. )。しかし上方落語に登場するのは皆、愛すべきアホたちである。彼らは人間味に溢れ、とても魅力的である。だから「人間の業」(梵語、由来はインド思想)といった大上段に構えたものではなく、むしろ「人間の愚かさ、滑稽さ」の肯定が上方落語の本質であると言えるのではないだろうか。

フランス映画「奇人たちの晩餐会」をご存知だろうか? 鼻持ちならない金持ちの仲間たちが毎週水曜日に晩餐会を開き、メンバーは必ず一人奇人を連れてきて、その“奇人っぷり”を競うというお話。関西人の笑いはこのフランス人の感性に近い。明石屋さんまさんがこの話を気に入り、自ら舞台で演じたのは決して偶然ではない。

さて、20世紀に上方落語界が生んだ最大のスターは(二代目)桂 枝雀さんである。枝雀さんは天才であり、と同時に努力の人でもあった。

春風亭小朝さんは、枝雀さんについて次のように語る。

師匠がこの世を去った今、思い出すのは昔読んだ本に載っていた〈天才が残したものを凡人たちが時間をかけて解明していく〉というひと言です。師匠は笑いを分析し、落語の可能性と限界を我々に示してくれました。それをどうやって自分たちの財産にしていくのか、上方落語界の今後の宿題だと思います。
('99年8月米朝一門会パンフレットより)

また、桂 三枝さんは古典落語には 枝雀という巨大な存在があったからこそ、ただ自分はひたすらに創作落語の道へ邁進したのだと語られている。→「お兄さんに感謝です!

僕が初めて枝雀さんの名前を知ったのは映画「しゃべれども しゃべれども」(2007、キネマ旬報ベスト・テン第3位)である。主人公は東京の噺家(二つ目、前座と真打の間)。ひょんなことから、大阪から東京に転校し陰湿ないじめにあっている小学生に落語を教える羽目になる。彼は「まんじゅうこわい」を選び少年を前に坐らせ喋ってみるが、反応は今ひとつ。そこであるアイディアを思いつく。以下、佐藤多佳子の原作小説(「本の雑誌」が選ぶ年間ベストテン第1位、新潮文庫)からの引用である。

桂枝雀師匠の市販のテープを手にいれて聞かせてやると、ウケるウケる、俺の噺はそっぽを向いたのに、いまいましいほど笑いやがった。そして、これを覚えると言い出した。江戸前の噺はだいたい十五分くらいだが、上方版は長くて、途中に怪談が一つ入って三十分を超えてしまう。だから無理だと言った。(中略)あの頑固坊主は例によって言うことをきかなかった。

この少年を夢中にさせた桂 枝雀とは如何なる噺家なのか? 僕も是非聴きたいと考えて「まんじゅうこわい」の入ったDVDを購入した。そして落雷に直撃されたかのような衝撃が走った。正にエレクトリック・リベレーション=電気的啓示であった。

枝雀さんは小刻みに体を揺らしながら喋る。そう、リズムを取っているのである。枝雀落語の特徴に言葉の繰り返しがあるが、このリフレイン(refrain)が心地よいリズムを生む。しかしそれは決して一定のテンポではなく、オフビートだったり変拍子だったりする。三枝さんも枝雀落語のリズム感について言及されている→「落語を聞きながら

枝雀さんの弟子、雀松さんによると「こっからここまでは、絶対息継いだらあかんねん!息継いで喋ったらお客さんがだれてしまう、離れてしまう……」という風に稽古をして貰ったそうである。吹奏楽をやったことのある人なら、次のように指導された経験があるのではないだろうか。「ここからこの小節まではノン・ブレスで吹いて下さい」と。

枝雀さんには「落語は緊張の緩和である」という持論があり、高座でもしばしばその話題を取り上げられた。これは音楽用語で言えば即ち緩急を自在に操るということである。枝雀落語と出会って僕は閃いた。「落語はJAZZだ!」と。自在なインプロビゼーション(即興)があるところもJAZZに似ている。そこで調べてみると落語とJAZZの関連性について言及している人は多い。たとえばこちら。故・笑福亭松鶴(六代目)も「落語はJAZZや」と言っていたそうである。また、桂 春菜さんが落語とJAZZを同時に愉しもうという「春菜・みちしたの会 」というイベントを定期的に開催されていることも分かった。

枝雀落語は"聴く"だけではなく"観る"落語でもある。だから初体験の方は是非、CDではなくDVDで接して欲しい。まずは「まんじゅうこわい」「代書」「宿替え」「くっしゃみ講釈」「愛宕山」「崇徳院」あたりから。驚天動地の体験となることは保証しよう。

枝雀落語の真の後継者は誰か?僕は今、それは桂かい枝さんだろうと考えている。かい枝さんは昨年、第一回繁昌亭大賞で"爆笑賞"を受賞された。枝雀さんが"爆笑王"と呼ばれたことと相通じるものがある。そしてかい枝さんは現在、Sit-Down Comedy = Rakugoを世界に広めるべく、英語落語を武器にキャンピングカーで半年間掛けてアメリカ大陸を横断中である。かい枝さんのブログはこちら

実はこの英語落語を始めたのが枝雀さんなのである。枝雀さんの遺志を継ぎ、かい枝さんが今世界に大きな花を咲かせようとしている。

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「あなたの本職は何です?」
「本職ですか? それは《ポン》で~す!」
「……な、何ですか?」
「《ポン》で~~す!」

(枝雀落語「代書」より)

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2008年5月 5日 (月)

筒井康隆&山下洋輔のジャズ・オペレッタ「フリン伝習録」

レハール/喜歌劇「メリー・ウィドウ」に基づき筒井康隆氏が書き下ろした3幕・超演奏会形式のジャズ・オペレッタ「フリン伝習録」を聴きに兵庫県立芸術文化センターへ往った。

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筒井氏自身が朗読およびラップも担当、音楽とピアノがジャズ界の巨匠・山下洋輔。劇伴演奏が山下一史/兵庫芸術文化センター管弦楽団。サックスがべら棒にうまいなぁとプログラムをよく見たら、なんと名手・平野公崇だったので腰を抜かした。さらに、森 麻季(ソプラノ)ら4人の独唱が加わるという豪華版だった。

森 麻季さんのソロ・リサイタルを聴いた時の感想はこちらに書いた。実は6~7月に兵庫県立文化芸術センターで行われる「メリー・ウィドウ」の公演に森さんは出演予定で(ダブル・キャスト)、僕は彼女の登場する日に合わせてチケットを購入したのだが、後に森さんの懐妊が明らかとなり急遽彼女は降板してしまった。チケットの払い戻しはしないという。これは相当ショックだった。どうやら3年前にイタリア人の作曲家と結婚されていたらしい。

しかしその代わり、今回のコンサートで森さんはハンナ/ヴァラン/オルガと3役を歌いこなし、雲雀のように高く舞い上がるその澄んだ歌声をたっぷり堪能出来たのでまあ良しとしよう。

栗山和樹氏による編曲もとても面白かった。原曲のオペレッタそのままの楽曲もあれば、ジャズ・ラップ・ジルバ・ルンバ・マーチなど万華鏡のように多彩なアレンジで魅了された、山下洋輔さんのアドリブはノリノリ、平野さんのサックスはスウィングしてグルーヴ(ワクワク感)があった。その伴奏に乗ってオペラ歌手が陽気に歌っているのだから、それはそれは不思議な光景であった。

筒井さんの歌詞は特に《不倫のマーチ》が可笑しくて最高。

誰が非難しても、まことの愛があれば
恐れず身を焦がす
それがフリン フリン フリン フリン!
これこそ新たなる 人の恋のかたち
やがてわれらの世界がくる
その日は明日だ!

天国のレハールも、びっくり仰天していることだろう。

オペラとジャズのコンサートを同時に愉しんだような贅沢な2時間半だった。

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2008年2月15日 (金)

大植英次/ラプソディ・イン・パリ

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会(一日目)を聴いた。会場はザ・シンフォニーホールである。

プログラム内容はラヴェルガーシュウィンベルリオーズである。どうして、ラヴェルベルリオーズというフランスの作曲家にガーシュウィンというアメリカの作曲家が挟まれているのか疑問に想われる方がいらっしゃるかも知れない。しかし、これにはちゃんとした理由があるのである。

ガーシュウィンは当初、自分のオーケストレーション技術に自信がなく、「ラプソディ・イン・ブルー」(1924年初演)は「グランドキャニオン」の作曲家グローフェに編曲を依頼した。そこでガーシュウィンは1927年にフランスに渡り、”管弦楽の魔術師”ラヴェルの教えを請おうとする。しかしそんな彼にラヴェルはこう言ったのである。

「君は既に一流のガーシュウィンではないか。何も二流のラヴェルになる必要などないよ」

こうしてフランスから帰国後、完成したのが「パリのアメリカ人」(1928)である。この曲はガーシュウィン自らオーケストレーションを施した。

ラヴェルも逆にガーシュウィンから影響を受け、「ピアノ協奏曲ト短調」(1932)にジャズの語法を取り入れている。

余談であるが、ガーシュウィンは当時ナチスから逃れてハリウッドに住んでいたシェーンベルクに12音技法を学ぼうとするのだが、シェーンベルクからもこう言われたそうである。

「『ス・ワンダフル』のような曲が作れるのだから君は天才だ。12音技法のことなど忘れなさい」

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さて、今回のコンサートでまず演奏されたのはラヴェル/道化師の朝の歌

ラヴェルはスペインにほど近いバスク地方で生まれた。母マリーはバスク人であった。だから「スペイン狂詩曲」でも分かる通り、ラヴェルにはスペインの血が流れている。大植さんの指揮は「道化師の朝の歌」冒頭の強烈なピチカートからスペインの情緒溢れ、情熱的な演奏であった。

続いてガーシュウィン/ラプソディ・イン・ブルー。今やラプソディ・イン・ブルーと言えば「のだめカンタービレ」なのだろうが、僕にとってこの曲と直結するのはウディ・アレン監督の映画「マンハッタン」である。白黒の画面に浮かび上がる摩天楼にガーシュウィンの音楽は良く似合う。また、ディズニーの「ファンタジア2000」での使い方も印象深い。

今回大フィルと競演したのは神戸生まれのジャズ・ピアニスト、小曽根 真さん。ガーシュウィンが書いた楽譜からしばしば逸脱して、即興演奏を交えた演奏だった。アドリブこそジャズの魂。これぞクラシックとジャズの真のコラボレーションだ!2003年6月にベルリンのヴァルトビューネ野外音楽堂で行われたマーカス・ロバーツ・トリオ小澤征爾/ベルリン・フィルによるラプソディ・イン・ブルーを想い出した(この模様は市販のDVDで観ることが出来る)。

オーケストラの健闘も褒め称えたい。曲の冒頭、ブルックス・トーン君のソロはジャズ・クラリネット独特の発音・イントネーションがあって魅了された。秋月孝之さんのミュートをつけたトランペットはまるでマイルス・デイビスみたいにクールだった。

アンコールでは大植さんが小曽根さんをピアノに坐らせ、自分は指揮台に陣取ってそこから小曽根さんのソロを愉しそうに聴かれた。「今日はバレンタインですからラブ・ソングを演ります」と、おもむろに弾き始めたのは映画「ノッティングヒルの恋人」(ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラント主演)の中でエルビス・コステロが歌い大ヒットした"She"。作曲はシャンソンの大御所シャルル・アズナブール、作詞はハーバート・クレッツマー。この人はミュージカル「レ・ミゼラブル」の作詞にも携わっている人である。ロマンティックな雰囲気溢れる演奏にウットリと耳を傾けた。

休憩後はベルリオーズ/幻想交響曲。ここでオーケストラは通常の配置から、指揮台をはさんで第1、第2ヴァイオリンが向かい合う対向配置に切り替わった。

ロマン派の作曲家として知られるベルリオーズだが、幻想交響曲が初演されたのが1830年。ベートーベン/第九交響曲が初演されてからわずか6年後のことである。だから古典配置も納得がいく。大植さんはベートーヴェンの時はコントラバスを後方正面一列に並べたが、幻想交響曲では客席から向かって右方に配置された。

ベートーヴェン・チクルスで、楽譜に書かれた全ての繰り返しを敢行した大植さんらしく、1楽章の提示部と4楽章の主部をちゃんと反復していた。実は1960年代における幻想交響曲の名盤、クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団ミュンシュ/パリ管弦楽団カラヤン/パリ管弦楽団の演奏ではこれらの繰り返しは慣例により省略されている。僕がこれらの反復を初めて聴いて仰天したCDはアバド/シカゴ交響楽団の演奏で、これは1983年の録音であった。

帰宅して昔録画したDVDで確認したのだが、デュトワ/NHK交響楽団の演奏(2003)は1楽章の反復は行っていたが4楽章は省略し、小澤征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ(2007)は両楽章とも反復なしで演奏していた。

大植さんの指揮は12月の定期とは打って変わって生気に溢れ、音楽に勢いがあった。第1楽章「夢、情熱」の序奏ではヴァイオリンの透明感ある音にハッとさせられた。ビブラートを極力抑えた奏法だったのである。ゆったりと、息の長い旋律が静謐に響く。主部に入り作曲家の激情が高まるとビブラートが増し、終結部で穏やかな曲想に戻るとビブラートも抑えられるという構成になっていた。このビブラート抑制による表現法は第3楽章「野の風景」の孤独と静寂の世界でも再現された。またその第3楽章では、イングリッシュホルンとそれに呼応する舞台裏のオーボエの寂寞とした響きが胸に沁みた。

第4楽章は重々しく、引きずるような足取り。まるで主人公が巨大な足枷をはめられているような印象を受けた。成る程、これは「断頭台への行進」なのだからこの解釈こそ相応しい。また打楽器群の一撃がズシリと腹に響いた。

そして第5楽章「ワルプルギルスの夜の夢」。これも引き続き、遅めのテンポ。魑魅魍魎が跋扈し、聴衆は熱病にうなされる様な悪夢を体験する。グレゴリオ聖歌「怒りの日」(Dies Irae)をチューバが咆哮する箇所は、まるで最後の審判が下されたかのような強烈な印象を受けた。そして最後の最後、一転して畳み掛けるような加速が圧巻だった。ザ・シンフォニーホールが熱狂的歓声に包まれたことは言うまでもない。大植さん、完全復活の瞬間だった。

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終演後、初めてサインを貰いに楽屋口へ。大植さんは元気一杯で、ファンから沢山チョコレートのプレゼントを受け取っていた。僕が幻想 第4,5楽章のテンポが良かったと話したら、「そうでしょう!あそこを軽く演奏すると『動物の謝肉祭』になっちゃうから!それにしても大フィルの底力は凄い」と舌の方も絶好調だった。

追記:「大植英次、佐渡裕~バーンスタインの弟子たち」も是非、併せてお読み下さい。

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2007年12月22日 (土)

大野雄二&ルパンティック・ファイブ

兵庫県立芸術文化センター 小ホールで開催されているHYOGO クリスマス・ジャズ・フェスティバル2007に往った。この日は大野雄二&ルパンティック・ファイブの出演である。

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上の写真は会場ロビーに陳列されていたクリスマスのお菓子。

今年で「ルパン三世」のテーマ作曲30周年を迎える大野雄二(1941- )さんはアレンジャー・作曲家・ジャズピアニスト。映画「犬神家の一族」の音楽も手掛けている。なお、「太陽にほえろ!」「名探偵コナン」の音楽で有名な大野克夫(1939- )さんとしばしば混同されるので要注意。僕もごっちゃになっていた。

ルパンティック・ファイブはトランペット、サックス、エレキギター、ベース、ドラムスという編成で、キーボード&ピアノ担当の大野さん以外は若手の実力派が揃っていて、大層聴き応えがあった。

曲目は「ルパン三世」のテーマなど大野さんのオリジナル曲を中心に、カバー曲あり、クリスマス・ソングありの盛り沢山の内容で愉しめた。

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「ラブ・スコール」は峰不二子のテーマで、「トルネードTORNADO」は次元大介のテーマである。

小ホールはステージを取り囲むように客席が配置されているので、大野さんは「どっちを向いて喋ったらいいのかこまっちゃうな」と仰っていた。音がよく響くので、PA(音響機器)はほとんど使わず、ドラムスも普段より抑え目に叩いているとのことであった。

会場に集ったのは白髪の老夫婦から小学生くらいの女の子まで幅広い客層で、大迫力で響く生の音を皆愉しんでいた。

前日に須川展也さん率いるトルヴェール・クヮルテットを聴いたばかりだったので、両者の違いがよく分かり興味深かった。クラシック系のサクソフォン奏者は細かいビブラートをかけて繊細に吹くが、ジャズ系のサックス奏者はノンビブラートで豪快に鳴らす。なんとジャズはピリオド奏法だったのである!

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