吹奏楽

キャラバンの到着!〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 サンタコンサート2017

12月16日(土)大阪ビジネスパーク TWIN21アトリウムへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のサンタコンサートを聴く。指揮は梅田隆司先生。

50分ずつ4ステージに分かれており、総計3時間20分、吹奏楽漬けになった。

20世紀フランスを代表する哲学者ジル・ドゥルーズ(1925-95)は63歳の時に収録されたテレビのインタビュー番組の中で「どうして貴方は毎週末に展覧会や映画館に足を運ぶのですか?」と尋ねられ、優れた(芸術)作品との「出会い(rencontre)」を信じているからだと答えている。出会うためには「外に出て、待ち伏せする必要がある」。

この言葉に強い共感を覚えた。僕が足繁く映画館や劇場に通うのも、そして桐蔭の演奏を聴きに行くのも、新たな「出会い」を待ち構えているからに他ならない。

その成果の一つが「銀河鉄道999」であり、西村友が作曲した珠玉のミュージカル「銀河鉄道の夜」との出会いであった。

梅田先生率いる桐蔭吹奏楽部は次から次へと新しい楽曲に取り組み、ドゥルーズの言葉を借りるなら、常に生成変化している。そのことに僕は魅入られるのである。生成変化のないものには全く価値が無い

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今回のセットリストを列記しよう。

【注釈】リク:リクエストコーナー。バットで打ったボールを取った聴衆が、前方スクリーンに写し出された50曲を超えるリストの中から選ぶ仕組み。

① Kid's Stage

  • クリスマススウィングコレクション(サンタが町にやってくる、もろびとこぞりて、We Wish You a Merry X'mas、ジングル・ベル)
  • 赤鼻のトナカイ
  • すてきなホリデイケンタッキーフライドチキン/クリスマスCMソング)
  • プリキュアアラモード
  • 宇宙戦隊キュウレンジャー
  • 名探偵コナン
  • 「アナと雪の女王」メドレー
  • スタジオジブリ・メドレー(さんぽ、世界の約束、となりのトトロ)
  • ゲゲゲの鬼太郎
  • アンパンマンのマーチ
  • 夢をかなえてドラえもん
  • 「忍たま乱太郎」〜勇気100%

ノリが良く、キレのある演奏だった。

② Classic Stage

  • ウィンターワンダーランド in Swing
  • ノートルダムの鐘 初披露
  • 「リトル・マーメイド」メドレー(アンダー・ザ・シー、キス・ザ・ガール、パート・オブ・ユア・ワールド) リク
  • 嵐メドレー(A・RA・SHI、Happiness Believe、マイ・ガール、One Love、愛を叫べ、Troublemaker、Love so sweet) リク
  • 交響組曲「ジブリ・シネマコレクション」(ハウルの動く城【空中散歩】、千と千尋の神隠し【ふたたび】、天空の城ラピュタ【ゴンドアの想い出】、もののけ姫【アシタカとサン】、となりのトトロ【さんぽ】、ハウルの動く城【世界の約束】、となりのトトロ【となりのトトロ】) リク

「ノートルダムの鐘」は【トプシー・ターヴィー】の戯けた感じがとっても良かった!あと「リトル・マーメイド」の【アンダー・ザ・シー】はトロピカルで垢抜けている。

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③ Pops Ⅰ Stage

  • 歌劇「タンホイザー」〜歌の殿堂を讃えよう(ワーグナー)
  • 桐蔭ファンファーレ
  • 海を超える握手(スーザ)
  • ガーシュウィンの「スワニー」によるユーモレクス(スーザ)
  • パリのアメリカ人(ガーシュウィン)
  • 「ロシュフォールの恋人たち」〜キャラバンの到着(ルグラン)
  • 美女と野獣(メンケン)
  • スター・ウォーズ(ジョン・ウィリアムズ)
  • ミュージカル「銀河鉄道の夜」〜銀河を超えて(西村友)

第3部は全てマーチングによるパフォーマンス。下の写真2枚は「パリのアメリカ人」の様子である。

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演奏の精度では昨年の「ポーギーとベス」に一歩譲るが、正に創作ダンスを観ているようで凄く愉しかった!

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そして待望の、ミシェル・ルグラン作曲「ロシュフォールの恋人たち」より【キャラバンの到着】!パンチの効いたホーン・セクション、炸裂するリズム。これぞルグラン・ジャズ。カッケー!!

僕は2016年サンタコンサートの感想で「キャラバンの到着」と「ラ・ラ・ランド」をリクエストしていた。因みにこの時点で映画「ラ・ラ・ランド」は公開前だった。

元々、死ぬほど好きな楽曲なので大興奮したが、何しろジャック・ドゥミ監督「ロシュフォールの恋人たち」は50年前に公開された映画である。演奏する生徒さんや親御さんたちはどういう感想を持っておられるのか、とても気になるところ。是非そのあたり忌憚のない本音をコメント頂ければ幸いである。

それから西村友作曲による大変美しいミュージカル「銀河鉄道の夜」だが、今年の定期演奏会で聴いたバージョンとは終結部のアレンジが変更になっていたので驚いた。何かね、とっても華やかになった。最高だね。

④ Pops Ⅱ Stage

  • We Wish You a Merry X'mas
  • 生命の奇跡・リベラ
  • レ・ミゼラブル リク
  • 美空ひばりメドレー(愛燦燦、川の流れのように) リク
  • 「塔の上のラプンツェル」メドレー リク
  • 「ウエストサイド物語」メドレー リク
  • ディズニー・ファンティリュージョン! リク
  • 銀河鉄道999
  • 「ピノキオ」〜星に願いを

リクエストコーナー(リク)でもし僕がボールを掴んだら、絶対映画「君の名は。」の歌4曲メドレーと叫ぼうと心に決めていた。しかし結局、当たった8人が誰も「君の名は。」を指名しなかったのは些かショックであった。昨年あれだけ大ヒットしたのに!!RADWIMPSの曲はそんなに愛されていないのか……。

で大阪桐蔭の演奏を聴きに来るの人々の好みの傾向としては「ディズニー」と「ミュージカル」がキーワードなのだなということが良く分かった。

あと僕は会場でのリハーサルから聴いていたのだが、そこで演奏された「メリー・ポピンズ」メドレー(チム・チム・チェリー、スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス、 凧をあげよう)が本番でなかったのには肩透かしを食らった。今度の定期で演るのかな?因みに来年、梅田芸術劇場で舞台版「メリー・ポピンズ」が上演され(チケットは既に確保)、また「シカゴ」「イントゥ・ザ・ウッズ」のロブ・マーシャル監督によるディズニー映画「メリー・ポピンズ・リターンズ」(リメイクではなく続編)が待機中である。

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主演はジュリー・アンドリュースに代わり、エミリー・ブラント。歌の作曲はシャーマン兄弟に代わり、マーク・シャイマン(ブロードウェイ・ミュージカル「ヘアスプレー」「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」)が担当する。あとミュージカル「ハミルトン」でブロードウェイを席巻し、「モアナと海の伝説」の主題歌を作曲したリン・マニュエル・ミランダも出演するよ。また余談だがディズニーはロブ・マーシャルに実写版「リトル・マーメイド」の監督もオファーしているとのこと(現時点で契約には至っていない)。

来年2月の大阪桐蔭高等学校吹奏楽部定期演奏会@フェスティバルホールでは満を持して「ラ・ラ・ランド」が遂に登場するらしい。いやもう待ち遠しくて、居ても立ってもいられないね!

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「銀河鉄道999」に見る、松本零士の病理

僕が小学校低学年の頃、コミックスは「オバケのQ太郎」とか「ドラえもん」等を中心に読んでいて、完全に藤子不二雄派だった。大学生になると「ブラック・ジャック」「火の鳥」「ブッダ」「アドルフに告ぐ」など手塚治虫や「トーマの心臓」「ポーの一族」など萩尾望都を読み漁った。一方、松本零士には全く食指が動かなかった。彼が描くメーテルら美女たちが好みでなかったのも大きいだろう。

初めて「銀河鉄道999」に興味を覚えたのは、大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のアンコール定番曲としてゴダイゴの主題歌を聴き、大のお気に入りになったからである。そこで映画を観てびっくり仰天した。その経験を通して思索したことについて下の記事に詳しく書いた。

メーテルのイメージが、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の映画「わが青春のマリアンヌ」(1955)に由来することにも触れた。

さてこの度、4Kテレビ購入と同時に加入したNetflixに「銀河鉄道999」のテレビ版が配信されていることを知り、一気に45話(ワルキューレの空間騎行 後編)まで観た(Netflixでの配信は12月15日に終了)。そこで気づいたことをまとめよう。

「銀河鉄道999」を支える三つの太い柱がある。

  1. エディプス(マザー)・コンプレックス=母性社会日本の病理
  2. ルサンチマン
  3. 人情噺=江戸落語的

Bosei

1.については上記事で縦横無尽に語ったので省略する。

ルサンチマンとはドイツの哲学者ニーチェが創造した概念である。弱者が強者に対して持つ、憤り・怨恨・憎しみの感情のことを指す。ニーチェはイエス・キリストの思想を批判する目的でこの言葉を用いた。当時のユダヤ人たちはローマ帝国に支配され、貧しく、恨みの感情を抱いていた。ここで価値の転倒(発想の転換)が起こる。「虐げられている俺達が正しい。支配者(ローマ帝国)こそ悪だ!そして現世では幸福になれなくても、死後天国に行けばきっと幸せになれる」(彼岸=絶対的不動の善・真理の設定)

このルサンチマンの心理はフランス革命やロシア革命にも当てはまる。圧政に苦しむ民衆・人民こそが正義。贅沢三昧の生活を享受するルイ16世/ロマノフ家/ブルジョアジーは悪。だから彼らを処刑せよ!奴らの財産は俺達のものだ!!

いわゆる従軍慰安婦問題など韓国人が日本人に対して抱いている、どうしても拭い去ることが出来ない恨【ハン】(解説はこちら)という感情もルサンチマンの亜種であろう。

「銀河鉄道999」で鉄郎とメーテルは様々な星に停車する。その多くで人々は貧しい生活を強いられ、権力者への恨みをつのらせている。鉄郎はアンドロメダ星雲にあるという、機械の体をタダでくれるという星を目指して旅をするが、それは正しく彼岸=永遠=イデア(哲学者プラトンが説く理想郷)である。

このルサンチマンをこじらせた世界観は松本零士の生い立ちと無関係でない。彼は福岡県久留米市に生まれた。父親は元軍人で、戦後は実家のある大平村で素焼きをし、小倉では大八車を押して野菜の行商をしながら線路脇のバラックに住んでいたという。彼がどれほど貧しい生活を送っていたかは→こちらの記事に詳しい。

松本零士と対象的なのが手塚治虫の漫画である。手塚漫画にはマザー・コンプレックスもなければ、ルサンチマンも皆無である。

手塚は代々医者の家系に生まれた。曽祖父は蘭方医で、漫画「陽だまりの樹」のモデルになっている。父は宝塚倶楽部の会員であり、一家はしばしば宝塚ホテルで食事をした。そして幼少期に母には宝塚少女歌劇団に連れて行ってもらっていた(この体験が「リボンの騎士」の原点となる)。家には8mmカメラがあり、当時の治虫の映像が残っている。また家の映写機でディズニーのアニメを初めて観たという。1930年代の話である。つまり手塚は正真正銘「良家のお坊ちゃん」だったのだ。

松本零士と手塚治虫。ふたりの「お育ちの違い」が作品に明白に反映されているというのは興味深い現象である。三つ子の魂百までとは、言い得て妙だ。

江戸落語にもルサンチマンが渦巻いている。貧乏長屋に住む庶民の、武士の横暴に対する怒り・怨念。「たがや」がその代表例だろう。そして江戸っ子は人情噺を好む。一方、豊かな商人の街に発展した上方落語にはルサンチマン人情噺も綺麗サッパリない。つまり松本漫画 ≒ 江戸落語/手塚漫画 ≒ 上方落語という図式が成り立つのである。

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初心者のためのミュージカル映画講座〜「巴里のアメリカ人」から「ラ・ラ・ランド」へ

2017年夏の甲子園で大阪桐蔭高等学校吹奏楽部(指揮:梅田隆司 先生)は野球部の応援歌として「ラ・ラ・ランド」(♪Another Day of Sun♪)を初めて演奏し、世間の話題を攫った。また全日本吹奏楽コンクールの自由曲としてガーシュウィン作曲「パリのアメリカ人」を選択した(結果は銀賞)。全国大会で同曲が演奏されたのは2009年の相馬市立向陽中学校以来8年ぶり。因みに桐蔭を含め過去5回全国大会で取り上げているが、金賞を受賞した団体は未だない。

北米で2016に公開されたミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」はアカデミー賞で史上最多の14部門にノミネートされ、監督賞・主演女優賞・撮影賞・美術賞・歌曲賞・作曲賞の6部門を受賞した。監督のデイミアン・チャゼルは32歳、史上最年少の記録となった。

La La LandのLAはハリウッドのあるロサンゼルス(Los Angeles)のことを指し、【あっちの世界/あの世/我を忘れた陶酔境】を意味する。「あの娘はいま、ラ・ラ・ランドにいる」とは、「彼女の心はここにあらずで、空想に耽る不思議ちゃん」と揶揄しているのだ。

映画「ラ・ラ・ランド」の主軸には3つのオマージュがある。

  1. ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン主演マイケル・カーティス監督の映画「カサブランカ」
  2. 往年のハリウッド製ミュージカル映画、特にヴィンセント・ミネリが監督し、フレッド・アステアやジーン・ケリーが歌い踊ったMGM映画「バンド・ワゴン」&「巴里のアメリカ人」
  3. フランス・ヌーベルヴァーグの映画群、特にジャック・ドゥミ監督「ローラ」「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」=港町三部作

ヒロインのミア(エマ・ストーン)は映画「カサブランカ」に憧れを抱いており、自室に巨大なイングリッド・バーグマンのポスターを貼っている。そしてワーナー・ブラザース撮影所の、「カサブランカ」が撮影されたセットの向かいにあるカフェで働いている。彼女がパリにこだわるのも「カサブランカ」の影響だ("We'll always have Paris."「俺達にはパリの想い出がある」ボギーの台詞)。ここからは僕の解釈だが、「ラ・ラ・ランド」のエピローグ(5年後の冬)でキャメラは彼女の(妄想/ifもしもの世界)の中に入ってゆく。そこで彼女はハリウッドの大女優になっており、棄てたはずのバーグマンのポスターが忽然と街角に現れる。そして彼女は人妻ながら、別に好きな男がいるという「カサブランカ」のヒロイン、イルザ(バーグマン)と同じ役柄を演じる

ちなみに「カサブランカ(Casa Blanca)」とは《白い家》という意味であり、ハリウッドのメタファーとも言える。この映画は第二次世界大戦中の1942年に公開された。アメリカはナチス・ドイツと交戦状態にあり、ユダヤ人を中心にヨーロッパで活躍していた沢山の映画人が亡命し、ハリウッドに身を寄せていた。監督のマイケル・カーティス(1888-1962)はハンガリーの首都ブタペスト出身。彼もユダヤ人であり、ハンガリー名はケルテース・ミハーイ。左翼思想を持ち、長編デビュー作は共産党のプロパガンダ映画であった。しかし1919年にハンガリーにおける共産主義革命が失敗したため、ドイツに亡命し、後に渡米した。つまりカサブランカ=ラ・ラ・ランド=ハリウッドという図式が成り立つのである。

戦争を挟み、1930〜50年代はハリウッドの黄金期であった。大手映画会社にはそれぞれ得意分野があった。例えばドラキュラ、フランケンシュタインなど怪奇映画ならユニバーサル・スタジオといった具合に。そしてミュージカルといえばMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)の独壇場であった。偉大なプロデューサー、アーサー・フリードの功績が大きい。フリードは元々作詞家で、作曲家ナシオ・ハーブ・ブラウンと組んでたくさんの名曲を生み出した。ジーン・ケリーが主演した名作「雨に唄えば」(1952)に出てくる歌は、表題曲を含め全てフリード&ブラウンの作品である。そしてフリードはブロードウェイで新進気鋭の演出家として名を馳せていたヴィンセント・ミネリをハリウッドに招聘した。ミネリのハリウッド・デビュー作は「キャビン・イン・ザ・スカイ」(1943)。出演者全員が黒人のミュージカル映画であり、プロデューサーは勿論フリードである(日本でもDVDやAmazon等の動画配信で観ることが出来る)。

当時のMGMが如何に豊穣で、どれくらい数多くミュージカルの名作を生み出していたかは是非、豪華絢爛たるアンソロジー映画「ザッツ・エンタテインメント」DVDをご覧頂きたい。パート3まで製作され、「ラ・ラ・ランド」が引用した場面も沢山収録されている。

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番外編として「ザッツ・ダンシング!」もお薦め。

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こちらはMGM映画に限定せず、「赤い靴」(←英国映画)「フラッシュダンス」とか、マイケル・ジャクソンまで登場する。

ヴィンセント・ミネリに話を戻そう。彼は1944年にMGMの看板女優だったジュディ・ガーランド主演で「若草の頃」を撮り、翌45年に彼女と結婚した。ふたりの間に生まれたのがライザ・ミネリである(「キャバレー」でアカデミー主演女優賞受賞)。彼はその後もジュディ主演で「踊る海賊」(1948)を撮っている(相手役はジーン・ケリー)。しかし幸福な生活は長く続かなかった。ジュディは子役時代からMGMで仕事をしていたが、太りやすい体質だったためスタジオは13歳の彼女に痩せ薬としてアンフェタミン(覚醒剤)の内服を指示した。17歳で「オズの魔法使い」(1939)の主役に抜擢された時は既に常用者になっていた。その後多忙を極めた彼女はセコナール(睡眠薬)も併用するようになり、次第に薬物中毒の症状が現れ始める。自殺未遂、繰り返す薬物治療のための入退院、そして撮影所への遅刻や欠勤。結局主演が決まっていた「アニーよ銃をとれ」(1949)からは役を降ろされ、翌50年にMGMは彼女を解雇した。そして同じ年、ミネリとジュディは離婚した。なお余談だがジュディはワーナー・ブラザースの「スタア誕生」(1954)で劇的な再起を果たす。この一場面(♪The Man that Got Away♪ )も「ラ・ラ・ランド」に引用されている。

アーサー・フリード製作、ヴィンセント・ミネリ監督、ジーン・ケリー主演及び振付「巴里のアメリカ人」(1951)はアカデミー賞で作品賞・撮影賞・美術賞・衣装デザイン賞など6部門を制覇した(加えてジーン・ケリーに名誉賞が贈られた)。全編がガーシュウィン兄弟の楽曲に彩られている(劇中でピアノ協奏曲 ヘ調を弾くオスカー・レヴァントはガーシュウィンの親しい友人で、伝記映画「アメリカ交響楽」では本人役で出演)。圧巻なのがジョージ・ガーシュウィン作曲「パリのアメリカ人」をバックに踊られる、18分に及ぶクライマックスのダンス・シーン。MGM映画を代表する究極の名場面であり、「ザッツ・エンタテインメント」第1作の最後を飾った。なお本作は舞台化され2015年にブロードウェイで上演、トニー賞に12部門ノミネートされた。日本では2019年に劇団四季が上演することも決まっている→こちら

20世紀フランスを代表する哲学者ジル・ドゥルーズ(1925-95)はヴィンセント・ミネリについて次のように語っている。

ダンスがイメージに流動的な世界を与えるということだけでなく、イメージの数だけ世界があるということを発見したのは、ミネリであった。(中略)世界の複数性はミネリの第一の発見であり、映画における彼の天文学的な位置はそれに由来している。ではしかし、どのようにして一つの世界から別の世界へと移行するというのか。ここに第二の発見がある。つまりダンスはもはや単なる世界の運動ではなく、一つの世界から別の世界への移行であり、別の世界への入り口、侵入、探検なのである。(中略)色彩は夢であり、それは夢がカラーだからではなく、ミネリにおける色彩が、すべてを吸引するほとんど貪り食うような高い価値を獲得しているからである。したがって、そこに忍び込み、吸い込まれなければならない。(中略)ダンスはもはや世界を描く夢の運動ではなく、みずからを深め、ますます激しくなり、別の世界へと入るための唯一の方法となる。その別の世界とは、ある他者の世界、ある他者の夢あるいは過去なのである。(中略)ミネリにおいてミュージカルは、かつてないほど記憶の、夢の、時間の謎に近づいた。現実的なものと想像的なものとの識別不可能な点に近づくようにして。それは夢についての奇妙で魅惑的な着想であり、夢はある他者の夢につねにかかわっていればいるからこそ、あるいは傑作『ボヴァリー夫人』におけるように、夢そのものが、人を貪り食う仮借ない力能を、みずからの現実の主体として構成しているからこそ、折り込まれた夢である。
(ドゥルーズ著/宇野邦一ほか訳「シネマ 2*時間イメージ」法政大学出版局)

僕はこの度「巴里のアメリカ人」を再見しながら、最後にジーン・ケリーが入って行くのは誰の夢なのかということに思いを馳せた。そして発見した。パリという街がドガやルノワール、ロートレック、ゴッホ、ユトリロら、ここに集まった画家たちに見せた夢の総体なのだと。

これは「ラ・ラ・ランド」に繋がっている。ミアとセブが最後に入っていくのはハリウッド(=ラ・ラ・ランド)という装置(生産工房)が、そこに集まってきた人々に見せる束の間のである。黒服を来たミアはそこに呑み込まれ、脱出不能になる。THE END.

あとドゥルーズも触れていたジェニファー・ジョーンズ主演「ボヴァリー夫人」(1949)も是非一度、ご覧頂きたい。紛うことなきミネリの最高傑作である。特に凄いのは舞踏会と、夫人が若い貴族と駆け落ちしようと深夜に乗合馬車を待っている場面。舞踏会では正に狂気が疾走する。彼女は若い貴公子たちに囲まれた自分の姿を鏡で見てウットリ酔い痴れ、その夢に呑み込まれてしまう。この舞踏会でのカメラワークをチャゼルは「ラ・ラ・ランド」でちゃっかり借用している(セレブ邸のプールにて、♪Someone in the Crowd♪)。

Bovary
↑ジュネス企画から発売されているDVDジャケット。

最後にヌーベルヴァーグについて語ろう。第2次世界大戦で戦場となったヨーロッパは破壊し尽くされた。その廃墟の中から真っ先に起こってきたシネマの運動がイタリアン・リアリズム(ネオレアリズモ)である。ヴィットリオ・デ・シーカ「自転車泥棒」'48やロベルト・ロッセリーニ「無防備都市」'45「戦火のかなた」'46がその代表作。ハリウッドで「無防備都市」を観たイングリッド・バーグマンは大感激し、直ちにロッセリーニに手紙を送った。そして彼女は夫や幼い娘を棄て、イタリアに飛んだのである。アメリカ国民は怒り、上院議会も彼女の不倫を激しく非難した(こうしてふたりの間に生まれたイザベラ・ロッセリーニは女優の道を進み、デヴィッド・リンチ監督「ブルーベルベット」や「ワイルド・アット・ハート」に出演することになる)。

やがてネオレアリズモがフランスに飛火し、1950年代後半にヌーヴェルヴァーグ〈新しい波〉が発生した。さらにヌーベルヴァーグに刺激を受けてベトナム戦争最中の1960年代後半にアメリカン・ニューシネマが勃発する。アメリカン・ニューシネマの代表作「俺たちに明日はない」の監督のオファーが最初はヌーベルヴァーグの旗手フランソワ・トリュフォーにあったことは余りにも有名である(トリュフォーは断り、次にジャン=リュック・ゴダールが打診された)。ヌーベルヴァーグ及びアメリカン・ニューシネマとは一体、何だったのか?簡単に言えば従来の映画の常識、既成概念の破壊である。若い映画作家たちは手持ちカメラを携えて撮影所から飛び出し、街頭でロケし始めた。つまりさすらいの映画だった(「イージー・ライダー」がその典型)。編集方法(モンタージュ)も劇的に変わった(ドゥルーズに言わせれば【知覚→情動〘感情〙→行動〘反応〙】という一連の「運動イメージ」の放棄/切断)。

では「ラ・ラ・ランド」とヌーベルヴァーグの関係を見ていこう。まず冒頭、地方からロサンゼルスに集まってきた若者たちが歌う♪Another Day of Sun♪はジャック・ドゥミ監督「ロシュフォールの恋人たち」'67(♪キャラバンの到着♪)への高らかな讃歌。楽曲もミシェル・グルランを意識して書いたと作曲家のジャスティン・ハーウィッツがインタビューで明言している。ミアが台本を書いて演じた一人芝居の役名は「シェルブールの雨傘」'64と同じジュヌビエーブ。衣装の色彩も港町三部作を彷彿とさせる。ミアとセブが抱き合ってキスした時にふたりの周囲をカメラがグルグル回る手法はクロード・ルルーシュ監督「男と女」'66。ミアがオーディションで叔母さんのエピソード@パリを語るが(真っ赤な嘘/FAKE)、これはフランソワ・トリュフォー監督「突然炎のごとく'62でジャンヌ・モロー演じるヒロインがとった行動(橋からセーヌ川に飛び込む)からの借用である。またこのオーディション・シーンの演出・カメラワークはアニエス・ヴァルダ(ドゥミ夫人)監督「5時から7時までのクレオ」'62とそっくりに仕上げられている(ミシェル・ルグランが役者として現れ、主人公が歌うピアノ伴奏を務める場面)。さらにクライマックスのダンス・シーン(=)ではアルベール・ラモリス監督「赤い風船」'56の少年がマネキン姿で登場する。あとピアノを弾くセブと踊るミアを交互に、カメラが高速でパン(Pan,水平方向に首を振る撮影法)するのもヌーヴェルヴァーグの特徴である。

ヴィンセント・ミネリの後継者デイミアン・チャゼル。次の作品ではどのような夢の力能を我々に見せてくれるのだろうか?とても愉しみである。

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劇場版 響け!ユーフォニアム〜届けたいメロディ〜

評価:B+

映画公式サイトはこちら

上の一連の記事で「響け!ユーフォニアム」1st.シーズンを絶賛したが、正直テレビで放送された2nd.シーズンにはがっかりだった。第1期では全国大会を目指し京都府吹奏楽コンクール高校の部で金賞を受賞、代表に選ばれるまでが描かれていたわけだが、第2期では関西大会、全国大会への行程が描かれる。結局目標に向かって猛練習に励む日々が描かれるで変化に乏しい(マンネリズム)。主人公の久美子(ユーフォ)と親友・麗奈(トランペット)のイチャイチャ(花火大会)も、第1期;第8話(あがた祭り)の焼き直しで、既視感がある。

また新キャラの鎧塚みぞれ(オーボエ)と傘木希美(フルート)のエピソードも所詮余談でしかなく、正直どうでもいい!!

そんな訳でどうしようか相当迷ったけれど、第2期総集編である劇場版に足を運んだ(新規カットあり)。

冒頭にフォトセッション(記念撮影タイム)があり、SNSやブログで拡散可とアナウンスされた。こんなの初体験。パシャリ。

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意外だったのは1年生の久美子と3年生の田中あすかの関係だけに焦点を絞り、再編集したことで構成が引き締まり、格段に見応えあるものに仕上がっていた。鎧塚みぞれと傘木希美は潔くバッサリ切って殆ど画面に現れないのも良い。どうやら2人に関しては「リズと青い鳥」というスピンオフが製作されるようだ→こちら。需要あるのか!?

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シリーズ《映画音楽の巨匠たち》第6回/ミシェル・ルグラン篇(+大阪桐蔭高校吹部「キャラバンの到着」)

過去のシリーズは以下。

まずは昨年全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞し、全国の頂点に立った大阪桐蔭高等学校吹奏楽部が精緻華麗にマーチング演奏する「キャラバンの到着」をお聴きください→こちら(本当はこのフラワーコンサートに行く筈だったのだが、連れていく予定だった息子が当日朝に発熱し、断念した)。ミシェル・ルグランが作曲し、ジャック・ドゥミが監督した港町三部作のひとつ「ロシュフォールの恋人たち」冒頭のナンバーで、三菱ランサー・エボリューションのCMでもお馴染みだろう。

僕は映画「ラ・ラ・ランド」を観る前にまずiTuneでサントラをダウンロードした。そして最初の"Another Day of Sun"のイントロを聴いた瞬間に「アッ、キャラバンの到着だ!」と思わず叫んだ(映画の動画はこちら)。実際に若者たちが遠方から町にやって来て、車を降りるやいなや踊りだすというシュチュエーションも両者で完全に一致している。さて、ジャズが大好きな「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督(音楽学校でプロを目指しジャズ・ドラムを学ぶが、才能の欠如を感じ諦めたという)と、この作品でアカデミー歌曲賞及び作曲賞を受賞したジャスティン・ハーウィッツがこよなく敬愛するフランスの作曲家ミシェル・ルグラン(1932ー 、パリ生まれ)とは一体何者なのか?

ルグランの出発点は1958年(26歳)に新婚旅行でニューヨークに渡航した際に録音されたアルバム「ルグラン・ジャズ」である。

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参加しているミュージシャンが凄い。ジョン・コルトレーン(Sax)、ビル・エヴァンス(Pf)、そしてマイルス・デイヴィス(Tp)!!ジャズ・ジャイアンツが一堂に会するという壮観さ。ルグランは卓越したアレンジャーとしての才能を開花させた。これ必聴。

そして彼は丁度その頃、台頭してきたフランス・ヌーベルバーグ(新しい波)の映画作家たちと深く関わるようになる。

ではルグランが作曲した映画音楽ベスト10を選んでみよう。

  1. ロシュフォールの恋人たち (1967)
  2. 恋 The Go-Between (1971)
  3. 愛のイエントル Yentl (1983)
  4. シェルブールの雨傘 (1963)
  5. 華麗なる賭け (1968)
  6. 天使の入江 (1963)
  7. おもいでの夏 (1971)
  8. エヴァの匂い (1962)
  9. 愛と哀しみのボレロ (1981)
  10. ベルサイユのばら (1979)

多分、誰もが知っいるのは「シェルブールの雨傘」だろうが、真のルグラン・ファンなら10人中10人が「ロシュフォールの恋人たち」を真っ先に推すだろう。唯一無二。彼のエッセンスがギュウギュウに詰まっている。

ピアノの音がキラキラ煌めき、そして切ない協奏曲仕立ての「 (The Go-Between)」の音楽はこちら。映画のクライマックスではフーガも登場し、クラシカルなルグラン音楽の代表作である。

アカデミー賞で編曲・歌曲賞を受賞した「愛のイエントル」の白眉"Papa, Can You Hear Me?"の試聴はこちら。星空の下、死んだ父に対して謝り、でもこの生き方しかないの、分かってと訴える歌。バーブラ・ストライサンドが製作・監督・脚本・主演した、けったいな【ひとりミュージカル】映画である。最初から最後までバーブラがひとりで歌いまくる。ブロードウェイ・ミュージカルに主演したこともあるマンディ・パティンキンが相手役なのに、彼には一切歌わせない。最初観た時は開いた口が塞がらなかったが、次第にバーブラの人となりが判ってきて、好きになった。20世紀初頭ポーランドのユダヤ人コミュニティ。女は学問をすることが許されず、それに抗ったイエントルは男装して神学校(イェシーバー)に入学する。そして自分のついた嘘を貫き通すために女性と結婚までする。"It is written."がこの物語のキーワードとなる。女は書物を読まなくていい。男に従属するのが女の幸せ。そう「旧約聖書(またはユダヤ教の律法)に書いてある」。イエントルはこの「常識」に対して徹底的に反抗する。「予め定められた運命(It is written.)」なんてない。自らの手で書くのだ。彼女の生き様は後にディズニーの「アナと雪の女王」の"Let It Go"に流れ込み、国連の親善大使として活躍するエマ・ワトソン(「ハリー・ポッター」シリーズ、「美女と野獣」)へと継承されてゆく。映画のフィナーレで歌われる感動的な"A Piece of Sky"はこちら。イエントルは移民船に乗り込み、新大陸を目指す。コンサートでこの名曲をFilm上の自分自身と気持ちよくデュエットする愛すべきバーブラの姿はこちら(1分30秒あたりから)。どれだけ自分のことが好きやねん!!ここには写っていないけれど、実はコンサート会場にスティーヴン・スピルバーグも来ています(「イエントル」に出演しアカデミー賞にノミネートされたエイミー・アーヴィングは元スピルバーグ夫人で89年に離婚)。

華麗なる賭け」は「風のささやき」がアカデミー歌曲賞を受賞。スティーブ・マックィーンとフェイ・ダナウェイが格好いい。この歌が流れ、マックィーンが黄色いグライダーを操縦するシーンには痺れる→こちら!別のシーンだけれど、スプリットスクリーンもお洒落。

ジャック・ドゥミとの「天使の入江」は何かに急き立てられるかのような疾走感・焦燥感がある。試聴は→こちら。ギャンブルに明け暮れる男女の茫漠とした満たされない想い、空虚さが胸を打つ。

ルグランがアカデミー作曲賞を受賞した「おもいでの夏」はこちら

愛と哀しみのボレロ」は長年フランシス・レイとコンビを組んできたクロード・ルルーシュ監督(「男と女」)の大作で、なんと音楽はレイ×ルグランという豪華版。そしてルグランの曲では”世紀末の香り”にとどめを刺す!!→こちら。これはオーケストラバージョンだけれど、本編では歌バージョンあり。僕は本作を祖母と一緒に映画館(SY松竹文化@岡山市、2005年に閉館)で観た。中学3年生の時だった。そして初めて20世紀を代表する振付家モーリス・ベジャールと稀代のダンサー、ジョルジュ・ドンの名を知った。その御蔭で1985年3月4日に岡山市民会館でジョルジュ・ドン&東京バレエ団で「ボレロ」を観たのも鮮烈な体験だった。忘れもしない、大学入試の合格発表があった夜だった。その後ドンは1992年にAIDSで亡くなった。享年45歳。またルグランの朋友ジャック・ドゥミもAIDSで90年に命を落とした。そういう時代だった。

B

池田理代子(漫画)原作「ベルサイユのばら」(実写版)はジャック・ドゥミが監督しているが、作品自体は惨憺たる出来であった。もう泣きたくなった。ドゥミは「金のために撮った」と赤裸々に告白している。身も蓋もない。プロデューサーは山本又一朗、総製作費10億円を投じ、ベルサイユ宮殿でロケされた。資生堂がタイアップし、こんなCMもTVで放送された。原題が何故か"Lady Oscar"で、ダイアログも英語。意味不明。しかしルグランの音楽は掛け値なしの傑作だと僕は今でも確信している。是非聴いてみて→こちら!演奏はロンドン交響楽団。この佳曲を人知れず埋もれさせてしまうなんて勿体なさ過ぎる。Jazz Version(こちら)とか、対位法で作曲された雄大なフィナーレもどうぞ→こちら

番外編として手塚治虫原作、市川崑監督「火の鳥」実写版(1978)の音楽も素晴らしい。こちら!演奏はやはりロンドン交響楽団。ルグランはメイン・テーマのみ作曲している。

また彼はリナ・ホーン、キリ・テ・カナワ、ジェシー・ノーマンら一流歌手たちと組んでソング・アルバムをレコーディングしている。中でも一押しなのがナタリー・デセイとのアルバム。

Nat

デセイは「魔笛」「椿姫」などに出演する本格的オペラ歌手だが、ルグランの曲ではちゃんと柔らかいシャンソンの歌い方に切り替えている。キリ・テ・カナワやジェシー・ノーマンはオペラティック過ぎる(ヴィブラートがキツイ)のだ。

最後にルグランの舞台ミュージカルをご紹介しよう。劇団四季が上演した「壁抜け男」である。

Kabe

地味だけど愛すべき逸品。劇伴の奏者は3人だけ。後に拡大したオーケストレーション版でブロードウェイ上演もされた。

Amour

壁抜け男」は1999年に博多の福岡シティ劇場で日本初演された(ここは現在、劇団四季の専用劇場ではなくなりキャナルシティ劇場に名を変えた)。僕はこの初日に観ている。主演のデュティユルは現在、テレビ朝日「題名のない音楽会」で司会を務める石丸幹二。他に井料留美、光枝明彦、丹靖子ら。この4人は全員、既に四季を退団している。同メンバーでVHSビデオも出ていたのだけれど、現在Amazon.co.jpで購入出来るDVD/Blu-ray (23% OFF)は2012年の再演版で別キャストである。

シリーズ《映画音楽の巨匠たち》次回はバーナード・ハーマン(「めまい」「北北西に進路を取れ」「サイコ」「タクシー・ドライバー」)か、「スター・ウォーズ」の生みの親エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト辺りを考えている。どちらかもし、ご希望があればコメントをお寄せください。

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なにわ《オーケストラル》ウィンズ 2017 と「プラハの春」

5月3日(祝)ザ・シンフォニーホールへ。年に一度、日本のオーケストラの管楽器・打楽器奏者たちが集うなにわ《オーケストラル》ウィンズ(NOW)を聴いた。15年続いたこの企画も今年が最後。指揮者は丸谷明夫先生(大阪府立淀川工科高等学校吹奏楽部)M、中川重則先生(岡山学芸館高等学校吹奏楽部)N、そして金井信之(NOW代表、クラリネット奏者)K

  • ヴァンデルロースト:フラッシング・ウィンズ N
  • 川合清裕:メタモルフォーゼ 〜吹奏楽のために〜
    (2017年 吹奏楽コンクール課題曲V) K
  • 酒井格:半音階的狂詩曲(委嘱作品 世界初演) N
  • フサ:プラハのための音楽1968 N
  • ジェイガー:交響曲第1番 M
  • スパーク:交響曲第3番「色彩交響曲」 K

アンコールは、

  • ヴァンデルロースト:ジュピター N
  • 西山知宏:マーチ「春風の通り道」
    (2017年 吹奏楽コンクール課題曲 IV) M
  • 真島俊夫(編曲):カーペンターズフォーエバー M

「フラッシング・ウィンズ」は金管の響きが輝かしい。曲調がジェローム・モロス作曲の映画音楽「大いなる西部」にそっくりで可笑しかった。

川合清裕は日本現代音楽協会の作曲新人賞を受賞。今回の課題曲は全日本吹奏楽連盟作曲コンクールの第1位に選ばれた。ソロの活躍する場面が多く、カラフルな音色。僕はモーリス・ラヴェルなどフランス印象派の音楽を連想した。

大阪府枚方市出身の作曲家・酒井格の新曲は難易度が高く、過去の「たなばた(The Seventh Night of July)」とか「森の贈り物」など優しくメルヘンチックな作品群と比べると意外な感じがした。しかしメロディアスな点ではこの人らしいとも言える。途中、バンダ(場外)トランペットとの掛け合いがあり、印象的だった。

カレル・フサ「プラハのための音楽1968」はチェコスロバキアで起こった民主化運動「プラハの春」がソ連率いるワルシャワ条約機構軍の侵攻による軍事介入で蹂躙された事件を受け同年に作曲され、翌69年1月31日にワシントンDCで初演された吹奏楽曲である。

名指揮者ジョージ・セル(ハンガリー:ブタペスト生まれ)の委嘱により70年1月に管弦楽版も初演されたが、セル自身の録音は残されていない(セルは70年7月30日に死去)。このオーケストラバージョンは2004年に下野竜也/札幌交響楽団が定期演奏会で日本初演。その後下野は九州交響楽団や、2017年にはNHK交響楽団定期演奏会でもこれを取り上げている。僕が知る限り、関西では演奏されていない筈。頼みまっせ、大阪フィルさん。

「プラハの春」とチェコ事件の詳細についてはミラン・クンデラの小説「存在の耐えられない軽さ」を読まれたし。フィリップ・カウフマン監督がダニエル・デイ・ルイスとジュリエット・ビノシュ主演で撮った映画版も優れている。NHKの番組「映像の世紀」も参考になるだろう。

チェコ・フィルの指揮者カレル・アンチェルは海外演奏旅行中にチェコ事件が起こり、帰国を断念。1969年に小澤征爾の後任としてトロント交響楽団の常任指揮者に就任し73年に亡命先のトロントで死去した(後年、遺骨はプラハに還った)。

またやはり指揮者であるラファエル・クーベリックは1948年にチェコスロヴァキアに共産党政権が樹立された際に亡命。89年にビロード革命が起こり、ハヴェル大統領からの要請で90年に帰国、プラハの春音楽祭でチェコ・フィルを指揮し「わが祖国」を演奏した。アカデミー外国語映画賞を受賞したチェコ映画「コーリャ 愛のプラハ」の主人公はチェコ・フィルのチェロ奏者という設定で、クーベリック本人も出演している。これ必見。

また映画監督のミロス・フォアマンはチェコ事件を機にアメリカに亡命、「カッコーの巣の上で」(75)と「アマデウス」(84)で2度アカデミー監督賞を受賞した。「アマデウス」ではプラハでロケをしている。「カッコーの巣の上で」の舞台となる精神病院を共産主義国家(チェコスロヴァキア)と見立てれば、物語の構造が理解し易いだろう。

僕は「プラハのための音楽1968」吹奏楽オリジナル版をNOWで取り上げて欲しいということを、過去のレビューに書いている。

楽曲中に15世紀のフス戦争でフス教徒により歌われた戦いの歌「汝ら、神とその法の戦士たち」が引用されており、この旋律はスメタナの交響詩「わが祖国」(第5曲「タボール」第6曲「ブラニーク」)やドヴォルザークの劇的序曲「フス教徒」にも登場する。そして第3楽章 間奏曲で軍楽隊の太鼓が遠くから次第に近づいて来て、物凄い緊迫感で胸が締め付けられる。第4楽章で戦車部隊がプラハになだれ込み、圧倒的力で民主化運動を押さえ込む。阿鼻叫喚の地獄絵図。しかし響きはあくまで明晰。けだし名演であった。なお今回初めて知ったのだが、この楽曲にはフルートが8本も必要なのだそう。

ジェイガーの交響曲は1963年の作品で、現在の耳で聴くと古色蒼然としていて唖然とする。完全にオワコン。同時代の「プラハのための音楽1968」は全く古びていないのに……。時の洗礼を受けた後でも鮮度を保ったまま生き残るものと、そうじゃない(色褪せる)ものの違いが鮮明に浮き彫りにされた。アッキーこと、NHK交響楽団のクラリネット奏者・加藤明久は高校生の時、吹奏楽コンクールの自由曲でこれを演奏したそうだが(課題曲もジェイガーの「ジュビラーテ」)、曰く「今聴くと昭和ですねぇ。水戸黄門の『このご印籠が目にはいらぬか!』って感じ。こっ恥ずかしい曲です」と。うんうん頷ける。抒情的で甘い旋律、あくまでノスタルジック。第2楽章の行進曲は丸ちゃんの指揮だけにカチッとしていた。

スパークの新作はたおやかで暖かい。夢見るような音楽。第1楽章「白」は東日本大震災の復興支援として彼がわが国にプレゼントしてくれた「陽はまた昇る」のことを彷彿とさせる(2011年のNOWで演奏された)。第2楽章「黄」はリズミカルで鉄道の旅のよう。同じ作曲家の「オリエント急行」に似た雰囲気だ。ジェイガーの後で聴くと「これぞ21世紀の音楽!」と嬉しくなったが、ただブラインドでプロの音楽家にこれを聴かせたとして、各楽章(全6楽章)が何色を表しているか当てられる人は果たしているのだろうか??甚だ疑問である。

アンコールのマーチはメリハリがあり、引き締まったテンポ。僕は丸ちゃん/淀工の「カーペンターズ/フォーエバー」の生演奏を今までに少なくとも10回以上聴いているが、今回の出だしは史上最速だった!いつもどうり、最後の"Hey ! "も見事に決まり、有終の美を飾った。ありがとう、NOW。そしてさようなら。

この演奏会のライヴCDは6月10日に発売される。ゆめゆめ聴き逃すことなかれ。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定演/ミュージカル「銀河鉄道の夜」〜宮沢賢治の深層心理にダイブする。

2月20日(月)フェスティバルホールへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部定期演奏会を聴く。指揮は総監督の梅田隆司先生。

第1部

  • 西村友:ミュージカル「銀河鉄道の夜」吹奏楽版

第2部

  • ロッシーニ(森田拓夢編):歌劇「ウィリアム・テル」序曲
  • プロコフィエフ(高昌帥編):バレエ音楽「ロミオとジュリエット」より
  • アラン・メンケン(ジョン・モス編):映画「美女と野獣」より
    プロローグ〜ベル〜強いぞガストン〜Be Our Guest〜美女と野獣(歌付き)〜奇跡の変身
  • ♪甲子園応援リクエスト・コーナー
    You Are スラッガー(オリジナル曲)〜恋(星野源、恋ダンス付き)〜SHAKE(SMAP)〜三代目 J Soul Brothers メドレー(ダンス付き)
  • 三年間の歩み Part 1(1、2年生篇)
    野田洋次郎、RADWIMPS(宮川成治編):「君の名は」メドレー
    夢灯籠〜前前前世〜スパークル〜なんでもないや
  • 三年間の歩み  Part 2(3年生篇)
    フランチェスコ・サルトール(福田洋介編):Time to Say Goodbye
  • 10期卒業生を送る歌 山村隆太(作詞)、阪井一生(作曲):証
  • ガーシュウィン(建部知弘・森田拓夢編):歌劇「ポーギーとベス」より
  • タケカワ・ユキヒデ(樽屋雅徳編):銀河鉄道999 アンコール
  • 星に願いを アンコール

以前も引用したが、臨床心理学者・河合隼雄は宗教学者・中沢新一との対談本「ブッダの夢」の中で次のように語っている。

 『銀河鉄道の夜』を読んで面白いのは、はじめ、母と息子の物語として出発するんですね。だから、ある意味では、ずっと母性が底流にあるんです。あるんだけれども、チェロのような声をした男の声が聞こえてくるって。最後はしかも、お父さんの帰ることをお母さんに知らせなくちやっていうところで終わります。つまり、非常に厳しい父性もあの中にずっと入ってるんですね。銀河を書いたりする時に、非常に科学的な言葉や客観的な描写が出てきたり、同時に、また母性的なものもあるわけでしょう。
 ところがね、『銀河鉄道999』という漫画は完全におかあちゃんの話になっています。

この物語はジョバンニ=宮沢賢治、カムパネルラ=結核を患い24歳で死去した賢治の妹・トシ(詳しくは賢治の詩「永訣の朝」を参照のこと)として読むことが出来る。この兄妹はある意味、一心同体であり、だから新海誠監督「君の名は。」の瀧と三葉のようでもある。

ジョバンニは【片割れ(=Half Moon)】のカムパネルラと旅をする。しかし実はカムパネルラは既に死んでいる。一方、「君の名は。」の瀧は三葉を探し求めるが、彼女は3年前に死んでいた。両者は物語の構造が同じなのである。「銀河鉄道」とは人の意志に関係なく彼らを運び去ってしまう運命のメタファーであり、「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」「君の名は。」など一連の新海作品に度々登場する鉄道も同様に機能している。

ジョバンニとカムパネルラは一心同体だから、両者合わせて一人の人格と見做すことも可能だろう(名前の由来はイタリア・ルネッサンス時代の哲学者トマソ・カンパネッラだと言われている。その幼名はジョバンニ・ドミニコ。つまり同一人物である)。そして意地悪なザネリの身代わりとして死ぬカムパネルラに対して賢治は明らかに、人類の罪を贖うために十字架にかけられたイエス・キリストのイメージを重ねている。自己犠牲のテーマはタイタニック号の事故で犠牲になった姉弟の登場や、蠍の火のエピソードで繰り返される。そしてアンドレ・ジイドが小説のタイトルに引用した次の警句に繋がる。

狭き門より入れ。滅びにいたる門は大きく、その道は広い。そして、そこから入っていくものが多い。命にいたる門は狭く、その道は細い。そして、それを見出すものは少ない」(マタイによる福音書)

非常に厳しい父性としての一神教の姿がそこにある。祈りの言葉は「天にまします我らのよ」であり、三位一体とは「」と「子(イエス)」と「精霊」を指す。女性は排除されているのだ。またローマカトリック教会の最高位、法王に女性はなれない。

とすると、「ラッコの上着を持って帰る」と約束し、最後まで姿を見せないジョバンニの父親はイエスの父=神と解釈することも可能なのではないだろうか?イエスは父の真意を測りかねて苦しみ、十字架上で「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」と叫ぶ。

一方、天照大御神(女)を頂点とする八百万の神を戴く日本は母性社会である(河合隼雄 著「母性社会日本の病理」を参照されたし)。母性は全てを包み込み、あるいは飲み込むが、父性は切断し、分類し(天と地、光と闇、天使と悪魔など)、客観的に観察する性格を帯びている。この特徴が欧米諸国でのみ近代科学が生まれ、発展した背景となった。0と1のみの二進法で全てを計算し、処理するコンピューターの発明もキリスト教社会だからこそあり得たのである。

「銀河鉄道の夜」には天文学、地質学、生物学、化学など自然科学の知識がふんだんに投入されている。また賛美歌320番「主よ、みもとに 近づかん」が歌われ、タイタニック号の犠牲者たちはサザンクロス(南十字星)駅で降りる。ここで十字架のイメージが重ねられている。

しかしジョバンニは病気の母にミルクを持って帰らねばと心を砕いているし、カムパネルラも「おっかさんは、ぼくをゆるしてくださるだろうか」と常に案じている。この父性母性の絶妙なバランス感覚こそが宮沢賢治の真骨頂なのではないだろうか。ところが松本零士は「銀河鉄道999」でキリスト教的要素=厳しい父性を全て取っ払って、マザー(エディプス)・コンプレックスの物語に換骨奪胎してしまった。

さて本題。定期演奏会の感想である。事前に劇団ひまわり版「銀河鉄道の夜」(Bキャスト)DVDを6回鑑賞して臨んだ。いやもう、西村友が作曲した音楽が素晴らし過ぎて心を奪われ、ジョバンニを演じた石川由依(アニメ「進撃の巨人」ミカサの声を担当)の名演にぞっこんになった。

劇団ひまわり版は1時間50分あるので大阪桐蔭版がダイジェストになるのは致し方ないのだが、活版所などジョバンニが銀河鉄道に乗るまでのエピソードと、白鳥の停車場〜プリオシン海岸の場面がすっぽりカットされたのは残念だった。♪大切なことは忘れないこと!♪がなかったのはちょっと寂しい。

オリジナルはピアノ・ヴァイオリン・チェロ・ホルン・クラリネット・ハープ・パーカッションという7人編成だが今回は大編成の吹奏楽版。やっぱり迫力が違う。♪ラッコの上着♪で大太鼓の音がズシンと腹に来た。タイタニック号沈没の場面での♪救い給え、この子らを♪はバス・クラリネット、バリトン・サックスなどの低音群が不気味に響き、実に効果的だった。またこの曲や、僕が大好きなナンバー♪ケンタウルスを追いかけて♪ではステージいっぱいにマーチングが展開され、何と鮮やかだったことか!♪バルドラのサソリ♪では隊列で蠍の姿を表現し、成る程なと感心することしきり。あとサザンクロス駅の場面で背景のスクリーンにKAGAYAが製作したプラネタリウム版「銀河鉄道の夜」が映し出されてびっくりした!

Kagaya

これ、とっても映像が綺麗なんだ。ただプラネタリウム版が痛いのは音楽が安っぽいこと。でも西村友作曲の方なら全く問題なし。

第2部は両サイドにアイーダ・トランペットを配し、華やかに始まった。「ウィリアム・テル」と全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞した「ポーギーとベス」を(共同)編曲した森田拓夢くんはアルト・サクソフォンを吹く3年生。なお、桐蔭の練習場には最近、梅田先生のアイディアでミラーボールが設置されたそう。

プロコフィエフではチューバとコントラバスによる引き摺るようなリズムが印象的。

「美女と野獣」については最近、面白い発見があった。

桐蔭の演奏はファンタスティックで、一つのメルヘンが感じられた。

そして、「君の名は。」4曲メドレーには甚く感動した。なんて洒落たアレンジだろう!歌が入った♪なんでもないや♪もとっても素敵。また何度でも聴きたい。

そしてクライマックスは「ポーギーとベス」。僕は例年通り55人による全日本吹奏楽コンクール版で演奏するのかと思いきや、最優秀グランプリ/文部科学大臣賞を受賞した大人数による日本管楽合奏コンテストバージョンだった。吹コンでは金賞を受賞したものの、冒頭でクラリネットが「ピャッ!」と奇声を発したり、♪サマータイム♪でフリューゲルホルンのソロが出だしをミスったりと幾つかの瑕があった。しかし今回のフリューゲルホルンはパーフェクトだったし、吹コンよりさらに進化していたので、心底驚嘆した。振付が入ったり、最後の♪Oh Lawd, I'm On My Way♪では合唱が入ったりと最高に愉しい!

僕が桐蔭の演奏を初めて聴いたのは2007年全日本吹奏楽コンクール@普門館のドビュッシー「海」だった。2009年に全国大会で初めて金賞を受賞したオルフ「カルミナ・ブラーナ」も普門館で聴いた。そして自信を持って断言しよう。今回の「ポーギーとベス」こそ、創部以来のベスト・パフォーマンスであると。梅田先生はワーグナーやプッチーニ、エルガーなどクラシック音楽を指揮される時よりも、JAZZやROCKの方が生き生きしているし、冴えている。「ポーギーとベス」はなんかもう突き抜けていた。ちゃんとブルースしているし、リズムのセンスやグルーヴ感が抜群なんだ。レナード・バーンスタインもオペラ的な「キャンディード」よりJAZZYな「ウエストサイド・ストーリー」の方が断然いい。梅田先生、是非これからもこの路線で突っ走ってください。

またアンコールの「銀河鉄道999」について、僕は毎年定演のレビューで「照明が暗すぎる。これでは生徒さんの顔が識別できない」と文句を書き続けてきた。ところが今回、前奏が終わるとステージが明るくなったのである!「星に願いを」も美しかったし、今年の照明スタッフは本当に素晴らしかった。あとバルーンの銀河鉄道がホールを斜めに駆け上る演出もジーンとしたなぁ。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部✕劇団ひまわり/ミュージカル「銀河鉄道の夜」

2016年に全日本吹奏楽コンクールで金賞(自由曲はガーシュウィンのオペラ「ポーギーとベス」より)を受賞した大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の定期演奏会は2月19(日)、20(月)に開催される。

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チケットはe+で購入できる(こちら)。e+はシステム利用料や発券手数料などが掛かる。だから嫌だな〜困ったな、どうしよう?と思案していたのだが、今回携帯電話に直接ダウンロードするスマチケを試してみてしてびっくりした。なんと一切中間搾取なし、正規入場料金2,000円ポッキリで購入出来た。これは便利!

さて定演のチラシには第1部でミュージカル「銀河鉄道の夜」が上演されるとある。2年前に大阪桐蔭が上演した創作ミュージカル「河内湖」はハッとするくらい完成度が高かった(その時のレビューはこちらに書いた)。今度の作品はどんなだろうと早速調査を開始、詳細が判明した。元々は劇団ひまわりが2008年に上演したミュージカルで、劇団のオンラインショップで4,000円+送料を支払えばDVDを購入出来るらしい。早速注文した。

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作詞・脚本・演出は中島透、作曲・指揮は西村友が担当。オリジナル版はピアノ・ヴァイオリン・チェロ・ホルン・クラリネット・ハープ・パーカッションという7人編成による室内オーケストラである。

西村友は2016年度吹奏楽コンクール課題曲III 《ある英雄の記憶~「虹の国と氷の国」より》を作曲している。そして大阪桐蔭はこの課題曲で全国大会に臨み、を獲った。

劇団ひまわり「銀河鉄道の夜」(Bキャスト)の配役は以下の通り。

ジョバンニ:石川由依 カムパネルラ:熊本野映 カオル:宮原理子 タダシ:野本ほたる ザネリ:松村理子 カトウ:鈴木愛吏 マルソ:田中瞳佳

石川由依って何だか聞き覚えのある名前だな、と調べて仰天した。なんとアニメ「進撃の巨人」でミカサ・アッカーマンの声を担当している人じゃないですか!歌も上手い。石川は兵庫県生まれで6歳の時から劇団ひまわりの大阪俳優養成所に所属し、後に上京したという。

透明感があってpure、大変出来のよいミュージカルである。特に音楽は、例えば劇団四季のオリジナル・ミュージカル(李香蘭、異国の丘、夢から醒めた夢、ドリーミング)と比べても、断然「銀河鉄道の夜」の方が優れている。これは是非生の舞台を観たいと想った。

因みにアニメーション映画「君の名は。」で国民的作家となった新海誠監督(本名・新津誠)の娘・新津ちせは劇団ひまわりに所属しており、神木隆之介くん主演の実写映画「3月のライオン」に川本モモ(三女)役で出演する(詳細はこちら)。

僕の「銀河鉄道の夜」の原体験は杉井ギサブロー監督によるアニメーション映画(1985年、毎日映画コンクール・大藤信郎賞受賞、文部省特選)である。登場人物の大半が猫に仕立てられている(但し、タイタニック号の犠牲となった姉弟とその家庭教師は人間の姿)。静謐で質の高い作品なので僕は好きだが、「なんで猫やねん!」と非難の声が上がっていることも事実だ。そこが映像化の難しさで、ジョバンニとカムパネルラという名前の少年を果たして日本人として描くのか?という問題が生じる。かといって名前から想定してイタリア人にする?それでいいのかという話である。なお、このアニメで音楽を担当した細野晴臣の祖父(細野正文)は日本人唯一のタイタニック号乗船者で、無事生還した。

宮沢賢治が書いたこの童話は非常に多くの信奉者/追随者を産んだ。その代表例が「銀河鉄道999」だろう。

上記事にも書いたが「銀河鉄道の夜」のジョバンニとカンパネルラの関係は、賢治と亡くなった妹・トシのそれを彷彿とさせる。宮沢賢治はシスター・コンプレックスの作家だと言うことが出来る。それを松本零士は換骨奪胎してマザー(エディプス)・コンプレックスの作品に創り変えた。

臨床心理学者・河合隼雄は中沢新一との対談本「ブッダの夢」の中で次のように語っている。

 『銀河鉄道の夜』を読んで面白いのは、はじめ、母と息子の物語として出発するんですね。だから、ある意味では、ずっと母性が底流にあるんです。あるんだけれども、チェロのような声をした男の声が聞こえてくるって。最後はしかも、お父さんの帰ることをお母さんに知らせなくちやっていうところで終わります。つまり、非常に厳しい父性もあの中にずっと入ってるんですね。銀河を書いたりする時に、非常に科学的な言葉や客観的な描写が出てきたり、同時に、また母性的なものもあるわけでしょう。
 ところがね、『銀河鉄道999』という漫画は完全におかあちゃんの話になっています。

作曲家・吉松隆と「銀河鉄道の夜」の関係については以前言及した。

この後、吉松は『オホーツク挽歌』『星めぐりの歌』『銀河鉄道の夜』『手紙』をモチーフにした、(左手の)ピアノとチェロと朗読による「KENJI・・・宮澤賢治によせる」を作曲している。吉松は2歳年下の妹をガンで亡くした。彼女の病床で作曲したのがサイバーバード協奏曲である。その想いが賢治とトシの関係に繋がっているのだろう。

シンセサイザーによる「惑星」で一世風靡した故・冨田勲が初音ミクとタッグを組んだ「イーハトーヴ交響曲」は第4楽章が『銀河鉄道の夜』である。因みに冨田は映画「風の又三郎」(1989)でも音楽を担当している。

またももいろクローバーZ主演で本広克行が監督した映画「幕が上がる」には高校演劇部が上演する劇中劇として「銀河鉄道の夜」が登場する。

さらに岩井俊二監督「リップヴァンウィンクルの花嫁」と「銀河鉄道の夜」の関係性については下記事に書いた。

ここまでお読みになった方には「銀河鉄道の夜」の影響力の大きさが少しはお判り頂けたのではないかと想う。大阪桐蔭のパフォーマンスが今から愉しみで仕方がない。

最後に、梅田隆司先生にお願いを2つしたい。

  1. 定演で大阪桐蔭の演奏する「前前前世」をどうしても聴きたいので、不確実要素のある【リクエスト・コーナー】ではなく、是非正規プログラム(あるいはアンコール)に入れてください。
  2. 全日本吹奏楽コンクールの「ポーギーとベス」を聴いて、大阪桐蔭がミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」の音楽を演奏したら最高にクールなパフォーマンスになると確信しました。お忙しいのは存じておりますが、まずは騙されたと思って映画をご覧になってみてください。絶対に後悔はさせません。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 サンタコンサート 2016 & 全日本吹奏楽コンクール「ポーギーとベス」の感想

12月17日(土)、5歳の息子を連れて大阪ビジネスパーク TWIN21アトリウムへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のサンタコンサートを聴く。指揮は梅田隆司先生。

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まず最初にマーチングのパフォーマンスあり。

  • 歌劇「アイーダ」凱旋行進曲
  • 映画「スター・ウォーズ」メドレー
  • ミュージカル「キャッツ」メドレー

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続いて座奏に移り、子ども向けのコンサートが始まる。

  • ジングル・ベル
  • 映画「ライオンキング」メドレー
  • 映画「となりのトトロ」さんぽ、となりのトトロ
  • 映画「ハウルの動く城」世界の約束
  • 魔法使いプリキュア!
  • 動物戦隊ジュウオウジャー
  • 赤鼻のトナカイ

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すでに息子には大阪四季劇場でミュージカル「ライオンキング」と「キャッツ」を観せているので、今回はすごく興味を持って目をキラキラさせながら聴いていた。この日は他にキッズプラザ大阪(コーイチシェフのスイーツ工房に参加)とか公園にも行ったのだが、「みんな愉しかった!」とご機嫌だった。

さて、大阪桐蔭は今年、全日本吹奏楽コンクールで5年ぶりに金賞に輝いた(前回は2011年、自由曲はワーグナーの楽劇「ワルキューレ」)。僕は2016年度の金賞団体を集めたBlu-ray Discで鑑賞した。心が震えるくらい素晴らしかった!

銀賞に終わった2014年の自由曲「キャンディード」や2015年の「蝶々夫人」を聴いたときは「何か違う」と喉に骨が引っかかったような想いを最後まで払拭出来なかった。硬いというか萎縮しているというか……。僕は原曲であるミュージカル「キャンディード」やオペラ「蝶々夫人」の舞台を観ているのだが、桐蔭の演奏から元々の歌("Make Our Garden Grow"や”ある晴れた日に”)を残念ながら連想出来なかった。曲(アレンジ)が吹奏楽に合っていなかったというのもあるだろう。

しかし今年の自由曲ガーシュウィンの歌劇「ポーギーとベス」(建部知弘・森田拓夢 編)は水を得た魚という表現がピッタリで、見違えるようだった。まずサウンドが垢抜けている(英語で言えばsophisticated)。スポーンと抜けるような青空が眼前に広がるのだ。また”サマータイム”のフリューゲルホルンや、”いつもそうとは限らない(It Ain't Necessarily So)”のトロンボーン・ソロはアンニュイな(気怠い)感じが凄く出ていて、「これぞブルース!」と快哉を叫びたくなった。そこには伸びやかな歌があった(実際に練習時に歌ったのでは?)。現在の桐蔭はストコフスキーやオーマンディ時代の「フィラデルフィア・サウンド」に一番近いのではないかとすら感じられた。これだけ洗練されたジャズの音が出せるのなら、ミシェル・ルグランが作曲したミュージカル映画「ロシュフォールの恋人たち」の音楽(特に”キャラバンの到着”!)なんか、最高に似合っているんじゃないだろうか?(視聴はこちら)因みにこの曲は宮川彬良の卓越した吹奏楽アレンジがある。また今度のアカデミー賞で歌曲賞と作曲賞を受賞するのは100%間違いない、ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」の音楽(作曲は「セッション」のジャスティン・フルビッツ)も将来是非、大阪桐蔭の演奏で聴いてみたいと、ここで熱くリクエストしておく(公式サイトはこちら、お洒落なこちらのミュージック・クリップもどうぞ)。イントロを聴いた瞬間に判る、「ロシュフォールの恋人たち」への鮮烈なオマージュだ(でも、ちっとも模倣じゃない)。閑話休題。

コンクールの話題に戻るが、桐蔭が選んだ課題曲はIII:「ある英雄の記憶 」(西村友)。ゲーム(RPG)とか大河ドラマの音楽を彷彿とさせる。こちらも非常に物語性が感じられる充実した演奏だった。

2月に開催される定期演奏会で「ポーギーとベス」が演奏される筈なので、生で聴けるのが今からもの凄く愉しみだ。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部@宝塚音楽回廊

10月8日(土)宝塚市末広中央公園へ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の演奏を聴く。

宝塚音楽回廊のHPはこちら(写真あり)

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曲目は、

  • 歌劇「アイーダ」より凱旋行進曲
  • ミュージカル「ラ・マンチャの男」セレクション
  • スター・ウォーズ・サーガ
  • ミュージカル「キャッツ」より
  • 銀河鉄道999

作曲家/編曲者とか、メドレーの曲順とかは下記事に詳しく書いたのでご参照あれ。

桐蔭はステージ用のひな壇を持参して来ていて、前のアーティストが演奏を終えると、生徒たちが手早く準備を始め瞬く間に完成。プロの技だね!

因みにここは今年も関西代表として全日本吹奏楽コンクールに出場するのだが、名古屋国際会議場での本番は10月23日(日)。あと2週間しかない。しかも翌9日もNHK大阪ホールで演奏を披露するという。何ともハード・スケジュールだ。

梅田隆司先生によると現在部員数181人。今年は何故かマーチングコンテストには参加しなかったみたい。

マーチングもあり、サラウンド効果で吹奏楽の演奏を堪能した。本当は今年桐蔭が吹奏楽コンクール自由曲で演奏するガーシュウィン(建部知弘 編):歌劇「ポーギーとベス」より も是非聴きたかったのだけれど、それは今度の定期演奏会当日までのお楽しみということで。大好きな楽曲なので、コンクールでの皆さんの健闘を祈っています。Good luck !!

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