古楽の愉しみ

お菓子の国&北欧のクリスマス@兵庫芸文

兵庫県立芸術文化センターへ。

オペラ「ヘンゼルとグレーテル」の上演を控え、ロビーはお菓子の国に変身していた。

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オペラがテーマなので、お菓子の家にヘンゼルやグレーテル、そして魔女がいるのがお分かり頂けるだろうか?

さて、「北欧のクリスマス」と題された演奏会の話に移ろう。これは「世界音楽図鑑」シリーズの一つである。昨年は「炎のジプシー・ブラス」を同じ会場で聴いた。

会場内のイベントとして北欧のクリスマス☆マーケットもあり、キャンドルや焼き菓子、フィンランドのパンなども売られていた。

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まずはフィンランド北部からやってきたウッラ・ピルッティヤルヴィ(ヨイク)&フローデ・フェルハイム(ヨイク、シャーマンドラム、シンセサイザー)の演奏。ヨイクとは少数民族サーミの人々に太古から伝わる歌唱法。トナカイを呼び寄せたり自然と交信するための手段として用いられているそうである。摩訶不思議な味わい(珍味)。シャーマン(巫女・祈祷師)が絡んでいるということもあり、僕はなんとなくオーストラリアの先住民族アボリジニの音楽を連想した(アボリジニの民族楽器ディジュリドゥDidgeridooは昔から精霊と交流する祭儀で用いられてきたという)。

プログラム後半はノルウェーの国民的伝統楽器ハルダンゲル・ヴァイオリン・トリオ「ヴェルキリエン・オールスターズ」が登場。ハルダンゲル・ヴァイオリンは4本の弦の下に共鳴弦が通されていて、構造的にヴィオラ・ダモーレに近い。テンポが速くて爽快。ノン・ヴィブラートで弾きまくる。

ヴァイオリンのヴィブラート奏法はロマ(ジプシー)がヨーロッパ大陸に広めたと言われている。

さすがのロマも寒い北欧まではやって来なかったんだろうなぁ……そんなことを考えながら、彼らの音楽を愉しんだ。

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ピエール・アンタイ/チェンバロ・リサイタル

フランスを代表するチェンバリスト、ピエール・アンタイの演奏を兵庫県立芸術文化センターで聴いた。「バッハへの道」と題され、バッハ(ドイツ)へと続く、様々な国のチェンバロ曲(イギリス、イタリア、フランス)がパノラマのように展開される目の覚めるようなプログラムだった。

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ステージに登場した時の彼の風貌はお洒落で洗練された、そしてちょっとすかした印象を受けた。1曲目を弾き終えた時点で拍手しようとする聴衆をパッと手で制し、続けて2曲目に入る場面もあり、中々格好よかった。では嫌な奴だったかといえばそんなことはなく、当初予定されていたプログラムに3曲追加され(赤字)、さらにアンコールを3曲も演奏してくれたのだから、見かけによらず(?)サービス精神旺盛な人だった。

  • フレスコバルディ/トッカータ 第10番
  • 作者不詳(イギリス)/アルマン
  • バード/野生の森、ファンタジア、私のネヴィル卿夫人のグランド
  • フローベルガー/トッカータ
  • L.クープラン/プレリュード(フローベルガー氏を模倣して)、アルマンド、ピエモンテーズ、クーラント、サラバンド
  • F.クープラン/ラ・フォルクレ、プレリュード 第8番、小さな皮肉屋
  • スカルラッティ/ソナタ ニ長調K511、イ長調K208、イ短調K175
  • ヘンデル/ハープシコード組曲 第2番
  • J.S.バッハ/コラール”ただ神の摂理にまかす者”、イギリス組曲 第2番

アンコールは、

  • フローベルガー/ブランロシェ氏へ捧げるトンボー(墓)
  • バッハ/半音階的幻想曲
  • ラモー/音楽の対話

アンタイは1964年パリ生まれ。巨匠グスタフ・レオンハルト(オランダ)に師事した。一時期「ラ・プテット・バンド」に所属していたことがあり、この時メンバーの一人だったバロック・チェリスト鈴木秀美さんのエッセイ「『古楽器』よさらば!」にも登場する。大御所レオンハルトを筆頭にクリストフ・ルセ中野振一郎らと並び、間違いなく世界で十指に入るチェンバロの名手である。近年は彼自身の古楽アンサンブル「ル・コンセール・フランセ」を結成し、指揮者としても活躍している。このアンサンブルはラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2009にも参加しているから、ご存知の方も多いだろう。

アンタイ氏のチェンバロは力強く、毅然とした気品があった。スピード感、切れが身上の中野先生とはまた性格が異なったスタイルだなと想った。今回使用された楽器がジャーマン2段鍵盤チェンバロ(M.Mietkeモデル)だったことが関係しているのかも知れないが、むしろ中野先生の方がフランス的で、アンタイ氏はよりドイツ寄りの印象を受けた。ちなみに中野先生もアンタイ氏と同じ'64年生まれである。中々の好敵手と呼べるかも知れない。

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教会音楽シリーズ/日本テレマン協会「メサイア」ドイツ語版

兵庫県のカトリック夙川教会聖堂へ。

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延原武春/テレマン室内オーケストラ・合唱団ヘンデル/オラトリオ「メサイア」を聴くためである。

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会場はびっしり満席。立ち見の人もいた。原曲は英語で書かれているが、今回はドイツ語で歌われた。日本語訳は正面にスライドで表示される。

バロック楽器が使用され、ピッチはA(ラ音)=415Hz。つまりモダン・ピッチ(A=442前後)より約半音低い。1stVn.-2ndVn.-Va.-Vc.-Cb.の人数が2-2-1-1-1という小編成。しかし教会という狭い空間だから決して物足りなくはない。すっきりとした響きで小気味好い。やはり古楽は大ホールではなく、こんな場所で聴きたい。

アンコールは「ハレルヤ・コーラス」。こちらは英語版で、聴衆の中にも一緒に歌う人々がちらほらいた。

12月25日PM 6:30からは同じ場所でバッハ/クリスマス・オラトリオが演奏される。詳細はこちら

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フォルテピアノってご存じですか?/ハイドン&モーツァルトの楽しみ

仕事を終え音楽会に行く前に阿倍野の明治屋で一杯。ここは何とも雰囲気のある店だが、地区の再開発で移転が決まっている。きずしや、だし巻きが美味しい。だしの効いた湯豆腐もいける。

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それから歩いて「やまちゃん」でクリーミーなたこ焼きに舌鼓を打つ。今日はB級グルメの日。

さて、近鉄電車に乗り換え大阪府松原市「ゆめニティプラザ」へ。

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フォルテピアノ:高田泰治、ヴァイオリン:大谷史子延原武春/テレマン・アンサンブルの演奏で、

  • モーツァルト/ディヴェルティメント ヘ長調 K.138
  • モーツァルト/きらきら星による変奏曲
  • ハイドン/ソナタ 第39番 ト長調 Hob.XVI-39
  • モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ 第30番 ニ長調 K.306
  • モーツァルト/ピアノ協奏曲 第12番 イ長調 K.414

アンコールは、

  • モーツァルト/ディヴェルティメント ニ長調 K.136〜第1楽章

モーツァルトの3つのディヴェルティメント(嬉遊曲)K.136-138はいずれも16歳の年にザルツブルクで書かれている。特にK.136は有名で、第1楽章はTV「のだめカンタービレ in ヨーロッパ」でも使用された。今回はガット弦が張られたクラシカル楽器による演奏。ピッチはA=430Hz(モダン楽器はA=442前後)。

きらきら星による変奏曲」はフォルテピアノ独奏。使用されたのはモーツァルトが生きていた時代、ウィーンで活躍したアントン・ヴァルターが製作した楽器のレプリカ。典雅な響き。膝レバーによる音色の変化が、また魅力的である(膝レバーの解説、写真は→こちら)。

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現在も定期的にドイツに渡り、ミュンヘン音楽大学のクリスティーネ・ショルンスハイムからフォルテピアノ&チェンバロの薫陶を受けている高田さん。本来彼の資質である端正で気品のある(貴族的な)弾き方に加え、最近では華やかなタッチがそれに花を添えるようになってきた。素晴らしいモーツァルト&ハイドンであった。

モダン楽器でヴァイオリン・ソナタを聴くと、ヴァイオリンとピアノが「対立する」(against, vs.)という印象を受けるが、フォルテピアノとクラシカル・ヴァイオリンだと「共に歩む」(walk together)とか「調和する」(be in harmony with)とかいった言葉が最も相応しい気がする。やはりモーツァルトも作曲された当時の演奏様式で聴かないと、そこから零れ落ちてしまうものが間違いなくあるのだなということを痛感した。

延原さんのお話によるとモーツァルトは依然人気があるが、ハイドンだけでコンサートのプログラムを組むとお客さんが全然来てくれないそうである。「一番人気がない作曲家って分かります?テレマンなんです」

また今回演奏されたピアノ協奏曲は今月末にNHKで映像収録され、BS「クラシック倶楽部」で放送される予定であること、さらに来年、日本初の試みとして高田さんのフォルテピアノでモーツァルト/ピアノ協奏曲全曲演奏会シリーズをする予定との発表もあった。これは実に愉しみだ。

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アイリッシュ・フルート&ハープ/アイルランドの風

日曜日の昼下がり、兵庫県立美術館ギャラリー棟1Fアトリエへ。

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ここで守安 功(アイリッシュ・フルート、ホイッスル)、守安雅子(アイリッシュ・ハープ、コンサーティーナ)、グローニャ・ハンブリー(アイリッシュ・ハープ)のコンサートが開催された。

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僕が興味を抱いたきっかけは今年の夏、関西吹奏楽コンクールで福島秀行/セントシンディアンサンブルの演奏するオキャロラン(建部知弘 編)/ケルト民謡による組曲第2番「オキャロランの花束」を耳にし、たちまちその素朴で美しい旋律の虜になったから。

ターロック・オキャロラン(1670-1738)は「アイルランド最後の吟遊詩人」とも呼ばれる盲目のハープ奏者・作曲家。アイルランド各地を放浪し、生涯に200以上の曲を遺した。僕は是非、彼の音楽をアイリッシュ・フルート&ハープで聴いてみたいと想ったのである。

グローニャ・ハンブリーさんはアイリッシュ・ハープの第一人者。完璧なテクニックの持ち主。この楽器はオーケストラで使用されるハープみたいに華やかで”ごっつい”音はしないけれど、飾り気がなくイノセントな響きがして実にチャーミングだった。昔は金属弦を使用していたが、現在はカーボン弦で演奏されるとの解説があった。また彼女はコンサーティーナ(六角形の小型アコーディオン)の名手でもあり、十代の頃オール・アイルランド音楽コンクールのチャンピオンになったこともあるそうだ。ピアソラでお馴染みのバンドネオンに近い形をした楽器で、それをさらに軽量化した感じ。

守安夫妻は年間の三分の一をアイルランドで過ごし、現在は世界初の試みとなるオキャロラン全作品録音プロジェクトに取り組んでおられる。

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今回のプログラムは、

  • 会うは楽しい、別れはつらい(アイルランド舞曲)
  • 小雨のそぼ降る朝(デニス・ヘンプソン)
  • ホーンパイプ
  • ダニエル・ケリー(オキャロラン)
  • オキャロランはおかみさんと喧嘩した(オキャロラン)
  • カウンティ・クレア
  • シングル・ジグ(ウィリー・クランシー)
  • イニシア島"Inisheer"(トマス・ウォルシュ)
  • チャーリー王子(スコットランド民謡)
  • 庭の千草(フルート:宮尾紀子、歌:保阪藍子
  • ミッキー・フィンに捧げるラメント(ビル・フィン)
  • ブラーニーへの旅路(オキャロラン)
  • ブラーニー城への巡礼(アイルランド民謡)
  • オキャロラン協奏曲(オキャロラン)
  • ウォーラー夫人(オキャロラン)
  • 夏の終わり(フィル・カニンガム)
  • マハラ・マウンティンズ(マーティ・ヘイジ)
  • ダニー・ボーイ(歌:中尾敦子
  • 小さい妖精、大きい妖精(オキャロラン)
  • 盲目の王様(作者不詳)

ほか。

"Inisheer"(Inis Oirr)はダブリン出身のThomas Walshというアコーディオン奏者が、アラン諸島の一番小さな島、イニシア島に旅した時の印象を書き留めた島唄だそう。

また1745年のイギリスとの戦いをモチーフにしたスコットランド民謡「チャーリー王子のエディンバラへの最後の一瞥」および、それがアイルランドに渡りマーチに生まれ変わった曲が両方演奏され、興味深かった。

映画「タイタニック」3等船室でのアイリッシュ・パーティで流れたダンス音楽も良かった!

さらにハープのソロで300年前の作曲家であるトマス・カラランと、現代の作曲家であるパトリック・デイビーの「牧師さんの住む家」が続けて演奏された。時を越えた握手。しかし、その底に流れるものは一貫しており、違和感はない。

ブラーニーへの旅路」もハープ・ソロ。守安 功さんが現在、アイルランドの全ての音楽の中で一番好きな曲だそう。「ブラーニー城への巡礼」では守安さんが縦笛2本を口にくわえ演奏。とても愉しい。

オキャロラン協奏曲」はハンブリーさんの師であるジャネット・ハービソンの編曲。イタリア・バロック音楽からの影響が濃厚だとハンブリーさんから解説があった。また「ウォーラー夫人」では守安さんが「イタリア85%、アイルランド15%の曲」と紹介された。

アンコールで演奏された「盲目の王様」は17世紀の曲で、ハンブリーさんのお気に入りだとのこと。

初めて聴いたアイリッシュ・フルートは風の音や雑音までも演奏技巧に取り入れ、イタリア・フランス・ドイツで発展したフルート(フラウト・トラヴェルソ)よりも、むしろ日本の篠笛や尺八に近いなぁと感じた。

考えてみれば、アイルランド民謡「ダニー・ボーイ(ロンドンデリーの歌)」や「庭の千草(夏の名残のバラ)」、スコットランド民謡「蛍の光」「アニーローリー」等、どこか懐かしく郷愁を感じさせる歌の数々は日本でも昔から親しまれてきた。我々の琴線に触れる、何かがあるのだろう。音楽に国境はないーそんなことを改めて考えさせられた、ひと時であった。

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フランスのバロック トリオの愉しみ/上方西洋古楽演奏会週間

少し前になるが、10月31日(土)に南森町にあるギャラリー草片で上方西洋古楽演奏会週間・最終公演を聴いた時のことを書こう。

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タイトルは「フランスのバロック トリオの愉しみ」で出演は出口かよ子、森本英希(フラウト・トラヴェルソ=バロック・フルート)、曽田健(バロック・チェロ)、亀井貴幸(テオルボ)、吉竹百合子(チェンバロ)という面々。出口、森本、曽田の3人はテレマン室内管弦楽団のメンバーでもある。

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演奏されたのは18世紀にフランスで活躍した作曲家=ドルネル、オトテール、ノド、ブラウン、フィリドール、マレらのトリオトリオとは高音部2パート+通奏低音の合わせて3パート編成を指し、 通奏低音は複数で演奏することが多いので必ずしも3人とは限らない。

客の入りは10人くらい。この演奏会の企画者・赤坂放笛さん(バロック・オーボエ奏者)は「バッハとかヴィヴァルディとか有名どころをプログラムに入れないと、集客は難しいですね」と。

それでも滅多に聴けないフランス・バロック期の作曲家の音楽が色々聴けて、愉しく寛いだ時間を過ごすことが出来た。

アンコールは赤坂さんのオーボエ・ダ・カッチャも加わり、全員でヘンデル/「水上の音楽」より3曲が演奏された。

サロン風の親密な空気の中、何だかここは大都会・大阪じゃないような、異空間に彷徨い込んだような摩訶不思議な体験であった。

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《パーセルとヘンデル》中野振一郎/チェンバロリサイタル

大阪・イシハラホールで開催された日本を代表するチェンバリスト・中野振一郎さんの演奏会を聴いた。

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このイシハラホールで中野先生のソロを聴くのも3年目になる。

今年のテーマは「パーセルとヘンデルのハープシコード音楽」。パーセルは17世紀にイギリスで活躍した作曲家。ドイツ生まれのヘンデルは18世紀にロンドンに移住し、そこで没した。なおチェンバロCembalo)はドイツ語で、英語ではハープシコードHarpsichord)となる。

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プログラム前半のパーセルは毅然として典雅、そして時に哀感が漂う。

ラウンドO「アブデルアーザー」という曲は20世紀にブリテンが「青少年のための管弦楽入門」(パーセルの主題による変奏曲とフーガ )の主題として用いた。「青少年…」は僕が小学生の頃から親しんでいるが、原曲は今回初めて聴いた。従来のイメージとは異なり、厳しい音楽だったので驚いた。いやぁ、面白い。

休憩後のヘンデルは一転、華麗。演奏されたのは歌劇「ジュリアス・シーザー」序曲(編曲者不明)や3つの組曲など。厳格なバッハの組曲と異なりヘンデルのそれは構成がゆる~い感じ。その”てきとー”さがひとつの魅力となっている。アンコールは歌劇「リナルド」からアリア2曲(W.バベル編)だった。

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使用された楽器は1730年製フレンチモデルの2段鍵盤チェンバロ「ブランシェ」。ラ音(A)を415Hzに調律したもの(現代のピアノは440Hzなので、約半音低い)。

中野先生の演奏は先鋭にしてスタイリッシュ。めくるめくスピードで指が動き、聴くものに息つく暇を与えない。これだけ研ぎ澄まされた感性を持つチェンバリストは世界広しといえど、他に例をみないだろう。関西で気軽にそれに接することが出来る至福を噛みしめた。

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延原武春/クラシカル楽器によるベートーヴェンのピアノ協奏曲&ミサ曲

延原武春/テレマン室内管弦楽団・合唱団によるオール・ベートーヴェン・プログラムを聴いた。クラシカル楽器(古楽器)を使用した演奏である。

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  • 「コリオラン」序曲
  • ピアノ協奏曲 第2番
  • ミサ曲 ハ長調

コリオラン」はパンチの効いた嵐の音楽。

コンチェルトのフォルテピアノ独奏は高田泰治さん。使用されたのはベートーヴェンとも交流があったナネッテ・シュトライヒャー(女性)が1820年代に製作したもの(オリジナル楽器)で、いずみホール所蔵。

フォルテピアノはモダン楽器と異なり、暴力的な大音量は出ない。優しい響きでオケの音色によく溶け合うのが、なんとも魅力的。高田さんの演奏は気品があり、特に第3楽章ロンドは踊りの雰囲気が上手く醸し出されていた。

ミサ曲」は生まれて初めて聴いた。素朴で無骨。ベートーヴェンの不器用でありながらも、真摯な信仰心がよく表れた作品。第九を彷彿とさせる箇所が多々あり、肯定的な人間賛歌として聴き応えがある。ただ些か冗長な所もあり、この曲が滅多に演奏されないのもむべなるかなという側面があるのも確か。しかし、ピリオド・アプローチという新しい方法論によって作品に新たな光が当てられ、今後再評価が進んでいくことであろう。

古きをたずね、新しきを知る。延原武春を聴けば、時代の最先端をゆくベートーヴェンを体験することが出来る。次は12月20日(日)ザ・シンフォニーホールでの「第九deクリスマス」。詳細はこちら

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ウィーン音楽祭 in OSAKA 2009/古楽器アンサンブルで聴くシューベルト《ます》

いずみホールで開催されているウィーン音楽祭 in OSAKA 2009に足を運ぶ。

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今回の演奏会はフォルテピアノの第一人者・小倉貴久子さん(ブルージュ国際古楽コンクール・フォルテピアノ部門第1位)を中心とした室内楽で「古楽器アンサンブルの楽しみ〜銘器シュトライヒャーを囲んで」と副題が付いている。

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古楽器のエキスパートが揃い、ヴァイオリン:桐山建志(ブルージュ国際古楽コンクール・ソロ部門第1位)、ヴィオラ:長岡聡季(オーケストラ・リベラ・クラシカ)、チェロ:花崎薫(新日本フィルハーモニー交響楽団首席)、コントラバス:笠原勝二(オーケストラ・リベラ・クラシカ)というメンバー。曲目は、

  • ベートーヴェン:ピアノ四重奏曲 第3番
  • ベートーヴェン:交響曲 第2番(ピアノ三重奏版)
  • シューベルト:ピアノ五重奏曲《ます》
  • フンメル:ピアノ五重奏曲より第2楽章メヌエット(アンコール)

プログラムの解説によるとベートーヴェンのシンフォニーは作曲家自身の編曲と記載され出版されたものだが、現在ではそれが疑問視されており弟子によるものではないかと考えられているそう。こちらで試聴出来る。ラジオやレコードなど録音技術がなかった当時としては、オーケストラ曲を家庭で手軽に愉しむ手段としてこのようなアレンジが求められていたようだ。ショパン/ピアノ協奏曲にもショパン自身の編曲による室内楽版が存在し、ライヴで聴いたことがある。

さて、今回使用されたフォルテピアノはナネッテ・シュトライヒャーが1820年代に製作したもの(コピーではなくオリジナル楽器)で、いずみホール所蔵。シュトライヒャーはウィーンを代表する製作者でベートーヴェンと交流もあったそう。 モーツァルト時代のピアノフォルテは膝レバーだったが、この頃の楽器は足ペダルになっている。

フォルテピアノは音域によって音色が異なる。鄙びた響きがして、現代のピアノと比較し大音量が出ないこの楽器はピュア・ガットを張った弦楽器と良く馴染み、音が溶け合う。

個性よりも調和。成る程、作曲家が頭の中で描いていたイメージはこういう響きだったのだと納得がいく、説得力のある演奏だった。

小倉さんのタッチは軽やかで小気味好い。《ます》では清らかな川面で魚が跳ねているような鮮度があった。

気心が知れた仲間たちが音楽を愉しんでいるという雰囲気があり、19世紀ウィーンのサロンに紛れ込んだような気分を堪能させてもらった。

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恋のため息 -バロック・シンギング-

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日曜日の昼下がり、帝国ホテル近くにあるOPAアートコート(ギャラリー)で開催されたコンサート(ワオンレコード主催)を聴いた。

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小林木綿(こばやし ゆう) ソプラノ/櫻田 亨 アーチリュートという組み合わせ。

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曲目は16世紀から17世紀に掛けてのイタリアの音楽で、

  • カッチーニ/甘いため息
  • モンテヴェルディ/あなたの眼差しが
  • モンテヴェルディ/ああ、倒れる
  • ピッチニーニ/トッカータ20番
  • メリー/カプリッチョ「偉大なマティアス」&コレンテ「王妃」
  • モンテヴェルディ/生きることをやめてしまおう
  • モンテヴェルディ/なんと甘い苦痛が
  • ディンディア/私が悲しめば
  • フレスコバルディ/こんなに僕を侮辱していいのかい
  • メールラ/それはとんでもない思い違いというものだ
  • フレスコバルディ/トッカータ&カンツォーネ「ヴィットーリア」
  • フレスコバルディ/十字架の下のマグダラのマリア
  • フェッラーリ/宗教カンタータ この鋭い茨のとげは

青字がリュート・ソロ。アンコールはランベールによるフランス歌曲だった。

櫻田さんからリュートという楽器は元々イスラム圏の楽器ウードが起源で、それがヨーロッパに伝わり宮廷音楽として洗練されたものがリュート、中国に渡り改良されたものが琵琶であるというお話があった。

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今回演奏された楽器は2本ずつ張られたガット弦が13コースあるもの。これはオール・イタリアン・プログラムに合わせた仕様で、フランスものだとまた違った楽器が必要になってくるのだそう。

小林木綿さんは1996年ブルージュ国際古楽コンクール第2位入賞。これは声楽家としては最高位だそう。澄み渡るイノセントな歌声に魅了された。ホール(サロンと呼んだ方が相応しいかも知れない)も良く響き、残響が豊か。まるで小さな教会で音楽を聴いているかのよう。

ルネサンス期からバロック期にかけてのイタリア歌曲は純朴な恋の歌、そして敬虔な祈りの歌など何れも魅力的で、すっと心に沁みる。匂い立つばかりの美しさを誇る「なんと甘い苦痛が」やフレスコバルディも良かったし、特に木綿さんが大切に歌っておられるという「この鋭い茨のとげは」は心の奥底まで届き、魂が震えるような感銘を受けた。

また、当日配布された小林英夫さんによる歌詞対訳が磨き抜かれた日本語で書かれていて素晴らしかった。その小林さんも会場に聴きに来られていた。

木綿さんは未だリリースしたCDがないそうである。実に残念な話だ。また聴きたいと切に望む。

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