吹奏楽

巨星墜つ〜追悼・丸谷明夫が日本の吹奏楽に残した功罪

「丸ちゃん」の愛称で親しまれた淀川工科高等学校吹奏楽部顧問・丸谷明夫先生が2021年12月7日にお亡くなりになった。享年76歳、死因は膵頭部がん。定年退職後、淀工での肩書は「名誉教諭」となっているが、実質的には無給で吹奏楽部の指導をされていた(確か月刊誌「Wedge/ウエッジ」の記事で読んだ)。

淀工退職後は大阪音楽大学で吹奏楽の特任教授を経て客員教授となった。また2013年5月から21年5月まで全日本吹奏楽連盟の理事長を務めた。

DVD「淀工吹奏楽日記 スペシャルエディション 丸ちゃんと愉快な仲間たち」には1999年頃に乳がんの手術をして退院した時の様子が記録されている。

丸ちゃんは大阪工業大学を卒業し教員免許を取得、淀工では電気科の授業を担当。つまり専門的音楽教育は受けていない。

全日本吹奏楽コンクールに41回出場、32回金賞受賞。いずれも史上最多記録である。

僕は丸ちゃんのことを吹奏楽指導者として、そして指揮者として深い尊敬の念を抱いている。しかし一方で、「それってどうなの!?」と苦々しく思う側面もあった。だから一時期は淀工のグリーンコンサート(3年生卒業コンサート)に毎年通い、サマーコンサートや普門館での全国大会の演奏も聴いたし、丸ちゃんを慕うプロのオーケストラ楽員が年に1回集う「なにわ《オーケストラル》ウィンズ」の演奏会にも毎年足を運んだのだが、全日吹連・理事長就任以降は距離をおいていた。

一般に日本では「死者の悪口は言ってはいけない」とされている。しかし「丸谷先生は本当に偉大な人でした」と褒め称えるだけなのも違うと思うのだ。人を愛するとは、その人の長所も欠点も全部ひっくるめて受け止めること。だから僕は良いことも悪いことも、包み隠さず書きたい。今まで秘めていた想いをぶちまけよう。それこそが真の追悼だと信じる。

丸ちゃんの基本的行動原理は「淀工の生徒に絶対悲しい思いをさせたくない。彼らが幸せだったらそれで良い」であると見受けられる。それは教師として正しかったろう。だが全日本吹奏楽連盟の理事長時代(2013-20年度)に断行されたルールの改定には首を傾げざるを得ない。はっきり言う。日本の吹奏楽にとっては明らかな後退だった。

まずマーチングコンテスト。2013年度から全国大会での演奏人数は、先導役のドラムメジャーを含めて81人以内と改定された。それまでは人数制限がなく、100人以上出場する学校も沢山あったが、運営上何の問題もなかった(僕は何度も大阪城ホールで大会を観ている)。どうして制限を設ける必要があるのか、正当な理由などない。それまで金賞の常連校だった大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の梅田隆司先生は「全員でやることに意味がある」と考える方なので、これを契機にコンテスト出場を止めてしまった。

また全日本吹奏楽コンクールには嘗て「三出休み」という制度があった。全国大会に3年連続出場した団体は、翌年お休み(コンクールに出られない)という仕組みである。これにより、同じ団体ばかり毎年出場するという事態を阻止し、他の団体にもチャンスが与えられた。意外にも強豪校がお休みの年に棚ぼたで全国大会に出場した学校が、金賞の栄冠に輝くこともあった。しかし1994~2012年の間 あった「三出制度」も2013年度から廃止された。その結果、淀工は2011年から19年まで9年連続で全国大会に出場し続けることになる(2020年は新型コロナ禍でコンクール自体が中止となった)。「三出制度」がなくなってから全国大会高校の部の出場校は毎年同じような顔ぶればかりになり、詰まらないものに成り下がった(中学の部は先生の転勤があるので、常連校というのは稀)。

丸ちゃんは若い頃、コンクールの自由曲でイベールの『寄港地』やヴェルディの『シチリア島の夕べの祈り』などを取り上げ銀賞に終わることもあったが、1995年からラヴェル『ダフニスとクロエ』第2組曲→スペイン狂詩曲→大栗裕『大阪俗謡による幻想曲』という鉄壁の3曲ローテーションを開始以降、21大会連続金賞受賞という破竹の快進撃を続けた。なお2005年以降はスペイン狂詩曲も外れて2曲ローテーションになった。

確かにこのやり方なら、安定して高評価を得られるだろう。しかし他の団体も皆真似し始めたらどうなる?コンクールは同じ曲の繰り返しで明け暮れ、新曲がお披露目される機会もなくなり、吹奏楽の発展は閉ざされてしまう。それは即ち「吹奏楽の死」を意味する。実際に丸ちゃんの手法を真似する指導者がちらほら現れ始めている。そこで提案なのだが、「同一団体が同じ自由曲で出場するのは5年間禁止」とかいった新たなルールを設けたらどうだろうか?

また、全日本マーチングコンテストにいたっては、淀工が演奏する曲目は毎年同じ。コンテ(マーチングの動きを記したもの)も寸分違わず、毎年金賞を受賞していた。そのことを吹奏楽掲示板等で非難されると、擁護派は「曲は同じでも演奏する生徒は毎年変わるのです」という定型文を常時書き込んだ。

さて、後半は丸ちゃんの功績を讃えよう。

まずは指導者・指揮者としての素晴らしさ。「マーチの丸谷」と呼ばれ、行進曲を振らせたら彼の右に出るものはプロの指揮者を含め、世界中探してもいなかった。唯一無二。

丸ちゃんが引き締まったテンポで振るマーチは躍動感とワクワク感に満ちている。行進曲の構成は基本的にA-B-A'の三部形式が多い。比較的静かな中間部Bを経てA'パートが戻った時、丸ちゃんは最初よりも少しだけテンポを速める。この微調整が聴き手に興奮をもたらす。ちなみに2005年以降、コンクールの課題曲はすべてマーチを選択している。

全日本吹奏楽コンクールにおける淀工の『大阪俗謡による幻想曲』と『ダフニスとクロエ』は、やはり絶品だった。キレッキレのリズム、一糸乱れぬ鉄壁のアンサンブル、研ぎ澄まされ、洗練された音色。幅広いダイナミックス(強弱法)、そして弱音ppの美しさ!プロも真っ青である。神業と言っていい、至高のレベルに達していた。

あと忘れ得ぬ名演としてアルフレッド・リード作曲『アルメニアン・ダンス Part 1』とパーシー・グレインジャー作曲『リンカンシャーの花束』を挙げておきたい。

『アルメニアン・ダンス』について丸ちゃんは「吹奏楽にとっての、ベートーヴェン『運命』のような存在にしたい」という夢を常々語っていた。つまり、一般人の誰もが知っている名曲という意味である。僕は一般公募により丸ちゃんの指揮、大阪城ホールで、この曲を演奏したことがある。かけがえのない大切な想い出だ。

コンクールの「三出制度」があった時代、出場出来ない年にまる1年掛けて丸ちゃんが1音1音慈しむように練り上げた楽曲が『リンカンシャーの花束』。2月に開催される3年生の卒業演奏会「グリーンコンサート(通称グリコン)」でお披露目された。素朴でどこか懐かしく、しみじみと心に響く音楽。そしてちょっぴり寂しい。僕は丸ちゃんの指揮で初めて生で聴き、大好きになった。難易度は決して高くないので、吹奏楽コンクールでは一度も演奏しなかった。しかし丸ちゃんが心から愛した珠玉の作品だ。

丸ちゃんが指揮する『アルメニアン・ダンス Part 1』と『リンカンシャーの花束』のCDなら、なにわ《オーケストラル》ウィンズか、東京佼成ウインドオーケストラの演奏をお勧めしたい。後者のアルバム「マルタニズム」はSpotifyなど定額制音楽配信サービスで聴くことが出来るし、映像付きBlu-rayも発売されている。

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あと丸ちゃんの功績として絶対に忘れてはならないのが日雇い労働者の街、あいりん地区(大阪市)で毎年開催してきた「たそがれコンサート」のことである。これをDVD「淀工吹奏楽日記 丸ちゃんと愉快な仲間たち」で知ったときは衝撃を受けた。そして僕も実際に現地に足を運んでレポート記事を書いた。

教育者としての真髄、ここにあり。

丸谷先生、本当に色々有難うございました。どうぞ安らかにお眠りください。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部「全国大会練習会・金賞報告演奏会 in 伊丹」

10月31日(日)、東リ いたみホール(伊丹市立文化会館)へ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の演奏会を聴く。

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プログラムの内容は、

・梅田隆(脚本)、西村友(作曲):創作ミュージカル『OGATA洪庵の妻』(抜粋版)
・LiSA(作詞)、梶浦由記(作詞/作曲):映画「鬼滅の刃 無限列車編」より『炎』
・『松田聖子』メドレー(青い珊瑚礁〜赤いスイートピー〜SWEET MEMORIES〜夏の扉)
・ジョゼッペ・ヴェルディ:歌劇「アイーダ」より凱旋行進曲
郷間幹男:TOINファンファーレ(大阪桐蔭高校応援歌)
・ジョン・ウィリアムズ:映画「スター・ウォーズ」よりメインテーマ
・ミシェル・ルグラン:映画「ロシュフォールの恋人たち」より『キャラバンの到着』
・高昌帥(コウ・チャンス):吹奏楽のための協奏曲
・桑田佳祐:炎の聖歌隊[Choir]
・YOASOBIメドレー(ラブレター〜郡青)
・リクエストコーナー

僕が初めて梅田隆司 先生(指揮)/大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の演奏を聴いたのは2007年、“吹奏楽の甲子園”=普門館だった。あれから14年経った。

第55回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 前編 2007.10.25

ガーシュインの「ポーギーとベス」を自由曲に選んだ2016年以来、5年ぶりに全日本吹奏楽コンクールで金賞に返り咲いた大阪桐蔭吹部は間もなく日本管楽合奏コンテストに臨むということで、その予行演習も兼ねたコンサートである(そして11月7日に開催されたコンテストで「最優秀グランプリ賞」「文部科学大臣賞」「観客最多投票賞(後半の部)」を受賞した)。

英雄とは誰か?という問いから始まるミュージカル「OGATA洪庵の妻」は今年の定演で初演されたが、学校関係者以外は有料動画配信で観るしかなかった。下記記事でその詳しい内容紹介と、作品の構造分析をした。

創作ミュージカル「OGATA浩庵の妻」が凄い!〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2021(今年は保護者以外動画配信のみ) 

元々上演時間60分の作品だが、今回は抜粋版として37分位に縮められた。カットされた主な場面は以下の通り。

①緒方洪庵が開設した「適塾」と華岡青洲 の「合水堂」門下生との喧嘩(明治時代における“バンカラ”精神みたいなもの。現代の俗語で言えば“ヤンチャ”か)。
②1869年長州藩・大村益次郎が刺客に襲われ足の傷から敗血症となり死亡。その際「切断した足を洪庵先生の墓傍に埋めてほしい」と遺言を残した。

前にも書いたが緒方洪庵は天然痘に対する種痘を広めた医師なので、本作は新型コロナ禍でワクチン接種が進む今日の世界の状況に合致しているのが見事。

兵庫県丹波篠山市出身の心理学者で京大教授、文化庁長官も務めた河合隼雄が書いた「母性社会日本の病理」という名著がある。

Bosei

平安時代に書かれた「源氏物語」を読めば分かる通り、古来より日本は(全てを呑み込むような包容力を持ち、自己と他者の境界が曖昧になる)〈母性原理〉が支配的な社会であった。そこに異質な(切断し、他者との対立構造を明確にする)〈父性原理〉を持ち込んだのが武家社会である。最近では“侍ジャパン”などと武士道をもてはやし、これぞ「日本人の心」だと言ったりする輩もいるが、江戸時代に支配階級であった武士は全人口のたった7%に過ぎない。85%は百姓、つまり農民である。ここを錯覚してはいけない。

ミュージカル「OGATA洪庵の妻」は生涯に13人の子供を生んだ八重という〈母〉を主人公に据え、〈父性原理〉で動いてきた幕末から明治維新にかけての時代を、〈母性原理〉という視座から捉え直そうとした意欲作なのではないか?そう今回観劇しながら思った。

それは〈父性原理〉に立脚したキリスト教(父・子・聖霊から成る三位一体に女性は介在しない)への信仰を背景に持つ宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を換骨奪胎し、〈母性原理〉の漫画に仕立てた松本零士「銀河鉄道999」の手法を彷彿とさせる。詩「永訣の朝」に込められた妹トシへの想いでも明らかなように宮沢賢治は〈シスター・コンプレックス〉の作家だが(ジョバンニ↔カムパネルラの関係性)、「銀河鉄道999」のメーテルは〈マザー・コンプレックス〉が生み出した偶像である。

松本零士「銀河鉄道999」とエディプス・コンプレックス〜手塚治虫/宮﨑駿との比較論 2016.07.07

最近、大阪桐蔭吹部がYou Tubeにupした、アニメーション映画「竜とそばかすの姫」(U)の細田守監督は日本テレビ「世界一受けたい授業」に出演し、“絶対に観てほしい5つのアニメ”を紹介した。その中で高畑勲監督「赤毛のアン」や宮崎駿監督「ルパン三世 カリオストロの城」と並んで彼が挙げたのが、りんたろう監督「劇場版 銀河鉄道999」である。そして「竜とそばかすの姫」は正に女子高校生の主人公が〈母性〉に目覚め、鉄道に乗って窮地に陥った“鉄郎”を救出に行く物語であった。

 竜とそばかすの姫 2021.08.10

併せて、数々の漫画賞を受賞したよしながふみの大傑作『大奥』をお勧めしたい。〈父性原理〉の江戸武家社会を男女逆転という仕掛けで女性の目から見直すという姿勢が「OGATA洪庵の妻」に通ずるところがあるし、安政の大獄における橋本左内斬首の場面もある。また若い男子にのみ感染するという日本の奇病「赤面疱瘡(あかずらほうそう)」を設定し、弱毒株発見により種痘法を確立するまでの過程がリアリティを持ってスリリングに描かれている。

さて、映画「鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌『炎』はレコード大賞に輝いたわけだが、作曲した梶浦由記の作品中、僕が一番好きなのは「魔法少女まどか☆マギカ」の劇伴音楽。劇場版「[新編]叛逆の物語」のエンディングで流れた、彼女が作詞・作曲した『君の銀の庭』も素敵だった。

「魔法少女まどか☆マギカ」を語ろう! 2012.03.14
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劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語 2013.10.27

ヴェルディ「アイーダ」ではアイーダ・トランペットが6本登場した。

松田聖子に関して鮮明に憶えているのは大学に合格した1985(昭和60)年4月に大林宣彦監督「さびしんぼう」を映画館に観に行った時、併映が松田聖子・神田正輝主演の「カリブ・愛のシンフォニー」だったこと。シネコンがなかった当時は2本立て興行というのが普通だった。しかし僕は聖子が嫌いだったので「さびしんぼう」だけ観て帰った。この年の6月に聖子・正輝は結婚、翌86年に神田沙也加が生まれる。沙也加が初舞台を踏むのが2004年、スティーブン・ソンドハイム作詞・作曲、宮本亜門演出のミュージカル「INTO THE WOODS」の赤ずきんちゃん役で、僕はこれを東京・新国立劇場で観ている。彼女は17歳だった。ディズニー・アニメ「アナと雪の女王」日本語吹き替え版のアナの歌唱も見事だったし、最近では「マイ・フェア・レディ」のイライザ役も輝いている。というわけで聖子に対しては沙也加という素晴らしいミュージカル・スターを生んでくれたことに感謝する。

「スター・ウォーズ」の作曲家ジョン・ウィリアムズがウィーン・フィルを初めて指揮したのは2020年1月18日と19日だった。このライヴ・レコーディングはCDのみならずBlu-rayも発売され、「レコード芸術」誌においてレコード・アカデミー賞に輝いた。そしてつい先日、2021年10月16日にジョンはベルリン・フィルを振った(「デジタル・コンサートホール」で鑑賞)。彼がこの街を訪れるのはなんと今回が初めてだそうで、ベルリン市民の熱狂的な歓迎ぶりが凄かった(我が国にはボストン・ポップス・オーケストラの常任指揮者として数回来日している。僕も「ジュラシック・パーク」が公開された1993年に旧フェスティバルホール@大阪にて2日連続で聴いた)。コンサートの始まりでジョンがステージに登場するだけでスタンディングオベーションの嵐。1曲終わるごとに総立ちの拍手喝采で、彼が「これから『ハリー・ポッター』の音楽を3曲続けて演奏します」とアナウンスしても曲間のスタンディングをやめない。コンサートの半ば、ジョンが「現在イギリスのスタジオでハリソン・フォードが『インディー・ジョーンズ5』を撮影中で、私もこのコンサートを終えたらロサンゼルスに戻って早速作曲に取り掛かる予定なんだ」と語るとベルリンの聴衆の興奮は頂点に達した。ジョンは現在89歳と高齢だが、椅子に座ることもなく最後まで立って指揮する姿はとても元気そうで安心した。

ミシェル・ルグランの『キャラバンの到着』を久しぶり(2年ぶり?)にゴージャスな桐蔭サウンドで聴けて大・大・大満足。ホーン・セクションが唸り、特にトランペットとトロンボーンのソロがごっつかった。キレッキレの演奏で爽快!ルグラン・ジャズに痺れた。もう『銀河鉄道999』同様、毎回聴きたい。

高昌帥『吹奏楽のための協奏曲』は2021年10月24日(日)に名古屋国際会議場で開催された全日本吹奏楽コンクールで大阪桐蔭が自由曲として選曲し、金賞に輝いた。関西代表の他の2校は銀賞に終わった。コンクールは55人の人数制限があるが今回は全員での演奏。「全員でやることに意味がある」と梅田先生。この信念に基づき、全日本マーチングコンテストも人数制限が設けられた2013年から出場をやめた。

高昌帥は桐蔭の創作ミュージカル「河内湖」の作曲家でもある。

創作ミュージカル「河内湖」初演!〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2015 2015.02.18

『吹奏楽のための協奏曲』は言うまでもなくハンガリーの作曲家バルトーク・ベーラの『管弦楽のための協奏曲』(Concerto for Orchestra)を踏まえたタイトルだ。演奏家の間では“オケ・コン”という略称で親しまれている。ポーランドの作曲家ルトスワフスキにも同名の名曲がある。またコダーイも『管弦楽のための協奏曲』を書いているのだが(初演は同郷のバルトークより前)、こちらは滅多に演奏されない。バルトークのオケ・コンは随所に管楽器がソロやデュオとして大活躍する場面が用意されている。その特徴が顕著なのが次々と各楽器の二重奏が展開される第2楽章“対の遊び”。高昌帥『吹奏楽のための協奏曲』もB♭クラリネットの二重奏→オーボエ二重奏→Esクラのソロ→ホルン→サックスといった見せ場が用意されている。

厳選 管弦楽の名曲ベスト40(+α)はこれだ!

「河内湖」初演のレビューで、僕は冒頭部がミクロス・ローザ(ハンガリー読みでロージャ・ミクローシュ)が作曲した映画「ベン・ハー」序曲みたいだと書いた。藤重佳久/活水高等学校の演奏(2019年全日本吹奏楽コンクール)で初めて『吹奏楽のための協奏曲』を聴いたときも、やはり冒頭部と終結部を飾る金管ファンファーレで「ベン・ハー」の音楽が脳裏に蘇った。何処が似ているんだろう?と熟考した結果、たどり着いた結論は「銅鑼の使い方」である。つまりこの曲は銅鑼が肝なのだ。ところが、今回の桐蔭の演奏ではその銅鑼が全く聴こえなかった。「なんたること!?」と心底驚いたのだが、どうやらホールに反響板の設置がなく後方に設置されたの楽器の音が前方に届かないという施設上の不具合があったようだ。他に何の不満もないだけに、その点がとても残念だった。次の定期演奏会ではしっかり銅鑼の音をホール全体に響かせてください。余談だが、福岡県の精華女子に続き長崎県の活水中学校・高校吹奏楽部の音楽監督として全国レベルまで実力を高めた九州の名物先生、藤重佳久さんは2020年度で退職されたそうだ。

吹奏楽部の名物先生 《九州篇》 2008.08.27
「吹奏楽の神様」屋比久勲登場!~大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2014@ザ・シンフォニーホール 2014.03.01

YOASOBIが2021年8月9日に配信リリースした『ラブレター』は大阪桐蔭高等学校吹奏楽部がレコーディングに参加しており、またアニメーションのMVが最高なんだ→こちら!歌よし・歌詞よし・伴奏よしと三拍子揃っていてパーフェクト。音楽に対する愛がギュッと詰まっていて胸が熱くなる。

リクエストコーナーで演奏されたのは「アナと雪の女王」「エリザベート」セレクション、ドリカムの『大阪LOVER』、BTS『Dynamite』、会場に招待されていた桂春団治(桂米朝・笑福亭松鶴らと共に“上方落語四天王”とよばれた三代目・春団治は鬼籍に入り、現在は四代目)からのリクエストで美空ひばり『川の流れのように』、そしてDISH//『猫』。

客席からの「エリザベート」のリクエストは意外だったが、このミュージカルは1992年にアン・デア・ウィーン劇場で初演された。ここで初演された作品で有名なのはベートーヴェンの交響曲第5番・6番、ヨハン・シュトラウスの喜歌劇「こうもり」、レハールの「メリー・ウィドウ」などがある。大阪桐蔭は2012年にオーストリアに初の海外遠征をし、ウィーン国立歌劇場で演奏したり、皇妃エリザベートゆかりのシェーンブルン宮殿で野外コンサートを開いた。

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2013!@ザ・シンフォニーホール 2013.02.27

アンコールは定番の『銀河鉄道999(樽屋雅徳 編)』と『星に願いを (ピノキオ)』。桐蔭のスリーナインを聴くまでは帰るわけにいかない。この2年間、コロナ禍でとても辛かったけれど、漸く生演奏に接することが出来て幸せだった。

最後に、今後、大阪桐蔭の演奏で聴きたいのはジェラール・プレスギュルヴィック(作詞・作曲)によるフレンチ・ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」から『世界の王』と『エメ/Aimer』。そしてスティーブン・スピルバーグ監督によるリメイク映画「ウエストサイド・ストーリー」が2021年12月10日より公開されるので(公式サイトはこちら)、久しぶりに梅田先生が指揮されるバーンスタイン(W.J.デュソイト編):「ウエストサイド物語」メドレーを再演して欲しい!2016年定期演奏会でのノリノリのパフォーマンスはグスターヴォ・ドゥダメル/シモン・ボリバル・ユース・オーケストラに匹敵するものだった。はっきり言ってコンクール自由曲の「キャンディード」序曲よりWSSの方が断然良い。

That's Entertainment ! 〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部定期演奏会 2016 2016.02.17

ちなみにドゥダメルはスピルバーグ監督リメイク版映画のサウンド・トラックで指揮している。熱い演奏になっているのは間違いない。

なぜ今「ウエスト・サイド・ストーリー」なのか?という問いに対する答えは既にブログ記事を準備しているので、映画公開直前の12月1日に披露します。乞うご期待。(追記:11月15日にウォルト・ディズニー・ジャパンは「ウエスト・サイド・ストーリー」の公開を予定していた12月10日から、2022年2月11日に延期すると発表した。元々は2020年12月公開と発表され、その後新型コロナウィルス感染拡大で1年延びていただけに、ショックである。なお、米国本国での公開日に変更はないという。一体全体どういうこと!?腹立たしい限りだ。)

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創作ミュージカル「OGATA浩庵の妻」が凄い!〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2021(今年は保護者以外動画配信のみ)

こちらも併せてお読みください。

決定版!フルートの名曲・名盤 20選
・ 聴いておきたい吹奏楽の名曲、ベスト25
 聴いておきたい吹奏楽の名曲、アレンジ編

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 第16回定期演奏会は新型コロナウィルス感染拡大のため、2020年の第15回定期と同様に会場に一般客を入れず保護者のみ入場可として、動画配信となった。詳しくはこちら

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チケットはチケットぴあで販売中、動画配信プラットホーム「ULIZA(ウリザ)」での視聴となった。

ここで不満点を列挙しておきたい。

1)視聴券1,200円のみならず、システム利用料220円が加えて請求される。18%上乗せである。アホらしい。
2)スマートフォンかパソコンでの視聴となり、ソニーのブラビアやシャープのAQUOS(アクオス)など、スマートテレビに対応していないので不便。
3)音質が悪い。特に低音が貧弱。過去に観たことのある大阪桐蔭定期のDVDやBlu-rayの方が良い。

というわけで、次回から動画配信されるときは別のプラットホームを検討して戴きたい。

この定演の模様は日本テレビ『世界一受けたい授業』でも紹介され、浜辺美波が聴きながら涙ぐんでいた(彼女は学生時代に吹奏楽部でフルートを吹いていたそう)。またスタジオからのリクエストで演奏された『レ・ミゼラブル』〜“民衆の歌”のソロを歌った男子生徒に、ミュージカル・スター城田優が、「君、プロになれるよ」と褒め称えた。生徒さんたちにとって特別な体験となっただろう。

僕が初めて梅田隆司 先生(指揮)/大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の演奏を聴いたのは2007年、吹奏楽の甲子園・普門館だった。もう13年以上も前になる。

第55回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 前編 2007.10.25

定期演奏会を初めて聴いたのは10年前だった。

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2011!@ザ・シンフォニーホール 2011.02.23

では今年の定演についてレビューしていこう。第1部は創作ミュージカル『OGATA浩庵の妻』から始まった。これが初演。スタッフは作曲:西村友、振付:洋あおい(元OSK日本歌劇団)、台本・演出・指揮:梅田隆司。幕末の医師・緒方洪庵とその妻が主人公(幕末を扱ったミュージカルとして、かつてスティーブン・ソンドハイム『太平洋序曲』という傑作があった)。3分割画面(スプリットスクリーン)というのが凝っているし、写真・動画やアニメーションまで駆使しているのがザッツ・エンターテイメント!台詞や歌詞が字幕表示されるのもありがたい。至れり尽くせりである。

タイトルから誰しも真っ先に連想するのは有吉佐和子の小説『華岡青洲の妻』だろう。1967年に増村保造監督が映画化し、キネマ旬報ベストテンで第5位にランクインした。若尾文子と高峰秀子が演じた嫁と姑の、火花を散らす対立が実にスリリングであった。華岡青洲は世界で初めて全身麻酔手術(乳がん)を成功させた江戸時代の外科医で、欧米で初めて全身麻酔が行われたのは、青洲の手術の成功から約40年後である。彼は地元(現在の和歌山県)に医塾「春林軒(しゅんりんけん)」を開設し、全国から集った1000人を超える門下生を育てた。また後に大坂(「大阪」と漢字表記が変わるのは明治以降)の中之島に分校「合水堂」を開設し、弟に運営を任せた。

一方、緒方洪庵は医師・蘭学者。現在の大阪市中央区北浜に「適塾」を開いた。門下生には一万円札になった福沢諭吉(大坂・堂島出身、慶應義塾を設立)、大村益次郎(長州藩出身。医師のみならず兵学者としても活躍し、戊辰戦争勝利の立役者となった)、橋本左内(幕末の志士。将軍継嗣問題で一橋慶喜を担ぎ井伊直弼の不興を買って、安政の大獄で斬首の刑に処せられた)、手塚良仙(漫画家・手塚治虫の曽祖父。医師として西南戦争に従軍。九州で赤痢に罹り死去)らがいる。「適塾」は大阪大学医学部の前身であり、手塚治虫は漫画稼業の傍ら阪大医学部を卒業し医学博士となった。手塚の漫画『陽だまりの樹』は手塚良仙が主人公である。

『OGATA浩庵の妻』は台本が凝っていて、最初にショパン『英雄ポロネーズ』がピアノで演奏され、「英雄とは誰だ?」という問いが発せられる。その答えとしてまずショパンが生まれた1810年に全盛期だったナポレオンが挙げられ、さらにショパンと同年に生まれた緒方洪庵の話へと移る。ショパンは結核(細菌)で倒れたが、浩庵はやはり感染症である天然痘ウィルス治療に貢献した。ここで「何故、いま浩庵なのか?」という疑問が解ける。彼は天然痘撲滅のために大坂に「除痘館」を開き、種痘(予防接種)を始めた。これは新型コロナウィルス禍に苦しむ現在におけるワクチン接種に相当する。つまり構造が同じなのだ。

冒頭に演奏されるのが2016年全日本吹奏楽コンクール課題曲III:「ある英雄の記憶 」(西村友)。大阪桐蔭はこれで全国大会金賞に輝いた。NHK大河ドラマの音楽みたいで格好いい。

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 サンタコンサート 2016 & 全日本吹奏楽コンクール「ポーギーとベス」の感想 2016.12.21

大阪桐蔭吹奏楽部の高校生がひょんなことから幕末の1857年にタイムスリップする。ここまでは漫画『信長協奏曲』とか『群青戦記』『JIN -仁-』など、よくある設定だ。特に『JIN -仁-』の主人公(医師)は江戸の西洋医学所で緒方洪庵に出会うので関係性が深い。しかし梅田先生が執筆した台本が極めてにユニークなのはここからである。主人公の高校生は何故か30年間の眠りにつき、1886年に目覚める。浩庵の妻・八重が亡くなる年だ。八重が30年間の思い出を語る。「適塾」と「合水堂」門下生の喧嘩、58年安政の大獄と橋本左内の死、60年桜田門外の変、66年薩長同盟締結、67年長州征討と大政奉還、68年江戸城無血開城、そして69年長州藩・大村益次郎暗殺に至る。するとそこから八重の思い出話は再び過去に遡り、49年洪庵が「除痘館」を開設したエピソードへ。そして最後は86年八重の告別式となる(洪庵の亡霊が八重を迎えに来てウィーン・ミュージカル『エリザベート』のフィナーレを彷彿とさせる)。

巨視的な作品である。また大阪の歴史が分かり勉強になるという点で、やはり梅田先生が台本を書かれ大阪桐蔭定演で初演された創作ミュージカル『河内湖』に通じるものがある。

創作ミュージカル「河内湖」初演!〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2015 2015.02.18

歴史は過去→現在→未来という具合に、出来事の起こった順番に〈通時的〉に語られるのが普通である。しかし『OGATA浩庵の妻』の手法は違う。時間は行ったり来たり複雑に錯綜する。これをソシュール(1857−1913)の言語学で〈共時的〉と言う。過去・現在・未来は同時にここにあるのだ。同じことをアンリ・ベルクソン(1859-1941、フランスの哲学者)の逆さ円錐モデルを用いて説明しよう。これをフランスの哲学者ジル・ドゥルーズ(1925-1995)は彼の著書『シネマ』の中で〈結晶(時間)イメージ〉と呼んだ。

B

上図・円錐の全体SABが洪庵の妻・八重の記憶に蓄えられたイマージュの総て(=結晶)。頂点Sが純粋知覚の場、感覚ー運動の現在進行形(ing)であり現動的。つまり目撃者となる高校生の主人公(=観客)の知覚である。平面Pは現在彼がいる世界そのもの。A"B"が幕末期〜明治維新に起こった出来事の記憶、更に遡ったA'B'は洪庵が「除痘館」 で種痘を始めた頃の記憶。過ぎ去り、死に向かう現在(S)と、保存され、生の核を保持する過去(A'B',A"B",A'"B'",……)は絶えず干渉しあい、交差しあう。主人公の少年(平面P)はこの円錐(八重の記憶)の中を自由に過去へと飛翔し、また戻ってくるのである。

この仕組/構造(structure)はフェデリコ・フェリーニ監督の映画『8 1/2』と同じであり、フェリーニの次の言葉がその本質を的確に教えてくれる。

「我々は記憶において構成されている。我々は幼年期に、青年期に、老年期に、そして壮年期に同時に存在している。」

共時的構造を持つ映画はそんなに多くない。非常に珍しいと言って良い。参考までに『8 1/2』以外の代表例を挙げておくと、イングマール・ベルイマン監督『野いちご』、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『メッセージ』(Arrival)、大林宣彦監督『はるか、ノスタルジィ』『さびしんぼう』『異人たちとの夏』『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』などがある。舞台ミュージカルになると更に稀で、スティーブン・ソンドハイムの『メリリー・ウィー・ロール・アロング』と、『8 1/2』を原作とする『NINE』(城田優主演版が現在DVD発売中)、そしてトニー賞で最優秀ミュージカル作品賞を受賞した『ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』くらいか。

『OGATA浩庵の妻』は西村友の楽曲の良さも特筆に値する。僕は彼が劇団ひまわりのために作曲したミュージカル『銀河鉄道の夜』が大好きで(アニメ『進撃の巨人』ミカサ役の声優として知られる石川由依主演)、和製ミュージカルの5大傑作に入ると確信している。

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部✕劇団ひまわり/ミュージカル「銀河鉄道の夜」 2017.01.22
大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定演/ミュージカル「銀河鉄道の夜」〜宮沢賢治の深層心理にダイブする。 2017.02.21

因みに僕が考える和製ミュージカル・ベスト5を挙げておこう(順不同)。

・ポーの一族(小池修一郎 作・演出/宝塚歌劇団)
・オケピ!(三谷幸喜 作・演出)
・銀河鉄道の夜(劇団ひまわり)
・キレイ ー神様と待ち合わせした女ー(松尾スズキ 作・演出)
・デスノート THE MUSICAL(フランク・ワイルドホーン 作曲/ジャック・マーフィー 作詞/栗山民也 演出)

本題に戻ろう。創作ミュージカル(幕末明治時代)に続いて、アニメ『鬼滅の刃』メドレー(大正時代)と『松田聖子』メドレー(昭和〜平成時代)が演奏された。『鬼滅の刃』はドラムメジャー(バトン)の生徒さんに注目!無茶苦茶上手い。TV『世界一受けたい授業』によると彼女は普段、コントラバス担当だそう。全日本マーチングコンテストに出場人数制限がかかって以降、梅田先生が参加をやめられたのは本当に残念だ。全員参加を基本理念にされていることは大変素晴らしいことだとは思うのだが……。まぁ結局、理不尽なルールを追加した(2013年度からドラムメジャーを含め81人以内と定めた)全日本吹奏楽連盟側が悪いのだ。

ところで“竈門炭治郎のうた”って、“マルセリーノの歌”(スペイン映画『汚れなき悪戯』主題歌)に似ていると思いません?賛同してくれる人いないかな(試聴はこちら)。それと『鬼滅の刃』の劇伴音楽を担当し、無限列車編の主題歌“炎(ほむら)”の作詞・作曲で日本レコード大賞に輝いた梶浦由記は本当に素晴らしい作曲家で、彼女の最高傑作は『魔法少女まどか☆マギカ』だと信じて疑わない。

「魔法少女まどか☆マギカ」を語ろう! 2012.03.14
反転する物語~「魔法少女まどか☆マギカ」の魅力 2013.11.19

第2部はまずドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』(全楽章ハイライト)とホルストの組曲『惑星』より“木星”が演奏された。『新世界より』は新型コロナウィルス禍で疲弊し、希望の光を求めて彷徨ういまの気分にピッタリ。『君の名は。』『天気の子』のRADWIMPSも2020年に『新世界』という歌を発表し、僕は強い衝撃を受けた。

Shin

なおドヴォルザークは鉄道マニアとして知られており、『新世界より』第4楽章冒頭部の加速は、SL機関車(大陸横断鉄道)の出発を描写しているのではないか、と言われている。更にこの曲は、ジョン・ウィリアムズが作曲した映画『ジョーズ』テーマの元ネタなのではないかと僕は睨んでいる(試聴はこちら。どうです、似ていると思いません?

ホルストの“木星”は平原綾香が歌った"Jupiter"としても有名だ。あと若い人は知らないかも知れないが、1976年に冨田勲のシンセサイザーによるアルバム『惑星』がリリースされ、アメリカのビルボードで1位にランクインするなど一世を風靡した。これも是非一度聴いて欲しい。2011年には再創造された"ULTIMATE EDITION"も出た。

Planets

『16年の歩み(嵐メドレー)』に続き、卒業生を送る曲(『ひまわりの約束』〜『泣き笑いのエピソード』)。この時なんと秦基博からのビデオメッセージが!いやはやなんともびっくりした。大阪桐蔭吹部は天童よしみやDA PUMPと共演したり、2019年に放送された『世界一受けたい授業』では堺正章やミュージカル女優の新妻聖子が彼らの伴奏で歌ったりするなど、生徒さんたちは恵まれている。心底羨ましい。卒業生を送る曲では3年生がひとりひとり、名前とともに1年生の時と現在の姿がスクリーンに映し出される。親御さんたちは感無量であろう。

ここで余談。僕が秦基博で忘れがたいのは新海誠監督のアニメーション映画『言の葉の庭』のクライマックス・シーンで歌った"Rain"。これはシンガーソングライターの彼としては珍しく、作詞・作曲:大江千里のカヴァーである。だからコンサートで歌うことはまずない。大江は関西学院大学(兵庫県西宮市)在学中に軽音部に所属し、神戸や芦屋などのライブハウスに出演していたという。というわけで僕は"Rain"の歌詞で描かれているのは阪急電車・今津線沿線の情景なんじゃないか、と勝手に妄想を膨らませて愉しんでいる。是非機会があれば『言の葉の庭』を観てみてください。

アンコールは言うまでもなく大阪桐蔭の十八番、『銀河鉄道999』。第1部の最後はリモート演奏による〜コロナver.〜、第2部の〆は通常バージョンによるパフォーマンスであった。僕は彼らの演奏を聞いて初めてこの作品に興味を持ち、映画版を観た。そして今年小学校4年生になった息子には映画版とTV版を見せた。音楽の力は偉大である。

松本零士「銀河鉄道999」とエディプス・コンプレックス〜手塚治虫/宮﨑駿との比較論 2016.07.07
「銀河鉄道999」に見る、松本零士の病理 2017.12.18

最後に。梅田先生、いつかミュージカル『OGATA浩庵の妻』を、生(ライヴ)で拝見できる日が来ることを心から希っております。それから来年以降定期演奏会で観たいミュージカルのリクエストをしておきます。

・ロミオとジュリエット(宝塚歌劇団が上演中のフレンチ・ミュージカル。城田優もロミオやティボルトを演じた)〜特に大阪桐蔭が歌って演奏する“エメ Aimer”や、“世界の王”が聴きたい!!
・壁抜け男(劇団四季が上演したミシェル・ルグラン作曲のフレンチ・ミュージカル。ブロードウェイでも上演された。DVD/Blu-ray発売中)

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〈音楽の魔法〉映画公開目前!直木賞・本屋大賞ダブル受賞〜恩田陸「蜜蜂と遠雷」の魅力とそのモデルについての考察

直木賞・本屋大賞をダブル受賞した恩田陸の小説「蜜蜂と遠雷」は松岡茉優主演で映画化され、10月4日に公開される。公式サイトはこちら

Mitubachi

四人のピアニストがコンクールで競うのだが、それぞれ河村尚子(クララ・ハスキル国際コンクール優勝)、福間洸太朗(クリーヴランド国際コンクール優勝)、金子三勇士(バルトーク国際ピアノコンクール優勝/父が日本人で母がハンガリー人)、藤田麻央(チャイコフスキー国際コンクール 第2位)という、日本を代表する若手ピアニストたちが演奏を担当しているというのも大いに話題となっている。僕はこの内二人の実演を聴いたことがある。

恩田陸は執筆にあたり三年に一度開催される浜松国際ピアノコンクールに四回足を運び、ひたすら聴き続けたという。構想から十二年かけて小説は完成した。

ピアノを主題にした小説といえば「蜜蜂と遠雷」より先に、宮下奈都の「羊と鋼の森」が本屋大賞を受賞している。

恩田陸が浜松で取材を始めたのが2006年のコンクールから。編集者の志儀氏によると、それから二年以上も全く書かなかったそうだ。雑誌で連載が始まったのは2009年4月、終わったのが2016年5月。足掛け七年かかっている。一方、「羊と鋼の森」の連載開始が2013年11月なので「蜜蜂と遠雷」の方が早い。恩田が「二次予選で風間塵を敗退させる」と言い出した時、志儀氏は「さすがにそれはダメだ」と言った。

2003年に書類審査で落とされたピアニストが敗者復活的なオーディション@ウィーンで拾われ、浜松の本選で最高位(第1位なしの第2位)に入った。ポーランド生まれのラファウ・ブレハッチである。それまで自宅にアップライトピアノしかなく、コンクール出場直前になってワルシャワ市がグランドピアノを貸与したという。そしてブレハッチは2005年にショパン国際ピアノコンクールで優勝した。なお現在は審査方法が変わり、予備審査は書類だけではなく演奏DVDの送付が義務付けられるようになったそう(音声データだけでないのは替え玉応募を防ぐためだろう)。

ブレハッチのエピソードが「蜜蜂と遠雷」の風間塵に反映されているのは言うまでもない。またトリックスター的彼の性格は、クロアチアのピアニスト、イーヴォ・ポゴレリチを彷彿とさせる。破天荒なポゴレリッチの演奏は1980年のショパン国際ピアノコンクールで物議を醸し、予選で落選。審査員の一人マルタ・アルゲリッチは「彼は天才よ!」と選考結果に激昂し、辞任した。彼女が審査員として復帰するまでそれから20年を要した。世に言う「ポゴレリッチ事件」である。事態を重く見た事務局は急遽彼に審査員特別賞を与えることにした。かえってこの騒動で一気にスターダムにのし上がったポゴレリッチはドイツ・グラモフォンと契約し、数多くのアルバムをリリースした。

トリックスター・風間塵(16歳)は「ギフト」か「災厄」か?彼は師匠ホフマンに「狭いところに閉じこめられている音楽を広いところに連れ出す」と約束していた。小説の最後で少年は夜明けの海の波打ち際に立ち、こう思う。「耳を澄ませば、こんなにも世界は音楽に満ちている」とても魅力的なキャラクターである。彼を本選まで残した幻冬舎の編集者・志儀氏の判断は正しかった。

僕は全日本吹奏楽コンクールが普門館で開催されている時代に〈高校の部〉を3年連続で聴いたことがあるので、何となくコンクールというものの雰囲気が分かる。一番目に演奏するコンテスタントが不利というのも同じ。審査のたたき台にされ、様子見で高得点が出ないのである。そして朝から晩まで一日中聴き続けているだけで、最後はヘトヘトに疲れる。これを何日も続ける審査員は本当にご苦労様である。

浜松国際ピアノコンクールはブレハッチ以外にも、次のようなスターを世に送り出した。

  • 第4回 第2位:上原彩子→チャイコフスキー国際コンクール優勝
  • 第7回 優勝:チョ・ソンジン(韓国)→ショパン国際ピアノコンクール優勝

小説の中でコンテスタントのひとり、ジェニファ・チャンは「女ラン・ラン」と呼ばれ、次のように描写されている。

ふと、最近のハリウッド映画はエンターテイメントではなく、アトラクションである、と言った映画監督の言葉を思い出す。チャンの演奏は、なんとなくそれに近いような気がする。

これは正にラン・ランの演奏を聴いたときの僕の印象を的確に言い当てている。確かにテクニックは完璧で達者だから感心はするのだけれど、後に何も残らない。すなわち、感動はしないのだ。

また楽器店勤務のサラリーマンで年齢制限ギリギリでコンクールに参加する高島明石はこう問う。「生活者の音楽は、音楽だけを生業とする者より劣るのだろうか」ー明石のモデルは間違いなく宮沢賢治だろう。賢治は詩や童話を書きながら、同時に農民として汗水たらして働いた。賢治の詩「春と修羅」をモチーフにしたコンクール課題曲を一番共感を持って弾くのが明石なのは決して偶然じゃない。

浜松はYAMAHAの町であり(本社がある)、ヤマハ吹奏楽団浜松は全日本吹奏楽コンクール職場の部の金賞常連団体である(指揮者は須川展也)。〈生活者の音楽〉というか、「セミ・プロじゃん、ズルい!」という気がしないでもない。

因みに映画で課題曲「春と修羅」は大阪出身の藤倉大が作曲している(現在はイギリス在住)。彼が「尾高賞」を受賞したオーケストラ曲"secret forest"世界初演を僕はいずみホールで聴いた。作曲家も来場していた。

「春と修羅」は無調音楽だが決して耳に不快ではなく、美しく宇宙的広がりを感じさせるものに仕上がっている(既に配信された音源を聴いた)。四人のコンテスタントがそれぞれ別のカデンツァを弾く趣向も個性が出て愉しい。

ラファウ・ブレハッチは恩田陸との対談で恩田から「演奏を終えて『今日はよくできた』と思う日もありますか」と訊かれ、次のように述べている。

ピアノも調律も音響も、その他の条件も全て整っている環境で、満員のお客様が期待に満ちて待っている中、私も完璧に深い演奏ができたなら、ある種の満足感は得られるでしょう。しかし、たとえそうであっても、翌日はまた別の演奏になります。結局のところ、究極の理想に近づいていく過程こそが美しいのであって、生きている間はその理想にはたどり着けないのではないでしょうか。 (出典はこちら

まるで哲学者のような奥深い言葉だ。そして「蜜蜂と遠雷」は正にその過程を描いている。〈ミューズ(音楽を司る女神)との対話〉と言い換えても良い。だから読んでいるうちに、審査結果(順位)なんかどうでもよくなってしまう。だってそれがゴールじゃないのだから。そこからはじまるのだ。恩田によると、本選まではやって、結果わからずで終わらせようか、なんていう案もあったという。当初の構想のままで良かったのではないだろうか?

幼馴染で、コンクール会場で久しぶりに再会した亜夜(嘗ての天才少女)とマサル(ジュリアードの王子様)の会話。

「あたし、プロコフィエフのコンチェルトって全部好き。プロコフィエフって踊れるよね」
「踊れる?」
「うん、あたしがダンサーだったら、踊りたい。バレエ音楽じゃなくても、プロコフィエフの音楽って、聴いてると踊っているところが見える」
(中略)
「僕、三番聴いていると、『スター・ウォーズ』みたいなスペース・オペラを想像するんだよね」
「分かる、宇宙ものだよね、あれは。二番はノワール系」
「そうそう、暗黒街の抗争みたいな」

これにはとても共感した。「スター・ウォーズ」の音楽に出会ったとき、僕は小学校高学年だった。その頃からジョン・ウィリアムズはプロコフィエフの影響を受けているなと強く感じていた。特に「スター・ウォーズ」の”小人のジャワズ”、そして「スーパーマン」の”レックス・ルーサーの小屋”におけるファゴットの使い方が、凄くプロコフィエフ的なんだ。

マサルはラフマニノフのピアノ協奏曲 第三番について「ピアニストの自意識ダダ漏れの曲」と表現する。またショパンについては、本選で協奏曲の指揮をする小野寺の心情が次のように綴られている。

ソリストには憧れの名曲といえど、オーケストラにとっては退屈という曲が幾つかあるもので、ショパンの一番はそれに含まれるのではなかろうかと思う。小野寺は、ショパンコンクールの本選はショパンの一番と二番という選択肢しかないから、幾ら国の誇りであり、ショパン好きであっても、オーケストラはさぞしんどいだろうな、と密かに同情している。

全く同感である。はっきり言って”ピアノの詩人”ショパンのオーケストレーションは稚拙だ。しばしばシューマンのオーケストレーション技術が問題とされ、彼の交響曲を振る時にマーラー編曲版のスコアを使う指揮者も少なくないが(トスカニーニ、シャイー、スダーンら)、ショパンに比べればよほどマシである。ショパンの協奏曲におけるオーケストラの役割は添え物でしかなく、特にトランペットなんか伴奏の和音を間抜けにプープー吹くだけ、といった体たらくだ。

膨大なディスコグラフィを残したヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルはラフマニノフの二番を一度だけワイセンベルクと録音しているが、三番は皆無。ショパンの一番も全く録音を残していない(他者が編曲したバレエ音楽「レ・シルフィード」は一度だけある)。レナード・バーンスタインも同様。つまり演奏する価値がないと見なしていたわけだ。天下のウィーン・フィルもショパンの一番をレコーディングしたのはラン・ランと一回きり。超一流オケは歯牙にもかけないのである。

あと次の一節が心に残った。

音楽家というのは、自分のやりたい音楽が本当に自分で分かっているとは言いがたい。長くプロとしてやってきていても、自分がどんな演奏家なのか実は見えていない部分もある。好きな曲ややりたい曲と、その人に合っていてうまく表現できる曲は必ずしも一致しない。

アマチュア吹奏楽の世界にも同じことが言える。普段のポップス・コンサートでは伸び伸びと、水を得た魚のようにピチピチ跳ねるパフォーマンスを展開するのに、吹奏楽コンクールになると途端に硬い、オーケストラの編曲ものを選んでしまい、窮屈で縮こまった演奏に終始して実力を発揮仕切れない団体を何度も目撃して来た。

恩田陸の小説は昔から好きで処女作「六番目の小夜子」から読んでいる。やはり本屋大賞を受賞した「夜のピクニック」や、疾風怒濤の息もつかせぬ展開をする「ドミノ」も良かったが、北の湿原地帯にある全寮制の学園で展開される幻想的な「麦の海に沈む果実」がこれまで一番のお気に入りだった(萩尾望都の漫画「トーマの心臓」とか、金子修介監督の映画「1999年の夏休み」に近い世界観)。しかし間違いなく「蜜蜂と遠雷」こそ、現時点で彼女の最高傑作だろう。ただし、マサルがリストのピアノ・ソナタを演奏する場面で、わけのわからない中世の物語が登場したのはいただけなかった。僕が幻冬舎の編集者だったら、「恩田さん、これはあかん。話が陳腐やわ」と駄目出しをしただろう。志儀氏は「仕方ないけど、この手は1回だけにしようね」と言ったそう(出典はこちら)。映画版ではどう処理するのだろう?僕がこの曲からイメージするのはエミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」かな。あのムーア(荒野)の感じとか、ヒースクリフの〈狂恋〉がピタリとはまるように思う。

なお現在、〈映画「蜜蜂と遠雷」公開記念!これだけは聴いておきたいピアノの名曲・名盤30選〉というブログ記事を鋭意作成中。乞うご期待!!10月4日には間に合わせます。

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#MeToo のおかげでデュトワ降臨!!大阪フィル定期(ダフニス・幻想交響曲)または、〈棚ぼたの奇跡〉

映画「恋におちたシェイクスピア」や「シカゴ」などアカデミー賞を獲りまくっていたプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが女優らに対してセクシャルハラスメントや性的暴行を長年にわたり繰り返していたことが告発され逮捕された。ここから盛り上がりを見せたのが #MeToo 運動である。「アメリカン・ビューティ」でアカデミー主演男優賞を受賞したケヴィン・スペイシーは映画業界から追放され、ウディ・アレン監督は映画を撮れなくなり、「千と千尋の神隠し」北米公開に尽力してくれたジョン・ラセターはディズニー及びピクサー・アニメーション・スタジオ(両社でチーフ・クリエイティブ・オフィサーを兼任)を去らなければならない状況に追い込まれた(挨拶でハグする時間が、他の人より長いという理由で!)。

クラシック音楽業界ではジェームズ・レヴァインが芸術監督を努めていたメトロポリタン歌劇場から永久追放された。また2016年秋からロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者に就任したダニエレ・ガッティは複数の楽団員にキスを迫るなどセクハラ行為をしていたことが発覚し、2018年8月に電撃解任された(記事はこちら)。コンセルトヘボウの後任は未だ決まっていない。

2017年12月22日、AP通信はシャルル・デュトワ(82)が過去にセクハラ行為を繰り返していたと複数の女性被害者の証言を基に報じた。この報道が引き金となり、翌18年2月末に名誉音楽監督の地位にあるNHK交響楽団宛にデュトワから「現状では私自身のみならず、オーケストラ、そして親愛なるお客様が音楽を十分に楽しめる環境にない」などと申し出があり、12月定期演奏会の出演を辞退した。問題となったのはなんと、30年前の行為であった#MeToo もここまで行くと、Too Much !なのでは?

結局第一線での仕事を失ったデュトワがいわば〈都落ち〉みたいな形で、大阪フィルハーモニー交響楽団の指揮台に初めて立つに至ったというわけ。正に棚ぼたである。前立腺がんの治療に専念するために降板した尾高忠明の代演として、大フィルのR.シュトラウス/楽劇「サロメ」(演奏会形式)もデュトワが振ると発表され、関西のクラシックファンは騒然となった。みんな狂喜乱舞である。最近の彼は上海交響楽団とも親密な関係を結んでいるようだ(上海でも「サロメ」をやったそう)。アジアでは風当たりが強くないのだろう。

世界のオーケストラ・ランキングを考えると、まずベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ、ロンドン交響楽団、シカゴ交響楽団などがAランクに位置する(最近のウィーン・フィルの凋落ぶりは目を覆いたくなる)。NHK交響楽団や東京交響楽団など在京オケ、そして京都市交響楽団はBランク。大フィルは高く見積もってもせいぜいCランクだろう。弦楽器に関してはBランクと言っても良いが、如何せん管楽器が弱い。これを僕は以前、弦高管低と評した。そんな地方オケを世界的指揮者デュトワが振ってくれるなんて、僥倖としか言いようがない。

クリーブランド管弦楽団を慈しみ育てた指揮者ジョージ・セル、フィラデルフィア管弦楽団のユージン・オーマンディ、シカゴ交響楽団のフリッツ・ライナー、ゲオルグ・ショルティらのことをオーケストラ・ビルダーと呼ぶ。デュトワもオーケストラ・ビルダーの典型であり、彼のおかげで以前は無名だったモントリオール交響楽団が一流のオーケストラとして世界で認知された(逆に次々とオケを駄目にするダニエル・バレンボイム、ウラディーミル・アシュケナージらはオーケストラ・デストロイヤーと言えるだろう。両者の共通点は著名なピアニスト出身であること)。

5月24日(金)フェスティバルホールへ。デュトワ/大フィル定期を聴く。

  • ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」
  • ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲
  • ベルリオーズ:幻想交響曲

デュトワの十八番ばかりズラッと並んだ。

淀川工科高等学校吹奏楽部の丸谷明夫先生(丸ちゃん)は1995年以降、全日本吹奏楽コンクールで金賞を取り続けている(前人未到の20回連続!!)。近年の淀工は自由曲として大栗裕/大阪俗謡による幻想曲と、ラヴェル/「ダフニスとクロエ」第2組曲の2曲をローテーションしている(コンクールには時間制限があるので”無言劇”はカット)。淀工の「ダフニス」は全国大会(@普門館)で生演奏を聴いたことがあるが、はっきり言って大フィルの管楽器より上手い。まぁプロは3日で曲を仕上げ、高校生たちは同じ曲を半年以上毎日練習するわけで、そこに差が生じるのは致し方ない。

魔術師デュトワがタクトを振ると、オーケストラは普段と違い、洗練された音を奏でた。マドレーヌかマシュマロのような柔らかさ。「ダフニスとクロエ」はリズミカルだけれど、(”マーチの丸谷”として知られる)丸ちゃんの鋭利なキレに対してデュトワは〈切れない〉魅力に満ち溢れていた。だからといって響きが曖昧模糊と濁ることもなく、極めて解像度が高い。

フランスの構造人類学者レヴィ=ストロースは著書「神話論理」4部作の中で、アメリカ先住民の神話に登場する虹のことを「半音階的なもの」 と呼んだ。そしてデュトワが紡ぐ、半音階を駆使した「ダフニス」は、虹色に輝いていた。この鮮やかな色彩感は誰にでも醸し出せる技じゃない。僕の目の前には両性具有的な世界が広がっていた。

あと驚いたのが、大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指揮:福島章恭)が参加していたこと。全曲演奏ならまだしも、組曲なので当然合唱抜きだと思っていた。大変贅沢な体験をさせてもらった。

1830年に26歳のベルリオーズが作曲した幻想交響曲は、彼自身の狂気の愛を扱っている。レナード・バーンスタインは本作を「史上初のサイケデリックな交響曲」と評した。特に第4楽章「断頭台への行進」と第5楽章「ワルプルギスの夜の夢」はもう、薬物中毒でラリっているとしか考えられない(どうもベルリオーズは作曲時にアヘンを吸っていたらしい)。

ベルリオーズが激しい恋心を燃やし、失恋の憂き目にあった相手は彼がパリで「ハムレット」を観劇した時にオフィーリアを演じていたアイルランド女優ハリエット・スミスソンである。可笑しいのは本作を世に問うた後にベルリオーズはスミスソンと再会し、今度は彼の愛が受け入れられて1833年に二人は結婚した。しかし夫婦仲はすぐに冷え込み40年には別居、彼女が亡くなるとベルリオーズはすでに同居していた歌手マリー・レシオとすかさず再婚した。結局、彼の一方的な愛は「幻想」に過ぎなかったのである。おとぎ話みたいに、"and they lived happily ever after."とはいかなかった……。

遅めのテンポの幻想交響曲にはフワッとした膨らみがあった。第1楽章では、かそけき幽玄の雰囲気がそこはかとなく漂う。いくらでもグロテスクに描ける第5楽章は寧ろ妖艶で、ひとりの女に血道を上げる男の滑稽さが浮かび上がる。考えてみればベルリオーズの愚かしさは、アレクサンドル・デュマ・フィスが書いた「椿姫」の主人公アルマンとか、アベ・プレヴォーが書いた「マノン・レスコー」の騎士デ・グリューにどこか似ている(どちらもフランスの小説である)。 ゆとりがあって、あくまで優雅な表現。お洒落でモテモテの伊達男デュトワの面目躍如であった。ちなみに彼はマルタ・アルゲリッチらと4度の結婚歴がある。そしてアルゲリッチと離婚した原因は、彼がヴァイオリニストのチョン・キョンファと浮気していたことが発覚したためだという。やれやれ。

 

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劇場版 響け!ユーフォニアム 〜誓いのフィナーレ〜

評価:B

Eu

映画公式サイトはこちら

テレビの総集編である前2作に続く劇場版3部作の完結編(今回は完全新作)であり、間にスピンオフ「リズと青い鳥」があったので、それを含めると4作目である。

正直残念な出来だった。結局、1st シーズン(TV版)が群を抜けた出来であった。

時間軸を考えると、1st シーズンは主人公の黄前久美子(ユーフォニアム)が京都の北宇治高校吹奏楽部 に入部し、吹奏楽コンクール京都府大会@京都コンサートホールで代表校を勝ち取るまで。2nd シーズンは関西大会を経て全国大会で銅賞になるまで。そして今回は2年生になった久美子の奮闘が描かれる。「リズと青い鳥」と同じ時期のanother sideに位置づけられており、だからコンクール自由曲は「リズと青い鳥」だ。

正直、最初から最後まで〈既視感(デジャヴュ ) 〉に満ちていた。【新入生の担当楽器を決める→パレード(マーチングイベント)に参加→6月のあがた祭→コンクールに向けたオーディション→コンクール本番】という流れの繰り返し。新鮮味が全くない。

石原立也の演出は凡庸。特にクライマックスになる筈のコンクールの演奏シーン(関西大会の会場がロームシアター京都なので、設定は多分2016年)は紋切り型の編集が退屈で、イラッとした。

ただ「響け!ユーフォニアム」以前にはこうした本格的吹奏楽アニメや映画は一切なかったわけで、TVで高視聴率を上げたわけでも、DVD/Blu-rayが売れたわけでも、劇場で大ヒットしたわけでもないのに、シリーズがこれだけ続いたことは、吹奏楽を心から愛する者として、大変ありがたいことである。そういう意味で京都アニメーションには心から感謝したい。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会2019とディズニー「ファンタジア」

2月17日(日)フェスティバルホールへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部定期演奏会を聴く。指揮は総監督の梅田隆司先生。

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つい先日亡くなった屋比久勲先生が指揮する「エルザ」も5年前に大阪桐蔭の定演で聴いた。

また2018年度の吹部の躍進(メディアへの露出)については詳細に下記事に書いたので、ここでは繰り返さない。

さて、昨年の定演のレビューで大阪桐蔭吹部が全日本吹奏楽コンクール(全国大会)で金賞を受賞するときの法則を分析した。

今年は新たに発見した【法則3】について述べてみたい。

2018年の全国大会で大阪桐蔭が取り組んだ課題曲IV コンサートマーチ「虹色の未来へ」〈郷間幹男〉を聴きながら、「梅田先生らしからぬ、精彩を欠いた演奏だなぁ。何でだろう?2016年の課題曲III「ある英雄の記憶」〈西村友〉はあんなに生き生きとした素晴らしい演奏だったのに」と思った。何しろ関西は〈マーチの丸谷〉が君臨しているだけに分が悪い。聴き手(審査員を含む)は無意識のうちに淀工の演奏と比較してしまうだろう。そこでハタと気がついたのである。調べてみると、案の定だった。

大阪桐蔭が全国に輝いた2009年、10年、11年、16年は全て非マーチ作品を課題曲に選んでいる。そしてマーチを選んだ07年、15年、18年はいずれも銀賞に終わっている。これが【法則3】だ。ところで2019年度吹コンの課題曲は5曲中3曲がマーチだ。さあ、どうする?

今年度、大阪桐蔭が自由曲に選んだのはデュカス「魔法使いの弟子」。梅田先生は同曲で1995年大阪市立生野中学校、2000年大阪市立城陽中学校を全国大会に導いている(いずれも銀賞)。また2005年の城陽中でも「魔法使いの弟子」を選んだが、関西大会止まりだった。

ここで、こちらのインタビュー記事(2007年)をお読み頂きたい。以下原文のまま梅田先生の発言を引用する。

僕はどちらかというとフランスの曲が好きなんですよ。中学を指導していた時に交響詩「魔法使いの弟子」(デュカス)という曲で全国大会に2回出場したことがあって、あの曲もやってみたいと思うんですけど...高校の部では全国に行けないかな(笑)。

つまり当時、梅田先生は「魔法使いの弟子」で全日本吹奏楽コンクール金賞を獲れないと考えておられたのだろう。だから18年度のターゲットは他にあったのではないだろうか?それはズバリ、選抜メンバー(上限55人)ではなく、生徒全員で出場出来る日本管楽合奏コンテストである。そして2度目の最優秀グランプリ/文部科学大臣賞(1位)受賞という成果を得た。

今回定演のプログラムは、

第1部 マーチング

〈魔法の「夢」の世界〉

  • デュカス(梅田隆司編):交響詩「魔法使いの弟子」

〈歴史の「夢」を訪ねて〉

  • レスピーギ(杉本幸一編):「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3組曲
  • ハンス・ジマー:アニメ映画「プリンス・オブ・エジプト」より
  • レスピーギ:交響詩「ローマの祭」より
  • グノー:アヴェ・マリア
  • フォーレ:付随音楽「ペリアスとメリザンド」よりシチリアーナ
  • レスピーギ:交響詩「ローマの松」より

第2部 座奏中心(クィーン・メドレーはマーチング)

  • 甲子園リクエスト・コーナー〈サーカス・ビー〜夏疾風〜アフリカン・シンフォニー〜アゲアゲホイホイ〜かっせー!パワプロ〜ダイナミック琉球〜サウスポー〜You are スラッガー〜We Will Rock You〜ウィリアム・テル序曲〉
  • 吹奏楽部の歩み〈LOSER〜Lemon〜メトロノーム〜アイネクライネ〜ピースサイン(以上 米津玄師)〜青春の輝き(カーペンターズ)〉
  • スペシャル・コラボ・コーナー〈嵐メドレー・ドリカムメドレー・U.S.A.(DA PUMP)〉
  • 卒業生を送る歌〈ダイヤモンド(コブクロ)〉
  • クイーン(Queen)メドレー〈I Was Born To Love You〜Don't Stop Me Now〜We Will Rock You〜Bohemian Rhapsody〜We Are the Champions〉
  • 中島みゆき:時代(アンコール)
  • 銀河鉄道999(アンコール)
  • 星に願いを(アンコール)

「魔法使いの弟子」は柔らかい音色で軽やかな演奏。とってもフランス的だった。水が溢れる場面はマーチングで巧みに波や渦を表現する。

この交響詩で誰しも連想するのはディズニー不朽の名作「ファンタジア」(1940)だろう。日本軍による真珠湾攻撃の1年前に北米公開されており、こんな豊かな国に勝てるはずもない(日本公開はGHQ占領終結後の55年)。ミッキーマウスが魔法使いの弟子を演じている。

現在小学校1年生の息子に「ファンタジア」のDVDを繰り返し観せてきたが、その過程で僕はこの作品の偉大さがより深く理解出来るようになってきた。冒頭J.S.バッハの「トッカータとフーガ ニ短調」では抽象画の線が教会の尖塔や、ステンドグラスから差し込む光を描写する。つまりキリスト教を意識した作りになっている。ストラヴィンスキー「春の祭典」(ニーチェの言う”デュオニュソス的”芸術)では地球創世記〜生命の誕生〜恐竜時代の終焉までを描く。ベートーヴェン「田園交響楽」(”アポロン的”)ではギリシャ神話の神々が総出演する。またムソルグスキー「はげ山の一夜」に登場する魑魅魍魎たちは、ヨーロッパにキリスト教が浸透する前の土着信仰を象徴している。ハロウィン的だが、ハロウィンの起源は古代ケルト人による(キリスト教にとっては異教徒の)祭りである。だから夜明けを告げる教会の鐘の音と共に彼らは消え去り、シューベルト「アベ・マリア」でキリスト教に戻り幕が降ろされるのだ。そして3曲目に登場する「魔法使いの弟子」で描かれるのは旧約聖書の世界である。弟子による魔法の失敗で洪水になる場面は〈ノアの箱舟〉であり、最後に魔法使いが登場し、水を二つに割り、鎮める。これは映画「十戎」や「プリンス・オブ・エジプト」で描かれた〈出エジプト記〉に基づいている。つまりモーゼによる紅海の〈海割り〉だ。またミッキーの夢の中で無数の流星が落ちてくる情景は天からの硫黄と火によって滅ぼされたとされる都市〈ソドムとゴモラ〉(創世記)を想起させる仕掛けになっている。非常に巨視的な作品だ。余談だが、ディズニーに私淑していた漫画の神様・手塚治虫の未完に終わったアニメ「森の伝説」は「ファンタジア」への熱烈なオマージュで、チャイコフスキーの交響曲第4番が全編に流れる。

何故こんなことをくどくどと書くかといえば、「ファンタジア」は梅田先生が台本を執筆された定演の第1部〈歴史の「夢」を訪ねて〉と密接に結びついているからである。物語はクレオパトラとシーザーの出会いとシーザーの暗殺に始まり、皇帝ネロによるキリスト教徒弾圧(「ローマの祭」〜チルチェンス)から一転、キリスト教の国教化、中世ヨーロッパの暗黒時代を経てルネッサンス期の到来、そして魔女狩りや一神教(キリスト教)に対する批判があって現代に至るという、ローマ史を俯瞰する巨視的な作品である。ディズニーの「ファンタジア2000」にレスピーギ「ローマの松」が採用されていることも見逃してはならないだろう。

そして最後〈アッピア街道の松〉が演奏されている時に背後のスクリーンに【すべての道はローマに通ず】ルート地図が示され、それがいつしか飛行機の空路に変わり、東方に向かって2025年に開催される大阪万博に到達するという演出の離れ業・飛躍があり、僕は「成る程、これは正に共時的作品だな」と甚く感銘を受けた。

元々、通時的/共時的とはスイスの言語学者ソシュール(1857-1913)が提唱した概念である。通時的とは、時間は〈過去→現在→未来〉という不可逆的・一方通行の流れであり、それと共に人類は進歩の歴史を歩んでいるとする考え方。一方、共時的とは、〈過去・現在・未来は同時にここにある〉とする考え方。時間は循環する。「ツァラトゥストラはかく語りき」でニーチェが提唱した〈永劫回帰〉とほぼ同じことを言っていると見做して良いだろう。この概念をフランスの構造人類学者レヴィ=ストロース(1908-2009)は神話論理に応用した。レヴィ=ストロースによると、神話とは通時的であると同時に共時的物語でもあるという。彼は共時的という概念を説明するためにオーケストラの総譜を例に挙げるのだが、詳しいことは下記事をお読みください。

共時的とは何か、を体感するために参考となる代表的映画をいくつか挙げておこう。イングマール・ベルイマン「野いちご」、フェデリコ・フェリーニ「8 1/2」、アラン・レネ「去年マリエンバートで」、大林宣彦「さびしんぼう」「はるか、ノスタルジィ」、そして細田守「未来のミライ」である。

さて、レスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3組曲の原曲は弦楽合奏であり、杉本幸一による吹奏楽編曲は、より古楽風になっておりとても良かった。なお桐蔭の甲子園オリジナル応援曲「You are スラッガー」は杉本幸一作曲である。

甲子園リクエスト・コーナーは例年通りバットで客席に向けて打ったボールをキャッチした客が曲を指名する仕組み。今までは野球部の選手がステージに呼ばれて打つことがしばしばあったが、空振りしたり飛距離が出ないという散々の体たらくだった。今回は会場からバッター志望を募り、小学生が1階席後方に飛ばしたり、ボールが2階席に届いた人もいて大いに盛り上がった。

また梅田先生から、今年は春の選抜高校野球大会に大阪桐蔭野球部は出場しないが、名古屋代表の東邦高校の校長から直々の依頼があって、友情応援で甲子園に吹部が行くことになったと発表があった。

吹奏楽部の歩みでは米津玄師の作品が5曲演奏されたのだが、どうせなら僕が一番好きな「打上花火」も聴きたかったなぁ……。

大阪桐蔭は昨年、DA PUMPとテレビで2度共演したが、中継会場となった大阪城ホールの収容人数は1万人。12月に出演したドリカムのライヴではオールスタンディングなので1万5千人規模だったという。ドリカムメドレーは〈未来予想図 II〜LOVE LOVE LOVE〜大阪LOVER〜連続テレビ小説『まんぷく』主題歌「あなたとトゥラッタッタ」〉。「大阪LOVER」って初めて聴いたけれど、歌詞がすごく面白かった。

「U.S.A.」は昨年12月のサンタコンサートよりも、7人の男子生徒の踊りが格段に上手くなっていたので目を瞠った。相当練習を積んだんだね。ブラボー!

「ボヘミアン・ラプソディ」は昨年日本で公開された映画の中で、邦画・洋画併せてNo.1の興行成績をあげた。現在も絶賛公開中でバケモノ的大ヒットとなっている。なんでも「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の記録を抜いたとか。世界的に見ても日本は米国に次ぐ第2位の興行成績だそう。何とQueenのお膝元、イギリスよりも当たっているのだ。「レ・ミゼラブル」といい、「グレイテスト・ショーマン」といい、日本人ってミュージカル映画や歌ものが心底好きなんだねぇ。で大阪桐蔭吹部は20世紀フォックスからオファーを受けて公式ミュージック・ヴィデオ(MV)を撮ったわけだが、これ多分、DVD/Blu-ray発売時には特典映像として収録されるのではないだろうか?生徒さんたちにとっては掛け替えのない一生の宝物になるだろう。

今回演奏されたのは、公式MVよりもロング・バージョン。"I Was Born To Love You"は1985年に発売されたフレディ・マーキュリーのソロアルバムに収録された楽曲で、「ボヘミアン・ラプソディ」には登場しない。映画を観て初めて知ったのだが、フレディが最後の恋人ジム・ハットンと交際を始めたのが84年。つまりシングル盤が発売された当時、リスナーの多くは女性に宛てたラブソングだと考えたわけだが、実はYou=ジム・ハットンだったんだね。そして歌詞をよくよく見ると、

Yes, I was born to take care of you, ha

とある。日本人だと「お前の面倒は俺が見るよ」とか、「君の世話は僕に任せて」とかないとは言えないけれど(でも前世代の感覚だ)、欧米人の男性が女性に言う口説き文句としては考えにくいんじゃないかな。「はぁ、何様のつもり?」とか大喧嘩になりそう。

クイーン・メドレーはポップで切れがあり、この日最高のパフォーマンスだった!因みに僕が今まで聴いててきた中で、大阪桐蔭の史上ベスト・パフォーマンスを5つ挙げたい(アンコール「銀河鉄道999」は別格チャンピオンとする)。

  • ポーギーとベス
  • ミュージカル「銀河鉄道の夜」(西村友)
  • キャラバンの到着(映画「ロシュフォールの恋人たち」より)
  • ラ・ラ・ランド
  • クイーン・メドレー

梅田先生、桐蔭が吹コン自由曲でクラシック音楽ではなく、ミュージカル作品を取り上げる日を僕は首を長くして待っています。

アンコールの定番「銀河鉄道999」ではステージ上のミラーボールに、四方からスポットライトを当てて、とっても綺麗だった。演出が年々進化している!

最後に、僭越ながら今後の定期演奏会で聴きたい曲をリクエストさせていただきます。今年4月に梅芸で再演されるフレンチ・ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」とか如何でしょう?例えば〈エメ♪(Aimer=愛)〉は是非、桐蔭生徒さんたちのコーラスで聴いてみたい究極の名曲です(ミュージカル界のプリンス・山崎育三郎と乃木坂46の生田絵梨花の歌唱をこちらからどうぞ)。あと〈世界の王♪〉は凄く吹奏楽向きだと思います(育三郎と城田優のパフォーマンスでどうぞ)。年齢的にも高校生にぴったりの題材ですしね。

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U.S.A.〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 サンタコンサート2018

12月21日(金)大阪ビジネスパーク TWIN21アトリウムへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のサンタコンサートを第2部より聴く。指揮は梅田隆司先生。

今年の桐蔭吹部の躍進は凄まじかった。やはりその切掛を作ったのは甲子園における野球部の快進撃と、その応援であることは間違いない。

10月27日(土)、日本テレビ「嵐にしやがれ」で吹奏楽部が取り上げられ、櫻井翔が大阪桐蔭高校に来校した。

11月に公開された映画「ボヘミアン・ラプソディ」では20世紀フォックスの公式MVで桐蔭が演奏した。

11月15日(木)は読売テレビ「ベストヒット歌謡祭 2018」でDA PUMPとコラボ、大阪城ホールで「U.S.A.」を演奏。12月11日にはNHK「わが心の大阪メロディー」に出演し、再びDA PUMPと「U.S.A.」を共演した(@NHK大阪ホール)。

またDREAMS COME TRUEがNHK朝ドラ「まんぷく」で歌った〈あなたとトゥラッタッタ♪〉のシングルでも桐蔭が演奏している(こちら)。

さて、サンタコンサートはマーチングから始まった。

  • ヴェルディ:歌劇「アイーダ」凱旋行進曲
  • ジョン・ウィリアムズ:映画「スター・ウォーズ」
  • ミシェル・ルグラン:映画「ロシュフォールの恋人たち」より
    〈キャラバンの到着〉

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桐蔭の〈キャラバンの到着〉はパンチが効いていて、何度聴いても感動する。紛うことなきルグランの最高傑作。

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最早〈銀河鉄道999〉と並び、彼らの十八番(おはこ)と呼んでも過言ではないだろう。

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次に、

  • アラン・メンケン:映画「美女と野獣」
  • 甲子園リクエストコーナー:あんたの花道(天童よしみ)

「美女と野獣」で梅田先生は手にバラを持って指揮された。

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ここでリクエストコーナー。大阪桐蔭野球部の生徒が登場し、バットで打ったボールを掴んだ観客が曲目リストの中から選ぶ仕組み。

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まず選ばれたのは、

  • クロード=ミシェル・シェーンベルク:ミュージカル「レ・ミゼラブル」
続いて、
  • サンタが街にやってくる In Swing
  • エルトン・ジョン、ハンス・ジマー:映画「ライオンキング」(リクエスト)
  • タケカワ・ユキヒデ(樽屋雅徳 編):銀河鉄道999

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ここで第2部終了。休憩をはさみ第3部へ。

  • ウィンター・ワンダーランド In Swing

ノリノリで最高!

梅田先生が嵐の「翔ちゃん」が桐蔭にやって来た時のエピソードを語った後に、

  • 嵐メドレー
  • Linked Horizon:アニメ「進撃の巨人」から〈紅蓮の弓矢〉
  • シャーマン兄弟:メリー・ポピンズ(リクエスト)
  • ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー(リクエスト)

「メリー・ポピンズ」は久しぶりということだったが、僕は昨年のサンタコンサートのリハーサルでちょっと聴いただけで、本番での演奏は初体験。すっごく良かった。

「ラプソディ・イン・ブルー」は冒頭のクラリネット・ソロが滅茶苦茶上手い!プロ顔負け。Jazzyでgroovy。うねりがあって雰囲気抜群だった。

  • 葉加瀬太郎:情熱大陸

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そしてDA PUMPの「U.S.A.」登場!

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男子6人が踊った。

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最後は定番/鉄板のアンコール、

  • 銀河鉄道999
  • ディズニー映画「ピノキオ」から〈星に願いを〉

で〆。

余談だがスティーヴン・スピルバーグ監督が今まで撮った映画の中で、彼自身が脚本を書いた作品が2つだけある。「未知との遭遇」と「A.I.」である。そして面白いことに、どちらもピノキオが登場する(「未知との遭遇」には〈星に願いを〉の旋律も流れる)。手塚治虫「鉄腕アトム」もピノキオをベースにしており、「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー作品賞・監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督は次回作として「ピノキオ」を準備中だ(Netflixで配信予定)。またピノキオは旧約聖書のヨナ記と深い関係がある。

今回ちょっと残念だったのはクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」が聴けなかったこと。でも多分、来年2月17日の定期演奏会で演奏してくださいますよね、梅田先生?

ところで桐蔭には是非、BSテレ東の番組「エンター・ザ・ミュージック」(HPはこちら)に出演してもらいたいなぁ、と以前から考えている。関西フィルの正指揮者・藤岡幸夫さんが司会を務め、世界的なサクソフォン奏者・須川展也さんと藤岡さんが全国各地の吹奏楽団を訪問する企画があるんだ。既に千葉県の市柏とか福岡県の精華女子が出演している。藤岡さんは熱血漢で面白い人だし、須川さんと共演出来たらバンドにとって大きな財産になると思うんだよね。

また来年聴きたい曲のリクエストとして、2月1日(金)に公開されるディズニー映画「メリー・ポピンズ・リターンズ」と、7月19日(金)に公開される新海誠監督「天気の子」(公式サイトはこちら)の主題歌(今回組むバンドは未発表)を挙げておく。

「メリー・ポピンズ」の作曲はシャーマン兄弟だが、「リターンズ」で作詞・作曲したのはスコット・ウィットマンとマーク・シェイマン(ふたりは公私共にパートナーである)。このコンビによるブロードウェイ・ミュージカル「ヘアスプレー」はトニー賞を受賞した。他にミュージカル「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」や「チャーリーとチョコレート工場」がある。

僕が最初にマーク・シェイマンの才能に刮目したのはメグ・ライアン、ビリー・クリスタル主演の映画「恋人たちの予感」(1989)。卓越したジャズ・アレンジが実に心地よかった。で、皆さんに是非観て頂きたいのが「サウスパーク/無修正映画版」(1999)!全編ミュージカル仕立てで、アカデミー歌曲賞にノミネートされた"Blame Canada"(すべてカナダのせいにしろ!)は笑える。特に最高なのは「レ・ミゼラブル」のパロディ"La Resistance"。抱腹絶倒間違いなし。トレイ・パーカー監督のミュージカル愛が溢れ出す。因みにトレイ・パーカーは後にブロードウェイに進出し、ミュージカル「ブック・オブ・モルモン」(2011年初演)でトニー賞9部門を独占した。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部×映画「ボヘミアン・ラプソディ」奇跡のコラボ!!

まずはこの映像からご覧あれ。→夏の甲子園を盛り上げた大阪桐蔭吹奏楽部が映画『ボヘミアン・ラプソディ』とコラボ!(You Tube)

20世紀フォックスの公式サイトですよ!!信じられる!?明らかにワーナー・ブラザースがヒュー・ジャックマン主演の映画「グレーティスト・ショーマン」で大阪府立 登美丘高校ダンス部とコラボしたこの動画に対抗している。大阪桐蔭吹部の生徒さんたちは幸せだ。一生の宝物になるね。桐蔭は夏の甲子園の応援歌としてクイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」を演奏したので、おそらくそのパフォーマンスが映画会社の目に止まったのではないだろうか?なお、MV冒頭はオフ・ブロードウェイのパフォーマンスショー"STOMP"仕立てになっている(動画はこちら)。

Bohemian

さて、今年の全日本吹奏楽コンクール高校の部は関西代表の3校のうち金賞が丸谷明夫先生率いる淀川工科高等学校1校のみで、大阪桐蔭と明浄学院高等学校は銀賞という結果だった。九州代表の3校(玉名女子・精華女子・福工大付城東)が全て金賞だっただけに、悔しい思いが残る。関西の吹奏楽の実力って、こんなものじゃないでしょう?大阪桐蔭が自由曲にデュカス作曲「魔法使いの弟子」を選んだことに対する僕の心情は、関西吹奏楽コンクールの前日に下の記事に綴った。

まぁ今年は桐蔭の野球部が強すぎたし、梅田隆司先生が大好きな「魔法使いの弟子」でもう一度、全国大会に挑みたいというお気持ちもよく分かるのだが……(梅田先生は大阪市立生野中学校と大阪市立城陽中学校の教諭時代にこの曲で全国大会に出場されている)。

それにしても大阪桐蔭の演奏するクイーンは若々しく、溌剌としていて実に素晴らしい。(クラシック音楽ではなく)こういう曲でこそ、彼らの本領は発揮される。特に「ボヘミアン・ラプソディ」の中間部、オペラティックな曲調(スカラムーシュ・ファンダンゴ・ガリレオ・フィガロ)のところで、桐蔭の十八番=合唱になるのが最高だね!胸がスカッとした。当然来年2月の定期演奏会でも聴けると思うが、その際「伝説のチャンピオン」にも合唱を取り入れて欲しいな。切にお願いします。

We are the champions - my frends
And we'll keep on fighting -
till the end -

俺たちは勝者だ!友よ
そして俺たちは戦い続ける
死を迎える日まで

なんて聴いたら、泣いちゃいそう。

大阪桐蔭吹部の生徒さんたちへ。クイーンの曲を演奏する上で映画評論家・町山智浩氏の解説がとても参考になると思うので、是非ご一読ください→こちら

映画「ボヘミアン・ラプソディ」について。撮影中から色々不穏なエピソードが聞こえてきた。実はブライアン・シンガー監督(「ユージアル・サスペクツ」「X-メン」)が休暇後にも現場に戻らず、撮影終了2週間前にして監督を解雇されたと報道された。どうも主演のラム・マレックと衝突していたらしい。シンガーの代理でデクスター・フレッチャーが起用されたが、その時点で主要撮影の3分の2が完了していた為に監督のクレジットはシンガーになったという。またリードボーカルのフレディ・マーキュリーがゲイで、死因がAIDSだということも映画ではっきり言及されていないと風の便りに聞いた。そんなんで本当にまともな作品に仕上がっているのか??疑問は残るが、僕は観に行くつもりだ。

映画の予習として現在、「伝説の証 ~ロック・モントリオール1981&ライヴ・エイド1985 」Blu-rayと「ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム」DVDを鑑賞中。断然、前者の方がお勧め!まずフィルム撮りなので、画像が綺麗(後者はビデオ撮り)。それから前者は歌詞の日本語訳が字幕になっているのでありがたい(後者は歌っている間に字幕スーパーが一切ない)。

ライヴ映像を観ながら気が付いたのだが、クイーンには「レディオ・ガ・ガ Radio Ga Ga」という曲がある。何と、これがレディー・ガガの名前の由来なんだね!彼女の初期の楽曲に携わった音楽プロデューサーがこの芸名を与えたそう。因みにレディー・ガガ主演の映画「アリー/スター誕生」は大評判で、アカデミー主演女優賞ノミネートが確実視されている。日本では12月21日に公開される。

最後に、AIDSで倒れた芸術家やパフォーマーたちを列記しておく。

  • ロック・ハドソン 1985年死去(映画「ジャイアンツ」「風と共に散る」に出演)
  • マイケル・ベネット 1987年(「コーラスライン」原案/演出/振付、「ドリームガールズ」演出)
  • ジャック・ドゥミ 1990年(映画「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」監督)
  • フレディー・マーキュリー 1991年
  • ハワード・アッシュマン 1991年(ディズニー「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」作詞)
  • ジョルジュ・ドン 1992年(20世紀バレエ団ダンサー、映画「愛と哀しみのボレロ」出演)
  • アンソニー・パーキンス 1992年(映画「サイコ」主演)
  • ルドルフ・ヌレエフ 1993年(ソ連生まれのバレエ・ダンサー)

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吹奏楽 vs. オーケストラ

2017年、全日本吹奏楽コンクール高校の部に出場した30団体のうち、クラシック音楽を編曲したものを自由曲に選んだのは12団体であった。その前年は13団体。つまり、全体の40%以上を占めていることになる。

吹奏楽の起源は軍楽隊にある。故に基本は行進曲であり、コンクールの課題曲でマーチを演奏する団体が多い(丸谷明夫/淀川工科高等学校吹奏楽部はマーチ以外を絶対に選ばない)。

自由曲にオーケストラ曲の編曲が未だに多いのは、指揮者のクラシック音楽への憧れ劣等感が潜在意識の中にあるからではないか?と僕は考えている。しかしそれでは所詮、吹奏楽はオーケストラの代用品に過ぎず、オリジナルを凌駕することは絶対に出来ない。全く無駄な努力のように想われる。

吹奏楽関係者がクラシック音楽へ注ぐ愛情は片思い、単なる一方通行に過ぎず、クラシック音楽ファンは吹奏楽など見向きもしない。吹奏楽はあくまで《アマチュアが演奏するための音楽》でしかなく、《鑑賞に耐えうるものではない》と大半の人々は考えている。嘘だと思うなら近くにいるクラシック音楽愛好家に「アルメニアン・ダンスって聴いたことある?」と訊ねてご覧なさい。アルフレッド・リードの名前すら誰も知らないから。月刊誌「レコード芸術」の新譜批評に「吹奏楽」部門が新設されたのは2010年、たった8年前のことである。

吹奏楽コンクール全国大会の自由曲にチャイコフスキーを選ぶと、金賞が受賞出来ないことはよく知られている。屋比久勲/福工大付属城東高は「白鳥の湖」、石津谷治法/習志野高は「くるみ割り人形」と「眠れる森の美女」、畠田貴生/東海大付高輪台高は「白鳥の湖」で全国大会に臨んだが、いずれも銀賞に終わっている。彼らの演奏を聴いて感じるのは、「チャイコフスキーが作曲したオーケストラ曲の最大の魅力は優美に奏でる弦楽器にある」ということ。弦抜きだと魅力が半減してしまうのだ。違和感しかない。

吹奏楽の演奏に対する褒め言葉でよく見かけるのが「木管の響きが、弦をこすって出したような音色になっている」というものだが、だったら弦楽器で演奏すれば済むことじゃない?馬鹿みたい。まがい物は所詮、まがい物。模倣品・贋作・ものまね芸人が本物の価値を上回ることなど決してないのである。吹奏楽にはもっと、別の良さがあるだろう。しっかりと独自の道を歩むべきだ。

クラシック音楽の中で編曲が新たな価値を生み出した代表例を見てみよう。

  • J.S.バッハ/ストコフスキー 編:トッカータとフーガ、小フーガほか
  • ムソルグスキー/ラヴェル 編:展覧会の絵
  • サティ/ドビュッシー 編:ジムノペディ 第1,3番
  • ブラームス/シェーンベルク 編:ピアノ四重奏曲 第1番
J.S.バッハ/ストコフスキーの原曲はオルガン・ソロ、ムソルグスキーとサティはピアノ・ソロ、ブラームスがカルテットで、それらがオーケストラ曲に生まれ変わっている。つまり編成が拡大されている。逆に、例えばベートーヴェンの交響曲やワーグナーの歌劇をリストがピアノの連弾や独奏曲に編曲しているが、成功したものは皆無である。オーケストラ曲→吹奏楽曲の場合も全く同様だ。

だから全国大会に出場するような実力を持つ指導者の方々には、是非もっと吹奏楽のオリジナル作品に取り組んで頂きたい。日本も優れた作曲家を沢山輩出しているのだから。

ただし、クラシック音楽→吹奏楽へのアレンジで成功しているものもごく僅かながらある。

  • リスト/田村文生 編:バッハの名による幻想曲とフーガ
  • J.S.バッハ/伊藤英明 編:シャコンヌ
  • J.S.バッハ/森田一浩 編:シャコンヌ

リストの原曲はピアノまたはオルガン独奏曲であり、バッハは無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータである。やはり編成を拡大することで新しい価値を生み出しているのだ。

それから原曲がポップスや映画音楽、ミュージカルの場合は全く話が別である。こういった音楽は基本的にオリジナル原理主義ではなく、アレンジして演奏されるのが前提の世界だからである。過去の吹奏楽コンクールで深い感銘を受けたアレンジ物を挙げよう。

  • シェーンベルク/宍倉 晃 編:ミュージカル「ミス・サイゴン」
    大滝 実/埼玉栄高等学校吹奏楽部 2002年 金賞
  • アーノルド/瀬尾宗利 編:映画「第六の幸福をもたらす宿」より
    (井田重芳/東海大学付属札幌高等学校 2006年 金賞
  • シェーンベルク/森田一浩 編:ミュージカル「レ・ミゼラブル」
    (宇畑知樹/伊奈学園総合高等学校 2013年
    金賞

また僕が定期演奏会で聴いた、梅田隆司/大阪桐蔭高等学校による「キャラバンの到着」(ミュージカル「ロシュフォールの恋人たち」より)や、ミュージカル「銀河鉄道の夜」「ラ・ラ・ランド」も実に素晴らしかった!こういうのをもっとコンクール全国大会で聴きたいのである。

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