スウィングしなけりゃ意味ないね

日本テレマン協会マンスリーコンサート~中山裕一/バロックヴァイオリンリサイタル

12月6日(火)日本テレマン協会のマンスリーコンサート@大阪倶楽部へ。

前半が20世紀アメリカの弦楽四重奏曲

  • コルンゴルト/弦楽四重奏 第2番 第1,2楽章
  • ガーシュウィン/弦楽四重奏のための「子守唄」

後半がスタンダードJAZZとクリスマス・ソング。

延原武春/テレマン・アンサンブルストンプ in KOBE(ピアノ、ベース、ドラムス)の演奏、ヴォーカルは原田紀子永海 孝。ガーシュウィンやコール・ポーターのソングス、「スターダスト」、「テネシー・ワルツ」、"Have Yourself A Merry Little Christmas"(ジュディー・ガーランド主演/映画「若草の頃」より)、"White Christmas"などが歌われた。

モラヴィア地方(現チェコ)で生まれ、「モーツァルトの再来」としてウィーンで時代の寵児となり、ユダヤ人だったためにナチス台頭とともにハリウッドに渡って映画音楽作曲家になったエーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルト。そのカルテットの第1楽章は匂い立つロマンチシズムに溢れている。ヨーロッパ文化の黄昏。第2楽章はウィーンのカフェを彷彿とさせる華やいだ雰囲気がある。

ガーシュウィンは最初から最後まで弱音器(ミュート)で演奏された。ヴァイオリンのハーモニクス(倍音)奏法が印象的。これは「20世紀のセレナーデ」と呼ぶべき佳曲。いいものを聴かせて貰った。

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翌7日(水)は兵庫県立芸術文化センターで中山裕一のヴァイオリン・リサイタル。「J.M.ルクレールのルーツを探る旅」という副題が付いている。共演はチェンバロ:高田泰治、チェロ:曽田 健。全員日本テレマン協会のメンバー。

  • コレッリ/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ホ短調 Op5-8
  • ヴィヴァルディ/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ イ長調 Op2-2
  • ソーミス/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト短調 Op2-10
  • ルクレール/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト短調 Op5-11
    (休憩)
  • ヘンデル/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ニ長調 HWV371
  • ルクレール/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ イ長調 Op9-4
  • J.S.バッハ/ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ト長調 BWV1019
  • ルクレール/タンブール(太鼓) アンコール

哀しみに満ちたコレッリ、技巧的で遊び心があるヴィヴァルディ。そして中山さんと同じく、ジャン=マリー・ルクレールは僕も大好きなフランスの作曲家である。ルイ15世より王室付き音楽教師に任命されるも、晩年は貧民街で隠遁生活を送り、あばら家で惨殺死体となり発見されるという人生もミステリアス。その音楽は決然とした佇まいで、凛として美しい。

コレッリに師事したソーミスの楽曲は恐らくこれが日本初演だという。

闊達なヘンデルを経て、最後は大バッハ。ヴァイオリンとチェンバロが対等な立場で主導権を交互に握り、丁々発止のやり取りが展開された。5楽章構成で第3楽章がチェンバロ独奏というのもユニーク。

中山さんのバロック・ヴァイオリンは端正で品があった。ただ、イタリアのファビオ・ビオンディやジュリアーノ・カルミニョーラみたいに、そこを突き抜けた大胆さ、奔放さが欲しい気もしたが、全般におとなしい日本人演奏家にこれを求めるのは、ないものねだりというものかも知れない。

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本多俊之at ロイヤルホース

大阪・梅田のライブハウス・ロイヤルホースへ。

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サックス奏者で、映画「マルサの女」「メトロポリス」「茄子 アンダルシアの夏」などの作曲家としても知られる本多俊之さんのライヴを聴く。ロイヤルホース初登場だそうだ。

他のメンバーは竹下清志(P)、荒玉哲郎(B)、東原力哉(Ds)。

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第1部、第2部に分かれ、演奏された曲目は、

  • チック・コリア/500マイルズ・ハイ
  • 本多俊之/ドリーム・カムズ・トゥルー(1983)
  • D. エリントン/ソフィスティケイティッド・レディ
  • 本多俊之/たちまち(アルバム「SMILE !」より)
  • 本多俊之/シンクロナイズド・カルテット(「スーパー・カルテット」より)
  • 本多俊之/マルサの女
  • チック・コリア/キャプテン・セニョール・マウス
    (リターン・トゥ・フォーエヴァーのアルバム「第7銀河の讃歌」より)
  • バート・バカラック/小さな願い "I Say a Little Prayer"

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本多さんは陽気な人だった。節電の東京と比べ「こちらは明るくていいです」と。

彼のサックスは高らかに歌い、豪快なブローがたまらない。スタイリッシュで都会的な音。

自作「たちまち」はアップテンポでノリのいい曲。

また「マルサの女」は元々4拍子で作曲されたが、伊丹十三監督から登場人物”権藤”のイメージで「足を引きずる感じが欲しい」とリクエストされ、5拍子に書き換えられたというエピソードを披露された。

今回特にチック・コリアの「キャプテン・セニョール・マウス」が気に入った。

また、バカラックは勢いがあり、凛々しく、格好よかった。

手ごたえのあるライブだった。本多さん、また大阪に是非いらしてください!

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The Age of Eiji 「不安の時代」から始動!〜大植英次/大フィル定期

ザ・シンフォニーホールへ。

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会(二日目)を聴く。

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昨シーズンこのコンビはふたつの「第9シンフォニー」で有終の美を飾ったが、今シーズンはふたつの「第2シンフォニー」で幕開け。

  • バーンスタイン/交響曲 第2番「不安の時代」
  • シベリウス/交響曲 第2番

まず最初に大植さんがマイクを持って登場。東関東大震災の被災者を想い、賛美歌 320番「主よ、みもとに近づかん」(Nearer My God To Thee)が演奏された。これは99年前(1912年)にタイタニック号が沈没する際、最後まで船上で音楽家が弾き続けた曲(試聴はこちら!)。指揮なしで弦楽器のみ。コンサートマスター・長原幸太さんのソロで始まり、続いて2nd.Vn.主席の田中美奈さんが加わり、弦楽合奏へ。「(戦争や)災害があったとき、人々の心を助ける目的でバッハやラヴェル(←恐らく「クープランの墓」のこと)が作曲したという前例はありますが、音楽家が演奏したという記録はこれくらいしかないんです」と大植さん。

実は僕も先月の大フィル定期を聴きながらタイタニック号のことを連想し、奇しくもレビューでそのことに言及している。

正にシンクロニシティ。

ジャズ・ピアニスト小曽根真さんをソリストに迎えたバーンスタインは「夜のシンフォニー」。ニューヨーカーらしく都会的で雄弁。小曽根さんはスウィングしてノリノリ、大植さんのタクトは複雑なリズム処理が見事であった。第2部「挽歌」は厚みのある弦の響き、凄まじい管の咆哮が強烈。「仮面劇(マスク)」はJAZZ。大植さんが指揮台で軽快にステップを踏む。シンコペーションが小気味よく、ここで前に出てきた(コントラバス主席)新 真ニさんのピッツィカートが弾ける!「エピローグ」は朝の爽やかさ。そこには気だるい虚無感も漂う。しかし音楽は最終的に(「ウエストサイド物語」のように)浄化され、力強く「再生の願い」を込めて締めくくられる。大植さんも小曽根さんも満面の笑み。会心の出来だった。

このシンフォニーが発表されたのが1949年。赤狩り(マッカーシズム)がアメリカで吹き荒れ始めたのが48年、東西冷戦が深刻となりベルリン封鎖が行われたのも同年である。そうした空気が"The Age of Anxiety"の背景に流れており、それは福島原発事故に伴う放射能の恐怖に晒された今の日本とシンクロニシティがある。

大植さんはバーンスタインから直接「Eiji、この曲をお前にやる」と言われたそうだ。しかしクラシックの技法からジャズまで幅広くこなせるピアニストが中々見つからず、レニーの死後21年間、一度も演奏する機会がなかったという。まさに満を持しての内容だったというわけ。だからこそシーズン最初の曲がこれだったのだろう。

なお、通常暗譜で指揮する大植さんだが珍しく譜面台が置かれており、レニーのスコアが表紙を上にして置かれていた。しかし演奏中、それは一度も開かれることはなかった。最後に大植さんが楽譜を高く掲げて盛大な拍手を贈る聴衆にアピール。それにキスするパフォーマンスも。まこと愛すべき人だ。

小曽根さんのアンコールは「ウエストサイド・ストーリー」から"Tonight"。ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」風に優しく始まり、最後は"Cool"のメロディも加わってマイルス・デイビスの"So What"仕立てに。粋で素敵だった。なお、定期一日目のアンコールはやはり「ウエストサイド・ストーリー」の"Somewhere"だったそうだ。

プログラム後半のシベリウスは大きくうねり、振幅のある演奏。音楽の表情、テンポがクルクル目まぐるしく変化する。大植さんのチャイコフスキーの解釈に近い印象を受けた。故にシベリウスがチャイコフスキーから、いかに多大な影響を受けていたかを今回如実に感じることが出来た。大フィルの濃い陰影ある弦の響きが素晴らしく、フィンランドの深い森が幻視された。第2楽章には仄暗い情念がめらめらと熾火のようにくすぶる。第3楽章には木枯らしが吹き抜ける疾走感があり、レント・エ・スアーヴェ(ゆっくり、しなやかに)と指定されたトリオでは自然を謳歌するのびやかさがあった。そしてスケールの大きな第4楽章へと怒涛の如くなだれ込む。そこには氷河を押し分けて進む船の力強さ、頼もしい推進力があり、大植さんはさらに一層激しくテンポを動かした。有無を言わせぬ圧巻の名演!

The Age of Eiji はこうして輝かしく船出した。さぁこれから一年、どのような驚きがさらに僕たちを待ち受けているのだろうか?大植/大フィルの動向から片時も目が離せない。

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荘村清志 ”アルハンブラの想い出”

大阪倶楽部へ。

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日本を代表するクラシック・ギタリスト荘村清志(しょうむら きよし)さんのコンサート。

  • バリオス/マドリガル、ラ・ギタリータ、郷愁のショーロ
  • ラインハルト(ディアンス編)/ヌアージュ(雲)
  • ディアンス/20通の手紙より
  • イルマール/バーデン・ジャズ組曲
    (休憩)
  • 賢王アルフォンス/聖母マリア
  • スペイン民謡/映画「禁じられた遊び」より”愛のロマンス”
  • タレルガ/アルハンブラ宮殿の想い出
  • グラナドス/アンダルーサ(スペイン舞曲集)
  • アルベニス/グラナダ、セビリア(スペイン組曲)
  • マイヤーズ/映画「ディア・ハンター」より”カヴァティーナ” (アンコール)
  • カタロニア民謡「聖母の御子」 (アンコール)

バリオスはパラグアイの作曲家。乾いた響きに哀愁が滲む。

ラインハルトの「ヌアージュ」はJAZZ。それをクラシック・ギターで弾けるようアレンジされたもの。爽やかに一陣の風が吹き抜ける。

20通の手紙」からは7曲 ー シドニー(友人)への手紙、セーヌ(河)への手紙、黒い手紙(アフリカ大陸へ)、ジャック・カルティエへの手紙(カナダ国歌のアレンジ)、北東(ブラジル)への手紙、フリア・フロリダ(バリオス作曲)への手紙、イサーク・アルベニスへの手紙。バラエティに富み、親しみやすい楽曲。

バーデン・ジャズ組曲」はブラジルのギタリスト(ボサノヴァの巨匠)、バーデン・パウエルへのオマージュ。

プログラム前半はノリのいい、近代ギター音楽を堪能した。

打って変わって後半は、過去へとタイム・スリップ。

聖母マリア」は12世紀アンダルシアの音楽。味わい深い古楽の響き。

アルハンブラの想い出」は遠方へのあこがれ。

グラナドスアルベニスはスペインを代表する作曲家。「アンダルーサ」はスペイン映画「エル・スール」でとても印象的に使われていた。

やっぱりスペインの音楽はギターが一番、その持ち味を発揮するなぁと感じられた冬の夜であった。

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北村英治 at ロイヤルホース 2010

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大阪・梅田のロイヤルホースへ。

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JAZZクラリネットの第一人者、北村英治さんのライヴを聴く。

北村さん以外にビアノ、ドラム、ベースという編成のカルテット。

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第1ステージ(19:00-20:00)

  • Rose Room
  • 忘れがたきニューオリンズ
    (Do You Know What It Means to Miss New Orleans?)
  • 恋人よ我に帰れ
  • Someday Sweetheart
  • Misty
  • A列車で行こう

第2ステージ(20:30-21:30)

  • アヴァロン(Avalon)
  • 虹の彼方に
  • 星影のステラ
  • ビギン・ザ・ビギン
  • バードランドの子守唄
  • For Eiji(クラリネット奏者バディ・デフランコが北村さんのために書いた曲)
  • Memories of You
  • Sing,Sing,Sing

第3ステージ(22:00-23:00)

  • Smiles
  • 身も心も
  • 黒いオルフェ
  • 小さな花(Sop Sax奏者シドニー・ベッシェ 作曲)
  • ディア シドニー(ボブ・ウィルバーがベッシェに捧げた)
  • チェロキー
  • スターダスト
  • 世界は日の出を待っている

ボサノヴァ調で耳に心地よい「For Eiji」や「黒いオルフェ」、そして「チェロキー」の疾走感。クラリネットの柔らかい音色、豊かな低音部に魅了された。

北村英治さん、御年81歳。足取りも確かで、まだまだお元気。抜群のスウィング感で速いパッセージも軽々と吹きこなす。

食事と酒を愉しみながら、計3時間のライヴを堪能した。

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これは画期的!/林家花丸の落語JAZZ

DVDで初めて桂枝雀さんの落語を聴いた時、下記記事のタイトルが瞬時に閃いた。

そして、故・笑福亭松鶴(六代目)も「落語はJAZZや」と言っていたという事実を知った→鶴志さんの証言へ!

落語とJAZZのコラボレーション。ありそうでなかったイヴェントを体験するために、天満天神繁昌亭へ。補助席も一杯の大盛況。全席自由でチケットに記載されている整理番号順での入場。

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実はこの公演、僕はチケット発売日の朝10時きっかりにチケットぴあで購入したのだが、なんと整理番号が102番だった(繁昌亭主催公演なら同じやり方で必ず一桁台を購入出来る)。想像するに花丸さんサイドが整理番号の1-100までを事前に押さえていたということなのでは?こういうやり方は些か理不尽(アンフェア)に感じられた。

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  • 笑福亭生寿/米揚げ笊
  • 桂三金/奥野君のコンパ(三金 作)
  • 林家花丸/電話の散財
  • 唐口ジャズカルテット/♪ジャズライブ
  • 林家花丸/JAZZ落語・七度狐

三金さんのネタは何度か聴いたことがあるが、半ばに登場するバルーンショーで、手術用ゴム手袋を膨らませてニワトリを擬態するという趣向は今回初体験。益々面白くなった。

電話の散在」は大正時代の作品。途中、ハメモノ(お囃子)がふんだんに盛り込まれ、賑やかで愉しい。

仲入りをはさんでジャズライブ。カルテット(トランペット、ギター、ドラム、ベース)で演奏されたのは下記。

  1. TAKE THE 'A' TRAIN(A列車で行こう)
  2. STARDUST(スターダスト)
  3. BLUE BOSSA(ブルー・ボッサ)

そして待望のJAZZ落語。高座の下手にカルテットが陣取る。花丸さんの出囃子が何とクルト・ワイル/「三文オペラ」より”マック・ザ・ナイフ”!イカしてる。もうこれだけで痺れた。

落語のハメモノの代わりにJAZZが響き、カラスや鳩、山羊の擬音あり。調子に乗った花丸さん、「アルマジロ」「バクが夢を食べる音!」などと言って、唐口一之さんを困らせる一幕も。客席が大いに沸く。話の後半では骸骨がラインダンス(ロケット)を踊り、「彼岸の花咲く頃」を歌うなど宝塚歌劇のパロディも(宝塚のテーマ曲は「すみれの花咲く頃」)。宝塚雪組バウホール公演「雪景色」の監修をされ、すっかり宝塚ファンになった花丸さんの面目躍如である。

いやぁ、斬新でエキサイティングな会だった。客席を立った人々が口々に「今日は本当に面白かったね!」と言い合う光景が印象的だった。

今回、花丸さんは21世紀の落語に新たな地平を拓いたと言っても過言ではないだろう。是非これからもJAZZ落語を続けて下さい。次回も絶対行きます。

ところで花丸さんによるとこの日、桂九雀さんが楽屋に手伝いに来られていたそうだ。趣味でクラリネットを吹く九雀さん、JAZZ落語の成果をその目で確かめに来たという側面もあったのかも?

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北村英治 with アロージャズオーケストラ/Hyogo Christmas Jazz Festival 2009

クリスマス・イヴの12月24日、兵庫県立芸術文化センターへ。

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ジャズ・クラリネットの第一人者・北村英治と、関西で活躍するアロージャズオーケストラの共演を聴くため。

ロビーでは日本酒(白鶴)の試飲もあった。

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大ホール(2001席)は満席。曲目は以下の通り。

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プログラム後半、「ブルー・クリスマス」(エルヴィス・プレスリーによるカヴァーが有名)と「ザ・クリスマス・ソング」(メル・トーメ作曲)はピアノ&ヴォーカルの高浜和英さんと北村英治さん二人きりのセッション。「スリップド・ディスク」(ベニー・グッドマン)、「ムーングロウ」(映画「ピクニック」のテーマ)になるとアロージャズからドラムスとベースが加わり、カルテットになった。色々なJAZZの形態が愉しめる構成だった。

生誕100年を迎えたベニー・グッドマンを中心に、グレン・ミラー、デューク・エリントン楽団の十八番など1920年代後半(大恐慌の時代)から1940年代(第二次世界大戦)にかけてのスウィング・ジャズの名曲が綺羅星のごとく演奏された。丁度この頃は、アメリカ文学で言えばスコット・フィッツジェラルド(「グレート・ギャツビー」「ベンジャミン・バトン」)やアーネスト・ヘミングウェイ(「武器よさらば」「誰がために鐘は鳴る」)ら、いわゆるロスト・ジェネレーション(失われた世代)の作家たちが活躍した時代に一致する。"The Jazz Age"とも呼ばれ、ジャズの黄金期だった。

今回のコンサートを聴いて、この時代の音楽の豊穣さに圧倒される想いがした。

ロックンロールが台頭する1950年代後半になると若者の興味はそちらに移行し、JAZZは衰退の一途を辿る。

ビー・パップ・スタイルの行き詰まりを打開すべく、1960年代に入ると「モダン・ジャズ理論の拘束からの開放」「既成観念の否定」を謳ったフリー・ジャズが登場する。それはある意味このジャンルを徹底的に破壊する行為であった。そしてJAZZは完全に大衆の支持を失うことになる(マニア化)。

これは20世紀にシェーンベルクの十二音技法の出現と共に、ソナタ形式と調性音楽が破壊され、聴衆にそっぽを向かれてしまったクラシック音楽にも同じことが言える。そしてジャンルは死に絶え、後には不毛な荒野だけが残った。歴史は繰り返される。

北村さんは「この時代のJAZZはSPレコードに収まるよう、3分程度の短い曲が多いのです。当時の人々は曲にあわせて踊ったので、丁度よい長さだったのでしょう。そしてその中できちんと完結している。最近の10分を越えるような演奏は延々と続くソロがあったりして、聴いてる途中で『もういいよ』というものが少なくない」と仰り、僕もその通りだなと頷いた。

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北村さんのクラリネットの音色は柔らかく、自在に歌い、スウィングする。80歳という年齢を全く感じさせない、かくしゃくとして粋なステージだった。

アロージャズは今回初めて聴いた。(小曽根真 presents)No Name Horsesほど各人のソリストとしての技量があるわけではないが、アンサンブルが非常に揃っており精度の高さに舌を巻いた。素晴らしいJazz Orchestraである。

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聴いておきたい映画主題歌 ベスト25

映画音楽ベスト50に続き、今回は主題歌(挿入歌)を選ぼう。やはり1人の作曲家につき1曲という原則を遵守した。また、映画のために書かれたオリジナル作品のみを対象としている。例えば「ボディーガード」"I Will Always Love You"とか「カサブランカ」"As Time Goes By"( 時の過ぎ行くままに)、あるいは「卒業」"The Sound of Silence"などは、映画製作前から存在するヒット曲なので、除外した。なお、各々のタイトルをクリックすれば何かが起こるかも?

  1. 「ふたり」草の想い
  2. 「オズの魔法使い」虹の彼方に
  3. 「ホーム・アローン」Somewhere in My Memory
  4. 「ピノキオ」星に願いを
  5. 「白雪姫」いつか王子様が
  6. 「アラジン」A Whole New World
  7. 「追憶」The Way We Were
  8. 「アルフィー」アルフィー
  9. 「スラムドッグ$ミリオネア」Jai Ho
  10. 「シェルブールの雨傘」I Will Wait For You
  11. 「ライオンキング」Circle of Life
  12. 「ティファニーで朝食を」ムーン・リバー
  13. 「男と女」男と女
  14. 「フラッシュダンス」What a Feeling
  15. 「ワーキング・ガール」Let the River Run
  16. 「トップ・ハット」頬よせて
  17. 「ゴールド・ディガーズ36年」ブロードウェイの子守歌
  18. 「アラモ」遥かなるアラモ(The Green Leaves of Summer)
  19. 「8 Mile」Lose Yourself
  20. 「若草の頃」トロリー・ソング
  21. 「ニューヨーク、ニューヨーク」テーマ
  22. 「アメリカ物語」Somewhere Out There
  23. 「007 ロシアより愛をこめて」ロシアより愛をこめて
  24. 「有頂天時代」今宵の君は
  25. 「踊らん哉」Let's Call the Whole Thing Off

ディズニー映画から4本(ピノキオ白雪姫アラジンライオンキング)。フレッド・アステアが歌ったのが3曲(トップ・ハット有頂天時代踊らん哉)で、ジュディ・ガーランドが2曲(オズの魔法使い若草の頃)、さらにジュディの娘ライザ・ミネリが1曲(ニューヨーク、ニューヨーク)という結果になった。

ジュディ・ガーランドが歌う「スター誕生」('54)"The Man That Got Away"もどうしても入れたかったが、これを作曲したのが「虹の彼方に」のハロルド・アーレンだから断念した。

また番外として、エッダ・デル・オルソによる(歌詞のない)スキャットが限りなく美しい、エンニオ・モリコーネ作曲の「ウエスタン」('68)"Once Upon a Time in the West"を挙げておきたい。

「草の想い」大林宣彦(作詞)、久石 譲(作曲)。久石さんの楽曲なら宮崎 駿(作詞)の「君をのせて」(天空の城ラピュタ)や「となりのトトロ」の方が一般的だろう。勿論、何れも名曲である。なお、「草の想い」の1番の歌詞は大林監督、2番は久石さんが歌っている。

2001年に全米レコード協会が選定した「20世紀の名曲」(Songs of the Century)で堂々第1位に輝いた「虹の彼方に」が、実は世に出なかったかもしれないという誕生秘話がウィキペディアに掲載されている。面白いので是非お読み下さい→こちら

ジョン・ウイリアムズが作曲した「ホーム・アローン」はクリスマスの名曲の宝庫である。"Somewhere in My Memory"も好きだし、"Star of Bethlehem"も捨てがたい。またジョンが書いた歌曲なら映画「イエス・ジョルジョ」 (日本未公開、DVDおよびサントラCD未発売)の"If We Were In Love"もいい。映画に主演した三大テノールの一人、ルチアーノ・パバロッティが英語で歌い、アカデミー賞にノミネートされた。

アラン・メンケンなら代わりに「美女と野獣」、あるいは「リトル・マーメイド」"Part of Your World"や「ポカホンタス」"Color of the Wind"でも良い。なお、「アラジン」でジャスミン姫のパートはミュージカル「ミス・サイゴン」のリア・サロンガが歌っている。

バーブラ・ストライザンドの名唱が印象深い"The Way We Were"を書いたマーヴィン・ハムリッシュはミュージカル「コーラスライン」の作曲家としても名高い。その代表曲"ONE"は「KIRIN一番搾り生ビール」のCMで使用された。そうそう、映画「アイス・キャッスル」の主題歌"Through the Eyes of Love"(この愛に生きる)も好きだなぁ(映画は未見)。

ハル・デヴィッド(作詞)バート・バカラック(作曲)のコンビは珠玉の名曲を沢山生み出した。僕が一番好きなのはカーペンターズ版が有名な"(They Long to be) Close to You"(遥かなる影)。これは映画「愛しのロクサーヌ」「メリーに首ったけ」などにも登場するが、残念なことに映画発祥の曲ではない。主題歌の人気投票で必ず上位に来るのが「明日に向かって撃て」"Raindrops Keep Fallin' On My Head"(雨にぬれても)なのだけれど、僕は余り気が進まない。そこで「アルフィー」を。これなら文句なしにいい。

シェルブールの雨傘」のミッシェル・ルグランに関しては、オスカーを受賞した「風のささやき(華麗なる賭け、The Thomas Crown Affair)とか、僕の偏愛する「愛のイエントル」(バーブラ・ストライザンド 監督・主演・歌)から"Papa, Can You Hear Me ?"や"A Piece of Sky"なんかも入れたかった!

ヘンリー・マンシーニは「ティファニーで朝食を」や「酒とバラの日々」、あるいは「シャレード」「いつも2人で」など選択肢が多くて迷った。

アーヴィング・バーリンが映画「スイング・ホテル」('42)のために書いた、"ホワイト・クリスマス"も入れたかったが、同じバーリンの"Cheek to Cheek"(頬よせて)はどうしても外せなかった。フレッド・アステアがこれを歌う場面は、映画「グリーン・マイル」にも登場する。

ブロードウェイの子守唄はむしろ、舞台ミュージカル「42nd Street」の方でお馴染みかも知れない。第1幕のクライマックスに歌われる、その群舞(タップ・ダンス)の迫力は圧巻。「生きてて良かった!ミュージカル最高!!」と想わず叫びたくなる瞬間だ。

アラモ」を作曲したディミトリー・ティオムキンはロシアのウクライナ出身。だから曲調にどことなく哀愁が漂い、まるでロシア民謡みたいな味わい。アカデミー歌曲賞ノミネート。

エミネムの"Lose Yourself"はヒップホップ(ラップ)・ミュージックが初めてアカデミー歌曲賞を受賞したという意味において、衝撃的だった。新しい時代の到来を告げる歌と言えるだろう。「8 Mile」は彼の半自伝的映画で中々面白い。

若草の頃」には"Have Yourself A Merry Little Christmas"というクリスマスの名曲もある。

ジェームズ・ホーナーの曲なら大概の人が「タイタニック」の"My Heart Will Go On"を挙げるだろう。でもへそ曲がりの僕は、敢えてアニメ「アメリカ物語」から。アカデミー歌曲賞ノミネート。

ジョン・バリー作曲の「ロシアより愛をこめて」は、シャーリー・バッシーのパンチが効いた歌が印象的な「ゴールドフィンガー」に置き換え可。またマット・モンローが歌う、「さらばベルリンの灯」の主題歌も秀逸。

アカデミー賞に輝いた歌「今宵の君は(The Way You Look Tonight)」はジュリア・ロバーツが主演した「ベスト・フレンズ・ウェディング」でも印象的に使われていた。またこの映画はハル・デヴィッド&バート・バカラックの名曲オン・パレード!とてもハッピーな気持ちになれる。お勧め。

踊らん哉」はアイラとジョージのガーシュウィン兄弟による楽曲。2人の掛け合いが愉しい。アステアが歌う"They Can't Take That Away from Me"はアカデミー歌曲賞にノミネートされた。

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好きな歌を選定するという作業はとても愉しく、豊かな時間であった。この記事を締め括るにあたり、やはり次の言葉ほど相応しいのもは他にないだろう。

これから先の人生で、 どんなことがあるのか知らないけれど、いとしい歌の数々よ、どうぞぼくを守りたまえ。  
(芦原すなお 著「青春デンデケデケデケ」より)

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小曽根真 presents No Name Horses

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サンケイホールブリーゼで、ジャズ・ピアニスト小曽根真さん率いるビッグバンド、No Name Horsesを聴いた。

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No Name Horsesは、小曽根さんがプロデュースした伊藤君子(Vo)のアルバムのレコーディングのために2004年に結成された。このハイ・クオリティなサウンドに手ごたえを感じた小曽根さんは継続して活動することに決め、以後1年に1回のペースでツアーを行っている。

トランペット4、トロンボーン3、サクソフォン5、それにベース、ドラムス、ピアノ各1という編成。サクソフォン奏者によるフルートおよびクラリネットへの持ち替えあり。

曲目は(順不同)、

  • Toi & Moi(小曽根真)
  • Midnight Call(三木俊雄)
  • You Always Come Late(小曽根真)
  • Three Wishes(小曽根真)
  • You are not Alone(小曽根真)
  • Carney (Rick Henderson)
  • She(シャルル・アズナブール、ピアノ・ソロ
  • No Siesta(小曽根真)
  • Cave Walk(小曽根真)
  • Three Wishes(小曽根真)
  • No Strings Attached(小曽根真)

5月にリリース予定のアルバム「Jungle」からも2曲、カラフルなラテン・ナンバーが披露された。

Sheは昨年2月、大阪フィルハーモニー交響楽団定期演奏会に小曽根さんが客演したときにアンコールで聴いた。

また大阪クラシック2008ではこんな素敵な出来事もあった。

小曽根さんは高校生の時、旧サンケイホールで秋吉敏子 with ビッグバンドの演奏を聴いて、「何時か自分もこんなバンドをやってみたい」と思われたそうだ。

No Name Horsesのメンバーは、各々がリーダーとして活躍している世界的ミュージシャン揃い。ホーンが唸り、ゴージャスな音色で聴き応えあり。全員のソロがフィーチャーされていたが、皆べらぼうに上手い。日本最高峰のビッグバンドであることは間違いない。

神戸出身の小曽根さんによる関西弁を交えたMCもとても面白い。ある意味、淀工の丸谷明夫先生と似た資質を感じた。この人柄のよさで優秀な音楽家たちが彼のもとに集結したのだろうな、と納得がいった。

また、トロンボーン奏者による《アフリカ象とインド象の鳴き声》というパフォーマンスもとても愉快だった。

No Name Horsesは来る7/2(木)~4(土)に、ビルボードライブ大阪(06-6342-7722)でもステージが予定されているそうである。

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村田陽一(Tb) at ロイヤルホース

梅田のライヴハウス「ロイヤルホース」でJazzを聴く。

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今回の出演者は村田陽一(Tb)、竹下清志(P)、三原 脩(B)、東原力哉(Ds)の4人。

Murata

村田陽一さんはテレビ「古畑任三郎」のアレンジや、サウンドトラックの演奏にも参加されている世界的トロンボーン奏者である。

  • 村田陽一/オリジナル曲(タイトル不明)
  • ホレス・シルヴァー/ニカの夢(Nica's Dream)
  • デューク・エリントン/ソリチュード
  • 村田陽一/Please Send Me Someone to Love
  • セロニアス・モンク/エビデンス
  • オーネット・コールマン/Blues Connotation
  • ローランド・カーク/Lady's Blues
  • スティーヴィー・ワンダー/Lately(カラフルなボサノヴァ)
  • 村田陽一/M6 2009(新曲。しっとりとしたバラード)

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村田さんの厚みがあって柔らかい音色に魅了された。また他のメンバーも腕っこきが揃っており、特に力哉さんの鮮やかなスティック捌きには見惚れた。目の前で演奏してくれるのでド迫力だった。

ここ1年くらい、村田さんは毎月のようにここでライヴをされているそうで、先月の模様はこちらのロイヤルホース公式ブログで試聴することが出来る。

前にも書いたがここの食事はとても美味しい。BIO(ビオ)ワインも飲めるし、Jazzを聴くには最高の環境である。僕はちょうど今レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」(村上春樹 訳)を再読中なので、ギムレットがふと飲みたくなり注文した。

"A real gimlet is half gin and half Rose's Lime Juice and nothing else"
「本当のギムレットはジンとローズ社のライム・ジュースを半分ずつ混ぜるんだ。他には何も加えない」
  (「ロング・グッドバイ」より)

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