吹奏楽

〈音楽の魔法〉映画公開目前!直木賞・本屋大賞ダブル受賞〜恩田陸「蜜蜂と遠雷」の魅力とそのモデルについての考察

直木賞・本屋大賞をダブル受賞した恩田陸の小説「蜜蜂と遠雷」は松岡茉優主演で映画化され、10月4日に公開される。公式サイトはこちら

Mitubachi

四人のピアニストがコンクールで競うのだが、それぞれ河村尚子(クララ・ハスキル国際コンクール優勝)、福間洸太朗(クリーヴランド国際コンクール優勝)、金子三勇士(バルトーク国際ピアノコンクール優勝/父が日本人で母がハンガリー人)、藤田麻央(チャイコフスキー国際コンクール 第2位)という、日本を代表する若手ピアニストたちが演奏を担当しているというのも大いに話題となっている。僕はこの内二人の実演を聴いたことがある。

恩田陸は執筆にあたり三年に一度開催される浜松国際ピアノコンクールに四回足を運び、ひたすら聴き続けたという。構想から十二年かけて小説は完成した。

ピアノを主題にした小説といえば「蜜蜂と遠雷」より先に、宮下奈都の「羊と鋼の森」が本屋大賞を受賞している。

恩田陸が浜松で取材を始めたのが2006年のコンクールから。編集者の志儀氏によると、それから二年以上も全く書かなかったそうだ。雑誌で連載が始まったのは2009年4月、終わったのが2016年5月。足掛け七年かかっている。一方、「羊と鋼の森」の連載開始が2013年11月なので「蜜蜂と遠雷」の方が早い。恩田が「二次予選で風間塵を敗退させる」と言い出した時、志儀氏は「さすがにそれはダメだ」と言った。

2003年に書類審査で落とされたピアニストが敗者復活的なオーディション@ウィーンで拾われ、浜松の本選で最高位(第1位なしの第2位)に入った。ポーランド生まれのラファウ・ブレハッチである。それまで自宅にアップライトピアノしかなく、コンクール出場直前になってワルシャワ市がグランドピアノを貸与したという。そしてブレハッチは2005年にショパン国際ピアノコンクールで優勝した。なお現在は審査方法が変わり、予備審査は書類だけではなく演奏DVDの送付が義務付けられるようになったそう(音声データだけでないのは替え玉応募を防ぐためだろう)。

ブレハッチのエピソードが「蜜蜂と遠雷」の風間塵に反映されているのは言うまでもない。またトリックスター的彼の性格は、クロアチアのピアニスト、イーヴォ・ポゴレリチを彷彿とさせる。破天荒なポゴレリッチの演奏は1980年のショパン国際ピアノコンクールで物議を醸し、予選で落選。審査員の一人マルタ・アルゲリッチは「彼は天才よ!」と選考結果に激昂し、辞任した。彼女が審査員として復帰するまでそれから20年を要した。世に言う「ポゴレリッチ事件」である。事態を重く見た事務局は急遽彼に審査員特別賞を与えることにした。かえってこの騒動で一気にスターダムにのし上がったポゴレリッチはドイツ・グラモフォンと契約し、数多くのアルバムをリリースした。

トリックスター・風間塵(16歳)は「ギフト」か「災厄」か?彼は師匠ホフマンに「狭いところに閉じこめられている音楽を広いところに連れ出す」と約束していた。小説の最後で少年は夜明けの海の波打ち際に立ち、こう思う。「耳を澄ませば、こんなにも世界は音楽に満ちている」とても魅力的なキャラクターである。彼を本選まで残した幻冬舎の編集者・志儀氏の判断は正しかった。

僕は全日本吹奏楽コンクールが普門館で開催されている時代に〈高校の部〉を3年連続で聴いたことがあるので、何となくコンクールというものの雰囲気が分かる。一番目に演奏するコンテスタントが不利というのも同じ。審査のたたき台にされ、様子見で高得点が出ないのである。そして朝から晩まで一日中聴き続けているだけで、最後はヘトヘトに疲れる。これを何日も続ける審査員は本当にご苦労様である。

浜松国際ピアノコンクールはブレハッチ以外にも、次のようなスターを世に送り出した。

  • 第4回 第2位:上原彩子→チャイコフスキー国際コンクール優勝
  • 第7回 優勝:チョ・ソンジン(韓国)→ショパン国際ピアノコンクール優勝

小説の中でコンテスタントのひとり、ジェニファ・チャンは「女ラン・ラン」と呼ばれ、次のように描写されている。

ふと、最近のハリウッド映画はエンターテイメントではなく、アトラクションである、と言った映画監督の言葉を思い出す。チャンの演奏は、なんとなくそれに近いような気がする。

これは正にラン・ランの演奏を聴いたときの僕の印象を的確に言い当てている。確かにテクニックは完璧で達者だから感心はするのだけれど、後に何も残らない。すなわち、感動はしないのだ。

また楽器店勤務のサラリーマンで年齢制限ギリギリでコンクールに参加する高島明石はこう問う。「生活者の音楽は、音楽だけを生業とする者より劣るのだろうか」ー明石のモデルは間違いなく宮沢賢治だろう。賢治は詩や童話を書きながら、同時に農民として汗水たらして働いた。賢治の詩「春と修羅」をモチーフにしたコンクール課題曲を一番共感を持って弾くのが明石なのは決して偶然じゃない。

浜松はYAMAHAの町であり(本社がある)、ヤマハ吹奏楽団浜松は全日本吹奏楽コンクール職場の部の金賞常連団体である(指揮者は須川展也)。〈生活者の音楽〉というか、「セミ・プロじゃん、ズルい!」という気がしないでもない。

因みに映画で課題曲「春と修羅」は大阪出身の藤倉大が作曲している(現在はイギリス在住)。彼が「尾高賞」を受賞したオーケストラ曲"secret forest"世界初演を僕はいずみホールで聴いた。作曲家も来場していた。

「春と修羅」は無調音楽だが決して耳に不快ではなく、美しく宇宙的広がりを感じさせるものに仕上がっている(既に配信された音源を聴いた)。四人のコンテスタントがそれぞれ別のカデンツァを弾く趣向も個性が出て愉しい。

ラファウ・ブレハッチは恩田陸との対談で恩田から「演奏を終えて『今日はよくできた』と思う日もありますか」と訊かれ、次のように述べている。

ピアノも調律も音響も、その他の条件も全て整っている環境で、満員のお客様が期待に満ちて待っている中、私も完璧に深い演奏ができたなら、ある種の満足感は得られるでしょう。しかし、たとえそうであっても、翌日はまた別の演奏になります。結局のところ、究極の理想に近づいていく過程こそが美しいのであって、生きている間はその理想にはたどり着けないのではないでしょうか。 (出典はこちら

まるで哲学者のような奥深い言葉だ。そして「蜜蜂と遠雷」は正にその過程を描いている。〈ミューズ(音楽を司る女神)との対話〉と言い換えても良い。だから読んでいるうちに、審査結果(順位)なんかどうでもよくなってしまう。だってそれがゴールじゃないのだから。そこからはじまるのだ。恩田によると、本選まではやって、結果わからずで終わらせようか、なんていう案もあったという。当初の構想のままで良かったのではないだろうか?

幼馴染で、コンクール会場で久しぶりに再会した亜夜(嘗ての天才少女)とマサル(ジュリアードの王子様)の会話。

「あたし、プロコフィエフのコンチェルトって全部好き。プロコフィエフって踊れるよね」
「踊れる?」
「うん、あたしがダンサーだったら、踊りたい。バレエ音楽じゃなくても、プロコフィエフの音楽って、聴いてると踊っているところが見える」
(中略)
「僕、三番聴いていると、『スター・ウォーズ』みたいなスペース・オペラを想像するんだよね」
「分かる、宇宙ものだよね、あれは。二番はノワール系」
「そうそう、暗黒街の抗争みたいな」

これにはとても共感した。「スター・ウォーズ」の音楽に出会ったとき、僕は小学校高学年だった。その頃からジョン・ウィリアムズはプロコフィエフの影響を受けているなと強く感じていた。特に「スター・ウォーズ」の”小人のジャワズ”、そして「スーパーマン」の”レックス・ルーサーの小屋”におけるファゴットの使い方が、凄くプロコフィエフ的なんだ。

マサルはラフマニノフのピアノ協奏曲 第三番について「ピアニストの自意識ダダ漏れの曲」と表現する。またショパンについては、本選で協奏曲の指揮をする小野寺の心情が次のように綴られている。

ソリストには憧れの名曲といえど、オーケストラにとっては退屈という曲が幾つかあるもので、ショパンの一番はそれに含まれるのではなかろうかと思う。小野寺は、ショパンコンクールの本選はショパンの一番と二番という選択肢しかないから、幾ら国の誇りであり、ショパン好きであっても、オーケストラはさぞしんどいだろうな、と密かに同情している。

全く同感である。はっきり言って”ピアノの詩人”ショパンのオーケストレーションは稚拙だ。しばしばシューマンのオーケストレーション技術が問題とされ、彼の交響曲を振る時にマーラー編曲版のスコアを使う指揮者も少なくないが(トスカニーニ、シャイー、スダーンら)、ショパンに比べればよほどマシである。ショパンの協奏曲におけるオーケストラの役割は添え物でしかなく、特にトランペットなんか伴奏の和音を間抜けにプープー吹くだけ、といった体たらくだ。

膨大なディスコグラフィを残したヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルはラフマニノフの二番を一度だけワイセンベルクと録音しているが、三番は皆無。ショパンの一番も全く録音を残していない(他者が編曲したバレエ音楽「レ・シルフィード」は一度だけある)。レナード・バーンスタインも同様。つまり演奏する価値がないと見なしていたわけだ。天下のウィーン・フィルもショパンの一番をレコーディングしたのはラン・ランと一回きり。超一流オケは歯牙にもかけないのである。

あと次の一節が心に残った。

音楽家というのは、自分のやりたい音楽が本当に自分で分かっているとは言いがたい。長くプロとしてやってきていても、自分がどんな演奏家なのか実は見えていない部分もある。好きな曲ややりたい曲と、その人に合っていてうまく表現できる曲は必ずしも一致しない。

アマチュア吹奏楽の世界にも同じことが言える。普段のポップス・コンサートでは伸び伸びと、水を得た魚のようにピチピチ跳ねるパフォーマンスを展開するのに、吹奏楽コンクールになると途端に硬い、オーケストラの編曲ものを選んでしまい、窮屈で縮こまった演奏に終始して実力を発揮仕切れない団体を何度も目撃して来た。

恩田陸の小説は昔から好きで処女作「六番目の小夜子」から読んでいる。やはり本屋大賞を受賞した「夜のピクニック」や、疾風怒濤の息もつかせぬ展開をする「ドミノ」も良かったが、北の湿原地帯にある全寮制の学園で展開される幻想的な「麦の海に沈む果実」がこれまで一番のお気に入りだった(萩尾望都の漫画「トーマの心臓」とか、金子修介監督の映画「1999年の夏休み」に近い世界観)。しかし間違いなく「蜜蜂と遠雷」こそ、現時点で彼女の最高傑作だろう。ただし、マサルがリストのピアノ・ソナタを演奏する場面で、わけのわからない中世の物語が登場したのはいただけなかった。僕が幻冬舎の編集者だったら、「恩田さん、これはあかん。話が陳腐やわ」と駄目出しをしただろう。志儀氏は「仕方ないけど、この手は1回だけにしようね」と言ったそう(出典はこちら)。映画版ではどう処理するのだろう?僕がこの曲からイメージするのはエミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」かな。あのムーア(荒野)の感じとか、ヒースクリフの〈狂恋〉がピタリとはまるように思う。

なお現在、〈映画「蜜蜂と遠雷」公開記念!これだけは聴いておきたいピアノの名曲・名盤30選〉というブログ記事を鋭意作成中。乞うご期待!!10月4日には間に合わせます。

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#MeToo のおかげでデュトワ降臨!!大阪フィル定期(ダフニス・幻想交響曲)または、〈棚ぼたの奇跡〉

映画「恋におちたシェイクスピア」や「シカゴ」などアカデミー賞を獲りまくっていたプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが女優らに対してセクシャルハラスメントや性的暴行を長年にわたり繰り返していたことが告発され逮捕された。ここから盛り上がりを見せたのが #MeToo 運動である。「アメリカン・ビューティ」でアカデミー主演男優賞を受賞したケヴィン・スペイシーは映画業界から追放され、ウディ・アレン監督は映画を撮れなくなり、「千と千尋の神隠し」北米公開に尽力してくれたジョン・ラセターはディズニー及びピクサー・アニメーション・スタジオ(両社でチーフ・クリエイティブ・オフィサーを兼任)を去らなければならない状況に追い込まれた(挨拶でハグする時間が、他の人より長いという理由で!)。

クラシック音楽業界ではジェームズ・レヴァインが芸術監督を努めていたメトロポリタン歌劇場から永久追放された。また2016年秋からロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者に就任したダニエレ・ガッティは複数の楽団員にキスを迫るなどセクハラ行為をしていたことが発覚し、2018年8月に電撃解任された(記事はこちら)。コンセルトヘボウの後任は未だ決まっていない。

2017年12月22日、AP通信はシャルル・デュトワ(82)が過去にセクハラ行為を繰り返していたと複数の女性被害者の証言を基に報じた。この報道が引き金となり、翌18年2月末に名誉音楽監督の地位にあるNHK交響楽団宛にデュトワから「現状では私自身のみならず、オーケストラ、そして親愛なるお客様が音楽を十分に楽しめる環境にない」などと申し出があり、12月定期演奏会の出演を辞退した。問題となったのはなんと、30年前の行為であった#MeToo もここまで行くと、Too Much !なのでは?

結局第一線での仕事を失ったデュトワがいわば〈都落ち〉みたいな形で、大阪フィルハーモニー交響楽団の指揮台に初めて立つに至ったというわけ。正に棚ぼたである。前立腺がんの治療に専念するために降板した尾高忠明の代演として、大フィルのR.シュトラウス/楽劇「サロメ」(演奏会形式)もデュトワが振ると発表され、関西のクラシックファンは騒然となった。みんな狂喜乱舞である。最近の彼は上海交響楽団とも親密な関係を結んでいるようだ(上海でも「サロメ」をやったそう)。アジアでは風当たりが強くないのだろう。

世界のオーケストラ・ランキングを考えると、まずベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ、ロンドン交響楽団、シカゴ交響楽団などがAランクに位置する(最近のウィーン・フィルの凋落ぶりは目を覆いたくなる)。NHK交響楽団や東京交響楽団など在京オケ、そして京都市交響楽団はBランク。大フィルは高く見積もってもせいぜいCランクだろう。弦楽器に関してはBランクと言っても良いが、如何せん管楽器が弱い。これを僕は以前、弦高管低と評した。そんな地方オケを世界的指揮者デュトワが振ってくれるなんて、僥倖としか言いようがない。

クリーブランド管弦楽団を慈しみ育てた指揮者ジョージ・セル、フィラデルフィア管弦楽団のユージン・オーマンディ、シカゴ交響楽団のフリッツ・ライナー、ゲオルグ・ショルティらのことをオーケストラ・ビルダーと呼ぶ。デュトワもオーケストラ・ビルダーの典型であり、彼のおかげで以前は無名だったモントリオール交響楽団が一流のオーケストラとして世界で認知された(逆に次々とオケを駄目にするダニエル・バレンボイム、ウラディーミル・アシュケナージらはオーケストラ・デストロイヤーと言えるだろう。両者の共通点は著名なピアニスト出身であること)。

5月24日(金)フェスティバルホールへ。デュトワ/大フィル定期を聴く。

  • ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」
  • ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲
  • ベルリオーズ:幻想交響曲

デュトワの十八番ばかりズラッと並んだ。

淀川工科高等学校吹奏楽部の丸谷明夫先生(丸ちゃん)は1995年以降、全日本吹奏楽コンクールで金賞を取り続けている(前人未到の20回連続!!)。近年の淀工は自由曲として大栗裕/大阪俗謡による幻想曲と、ラヴェル/「ダフニスとクロエ」第2組曲の2曲をローテーションしている(コンクールには時間制限があるので”無言劇”はカット)。淀工の「ダフニス」は全国大会(@普門館)で生演奏を聴いたことがあるが、はっきり言って大フィルの管楽器より上手い。まぁプロは3日で曲を仕上げ、高校生たちは同じ曲を半年以上毎日練習するわけで、そこに差が生じるのは致し方ない。

魔術師デュトワがタクトを振ると、オーケストラは普段と違い、洗練された音を奏でた。マドレーヌかマシュマロのような柔らかさ。「ダフニスとクロエ」はリズミカルだけれど、(”マーチの丸谷”として知られる)丸ちゃんの鋭利なキレに対してデュトワは〈切れない〉魅力に満ち溢れていた。だからといって響きが曖昧模糊と濁ることもなく、極めて解像度が高い。

フランスの構造人類学者レヴィ=ストロースは著書「神話論理」4部作の中で、アメリカ先住民の神話に登場する虹のことを「半音階的なもの」 と呼んだ。そしてデュトワが紡ぐ、半音階を駆使した「ダフニス」は、虹色に輝いていた。この鮮やかな色彩感は誰にでも醸し出せる技じゃない。僕の目の前には両性具有的な世界が広がっていた。

あと驚いたのが、大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指揮:福島章恭)が参加していたこと。全曲演奏ならまだしも、組曲なので当然合唱抜きだと思っていた。大変贅沢な体験をさせてもらった。

1830年に26歳のベルリオーズが作曲した幻想交響曲は、彼自身の狂気の愛を扱っている。レナード・バーンスタインは本作を「史上初のサイケデリックな交響曲」と評した。特に第4楽章「断頭台への行進」と第5楽章「ワルプルギスの夜の夢」はもう、薬物中毒でラリっているとしか考えられない(どうもベルリオーズは作曲時にアヘンを吸っていたらしい)。

ベルリオーズが激しい恋心を燃やし、失恋の憂き目にあった相手は彼がパリで「ハムレット」を観劇した時にオフィーリアを演じていたアイルランド女優ハリエット・スミスソンである。可笑しいのは本作を世に問うた後にベルリオーズはスミスソンと再会し、今度は彼の愛が受け入れられて1833年に二人は結婚した。しかし夫婦仲はすぐに冷え込み40年には別居、彼女が亡くなるとベルリオーズはすでに同居していた歌手マリー・レシオとすかさず再婚した。結局、彼の一方的な愛は「幻想」に過ぎなかったのである。おとぎ話みたいに、"and they lived happily ever after."とはいかなかった……。

遅めのテンポの幻想交響曲にはフワッとした膨らみがあった。第1楽章では、かそけき幽玄の雰囲気がそこはかとなく漂う。いくらでもグロテスクに描ける第5楽章は寧ろ妖艶で、ひとりの女に血道を上げる男の滑稽さが浮かび上がる。考えてみればベルリオーズの愚かしさは、アレクサンドル・デュマ・フィスが書いた「椿姫」の主人公アルマンとか、アベ・プレヴォーが書いた「マノン・レスコー」の騎士デ・グリューにどこか似ている(どちらもフランスの小説である)。 ゆとりがあって、あくまで優雅な表現。お洒落でモテモテの伊達男デュトワの面目躍如であった。ちなみに彼はマルタ・アルゲリッチらと4度の結婚歴がある。そしてアルゲリッチと離婚した原因は、彼がヴァイオリニストのチョン・キョンファと浮気していたことが発覚したためだという。やれやれ。

 

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劇場版 響け!ユーフォニアム 〜誓いのフィナーレ〜

評価:B

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映画公式サイトはこちら

テレビの総集編である前2作に続く劇場版3部作の完結編(今回は完全新作)であり、間にスピンオフ「リズと青い鳥」があったので、それを含めると4作目である。

正直残念な出来だった。結局、1st シーズン(TV版)が群を抜けた出来であった。

時間軸を考えると、1st シーズンは主人公の黄前久美子(ユーフォニアム)が京都の北宇治高校吹奏楽部 に入部し、吹奏楽コンクール京都府大会@京都コンサートホールで代表校を勝ち取るまで。2nd シーズンは関西大会を経て全国大会で銅賞になるまで。そして今回は2年生になった久美子の奮闘が描かれる。「リズと青い鳥」と同じ時期のanother sideに位置づけられており、だからコンクール自由曲は「リズと青い鳥」だ。

正直、最初から最後まで〈既視感(デジャヴュ ) 〉に満ちていた。【新入生の担当楽器を決める→パレード(マーチングイベント)に参加→6月のあがた祭→コンクールに向けたオーディション→コンクール本番】という流れの繰り返し。新鮮味が全くない。

石原立也の演出は凡庸。特にクライマックスになる筈のコンクールの演奏シーン(関西大会の会場がロームシアター京都なので、設定は多分2016年)は紋切り型の編集が退屈で、イラッとした。

ただ「響け!ユーフォニアム」以前にはこうした本格的吹奏楽アニメや映画は一切なかったわけで、TVで高視聴率を上げたわけでも、DVD/Blu-rayが売れたわけでも、劇場で大ヒットしたわけでもないのに、シリーズがこれだけ続いたことは、吹奏楽を心から愛する者として、大変ありがたいことである。そういう意味で京都アニメーションには心から感謝したい。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会2019とディズニー「ファンタジア」

2月17日(日)フェスティバルホールへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部定期演奏会を聴く。指揮は総監督の梅田隆司先生。

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つい先日亡くなった屋比久勲先生が指揮する「エルザ」も5年前に大阪桐蔭の定演で聴いた。

また2018年度の吹部の躍進(メディアへの露出)については詳細に下記事に書いたので、ここでは繰り返さない。

さて、昨年の定演のレビューで大阪桐蔭吹部が全日本吹奏楽コンクール(全国大会)で金賞を受賞するときの法則を分析した。

今年は新たに発見した【法則3】について述べてみたい。

2018年の全国大会で大阪桐蔭が取り組んだ課題曲IV コンサートマーチ「虹色の未来へ」〈郷間幹男〉を聴きながら、「梅田先生らしからぬ、精彩を欠いた演奏だなぁ。何でだろう?2016年の課題曲III「ある英雄の記憶」〈西村友〉はあんなに生き生きとした素晴らしい演奏だったのに」と思った。何しろ関西は〈マーチの丸谷〉が君臨しているだけに分が悪い。聴き手(審査員を含む)は無意識のうちに淀工の演奏と比較してしまうだろう。そこでハタと気がついたのである。調べてみると、案の定だった。

大阪桐蔭が全国に輝いた2009年、10年、11年、16年は全て非マーチ作品を課題曲に選んでいる。そしてマーチを選んだ07年、15年、18年はいずれも銀賞に終わっている。これが【法則3】だ。ところで2019年度吹コンの課題曲は5曲中3曲がマーチだ。さあ、どうする?

今年度、大阪桐蔭が自由曲に選んだのはデュカス「魔法使いの弟子」。梅田先生は同曲で1995年大阪市立生野中学校、2000年大阪市立城陽中学校を全国大会に導いている(いずれも銀賞)。また2005年の城陽中でも「魔法使いの弟子」を選んだが、関西大会止まりだった。

ここで、こちらのインタビュー記事(2007年)をお読み頂きたい。以下原文のまま梅田先生の発言を引用する。

僕はどちらかというとフランスの曲が好きなんですよ。中学を指導していた時に交響詩「魔法使いの弟子」(デュカス)という曲で全国大会に2回出場したことがあって、あの曲もやってみたいと思うんですけど...高校の部では全国に行けないかな(笑)。

つまり当時、梅田先生は「魔法使いの弟子」で全日本吹奏楽コンクール金賞を獲れないと考えておられたのだろう。だから18年度のターゲットは他にあったのではないだろうか?それはズバリ、選抜メンバー(上限55人)ではなく、生徒全員で出場出来る日本管楽合奏コンテストである。そして2度目の最優秀グランプリ/文部科学大臣賞(1位)受賞という成果を得た。

今回定演のプログラムは、

第1部 マーチング

〈魔法の「夢」の世界〉

  • デュカス(梅田隆司編):交響詩「魔法使いの弟子」

〈歴史の「夢」を訪ねて〉

  • レスピーギ(杉本幸一編):「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3組曲
  • ハンス・ジマー:アニメ映画「プリンス・オブ・エジプト」より
  • レスピーギ:交響詩「ローマの祭」より
  • グノー:アヴェ・マリア
  • フォーレ:付随音楽「ペリアスとメリザンド」よりシチリアーナ
  • レスピーギ:交響詩「ローマの松」より

第2部 座奏中心(クィーン・メドレーはマーチング)

  • 甲子園リクエスト・コーナー〈サーカス・ビー〜夏疾風〜アフリカン・シンフォニー〜アゲアゲホイホイ〜かっせー!パワプロ〜ダイナミック琉球〜サウスポー〜You are スラッガー〜We Will Rock You〜ウィリアム・テル序曲〉
  • 吹奏楽部の歩み〈LOSER〜Lemon〜メトロノーム〜アイネクライネ〜ピースサイン(以上 米津玄師)〜青春の輝き(カーペンターズ)〉
  • スペシャル・コラボ・コーナー〈嵐メドレー・ドリカムメドレー・U.S.A.(DA PUMP)〉
  • 卒業生を送る歌〈ダイヤモンド(コブクロ)〉
  • クイーン(Queen)メドレー〈I Was Born To Love You〜Don't Stop Me Now〜We Will Rock You〜Bohemian Rhapsody〜We Are the Champions〉
  • 中島みゆき:時代(アンコール)
  • 銀河鉄道999(アンコール)
  • 星に願いを(アンコール)

「魔法使いの弟子」は柔らかい音色で軽やかな演奏。とってもフランス的だった。水が溢れる場面はマーチングで巧みに波や渦を表現する。

この交響詩で誰しも連想するのはディズニー不朽の名作「ファンタジア」(1940)だろう。日本軍による真珠湾攻撃の1年前に北米公開されており、こんな豊かな国に勝てるはずもない(日本公開はGHQ占領終結後の55年)。ミッキーマウスが魔法使いの弟子を演じている。

現在小学校1年生の息子に「ファンタジア」のDVDを繰り返し観せてきたが、その過程で僕はこの作品の偉大さがより深く理解出来るようになってきた。冒頭J.S.バッハの「トッカータとフーガ ニ短調」では抽象画の線が教会の尖塔や、ステンドグラスから差し込む光を描写する。つまりキリスト教を意識した作りになっている。ストラヴィンスキー「春の祭典」(ニーチェの言う”デュオニュソス的”芸術)では地球創世記〜生命の誕生〜恐竜時代の終焉までを描く。ベートーヴェン「田園交響楽」(”アポロン的”)ではギリシャ神話の神々が総出演する。またムソルグスキー「はげ山の一夜」に登場する魑魅魍魎たちは、ヨーロッパにキリスト教が浸透する前の土着信仰を象徴している。ハロウィン的だが、ハロウィンの起源は古代ケルト人による(キリスト教にとっては異教徒の)祭りである。だから夜明けを告げる教会の鐘の音と共に彼らは消え去り、シューベルト「アベ・マリア」でキリスト教に戻り幕が降ろされるのだ。そして3曲目に登場する「魔法使いの弟子」で描かれるのは旧約聖書の世界である。弟子による魔法の失敗で洪水になる場面は〈ノアの箱舟〉であり、最後に魔法使いが登場し、水を二つに割り、鎮める。これは映画「十戎」や「プリンス・オブ・エジプト」で描かれた〈出エジプト記〉に基づいている。つまりモーゼによる紅海の〈海割り〉だ。またミッキーの夢の中で無数の流星が落ちてくる情景は天からの硫黄と火によって滅ぼされたとされる都市〈ソドムとゴモラ〉(創世記)を想起させる仕掛けになっている。非常に巨視的な作品だ。余談だが、ディズニーに私淑していた漫画の神様・手塚治虫の未完に終わったアニメ「森の伝説」は「ファンタジア」への熱烈なオマージュで、チャイコフスキーの交響曲第4番が全編に流れる。

何故こんなことをくどくどと書くかといえば、「ファンタジア」は梅田先生が台本を執筆された定演の第1部〈歴史の「夢」を訪ねて〉と密接に結びついているからである。物語はクレオパトラとシーザーの出会いとシーザーの暗殺に始まり、皇帝ネロによるキリスト教徒弾圧(「ローマの祭」〜チルチェンス)から一転、キリスト教の国教化、中世ヨーロッパの暗黒時代を経てルネッサンス期の到来、そして魔女狩りや一神教(キリスト教)に対する批判があって現代に至るという、ローマ史を俯瞰する巨視的な作品である。ディズニーの「ファンタジア2000」にレスピーギ「ローマの松」が採用されていることも見逃してはならないだろう。

そして最後〈アッピア街道の松〉が演奏されている時に背後のスクリーンに【すべての道はローマに通ず】ルート地図が示され、それがいつしか飛行機の空路に変わり、東方に向かって2025年に開催される大阪万博に到達するという演出の離れ業・飛躍があり、僕は「成る程、これは正に共時的作品だな」と甚く感銘を受けた。

元々、通時的/共時的とはスイスの言語学者ソシュール(1857-1913)が提唱した概念である。通時的とは、時間は〈過去→現在→未来〉という不可逆的・一方通行の流れであり、それと共に人類は進歩の歴史を歩んでいるとする考え方。一方、共時的とは、〈過去・現在・未来は同時にここにある〉とする考え方。時間は循環する。「ツァラトゥストラはかく語りき」でニーチェが提唱した〈永劫回帰〉とほぼ同じことを言っていると見做して良いだろう。この概念をフランスの構造人類学者レヴィ=ストロース(1908-2009)は神話論理に応用した。レヴィ=ストロースによると、神話とは通時的であると同時に共時的物語でもあるという。彼は共時的という概念を説明するためにオーケストラの総譜を例に挙げるのだが、詳しいことは下記事をお読みください。

共時的とは何か、を体感するために参考となる代表的映画をいくつか挙げておこう。イングマール・ベルイマン「野いちご」、フェデリコ・フェリーニ「8 1/2」、アラン・レネ「去年マリエンバートで」、大林宣彦「さびしんぼう」「はるか、ノスタルジィ」、そして細田守「未来のミライ」である。

さて、レスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3組曲の原曲は弦楽合奏であり、杉本幸一による吹奏楽編曲は、より古楽風になっておりとても良かった。なお桐蔭の甲子園オリジナル応援曲「You are スラッガー」は杉本幸一作曲である。

甲子園リクエスト・コーナーは例年通りバットで客席に向けて打ったボールをキャッチした客が曲を指名する仕組み。今までは野球部の選手がステージに呼ばれて打つことがしばしばあったが、空振りしたり飛距離が出ないという散々の体たらくだった。今回は会場からバッター志望を募り、小学生が1階席後方に飛ばしたり、ボールが2階席に届いた人もいて大いに盛り上がった。

また梅田先生から、今年は春の選抜高校野球大会に大阪桐蔭野球部は出場しないが、名古屋代表の東邦高校の校長から直々の依頼があって、友情応援で甲子園に吹部が行くことになったと発表があった。

吹奏楽部の歩みでは米津玄師の作品が5曲演奏されたのだが、どうせなら僕が一番好きな「打上花火」も聴きたかったなぁ……。

大阪桐蔭は昨年、DA PUMPとテレビで2度共演したが、中継会場となった大阪城ホールの収容人数は1万人。12月に出演したドリカムのライヴではオールスタンディングなので1万5千人規模だったという。ドリカムメドレーは〈未来予想図 II〜LOVE LOVE LOVE〜大阪LOVER〜連続テレビ小説『まんぷく』主題歌「あなたとトゥラッタッタ」〉。「大阪LOVER」って初めて聴いたけれど、歌詞がすごく面白かった。

「U.S.A.」は昨年12月のサンタコンサートよりも、7人の男子生徒の踊りが格段に上手くなっていたので目を瞠った。相当練習を積んだんだね。ブラボー!

「ボヘミアン・ラプソディ」は昨年日本で公開された映画の中で、邦画・洋画併せてNo.1の興行成績をあげた。現在も絶賛公開中でバケモノ的大ヒットとなっている。なんでも「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の記録を抜いたとか。世界的に見ても日本は米国に次ぐ第2位の興行成績だそう。何とQueenのお膝元、イギリスよりも当たっているのだ。「レ・ミゼラブル」といい、「グレイテスト・ショーマン」といい、日本人ってミュージカル映画や歌ものが心底好きなんだねぇ。で大阪桐蔭吹部は20世紀フォックスからオファーを受けて公式ミュージック・ヴィデオ(MV)を撮ったわけだが、これ多分、DVD/Blu-ray発売時には特典映像として収録されるのではないだろうか?生徒さんたちにとっては掛け替えのない一生の宝物になるだろう。

今回演奏されたのは、公式MVよりもロング・バージョン。"I Was Born To Love You"は1985年に発売されたフレディ・マーキュリーのソロアルバムに収録された楽曲で、「ボヘミアン・ラプソディ」には登場しない。映画を観て初めて知ったのだが、フレディが最後の恋人ジム・ハットンと交際を始めたのが84年。つまりシングル盤が発売された当時、リスナーの多くは女性に宛てたラブソングだと考えたわけだが、実はYou=ジム・ハットンだったんだね。そして歌詞をよくよく見ると、

Yes, I was born to take care of you, ha

とある。日本人だと「お前の面倒は俺が見るよ」とか、「君の世話は僕に任せて」とかないとは言えないけれど(でも前世代の感覚だ)、欧米人の男性が女性に言う口説き文句としては考えにくいんじゃないかな。「はぁ、何様のつもり?」とか大喧嘩になりそう。

クイーン・メドレーはポップで切れがあり、この日最高のパフォーマンスだった!因みに僕が今まで聴いててきた中で、大阪桐蔭の史上ベスト・パフォーマンスを5つ挙げたい(アンコール「銀河鉄道999」は別格チャンピオンとする)。

  • ポーギーとベス
  • ミュージカル「銀河鉄道の夜」(西村友)
  • キャラバンの到着(映画「ロシュフォールの恋人たち」より)
  • ラ・ラ・ランド
  • クイーン・メドレー

梅田先生、桐蔭が吹コン自由曲でクラシック音楽ではなく、ミュージカル作品を取り上げる日を僕は首を長くして待っています。

アンコールの定番「銀河鉄道999」ではステージ上のミラーボールに、四方からスポットライトを当てて、とっても綺麗だった。演出が年々進化している!

最後に、僭越ながら今後の定期演奏会で聴きたい曲をリクエストさせていただきます。今年4月に梅芸で再演されるフレンチ・ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」とか如何でしょう?例えば〈エメ♪(Aimer=愛)〉は是非、桐蔭生徒さんたちのコーラスで聴いてみたい究極の名曲です(ミュージカル界のプリンス・山崎育三郎と乃木坂46の生田絵梨花の歌唱をこちらからどうぞ)。あと〈世界の王♪〉は凄く吹奏楽向きだと思います(育三郎と城田優のパフォーマンスでどうぞ)。年齢的にも高校生にぴったりの題材ですしね。

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U.S.A.〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 サンタコンサート2018

12月21日(金)大阪ビジネスパーク TWIN21アトリウムへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のサンタコンサートを第2部より聴く。指揮は梅田隆司先生。

今年の桐蔭吹部の躍進は凄まじかった。やはりその切掛を作ったのは甲子園における野球部の快進撃と、その応援であることは間違いない。

10月27日(土)、日本テレビ「嵐にしやがれ」で吹奏楽部が取り上げられ、櫻井翔が大阪桐蔭高校に来校した。

11月に公開された映画「ボヘミアン・ラプソディ」では20世紀フォックスの公式MVで桐蔭が演奏した。

11月15日(木)は読売テレビ「ベストヒット歌謡祭 2018」でDA PUMPとコラボ、大阪城ホールで「U.S.A.」を演奏。12月11日にはNHK「わが心の大阪メロディー」に出演し、再びDA PUMPと「U.S.A.」を共演した(@NHK大阪ホール)。

またDREAMS COME TRUEがNHK朝ドラ「まんぷく」で歌った〈あなたとトゥラッタッタ♪〉のシングルでも桐蔭が演奏している(こちら)。

さて、サンタコンサートはマーチングから始まった。

  • ヴェルディ:歌劇「アイーダ」凱旋行進曲
  • ジョン・ウィリアムズ:映画「スター・ウォーズ」
  • ミシェル・ルグラン:映画「ロシュフォールの恋人たち」より
    〈キャラバンの到着〉

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桐蔭の〈キャラバンの到着〉はパンチが効いていて、何度聴いても感動する。紛うことなきルグランの最高傑作。

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最早〈銀河鉄道999〉と並び、彼らの十八番(おはこ)と呼んでも過言ではないだろう。

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次に、

  • アラン・メンケン:映画「美女と野獣」
  • 甲子園リクエストコーナー:あんたの花道(天童よしみ)

「美女と野獣」で梅田先生は手にバラを持って指揮された。

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ここでリクエストコーナー。大阪桐蔭野球部の生徒が登場し、バットで打ったボールを掴んだ観客が曲目リストの中から選ぶ仕組み。

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まず選ばれたのは、

  • クロード=ミシェル・シェーンベルク:ミュージカル「レ・ミゼラブル」
続いて、
  • サンタが街にやってくる In Swing
  • エルトン・ジョン、ハンス・ジマー:映画「ライオンキング」(リクエスト)
  • タケカワ・ユキヒデ(樽屋雅徳 編):銀河鉄道999

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ここで第2部終了。休憩をはさみ第3部へ。

  • ウィンター・ワンダーランド In Swing

ノリノリで最高!

梅田先生が嵐の「翔ちゃん」が桐蔭にやって来た時のエピソードを語った後に、

  • 嵐メドレー
  • Linked Horizon:アニメ「進撃の巨人」から〈紅蓮の弓矢〉
  • シャーマン兄弟:メリー・ポピンズ(リクエスト)
  • ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー(リクエスト)

「メリー・ポピンズ」は久しぶりということだったが、僕は昨年のサンタコンサートのリハーサルでちょっと聴いただけで、本番での演奏は初体験。すっごく良かった。

「ラプソディ・イン・ブルー」は冒頭のクラリネット・ソロが滅茶苦茶上手い!プロ顔負け。Jazzyでgroovy。うねりがあって雰囲気抜群だった。

  • 葉加瀬太郎:情熱大陸

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そしてDA PUMPの「U.S.A.」登場!

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男子6人が踊った。

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最後は定番/鉄板のアンコール、

  • 銀河鉄道999
  • ディズニー映画「ピノキオ」から〈星に願いを〉

で〆。

余談だがスティーヴン・スピルバーグ監督が今まで撮った映画の中で、彼自身が脚本を書いた作品が2つだけある。「未知との遭遇」と「A.I.」である。そして面白いことに、どちらもピノキオが登場する(「未知との遭遇」には〈星に願いを〉の旋律も流れる)。手塚治虫「鉄腕アトム」もピノキオをベースにしており、「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー作品賞・監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督は次回作として「ピノキオ」を準備中だ(Netflixで配信予定)。またピノキオは旧約聖書のヨナ記と深い関係がある。

今回ちょっと残念だったのはクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」が聴けなかったこと。でも多分、来年2月17日の定期演奏会で演奏してくださいますよね、梅田先生?

ところで桐蔭には是非、BSテレ東の番組「エンター・ザ・ミュージック」(HPはこちら)に出演してもらいたいなぁ、と以前から考えている。関西フィルの正指揮者・藤岡幸夫さんが司会を務め、世界的なサクソフォン奏者・須川展也さんと藤岡さんが全国各地の吹奏楽団を訪問する企画があるんだ。既に千葉県の市柏とか福岡県の精華女子が出演している。藤岡さんは熱血漢で面白い人だし、須川さんと共演出来たらバンドにとって大きな財産になると思うんだよね。

また来年聴きたい曲のリクエストとして、2月1日(金)に公開されるディズニー映画「メリー・ポピンズ・リターンズ」と、7月19日(金)に公開される新海誠監督「天気の子」(公式サイトはこちら)の主題歌(今回組むバンドは未発表)を挙げておく。

「メリー・ポピンズ」の作曲はシャーマン兄弟だが、「リターンズ」で作詞・作曲したのはスコット・ウィットマンとマーク・シェイマン(ふたりは公私共にパートナーである)。このコンビによるブロードウェイ・ミュージカル「ヘアスプレー」はトニー賞を受賞した。他にミュージカル「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」や「チャーリーとチョコレート工場」がある。

僕が最初にマーク・シェイマンの才能に刮目したのはメグ・ライアン、ビリー・クリスタル主演の映画「恋人たちの予感」(1989)。卓越したジャズ・アレンジが実に心地よかった。で、皆さんに是非観て頂きたいのが「サウスパーク/無修正映画版」(1999)!全編ミュージカル仕立てで、アカデミー歌曲賞にノミネートされた"Blame Canada"(すべてカナダのせいにしろ!)は笑える。特に最高なのは「レ・ミゼラブル」のパロディ"La Resistance"。抱腹絶倒間違いなし。トレイ・パーカー監督のミュージカル愛が溢れ出す。因みにトレイ・パーカーは後にブロードウェイに進出し、ミュージカル「ブック・オブ・モルモン」(2011年初演)でトニー賞9部門を独占した。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部×映画「ボヘミアン・ラプソディ」奇跡のコラボ!!

まずはこの映像からご覧あれ。→夏の甲子園を盛り上げた大阪桐蔭吹奏楽部が映画『ボヘミアン・ラプソディ』とコラボ!(You Tube)

20世紀フォックスの公式サイトですよ!!信じられる!?明らかにワーナー・ブラザースがヒュー・ジャックマン主演の映画「グレーティスト・ショーマン」で大阪府立 登美丘高校ダンス部とコラボしたこの動画に対抗している。大阪桐蔭吹部の生徒さんたちは幸せだ。一生の宝物になるね。桐蔭は夏の甲子園の応援歌としてクイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」を演奏したので、おそらくそのパフォーマンスが映画会社の目に止まったのではないだろうか?なお、MV冒頭はオフ・ブロードウェイのパフォーマンスショー"STOMP"仕立てになっている(動画はこちら)。

Bohemian

さて、今年の全日本吹奏楽コンクール高校の部は関西代表の3校のうち金賞が丸谷明夫先生率いる淀川工科高等学校1校のみで、大阪桐蔭と明浄学院高等学校は銀賞という結果だった。九州代表の3校(玉名女子・精華女子・福工大付城東)が全て金賞だっただけに、悔しい思いが残る。関西の吹奏楽の実力って、こんなものじゃないでしょう?大阪桐蔭が自由曲にデュカス作曲「魔法使いの弟子」を選んだことに対する僕の心情は、関西吹奏楽コンクールの前日に下の記事に綴った。

まぁ今年は桐蔭の野球部が強すぎたし、梅田隆司先生が大好きな「魔法使いの弟子」でもう一度、全国大会に挑みたいというお気持ちもよく分かるのだが……(梅田先生は大阪市立生野中学校と大阪市立城陽中学校の教諭時代にこの曲で全国大会に出場されている)。

それにしても大阪桐蔭の演奏するクイーンは若々しく、溌剌としていて実に素晴らしい。(クラシック音楽ではなく)こういう曲でこそ、彼らの本領は発揮される。特に「ボヘミアン・ラプソディ」の中間部、オペラティックな曲調(スカラムーシュ・ファンダンゴ・ガリレオ・フィガロ)のところで、桐蔭の十八番=合唱になるのが最高だね!胸がスカッとした。当然来年2月の定期演奏会でも聴けると思うが、その際「伝説のチャンピオン」にも合唱を取り入れて欲しいな。切にお願いします。

We are the champions - my frends
And we'll keep on fighting -
till the end -

俺たちは勝者だ!友よ
そして俺たちは戦い続ける
死を迎える日まで

なんて聴いたら、泣いちゃいそう。

大阪桐蔭吹部の生徒さんたちへ。クイーンの曲を演奏する上で映画評論家・町山智浩氏の解説がとても参考になると思うので、是非ご一読ください→こちら

映画「ボヘミアン・ラプソディ」について。撮影中から色々不穏なエピソードが聞こえてきた。実はブライアン・シンガー監督(「ユージアル・サスペクツ」「X-メン」)が休暇後にも現場に戻らず、撮影終了2週間前にして監督を解雇されたと報道された。どうも主演のラム・マレックと衝突していたらしい。シンガーの代理でデクスター・フレッチャーが起用されたが、その時点で主要撮影の3分の2が完了していた為に監督のクレジットはシンガーになったという。またリードボーカルのフレディ・マーキュリーがゲイで、死因がAIDSだということも映画ではっきり言及されていないと風の便りに聞いた。そんなんで本当にまともな作品に仕上がっているのか??疑問は残るが、僕は観に行くつもりだ。

映画の予習として現在、「伝説の証 ~ロック・モントリオール1981&ライヴ・エイド1985 」Blu-rayと「ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム」DVDを鑑賞中。断然、前者の方がお勧め!まずフィルム撮りなので、画像が綺麗(後者はビデオ撮り)。それから前者は歌詞の日本語訳が字幕になっているのでありがたい(後者は歌っている間に字幕スーパーが一切ない)。

ライヴ映像を観ながら気が付いたのだが、クイーンには「レディオ・ガ・ガ Radio Ga Ga」という曲がある。何と、これがレディー・ガガの名前の由来なんだね!彼女の初期の楽曲に携わった音楽プロデューサーがこの芸名を与えたそう。因みにレディー・ガガ主演の映画「アリー/スター誕生」は大評判で、アカデミー主演女優賞ノミネートが確実視されている。日本では12月21日に公開される。

最後に、AIDSで倒れた芸術家やパフォーマーたちを列記しておく。

  • ロック・ハドソン 1985年死去(映画「ジャイアンツ」「風と共に散る」に出演)
  • マイケル・ベネット 1987年(「コーラスライン」原案/演出/振付、「ドリームガールズ」演出)
  • ジャック・ドゥミ 1990年(映画「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」監督)
  • フレディー・マーキュリー 1991年
  • ハワード・アッシュマン 1991年(ディズニー「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」作詞)
  • ジョルジュ・ドン 1992年(20世紀バレエ団ダンサー、映画「愛と哀しみのボレロ」出演)
  • アンソニー・パーキンス 1992年(映画「サイコ」主演)
  • ルドルフ・ヌレエフ 1993年(ソ連生まれのバレエ・ダンサー)

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吹奏楽 vs. オーケストラ

2017年、全日本吹奏楽コンクール高校の部に出場した30団体のうち、クラシック音楽を編曲したものを自由曲に選んだのは12団体であった。その前年は13団体。つまり、全体の40%以上を占めていることになる。

吹奏楽の起源は軍楽隊にある。故に基本は行進曲であり、コンクールの課題曲でマーチを演奏する団体が多い(丸谷明夫/淀川工科高等学校吹奏楽部はマーチ以外を絶対に選ばない)。

自由曲にオーケストラ曲の編曲が未だに多いのは、指揮者のクラシック音楽への憧れ劣等感が潜在意識の中にあるからではないか?と僕は考えている。しかしそれでは所詮、吹奏楽はオーケストラの代用品に過ぎず、オリジナルを凌駕することは絶対に出来ない。全く無駄な努力のように想われる。

吹奏楽関係者がクラシック音楽へ注ぐ愛情は片思い、単なる一方通行に過ぎず、クラシック音楽ファンは吹奏楽など見向きもしない。吹奏楽はあくまで《アマチュアが演奏するための音楽》でしかなく、《鑑賞に耐えうるものではない》と大半の人々は考えている。嘘だと思うなら近くにいるクラシック音楽愛好家に「アルメニアン・ダンスって聴いたことある?」と訊ねてご覧なさい。アルフレッド・リードの名前すら誰も知らないから。月刊誌「レコード芸術」の新譜批評に「吹奏楽」部門が新設されたのは2010年、たった8年前のことである。

吹奏楽コンクール全国大会の自由曲にチャイコフスキーを選ぶと、金賞が受賞出来ないことはよく知られている。屋比久勲/福工大付属城東高は「白鳥の湖」、石津谷治法/習志野高は「くるみ割り人形」と「眠れる森の美女」、畠田貴生/東海大付高輪台高は「白鳥の湖」で全国大会に臨んだが、いずれも銀賞に終わっている。彼らの演奏を聴いて感じるのは、「チャイコフスキーが作曲したオーケストラ曲の最大の魅力は優美に奏でる弦楽器にある」ということ。弦抜きだと魅力が半減してしまうのだ。違和感しかない。

吹奏楽の演奏に対する褒め言葉でよく見かけるのが「木管の響きが、弦をこすって出したような音色になっている」というものだが、だったら弦楽器で演奏すれば済むことじゃない?馬鹿みたい。まがい物は所詮、まがい物。模倣品・贋作・ものまね芸人が本物の価値を上回ることなど決してないのである。吹奏楽にはもっと、別の良さがあるだろう。しっかりと独自の道を歩むべきだ。

クラシック音楽の中で編曲が新たな価値を生み出した代表例を見てみよう。

  • J.S.バッハ/ストコフスキー 編:トッカータとフーガ、小フーガほか
  • ムソルグスキー/ラヴェル 編:展覧会の絵
  • サティ/ドビュッシー 編:ジムノペディ 第1,3番
  • ブラームス/シェーンベルク 編:ピアノ四重奏曲 第1番
J.S.バッハ/ストコフスキーの原曲はオルガン・ソロ、ムソルグスキーとサティはピアノ・ソロ、ブラームスがカルテットで、それらがオーケストラ曲に生まれ変わっている。つまり編成が拡大されている。逆に、例えばベートーヴェンの交響曲やワーグナーの歌劇をリストがピアノの連弾や独奏曲に編曲しているが、成功したものは皆無である。オーケストラ曲→吹奏楽曲の場合も全く同様だ。

だから全国大会に出場するような実力を持つ指導者の方々には、是非もっと吹奏楽のオリジナル作品に取り組んで頂きたい。日本も優れた作曲家を沢山輩出しているのだから。

ただし、クラシック音楽→吹奏楽へのアレンジで成功しているものもごく僅かながらある。

  • リスト/田村文生 編:バッハの名による幻想曲とフーガ
  • J.S.バッハ/伊藤英明 編:シャコンヌ
  • J.S.バッハ/森田一浩 編:シャコンヌ

リストの原曲はピアノまたはオルガン独奏曲であり、バッハは無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータである。やはり編成を拡大することで新しい価値を生み出しているのだ。

それから原曲がポップスや映画音楽、ミュージカルの場合は全く話が別である。こういった音楽は基本的にオリジナル原理主義ではなく、アレンジして演奏されるのが前提の世界だからである。過去の吹奏楽コンクールで深い感銘を受けたアレンジ物を挙げよう。

  • シェーンベルク/宍倉 晃 編:ミュージカル「ミス・サイゴン」
    大滝 実/埼玉栄高等学校吹奏楽部 2002年 金賞
  • アーノルド/瀬尾宗利 編:映画「第六の幸福をもたらす宿」より
    (井田重芳/東海大学付属札幌高等学校 2006年 金賞
  • シェーンベルク/森田一浩 編:ミュージカル「レ・ミゼラブル」
    (宇畑知樹/伊奈学園総合高等学校 2013年
    金賞

また僕が定期演奏会で聴いた、梅田隆司/大阪桐蔭高等学校による「キャラバンの到着」(ミュージカル「ロシュフォールの恋人たち」より)や、ミュージカル「銀河鉄道の夜」「ラ・ラ・ランド」も実に素晴らしかった!こういうのをもっとコンクール全国大会で聴きたいのである。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部フラワーコンサート 2018と「ノートルダムの鐘」構造分析

はじめに。ここを訪れた方は吹奏楽をこよなく愛している人だと信じている。故に是非、下記事も併せてお読み頂ければ幸いである。僕からの「小さな願い」です。(I say a little prayer for you.)

さて、4月29日(日)大阪ビジネスパーク TWIN21アトリウムへ。新1年生も加わった大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のフラワーコンサートを聴く。指揮は梅田隆司先生。僕はこの直前の16時05分までザ・シンフォニーホール@大阪市福島で関西フィルの定期演奏会(ミクロス・ローザの映画音楽やエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲ほか)を聴いていたので、途中からの来場となった。

☆3rd Stage(16:30-17:10) マーチング

  • ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
  • ジョン・ウィリアムズ:「スター・ウォーズ」メドレー
  • ミシェル・ルグラン:「キャラバンの到着(ロシュフォールの恋人たち)」
  • アラン・メンケン:「美女と野獣」メドレー

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Jazzyで躍動感溢れる桐蔭の「キャラバンの到着」は最高だね!胸がスカッとする。至福の時。

続いて座奏で、

  • We Are The World(歌付き)
  • リクエストコーナー:EXILEメドレー

リクエストコーナーは梅田先生がバットで打ったボールを掴んだ観客がスライドに写された50曲の中から選ぶ方式。

☆4th Stage(18:00-18:40)

  • ジャスティン・ハーウィッツ:ミュージカル「ラ・ラ・ランド」ハイライト

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映画の一場面を彷彿とさせるキャンディー・カラーの衣装がとっても素敵。

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Magic Hour(カタワレ時)にエマ・ストーン(アカデミー主演女優賞受賞)とライアン・ゴズリングがハリウッドの都(=ラ・ラ・ランド)を見下ろす丘の上で対峙するダンス・ナンバー"A Lovely Night"はアルト・サックスとユーフォニアムの対話(デュオ)に置き換えられている。

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ステージ前面に設置されたタップ板(タップボード)で男子生徒が華麗にタップ・ダンスを披露。

そしてフィナーレ。音楽がミシェル・ルグランの「シェルブールの雨傘」と完全に一体化するヴォカリーズの合唱は極上の美しさ!天国的というか、ハーモニーに宇宙的広がりを感じた(映画でも無数の煌めく星々の下でふたりがデュエットダンスする場面だ)。僕が今まで聴いてきた桐蔭サウンドの中でも間違いなくベストの瞬間であった。これは是非とも全国の人々にも聴いて貰いたい。

続いてリクエストコーナー。

  • 名探偵コナン
  • アラン・メンケン:「リトル・マーメイド」メドレー
  • 甲子園応援歌〜「グレイテスト・ショーマン」ほか

若い人は知らないと思うけれど「名探偵コナン」の音楽は「太陽にほえろ!」のテーマと瓜二つなんだ→こちらで試聴!作曲はどちらも大野克夫。つまり自己模倣ね。続けて演奏すると→こうなる

舞台ミュージカル「リトル・マーメイド」は2018年10月13日(土)より大阪四季劇場で上演される。でも海中に於けるアリエルの髪型が酷すぎて絶句した→プロモーションVTR。ありえる?否、あり得ない!

「グレイテスト・ショーマン」は映画冒頭の曲。これが野球応援歌にピッタリでびっくりした。

☆5th Stage(19:30-20:10)

  • アラン・メンケン:ミュージカル「ノートルダムの鐘」ハイライト

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ヴィクトル・ユゴーの小説「ノートルダム・ド・パリ」(ノートルダムのせむし男/ノートルダムの鐘)を社会人類学者レヴィ=ストロースの手法を用いて構造分析してみよう。

なおフロローの職業は原作で司祭だが、ディズニー版では最高裁判事に変更されている。

まず本作に認められる二項対立を挙げよう。

  • 鐘つき男カジモド(醜い、非対称)↔ノートルダム寺院(美の殿堂、ステンドグラスを含め全てが対称)/エスメラルダ(美貌)
    *これはミュージカル「オペラ座の怪人」におけるファントム(怪人)とクリスティーヌ(歌姫)の対立に相当する。
  • フロロー(聖職者、禁欲)↔エスメラルダ(ロマ〘ジプシー〙、欲望に従う)
    *ミュージカル「キャッツ」における〈長老オールド・デュトロノミー↔犯罪王マキャヴィティ〉に相当。エスメラルダはフロローの謀略により捕らえられ、魔女裁判で死刑宣告を受ける。一方、オールド・デュトロノミーはマキャヴィティに誘拐される。【逆転の変換】
  • フロロー(年寄り)↔大聖堂警備隊長フィーバス(若い)
    *「オペラ座の怪人」における〈ファントム↔ラウル・シャニュイ子爵〉の対立に相当。「キャッツ」では〈年老いた娼婦猫グリザベラ↔生まれたばかりの子猫シラバブ〉
  • ノートルダム大聖堂の鐘楼↔ジプシーの隠れ家「奇跡の法廷」【垂直方向の差異】
    *「オペラ座の怪人」における〈照明の当たる華やかな舞台(光)↔怪人が棲む地下湖(影)〉、「キャッツ」では〈天上↔地上のゴミ捨て場(夜)〉

では二項対立を結び/還流し、両者を仲介融和しようとする第三項は何か?

  • クロパン(道化でありトリックスター。境界を超え神出鬼没で、価値を転倒する者。きれいはきたない、きたないはきれい)。道化師は世界の反転を象徴するだんだら縞の衣装を着ている。
    *「キャッツ」では魔術師ミスター・ミストフェリーズ。「オペラ座の怪人」では仮面ペルソナ)。仮面を着けたファントムもマジシャンであり、神出鬼没のトリックスターだ。しかし仮面を外すと一転、その素顔は醜い老人に変わる。つまり彼には二重性があり、仮面はスイッチの役割を果たす。
  • トプシー・ターヴィー(愚者の祭り。規則を破って良い日。逆さま、無礼講。異教徒の「デュオニソスの祭り」を彷彿とさせる。デュオニソスとは豊穣と葡萄酒、酩酊の神。フローラン・シュミットが作曲した同名の吹奏楽の名曲がある
    *「オペラ座の怪人」ではマスカレード(仮面舞踏会)が相当。「キャッツ」ではジェリクル舞踏会。
  • 大聖堂の鐘の響き。それは天から地まで貫く。
    *「オペラ座の怪人」では”音楽の天使”クリスティーヌの歌声が相当。「キャッツ」ではグリザベラが歌う"Memory"。途中からシラバブが加わりハーモニーとなる。因みにシラバブはロンドン公演版でジェミマと名付けられており、そのオリジナル・キャストがサラ・ブライトマンだった(サラは後にクリスティーヌに抜擢される)。
  • 陽射し:歌詞に"Out there/Living in the sun"(太陽の光を浴びる あそこへ行きたい)とある。日光も天から地まで貫く。
    *「キャッツ」では冒頭のシラバブ誕生と最後のグリザベラ昇天で、垂直方向の一筋の光が天と地を結ぶ。

こうして分析を進めていくと、「ノートルダム・ド・パリ」「オペラ座の怪人」「キャッツ」の三者は全く同じ構造であることがご理解頂けるだろう。これが神話の構造、神話的思考である。

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続いてリクエストコーナー。

  • 美空ひばりメドレー(愛燦燦〜川の流れのように)

アンコールはご存知の定番、

  • 銀河鉄道999
  • 星に願いを

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「スリーナイン」のない桐蔭のコンサートなんて、星のない夜空のようなものだ。今回も音楽の愉しさを堪能させてもらった。

次回はそろそろ「メリー・ポピンズ」メドレーが聴けるんじゃないかと期待している。因みにロブ・マーシャル監督、エミリー・ブラント主演の映画「メリー・ポピンズ・リターンズ」北米公開は2018年12月25日。予告編はこちら

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吹奏楽女子に告ぐ。「リズと青い鳥」は絶対、ぜーったいに観るべし!

評価:A+

Liz

公式サイトはこちら。京都アニメーション(以下、京アニと略す)「響け!ユーフォニアム」のスピンオフ映画である。

「響け!」の1stシーズンは絶賛したのだが、2ndシーズン(第二期)はビミョーだった。特にイライラさせられたのが新キャラの鎧塚みぞれ(よろいづかみぞれ;オーボエ)と、傘木希美(かさきのぞみ;フルート)。因みに鎧塚みぞれは劇場版(第一期総集編)から登場している。正直、「このふたり、いらんわ!」と想った。何かね、本筋とは関係ないんよ。そういう視聴者のもやもやした空気を察知したのか(??)、第二期の総集編である「劇場版 響け!ユーフォニアム〜届けたいメロディ〜」ではふたりの登場シーンをバッサリまるごとカット。却って全体の風通しが良くなり、テレビ・シリーズより断然引き締まった作品に生まれ変わった。

そして本編から排除されたふたりを主人公に、完全新作として製作されたのが「リズと青い鳥」だ。「響け!」を観ていなくても全然大丈夫。独立した作品として存分に愉しめる。

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 (↑入場者特典。何故、トランペットの高坂麗奈??)

山田尚子監督はテレビ・シリーズ「けいおん!」から観ているし、映画「聲の形」に対しては厳しいことも書いた。

しかし「リズと青い鳥」は文句なしに素晴らしい。彼女の最高傑作であると同時に、京アニが今まで培ってきたノウハウの集大成、紛うことなき金字塔であると断言する。

まず画風を本編とはガラリと変えてきた(「響け!」のキャラクターデザインは池田晶子、「リズ」は「聲の形」の西屋太志)。そして背景画は淡い水彩画調になった。僕が真っ先に連想したのが高畑勲監督「ホーホケキョ となりの山田くん」である。

本作は故・高畑勲へのオマージュで満ち溢れている。童話「リズと青い鳥」の世界観は欧米を舞台にした高畑勲演出「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」のスピリット(魂)を引き継ぐものとなっている。つまり何気ない日常生活のリアリティを徹底的に追求する姿勢だ。中でも山田監督は「赤毛のアン」に対して強い想い入れがあるんじゃないかな?そんな気持ちが画面を通してビンビン伝わってきた。

本作は薬師丸ひろ子が主演した映画「Wの悲劇」と同様、入れ子構造になっている。

Ireko

つまり現実の物語(吹奏楽部の日常)と劇中劇(童話「リズと青い鳥」)に一対一対応の関係があり、密接にリンクしながら物語が進んでゆく。確信を持って言うが、山田監督が意識していてのは吉田秋生の漫画「櫻の園」ではないだろうか?女子校の演劇部が舞台となり、彼女たちが演じるチェーホフの戯曲「桜の園」とリンクする。一方「リズと青い鳥」の北宇治高校も、まるで女子校のように描かれる。共学なのに。男子はその気配を消す。「響け!」のレギュラー・メンバーである塚本秀一(トロンボーン)は一瞬(数秒)画面に現れるが、台詞は一切なし。

そして本作の作劇(プロット)が極めて巧妙なのは、並行する2つのセリー(系列)で最初【リズ→(北宇治の)A、青い鳥→(北宇治の)B】という対応関係を想定して観ていたら、途中から【リズ→B、青い鳥→A】だと気付かされ、逆転(構造の変換)が起こるんだ!これにはしてやられた。鮮やか、天晴である。

今回改めて音楽(アンサンブル)とは楽器と楽器の対話なのだということを思い知らされた。繊細で切なく、心に残る名作である。

山田監督は意識的にターゲット(観客)層を変えたいと藻掻いている。「けいおん!」「涼宮ハルヒの憂鬱」の頃から京アニに登場する女子高生といえば、パンツが見えるか見えないかというぎりぎりの超ミニスカートが定番だった(しかし決して見せない。ここが新海誠「君の名は。」との違い)。そして内股。この【萌え】要素で数多くの男性ファンを獲得してきたわけだが、「リズと青い鳥」における北宇治高校制服のスカート丈は明らかに「響け!」より長くなっている(内股かどうかもよく判らない)。つまり山田監督の意図としては「(ヲタクだけでなはく)是非若い女の子に観て欲しい!」ということなのだろう。ところが、僕が観た劇場(109シネマズ大阪エキスポシティ)の観客は9割が男で、しかも40過ぎたオッサンばかり。(自分のことは差し置くが、)これじゃ駄目なんだ!届けるべき人々(吹奏楽女子)にメッセージが届いていない。暗澹たる気持ちになった。全日本吹奏楽連盟はもっと京アニと連携し、映画の鑑賞を推奨するべきだし、中学・高校の吹奏楽部顧問の先生たちも、生徒に観るよう促すべきだろう。それが音楽教育の本来あるべき姿だと僕は想う。

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「ラ・ラ・ランド」「ノートルダムの鐘」〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会2018

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部が創部されたのは2005年。当初部員はたったの25人だった。翌年の06年には梅田隆司先生が総監督に就任され、いきなりその年に全日本吹奏楽コンクール(全国大会)@普門館に登場した。全国大会出場は今までに計10回、うち4回金賞を受賞している(他はすべて)。金賞を受賞した年、およびその時の自由曲を列記してみよう。

  • 2009年 オルフ:カルミナ・ブラーナ
  • 2010年 ヴェルディ:レクイエム
  • 2011年 ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」
  • 2016年 ガーシュウィン:歌劇「ポーギーとベス」

銀賞だった年の自由曲はレスピーギ:ローマの祭り、ドビュッシー:海、エルガー:エニグマ変奏曲などである。ここで桐蔭が金賞を受賞するための【法則1】が浮かび上がる。つまり、原曲が声楽曲であること。これは梅田先生が大阪音楽大学声楽学科卒であることと無関係ではないだろう。つまり指揮者の資質・特性を示している。僕自身、桐蔭の演奏を長年聴いていて(最初は07年普門館での「海」)、どうも原曲がオーケストラ(器楽)曲の時はパッとしない。モヤモヤ〜っとしたわだかまりが残る。ところがどっこい、ミュージカルやオペラの楽曲になると音が活き活きして天下無双の団体に豹変するのである。面白いものだ。その現象を象徴するのが2017年のコンクール。16年には「ポーギーとベス」で史上最高の名演を繰り広げ文句なしの金賞を受賞した桐蔭がその翌年、同じガーシュウィンの「パリのアメリカ人」では銀賞に留まった。理由は明白だろう。「パリのアメリカ人」の原曲はオーケストラ作品なのだ。【歌うように奏でる】これこそが彼らの持つ最強の武器だ。

次に大阪桐蔭高等学校野球部が大阪代表として全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)に出場した年を見てみよう。

  • 2005年
  • 2006年
  • 2008年
  • 2012年
  • 2013年
  • 2014年
  • 2017年

【法則2】が見えてきた。つまり野球部が夏の甲子園に出場した年に吹奏楽部は金賞を獲れないのである。恐らく練習不足に原因があるのだろう。吹部はコンクール直前に野球の応援に行かなければならない。梅田先生も甲子園球場で指揮をされる。この学校の特殊事情である。私立高校の本音として、学校の宣伝のためには吹部が全国でに輝くよりも、野球部が甲子園で活躍することの方が大切だろう。一般的知名度が違いすぎる。詮ないことだ。

桐蔭は2017年夏の甲子園で「ラ・ラ・ランド」を初めて演奏し、お茶の間で話題沸騰となった。僕は「もしかしたら今年は吹コン自由曲も『ラ・ラ・ランド』で勝負するのでは!?」と大いに期待したのだが「パリのアメリカ人」と知り、がっかりした。どうも楽譜が間に合わなかったようである。

Toin

さて、2月28日(日)フェスティバルホールへ。大阪桐蔭吹部の定期演奏会を聴いた(最終公演)。

第1部(マーチングなどステージ・パフォーマンス)

  • トーマス・ドス:トランペット&ブリッジズ(17年ウィーン国際青少年音楽祭課題曲)
  • スーザ:海を超える握手
  • ジャスティン・ハーウィッツ:ミュージカル「ラ・ラ・ランド」
    (アナザー・デイ・オブ・サン〜サムワン・イン・ザ・クラウド〜ミアとセバスチャンのテーマ〜ア・ラブリー・ナイト〜エピローグ)
  • アラン・メンケン:ミュージカル「ノートルダムの鐘」
    (ノートルダムの鐘〜僕の願い〜トプシー・ターヴィー〜ゴッド・ヘルプ〜ノートルダムの鐘リプライズ)

第2部(主に座奏)

  • ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
  • ムソルグスキー(ラヴェンダー編):組曲「展覧会の絵」
  • 甲子園応援リクエスト・コーナー
  • 三年間の歩み(栄光の架け橋〜風が吹いている〜今、咲き誇る花たちよ〜Hero)
  • 森山直太朗:虹(卒業生を送る歌)
  • ステージ・パフォーマンス
    ルグラン:キャラバンの到着(ロシュフォールの恋人たち)
    ガーシュウィン:パリのアメリカ人
  • 銀河鉄道999(アンコール)
  • 星に願いを(アンコール)

第1部で梅田先生はオーケストラ・ピットで指揮された。

ドスの曲はホルンが大活躍するファンファーレで、ヤナーチェクのシンフォニエッタにそっくりだった。桐蔭の生徒さんたちがウィーンのプラーター公園で野外コンサートする映像が映し出されたが、映画「第三の男」で余りにも有名な大観覧車には皆さん乗ったのだろうか?

今回定期の隠しテーマは「フランス」だと言えるだろう。

待ちに待った「ラ・ラ・ランド」はまず衣装が映画通りキャンディー・カラーで魅了された。♪アナザー・デイ・オブ・サン♪はミシェル・ルグラン作曲「キャラバンの到着」への熱いオマージュでもあるのだが、ちゃんとトラックの荷台から楽隊が登場する場面も再現されており、感動した(作曲家ハーウィッツ自身が映画「ロシュフォールの恋人たち( The Young Girls of Rochefort ) 」からの影響を語った記事はこちら)。ただ歌の音声がマイクで充分に拾えておらず、楽器の音に負けていたのが残念だった(歌詞が聴き取れなかった)。デュエット・ダンス♪ア・ラブリー・ナイト♪ではユーフォニアムとサックスの掛け合いになっており、素敵だった。タップ板(タップボード)を設置して、男子生徒が華麗なタップダンスを披露する場面もすごく良かった。あとエピローグでの合唱(ヴォカリーズ)が極上の美しさ!「シェルブールの雨傘」ラストシーンのカトリーヌ・ドヌーヴが目に浮かんだ。

なお、公演プログラムに《最新のブロードウェイ・ミュージカルの作品「ラ・ラ・ランド」》と記載があったが、これは間違い。「ラ・ラ・ランド」の楽曲は全て映画オリジナルであり(故にアカデミー作曲賞を受賞)、ブロードウェイでは上演されていない。

ところで僕は「ノートルダムの鐘」こそ作曲家アラン・メンケンの最高傑作だと常々想っている。

クロパンがトリックスターだということは上記事に書いた(トリックスターの説明も)。トリックスター(道化)は境界を超え出没し、世の中の常識や価値を転倒させる。道化師の衣装はだんだら縞であり、白↔黒の反転を象徴している。♪トプシー・ターヴィー♪で「逆さま」という歌詞が強調されるのはそのためだ。

キリスト教徒は二分法(二項対立)の世界に生きている。天国と地獄、天使と悪魔、光と闇、正義と悪、無垢と穢れ( innocent vs. guilty )。禁欲と欲望(享楽)。コンピューターの情報処理も2進法だー0か1か、白か黒か。ヴィクトル・ユーゴーの小説は両者を混ぜ合わせることを欲している。それがトリックスターだ。「レ・ミゼラブル」でその役割を担うのはテナルディエ夫婦である。

ユーゴーの父はナポレオンに仕える軍人で共和派だった。一方、母は王党派であり、政治思想の違いによる確執から不和を生じ、息子は長きに渡る父親不在の生活を強いられた。二極間の争いはもううんざり。故になんとか融和の道はないものか?という考えを持つに至ったのではないだろうか。きれいと汚いが交わるところカオス混沌)にしか新しい創造はないのである。

聖職者フロローの悲劇は徹底した禁欲を自分に課そうとしたことにある。よって寧ろ欲望の炎が燃え上がってしまった。これは「レ・ミゼラブル」で法の番人であろうとし、非情に徹したジャベール警部の正義が最後に脆くも崩れ、破滅したことに呼応する。極端に走らず、清濁併せ呑む。これこそが賢く生きる知恵=野生の思考(by レヴィ=ストロース)なのだろう。

僕が注目したのは結末である。ディズニー・アニメ版はエスメラルダが死なず、カジモドは自由の身となるハッピー・エンド。一方、原作に忠実な舞台ミュージカル版はカジモドがフロローを殺し、彼もエスメラルダも死んでしまう悲劇。結局、桐蔭はアニメ版に基づく上演だった。僕はオリジナル版の方が好きだけれど、高校生の卒業イベントなのだからこれは仕方ない。納得した。

2017年の全日本吹奏楽コンクールにおいて、宇畑知樹/伊奈学園総合高等学校は自由曲で「ノートルダムの鐘」を演奏し、金賞に輝いた。今回の大阪桐蔭の演奏は起伏があり劇的で、伊奈学園を上回っているんじゃないかと想った。梅田先生、来年度こそは是非ミュージカルで勝負してください!

第2部のワーグナーにはアイーダ・トランペットが登場。チューバ11人、ユーフォ9人、トロンボーン16人と低音が充実しており、ド迫力だった。

「展覧会の絵」はプロムナードのトランペット・ソロ、そして「サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」でのピッコロ・トランペットがすごく上手かった。あとラヴェル編曲のオーケストラ版でも木管楽器が活躍する「卵の殻をつけた雛の踊り」は吹奏楽編曲版でも違和感なく聴けた。

甲子園応援リクエスト・コーナーでは恒例となっているが、野球部員が舞台に上がりボールを打って、キャッチした観客がリストの中から曲を選ぶ仕組み。ところが空振り続きで、梅田先生が打ったボールが一番飛んだという始末。会場は爆笑で、大いに盛り上がった。選ばれたのは①ウィリアム・テル序曲(「ローン・レンジャー」のテーマ)②君の瞳に恋してる③アゲアゲホイホイ。「君の瞳に恋してる」はフォー・シーズンズのフランキー・ヴァリによるソロシングルが有名。当然フォー・シーズンズが主人公のブロードウェイ・ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」にも登場。日本版でフランキー・ヴァリを演じた中川晃教は菊田一夫演劇賞&読売演劇大賞の最優秀男優賞を受賞した。2018年の再演は大阪公演も予定されているので、今から待ち遠しくて仕方ない(興味のある方はまずクリント・イーストウッド監督の映画版をご覧あれ)。

卒業生を送る歌は桐蔭得意の映像を駆使した趣向が凝らされており、卒業生全員の名前が順番に出て、彼/彼女らの1年生時の写真並びに、現在の動画が一人一人紹介された。

ここで主賓の紹介あり。振り付けを担当した洋あおい氏(元OSKトップスター)、演奏の指導をしている大阪フィルハーモニー交響楽団首席クラリネット奏者・金井信之氏、そして同首席ホルン奏者・高橋将純氏。高橋氏が指導するようになり、ホルンの生徒たちが見違えるように上手くなったそう。余談だが、先日レスピーギの「ローマ三部作」が取り上げられた大フィル定期でも、高橋首席が出ない前半と、出た後半ではホルン軍団のレベルが段違いだったことを申し添えておく。

「キャラバンの到着」はパンチが効いてホーン・セクションが炸裂!僕はこのルグラン・ジャズでマーチングする桐蔭は最高に格好いいと想っているのだが、演奏している生徒さんや保護者の方々の感想はどうなのだろう?何しろ50年前の曲だし(「ロシュフォール」の公開は1967年)、ちょっと不安。本音のコメント求む。

そして「パリのアメリカ人」も躍動感があり、フォーメーションは綺麗で疵のない演奏だった。

アンコールの「銀河鉄道999」ではまるでプラネタリウムのように無数の星が燦めく照明が実に美しかった。

こうして3時間に及ぶ、ギュウギュウに中身が詰まった演奏会は幕を閉じた。大満足、お腹いっぱい。

最後に、来年の桐蔭定期で是非聴きたい曲をリクエストしておく。現在公開中のミュージカル映画、ヒュー・ジャックマン主演「グレイテスト・ショーマン」から"This Is Me"。昨年バブリーダンスで一世を風靡し、荻野目洋子と「輝く!日本レコード大賞」にも出演した大阪府立登美丘高校ダンス部@堺市のパフォーマンスで御覧ください→こちら!!一昨日シネコンで観てきたのだけれど、この曲が力強く流れる場面では心底感動した。間違いなくアガる!映画の台詞を借りるなら、正しくa "celebration of humanity"である。作詞・作曲ベンジ・パセック&ジャスティン・ポールのコンビは映画「ラ・ラ・ランド」で作詞を担当(後者の作曲はジャスティン・ハーウィッツ)。昨年はブロードウェイ・ミュージカル"Dear Evan Hansen"でトニー賞のミュージカル作品賞・楽曲賞など6部門を受賞した。

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