吹奏楽

2009年11月15日 (日)

マーチングへ行こう! 

 クラシック音楽ファンというのは概ね、偏狭な趣味の持ち主である。例えばオーケストラは聴くが、室内楽とかオペラは全く聴かないという人が多い。またモーツァルトからマーラーの時代までは聴くけれど、バッハ以前、あるいは20世紀以降の作品は敬遠するというのが8割方の態度である。まして「吹奏楽なんか」、絶対に聴かない。この世の中には美しい音楽がもっともっと沢山あるのに、本当に勿体ない話である。

吹奏楽ファンというのも実に不思議(不可解)な人々である。東京佼成やシエナ、大阪市音楽団などプロの演奏会や吹奏楽コンクールには足を運ぶけれど、マーチングは観ないという輩が少なからずいるのである。僕にはこの態度が全く理解が出来ない。

吹奏楽(ウィンド・オーケストラ)というのは実は歪な編成である。20世紀よりも前にこの編成で書かれた作品が殆どないということが、なによりの証拠である。ではどうして今日まで発展してきたのか?それはこのジャンルが軍楽隊の行進曲から派生してきたことと無関係ではない(弦楽器は屋外の行進には全く向かない)。つまりマーチングこそ吹奏楽の原点、神髄なのである。

マーチングは観て愉しい、聴いて愉しい素敵なジャンルである。是非もっと多くの人々にこの魅力を体感して欲しいと願う。

さて、来たる11月29日に大阪城ホールで全日本マーチングコンテストが開催される。選りすぐりの団体が全国から集う。チケット入手方法など詳細は→こちら

どんな雰囲気かお知りになりたい方は、僕が以前書いた見聞録をご覧頂きたい。

さあ、マーチングへ行こう!

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2009年11月14日 (土)

宮川彬良/大阪市音楽Dahhhhn! 定期演奏会

大阪市音楽団の第99回定期演奏会を聴きにザ・シンフォニーホールへ。指揮は宮川彬良さん(以下、親しみを込めて”アキラ”と呼ばせて頂く)、待望の定期登場である。

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2年前にこのコンビによる演奏を、同ホールで聴いた時のレビューはこちら

アキラといえばアンサンブル・ベガ大阪フィル・ポップスのコンサートなどでもお馴染みだが、愉快なトークに定評がある(子供たちにも大人気)。しかし今回はその得意の話術を封印し、マイクなしで指揮台に臨んだ。それだけでもこの演奏会に賭ける意気込みがひしひしと伝わってくる。

Akira

曲目は、

  • 宮川彬良/生業(ナリワイ)世界初演
    I. 上昇思考
    II. 発明の母
    III. 易(Fortune-telling)〜生業
  • 吹奏楽のためのソナタ「ブラック・ジャック」
    I. 血と、汗と、涙と・・・
    II. 命
    III. 生きて生きて息る
  • バーンスタイン(ラヴェンダー編)/ミュージカル「ウエスト・サイド物語」からシンフォニック・ダンス
  • W.C.ハンディ(グレイ、バーゲット編)/セントルイス・ブルース・マーチ

市音のメンバーが登場すると、いつもとは異なり全身黒ずくめで、ブラック・ジャックを意識したような服装だった。

プログラムに掲載されたメッセージの中でアキラは、シャンソン「愛の讃歌」「サン・トワ・マミー」「ラストダンスは私に」やミュージカル「ジーザス・クライスト=スーパースター」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」の訳詩で有名な作詞家・岩谷時子さんの自伝の書き出しを引用している。

私は作詞をすることを生業として参りました…

この凛とした言葉に惹かれたことが、「生業」作曲の動機となったそうである。

I. は威勢が良くて、まるで西部劇のよう。僕はアーロン・コープランドのバレエ音楽「ビリー・ザ・キッド」「ロデオ」やエルマー・バーンスタインの「荒野の七人」を連想した。打楽器が活躍するII. は一転、和の音楽。霧に覆われた山々、どこか遠くから木挽歌が聞こえてくる…そんな情景を思い浮かべた。宮崎駿監督の「もののけ姫」の世界。そしてIII. は一転、賑やかな祭りの情景。そこには黒沢明監督の映画「七人の侍」(1954)で早坂文雄が作曲した”麦刈りの音楽”に近いものが感じられた。西洋と和の音楽の融合。半世紀前に早坂が目指したものがしっかりと今、宮川彬良に受け継がれている。そのことがしっかりと伝わってくる素晴らしい作品であった(黒澤はジョン・フォード監督の西部劇の手法を日本の時代劇に持ち込んだ。それが再び海を渡り、ハリウッドで「荒野の七人」になった)。

ブラックジャック第1楽章は転調のないソナタ。これについてアキラは「ソナタという西洋の様式美に、モノトーンの日本の魂が注入されたような感覚です」と語っている。厳粛な響きで、僕にはまるで教会音楽のように聴こえた。ゼネラル・パウゼ(総休止)があるところも非常にブルックナー的(教会の残響時間を考慮した手法)だ。第2楽章は儚く切ない哀歌。グレツキ/悲歌のシンフォニー(交響曲 第3番)とか、生後半年で亡くなった娘を追悼するバーンズ/交響曲第3番”ナタリーのために”(次回市音定期で演奏される予定)を彷彿とさせる楽曲。第3楽章は変拍子に富み、生命の鼓動が聞こえてくる。躍動感溢れ、前の楽章のテーマも回想されて締めくくりに相応しい。アキラのシリアスな面が伺える、格調高いシンフォニーであった。

休憩を挟みプログラム後半に登場した楽員は、シルバー系のベストを着ていた。

実は「シンフォニック・ダンス」は既に佐渡裕/シエナ・ウインド・オーケストラを聴いたことがあり、それが余りにも鈍重で詰まらない演奏だったものだから、「吹奏楽でこの曲を聴いても仕方がない」と高を括っていた。

ところが!!である。宮川彬良/市音の演奏は全く別物で腰を抜かした。指揮者のセンスが全然違う。本家本元であるレナード・バーンスタインが残した2種のレコーディングを含め、僕は今までこれだけ《踊る!シンフォニック・ダンス》を聴いたことがない。アキラのリズム感は抜群であった。「マンボ」はもうノリノリ!その熱気はグスターボ・ドゥダメル/シモン・ボリバル・ユース・オーケストラに匹敵すると言っても過言ではない。「クール」では切れのあるスウィングが聴ける。「ランブル(乱闘)」の場面になると、金管の咆哮が凄まじい。そして終曲"Somewhere"の透明でイノセントな響きが、なんと美しいことだろう!もう陶酔してしまった。むしろこの"Somewhere"には弦楽器(あのイライラするヴィブラート)が要らないんじゃないかと想ったくらいであった。

正に圧倒的名演であった。ここで初めてマイクが登場。そしてそれと共にジャケットがボロボロになった映画「ウエストサイド物語」のサントラ・レコードも。このLPはアキラが10歳の時に父・宮川 泰(「宇宙戦艦ヤマト」「ゲバゲバ90分!」の作曲家)から買い与えられたものだそう。「それから擦り切れるくらい何度も何度も聴きました。その曲を今回初めて指揮する機会を得て、感無量です」と。

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アンコールの「マツケンサンバII」は2年前にも同じコンビで聴いた。しかしその時よりもアンサンブルはより緻密に、金管の響きはより輝かしく進化していたので驚いた。やはりこの間に何度も綿密なリハーサルと本番が繰り返された成果が、しっかり音として結実しているのであろう。

この感動的コンサートは同時にライヴ・レコーディングされているので、いずれCDとして発売されるだろう。ご期待いただきたい。ただ少し気になるのは、「シンフォニック・ダンス」で市音にしては珍しくホルン・ソロに痛恨のミスがあったことである。あのまま商品化するのは、いくらなんでもまずいだろう。多分ゲネプロ(直前のリハーサル)も録音しているだろうから、修正(編集)は可能な筈だ。その点フォンテックさん、よろしくお願いしますよ!

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2009年11月 9日 (月)

アイリッシュ・フルート&ハープ/アイルランドの風

日曜日の昼下がり、兵庫県立美術館ギャラリー棟1Fアトリエへ。

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ここで守安 功(アイリッシュ・フルート、ホイッスル)、守安雅子(アイリッシュ・ハープ、コンサーティーナ)、グローニャ・ハンブリー(アイリッシュ・ハープ)のコンサートが開催された。

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僕が興味を抱いたきっかけは今年の夏、関西吹奏楽コンクールで福島秀行/セントシンディアンサンブルの演奏するオキャロラン(建部知弘 編)/ケルト民謡による組曲第2番「オキャロランの花束」を耳にし、たちまちその素朴で美しい旋律の虜になったから。

ターロック・オキャロラン(1670-1738)は「アイルランド最後の吟遊詩人」とも呼ばれる盲目のハープ奏者・作曲家。アイルランド各地を放浪し、生涯に200以上の曲を遺した。僕は是非、彼の音楽をアイリッシュ・フルート&ハープで聴いてみたいと想ったのである。

グローニャ・ハンブリーさんはアイリッシュ・ハープの第一人者。完璧なテクニックの持ち主。この楽器はオーケストラで使用されるハープみたいに華やかで”ごっつい”音はしないけれど、飾り気がなくイノセントな響きがして実にチャーミングだった。昔は金属弦を使用していたが、現在はカーボン弦で演奏されるとの解説があった。また彼女はコンサーティーナ(六角形の小型アコーディオン)の名手でもあり、十代の頃オール・アイルランド音楽コンクールのチャンピオンになったこともあるそうだ。ピアソラでお馴染みのバンドネオンに近い形をした楽器で、それをさらに軽量化した感じ。

守安夫妻は年間の三分の一をアイルランドで過ごし、現在は世界初の試みとなるオキャロラン全作品録音プロジェクトに取り組んでおられる。

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今回のプログラムは、

  • 会うは楽しい、別れはつらい(アイルランド舞曲)
  • 小雨のそぼ降る朝(デニス・ヘンプソン)
  • ホーンパイプ
  • ダニエル・ケリー(オキャロラン)
  • オキャロランはおかみさんと喧嘩した(オキャロラン)
  • カウンティ・クレア
  • シングル・ジグ(ウィリー・クランシー)
  • イニシア島"Inisheer"(トマス・ウォルシュ)
  • チャーリー王子(スコットランド民謡)
  • 庭の千草(フルート:宮尾紀子、歌:保阪藍子
  • ミッキー・フィンに捧げるラメント(ビル・フィン)
  • ブラーニーへの旅路(オキャロラン)
  • ブラーニー城への巡礼(アイルランド民謡)
  • オキャロラン協奏曲(オキャロラン)
  • ウォーラー夫人(オキャロラン)
  • 夏の終わり(フィル・カニンガム)
  • マハラ・マウンティンズ(マーティ・ヘイジ)
  • ダニー・ボーイ(歌:中尾敦子
  • 小さい妖精、大きい妖精(オキャロラン)
  • 盲目の王様(作者不詳)

ほか。

"Inisheer"(Inis Oirr)はダブリン出身のThomas Walshというアコーディオン奏者が、アラン諸島の一番小さな島、イニシア島に旅した時の印象を書き留めた島唄だそう。

また1745年のイギリスとの戦いをモチーフにしたスコットランド民謡「チャーリー王子のエディンバラへの最後の一瞥」および、それがアイルランドに渡りマーチに生まれ変わった曲が両方演奏され、興味深かった。

映画「タイタニック」3等船室でのアイリッシュ・パーティで流れたダンス音楽も良かった!

さらにハープのソロで300年前の作曲家であるトマス・カラランと、現代の作曲家であるパトリック・デイビーの「牧師さんの住む家」が続けて演奏された。時を越えた握手。しかし、その底に流れるものは一貫しており、違和感はない。

ブラーニーへの旅路」もハープ・ソロ。守安 功さんが現在、アイルランドの全ての音楽の中で一番好きな曲だそう。「ブラーニー城への巡礼」では守安さんが縦笛2本を口にくわえ演奏。とても愉しい。

オキャロラン協奏曲」はハンブリーさんの師であるジャネット・ハービソンの編曲。イタリア・バロック音楽からの影響が濃厚だとハンブリーさんから解説があった。また「ウォーラー夫人」では守安さんが「イタリア85%、アイルランド15%の曲」と紹介された。

アンコールで演奏された「盲目の王様」は17世紀の曲で、ハンブリーさんのお気に入りだとのこと。

初めて聴いたアイリッシュ・フルートは風の音や雑音までも演奏技巧に取り入れ、イタリア・フランス・ドイツで発展したフルート(フラウト・トラヴェルソ)よりも、むしろ日本の篠笛や尺八に近いなぁと感じた。

考えてみれば、アイルランド民謡「ダニー・ボーイ(ロンドンデリーの歌)」や「庭の千草(夏の名残のバラ)」、スコットランド民謡「蛍の光」「アニーローリー」等、どこか懐かしく郷愁を感じさせる歌の数々は日本でも昔から親しまれてきた。我々の琴線に触れる、何かがあるのだろう。音楽に国境はないーそんなことを改めて考えさせられた、ひと時であった。

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2009年10月31日 (土)

第57回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 2009 《後編》

この記事は、第57回全日本吹奏楽コンクール高校の部 2009《前編》と併せてお読み下さい。

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西関東代表 春日部共栄高等学校(埼玉県) 金賞 / 埼玉県立伊奈学園総合高等学校 銀賞 / 埼玉栄高等学校 銀賞

春日部共栄の課題曲Vはタテがきっちりと揃っていた。自由曲は福島弘和/ラッキードラゴン〜第五福竜丸の記憶。静謐な美しさを湛えた名演。ここは常に邦人作曲家の新作に取り組んで来た学校であるが、保守的な選曲の団体ばかり高く評価される不利な状況の中、金賞が受賞出来て本当に良かった。

伊奈学園の課題曲IVは少女がはしゃいで水たまりを跳ね回っている姿を連想させる、チャーミングな演奏。問題は自由曲のマーラー/交響曲第1番「巨人」第4楽章。曲を聴きながら弦楽器のないマーラーへの違和感が終始付きまとった。ヴァイオリンのパートをクラリネットとフルートで代用しても駄目なのだ。吹奏楽でマーラーをする意味が皆目分からなかった。演奏中に僕は「今年、伊奈学園の金賞は絶対にないな」と確信した。これは宇畑知樹先生の戦略ミスと言えるだろう。宇畑/伊奈学園と長年コンビを組む作曲家・森田一浩さんのアレンジも精彩を欠いた。

大滝実/埼玉栄の神髄は"歌心"。その息遣いまでもが見事にコントロールされた歌の世界が展開された。自由曲はメンケン(宍倉晃 編)/「ポカホンタス」。アカデミー作曲賞および主題歌賞("Colors of the Wind")を受賞したディズニー・アニメのメドレー。優しい歌に満ち、ボンゴなどが活躍して愉しい。今年ここが何故金賞でなかったのか、さっぱり理解出来ない。



東海代表 光ヶ丘女子高等学校(愛知県) 銀賞 / 安城学園高等学校(愛知県) 銀賞 / 愛知工業大学名電高等学校 銀賞

光ヶ丘女子の自由曲は僕が大好きな新進気鋭の作曲家マッキー/「翡翠」よりI. 雨上がりに... II. 焔の如く輝き。ただ前から何度も書いていることだが、マッキーで金賞を取ることは至難の業である(今年までに6団体が挑戦し、金賞ゼロ)。演奏に破綻はないが、もっと躍動感・溢れ出る生命力が欲しい。

安城学園のこれ見よがしの学校ロゴ入り譜面隠しは如何なものか。いかにも私立らしい発想である。自由曲はカリンニコフ/「交響曲第1番」より第2・第4楽章鈴木英史さんのアレンジがイマイチで、吹奏楽でなぜこの曲を??と頭の中が疑問符でいっぱいになった。

愛知工大名電の自由曲はR.シュトラウス(森田一浩 編)/楽劇「サロメ」〜7つのヴェールの踊り。各々の奏者が上手で歯切れ良く、精度の高い演奏だった。



関西代表 大阪府立淀川工科高等学校 金賞 / 大阪桐蔭高等学校 金賞 / 天理高等学校(奈良県) 銀賞

淀工丸谷明夫先生(丸ちゃん)と言えば、マーチを振らせれば天下無双。課題曲IVはきりっと手綱を引き締め、タテがしっかり合った完璧なアンサンブル。強弱の変化(ダイナミックス)も際だっている。自由曲はラヴェル/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲淀工の神髄はpp(弱音)の美しさ。冒頭部のアルベジオから曖昧さは皆無で、精緻・鮮明。複雑なオーケストレーションが隅々まで見透かせるような演奏で文句の付けようがない。見事23回目の金賞受賞となった。

丸ちゃんは昔、自由曲で色々な試みをして来た。しかしイベール/交響組曲「寄港地」に2回挑み、いずれも銀賞だったあたりから「吹奏楽コンクールには金賞を勝ち取れる曲と、そうでない曲がある」という悟りの境地に至ったのではないか?と推察する。その頃から「ダフニスとクロエ」「スペイン狂詩曲」「大阪俗謡による幻想曲」という鉄壁の3曲ローテーションが始まり、1995年以降実に12大会連続金賞(3回の3出休みを挟む)という快進撃となった。これには当然、賛否両論があるだろう。しかしコンクールの目的はやりたい曲を演奏するとか、聴衆を楽しませることではない。「確実に勝つ。子供たちに絶対悲しい想いをさせない」というのも、やはりひとつの正しい見識であるだろうと僕は想うのだ。

大阪桐蔭が演奏する自由曲オルフ(J.クランス 編)/世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」は今年の7月、(偵察がてら)既に聴いている。

この時点では正直、全国大会で金賞を獲れる内容だとは想わなかった。それから3ヶ月、高校生は練習を積み重ねればこれだけ伸びるのかと、その目覚ましい進化に腰を抜かした。課題曲Vは細かいニュアンスまで目が行き届き、精度が極めて高い。自由曲は金管の力感とヌケが抜群で、燦然と輝く華やかな音色に圧倒された。ユージン・オーマンディが音楽監督だった時代のフィラデルフィア管弦楽団のサウンドを彷彿とさせたと言ったら、褒めすぎだろうか?いやはや凄かった。

天理は音に表情がなく平板。自由曲「ダフニスとクロエ」は冒頭部が曖昧模糊としている。それから終曲「全員の踊り」はもっと軽やかさが欲しかった。



中国代表 修道高等学校(広島県) 銀賞 / おかやま山陽高等学校 銅賞 / 明誠学院高等学校(岡山県) 銅賞

修道は今時、珍しい男子校だった。パワーはあるが荒っぽい。それから鈴を鳴らすタイミングが遅れているのが気になった。自由曲「ダフニスとクロエ」は冒頭部がムニャムニャ混沌とし、旋律が間延びして聴こえた。

おかやま山陽は結構テンポが動く課題曲Vだった。自由曲はリスト(田村文生 編)/バッハの名による幻想曲とフーガ。聴いてて心地良い演奏。

明誠学院の課題曲IVは威勢がいい反面、大雑把。自由曲はカールマン(鈴木英史 編)/喜歌劇「チャルダッシュの女王」セレクション。手拍子が途中入ったり、元気よく若々しい演奏。賑やかで愉しいアレンジに魅了された。



四国代表 香川県立坂出高等学校 銅賞 / 高知県立高知西高等学校 銅賞

四国地区は昨年に引き続き銅賞2つ。7年連続銅賞のみという不名誉な記録も持つ。

坂出はリズムの後打ち(ホルン、トロンボーン)が遅れているのがすごく気になった。

高知西の課題曲Vはメリハリがあったし、自由曲ブライアント/アクシス・ムンディは緻密な演奏だった。という評価は、これが現代曲だったので損をしたのだろう。2年前、高知西が全国大会初演したマッキー/レッドライン・タンゴの時と全く同じ現象が起こったのである。



九州代表 精華女子高等学校(福岡県) 金賞 / 原田学園鹿児島情報高等学校 銀賞 / 沖縄県立コザ高等学校 銅賞 

今年のコンクールで何といっても期待されたのは藤重佳久/精華女子による自由曲C.T.スミス/華麗なる舞曲。最早伝説となったあの壮絶な名演、宮本輝紀/洛南高等学校吹奏楽部(京都府)の「華麗なる舞曲」(1992年全国大会)を果たして超えることが出来るのか?ということに注目しつつ、固唾を呑んで見守った。だが残念なことに精華女子の演奏は細かなミスが目立ち、全盛期の洛南を凌ぐことは叶わなかった。ただあの時の洛南は正に神の領域に達した演奏であり、それと比較すること自体が気の毒というものだろう。少なくとも精華女子が文句なしの金賞であったことは自信を持って言える。ここのサウンドは柔らかく流麗。女性らしく、きめ細やか。そういう意味で、圧倒的パワーとヴィルトゥオーゾを誇った洛南の演奏とは対照的だ。また昨年も感じたことだが、演奏する生徒さんたちの上半身が音楽の流れと共に波のようにうねる、その動きがとても美しい!想わず見惚れてしまう。やはりこの特色は、精華女子がマーチングの名門であることと決して無関係ではないだろう。

屋比久勲先生が福岡工業大学付属城東高等学校を勇退、鹿児島情報高に赴任され3年目(福工大城東は今年、九州地区大会でダメ金だった)、昨年に続き2回目の全国大会出場である。いよいよ《屋比久サウンド》の完成を目の当たりにする想いがした。課題曲IVは低音に厚みがあって、どっしりした音のピラミッドを構築する。自由曲はショスタコーヴィチ/交響曲第5番「革命」~第4楽章。戦車の歩みのように重厚な出だしは屋比久先生が全日本吹奏楽コンクールで福工大城東を最後に振った「エルフゲンの叫び」を彷彿とさせ、金管の輝かしいファンファーレには胸がすくような心地がした。僕は金賞に値する演奏だったと想う。

沖縄県の高校が九州代表に選ばれたのは1988年沖縄県立首里高等学校以来、実に21年ぶり。なお、金賞を受賞したのは'74年の首里が最後である。コザの生徒さんたちは日焼けしていて、やっぱり南国だなぁと感じさせた。課題曲IVは音の処理が些か雑な印象を受けた。自由曲はR.W.スミス/交響曲第3番「ドン・キホーテ」。フルートがカスタネットも兼務。スペインの情緒が感じられ、灼熱の激情を内に秘めた演奏だった。初の全国大会出場、おめでとうございました。

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色々書いたけれど、とにかく愉しかった!そして胸が熱くなった。死力を尽くした高校生の皆さん、本当にありがとう。お疲れ様でした。

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2009年10月28日 (水)

第57回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 2009 《前編》

まず選曲の問題から考察していきたい。

今年、東京・普門館で開催された全日本吹奏楽コンクール《高校の部》に出場したのは29校。演奏された課題曲の内訳を以下に記す。

  • 課題曲 I     0校
  • 課題曲 II    2校
  • 課題曲 III   3校
  • 課題曲 IV 16校
  • 課題曲 V   8校

つまり朝日作曲賞を受賞した課題曲 I 「16世紀のシャンソンによる変奏曲」を選んだ団体は全て地区大会で淘汰され、全国まで駒を進められなかったということになる。ちなみに中学の部、大学の部、職場・一般の部を併せても(全95団体)、課題曲 I で金賞を受賞出来たのはたった1団体という惨憺たる有様だった。昨年の課題曲「ブライアンの休日」同様、「16世紀のシャンソンによる変奏曲」は確かに名曲には違いないが、コンクールで勝てない曲(鬼門)でもあったのである。このように、自由曲に於いても選曲で審査結果が変わってくるというのは実際にあることなのだ(おかしな話ではあるが)。

それから演奏順の運・不運についても書いておきたい。「朝1番に演奏する団体に対する審査員の評価は厳しくなる」というのも歴然とした事実である。過去20年間のデータを調べてみると、出演順が1番だった高校が金賞を受賞したのはたった2校。確率10%。今年出場29団体中金賞が10校あったので、全体で考えれば受賞出来る確率は10/29=34%となる。つまり統計学的有意差をもって明らかに不利ということ。淀工習志野も朝イチの年は銀賞だった。審査員も人の子。最初に付ける採点表は(匙加減が分からず)どうしても辛めになるのである。

僕が何を言いたいのかというと、今年朝イチだった柏市立柏高等学校市柏)の銅賞という不当に低い評価に対して憤りを禁じ得ないという話である。

コンクールの評価が必ずしも正しいとは限らない。名ピアニストのヴラディーミル・アシュケナージは1955年のショパン国際ピアノコンクールで第2位であった。その年の1位は「アダム・ハラシェヴィッチ」……って、一体誰??当時、審査員の1人であったアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリがこの審査結果を不服としてサインしなかったことは余りにも有名。また天才イーヴォ・ ポゴレリッチは1980年のショパン国際ピアノコンクールでなんと本選落選。これに対し審査員だったマルタ・アルゲリッチが抗議・辞任するという大騒動に発展した。同様の《あり得ないジャッジ》が今年、市柏にも下されたのである。

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そろそろ各論に入ろう。北から順番に各地区ごと感想を書いていきたい。

北海道代表 東海大学付属第四高等学校 金賞 / 北海道旭川商業高等学校 銀賞

東海第四の課題曲IVは滔々とした大河の流れ。自由曲レスピーギ/バレエ音楽「シバの女王ベルキス」は悠久の歴史を回顧するように、聴衆を物語の世界へと誘(いざな)う。北海道の大地を連想させる雄大な演奏。文句なし!

旭川商業の自由曲はラヴェル/「スペイン狂詩曲」。音が翳り、日照時間の短い”北のラヴェル”という雰囲気だった。もっとスペインらしく、燦々と降り注ぐ陽光が欲しい。



東北代表 福島県立磐城高等学校 金賞 /福島県立湯本高等学校 銀賞 / 秋田県立秋田南高等学校 銅賞 

磐城って、いつ見ても男子生徒の学ランが清々しいんだよね。根本直人先生らしく、課題曲IVのマーチから荒ぶる魂を感じさせ嵐の予感。自由曲シュミット/ディオニソスの祭はバーバリズム(野性味)が炸裂!常に緊張感・危機感が失われることなく、とりわけ最後の2音に強烈な印象を受けた。「演奏によって曲が輝く」ことを実感させるものだった。

湯本の課題曲IVは滑らかで、優しい。自由曲の矢代秋雄/交響曲は金管がよく鳴り、アンサンブルの精度も高かった。金でも良かったんじゃないだろうか?

秋田南の課題曲Vはテンポが遅かった。自由曲はオーケストラの演奏会でも滅多に聴けないシュミット/交響曲第2番。こういう選曲は嬉しいし、ありがたい。編曲は天野正道さん。秋田南は天野さんの母校である。



北陸代表 石川県立小松明峰高等学校 金賞 / 富山県立高岡商業高等学校 銀賞 

小松明峰の課題曲IVは端正な解釈。自由曲バルトーク/バレエ音楽「中国の不思議な役人」は楷書的で正確・明快な演奏。本来、民族(ハンガリー)色が濃厚なバルトークがそれでいいのか?という疑問は残るが……。

高岡商の自由曲はR.シュトラウス/アルプス交響曲。6本のホルンがよく鳴っていた。それ以外の印象は希薄。



東関東代表 習志野市立習志野高等学校(千葉県) 金賞 / 横浜創英中学・高等学校 銀賞 / 柏市立柏高等学校(千葉県) 銅賞

習志野は青いジャケットが爽やか。石津谷先生の指揮台にカラヤンの写真が置かれていたのが可笑しかった。何故に?課題曲IIは軽妙洒脱でウィットに富む演奏。楽器を吹いていない生徒たちの笑顔が素敵だった。緊張する筈のコンクールでああいう表情ができるってすごい。自由曲はグリエール(石津谷治法 編)/バレエ音楽「青銅の騎士」。伸びやかでチャーミング、音楽のワクワクするような楽しさがこちらまで伝わってきた。ブラボー!

横浜創英の課題曲IIは堅い演奏。自由曲プッチーニ(後藤洋 編)/歌劇「トゥーランドット」はカンタービレが少々間延びして聴こえた。アインザッツ(休止後の吹き始め)が揃っていないのが気になる。

市柏の課題曲IVは歯切れがよく、強弱のコントラストが鮮明。自由曲は清水大輔/マン・オン・ザ・ムーン(Alternate Take)。ハミングあり、サンダーマシーンありとすこぶる面白い。冒頭部はジェームズ・ホーナーが作曲した映画音楽「アポロ13」みたいで格好いい。中間部に入ると不協和音の洪水となる(僕は2005年に市柏が挑戦した風変わりな自由曲「ウィンドオーケストラのためのムーブメントII~サバンナ」のことを想い出した)。石田修一先生、今年もチャレンジングな選曲をされたなと胸がスカッとした。ただこういう斬新な曲は保守的な審査員は受け入れられないだろうし(「サバンナ」の年は銀賞)、出場順が朝イチだから金賞は難しいかも知れないなとは感じたが、よもや銅賞などという判定が下されようとは夢にも想わなかった。目の覚めるような演奏を披露してくれた市柏の生徒さんたちが、本当に可哀想である。



東京代表 東京都立片倉高等学校 金賞 / 駒澤大学高等学校 金賞

東京勢は昨年2校とも銀賞という不本意な結果に終わったが、今年は大いに気を吐いた。なお、3出休み明けの東海大学付属高輪台高は支部大会で金賞を受賞するも代表にはなれず(=ダメ)、相当レベルの高い戦いだったようだ。

片倉は女子の多さが目を引いた。自由曲はバルトーク/バレエ音楽「中国の不思議な役人」。マグマが噴出するような熱い演奏。瀕死の役人が”のた打ち回る”雰囲気が巧みに醸し出されていて秀逸。終盤の加速が物凄く、ド迫力!馬場正英先生が指揮台で大暴れしているのが目に焼き付いた。

駒澤の課題曲IVはゆったりとしたテンポで。自由曲はコダーイ/ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲。各声部(パート)がクリアに聴こえてくる、理知的で全体の見通しが良い「くじゃく」であった。

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上の写真は当日会場で配られた朝日新聞の号外。西関東代表以西の感想は《後編》で語ろう→こちらからどうぞ。

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2009年10月25日 (日)

吹奏楽コンクール終了!

吹奏楽コンクール終了!
携帯電話より。

後半の部で瞠目したのは大阪桐蔭高等学校の進化。輝かしいサウンドだった。初の金賞、おめでとう。

それから今年の伊奈学園についてだが、銀賞は妥当な評価だったと想う。詳しくは後日。

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雨の普門館

雨の普門館
携帯電話より送信。全日本吹奏楽コンクール《高校の部》を聴きに来ている。今年はマスクをした生徒さんが多い。

前半の部が終わり、淀工は鉄板の金!しかし、市柏の銅という評価はあり得んだろ……。

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2009年10月21日 (水)

今週末のスケジュール

今週末の僕の予定は中々大変なことになっている。

10月24日(土)、午前中は仕事。

13時半よりザ・シンフォニーホールで児玉宏/大阪シンフォニカー交響楽団の名曲コンサートを聴く。

  • メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲 第1番
  • シューベルト/交響曲 第3番

これを「名曲」と言い切ってしまうところに児玉さんの一筋縄ではいかない、したたかさを感じるのは僕だけではないだろう。

名曲コンサートが終わり次第、環状線で移動していずみホールの「ウィーン音楽祭」へ。16時開演の大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団+ウィーン楽友協会合唱団による、

  • ブラームス/「哀悼歌」、「ドイツ・レクイエム」

なおチケットは早々に完売している。

このコンサートが終了したら今度は新大阪に向かい、新幹線で一路東京へ。ここで一泊。

翌、10月25日(日)は普門館で全日本吹奏楽コンクール高校の部》を前半・後半併せて聴く予定である。

という訳で、書くことが多すぎてブログの記事更新が暫く滞ると予想されるので悪しからず。なお、普門館からは携帯でちょっとだけ実況報告をするかも。

ところで非常に興味があるのは、《高校の部》の審査員として大フィル/クラリネット奏者の田本摂理さんのお名前があるのだが、田本さんは前日いずみホールの「ドイツ・レクイエム」は演奏されるのだろうか?

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2009年9月28日 (月)

大阪市音楽団/第1回 さわやかウインド・コンサート

日曜の昼下がり、プロの吹奏楽団・大阪市音楽団の「さわやかウインド・コンサート」を聴くため大阪市立住吉区民センターに足を運ぶ。

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会場は満席。キャンセル待ちのお客さんもいたようだ。

指揮は小松一彦さん。まずはスーザ「星条旗よ永遠なれ」から。カチッとしてタイト、筋肉質のマーチ。

次は真島俊夫作曲「SWEET 水都 OSAKA」。1997年「なみはや国体」の入場行進曲として大阪市から委嘱されたもの。冒頭、威勢のいいトロンボーンがミュージカル「ミュージック・マン」(メレディス・ウィルソン)の”76本のトロンボーン”を彷彿とさせる。中間部のグリッサンド(下行半音階)が中々お洒落だ。

3曲目は交響組曲「日本スケッチ」貴志康一 作/森田一浩 編)。指揮の小松さんは貴志の伝道者としても知られている。

小松さんからのお話しもあり、「貴志の曲を紹介する際に《大正デモクラシー、大正モダニズムから学ぼう!》を標語に掲げているのです」と。

大阪・船場生まれの貴志の音楽には凛としたロマンチシズムがある。「日本スケッチ」は4つに分かれている(I. 市場 II. 夜曲 III. 面 IV. 祭り)。「夜曲」は物憂い叙情に包まれ、変拍子が面白い「」はひょっとこ面で始まり、穏やかな中間部では能面が描写される。諧謔性(=おどけたユーモア)に富む。そして小松さんがブラジルで演奏した時に大変受けたという「祭り」からは生命の鼓動が聴こえる。曲の魅力を十分引き出した文句なしのパフォーマンスであった。

休憩を挟み、プログラム後半は吹奏楽のための交響的ファンタジー「ハウルの動く城」久石譲/後藤洋 編)から。これは2005年、石川県能美市立根上中学校吹奏楽部の全日本吹奏楽コンクール自由曲として編曲されたもの(北陸支部大会金賞)。様々な楽器にソロがあり、久石さんが書いた魔法の音楽を堪能。ウィンド・マシーンも登場して愉しい。森田一浩さんによる「ラピュタ」~キャッスル・イン・ザ・スカイに匹敵する名アレンジだと想ったが、ただ最後の「人生のメリーゴーランド」が短いことに不満が残った。こちらは小島里美編曲バージョンに軍配が上がる。

そしてジュピター賛歌。これはホルスト/組曲「惑星」~木星中間部のみヨハン・デ・メイが編曲したもの。デ・メイは「指輪物語」など作曲家としては素晴らしいと想うのだが、アレンジャーとしての才能に僕は以前から疑いの目を持っていた。だって「キャッツ」とか「オペラ座の怪人」とかのデ・メイ編曲版、冗長で詰まらないんだもん。そしてこのジュピター賛歌、一言で言えば「それだけかよ!!」

ハーモニーが美しい「ロンドンデリーの歌」パーシー・グレインジャー編)を経て、プログラム最後は歌劇「トゥーランドット」よりプッチーニ/後藤洋 編)。小松さんから「プッチーニの魅力は旋律の揺れにあります。ジェットコースターの動きを連想して下さい」とのお話があった。これは大滝実/埼玉栄高等学校が2006年に全日本吹奏楽コンクールで演奏し一世を風靡したものだが、その短縮版ではなく演奏会用ロング・バージョン。卓越したアレンジで一分の隙もない。荘重で荒々しい演奏。もう少しイタリア・オペラらしいカンタービレが欲しいかなという気もしたが、まあそれが小松さんの資質なのだろう。

アンコールは喜歌劇「メリー・ウィドウ」から”ヴィリアの歌”レハール/A.リード 編)、そして行進曲「秋空に」上岡洋一)。

看板に偽りなし、実に爽やかな演奏会であった。

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2009年9月27日 (日)

三度(みたび)吹奏楽の甲子園、普門館へ!

”吹奏楽の甲子園”と呼ばれる東京・普門館。

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そこに今年も全日本吹奏楽コンクール/高校の部を聴きに往くこととなった。 前半・後半の部、各々チケットをなんとか確保。発売開始10分の時点でチェックすると、既に完売していた。

今年の目玉は何と言っても藤重佳久/精華女子高等学校「華麗なる舞曲」(C.T.スミス)。昨年、同じ作曲家の「フェスティバル・ヴァリエーションズ」で普門館が興奮の坩堝と化したあの奇跡が再現されるのか?そして誰しもが期待しているのは最早伝説となった名演、宮本輝紀/洛南高等学校吹奏楽部の「華麗なる舞曲」(1992年全国大会)を遂に精華が超えるのか?ということ。

「ミス・サイゴン」(2002)「カヴァレリア・ルスティカーナ」(2007)などで一世を風靡し、21世紀の伝説を数々生み出してきた大滝実/埼玉栄高等学校が今年どんな演奏を聴かせてくれるのかも聴き逃せない。自由曲は「ポカホンタス〜アメリカン・プリンセスの伝説〜」(A.メンケン/宍倉 晃)。ポカホンタス、いいよねぇ。アカデミー主題歌賞を受賞した“カラー・オブ・ザ・ウィンド”は最高に美しい!大滝先生の神髄は歌心。今度はどんな歌を聴かせてくれるのだろう?

宇畑知樹/伊奈学園総合高等学校が挑戦する交響曲第1番「巨人」より第4楽章(G.マーラー/森田一浩)も愉しみ。吹奏楽でマーラー??弦なしで成立しうるのか。う〜ん、イメージ出来ない。是非こちらの予想を裏切って下さい。

石田修一/柏市立柏高等学校の自由曲は清水大輔さんの新曲「マン・オン・ザ・ムーン」。僕はいつも風変わりな曲で勝負する石田先生のチャレンジ精神が大好きだ。ただ今年の市柏、出演順がトップ=朝イチなんだよね。これが絶対的に不利な順番であるということは過去のデータが証明している。全日本吹奏楽コンクールここ20年間の成績を調べてみると、朝イチの出番で金賞を受賞したのはたった2校。確率たった1割である。習志野も、東海第四も、そしてあの丸谷明夫先生率いる淀工でさえ、この順番で出場した時は銀賞だった。つまり審査員が最初に記入する採点表は、比較対象がないので辛めになるということなのだろう。市柏の生徒の皆さんが、このハンディを乗り越えられることを心から期待しています。

後半の部で焦点となるのは、まだ創部3年目の原田学園鹿児島情報高等学校吹奏楽部が、遂に全国大会金賞に輝くのか?ということだろう。屋比久勲先生の手腕に注目だ。ちなみに屋比久先生が去った、福岡工業大学附属城東高等学校は今年、九州支部代表に選ばれなかった。

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