古典芸能に遊ぶ

2024年12月13日 (金)

柳家喬太郎 なにわ独演会 2024

9月23日(月・祝)ドーンセンターホール@大阪市へ。昼夜通しで柳家喬太郎の落語を聴く。

昼の部

 ・ 柳家喬太郎:母恋いくらげ
 ・ 神田茜:初恋エンマ
 ・ 柳家喬太郎:居残り佐平次

夜の部

 ・ 柳家喬太郎:ウルトラのつる
 ・ 神田茜:あのころの夢
 ・ 柳家喬太郎:おせつ徳三郎

神田茜の創作講談は心底退屈だった。とにかく物語としてつまらない。時間の無駄。

喬太郎の新作『母恋いくらげ』は桂春蝶で2回聴いたことがあるが、本人が演じるのにめぐり逢うのはこれが初めてかも。あと『極道のつる』は知っているけど『ウルトラのつる』はお初だった。

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2024年12月12日 (木)

桂 二葉 独演会@兵庫芸文

9月1日(日)兵庫県立芸術文化センターへ。

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 ・ 桂 九寿玉:看板のピン
 ・ 桂 二葉:天狗刺し
 ・ 桂 三実:早口言葉が邪魔をする
 ・ 桂 二葉:まめだ
 ・ 桂 二葉:佐々木裁き

語り手が女性なので、やはり二葉は『まめだ』とか『佐々木裁き』など子どもを演じさせるとしっくりくる。『天狗刺し』の主人公=アホも、なんだか可愛らしい。愛嬌がある。

彼女は2021年『天狗刺し』でNHK新人落語大賞を女性として初めて受賞。さらに翌22年には関西で「第17回繁昌亭大賞」を女性初、かつ入門から12年目という最少キャリアで受賞した。いま一番聴くべき若手噺家である。

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柳家喬太郎独演会@兵庫芸文 2024

5月18日兵庫県立芸術文化センターへ。柳家喬太郎の独演会を昼・夜通しで聴く。

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昼席

 ・柳家吉緑:猫と金魚
 ・柳家喬太郎:花筏
 ・ダーク広和:マジック【タバリのロープ】
 ・柳家喬太郎:すみれ荘二〇一号

夜席

 ・柳家吉緑:壺算
 ・柳家喬太郎:同棲したい
 ・ダーク広和:マジック【日本セイロ】
 ・柳家喬太郎:おせつ徳三郎

芸能生活35周年ということで【喬太郎飴】が配布された。

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これ劇場(兵庫芸文)が用意したというのが何だか愉快だ。

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2024年6月15日 (土)

映画「オッペンハイマー」と、湯川秀樹が詠んだ短歌

109シネマズ大阪エキスポシティのIMAXレーザー/GTで『オッペンハイマー』を鑑賞。公式サイトはこちら

評価:A+

Oppenheimer

「原爆の父」を描く、ジャンルとしては伝記映画に属する。

本作のややこしさは時間軸をいじくっているとことにある(クリストファー・ノーラン監督の作品ではいつものことだが)。大きく分けて2つの柱がある。

 ①〈核分裂(fission)/カラー〉1954年米ソ冷戦と赤狩りの時代、オッペンハイマーがソ連のスパイ容疑をかけられたことに対する聴聞会(非公開/狭い部屋)と彼の回想。主観。
 ②〈核融合(fusion)/白黒〉1959年アイゼンハワー大統領時代、ルイス・ストローズが商務大臣に任命される前にその資格を問う公聴会(公開/広い部屋)とストローズの回想。客観。

ストローズがオッペンハイマーと初めて会うのは1947年なので、白黒パートは全て原爆投下(第二次世界大戦終結)後の出来事である。つまり白黒パートの方が基本的にカラー・パートより後の時代なのでそこがさらに混乱のもとになる。

なお原爆は核分裂(fission)を原理とする爆弾であり、水爆は核融合(fusion)反応を主体とする(核分裂反応も併用している)。だからカラー・パートは原爆が生み出されるまでの話で、白黒パートでは水爆をどう扱うかが議論される。

現代の物理学は、〈相対性理論〉と〈量子論〉という2大理論を土台にしている。時空の理論である〈一般相対性理論〉は、主にマクロ(巨視的)な世界を扱い、〈量子論〉は原子や素粒子(原子をさらに分解した最小単位)など、ミクロな世界を支配する法則についての理論である。ミクロな時空では、一般相対性理論が役立たない

アインシュタインは空間と時間が時空間の持つ二つの様相であり、エネルギーと質量もまた同じ実体がもつ2つの面にすぎないと考えた。だからエネルギーが質量に変わったり、質量がエネルギーに変わったりする過程が、必ず存在する筈だ。そこからE=mc2という有名な公式が導き出された(:エネルギー、m:質量、c:光速度)。そして質量をエネルギーに変換することで、核兵器や原子力発電の開発に繋がった。

時空間は曲がる」。これが、〈一般相対性理論〉を支えている発想である。地球が太陽の周りを回るのは、太陽の周りの時空間が太陽の質量により屈曲しているからである。地球は傾いた空間を真っ直ぐに進んでいるのであって、その姿は漏斗(ろうと)の内側で回転する小さな玉によく似ている。

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一方、〈量子論〉を基礎づける三つの考え方は粒性・不確定性・相関性(関係性)である。エネルギーは有限な寸法をもつ「小箱」から成り立っている。量子とはエネルギーの入った「小箱」のことであり、それが持つエネルギーはE=hvで表せる(:エネルギー、:プランク定数、:振動数)。

自然の奥底には「粒性」という性質があり、物質と光の「粒性」が、量子力学の核心を成す。その粒子は急に消えたり現れたりする(不確定性)。言い換えるなら世界を構成するあらゆる物質が粒子であるとともに、波の性質を備えていると考える(ここでの波とは確率の波である)。つまり量子は一見矛盾した2つの特徴(粒/波)を同時に持っている。

粒状の量子が間断なく引き起こす事象(相互作用)は散発的であり、それぞれたがいに独立している。量子たちは、いつ、どこに現れるのか?未来は誰にも予見できない。そこには根源的な不確定性がある。事物の運動は絶えず偶然に左右され、あらゆる変数はつねに「振動」している。極小のスケールにあっては、すべてがつねに震えており、世界には「ゆらぎ」が偏在する。静止した石も原子は絶え間なく振動している。世界とは絶え間ない「ゆらぎ」である よって自然の根底には、確率の法則が潜んでいる。ひとたび相互作用を終えるなり、粒子は「確率の雲」のなかへ溶け込んでゆく。

 ・ 【増補改訂版】時間は存在しない/現実は目に映る姿とは異なる〜現代物理学を読む 2019.11.18

『オッペンハイマー』で話題になるアインシュタインの発言「神はサイコロを振らない」は、観測される現象が偶然や確率に支配されることもある、とする量子力学の曖昧さを批判したもので、「そこには必ず物理の法則があり、決定されるべき数式がある筈だ」という立場から、彼は〝神″をその比喩として用いた。

僕が認識した範囲で本作にノーベル物理学賞受賞者は9名登場する。アルベルト・アインシュタイン/ニールス・ボーア/イシドール・イザーク・ラビ/アーネスト・ローレンス/ルイス・ウォルター・アルヴァレス/エンリコ・フェルミ/リチャード・P・ファインマン/ハンス・ベーテ/ヴェルナー・ハイゼンベルク ら。うちハイゼンベルクのみナチス・ドイツ側で、アインシュタインを除き残る7名はマンハッタン計画に関わった。

マンハッタン計画に参加した学者のうち、オッペンハイマー兄弟/イシドール・イザーク・ラビ/レオ・シラード/エドワード・テラー/リチャード・P・ファインマン/ハンス・ベーテ がユダヤ人。またエンリコ・フェルミはローマ生まれのイタリア人だが、妻がユダヤ人であったため迫害を恐れアメリカに亡命した(ムッソリーニ政権下のイタリアでユダヤ人がどういう目にあったかについては映画『ライフ・イズ・ビューティフル』に詳しい)。

マンハッタン計画が世界最高の叡智を結集したものであり、日本・ドイツ・イタリアの三国が束になっても敵いっこないし、ユダヤ人であるということを理由にアインシュタインら天才たちを放逐したドイツがいかに愚の骨頂であったか、よく分かるだろう。

物理学者で中間子の存在を理論的に予言し、1949年に日本人として初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹はたくさんの短歌を残した。原爆投下について詠ったものがいくつかあるので、最後にご紹介しよう。

天地(あめつち)のわかれし時に成りしとふ
原子ふたたび砕けちる今

(とふ:読み「とう」、意味「という」)

この星に人絶えはてし後の世の
永夜清宵(えいやせいしょう)何の所為ぞや

(永夜:秋や冬に夜が長く感じられること)(何の所為ぞや:何のためにあるのだろうか)

まがつびよふたたびここにくるなかれ
平和をいのる人のみぞここは

(禍津日神:まがつひのかみー黄泉の穢れから生まれた神で、災厄を司るとされている) これは広島の平和記念公園で詠まれた。

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2023年10月11日 (水)

柳家喬太郎 なにわ独演会 2023

9月23日(祝)ドーンセンターホール@大阪市へ。柳家喬太郎の落語を聴く。

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昼の部

 ・柳家喬太郎:転宅
 ・三増紋之助:江戸曲独楽
 ・柳家喬太郎:残酷なまんじゅうこわい

夜の部

 ・柳家喬太郎:品川心中
 ・三増紋之助:江戸曲独楽
 ・柳家喬太郎:明日に架ける橋

『残酷なまんじゅうこわい』は古典落語のパスティーシュ。そういう意味ではウルトラマン落語『抜けガヴァドン』(作:喬太郎)に近い。途中までは『まんじゅうこわい』のまんま噺が進行するのだが、次第に『バトル・ロワイヤル』の様相を呈してきて、最後は『そして誰もいなくなった』。傑作。

『明日に架ける橋』は2007年9月24日に安田生命ホールで行なわれたSWAの“朝の夕焼け”をテーマにした公演で生まれた新作。春風亭昇太が口演したりもしているらしい。1996年にフジテレビで放送された長瀬智也・酒井美紀主演のドラマ『白線流し』が引用されている。なんだか懐かしかった。

長瀬くんは本当に素晴らしい役者だった。2021年ジャニーズ事務所を退所後は「裏方になる」と宣言し事実上芸能界引退状態だが、現在ジャニーズは機能不全に陥っているし、今後干渉されることもないだろうから是非現役復帰して欲しい。才能が惜しいよ(特にクドカンと組んだTVドラマ『タイガー&ドラゴン』と『うぬぼれ刑事』が好き♡前者は落語家が主人公で、後者は向田邦子賞を受賞した)。

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2023年6月23日 (金)

柳家喬太郎独演会@兵庫芸文 2023

5月21日(日)兵庫県立芸術文化センターへ。柳家喬太郎独演会を聴く。

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昼席

 ・春風亭かけ橋:小言念仏
 ・柳家喬太郎:百川
 ・寒空はだか:漫談
 ・柳家喬太郎:錦木検校

夜席

 ・春風亭かけ橋:闇が広がる
 ・柳家喬太郎:残酷なまんじゅう怖い
 ・寒空はだか:漫談
 ・柳家喬太郎:当世女甚五郎

かけ橋の『闇が広がる』は歌舞伎を題材にした古典落語『七段目』と宝塚歌劇の人気演目「エリザベート」を掛け合わせたパスティーシュで、実際に『闇が広がる』が歌われる。他にミュージカル「レ・ミゼラブル」「オペラ座の怪人」「美女と野獣』にも言及され、面白かった!

喬太郎は青森県の名物【味噌カレー牛乳ラーメン(バターのせ)】の話題をマクラで。美味しくて病みつきになり、青森再訪時にもまた食べに行ったそう。

彼は二つ目の頃、「キョンキョンと呼んでください」と盛んに高座で言っていた。するとある日、演芸専門の月間誌『東京かわら版』に小泉今日子のエッセイが掲載されており、「落語界にもキョンキョンがいるそうで」と書かれていて赤面した。どうやら彼女は「キョンキョン」というキーワードでエゴサーチし、喬太郎のことを知ったらしい。お気に入りの演目は『午後の保健室』(ここで場内爆笑)。2017年に小泉今日子は落語の人情噺を原作とする舞台『名人長二』をプロデュース。喬太郎は劇場に足を運び、ロビーに立っていた小泉に挨拶しようと近づくと彼女が気が付いて、「もしかして、キョンキョン?」と声を掛けてくれたという。元祖に言われたら、こんなに嬉しいことはないよね。実に愉快なエピソードで客席は大いに盛り上がった。

昼席の古典はいずれも何度か喬太郎の高座で聴いたことのあるネタだったので残念。夜席は新作の会なので『怪奇大作戦』が出囃子に使われたのが嬉しかった(通常は『まかしょ』)。

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2023年3月10日 (金)

「芝浜」ネタおろし!〜笑福亭鶴瓶落語会

1月28日(土)兵庫県立芸術文化センターへ。

 ・笑福亭鶴瓶:鶴瓶噺
 ・桂二葉:金明竹
 ・笑福亭鶴瓶:妾馬
 ・笑福亭鶴瓶:芝浜

桂二葉は2021年に東西の噺家を対象にしたNHK新人落語大賞を受賞し、22年女性として初めて、さらに最年少で繁昌亭大賞を受賞した。また同年咲くやこの花賞も受賞するなど飛ぶ鳥を落とす勢いである。いや〰面白かった!畳み掛けるリズム感が心地良い。

彼女はこの世界に入る前に鶴瓶の追っかけをしていたことで有名なのだが、鶴瓶の自宅を突き止めたエピソードなど、びっくりするような手法でちょっとここには書けないのだが、めっちゃ笑った。鶴瓶を通して落語に出会ったようだが、米朝一門の桂米二に入門するというところも面白い。ちゃんと事前に米二から鶴瓶に「私が弟子に取ってもええですか?」と、ことわりの電話が入ったそう。

ネタおろしとなった「芝浜」は大阪の男が出奔し江戸に住み着くという設定に。出来は、うーん、まぁ、そこそこ。一年後にどう変わるか、来年の落語会に期待する。

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2022年12月18日 (日)

「ハワイの雪」と忠臣蔵特集〜柳家喬太郎 独演会@兵庫芸文 2022

12月17日(土)兵庫県立文化センターへ。

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〈昼の部〉

 ・柳家やなぎ:牛ほめ
 ・柳家喬太郎:ウルトラ仲蔵(喬太郎 作)
 ・一龍斎貞寿:鎌倉星月夜
 ・柳家喬太郎:ハワイの雪(喬太郎 作)

〈夜の部〉

 ・柳家やなぎ:子知る

 ・柳家喬太郎:カマ手本忠臣蔵(喬太郎 作)
 ・一龍斎貞寿:南部坂雪の別れ
 ・柳家喬太郎:俵星玄蕃(喬太郎 作)

柳家喬太郎の出演する落語会は既に40公演以上聴いているのだが、今まで一度も遭遇出来なかったネタが『ハワイの雪』。それを漸く聴けて感無量である。円谷プロ公認〈ウルトラマン落語〉も相変わらず愉しい!

夜の部は忠臣蔵特集で『俵星玄蕃』は三波春夫が歌った〈長編歌謡浪曲〉が有名。遺族から唯一カバーを許された柳亭市馬はこれをデビュー・シングルで歌ったり、 落語会でも自慢の喉を披露している。今回は喬太郎による落語版で堪能した。

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2022年9月 7日 (水)

第5回 柳家喬太郎なにわ独演会 2022

9月3日(土)ドーンセンターホール@大阪市へ。柳家喬太郎を聴く。

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喬太郎は最近膝の調子が悪いそうで、通常江戸落語では使わない見台と膝隠しを前に置き、胡座をかいての口演。

昼の部

 ・柳家喬太郎:百川
 ・寒空はだか:漫談
 ・柳家喬太郎:お若伊之助(初代 三遊亭円朝 作)

夜の部

 ・柳家喬太郎:野ざらし
 ・寒空はだか:漫談
 ・柳家喬太郎:ペタリコン(三遊亭円丈 作)

客席に子供がいないこともありマクラで艶笑小噺、喬太郎作〈東京ホテトル音頭〉、そしてブルー・ライト・ヨコハマの旋律に乗せて3分で出来る『芝浜』などを披露してくれた。さらに入門前に一年半、福家書店で働いていたときの〈書店店員発注電話〉も。また映画『シン・ウルトラマン』の感想は「最高!」と(喬太郎は持ちネタに『抜けガヴァドン』などウルトラマン落語がある)。

喬太郎で『ペタリコン』を聴くのは多分これが3回目。やはり凄味がある。人間の冷酷さを演じさせたら落語家で彼の右に出るものはいない。今回初めて気がついたが、これってモロにパワーハラスメントの噺だね。因みにパワハラは和製英語であり、英訳するとAbuse of Authority(権限の乱用)とか、Workplace Bullying(職場でのいじめ)ということになるらしい。

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2022年5月 6日 (金)

笑福亭鶴瓶 落語会@兵庫芸文 2022

5月5日(祝)、兵庫県立芸術文化センターへ。

 ・三遊亭白鳥:トキそば
 ・笑福亭鶴瓶:三年目
 ・笑福亭鶴瓶:お直し

2022年1月29日(土)の振替公演。鶴瓶が新型コロナウィルス感染症陽性者の濃厚接触者になったため、延期された。

鶴瓶の『お直し』は聴き飽きた。女性の一人称という形式も彼の資質に合っていない。

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