舞台・ミュージカル

劇団四季「オペラ座の怪人」 2022

4月19日(火)大阪四季劇場@梅田で「オペラ座の怪人」を観劇(ソワレ)。

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今はなき大阪MBS劇場で本作を初めて観たのは1995年、もう四半世紀以上も前のことだ。怪人役は山口祐一郎、ヒロインのクリスチーヌは井料瑠美、ラウルは柳瀬大輔だった。紅白歌合戦にも出場した市村正親のファントムには間に合わなかったが、後に「市村座」で幾つかのナンバーを生で聴くことが叶った。

オペラ座の怪人 2007.05.19

1998年にウエストエンド(ロンドン)、同時多発テロが起こった2001年にブロードウェイ(NY)、そして2012年9月2日に閉幕したゴージャスなラスベガス版も観た。

ラスベガス便りその1 《オペラ座の怪人》 2009.01.02

今回のキャストは

ファントム:岩城雄太、クリスティーヌ:海沼千明、ラウル:加藤迪 、カルロッタ:河村彩  ほか。

岩城のファントムはエキセントリック、海沼はなかなか歌唱力があり、悪くなかった。

小学校5年生(10歳)の息子を連れて行ったのだが途中怖いと言い出して、第一幕が終了すると妻と帰ってしまったのは残念だった。まだ早すぎたのか……。『キャッツ』は気に入って最後まで観たのだが。

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真風涼帆、潤花主演:宝塚宙組「NEVER SAY GOODBYE」

3月11日宝塚大劇場で『NEVER SAY GOODBYE 』を観劇した。出演は真風涼帆、潤花、芹香斗亜ほか。関係者に新型コロナウィルス感染者が出たため、初日の2月5日から27日までの公演はすべて中止になった。

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小池修一郎(作・演出)、フランク・ワイルドホーン作曲『NEVER SAY GOODBYE』は2006年に宝塚宙組で初演された。和央ようかと花總まりのサヨナラ公演で、後に和央はワイルドホーンと結婚したので本当に驚かされた。そして退団後しばらく和央のマネージャーをしていた花ちゃんは芸能界に復帰、ミュージカル『エリザベート』のタイトルロールで菊田和夫演劇大賞を受賞することになる。

物語の始まりは1936年。ナチス政権下のベルリンオリンピックに対抗してバルセロナで人民オリンピックが開かれる。取材に訪れた人気写真家ジョルジュはスペイン内戦に巻き込まれてゆく。

主人公のモデルは明らかに写真家ロバート・キャパであり、スペイン内戦が舞台という点ではヘミングウェイの小説『誰がために鐘は鳴る』の要素も加味されていると言えるだろう。

正直言って初演を観た感想はときめく要素が皆無で、退屈だった。ところが!今回の再演は飽くことなく大変楽しめた。真風涼帆がはまり役だったということもあるだろう。和央ようかは滑舌が悪く、何を喋っているんだか台詞が聞き取りにくかった。改めて聴くとワイルドホーンの楽曲もなかなか良かった。

特にフィナーレ、マタドールのマントを男役たちが一斉に翻すシーンはむちゃくちゃ格好よかった!!痺れた。Blu-rayを購入しようと思う。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定演 2022/ミュージカル「銀河鉄道の夜」(再演)と「エリザベート」

3月13日(日)フェスティバルホールへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 第17回 定期演奏会を聴く(最終公演)。指揮は総監督の梅田隆司先生。

曲目は、

第1部
・ミュージカル『銀河鉄道の夜』(作曲:西村友 脚本:中島徹 振付:洋あおい 演出:梅田隆司)
・YOASOBIメドレー(夜に駆ける〜アンコール〜ハルジオン〜あの夢をなぞって〜怪物〜三原色〜ハルカ〜群青〜ラブレター)

第2部
・リード:アルメニアン・ダンス Part 1
・高昌帥:吹奏楽のための協奏曲
・野球応援コーナー
・ミュージカル『エリザベート』(脚本・作詞:ミヒャエル・クンツェ 作曲:シルヴェスター・リーヴァイ 日本語詞:小池修一郎)
・リクエスト・コーナー(和泉宏隆:宝島/ミシェル・ルグラン:映画『ロシュフォールの恋人たち』より“キャラバンの到着”)
・〈卒業生を送る歌〉『EXILE 〜道〜』
・松任谷由実:春よ、来い
・中島みゆき:時代
・タケカワ・ユキヒデ(樽屋雅徳 編):銀河鉄道999~星に願いを(アンコール)

ミュージカル『銀河鉄道の夜』は2017年の定期演奏会で上演されており、今回は再演である。元々は劇団ひまわりのオリジナルだ。僕はネットでDVDを購入し鑑賞した。アニメ『進撃の巨人』ミカサ役の石川由依が出演している。

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部✕劇団ひまわり/ミュージカル「銀河鉄道の夜」 2017.01.22
大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定演/ミュージカル「銀河鉄道の夜」〜宮沢賢治の深層心理にダイブする。 2017.02.21

梅田先生のおかげでこのミュージカルのことを知り、大好きな作品となった。

兎に角、西村友が手がけた楽曲が素晴らしい。ただ、大阪桐蔭バージョンはダイジェストなので割愛されたナンバーが幾つかある。取り分け、大切なことは忘れないこと!♪と、♪鳥捕りが鳥捕りに来て鳥捕りそこね、一人取り残され帰る鳥捕りの唄♪がカットされているのは惜しい。

2017年に書いた記事でも詳しく論じたが、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読み解くには大きな2つのポイントが有る。まずジョバンニ=宮沢賢治、カムパネルラ=結核を患い24歳で死去した賢治の妹・トシと解釈可能なこと。ここで賢治の詩集『春と修羅』に収録されている、トシとの別れを描写した「永訣の朝」がヒントとなる。『春と修羅』は直木賞・本屋大賞をダブル受賞した恩田陸の小説『蜜蜂と遠雷』の中で国際ピアノコンクールの課題曲として登場するので併せて読まれたし。映画版も傑作だ。

音楽映画の金字塔現わる!!「蜜蜂と遠雷」 2019.10.10

もう1つは、この小説の背景にキリスト教があるということ。賛美歌320番「主よ、みもとに 近づかん」が歌われる場面もある。賢治は宣教師のいるキリスト教会に通ったり、無教会派のキリスト教信徒と親交を深めたりしていた。

三位一体(父と子と聖霊)に女性を内包しないキリスト教(一神教)は父性原理の宗教である。父性原理の特徴は〈切断〉にある。『銀河鉄道の夜』にもその厳しさがあり、ジョバンニの父は生きているのに遠くに行っていて、物語の最後まで不在である。つまり息子との関係性を〈切断〉している。また旅の途中に登場する青年は「ほんとうの神さまはもちろんたった一人です」と言う。

カンパネルラの行動や、蠍(さそり)の火の話で繰り返される〈自己犠牲〉というテーマもキリスト教的だ。ジッドの小説『狭き門』や、キリスト教色が強いアンデルセンの童話『人魚姫』も〈自己犠牲〉の物語であり、ワーグナーの歌劇『さまよえるオランダ人』のゼンタや『ローエングリン』のエルザ、『神々の黄昏』のブリュンヒルデもまた、〈自己犠牲〉によって主人公、あるいは世界を救済する。またアンデルセン『マッチ売りの少女』の根底には、信仰心があつければたとえ現世で貧しく惨めな暮らしをしていても、死んで天国に行けば幸福になれるというキリスト教の思想があり、『銀河鉄道の夜』にも通底している。

一方、『銀河鉄道の夜』からキリスト教の厳しさを排除し、母性原理を導入すると松本零士の漫画『銀河鉄道999』になる。鉄郎の母にそっくりのメーテルは母性の象徴であり、母性原理の特徴は〈すべてを包み込む/呑み込む〉ことにある。そこでは自他の境界が曖昧になる。

八百万の神を信仰する日本は従来、母性社会であった。終身雇用というのも正社員を〈家族〉とみなし、なあなあの関係を是とする制度なので母性的である。

2017年の公演ではサザンクロス駅の場面で背景のスクリーンにKAGAYAが製作したプラネタリウム版「銀河鉄道の夜」が映し出されたのだが、今回驚かされたのは全て生徒が制作した3DCGアニメーションによる映像になっていたこと!!機関車内部のモデリングなんか見事なもので、ちゃんと立体空間に見えた。君らはピクサー・アニメーション・スタジオの人か!?

あと感心したのは、音響のミキシングがプロの舞台レベルに進化しており、ソリストの歌詞がしっかりと聴き取れたこと。『ラ・ラ・ランド』を上演したときなんかマイクが拾う出演者の声がオフ気味で、周囲の音に埋もれがちだった。

『YOASOBIメドレー』は大阪桐蔭がミュージック・ビデオの演奏にも参加している♪ラブレター♪がとっても素敵♡。音楽に対する溢れんばかりの熱い告白だ。

『アルメニアン・ダンス Part 1』を大阪桐蔭が演奏するのは今回が初めてだそうで、これは昨年末亡くなった淀工の丸谷明夫先生に対する追悼と、その想いを継承する決意の高らかな宣言でもあったろう。

巨星墜つ〜追悼・丸谷明夫が日本の吹奏楽に残した功罪

生前、丸ちゃんがこれを「吹奏楽にとってのベートーヴェン第九のような(誰もが知っている)曲にしたい」と常々語っていたことを梅田先生が紹介し、「でも桐蔭版は(座奏ではなくマーチング仕立てで)生徒が動き回るから、丸谷先生に怒られちゃうかも知れません」と。最初のフォーメーション(隊列)が人文字の“M"だったのは、やはりMARUTANIの頭文字なのだろう。

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この曲は僕自身、丸ちゃんの指揮で演奏したことがあるので、なんだか胸が一杯になった。

《1000人のアルメニアンダンス》 丸谷明夫 語録 2009.01.19
淀工「グリーンコンサート」2009 IN 大阪城ホール 2009.01.20

高昌帥『吹奏楽のための協奏曲』は全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞した自由曲なので、さすがの上手さ。ただオーボエ・ソロの音程が気になった。昨年全国大会直後に聴いたときは、そんなことなかったのだけれど。

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部「全国大会練習会・金賞報告演奏会 in 伊丹」 2021.11.13

『エリザベート』で演奏されたのは、〈プロローグ〜皇后の務め〜愛と死の輪舞(ロンド)〜私だけに〜退屈しのぎ〜私が踊る時〜闇が広がる〜夜のボート〜フィナーレ〉

以前大阪桐蔭が演奏していたのはヨハン・デ=メイによる吹奏楽編曲版だった。

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2013!@ザ・シンフォニーホール 2013.02.27

だから今回も同じだろうと高をくくっていたら、歌付きそれも舞台衣装を身にまとったガラ・コンサート形式だったので度肝を抜かれた。歌詞は小池修一郎による宝塚バージョンだったので、よく歌劇団から許可が降りたな、太っ腹だなと感心することしきり。

このミュージカル最大の見せ場は第1幕フィナーレでエリザベートが有名な肖像画と同じエーデルワイスの髪飾りと豪華な白いドレスで階段を降りてくるシーンなのだが、それも見事に再現されていた。

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僕は京都国立博物館の特別展でこの絵の本物を見たことがある。

京都でハプスブルク気分! 2010.02.19

あとトートの黒い衣装が格好良かった!

ミュージカル「エリザベート」は1992年にアン・デア・ウィーン劇場で産声を上げた。ベートーヴェン:交響曲第5番・6番やヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇『こうもり』、レハール:喜歌劇『メリー・ウィドウ』などが初演された由緒ある劇場である。次に上演されたのが日本で1996年2月の宝塚雪組公演(一路真輝・花總まり・轟悠 他)。ここで歌劇団(演出家・小池修一郎)からの要請で新曲 ♪愛と死の輪舞(ロンド)♪  が追加された。宝塚はあくまで男役メイン(娘役は添え物)であり、タイトルロール=エリザベート主演から死神トート中心の物語に潤色する必要があったのだ。

日本初演と同年の8月にハンガリー初演があり、♪愛と死の輪舞(ロンド)♪ が歌われた。デュエット・ナンバー ♪私が踊る時♪ が追加されたのは2001年ドイツ初演(エッセン版)から。宝塚大劇場では2002年花組公演(春野寿美礼・大鳥れい)でのお披露目となった。

余談だが、宝塚版における僕が考えるオールタイム・ベスト・キャストを挙げておく。各組のBlu-rayが発売されているので参考にされたし。

エリザベート:花總まり(96年雪組/98年宙組)、 トート:明日海りお(14年花組)、 フランツ・ヨーゼフ:北翔海莉(14年花組)、 ルキーニ:轟悠(96年雪組)、 ルドルフ:朝海ひかる(98年宙組)、 少年ルドルフ:月影瞳(96年星組)、 ゾフィー:出雲綾(96年星組/98年宙組)、 エルマー:和央ようか(96年雪組)、 ヴィンディッシュ嬢:陵あきの(96年星組/98年宙組)

閑話休題。

ゴージャスなサウンドの『キャラバンの到着』をまた体験できたのも嬉しかったな。胸がスカっとする。

そしてユーミンの『春よ、来い』を聴きながら、新型コロナ禍の収束と、ウクライナでの戦争の終結を祈らずにはいられなかった。そういう切実さがあった。

それから毎回書いていることだが、大阪桐蔭の『銀河鉄道999』と出会わなかったら、僕がこの映画やTV版を観たり、『銀河鉄道の夜』との違いについて真剣に考察することもなかっただろう。本当にありがとう。そして近いうち是非『ウエスト・サイド・ストーリー』も久しぶりに聴かせてください!

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映画「ウエスト・サイド・ストーリー」(スピルバーグ版)

評価:AAA (最高!)

「今までスピルバーグが監督した映画の中で、記憶に残った女優は誰か?」と問われたら、僕は『E.T.』のドリュー・バリモアと、『宇宙戦争』のダコタ・ファニングくらいしか思い付かない。『インディ・ジョーンズ』シリーズのヒロインなんか、キャーキャー騒いでいるだけ。かように“子供に対する演出は得意だけれど、大人の女を扱うのは苦手な監督”という印象が彼には付き纏ってきた。彼の映画でアカデミー賞の演技部門を受賞した男優は『リンカーン』のダニエル・デイ=ルイスと『ブリッジ・オブ・スパイ』のマーク・ライランスがいるが、女優は皆無という事実がそのことを裏付けているように思う。

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ところが最新作『ウエスト・サイド・ストーリー』 は違った。アニタ役のアリアナ・デボースはチャーミングでセクシー、そして僕は彼女のダイナミックなダンスの虜になった。きっとスピルバーグ映画で史上初めてオスカーを手にする女優になるだろう。そして新人のレイチェル・ゼグラーも凛として、揺るぎない意志で前に進む鮮烈なマリア像を打ち出しており、これだけ女たちが輝いているスピルバーグ映画を他に知らない。

ミュージカル映画史に革命をもたらした名作『ウエストサイド物語』(1961)をリメイクする。このニュースを耳にした時「どう考えても勝算のない、なんと無謀な挑戦だろう」と誰しもが思っただろう。しかしスピルバーグは高いハードルを見事にクリアした。

本作はプエルトリコから来た有色人種と、ポーランド系白人との、民族の違いによる社会の分断を描いている。しかしそれだけではないことに今回気付かされた。シャーク団の男たちはプエルトリコに帰りたいと歌い、アニタら女たちはアメリカの方が住心地が良いと主張する。そしてジェット団の男たちがアニタに乱暴を働こうとした時 、ジェットの女たちは彼女を助けようと必至に抵抗する。つまり男と女の間に横たわる深い溝が描かれている。さらにダンスパーティの場面で2つのグループを一緒に踊らせようとする明るい青年(グラッド・ハンド)がゲイであることをからかわれたり、ジェッツに入団希望している男装の女の子「エニボディズ」をトランスジェンダーでノンバイナリーの俳優、アイリス・ミーナスが演じることで、LGBTQ+とストレートの人々との性的指向を巡る分断も前面に押し出されているあたり、脚色を担当したトニー・クシュナーの面目躍如、 さすがエイズ時代の黙示録として書かれた戯曲『エンジェルズ・イン・アメリカ』で1993年にピューリッツァー賞を受賞した人だけのことはあるな、と感心することしきりだった。

【永久保存版】どれだけ知ってる?「ウエスト・サイド・ストーリー」をめぐる意外な豆知識 ( From Stage to Screen )

現在ディズニー・プラスから配信されているドキュメンタリー(『サムシングズ・カミング:ウエスト・サイド・ストーリー』)の中で、スピルバーグは舞台版のクリエイターたち、アーサー・ローレンツ(台本)、ジェローム・ロビンス(振付)、スティーヴン・ソンドハイム(作詞)、レナード・バーンスタイン(作曲)のことを「4人のゲイのユダヤ人(They are four jewish gay men.)」と明言している。その性的マイノリティからの視座がはっきりと打ち出されている点が、リメイク版の肝なのだ。

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ミュージカル「INTO THE WOODS ーイントゥ・ザ・ウッズ」@梅芸は壊滅的大惨事(Disaster)だった!!

2月12日(土)梅田芸術劇場へ。作詞・作曲:スティーヴン・ソンドハイム、台本:ジェームズ・ラパインによるミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』を観劇した。熊林弘高はミュージカルを演出するのが、今回初めてだそう。

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僕がこのミュージカルを最初に鑑賞したのは北米版(輸入)DVDだった。1987年ブロードウェイ初演を映像収録したもので、台本を書いたラパインが演出し、バーナデット・ピータースが魔女を演じた。勿論、日本語字幕はない。

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生の舞台は2004年東京・新国立劇場における日本初演を観た。宮本亜門が演出し、魔女:諏訪マリー、パン屋:小堺一機、その妻:高畑淳子、シンデレラ:シルビア・グラブ、赤ずきん:SAYAKA(神田沙也加)といった充実したキャスト。息を呑むほど素晴らしかった!なお神田沙也加は当時17歳、これが初舞台で水を得た魚のように飛び跳ねていた。同じプロダクションによる2006年の再演は兵庫県立芸術文化センター大ホールで鑑賞、赤ずきん役は宮本せいらに交代していた。

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2014年ロブ・マーシャル監督による映画版については過去記事をお読み頂きたい。現在ではDisney+から配信されている。

From Stage to Screen 〜映画「イントゥ・ザ・ウッズ」 2015.03.17
森が私に語ること〜「イントゥ・ザ・ウッズ」暗闇の奥へ 2015.03.22

このように僕が大好きなミュージカルなのだが、今回の演出はあまりにも酷く、途中で心底帰りたくなった。ソンドハイム作品では初めての事態である。正にDisaster !!と表現するしかあるまい。この途中で帰りたいという気持ちに至ったのは劇団四季のオリジナル・ミュージカル『ドリーミング』とか、野村玲子がお粗末だった『李香蘭』以来かも。

まず歌が聴くに耐えない。特にシンデレラ役・古川琴音と、パン屋の妻役・瀧内公美が酷い。古川なんか高音の音程が完全に外れている。あまりの惨状(雑音)に耳を塞ぎたくなった。赤ずきん役・羽野晶紀は絶叫が耳障りだし、年を取りすぎ。調べてみたら53歳。こ、これって何かの冗談ですか!?全く笑えないんですけど……。

全体に演技が中学校の学芸会レベルで、ふざけているとしか思えない。グリム兄弟に対する敬意が欠けている。童話を舐めんなよ!!怒り心頭に発した。

結局、魔女役・望海風斗だけが良かった。カンパニーの中で歌唱力がずば抜けている。

故に今後一切、熊林弘高が演出する舞台は見ない、とここに宣言する。

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ミュージカル「蜘蛛女のキス」

2021年12月17日(金)、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティへ。ミュージカル『蜘蛛女のキス』を観劇した。

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出演は安蘭けい、石丸幹二、相葉裕樹ほか。演出は劇団チョコレートケーキの日澤雄介。音楽と歌詞は、『キャバレー』や『シカゴ』などを生み出してきたコンビ、ジョン・カンダーとフレッド・エブが手掛けた。

このミュージカルのブロードウェイ初演は1993年。トニー賞でミュージカル作品賞・主演女優賞(チタ・リヴェラ)・主演男優賞・助演男優賞・脚本賞(テレンス・マクナリー )・楽曲賞・衣装デザイン賞を受賞している。

日本では1996年にブロードウェイと同じハロルド・プリンス演出により、麻実れい、市村正親、宮川浩が出演し初演された。訳詞は岩谷時子。僕は同じキャストで98年の再演を観ている。

安蘭けいは歌も踊りもそつなくこなす優れた役者だが、華がないので麻実れいに軍配を上げる。石丸幹二は市村正親と互角の勝負。今回の演出も悪くなかったが些か地味(simple)で、ハロルド・プリンス版のほうが色彩豊かだった。

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ブロードウェイの鬼才リン=マニュエル・ミランダが初監督したミュージカル映画『チック、チック…ブーン!』(tick, tick...BOOM!)

ピューリッツァー賞(戯曲賞)を受賞したミュージカル『ハミルトン』の台本・作詞・作曲・主演を兼任、ディズニー映画『モアナと伝説の海』や『ミラベルと魔法だらけの家』の作詞・作曲も手がけている鬼才リン=マニュエル・ミランダの初監督作品『チック、チック…ブーン!(tick, tick...BOOM!) が2021年11月12日よりNetflixから配信されている(こちら)。『RENT/レント』の台本・作詞・作曲を手がけ、死後にピューリッツァー賞を受賞したジョナサン・ラーソン(享年35歳)を主人公とするミュージカル映画で、歌われる楽曲は全てラーソンによるもの。音楽に関してミランダは今回ノータッチである。

評価:A+

ラーソンはダイナー(軽食レストラン)でウェイターとして働きながら夜はミュージカルを創作し、コツコツと試聴会(ワークショップ)を開催するものの、なかなか出資者(スポンサー)が見つからない。もうすぐ30歳の誕生日を迎えるのに、まだ何者でもない自分への焦燥や不安、煩悶が描かれる。

本作を十分に満喫するためには少なくとも『RENT/レント』を知っているということが前提となる。つまりラーソンが世紀の大傑作を生み出す瞬間=【ゼロ時間】に向かってひた走る映画だからである。この物語の先にあの『RENT』があるのだという期待・感慨抜きにはワクワク感が半減されてしまうだろう。

映画「チック、チック…ブーン!」を語る前に、ミュージカル「RENT/レント」について触れない訳にはいかない。

例えばラーソンが「君は“エンジェル”だ!」と称賛するゲイの友人との関係性が『RENT』のキャラクター設定に緊密に結びついているし、ラーソンの自宅に設置された留守番電話の応答メッセージ"Speak !"が『RENT』と同じだったりする、といった具合。

観ている途中に気がついたのだが、本作はリン=マニュエル・ミランダ版『オール・ザット・ジャズ』なのだ。ブロードウェイの振付師・演出家でもあったボブ・フォッシー監督の自伝的作品で、1980年のカンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを黒澤明の『影武者』と分かち合った。ロイ・シャイダー演じる主人公はブロードウェイの演出家。新作ミュージカルの準備を進めながら彼は死の影に怯え、焦り、混乱し、幻想を見る。レニー・ブルースを彷彿とさせるスタンダップ・コメディアンが登場し、その舞台上の一人語りが『チック、チック…ブーン!』のアンドリュー・ガーフィールドの姿に重なる。さらに『オール・ザット・ジャズ』の元ネタを遡ると、フェデリコ・フェリーニ監督『8 1/2』にたどり着く。「人生は祭りだ。一緒に過ごそう」

ミランダは間違いなくジョナサン・ラーソンの生き様に自分自身を投影している。ラーソンは作詞・作曲家スティーヴン・ソンドハイムを心から敬愛しており、 ソンドハイムが27歳で(『ウエスト・サイド物語』の作詞家として)ブロードウェイ・デビューしたことを繰り返し語る。その想いはミランダのそれとピッタリ一致する。映画の最後、ラーソン自宅の留守番電話に吹き込まれたソンドハイムからの激励メッセージは本人の肉声であり、ソンドハイム自身が台詞をリライトしたそうだ。ミランダも2009年ブロードウェイでの『ウエスト・サイド物語』スペイン語版リヴァイヴァル上演に際し、歌詞のスペイン語訳をソンドハイムと共同作業している。

【永久保存版】どれだけ知ってる?「ウエスト・サイド・ストーリー」をめぐる意外な豆知識 ( From Stage to Screen )

また、ピューリッツァー賞を受賞したソンドハイムのミュージカル"Sunday in the Park with Georgre"(日曜日にジョージと公園で/ジョージの恋人)のことを少し知っていたほうが本作をより一層楽しめるだろう。新印象派の画家ジョルジュ・スーラが主人公で(フランス語の「ジョルジュ」を英語読みすると「ジョージ」になる)、彼が点描法で大作『グランド・ジャット島の日曜日の午後』(シカゴ美術館所蔵)を書き上げる場面が第1幕のクライマックスとなっている。

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『チック、チック…ブーン!』の前半、ラーソンは自宅のテレビでその場面を見ている(動画はこちら)。マンディ・パティンキンとバーナデット・ピーターズが主演した1984年初演の舞台を撮影したもので、僕は北米版DVDを持っている。

『チック、チック…ブーン!』のダイナーで歌われるラーソンが作詞・作曲した"Sunday"は明らかに"Sunday in the Park with Georgre"第1幕終曲に対するパスティーシュである。green,blue,yellowなど色彩を表す言葉が連発されるのも共通している。そしてこの"Sunday"にブロードウェイのレジェンドたちが大勢出演している。まずダイナーの厨房では監督のリン=マニュエル・ミランダがスペイン語を喋りながら調理している。店のカウンターには『ハミルトン』のスカイラー姉妹や『キス・ミー・ケイト』でトニー賞ミュージカル主演男優賞を受賞したブライアン・ストークス・ミッチェル、そして『ファン・ホーム』のベス・マローン(役と同じ黒縁メガネを掛けている)が座っている。テーブル席には映画『キャバレー』(ボブ・フォッシー監督)のMC役でアカデミー助演男優賞を受賞したジョエル・グレイ、『ウエストサイド物語』のアニタや『シカゴ』(ボブ・フォッシー振付・演出)のヴェルマ、『蜘蛛女のキス』の蜘蛛女などでブロードウェイ・オリジナル・キャストを務めたチタ・リベラ、リヴァイヴァル版『シカゴ』ヴェルマ役でトニー賞ミュージカル主演女優賞を受賞したビビ・ニューワース、ブロードウェイ『オペラ座の怪人』のファントム役として最多出演回数を誇るハワード・マクギリン、『ハデスタウン』でトニー賞ミュージカル助演男優賞を受賞したアンドレ・デ・シールズ、そしてバーナデット・ピーターズ本人もいる(主人公が彼女の手を取る場面は"Sunday in the Park with Georgre"の再現である)。さらに『RENT』のオリジナル・キャスト、アダム・パスカル(ロジャー)、ウィルソン・ジャーメイン・ヘレディア(エンジェル)、ダフニ・ルービン=ヴェガ(ミミ)が浮浪者(bums)役で登場する。

グランド・ジャット島はパリ・セーヌ川の中洲にあり、両岸と橋で結ばれている。ブロードウェイがあるマンハッタン島もハドソン川河口部の中洲にある。つまり両者には共通点があるのだ。

ソンドハイムは2021年11月26日に91歳で亡くなったが、その3日後の日曜日に彼を慕うブロードウェイの演劇人たちがニューヨークのタイムズスクエア(ディスカウントプレイガイドtktsのある所)に集った(動画はこちら)。まずリン=マニュエル・ミランダがソンドハイムの書いた本の一節を朗読する(ここで名前が出てくるラパインとは、"Sunday in the Park with Georgre"の台本を書き、演出したジェームズ・ラパインのこと) 。そして全員でソンドハイム作詞・作曲の"Sunday"を歌う。ブライアン・ストークス・ミッチェルや歌手ジョシュ・グローバンの姿もある。あたかも人々が日曜礼拝で教会に集い、牧師が聖書を読み、その後に参会者が賛美歌を歌う情景のようだ。

日本人には余りピンとこないと思うが、アメリカ演劇業界の人々にとってソンドハイムは神にも等しい存在なのだ。それは世界中のアニメーターにとって、宮崎駿がどういう存在かという関係性に等しい。

かようなわけで『チック、チック…ブーン!』はジョナサン・ラーソンとスティーヴン・ソンドハイムに対する熱烈な恋文に仕上がっている。

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映画「チック、チック…ブーン!」を語る前に、ミュージカル「RENT/レント」について触れない訳にはいかない。

ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』『ハミルトン』で主演・台本・作詞・作曲と八面六臂の活躍をし、トニー賞を総なめにした上にピューリッツァー賞までさらった鬼才リン=マニュエル・ミランダの監督デビュー作で、Netflixから配信されているミュージカル映画『チック、チック…ブーン!(tick, tick...BOOM!) について熱く語りたいのだが、その前にアンドリュー・ガーフィールド演じる主人公ジョナサン・ラーソンについて押さえておく必要がある。ならば彼が台本・作詞・作曲を兼任したミュージカル『RENT/レント』にも触れない訳にはいかないだろう。

1980年代後半から90年代初頭にかけ世界中でHIV感染症が猛威を奮い、沢山の人々がAIDSで倒れた。亡くなった有名人を何人か挙げると、映画『ジャイアンツ』『風と共に散る』に出演した俳優ロック・ハドソン(1985年死去)、ミュージカル『コーラスライン』の原案・振付・演出をしたマイケル・ベネット(1987年死去)、フランス映画『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』を監督したジャック・ドゥミ(1990年死去)、ディズニー・アニメ『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』の作詞家ハワード・アッシュマン(1991年死去)、英国のロックバンド・クイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリー(1991年死去)、ヒッチコック映画『サイコ』に主演したアンソニー・パーキンス(1992年死去)、映画『愛と哀しみのボレロ』にも出演した20世紀バレエ団の花形ダンサー、ジョルジュ・ドン(1992年死去)、ソ連生まれのバレエ・ダンサー、ルドルフ・ヌレエフ(1993年死去)など

この時代を象徴する黙示録として生まれた演劇分野における代表作が『RENT』であり、トニー・クシュトナーが書いた戯曲『エンジェルス・イン・アメリカ』である。後者は原作者自身が脚色し、映画『卒業』のマイク・ニコルズが監督したテレビ(HBO)のミニ・シリーズも優れているのでお勧めしたい。アル・パチーノ、メリル・ストリープ、エマ・トンプソンといった豪華出演陣で、現在ではU-NEXTから配信されている。

『RENT』はプッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』を原作としており、ヒロイン・ミミの名はそこから来ている。「ムゼッタのワルツ」の旋律も引用される。作品を鑑賞する前に是非知っておきたい知識として「ボヘミアン」という概念が挙げられる。元々は流浪の民=ロマを指す言葉だが、「ボヘミアン・アーチスト」とは芸術家や作家、世間に背を向けた者などで、伝統や習慣にこだわらない自由奔放な生活をしている人々のこと。『ラ・ボエーム』ではパリの屋根裏部屋で暮らす詩人・画家・音楽家・哲学者であり、それが『RENT』ではニューヨーク・イーストヴィレッジで暮らす若者たちに置換されている。『RENT』とは家賃のことだが、『借りぐらし』と言い換えることも可能だろう。

『RENT』が(オフからオンに進出し)ブロードウェイで初演されたのは1996年4月29日。トニー賞のミュージカル部門で最優秀作品賞・台本賞・楽曲賞・助演男優賞(エンジェル役:ウィルソン・ジャーメイン・ヘレディア)を受賞し、『エンジェルス・イン・アメリカ』同様ピューリッツァー賞の最優秀戯曲賞にも輝いた。しかしラーソンはオフ・ブロードウェイ・プレビュー公演初日未明(1996年1月25日)に突然亡くなった。死因がAIDSだと勘違いしている人もいるが、実際はマルファン症候群に合併した大動脈解離だった。享年35歳。だからラーソン本人はこの作品が大成功を収め、数々の賞を勝ち取るという未来を知る由もなかった。なお、彼には女性の恋人がいたし(付き合っていた恋人をレズビアンに奪われたらしい)、ゲイではなくストレートだったようだ。

本作が画期的で素晴らしい点は多様性(diversity)に対して寛容であるということだろう。性癖ではストレート、ゲイ、ドラァグクイーン、レズビアン、バイセクシャルが登場し、ヘロイン中毒で注射器からHIV感染した者もいる。人種も白人(WASPとユダヤ人)、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック(ラテン)系、アジア系(嘗てブロードウェイ公演にMayumi Andoという日系の役者が出演していた)と多岐に渡る。『チック、チック…ブーン!』で描かれているようにラーソンは誰に対しても隔てなく接する。Friendlyで、共感性が極めて高いのだ。多様性(diversity)に不寛容(intolerant)だったトランプ政権下、"I can't breathe."という言葉を残し警官に殺されたジョージ・フロイド事件に端を発するBlack Lives Matter(BLM)運動を経たいま、『RENT/レント』が訴えかける価値観がより一層の輝きを放ち僕たちの心を照らしてくれる、そう感じられる。

僕は1998年の日本初演を大阪シアター・ドラマシティで観ている。演出はマーサ・ベンタ、出演は山本耕史、宇都宮隆、KOHJIRO、浜口司、KONTA、森川美穂ほか。これが酷い出来で、全く好きになれなかった。怒り心頭に発して途中で帰りたくなったくらい。要因はいくつか挙げられる。まず山本くん以外はミュージシャンを本業とする人が多く、演技が拙かった。またロックコンサートと勘違いするくらいの大音響で、難聴になるんじゃないかと耳を塞ぎたくなった。そして、やはり日本人だけのキャストで本作を上演するのは土台無理な話なのではないか?多様性の欠片もなく、作品の本質が見失われてしまう。それは『ウエストサイド物語』にしろ、『ラグタイム』にしろ同じことだ。

【永久保存版】どれだけ知ってる?「ウエスト・サイド・ストーリー」をめぐる意外な豆知識 ( From Stage to Screen )

2005年にクリス・コロンバス監督による映画版を鑑賞し、初めて本作の素晴らしさが理解出来た。映画ではアンソニー・ラップ(マーク役)、アダム・パスカル(ロジャー)、ジェシー・L・マーティン(コリンズ)、ウィルソン・ジャーメイン・ヘレディア(エンジェル)、テイ・ディグス(ベニー)、イディナ・メンゼル(モーリーン)と6人のブロードウェイ・オリジナル・キャストが集結した。新しいキャスト、ミミ役ロザリオ・ドーソン、ジョアン役トレイシー・トムズも良かった。なお、イディナ・メンゼルとテイ・ディグズは本作での共演が縁で2003年に結婚したが、2013年に離婚している。またトレイシー・トムズは舞台版『RENT』のオーディションに何度も落ちていたが、映画での好演が高く評価され、3年後に同じジョアン役でブロードウェイの舞台に立てた。

イディナ・メンゼルは後にディズニー・アニメ『アナと雪の女王』のエルサ役に抜擢され、"Let It Go"が世界中で大ヒット、センセーションを巻き起こし、アカデミー歌曲賞を受賞したことは記憶に新しい。アンソニー・ラップは #MeToo 運動が盛り上がった2017年、14歳のときに舞台で共演したケヴィン・スペイシーが自宅で開いたパーティに招かれ、その夜に彼からセクシャル・ハラスメントを受けたと告白。追い詰められたスペイシーはハリウッド追放の憂き目にあった。

映画『チック、チック…ブーン!(tick, tick...BOOM! )』では、ジョナサン・ラーソンが創作活動をしながら、軽食レストラン(ダイナー)でウェイターとして働く様子が描かれているが、ある日そこに見習いウェイターとしてやって来たのが、後にコリンズ役を演じることになるジェシー・L・マーティンである。そして『チック、チック…ブーン!』のダイナーで歌われる"Sunday"というナンバーではアダム・パスカル、ウィルソン・ジャーメイン・ヘレディアそしてミミのオリジナル・ブロードウェイ・キャスト、ダフニ・ルービン=ヴェガが浮浪者(bums)役で登場する。

ただ残念だったのは舞台の初演から『RENT』映画化まで9年も経過したこと。役者も年を取るので特に初演時24歳だったアンソニー・ラップは映画でおっさんになっていた。アダム・パスカルとかウィルソン・ジャーメイン・ヘレディアはそんなに老けた印象はなかったのだが。実際のところ舞台でジョアンを演じたフレディ・ウォーカーは年齢を理由に映画出演を辞退している。

元々『RENT』の映画化権は #MeToo ムーブメントの果てに逮捕された悪名高き映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが設立したミラマックスが所有していた。当初ミラマックスはロブ・マーシャル監督(『イントゥ・ザ・ウッズ』『メリー・ポピンズ・リターンズ』)に興味ないか?と話を持ちかけたが、マーシャルは「もっといいアイディアがある」とミュージカル『シカゴ』映画化を提案、そちらの企画が通って2002年に公開され、アカデミー作品賞を獲得した。また『RENT』の歌詞の中で言及されるスパイク・リー監督も興味を示したが、結局うまく行かなかった。そういった経緯でミラマックスが権利を手放し、クリス・コロンバス(『ホーム・アローン』『ハリー・ポッターと賢者の石』)がチャンスを掴んだというわけ。

Rent

評論家や世間での映画『RENT/レント』の評判は芳しくない。その多くはコロンバスの演出が凡庸だという意見に集約されるだろう。しかし僕のような観劇をこよなく愛する人間=theatergoerの目から見ると出来は決して悪くない。つい先日見返したのだが、2021年の現在でも決して古びていない優れた作品だった。兎に角、舞台版に対する監督の敬意がひしひしと伝わってくる。彼は何も余分な要素を付け足したりしない。オーソドックスな正攻法であり、だから逆に映画ファンからは物足りないと言われるのだろう。オリジナル版では第2幕冒頭で歌われる名曲中の名曲"Seasons of Love"を映画冒頭に持ってきているが、劇場のステージに登場人物が横一列に並び、一人一人に真上からスポットライトを当てるという舞台演出をそのまま踏襲しており、好感度大。だからある意味、この映画版はDisney+から配信されているミュージカル『ハミルトン』に近いと言えるかも知れない。

舞台のオリジナル・キャストが映画版で6名も揃うというのは僕が知る限り前例がない。次に多いのが『プロデューサーズ』の4名(ネイサン・レイン、マシュー・ブロデリック、ゲイリー・ビーチ、ロジャー・バート)だろうか?ただトニー賞を12部門受賞した『プロデューサーズ』は舞台版の振付・演出を手がけたスーザン・ストローマンが引き続き映画版を監督しているのだが、惨憺たる出来。舞台演出の才能と映画的センスは全く別物なのだと思い知った。尚、僕は2001年8月下旬(同時多発テロ2週間前)にブロードウェイのセント・ジェームス劇場でオリジナル・キャストが勢揃いした『プロデューサーズ』を観劇している。それはそれは素晴らしい作品で、映画版とは雲泥の差だった。この折にパレス劇場ではディズニー製作のミュージカル『アイーダ』も観た。アイーダ役がヘザー・ヘッドリー(同役でトニー賞受賞)、ラダメス役がアダム・パスカルというオリジナル・キャストで、パーフェクトなパフォーマンスだった。閑話休題。

2008年ブロードウェイでの最終公演が『レント・ライヴ・オン・ブロードウェイ』というタイトルでDVD/Blu-ray発売されており、そちらもお勧め。何しろ劇場の雰囲気がそのまま愉しめる。カーテンコールではオリジナル・ブロードウェイ・キャストが勢揃いし、新旧キャストで"Seasons of Love"を高らかに歌い上げる。注目すべきは最終公演でミミを演じたレネイ・エリース・ゴールズベリイ。美人だし、歌も踊りも滅法上手い。彼女は後にミュージカル『ハミルトン』でスカイラー三姉妹の長女を演じ、トニー賞でミュージカル助演女優賞を受賞する(映画『チック、チック…ブーン!』にもカメオ出演している)。またカンパニーの中には映画版でジョアンを演じたトレイシー・トムズもいる。

本作が言いたいことを集約するなら"No day but today"(今日という日しかない)に尽きるだろう。

Finale Bの歌詞と対訳を一部ご紹介しよう。

 There is no future
 There is no past
 Thank God this moment's not the last

 There's only us
 There's only this
 Forget regret or life is yours to miss.
 No other road
 No other way
 No day but today

 未来なんかない
 過去もない
 今(この瞬間)が最後の時でなくて良かった

 僕らしかいない
 これしかない
 後悔は忘れよう、でなきゃ人生を逃してしまう
 他の道はない
 他のやり方もない
 今日という日しかない

日本初演から二十数年を経たいま、"No day but today"はより切実に僕の心に響くようになった。人生も半ばを過ぎて、死を意識するようになったことと無縁ではあるまい。

「今日という一日を大切に生きよう」というメッセージは、なにも不治の病に罹った人だけに向けたものではない。それは映画『いまを生きる』でロビン・ウィリアムズが口ずさんだラテン語の警句"Carpe Diem"(カルペ・ディエム:その日をつかめ/その日の花を摘め)と密接に結びついている。黒澤明『生きる』で志村喬が死ぬ直前に歌った、大正時代に流行った『ゴンドラの唄』(吉井勇 作詞/中山晋平 作曲)の歌詞「いのち短し 恋せよ乙女」や、『万葉集』で大伴旅人(おほとものたびと)が詠んだ歌「生ける者(ひと) 遂にも死ぬるものにあれば この世にある間(ま)は 楽しくをあらな」も同じことを言っている。

いまを生きる 2014.10.01
ミュージカル「RENT」オリジナル・キャスト〜アダム・パスカル&アンソニー・ラップ /ライヴ ! 2010.12.31

映画『RENT/レント』は現在、Netflix、U−Next(見放題)、Amazon Prime Video(有料レンタル100円)などから配信されている。

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【永久保存版】どれだけ知ってる?「ウエスト・サイド・ストーリー」をめぐる意外な豆知識 ( From Stage to Screen )

スティーヴン・スピルバーグ監督によるリメイク版『ウエスト・サイド・ストーリー』が2022年2月11日から公開される。公式サイトはこちら

映画『ウエスト・サイド物語』(旧作)が公開されたのは1961年。今から60年前である。アカデミー賞では作品賞・監督賞など10部門を受賞した。日本では封切られてから511日間、約1年半に渡りロングラン上映されたという。これは前年の『ベン・ハー』を凌ぐ記録となった。

元となったブロードウェイ・ミュージカルが初演されたのは1957年。舞台版で演出・振付を担当したジェローム・ロビンズが映画版ではロバート・ワイズと共同監督を務めた。しかし実はトニー賞で最優秀振付賞と美術賞の2部門しか受賞していない。だから当初は決して評価が高いと言えなかった。因みにこの年、ミュージカル作品賞・演出賞・主演男優賞などに輝いたのは『ザ・ミュージック・マン』である。『ザ・ミュージック・マン』はこれでトニー賞を受賞したロバート・プレストンがそのまま同役を演じ1962年に映画化されているが、それ程話題にはならず日本では未公開。なおトニー賞にオリジナル楽曲賞が加わるのは1962年の"No Strings"から。だから意外なことにレナード・バーンスタイン(レニー)は『ウエストサイド物語』の作曲に関して、いかなる賞も受賞していない。『南太平洋』『努力しないで出世する方法』『コーラス・ライン』『レント』『ハミルトン』などピューリッツァー賞を受賞したミュージカル作品は多々あるが、『ウエストサイド物語』は歯牙にも掛けられなかった(シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を土台にしているからではないかと思う人がいるかも知れないが、『レント』だってプッチーニのオペラ『ボエーム』を換骨奪胎した作品である)。また作曲家のアーロン・コープランド、チャールズ・アイヴズ、サミュエル・バーバー、モートン・グールド、ウィントン・マルサリス、ジョン・コリリアーノ、スティーヴ・ライヒらはピューリッツァー賞の音楽部門を受賞しているが、レニーは生涯無冠に終わった。

結局ブロードウェイ初演時には観客も業界人も、この作品の革新性を十分理解出来ていなかったのだと思われる。1950年代といえば『王様と私』『野郎どもと女たち(ガイズ & ドールズ)』『マイ・フェア・レディ』といったオーソドックスな、言い方は悪いがOld-fashioned Musicalが主流だった。そんな中で『ウエストサイド物語』は破格の作品であった。

作詞はスティーヴン・ソンドハイム、当時27歳。後に作曲も兼任するようになり、『リトル・ナイト・ミュージック』『カンパニー』『スウィーニー・トッド』『イントゥ・ザ・ウッズ』『フォーリーズ』『パッション』などの名作ミュージカル群を世に送り出した。トニー賞受賞8回、ミュージカル『ジョージの恋人(日曜日にジョージと公園で)』でピューリッツァー賞1回、そしてマドンナが歌った映画『ディック・トレイシー』の主題歌"Sooner or Later"ではアカデミー歌曲賞を受賞している。2021年11月26日に死去、91歳だった。

【日本での上演史】日本人キャストで初演したのはなんと宝塚歌劇団。1968年月組・雪組合同公演だった。振付・演出はジェローム・ロビンズとサミイ・ベイス。劇団四季は1974年から上演している。僕は高校生の頃、岡山県の倉敷市民会館で劇団四季版を観劇した。1980年代の話である。オープニングのダンス・シーンでダンサーがコケるなど、まだまだ上手とは言い難かった。宝塚版は1999年星組公演を宝塚大劇場で観た。出演者は稔幸、星奈優里、絵麻緒ゆう、彩輝直ほか。この作品の場合、女性だけだと群舞シーンでどうしても迫力に欠け、またプエルトリコ系シャーク団の面々はドーランを塗って肌を浅黒くしていることに違和感を覚えた。民族対立がテーマとしてあるわけで、同じ民族の日本人だけで演じるのはどうしても限界がある。それは白人が顔を黒く塗ってアフリカ系アメリカ人を演じるミンストレル・ショーがアメリカ合衆国で廃れたことと無関係ではない。

Minstrel

同様に、登場する人種が多様なミュージカル『ラグタイム』や『RENT』も日本人キャストのみでは難しい。

【歌の吹替問題】1961年の映画は泣く子も黙る掛け値なしの名作であるが、いくつかの問題を孕んでいる。まずナタリー・ウッドの歌はマーニ・ニクソン、トニー役リチャード・ベインマーの歌はジム・ブライアントが吹替ている。またアニタ役リタ・モレノの歌唱の一部をベティ・ワンド、リフ役ラス・タンブリンの歌唱の一部をタッカー・スミスが吹替ている(ラス・タンブリンは後にTVシリーズ『ツイン・ピークス』に精神科医役で出演した)。歌が吹替であることは公開当時秘密にされており、クレジットにも歌手の記載がない。またレコードの売上も吹替歌手に対して一切支払われなかったため、後に裁判沙汰となった。

【マーニ・ニクソン】最強の“ゴースト・シンガー” マーニは『王様と私』(1956)のデボラ・カーや『マイ・フェア・レディ』(1964)のオードリー・ヘップバーンの歌も吹き替えている。『王様と私』でマーニは「吹替したとバラしたら二度と仕事が出来ないようにしてやる」とスタジオから脅され、公表しないという誓約書にサインさせられた。しかし気のいいデボラ・カーはインタビューでマーニのことに言及し彼女に感謝したたため、20世紀フォックスは慌てふためいた。

『ウエストサイド物語』のナタリー・ウッドは自分の歌が映画で使用されると撮影終了まで信じていた。だから後で吹替のことを聞き、ショックを受けたためポスト・プロダクションにおける録り直し・調整に一切協力しなかったという。

『マイ・フェア・レディ』はアカデミー賞に12部門ノミネートされ8部門で受賞した。しかし実際はオードリーが歌っていないことが広く知れ渡っていたので彼女はノミネートすらされず、その年に主演女優賞を受賞したのは『メリー・ポピンズ』のジュリー・アンドリュースだった。ジュリーは舞台版『マイ・フェア・レディ』イライザ役のオリジナル・キャストであり、映画で起用されなかった彼女に対して同情票が集まったと言われている。『マイ・フェア・レディ』で主演男優賞を受賞したレックス・ハリソンは授賞式の壇上で「ふたりのイライザに感謝します」とスピーチした。

マーニのことを気の毒に思ったロバート・ワイズ監督は映画『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)で彼女を修道院のシスター役に起用する。『マイ・フェア・レディ』の一件があったのでマーニは主演のジュリー・アンドリュースとの初対面ですごく緊張した。しかしジュリーはスタスタと彼女に歩み寄り「マーニ、私は以前からあなたのファンです」と言った。『サウンド・オブ・ミュージック』は殆どの役者が自分で歌っているが、修道院長役のペギー・ウッドの代わりに“すべての山を登れ”をメゾソプラノ歌手のマージェリー・マッケイ が吹替ている。ただしこのシーンは公開直前に監督の指示でカットされた(ビデオ/DVD/Blu-rayでは復活している)。

【その後のミュージカル映画】『ウエストサイド物語』で本人の歌ではないのにアカデミー助演女優賞を受賞したということで、リタ・モレノは後々まで非難されることになる。また『マイ・フェア・レディ』のごたごたもあり、以降のミュージカル映画では役者本人が歌うことが通例となった(ただし一部例外もあり『オペラ座の怪人』でオペラ歌手カルロッタを演じたミニー・ドライヴァーの歌は吹替である)。またその反動か、女優本人が歌うと(たいした演技でなくても)比較的容易くアカデミー賞が受賞出来るという珍現象が近年まで続いている。具体例を挙げるなら『ファニー・ガール』のバーブラ・ストライサンド、『キャバレー』のライザ・ミネリ、『シカゴ』のキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』のリース・ウィザースプーン、『ドリームガールズ』のジェニファー・ハドソン、『レ・ミゼラブル』のアン・ハサウェイ、『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーン、『ジュディ 虹の彼方に』のレネー・ゼルウィガー。男優の場合、この法則が当てはまらないというのも面白い。

【人種問題】『ウエスト・サイド物語』のジェット団はポーランド系アメリカ人の不良グループであり、シャーク団はプエルトリコからの移民である。そのリーダー、ベルナルドの妹マリアはアメリカ合衆国に来てまだ1ヶ月という設定。しかし旧映画版でマリアを演じたナタリー・ウッドはサンフランシスコ生まれで両親はロシアからの移民。ベルナルド役ジョージ・チャキリスはオハイオ州生まれで両親はギリシャ系。つまりプエルトリコ出身のリタ・モレノ以外は殆ど白人がメイクでプエルトリコ人を演じていたのである。

【リン=マニュエル・ミランダと『イン・ザ・ハイツ』】ブロードウェイ・ミュージカル『ハミルトン』でトニー賞を総なめにし、ピューリッツァー賞まで手に入れたリン=マニュエル・ミランダはプエルトリコ系で、幼少期は年に1ヶ月間、祖父母が住むプエルトリコで過ごした。『ハミルトン』の前作『イン・ザ・ハイツ』もトニー賞のミュージカル作品賞や楽曲賞を受賞したが、この作品はニューヨーク・マンハッタン島北部のワシントンハイツを舞台にしている。ここはドミニカ共和国、キューバ、プエルトリコ、メキシコ等からの移民が集まりスペイン語が飛び交うラテン系アメリカ人(ラティーノ)社会を形成している。

ミュージカル映画「イン・ザ・ハイツ」

『イン・ザ・ハイツ』が『ウエスト・サイド物語』から多大な影響を受けていることは論を俟(ま)たない。『ウエスト・サイド』とはマンハッタン島の西側を指す。 セントラルパークを挟んでイースト・サイドが高級住宅街、ウエスト・サイドには多くの貧しい移民が住んでいた時代の物語だ。

ミランダは2009年ブロードウェイ再演『ウエストサイド物語』スペイン語版の脚本を執筆し、スティーヴン・ソンドハイムと共に歌詞をスペイン語に翻訳した。更に彼は高校生の時に学校で『ウエストサイド物語』の演出も手がけたという。

スピルバーグがニューヨークでWSSを撮っている時に、ちょうど映画『イン・ザ・ハイツ』も撮影中でロケ現場がすぐ近くだった。だからミランダは居ても立っても居られず、撮影の合間にスピルバーグの現場に見学に行ったと告白している(こちらの記事)。折しもミュージカル・ナンバー“マリア”を歌っているところだった。

また2021年11月にNetflixから配信されたミランダの初監督作品『チック、チック…ブーン!』(大傑作!!)はミュージカル『RENT/レント』の作詞・作曲・脚本でトニー賞やピューリッツァー賞を受賞したジョナサン・ラーソンを主人公とするミュージカル映画だが、新作の試聴会(ワークショップ)に現れたスティーヴン・ソンドハイムから掛けられた言葉が、もうすぐ30歳になるのに世間から中々才能を認められなくて焦るラーソンの気力をいかに奮い立たせたかが描かれている(映画最後の留守電はソンドハイム本人の声で、話している内容も本人が書き直したそうだ)。歌詞の中でラーソンは高校生の時に親友と学芸会で『ウエストサイド物語』を演じたと語り(“クール”の旋律が引用される)、また"Sunday"というナンバーでは『ウエストサイド物語』オリジナル・プロダクション(初演)でアニタを演じたチタ・リベラが特別出演している。さらに『イン・ザ・ハイツ』にも「酔っぱらったチタ・リベラみたいだ」という台詞がある。

【スピルバーグ版の改善点】まず出演者全員、本人が歌っている。またスピルバーグはヒスパニック系の登場人物はヒスパニック系のバックグラウンドを持つ者に演じてもらうことにこだわり、プエルトリコ人役33名のうち20名が厳密なプエルトリコ人、またはプエルトリコにルーツを持つ者たちを選んだ。マリア役は新人のレイチェル・ゼグラー。母親はコロンビア人で、ディズニー実写版『白雪姫』の主演に抜擢されている。アニタ役アリアナ・デボーズは父親がプエルトリコ系。またリタ・モレノも再び本作に出演している。彼女はオリジナル版でシャーク団とジェット団の中立地帯の役割を果たした食料雑貨店の店主ドクの未亡人を演じた。

West

今回脚色を担当したのはトニー・クシュナー。1993年に舞台『エンジェルズ・イン・アメリカ』でピューリッツァー賞戯曲部門を受賞した。スピルバーグとは既に『ミュンヘン』『リンカーン』で組んでいる。『エンジェルズ・イン・アメリカ』は『レント』と並ぶ、人々がAIDSに恐れ慄いていた90年代を代表する演劇作品である。

【スピルバーグとミュージカル】長いスピルバーグのキャリアの中で、ミュージカルを監督するのは本作が初めてである。実は『E.T.』(1982)が完成した時期に、マイケル・ジャクソン主演でミュージカル映画『ピーターパン』を撮るという企画が持ち上がっていた。1982年といえばアルバム『スリラー』が発売された年で、マイケルの全盛期だった。その準備として朋友ジョン・ウイリアムズ作曲、レスリー・ブリッカス作詞で歌も数曲完成していたのだが、結局実現しなかった。この時作曲された楽曲は後に、大人になったピーターパン(ロビン・ウィリアムス)を主人公とするスピルバーグ映画『フック』(1991)に流用された。しかし残念ながら駄作であった。ジョンの音楽は良かったのだが……。

【シンフォニック・ダンス】レニーは1960年にシド・ラミンとアーウィン・コスタルに編曲を依頼して、『ウエスト・サイド物語』の音楽を素材にオーケストラのための演奏会用組曲『シンフォニック・ダンス』を創作した。初演は61年。因みにシド・ラミンとアーウィン・コスタルは61年の映画版でアカデミー賞のミュージカル映画音楽賞(つまり編曲賞)を受賞している。

構成は以下の通りで、全曲が切れ目なく演奏される。演奏時間は約30分。

  1. プロローグ 
  2. サムウェア 
  3. スケルツォ
  4. マンボ 
  5. チャチャ
  6. 出会いの場面  〜クール 〜フーガ
  7. ランブル(乱闘) 
  8. フィナーレ 

レニーの指揮で2種類のレコーディングが残されており、日本では彼から直接薫陶を受けた指揮者・大植英次や佐渡裕らがしばしば演奏会で取り上げている。また現在ベルリン・フィルの芸術監督であるキリル・ペトレンコも数回この楽曲を指揮している。

実に面白いのは『ウエスト・サイド物語』の中でいちばん有名な“トゥナイト”を敢えて外していること。恐らくこのナンバーばかり流行って、レニーはウンザリしていたのではないだろうか?「俺はこれだけじゃなく、他にもいい曲をたくさん書いているんだぞ!」と。

またミュージカルが1957年にブロードウェイで初演された時、パーカッションが沢山必要だったのでオーケストラ・ピットにヴィオラが入らず、ヴィオラ抜きの編成だった。だからシンフォニック・ダンス版の"サムウェア”でレニーはヴィオラ・ソロから始まることにこだわったのだそう(大植英次 談)。

【『ロミオとジュリエット』との関係】WSSがシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』に基づいていることは先に書いた。レニーは“サムウェア”にチャイコフスキーの幻想序曲『ロメオとジュリエット』の旋律(終結部のチェロ)を引用している。

【グスターボ・ドゥダメル】スピルバーグ版でオーケストラの指揮をするのはベネズエラ出身のグスターボ・ドゥダメル。画期的音楽教育システム「エル・システマ」の申し子である。17歳でシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラの音楽監督に就任し世界に名を馳せ、2009年からはロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督となった。2017年にはウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートの指揮者を務め、ベルリン・フィルの演奏会にもしばしば登場している。シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ時代にはアンコールで『シンフォニック・ダンス』からマンボを演奏するのが定番で、来日公演でもラテンの血が滾るパフォーマンスで聴衆を熱狂させた。正に彼以外考えられない、ドンピシャの起用である。ドゥダメルがニューヨーク・フィルと組んで、そこにどのような化学反応(chemistry)が生じるのか?今から愉しみで仕方がない。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部「全国大会練習会・金賞報告演奏会 in 伊丹」

10月31日(日)、東リ いたみホール(伊丹市立文化会館)へ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の演奏会を聴く。

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プログラムの内容は、

・梅田隆(脚本)、西村友(作曲):創作ミュージカル『OGATA洪庵の妻』(抜粋版)
・LiSA(作詞)、梶浦由記(作詞/作曲):映画「鬼滅の刃 無限列車編」より『炎』
・『松田聖子』メドレー(青い珊瑚礁〜赤いスイートピー〜SWEET MEMORIES〜夏の扉)
・ジョゼッペ・ヴェルディ:歌劇「アイーダ」より凱旋行進曲
郷間幹男:TOINファンファーレ(大阪桐蔭高校応援歌)
・ジョン・ウィリアムズ:映画「スター・ウォーズ」よりメインテーマ
・ミシェル・ルグラン:映画「ロシュフォールの恋人たち」より『キャラバンの到着』
・高昌帥(コウ・チャンス):吹奏楽のための協奏曲
・桑田佳祐:炎の聖歌隊[Choir]
・YOASOBIメドレー(ラブレター〜郡青)
・リクエストコーナー

僕が初めて梅田隆司 先生(指揮)/大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の演奏を聴いたのは2007年、“吹奏楽の甲子園”=普門館だった。あれから14年経った。

第55回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 前編 2007.10.25

ガーシュインの「ポーギーとベス」を自由曲に選んだ2016年以来、5年ぶりに全日本吹奏楽コンクールで金賞に返り咲いた大阪桐蔭吹部は間もなく日本管楽合奏コンテストに臨むということで、その予行演習も兼ねたコンサートである(そして11月7日に開催されたコンテストで「最優秀グランプリ賞」「文部科学大臣賞」「観客最多投票賞(後半の部)」を受賞した)。

英雄とは誰か?という問いから始まるミュージカル「OGATA洪庵の妻」は今年の定演で初演されたが、学校関係者以外は有料動画配信で観るしかなかった。下記記事でその詳しい内容紹介と、作品の構造分析をした。

創作ミュージカル「OGATA浩庵の妻」が凄い!〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2021(今年は保護者以外動画配信のみ) 

元々上演時間60分の作品だが、今回は抜粋版として37分位に縮められた。カットされた主な場面は以下の通り。

①緒方洪庵が開設した「適塾」と華岡青洲 の「合水堂」門下生との喧嘩(明治時代における“バンカラ”精神みたいなもの。現代の俗語で言えば“ヤンチャ”か)。
②1869年長州藩・大村益次郎が刺客に襲われ足の傷から敗血症となり死亡。その際「切断した足を洪庵先生の墓傍に埋めてほしい」と遺言を残した。

前にも書いたが緒方洪庵は天然痘に対する種痘を広めた医師なので、本作は新型コロナ禍でワクチン接種が進む今日の世界の状況に合致しているのが見事。

兵庫県丹波篠山市出身の心理学者で京大教授、文化庁長官も務めた河合隼雄が書いた「母性社会日本の病理」という名著がある。

Bosei

平安時代に書かれた「源氏物語」を読めば分かる通り、古来より日本は(全てを呑み込むような包容力を持ち、自己と他者の境界が曖昧になる)〈母性原理〉が支配的な社会であった。そこに異質な(切断し、他者との対立構造を明確にする)〈父性原理〉を持ち込んだのが武家社会である。最近では“侍ジャパン”などと武士道をもてはやし、これぞ「日本人の心」だと言ったりする輩もいるが、江戸時代に支配階級であった武士は全人口のたった7%に過ぎない。85%は百姓、つまり農民である。ここを錯覚してはいけない。

ミュージカル「OGATA洪庵の妻」は生涯に13人の子供を生んだ八重という〈母〉を主人公に据え、〈父性原理〉で動いてきた幕末から明治維新にかけての時代を、〈母性原理〉という視座から捉え直そうとした意欲作なのではないか?そう今回観劇しながら思った。

それは〈父性原理〉に立脚したキリスト教(父・子・聖霊から成る三位一体に女性は介在しない)への信仰を背景に持つ宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を換骨奪胎し、〈母性原理〉の漫画に仕立てた松本零士「銀河鉄道999」の手法を彷彿とさせる。詩「永訣の朝」に込められた妹トシへの想いでも明らかなように宮沢賢治は〈シスター・コンプレックス〉の作家だが(ジョバンニ↔カムパネルラの関係性)、「銀河鉄道999」のメーテルは〈マザー・コンプレックス〉が生み出した偶像である。

松本零士「銀河鉄道999」とエディプス・コンプレックス〜手塚治虫/宮﨑駿との比較論 2016.07.07

最近、大阪桐蔭吹部がYou Tubeにupした、アニメーション映画「竜とそばかすの姫」(U)の細田守監督は日本テレビ「世界一受けたい授業」に出演し、“絶対に観てほしい5つのアニメ”を紹介した。その中で高畑勲監督「赤毛のアン」や宮崎駿監督「ルパン三世 カリオストロの城」と並んで彼が挙げたのが、りんたろう監督「劇場版 銀河鉄道999」である。そして「竜とそばかすの姫」は正に女子高校生の主人公が〈母性〉に目覚め、鉄道に乗って窮地に陥った“鉄郎”を救出に行く物語であった。

 竜とそばかすの姫 2021.08.10

併せて、数々の漫画賞を受賞したよしながふみの大傑作『大奥』をお勧めしたい。〈父性原理〉の江戸武家社会を男女逆転という仕掛けで女性の目から見直すという姿勢が「OGATA洪庵の妻」に通ずるところがあるし、安政の大獄における橋本左内斬首の場面もある。また若い男子にのみ感染するという日本の奇病「赤面疱瘡(あかずらほうそう)」を設定し、弱毒株発見により種痘法を確立するまでの過程がリアリティを持ってスリリングに描かれている。

さて、映画「鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌『炎』はレコード大賞に輝いたわけだが、作曲した梶浦由記の作品中、僕が一番好きなのは「魔法少女まどか☆マギカ」の劇伴音楽。劇場版「[新編]叛逆の物語」のエンディングで流れた、彼女が作詞・作曲した『君の銀の庭』も素敵だった。

「魔法少女まどか☆マギカ」を語ろう! 2012.03.14
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劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語 2013.10.27

ヴェルディ「アイーダ」ではアイーダ・トランペットが6本登場した。

松田聖子に関して鮮明に憶えているのは大学に合格した1985(昭和60)年4月に大林宣彦監督「さびしんぼう」を映画館に観に行った時、併映が松田聖子・神田正輝主演の「カリブ・愛のシンフォニー」だったこと。シネコンがなかった当時は2本立て興行というのが普通だった。しかし僕は聖子が嫌いだったので「さびしんぼう」だけ観て帰った。この年の6月に聖子・正輝は結婚、翌86年に神田沙也加が生まれる。沙也加が初舞台を踏むのが2004年、スティーブン・ソンドハイム作詞・作曲、宮本亜門演出のミュージカル「INTO THE WOODS」の赤ずきんちゃん役で、僕はこれを東京・新国立劇場で観ている。彼女は17歳だった。ディズニー・アニメ「アナと雪の女王」日本語吹き替え版のアナの歌唱も見事だったし、最近では「マイ・フェア・レディ」のイライザ役も輝いている。というわけで聖子に対しては沙也加という素晴らしいミュージカル・スターを生んでくれたことに感謝する。

「スター・ウォーズ」の作曲家ジョン・ウィリアムズがウィーン・フィルを初めて指揮したのは2020年1月18日と19日だった。このライヴ・レコーディングはCDのみならずBlu-rayも発売され、「レコード芸術」誌においてレコード・アカデミー賞に輝いた。そしてつい先日、2021年10月16日にジョンはベルリン・フィルを振った(「デジタル・コンサートホール」で鑑賞)。彼がこの街を訪れるのはなんと今回が初めてだそうで、ベルリン市民の熱狂的な歓迎ぶりが凄かった(我が国にはボストン・ポップス・オーケストラの常任指揮者として数回来日している。僕も「ジュラシック・パーク」が公開された1993年に旧フェスティバルホール@大阪にて2日連続で聴いた)。コンサートの始まりでジョンがステージに登場するだけでスタンディングオベーションの嵐。1曲終わるごとに総立ちの拍手喝采で、彼が「これから『ハリー・ポッター』の音楽を3曲続けて演奏します」とアナウンスしても曲間のスタンディングをやめない。コンサートの半ば、ジョンが「現在イギリスのスタジオでハリソン・フォードが『インディー・ジョーンズ5』を撮影中で、私もこのコンサートを終えたらロサンゼルスに戻って早速作曲に取り掛かる予定なんだ」と語るとベルリンの聴衆の興奮は頂点に達した。ジョンは現在89歳と高齢だが、椅子に座ることもなく最後まで立って指揮する姿はとても元気そうで安心した。

ミシェル・ルグランの『キャラバンの到着』を久しぶり(2年ぶり?)にゴージャスな桐蔭サウンドで聴けて大・大・大満足。ホーン・セクションが唸り、特にトランペットとトロンボーンのソロがごっつかった。キレッキレの演奏で爽快!ルグラン・ジャズに痺れた。もう『銀河鉄道999』同様、毎回聴きたい。

高昌帥『吹奏楽のための協奏曲』は2021年10月24日(日)に名古屋国際会議場で開催された全日本吹奏楽コンクールで大阪桐蔭が自由曲として選曲し、金賞に輝いた。関西代表の他の2校は銀賞に終わった。コンクールは55人の人数制限があるが今回は全員での演奏。「全員でやることに意味がある」と梅田先生。この信念に基づき、全日本マーチングコンテストも人数制限が設けられた2013年から出場をやめた。

高昌帥は桐蔭の創作ミュージカル「河内湖」の作曲家でもある。

創作ミュージカル「河内湖」初演!〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2015 2015.02.18

『吹奏楽のための協奏曲』は言うまでもなくハンガリーの作曲家バルトーク・ベーラの『管弦楽のための協奏曲』(Concerto for Orchestra)を踏まえたタイトルだ。演奏家の間では“オケ・コン”という略称で親しまれている。ポーランドの作曲家ルトスワフスキにも同名の名曲がある。またコダーイも『管弦楽のための協奏曲』を書いているのだが(初演は同郷のバルトークより前)、こちらは滅多に演奏されない。バルトークのオケ・コンは随所に管楽器がソロやデュオとして大活躍する場面が用意されている。その特徴が顕著なのが次々と各楽器の二重奏が展開される第2楽章“対の遊び”。高昌帥『吹奏楽のための協奏曲』もB♭クラリネットの二重奏→オーボエ二重奏→Esクラのソロ→ホルン→サックスといった見せ場が用意されている。

厳選 管弦楽の名曲ベスト40(+α)はこれだ!

「河内湖」初演のレビューで、僕は冒頭部がミクロス・ローザ(ハンガリー読みでロージャ・ミクローシュ)が作曲した映画「ベン・ハー」序曲みたいだと書いた。藤重佳久/活水高等学校の演奏(2019年全日本吹奏楽コンクール)で初めて『吹奏楽のための協奏曲』を聴いたときも、やはり冒頭部と終結部を飾る金管ファンファーレで「ベン・ハー」の音楽が脳裏に蘇った。何処が似ているんだろう?と熟考した結果、たどり着いた結論は「銅鑼の使い方」である。つまりこの曲は銅鑼が肝なのだ。ところが、今回の桐蔭の演奏ではその銅鑼が全く聴こえなかった。「なんたること!?」と心底驚いたのだが、どうやらホールに反響板の設置がなく後方に設置されたの楽器の音が前方に届かないという施設上の不具合があったようだ。他に何の不満もないだけに、その点がとても残念だった。次の定期演奏会ではしっかり銅鑼の音をホール全体に響かせてください。余談だが、福岡県の精華女子に続き長崎県の活水中学校・高校吹奏楽部の音楽監督として全国レベルまで実力を高めた九州の名物先生、藤重佳久さんは2020年度で退職されたそうだ。

吹奏楽部の名物先生 《九州篇》 2008.08.27
「吹奏楽の神様」屋比久勲登場!~大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2014@ザ・シンフォニーホール 2014.03.01

YOASOBIが2021年8月9日に配信リリースした『ラブレター』は大阪桐蔭高等学校吹奏楽部がレコーディングに参加しており、またアニメーションのMVが最高なんだ→こちら!歌よし・歌詞よし・伴奏よしと三拍子揃っていてパーフェクト。音楽に対する愛がギュッと詰まっていて胸が熱くなる。

リクエストコーナーで演奏されたのは「アナと雪の女王」「エリザベート」セレクション、ドリカムの『大阪LOVER』、BTS『Dynamite』、会場に招待されていた桂春団治(桂米朝・笑福亭松鶴らと共に“上方落語四天王”とよばれた三代目・春団治は鬼籍に入り、現在は四代目)からのリクエストで美空ひばり『川の流れのように』、そしてDISH//『猫』。

客席からの「エリザベート」のリクエストは意外だったが、このミュージカルは1992年にアン・デア・ウィーン劇場で初演された。ここで初演された作品で有名なのはベートーヴェンの交響曲第5番・6番、ヨハン・シュトラウスの喜歌劇「こうもり」、レハールの「メリー・ウィドウ」などがある。大阪桐蔭は2012年にオーストリアに初の海外遠征をし、ウィーン国立歌劇場で演奏したり、皇妃エリザベートゆかりのシェーンブルン宮殿で野外コンサートを開いた。

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2013!@ザ・シンフォニーホール 2013.02.27

アンコールは定番の『銀河鉄道999(樽屋雅徳 編)』と『星に願いを (ピノキオ)』。桐蔭のスリーナインを聴くまでは帰るわけにいかない。この2年間、コロナ禍でとても辛かったけれど、漸く生演奏に接することが出来て幸せだった。

最後に、今後、大阪桐蔭の演奏で聴きたいのはジェラール・プレスギュルヴィック(作詞・作曲)によるフレンチ・ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」から『世界の王』と『エメ/Aimer』。そしてスティーブン・スピルバーグ監督によるリメイク映画「ウエストサイド・ストーリー」が2021年12月10日より公開されるので(公式サイトはこちら)、久しぶりに梅田先生が指揮されるバーンスタイン(W.J.デュソイト編):「ウエストサイド物語」メドレーを再演して欲しい!2016年定期演奏会でのノリノリのパフォーマンスはグスターヴォ・ドゥダメル/シモン・ボリバル・ユース・オーケストラに匹敵するものだった。はっきり言ってコンクール自由曲の「キャンディード」序曲よりWSSの方が断然良い。

That's Entertainment ! 〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部定期演奏会 2016 2016.02.17

ちなみにドゥダメルはスピルバーグ監督リメイク版映画のサウンド・トラックで指揮している。熱い演奏になっているのは間違いない。

なぜ今「ウエスト・サイド・ストーリー」なのか?という問いに対する答えは既にブログ記事を準備しているので、映画公開直前の12月1日に披露します。乞うご期待。(追記:11月15日にウォルト・ディズニー・ジャパンは「ウエスト・サイド・ストーリー」の公開を予定していた12月10日から、2022年2月11日に延期すると発表した。元々は2020年12月公開と発表され、その後新型コロナウィルス感染拡大で1年延びていただけに、ショックである。なお、米国本国での公開日に変更はないという。一体全体どういうこと!?腹立たしい限りだ。)

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