舞台・ミュージカル

新海誠監督の最新作「天気の子」とミュージカル「RENT」

新海誠監督の新作アニメーション映画「天気の子」公式サイトでは予告編を見ることが出来る→こちらから"TRAILER"をクリック。

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いや〜もう愉しみで仕方がない。待ちきれないから公開日の7月19日(金)は有給休暇を取得した。朝イチから観に行くぞ!

この予報から既にネット上ではロケハンの場所が特定され、聖地巡礼が始まっている。屋上に鳥居があるビルのモデルは代々木会館(実際の会館には屋外の階段と鳥居はない)で、鳥居そのものは朝日稲荷神社(別ビル)、そして主人公の少年が乗っている船は東京↔伊豆諸島を結ぶ「さるびあ丸」といった具合。「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」「君の名は。」と同様にNTTドコモ代々木ビルがまたまた登場するのも嬉しい。最早、新海アニメのトレードマークだからね。あと「アメ」と名付けられた猫が可愛い。

音楽は「君の名は。」に引き続きRADWIMPSが担当。僕は予報で流れる主題歌「愛にできることはまだあるかい」を聴いた瞬間、びっくりした。出だしのコード進行(4つの和音)がピューリッツァー賞やトニー賞を総なめにしたブロードウェイ・ミュージカル「RENT(レント)」の名曲"Seasons of Love"(作詞・作曲:ジョナサン・ラーソン)と全く同じなのである。試聴はこちら。これは単なる偶然(無意識)なのか、監督からのリクエストなのか?興味は尽きない。

「天気の子」は世界中が注目している映画なので、後に音楽が"Seasons of Love"に類似していることが話題になるかも知れない。

気が早い話だが、僕は「天気の子」がきっと米アカデミー賞の長編アニメーション映画賞を受賞してくれるだろうと大いに期待している。細田守監督「未来のミライ」のノミネートに続け!!新海監督のデビュー作「ほしのこえ」(2002)から、彼の才能を信じて二人三脚で歩んできたコミックス・ウェーブ・フィルム代表 川口典孝氏も「(新海誠が)オスカーとる日も来ると思ってますから」と断言している(こちらの記事より引用)。

「君の名は。」英語版ではスマートフォンに入力された文字(日本語)を英語に置き換えることが出来なかったが、今度は万全の体制で臨んでいる筈。ディズニー/ピクサーに負けるな!ここは川村元気プロデューサーの腕の見せ所だ。

 

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ミュージカル「ロミオ & ジュリエット」2019(+オール・タイム・ベストキャスト考)

梅田芸術劇場でフレンチ・ミュージカル「ロミオ & ジュリエット」を2回鑑賞した。

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今までの記録は下記。

つまり、今年を含めると様々なキャスト・演出(宝塚版/東宝・梅芸版/フランス版)で計13回鑑賞したことになる。

4月2日(火)のキャストは、

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4月10日(水)のキャストは、

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その他にキャピュレット夫人:春野寿美礼、乳母:シルビア・グラブ、ロレンス神父:岸祐二、ヴェローナ大公:石井一孝、キャピュレット卿:岡幸二郎といった面々。

NHK朝ドラ「わろてんか」でヒロインを演じた葵わかなは舞台初挑戦。身長158cmでロミオ役の古川雄大が182cmなので頭一つ低い。しかしふたりの頭の大きさはほぼ同じなので、ずっこけた!容姿も地味で歌唱や演技は精彩を欠く。がっかりした。こんなんだったら、いくちゃん(生田絵梨花)のチケットを確保すべきだった。いくちゃんの演技力はいまひとつだけれど、歌は音程がきっちり正確で1Hz(ヘルツ)もずれないし、可憐だし、魅力的なジュリエットだったのに……。観劇中ず〜っと後悔し続けていた。一方、木下晴香のジュリエットはパーフェクト。彼女はディズニーの実写映画「アラジン」(2019年6月7日 公開予定) 吹替版のジャスミン役に抜擢された。つまりアカデミー歌曲賞を受賞した名曲"A Whole New World"を歌う。

2.5次元ミュージカル「テニスの王子様」出身の古川雄大は長身イケメンで王子様役がピッタリ。本年ロミオ役が評価され、菊田一夫演劇賞を受賞した。ただし歌唱力は大野拓朗の方が上かな?

マーキューシオは黒羽麻璃央(2.5次元ミュージカル出身)の方が「すぐキレる」「頭おかしい」感じが出ていて良かった。平間壮一は「普通の人」という印象。

ティボルトは歌唱力・演技力ともに渡辺大輔に軍配を上げる。広瀬友祐はイマイチ(イケメンだとは思うが)。

ベンヴォーリオ役の三浦涼介は「友達思いの優男」という雰囲気ですごく良かった。「死」のダンサー、宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー)も切れがあって文句なし!

総じて極めて質の高いカンパニーだった。20年くらい前の東宝ミュージカルと言えば、劇団四季出身者(男優)と宝塚歌劇出身者(オバチャン)ばっかりという感じだったけれど、現在は現役アイドル(乃木坂46のいくちゃん)とか2.5次元出身(古川、黒羽ら)、元仮面ライダー(浦井健治、三浦ら)など、どんどん若返り、顔面偏差値も高くなった(しかも歌える)。大変喜ばしいことである。

最後にオール・タイム・ベストキャストを選んでおこう。

  • ロミオ:山崎育三郎明日海りお
  • ジュリエット:木下晴香愛希れいか (ワースト・ワンは葵わかな
  • ティボルト:城田優
  • ベンヴォーリオ:三浦涼介
  • マキューシオ:黒羽麻璃央
  • 「死」のダンサー:宮尾俊太郎
  • キャピュレット夫人:春野寿美礼
  • 乳母:シルビア・グラブ
  • ロレンス神父:岸祐二
  • ヴェローナ大公:石井一孝
  • キャピュレット卿:岡幸二郎

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ワンコイン・プレ・レクチャー〈これが『オン・ザ・タウン』だ!〉 by 佐渡裕

4月4日(木)兵庫県立芸術文化センターへ。レナード・バーンスタインのミュージカル「オン・ザ・タウン」上演を前にしたプレ・レクチャーを聴講する。講師は兵庫芸文の芸術監督でレニーから薫陶を受けた佐渡裕。お代は500円ポッキリ。

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佐渡がレニーに出会ったのは1985年。大阪の旧フェスティバルホールでバーンスタイン/イスラエル・フィルによるマーラー:交響曲第9番の伝説的名演を聴いたのだそう。「自由で創造的だった」と。

87年にはタングルウッドで直接指導を受けた。その時の貴重なビデオ映像も見せてくれた。この時英語が喋れず、劣等感を感じていた佐渡に対してレニーは「君は能を知っているか?」と語りかけてきた。お能のマスクの数の話や「俺は3時間じっくり鑑賞したけれど、普通の西洋人だったら耐えられないはずだ」と言い、「例えば君と握手するとしよう。能だとこんな風にゆっくりした動きになる(と実演)。ここに高いエネルギーが集積する。マーラーのアダージョも同じように振りなさい」

佐渡曰く、レニーは「破天荒な人だった」と。ここで清水華澄(メゾソプラノ)、白石准(ピアノ)の演奏で1942年に作曲された歌曲『私は音楽が嫌い』(I Hate Music)が披露された。10歳の少女が作詞したものだそうで、ユーモラスでチャーミングな楽曲。

バーンスタインの父はウクライナ系のユダヤ人移民で理髪店を営んでいた。両親は音楽と無関係の暮らしをしており、10歳の時に叔母の家でピアノに出会った。父は当然、音楽家の道に進むことに反対した。

1943年、急病で降板したブルーノ・ワルターの代わりにニューヨーク・フィルの指揮台に立ち(ラジオでも放送された)、一大センセーションを巻き起こした。それまでアメリカの主要交響楽団のシェフは皆ヨーロッパ出身者で(クーセヴィツキー・ロジンスキ・トスカニーニ・セル・ストコフスキー・オーマンディ・ライナーなど)、アメリカ人はヨーロッパに対する強いコンプレックスを持っていた。そこに初めて自国生まれのスーパースターが誕生したのである。

佐渡が師に「今まであなたが指揮したコンサートのうち、一番思い出深いのはどれですか?」と訊ねたことがあった。ウィーン・フィルとのベートーヴェン・チクルスや、1979年10月ベルリン・フィルとの唯一の共演となったマーラーの9番、89年ベルリンの壁崩壊記念コンサート(東西ドイツ・フランス・イギリス・アメリカ・ソ連の6つのオーケストラに所属する混成メンバー)でのベートーヴェン第九などを佐渡は予想していたが、答えは意外にも米CBSでテレビ中継された〈ヤング・ピープルズ・コンサート〉だった。その時点で佐渡は〈ヤング・ピープルズ・コンサート〉を見たことがなかった。現在ではDVDとBlu-rayが発売されており、つい先日我が家にもAmazon.co.jpからVol.1が届いて小学校一年生の息子と一緒に視聴しているところである(内容はため息が出るくらい素晴らしい!ただし日本語字幕が無茶苦茶。例えば「オーケストレーション」が「指揮」と訳されている。だから寧ろ英語字幕を出して見ている)。間もなくVol.2も市場に出る。

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結局その後日本のテレビで始まった音楽番組「オーケストラがやってきた」(山本直純司会)や「題名のない音楽会」(黛敏郎司会)も、〈ヤング・ピープルズ・コンサート〉をお手本にしている。佐渡が「題名のない音楽会」の司会者を引き継いだのも、恩師への深い思いがあったからである。また佐渡時代はテーマ曲としてレニーのミュージカル『キャンディード』序曲が使用された(現在の司会者は元劇団四季の石丸幹二)。

また1985年「広島平和コンサート」で自作の交響曲 第3番『カディッシュ』を振った時、原爆資料館を見たときの衝撃についてリハーサルで若い演奏家たちに熱く語るレニーの姿を捉えた映像も見せてくれた。

『ウエストサイド物語』について。冒頭口笛で奏でられる〈ソードーファ#〉のモティーフ。〈ファ#〉が「居心地が悪い」と。そこに若者たちの「抑えられないエネルギー」があり、これは♪『マリア』や♪『クール』などのナンバーにも登場する。

また『オン・ザ・タウン』の聴きどころについて、佐渡は「Swing」だと。

そして再び清水と白石が現れ、『オン・ザ・タウン』から♪『私は料理も上手よ』(I Can Cook too)が歌われて、お開きとなった。

夏の上演(7月12日-21日)がとても愉しみである。

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ワーグナー〈ニーベルングの指環〉第2日「ジークフリート」@びわ湖ホール

3月2日(土)びわ湖ホールへ。ワーグナーの楽劇「ジークフリート」を鑑賞。

14時開演で終演が19時20分の長丁場。途中30分の休憩が2回あり、実質上演時間は4時間強。

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配役はジークフリート:クリスティアン・フランツ、ミーメ:トルステン・ホフマン、さすらい人(ヴォータン):青山貴、エルダ:竹本節子、ブリュンヒルデ:池田香織、森の小鳥:吉川日奈子 ほか。沼尻竜典/京都市交響楽団の演奏。

ミヒャエル・ハンペの演出、ヘニング・フォン・ギールケの美術は当然、序夜「ラインの黄金」からの基本姿勢を貫いており、舞台前面にシルクスクリーンが張られ、後方も映像が投影されプロジェクション・マッピングで挟み撃ちにする手法が用いられている。だから演じる歌手たちがまるで〈絵の中の人物〉のように見え、〈夢〉の中を彷徨っているような錯覚を起こす仕掛けになっている。僕が連想したのは黒澤明監督の映画〈夢〉で、マーティン・スコセッシ演じるゴッホが自分の描いた〈絵〉の中を彷徨う場面(ショパンの「雨だれ」が流れる)。

ハンペの演出は今流行りの〈読み替え〉ではなくオーソドックスだが、テクノロジーが新しいので目に愉しく、僕はすごく好感を持っている。

歌手に関して。フランツはよく通る美声で◯。青山貴もいい声しているが、些か声量不足。圧巻だったのが池田香織。彼女の深く豊かな声に魅了された。ゴメン、日本人歌手を舐めてました。森の小鳥(吉川)も爽やかで、耳に心地よかった。

改めて「ジークフリート」は非の打ち所がない完璧な音楽だと舌を巻いた。

〈ニーベルングの指環〉がバイロイトで初演されたのが1876年。ロマン派の極北であり、調性音楽の完成された姿である。本作を聴いた当時の作曲家たちはみな、打ちのめされたのではないだろうか?これ以上先に進める余地はない。Dead End,行き止まり

そうした絶望感の中で生まれた逆転の発想が、〈調性音楽の破壊=十二音技法、無調音楽の誕生〉に繋がったような気がする。

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映画「天才作家の妻 40年目の真実」& 待ってろ、グレン・クローズは今から本気出す!

評価:B

公式サイトはこちら

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本作でグレン・クローズ(現在71歳)がアカデミー主演女優賞を受賞出来なかったのはとっても気の毒だった。同情票が集まり、いけると思ったのだが……。なんと7回目の落選である。

ただアカデミー予想でも書いたように正直、作品が弱かった。彼女の演技も到底、突出したものではなかった。本人も「哀れみのオスカーなんかいらない」と発言しているので、残された僅かなチャンスに期待しよう。因みに今までの作品の中で、僕が彼女のベスト・アクトだと考えるのは、アカデミー主演女優賞にもノミネートされた「危険な関係」(1988)である。

「天才作家の妻」ではグレン・クローズの演技ばかり話題になるが、寧ろ僕は夫役のジョナサン・プライスが良かった。ジョナサンは舞台ミュージカル俳優でもあり、「ミス・サイゴン」のエンジニア役でトニー賞主演男優賞を受賞している。ミュージカル映画「エビータ」ではアルゼンチンのペロン大統領を、ロンドン・ウエストエンドでは「マイ・フェア・レディ」のヒギンズ教授役も演じている(←これは観たかった!)。

一方、グレン・クローズはアンドルー・ロイド・ウェバーの舞台ミュージカル「サンセット・ブルーバード」のノーマ・デズモンド役(無声映画期の大スター)でトニー賞主演女優賞を受賞している。

そしていよいよ、ミュージカル映画「サンセット大通り」の企画が本格的に動き出した(記事はこちら)。待望の真打登場である。

今度のグレン・クローズはマジだ。「サンセット大通り」でオスカーを〈全力で〉獲りに来る!最早情け容赦はしない。「サンセット」ならば誰にも〈哀れみのオスカー〉とは言わさない。

そして僕はいま、世界最速のアカデミー賞予想をする。ミュージカル映画「サンセット大通り」が完成した暁には(2020年公開予定)、グレン・クローズが念願のオスカーを手に入れる。(監督が誰になろうが)200%間違いない!読者の皆さん、この予言を覚えておいてね。

それと僕は10年前からミュージカル版の映画化が実現したら、ノーマに雇われる脚本家ジョー・ギリス役(ビリー・ワイルダー監督のオリジナル版ではウィリアム・ホールデンが演じた)を是非ヒュー・ジャックマンに演って欲しいと書き続けてきた。実際にヒューは舞台版のオーストラリア公演で同役を演じている。しかし年月が経ち彼も年をとった。ジョー・ギリスは〈若いツバメ〉の役なんで、その辺どうなんだ?……ギリギリまだ行ける??……う〜〜ん。

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21世紀に生まれた、夢のミュージカル映画「メリー・ポピンズ リターンズ」(字幕版/吹替版)

「メリー・ポピンズ リターンズ」は1964年に公開された「メリー・ポピンズ」の実に54年ぶりの続編である。物語の設定としては前作の25年後ということになっている。

評価:AAA (←これ以上はありません)

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パーフェクト、文句なし!軽く前作を超えた。字幕版と吹替版の両方を鑑賞。

公式サイトはこちら

ロブ・マーシャル監督は振付師出身である。元祖メリー・ポピンズことジュリー・アンドリュースが主演したブロードウェイ・ミュージカル「ビクター ビクトリア」(1995年初演)も振付を担当した

映画監督としてはアカデミー作品賞を受賞したミュージカル「シカゴ」(2002)が名高いが、実はその前にテレビ映画「アニー」(1999)を振付・監督し、これが途轍もない大傑作なのである。NHKで一度放送されたが、日本でソフト化されていないのが到底信じられない。僕は北米版DVDを所有していて、息子(現在小学校1年生)に何度も観せた。ブロードウェイ初演時にアニーを演じたアンドレア・マカードルがショーの場面でゲスト出演し、「回転木馬」「ラグタイム」のオードラ・マクドナルド(トニー賞6度受賞!!)や「キャバレー」のアラン・カミング(トニー賞受賞)、「きみはいい人 チャーリー・ブラウン」「ウィキッド」のクリステン・チェノウス(トニー賞受賞)など綺羅星のミュージカル・スターたちが脇を固めている。

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ロブ・マーシャルがスティーヴン・ソンドハイム作詞・作曲のブロードウェイ・ミュージカルを映画化した「イントゥ・ザ・ウッズ」(2014)からは、エミリー・ブラントとメリル・ストリープが「メリー・ポピンズ リターンズ」にも参加している。

前作で煙突掃除夫バートと銀行の頭取ドース・シニアの二役を演じたディック・ヴァン・ダイクが本作でもドーズ・ジュニアとして登場。なんと愉しそうにタップ・ダンスまで披露してくれたので、感動のあまり僕は思わず泣きそうになった。撮影時御年92歳だぜ!?パニック映画「タワーリング・インフェルノ」でも少し踊った晩年のフレッド・アステアのことを想い出した。そしてフィナーレでは風船売りとしてアンジェラ・ランズベリーが登場。彼女はソンドハイムの「スウィーニー・トッド」でトニー賞のミュージカル主演女優賞を受賞している。またディズニー・アニメ「美女と野獣」(1991)ではポット夫人の声をあて、アカデミー賞を受賞した主題歌を歌った。やはり本作撮影時92歳

ガス灯の点灯夫(Lamplighter)ジャックを演じるリン=マニュエル・ミランダ(吹替:岸祐二)といえば、トニー賞を11部門受賞し話題を席巻したミュージカル「ハミルトン」の作詞・作曲・脚本・主演を全部一人でこなした天才である。何とピューリッツァー賞まで獲ってしまった!ディズニー映画「モアナと伝説の海」では主題歌"How Far I'll Go"を作詞・作曲し、アカデミー歌曲賞にノミネートされている。彼はガチガチの民主党支持者でリベラルを気取り、反トランプ(政権)色を鮮明に打ち出している。「ハミルトン」のカンパニーはペンス次期副大統領観劇時に騒動を起こし、物議を醸した(ハミルトン事件)。また「ハミルトン」のオーディションにおいて募集対象が「白人を除く全人種」と表記したことでも話題となった(記事はこちら)。つまりミランダは明白な人種差別主義者である。心底嫌な奴で僕は人として軽蔑するが、しかし悔しいけれど本作のパフォーマンスは圧巻で、グーの音(ね)も出ない。天は彼にどんだけ才能を与えるんだ!と嫉妬心すら覚えるくらいである。

エミリー・ブラントは顔も声も先代ジュリー・アンドリュースに似ても似つかないが、その視線とか仕草とかで「あ、メリー・ポピンズがそこにいる」としっかり感じさせる。お見事。彼女がアカデミー主演女優賞にノミネートされなかったのが信じられない。エミリーの代わりに候補入りした「ROMA/ローマ」のヤリッツァ・アパリシオはそれまでに全く演技経験のないズブの素人だからね、過大評価である。そして吹替版の平原綾香は、正直エミリーよりも歌が上手い。

メリーのいとこ・トプシーを演じるメリル・ストリープの歌は島田歌穂が吹替ているが、こちらもオリジナルを凌駕している。なお島田はミュージカル「レ・ミゼラブル」国際キャスト版CDでエポニーヌ役に抜擢され(日本人で唯一)、エリザベス女王の御前でも歌った。またマイケル役の谷原章介や姉ジェーンを演じる(元劇団四季)堀内敬子も良かった。

リン=マニュエル・ミランダやアンジェラ・ランズベリーはオリジナル音声の方が味があるので、結論として字幕版と吹替版は甲乙つけ難しといったところ。

なお、劇中で言及される〈トプシー・ターヴィーTopsy Turvy〉とは「逆さまの」という意味で、ディズニー・アニメ「ノートルダムの鐘」にも出てくる。

前作では笑うと空中に浮かぶメリーのおじさんが登場したが、今回いとこのトプシーは世界がひっくり返るという趣向で愉しい。

また前作でメリーとバート、子どもたちは煙突を通って屋上に登るが(up)、今回は地下に降りる(down)という具合に対称を成している。

「リターンズ」で強く感じたのは、「アニー」の時もそうだったが、ロブ・マーシャルは子供の扱いが極めて上手いということ。みんな生き生きしている。また彼は本作でも振付を兼任しているが、特に群舞が素晴らしい。「アニー」ではウォーバックス氏の使用人たちの群舞が圧巻だった("I Think I'm Gonna Like It Here")。

「リターンズ」の噴水に於けるダイナミックなダンス・シーンは、間違いなくジーン・ケリー主演のMGM映画「巴里のアメリカ人」へのオマージュであろう。その直後に点灯夫たちが長い点火棒を肩に担いで行進する場面は「ザッツ・エンターテイメント パート3」に収録された、ジュディ・ガーランド主演「ハーヴェイ・ガールズ」(1946)のたいまつの行進(March of the Doagies)を彷彿とさせる。またロイヤルドルトン・ミュージックホールでのメリーとジャックのパフォーマンス(ヴォードヴィル仕立て)を観ながら、僕はMGM映画「イースター・パレード」(1948)におけるジュディ・ガーランドとフレッド・アステアの姿が二重写しになった。

前作の音楽はシャーマン兄弟だったが、本作の作詞・作曲はスコット・ウィットマンとマーク・シャイマンが担当した。ふたりは公私共にパートナーであり、ブロードウェイ・ミュージカル「ヘアスプレー」でトニー賞を受賞。他に「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」や「チャーリーとチョコレート工場」がある。アカデミー歌曲賞にノミネートされた「幸せのありか」は「チム・チム・チェリー」ほどcatchy(人の心を捉える、人気を呼ぶ)ではなく地味で、全体的にold-fashionedではあるが、高品質と言えるだろう。

大人に成長したジェーンとマイケルがメリーに再会する場面で前作の歌「お砂糖ひとさじで(A Spoonful of Sugar)」の旋律が劇伴で流れ、銀行の頭取ドース・ジュニアが2ペンスの話をする場面で「2ペンスを鳩に」、大団円の風船で飛ぶ場面では「凧をあげよう」が流れるといった具合で、何だかワクワクした。あとバンクス姉弟のお母さんは女性参政権運動に熱を入れていたのだが、ジェーンは労働組合活動に熱心という設定になっており、ああ親子だなぁと説得力がある。

前作最大の見せ場は、メリーたちが(バートが描いた)絵の中に入っていく場面だが、実写とアニメの融合は既にミュージカル映画「錨を上げて」(1945)において、ジーン・ケリーと(「トムとジェリー」の)ジェリーが共演を果たしている。ジーン・ケリーは自身が監督も兼任した「舞踏への招待」(1954)でさらにこの融合実験を推し進めており、「メリー・ポピンズ」の手法は決して新しくない。一方「リターンズ」ではメリーや子どもたちが、壺の表面に描かれた絵の中に入ってゆく。今回はアニメのキャラクターが2Dで、背景が3Dという離れ業を成し遂げている。壺だから弯曲があり、その設定も巧妙に生かされているのでほとほと感心した。珠玉のファンタジーである。

映画館の暗闇に身を沈めている間、本当に至福の時を過ごすことが出来て歌が終わる度に拍手したい衝動に駆られた。今や映画「レ・ミゼラブル」のトム・フーパー(現在ロイド・ウェバー作曲の「キャッツ」を撮影中。出演はイドリス・エルバ、テイラー・スウィフト、イアン・マッケラン、ジュディ・デンチ、ジェニファー・ハドソンほか)や、「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル、そしてロブ・マーシャルと卓越したミュージカル映画監督が沢山いて、心強い限りである。

ところで、ミュージカル「ミス・サイゴン」映画版の監督は一体誰になるのだろう?(2016年には「スラムドッグ$ミリオネア」「スティーブ・ジョブズ」のダニー・ボイルが交渉中というニュースが流れたのだが……)

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紅ゆずる主演 宝塚星組「霧深きエルベのほとり」ほか

2月27日(日)宝塚大劇場へ。宝塚星組「霧深きエルベのほとり」「ESTRELLAS(エストレージャス) ~星たち~」を鑑賞した。

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「霧深きエルベのほとり」は菊田一夫が台本を書き、1963年に星組が初演した。菊田一夫と言えばラジオドラマ「君の名は」が有名で、その放送時間帯は「銭湯が空になる」という伝説を残した。またペテン師2人が繰り広げる珍騒動を描いた戯曲「花咲く港」は1943年に映画化され、木下惠介監督のデビュー作となった。

彼の名前を冠する菊田一夫演劇賞は大変権威のある賞で、東宝「エリザベート」におけるタイトルロールの演技に対して花總まりが演劇大賞を受賞したことは記憶に新しい。

流石に半世紀以上前の作品なので、古臭さを感じなかったと言えば嘘になる。しかし、そこそこ面白く悪くなかった。今まで散々、死ぬほど詰まらないたオリジナル作品を宝塚大劇場で観てきたので。例えば同じ港町を舞台にした作品で小池修一郎(作・演出)の「アデュー・マルセイユ」(春野寿美礼サヨナラ公演)があるが、あれなんかより本作の方がよっぽどマシ。

水夫カールを演じた紅ゆずるは滑舌が悪く、歌も余り上手くないので精彩を欠く。この人のベストは「ガイズ&ドールズ」のネイサン・デトロイト。あの公演は神がかったキャストだった。

ヒロイン・マルギット役の綺咲愛里は美人だし、文句なし。

圧巻だったのが男役二番手の礼真琴。歌が絶品で"That's Takarazuka !"と快哉を叫びたくなったし、彼女のダンスには色気がある。素晴らしいトップになるだろう。

上田久美子の演出は舞台奥行きの使い方が抜群に上手い。例えば前方で主演のふたりが芝居をしていると、奥で別の〈何か〉が進行しているといった具合。あと「ビール祭りの ビールの泡から 二人は浮かび出た♪」という歌の場面で、ふたりがせり上がってくる趣向が愉しい。オープニングに大階段を登場させたのも華やかで、大変結構。

中村暁演出によるショーは可もなく不可もなし。そもそも、星組だから星をテーマにするという発想が安直過ぎる。

小学校1年生の息子の初宝塚体験となったが、退屈だったみたいで、幕間に「もう帰りたい」と言い出して宥めすかすのに大変苦労した。因みに彼のお気に入りは劇団四季の「キャッツ」。インドネシアの影絵などを取り入れた「ライオンキング」はちょっと高尚過ぎたみたい。

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三谷幸喜(作)ミュージカル「日本の歴史」

1月11日(金)シアター・ドラマシティでミュージカル「日本の歴史」を観劇。

作・演出は三谷幸喜。公式サイトはこちら

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卑弥呼から始まって、第二次世界大戦まで1700年に渡る日本の歴史が上演時間2時間半の中で一気に描かれる。それに米テキサス州を舞台に繰り広げられる、ある一家の開拓史が交差する。

一言で評すなら本作は三谷幸喜の奇想が生んだ意欲作であり、かつ壮大な失敗作である。はっきり言って日本の歴史とアメリカ人の家族史が有機的に結びつかず、噛み合っていない。取って付けたような印象。

テキサス州の油田が噴出する場面はジェームズ・ディーンの遺作「ジャイアンツ」であり、ホテル建設やショービジネスの台頭はウォーレン・ベイティの「バグジー」、頼りない兄貴という設定は「ゴッドファーザー」と、ハリウッド映画の元ネタがミエミエというのもいただけない。

出演は中井貴一、香取慎吾、川平慈英、シルビア・グラブ、新納慎也、宮澤エマ、秋元才加(元AKB48)の7人。彼らがとっかえひっかえ何役も演じる。

中井貴一が歌えるのか心配だったが杞憂に終わった。問題なし。香取慎吾✕三谷幸喜といえばNHK大河ドラマ「新選組!」なので、もしかしたら香取演じる近藤勇がもう一度見れるかも?とちょっと期待したのだが、はぐらかされた。

テキサス州のパートは全く違和感がなかった。考えてみれば出演者にハーフが多いからだろう。川平慈英は母親がアメリカ人、秋元才加は母親がフィリピン人、シルビア・グラブは父親がドイツ系スイス人、宮澤エマは宮澤喜一・元総理の孫で父親がアメリカ人だ。

音楽は萩野清子。舞台上では彼女がピアノを弾き、総計4名によるアンサンブルだった。僕は荻野と三谷のコンビ作として舞台「コンフィダント・絆」「グッドナイトスリプタイト」「国民の映画」「ホロヴィッツとの対話」、そして映画「ザ・マジックアワー」「ステキな金縛り」を観ている。しかし彼女の音楽に感心したことは一度もない。だから今回も余り期待していなかったのだが、意外にも良かった。ただ、2曲目のリズムはミュージカル「キャバレー」のナンバー、《ウィルコメン》そのまんまで、如何なものか?と思ったが。

2000年に初演(真田広之 主演)、2003年に再演(白井晃 主演)された三谷のミュージカル「オケピ!」の方が僕は断然好きだ。岸田國士戯曲賞受賞!

ところで三谷さん、そろそろ和製ミュージカル映画を創って欲しいのですが。気は熟したのでは?今か今かと、首を長くして待ってまっせー!

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モンテヴェルディ:オペラ「ポッペアの戴冠」@いずみホール

1月19日(土)いずみホールへ。〈古楽最前線!〉シリーズ、

  • モンテヴェルディ:オペラ「ポッペアの戴冠」

を観劇。20分✕2回の休憩を含め、上演時間4時間の長丁場だった。

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本作は作曲家の死の前年1642年に初演された最初期のバロック・オペラである。

ローマの暴君ネロ(ネローネ)とその後妻ポッペアを巡る史実に基づいており、ポッペアは許嫁の将軍オットーネを裏切りネロを誘惑、徳の道を説く哲学者セネカを自殺に追い込む。ネロは皇后のオッターヴィアを小舟で島流しにし、ポッペアがその後釜に座る。そんな彼女とネロを天上から愛の神が祝福して幕を閉じる。

要約するなら、「不倫は文化だ!」(by 石田純一)、最後に「愛は勝つ」(by KAN)、そして「悪徳の栄え」(by マルキ・ド・サド)でめでたしめでたし、ということになるだろう。勧善懲悪からかけ離れた、こんなimmoral(不道徳な)オペラは後にも先にもない。前代未聞である。幕切れの甘美で陶酔的な愛の二重唱とワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の近似性を指摘する人もいる。しかしトリスタンとイゾルデは不倫の清算を〈死〉で贖うが(そこにカタルシスがある)、「ポッペアの戴冠」はハッピーエンドである。正反対だ。

指揮者のアーノンクールは本作を次のように評している。「基本的なテーマは、破壊的な、それも社会をも破壊してしまう愛の力である」

欲望(愛欲・出世欲)の肯定。それは倫理よりも優先される。もしかしたらモンテヴェルディはAntichrist(反キリスト者)なのではないか?とすら思った。考えてみれば彼の代表作「聖母マリアの夕べの祈り」はあくまでマリア(母なるもの)に対する崇敬であって、キリストを讃えているわけじゃないものね。

特に感銘を受けたのが哲学者セネカが自死を強要され舞台から去った直後の、小姓ヴァレットと侍女ダミジェッラの恋の戯れ。彼らは「出来る限り長く生きて、愛し合いたい」と歌い、ここに死と生の二項対立がくっきりと浮かび上がる。鮮烈である。

ヴァレットは机上の空論を振り回す哲学者を徹底批判する。理性なんかクソくらえ。彼岸(イデア)を否定し、本能や「今」にしか価値がないとする彼の主張は250年後に登場するニーチェの思想(「神は死んだ」)にピッタリ重なる。何という先見性だろう!

本作の主題はラテン語の〈カルペ・ディエム〉(=英語で言えばSeize the day;その日を掴め/その日の花を摘め)そして〈メメント・モリ〉(死を想え)に通じるのではないかと感じた。

また似た言葉として次のようなものがある。

いのち短し 恋せよ乙女(ゴンドラの唄)

人皆生を楽しまざるは、死を恐れざる故なり(吉田兼好「徒然草」)

生ける者(ひと) 遂にも死ぬる ものにあれば この世にある間は 楽しくをあらな(大伴旅人「万葉集」)

指揮・チェンバロが渡邊順生、コンサートマスターが伊佐治道生。古楽器オーケストラは弦楽奏者8名+リコーダー、ドルツィアン(ファゴットの原型)、コルネット、テオルボ(リュート族の撥弦楽器)という編成。

歌手もオケも全員日本人で、これだけ高い質の演奏を実現出来たのだから大したものだ。歌の方は特に斉木健詞(セネカ)、望月哲也(ネローネ)、阿部雅子(ポッペア)、山口清子(ドゥルジッラ)、向野由美子(小姓ヴァレット)が素晴らしかった。一方、加納悦子(オッターヴィア)、岩森美里(乳母アルナルタ)はいまいち。話題のカウンターテナー・藤木大地(オットーネ)はまぁまぁかな。ダミアン・ギヨン、アンドレアス・ショル、米良美一らのレベルには到達していないなという印象を受けた。

古きを温(たず)ねて新しきを知る。斬新で、とにかくワクワクした!

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新演出!東宝ミュージカル「マリー・アントワネット」ダブルキャスト観劇記

梅田芸術劇場でミュージカル「マリー・アントワネット」を2度、観劇。

1月9日(水)ソワレのキャスト、

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14日(月・祝日)ソワレのキャストは、

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僕は東宝が製作したこのミュージカルの初演を2007年に梅芸で観ている。原作は遠藤周作の小説「王妃 マリー・アントワネット」で、演出は栗山民也。作詞・作曲は「エリザベート」「モーツァルト!」「レベッカ」のクンツェ&リーヴァイ。その時の配役は、

  • マリー・アントワネット:涼風真世
  • マルグリット・アルノー:新妻聖子/笹本玲奈(ダブルキャスト)
  • アニエス・デュシャン:土居裕子
  • フェルセン伯爵:井上芳雄
  • ルイ16世:石川禅
  • オルレアン公:高嶋政宏
  • カリオストロ:山口祐一郎

新妻と笹本両方の出演回に足を運んだ。栗山民也はその後、ドイツ・ブレーメン(09年)公演でも演出家として招聘された。また本作は韓国(14年)やハンガリー(16年)でも上演された。

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今回はロバート・ヨハンソンによる新演出版となり、台本も大幅に改訂された。カリオストロという役も消滅した。どうやらロバート・ヨハンソンは韓国で活躍している人らしく、韓国バージョンを逆輸入したというのが真相らしい。

  • ローズ・ベルタン:彩吹真央
  • ジャック・エベール:坂元健児
  • オルレアン公:吉原光夫
  • ランバル公爵夫人:彩乃かなみ

〈遠い稲妻〉〈孤独のドレス〉〈私たちは泣かない〉等、新曲がふんだんに追加され、第1幕冒頭フェルセンのソロ〈マリー・アントワネット〉や、第2幕フィナーレで全員が歌う〈どうすれば世界は〉も初演版にはなかった。

旧演出版はギロチンで次々と人の首がはねられるし、民衆は理性を欠いた単なる暴徒だし、「なんて血なまぐさいミュージカルなんだ!」と思った。容赦のない異色作。ただ僕はそれを面白がったが、当然後味は悪く、繰り返し観ようという気にはなれなかった。

ところが新演出版はガラリと雰囲気が変わり、王妃とフェルセンの悲恋にフォーカスが当てられてロマンティックな作品になった。宝塚歌劇「ベルサイユのばら ーフェルゼンとマリー・アントワネット編ー」に接近した、と言えば分かり易いかも知れない。

というわけで、とっても見やすい、王道を征くミュージカルに生まれ変わった。但し、復讐の連鎖で成立する世界を憂う終曲〈どうすれば世界は〉の内容が、木村信司作による宝塚歌劇「王家に捧ぐ歌」に類似している点は些か気になった。

元々、本作のタイトルは「MA」だった。

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MAはマリー・アントワネット( Marie Antoinette )のイニシャルであると同時に、 掃き溜め生まれのマルグリット・アルノー( Marguerite Arno )も意味している。つまり〈ふたりでひとり〉、一人の女性の分身光と影を描いていると解釈出来る。言い換えるならばドッペルゲンガー二重身)であり、ミュージカル「モーツァルト!」に於けるヴォルフガングとアマデの関係にそっくりである。同じ遺伝子を持つ人間でも、環境により全く違った性格に育つというわけだ。

僕は花總まり演じるマリー・アントワネットを都合3回観ている。

  • 「ベルサイユのばら2001」@宝塚大劇場、2001年
  • 「1789 -バスティーユの恋人たち-」@梅芸、2016年
  • 「マリー・アントワネット」@梅芸、2019年

マリーの没年が37歳であり、花ちゃんは現在45歳。流石に最初は「この役には年を取りすぎでは?」と感じたが、追い詰められてゆく物語の後半に進むに従いどんどん良くなっていくので驚嘆した。「ベルばら」時代より演技に深みを増し、断然素晴らしい!〈女であること〉ゆえの哀しみ。気品があり、「やっぱりコスチューム・プレイで彼女の右に出るものはいないなぁ」と改めて確信した。笹本玲奈は歌が上手いし特に欠点はないのだけれど(若さという利点もある)、やっぱり庶民のマルグリット・アルノーの方が似合っていた。

今回のマルグリットについては目力(めぢから)があってパワフルなソニンに軍配を上げる。昆夏美も決して悪くないんだ。しかし、花總まり✕ソニンのコンビの方が強烈過ぎた。圧巻だった。

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