クラシックの悦楽

2009年11月21日 (土)

フォルテピアノってご存じですか?/ハイドン&モーツァルトの楽しみ

仕事を終え音楽会に行く前に阿倍野の明治屋で一杯。ここは何とも雰囲気のある店だが、地区の再開発で移転が決まっている。きずしや、だし巻きが美味しい。だしの効いた湯豆腐もいける。

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それから歩いて「やまちゃん」でクリーミーなたこ焼きに舌鼓を打つ。今日はB級グルメの日。

さて、近鉄電車に乗り換え大阪府松原市「ゆめニティプラザ」へ。

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フォルテピアノ:高田泰治、ヴァイオリン:大谷史子延原武春/テレマン・アンサンブルの演奏で、

  • モーツァルト/ディヴェルティメント ヘ長調 K.138
  • モーツァルト/きらきら星による変奏曲
  • ハイドン/ソナタ 第39番 ト長調 Hob.XVI-39
  • モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ 第30番 ニ長調 K.306
  • モーツァルト/ピアノ協奏曲 第12番 イ長調 K.414

アンコールは、

  • モーツァルト/ディヴェルティメント ニ長調 K.136〜第1楽章

モーツァルトの3つのディヴェルティメント(嬉遊曲)K.136-138はいずれも16歳の年にザルツブルクで書かれている。特にK.136は有名で、第1楽章はTV「のだめカンタービレ in ヨーロッパ」でも使用された。今回はガット弦が張られたクラシカル楽器による演奏。ピッチはA=430Hz(モダン楽器はA=442前後)。

きらきら星による変奏曲」はフォルテピアノ独奏。使用されたのはモーツァルトが生きていた時代、ウィーンで活躍したアントン・ヴァルターが製作した楽器のレプリカ。典雅な響き。膝レバーによる音色の変化が、また魅力的である(膝レバーの解説、写真は→こちら)。

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現在も定期的にドイツに渡り、ミュンヘン音楽大学のクリスティーネ・ショルンスハイムからフォルテピアノ&チェンバロの薫陶を受けている高田さん。本来彼の資質である端正で気品のある(貴族的な)弾き方に加え、最近では華やかなタッチがそれに花を添えるようになってきた。素晴らしいモーツァルト&ハイドンであった。

モダン楽器でヴァイオリン・ソナタを聴くと、ヴァイオリンとピアノが「対立する」(against, vs.)という印象を受けるが、フォルテピアノとクラシカル・ヴァイオリンだと「共に歩む」(walk together)とか「調和する」(be in harmony with)とかいった言葉が最も相応しい気がする。やはりモーツァルトも作曲された当時の演奏様式で聴かないと、そこから零れ落ちてしまうものが間違いなくあるのだなということを痛感した。

延原さんのお話によるとモーツァルトは依然人気があるが、ハイドンだけでコンサートのプログラムを組むとお客さんが全然来てくれないそうである。「一番人気がない作曲家って分かります?テレマンなんです」

また今回演奏されたピアノ協奏曲は今月末にNHKで映像収録され、BS「クラシック倶楽部」で放送される予定であること、さらに来年、日本初の試みとして高田さんのフォルテピアノでモーツァルト/ピアノ協奏曲全曲演奏会シリーズをする予定との発表もあった。これは実に愉しみだ。

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2009年11月20日 (金)

ポーランドの俊英アーバンスキのショスタコ10!/大フィル定期

大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)の定期演奏会を聴きにザ・シンフォニーホールへ。

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指揮台に立ったのはポーランド生まれのクリストフ・アーバンスキ、27歳である。ピアノ独奏はペーテル・ヤブロンスキで、

  • キラル/オラワ
  • ショパン/ピアノ協奏曲 第2番
  • ショスタコーヴィチ/交響曲 第10番

現代ポーランドを代表する作曲家キラルの曲は、ミニマル・ミュージックの手法で書かれ、フィリップ・グラスやスティーヴ・ライヒ、マイケル・ナイマン、久石譲などの作風を彷彿とさせる。しかしその響きはグレツキ(悲歌のシンフォニー)に通じるものがあり、やはりポーランド人の血だなぁと想った。舞曲風で分かり易く、親しみやすい小品だった。弦楽合奏なのだが、最後は奏者全員の掛け声"HEY !"も飛び出した。まるで淀工の「カーペンターズ・フォーエバー」みたい。

スウェーデン生まれのピアニスト・ヤブロンスキは優しいタッチで弾き始め、決して切れがあるとかメリハリのあるとは言えないけれど、音の一粒一粒が際立ち、キラキラ輝いているような演奏だった。アンコールは繊細なショパン/マズルカ

ショスタコーヴィチ交響曲第10番は謎めいた曲である。スターリンが死去した1953年に着手されたこのシンフォニーはソロモン・ヴォルコフ著「ショスタコーヴィチの証言」によると「スターリンとその時代を描いた」ものだそうだ。しかし現在ではこの回想録の信憑性そのものが疑われており、真実は闇の中である。

また全体を通じてDmitrii SCHostakowitchのイニシャルからとったDS(Es)CHの音形(レ・ミ♭・ド・シ)が重要なモチーフ(モノグラム)として用いられている。こうして考えると、スターリンに翻弄された自己を投影しているとも解釈出来る。

ヘルベルト・フォン・カラヤンは生涯に2度、この第10番をスタジオ・レコーディングしている。しかし帝王カラヤンがショスタコーヴィチの他の交響曲を録音したことは一切ない。この理由もよく分からない。

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上の写真は1969年5月29日、モスクワ音楽院大ホールにおけるカラヤンとショスタコ。この日のプログラムも第10番だった。

キラルショスタコを暗譜で振ったアーバンスキは曲を自家薬籠中のものとしており、見事な統率力でオケを引っ張った。大フィルも機動力をフルに発揮し、普段の実力以上のものを出し切っていたように見受けられた。特にシンフォニー第2楽章の疾走感は凄かった。

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2009年11月13日 (金)

ゲイの大作曲家たち

チャイコフスキーが同性愛者だったことは余りにも有名である。詳しくは下記記事で触れた。

この事実を知っておかなければ、チャイコフスキーが死の直前に発表した交響曲 第6番「悲愴」で語ろうとしたこと、その切実な想いを理解することは絶対に出来ないだろうと僕は確信する。

またモーリス・ラヴェルの疑惑に関しては下記に書いた。

先日、METライブビューイング(公式サイトはこちら)で世界配信されたメトロポリタン歌劇場のベンジャミン・ブリテン/歌劇「ピーター・グライムズ」(1945年初演)を観た。既にDVDも発売中。噂には聞いていたが、凄まじい傑作だった。僕は今までブリテンのオペラ「ベニスに死す」「カーリュー・リヴァー」などを観てきたが、それらを遥かに凌ぐ文字通り最高傑作と言えるだろう。その暗いタッチなど、スティーブン・ソンドハイムのミュージカル「スウィーニー・トッド」(1979年初演)との強い親和性も感じられた。またスコットランド出身のドナルド・ラニクルズの指揮ぶりが鬼気迫るものがあり、大変な名演であった。 

その「ピーター・グライムズ」の幕間にイギリスからの中継があり、このオペラや「ベニスに死す」「ねじの回転」「カーリュー・リヴァー」「戦争レクイエム」等を初演したテノール歌手ピーター・ピアーズとブリテンが”生涯のパートナー”であり、一緒に暮らしていたことが紹介された。ここで僕は初めてブリテンがゲイであったことを知った。二人のお墓が仲良く並んでいる映像も登場、それは中々麗しい情景であった。

考えてみれば「ベニスに死す」を映画化したイタリアのルキノ・ヴィスコンティ監督はゲイであったし、これをブリテンがオペラにしアッシェンバッハ役をピアーズが演じたということにヒントが隠されていたのだなぁと今更ながら気がついた。

それにしても問題だと想うのは、ブリテン作品が収録されたCDの解説書やコンサートでのプログラム・ノートにこの事実が一切記載されていないことである。チャイコフスキーの例を挙げるまでもなく、作曲家の生涯と人となりを知ることは、その作品を深く理解する上で必要不可欠なことである。もっとこの国がオープン・マインドになることを僕は願う。

さて、レナード・バーンスタインはバイセクシャルだったのか?というのも非常に興味のあるテーマなのだが、残念ながらそろそろお時間が来たようです。今日はこれにて。

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2009年10月30日 (金)

ド迫力!大植英次/大フィルの「カルミナ・ブラーナ」

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)の定期演奏会をザ・シンフォニーホールで聴いた。

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  • ハイドン/チェロ協奏曲 第1番
  • オルフ/世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」

ハイドンのチェロ独奏はオランダ出身のピーター・ウィスペルウェイ

ピリオド奏法しない大植さんのハイドンが聴く価値がないことは、端から分かっていた。この作曲家特有の疾風怒濤(Sturm und Drang)の雰囲気が全く醸し出されていない。20世紀的な古色蒼然たるスタイル。

むしろ独奏者の方が奏法の時代考証に敏感であった。出だしと音尻がノン・ビブラートで演奏され、聴いていて心地良い。

ソリストのアンコールは、

  • J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲 第1番よりサラバンド
  • J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲 第6番よりガヴォット

このバッハも極力ヴィブラートを排したもので、好感が持てる。後でプロフィールを見てみると、バロック・チェロの巨匠アンナー・ビルスマに師事したと書いてある。成る程と頷けた。

続く「カルミナ・ブラーナ」はソプラノ:シモーナ・サトゥロヴァ(スロバキア)、テノール:五郎部俊朗、バリトン:サイモン・ポーリー(ドイツ)、大阪フィルハーモニー合唱団+大阪すみよし少年少女合唱団という布陣。舞台上に所狭しと演奏者が並び、壮観だった。特に打楽器が7人、ピアノが2台とリズム・セクションの充実は特筆すべきであろう。

大植さんの古典は駄目だが、こういう近代の音楽、外連味(けれんみ)たっぷりの大仰な作品では水を得た魚、大見得(おおみえ)を切る千両役者としての実力を存分に発揮する。

冒頭「運命の女神よ」から聴衆は強烈なパンチを喰らう。単純な音形・リズムの執拗な反復(オスティナート)が原始的な内なる感情を呼び覚ます。合唱の発音がハッキリしていて歯切れがいい。ゆったりとしたテンポで進むかと思いきや、突如もの凄い加速で突っ走ったりして予測がつかない。そのレオポルド・ストコフスキー的”はったり”が愉しい。

この曲は生命の讃歌、人間が背負って生まれた業(ごう)に対する大らかな肯定であるということが、今回の演奏を通して理解することが出来た。つまり、「人は酒におぼれたり、異性にうつつを抜かしたりしてどうしようもない存在だけれど、それでよいのだ。我々に残された時間を、大いに愉しもうではないか!」ということ。

最後に、弱音が美しいソプラノ、柔らかい音色のバリトンが素晴らしかったことを申し添えておきたい。

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2009年10月29日 (木)

延原武春/クラシカル楽器によるベートーヴェンのピアノ協奏曲&ミサ曲

延原武春/テレマン室内管弦楽団・合唱団によるオール・ベートーヴェン・プログラムを聴いた。クラシカル楽器(古楽器)を使用した演奏である。

Mass

  • 「コリオラン」序曲
  • ピアノ協奏曲 第2番
  • ミサ曲 ハ長調

コリオラン」はパンチの効いた嵐の音楽。

コンチェルトのフォルテピアノ独奏は高田泰治さん。使用されたのはベートーヴェンとも交流があったナネッテ・シュトライヒャー(女性)が1820年代に製作したもの(オリジナル楽器)で、いずみホール所蔵。

フォルテピアノはモダン楽器と異なり、暴力的な大音量は出ない。優しい響きでオケの音色によく溶け合うのが、なんとも魅力的。高田さんの演奏は気品があり、特に第3楽章ロンドは踊りの雰囲気が上手く醸し出されていた。

ミサ曲」は生まれて初めて聴いた。素朴で無骨。ベートーヴェンの不器用でありながらも、真摯な信仰心がよく表れた作品。第九を彷彿とさせる箇所が多々あり、肯定的な人間賛歌として聴き応えがある。ただ些か冗長な所もあり、この曲が滅多に演奏されないのもむべなるかなという側面があるのも確か。しかし、ピリオド・アプローチという新しい方法論によって作品に新たな光が当てられ、今後再評価が進んでいくことであろう。

古きをたずね、新しきを知る。延原武春を聴けば、時代の最先端をゆくベートーヴェンを体験することが出来る。次は12月20日(日)ザ・シンフォニーホールでの「第九deクリスマス」。詳細はこちら

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2009年10月27日 (火)

大植英次/大フィル+ウィーン楽友協会合唱団の「ドイツ・レクイエム」

10月24日(土)15時10分。大阪シンフォニカー「名曲コンサート」が終了し、JR環状線で移動していずみホールの「ウィーン音楽祭」へ。

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16時開演の大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団ウィーン楽友協会合唱団の演奏会を聴くためである。

  • ブラームス/「哀悼歌」、「ドイツ・レクイエム」

僕は常々、ブラームスという作曲家の本質はメランコリーと諦念であると考えている。その特徴が顕著に出ているのが、歌詞が付いたこれら合唱曲であろう。

ウィーン楽友協会合唱団はカラヤン、バーンスタインらとのレコーディングで余りにも有名だが、アマチュアの団体であるということが何よりも驚きである。しかも「ドイツ・レクイエム」をはじめとして、ブルックナー/「テ・デウム」、マーラー/交響曲第8番などを初演したのもこの団体だというのだから凄い。

その合唱だが、まず弱音の凛とした佇まいにハッとさせられる。また低音部が充実しており、高音にかけてのピラミッドをしっかりと支える。実は人の声こそ、この世で最も美しい音を奏でる楽器なのではないかと確信させるような演奏だった。

大植さんの解釈はしなやかな歌に満ち、流麗なブラームス。最後は透明な光が溢れ、清々しい気持ちになった。

3年前のいずみホール「ウィーン音楽祭」ではアーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス によるモーツァルトの「レクイエム」が圧巻だったが、今回の「ドイツ・レクイエム」もそれに匹敵する感銘を受けた。聴いて良かった!

いずみホールを後にしたのが18時頃。それから新大阪に向かい、新幹線で東京へ。翌日、いよいよ普門館で全日本吹奏楽コンクールを聴くことになる。

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2009年10月26日 (月)

名曲とは何か?/大阪シンフォニカー「名曲コンサート」

10月25日(日)に東京・普門館で開催された全日本吹奏楽コンクール《高校の部》の感想を書く前に、前日土曜日の13時半よりザ・シンフォニーホール(大阪)で聴いた児玉 宏/大阪シンフォニカー交響楽団の名曲コンサートのことに触れておこう。

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曲目は、

  • モーツァルト/交響曲 第34番
  • メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲 第1番
  • シューベルト/交響曲 第3番

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これらを「名曲」と言って憚らないことこそ、一筋縄ではいかない児玉さんの真骨頂!特にメンデルスゾーンは本当に美しい。どうして滅多に演奏されないのか、皆目見当がつかないくらいである。

ピアノ独奏は菊池裕介さん。1977年まれの若手だが、実力は大したもの。鍵盤一音一音の粒が揃い、畳み掛けるような勢いがあった。現在アジアのピアニストとしては、北京五輪で演奏したラン・ランやショパン国際ピアノコンクール優勝のユンディ・リ、そしてユジャ・ワンなど中国勢の台頭が目覚ましいが、どうしてどうして日本も負けてはいないなと安堵した。

児玉さんの指揮は歯切れが良く、弾力がある。隅々にまで目が行き届き、繊細なニュアンスに富む。文句のつけようがない、パーフェクトな演奏であった。

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2009年10月21日 (水)

今週末のスケジュール

今週末の僕の予定は中々大変なことになっている。

10月24日(土)、午前中は仕事。

13時半よりザ・シンフォニーホールで児玉宏/大阪シンフォニカー交響楽団の名曲コンサートを聴く。

  • メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲 第1番
  • シューベルト/交響曲 第3番

これを「名曲」と言い切ってしまうところに児玉さんの一筋縄ではいかない、したたかさを感じるのは僕だけではないだろう。

名曲コンサートが終わり次第、環状線で移動していずみホールの「ウィーン音楽祭」へ。16時開演の大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団+ウィーン楽友協会合唱団による、

  • ブラームス/「哀悼歌」、「ドイツ・レクイエム」

なおチケットは早々に完売している。

このコンサートが終了したら今度は新大阪に向かい、新幹線で一路東京へ。ここで一泊。

翌、10月25日(日)は普門館で全日本吹奏楽コンクール高校の部》を前半・後半併せて聴く予定である。

という訳で、書くことが多すぎてブログの記事更新が暫く滞ると予想されるので悪しからず。なお、普門館からは携帯でちょっとだけ実況報告をするかも。

ところで非常に興味があるのは、《高校の部》の審査員として大フィル/クラリネット奏者の田本摂理さんのお名前があるのだが、田本さんは前日いずみホールの「ドイツ・レクイエム」は演奏されるのだろうか?

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2009年10月20日 (火)

ウィーン音楽祭 in OSAKA 2009/中嶋彰子「月に憑かれたピエロ」

いずみホールへ。ウィーン・フォルクスオーパーなどで活躍するソプラノ歌手・中嶋彰子さんをフィーチャリング(featuring)したコンサート。

まずはニルス・ムースさんのピアノ伴奏で歌曲から。

  • 貴志康一/「さくらさくら」「赤いかんざし」「かもめ」
  • メンデルスゾーン/「歌の翼に」「子守歌」「嘲り」

貴志版「さくらさくら」は冒頭の強烈なff(フォルティシモ)から魅了された。日本的情感豊かな五音音階が耳に心地良く、懐かしいようでまた何だか物悲しくもあり、これぞ関西が生んだ夭折の作曲家・貴志の真骨頂。

子守歌(Wiegenlied)」「嘲り(Glosse)」は今まで全く知られていなかったメンデルスゾーンの歌曲で、生誕200年を記念する今年初めて校訂版の楽譜が出版されたらしい(詳しくはこちら!)。何とこれが本邦初演だそう。「嘲り」は中々、劇的。やっぱりメンデルスゾーンはいいねぇ。

中嶋さんの歌唱は張りがあり、また弱音のコントロールが絶妙。

次にいずみシンフォニエッタ大阪のメンバーで、

  • シェーンベルク/浄夜(弦楽六重奏版)

研ぎ澄まされた叙情、冴え冴えとした透明感のある演奏だった。さすが卓越した奏者が揃っている。月明かりに照らされた幻想的光景が目の前に広がる。

休憩を挟んで中嶋彰子(独唱)、ニルス・ムース(指揮)/いずみシンフォニエッタ大阪で、

  • シェーンベルク/月に憑かれたピエロ

謎めいた、ミステリアスな曲。歌うよりも語るといった雰囲気があり、妖しくもクリムト的である。世紀末的香りがたゆたう。

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そして「月に憑かれたピエロ」(1912年ベルリン初演)を聴きながら僕が強く親和性を感じたのは「三文オペラ」(1928年ベルリン初演)だった。シェーンベルク/ジローの「月に憑かれたピエロ」からワイル/ブレヒトの「三文オペラ」へ。そしてその精神は海を渡り、ブロードウェイでカンダー/エブのミュージカル「キャバレー」へと受け継がれてゆく。ちなみに「キャバレー」の舞台となるのはナチスが台頭しつつあるベルリンであり、ユダヤ人であったシェーンベルクとワイルはナチスの迫害から逃れアメリカに亡命することになるのである。

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2009年10月19日 (月)

ウィーン音楽祭 in OSAKA 2009/古楽器アンサンブルで聴くシューベルト《ます》

いずみホールで開催されているウィーン音楽祭 in OSAKA 2009に足を運ぶ。

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今回の演奏会はフォルテピアノの第一人者・小倉貴久子さん(ブルージュ国際古楽コンクール・フォルテピアノ部門第1位)を中心とした室内楽で「古楽器アンサンブルの楽しみ〜銘器シュトライヒャーを囲んで」と副題が付いている。

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古楽器のエキスパートが揃い、ヴァイオリン:桐山建志(ブルージュ国際古楽コンクール・ソロ部門第1位)、ヴィオラ:長岡聡季(オーケストラ・リベラ・クラシカ)、チェロ:花崎薫(新日本フィルハーモニー交響楽団首席)、コントラバス:笠原勝二(オーケストラ・リベラ・クラシカ)というメンバー。曲目は、

  • ベートーヴェン:ピアノ四重奏曲 第3番
  • ベートーヴェン:交響曲 第2番(ピアノ三重奏版)
  • シューベルト:ピアノ五重奏曲《ます》
  • フンメル:ピアノ五重奏曲より第2楽章メヌエット(アンコール)

プログラムの解説によるとベートーヴェンのシンフォニーは作曲家自身の編曲と記載され出版されたものだが、現在ではそれが疑問視されており弟子によるものではないかと考えられているそう。こちらで試聴出来る。ラジオやレコードなど録音技術がなかった当時としては、オーケストラ曲を家庭で手軽に愉しむ手段としてこのようなアレンジが求められていたようだ。ショパン/ピアノ協奏曲にもショパン自身の編曲による室内楽版が存在し、ライヴで聴いたことがある。

さて、今回使用されたフォルテピアノはナネッテ・シュトライヒャーが1820年代に製作したもの(コピーではなくオリジナル楽器)で、いずみホール所蔵。シュトライヒャーはウィーンを代表する製作者でベートーヴェンと交流もあったそう。 モーツァルト時代のピアノフォルテは膝レバーだったが、この頃の楽器は足ペダルになっている。

フォルテピアノは音域によって音色が異なる。鄙びた響きがして、現代のピアノと比較し大音量が出ないこの楽器はピュア・ガットを張った弦楽器と良く馴染み、音が溶け合う。

個性よりも調和。成る程、作曲家が頭の中で描いていたイメージはこういう響きだったのだと納得がいく、説得力のある演奏だった。

小倉さんのタッチは軽やかで小気味好い。《ます》では清らかな川面で魚が跳ねているような鮮度があった。

気心が知れた仲間たちが音楽を愉しんでいるという雰囲気があり、19世紀ウィーンのサロンに紛れ込んだような気分を堪能させてもらった。

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