舞台・ミュージカル

2026年7月22日 (水)

厳選!ミュージカル(舞台)のオールタイム・ベスト40

僕は今年、還暦を迎えた。初めて舞台ミュージカルを鑑賞してから40年以上になる。劇団四季(『ウエストサイド物語』@倉敷市民会館)を出発点として東宝ミュージカル、宝塚歌劇、三谷幸喜(『オケピ!』『新宿発8時15分』)、松尾スズキ&大人計画(『キレイ〜神様と待ち合わせした女』『キャバレー』)、音楽座ミュージカル(『リトルプリンス (星の王子さま) 』)、ホリプロステージ(『ピーター・パン』『DEATH NOTE The Musical』『生きる』『メリー・ポピンズ』)、劇団ひまわり(『銀河鉄道の夜』)、そしてブロードウェイやラスベガス(『オペラ座の怪人』)@アメリカ、ウエストエンド@イギリスなどでも観劇した。海外からの来日ツアー公演では『キャバレー』『コーラスライン』『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』『ヘアスプレー』『TOP HAT』に足を運んだ。またコルム・ウィルキンソン(『レ・ミゼラブル』初代バルジャン)、シンシア・エリヴォ(『カラーパープル』でトニー賞ミュージカル主演女優賞を受賞、映画『ウィキッド ふたりの魔女』で主人公エルファバを演じた)、ラミン・カリムルー(『オペラ座の怪人』ファントム/『レ・ミゼラブル』ジャン・バルジャン)、そして『RENT』オリジナル・キャストであるアンソニー・ラップ(マーク役)とアダム・パスカル(ロジャー役)らは来日コンサートで生歌を聴いた。

4stars

こうした経験から今までの自分の人生の集大成として当記事を書こうと思った。これから新たにミュージカルを観たいと思っている若い人たちにとって何らかの羅針盤として役立つのなら幸いである。

ただし、僕の観劇歴には1つ留保すべき事項がある。それは今まで殆んど韓国産ミュージカルを無視してきたことだ。韓国が舞台ミュージカルに真剣に取り組み始めたのは、26年に及ぶ軍事政権が終わり文民政権が始まった1988年以降だから歴史が浅い。ちなみに正式なライセンス契約を結び、韓国人キャストによって初めてブロードウェイ・ミュージカルが上演されたのは1996年の"42nd Street"からである。

一方、日本における東宝ミュージカルの歴史は1963年帝国劇場における『マイ・フェア・レディ』が出発点なので実に四半世紀先んじている。さらに宝塚歌劇には110年以上の歴史がある(宝塚でブロードウェイ・ミュージカルが初めて上演されたのは1967年『オクラホマ!』から)。正直、韓国ミュージカルの実力を僕は舐めていた。故に2025年のトニー賞で韓国生まれの『メイビー、ハッピーエンディング』がミュージカル作品賞を受賞したことに衝撃を受けた。ストレート・プレイを含め日本の劇作家が手掛けた作品がブロードウェイの劇場で上演されたことは未だかつてない、皆無だ。我が国の演劇界の敗北を認めざるを得ない。不甲斐ない。今後は積極的に韓国産ミュージカルを観ていきたい。

前置きはこれくらいにしてまず【リスト】から。続いて【ひとつひとつ作品の解説】を書く。なお〈トップスリー〉に挙げた作品は、上から1,2,3位ではなく〈全部1位〉と解釈してもらって構わない。このレベルになると順位をつけ難い。以下5作品ごとに区切っているが、それぞれの枠内は昇順でなく、順不同と受け取って頂きたい。

原則1作曲家1作品に絞った。よってロイド=ウェバーの『キャッツ』も『ジーザス・クライスト・スーパースター』も『エビータ』も入っていない。またタイトル横の括弧( )内は同じ作曲家、あるいは劇作家で代替可能な作品がある場合に示した。

【リスト(お品書き)】

〈トップスリー!:第1位〜第3位〉
オペラ座の怪人
エリザベート(↔ モーツァルト!)
ロミオ&ジュリエット

〈第4位〜第5位〉
ファン・ホーム
ファンタスティックス

〈第6位〜第10位〉
Merrily We Roll Along(↔ スウィーニー・トッド)
ポーの一族
キャバレー(↔ 蜘蛛女のキス)
ミス・サイゴン
ハミルトン

〈第11位〜第15位〉
ラグタイム(↔ アナスタシア)
ゴースト&レディ
パレード
シー・ラヴズ・ミー(↔ 屋根の上のヴァイオリン弾き)
銀河鉄道の夜

〈第16位〜第20位〉
ライオンキング
デスノート(↔ ジキル&ハイド)
プロデューサーズ
ラ・カージュ・オ・フォール
ジェーン・エア

〈第21位〜第25位〉
RENT
ノバ・ボサ・ノバ
回転木馬
コーラスライン
ガイズ&ドールズ

〈第26位〜第30位〉
42nd Street
春のめざめ
カン・カン
翼ある人びと-ブラームスとクララ・シューマン-
壁抜け男

〈第31位〜第35位〉
ジャージー・ボーイズ
ミー&マイ・ガール
ピーター・パン
ファントム
ウエスト・サイド物語

〈第36位〜第40位〉
クレイジー・フォー・ユー
オケピ!(↔ 新宿発8時15分)
ザ・ミュージック・マン
ある男
マイ・フェア・レディ

〈次点〉
ジプシー
ノートルダムの鐘
カム フロム アウェイ

【各論:作品ひとつひとつ紹介】

〈オペラ座の怪人〉

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イギリスの作曲家アンドルー・ロイド・ウェバーには『ジーザス・クライスト・スーパースター』『エビータ』『キャッツ』『サンセット大通り』など秀作が綺羅星のごとくある(ただし1996年『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド』以降は才能が枯渇し、駄作ばかり)。中でも突出した傑作が『オペラ座の怪人』である。ちょっと信じ難い完成度である。ジョエル・シューマッカーが監督した映画版もあるのだが、こちらはB級。ジェラルド・バトラー演じる怪人もイマイチ(当初はヒュー・ジャックマンがキャスティングされていたが、ミュージカル『ボーイ・フロム・オズ』ブロードウェイ出演と撮影時期が重なり降板した)。やはりハロルド・プリンスが演出した舞台版を観て欲しい。

〈エリザベート〉

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本作と『モーツァルト!』はオーストリア・ウィーン発のミュージカルである。どちらも作詞・台本:ミヒャエル・クンツェ、作曲:シルヴェスター・リーヴァイ。ただしこのコンビによるミュージカル『ベートーヴェン』は救いようのない駄作。『レベッカ』と『マリー・アントワネット』は、まぁ◯。『エリザベート』というとんでもない傑作を見つけてきて輸入した宝塚歌劇団は本当にエライ!宝塚版も東宝版も演出は小池修一郎だが、全く中身は違う。曲も一部異なっている。ウィーンからの引っ越し公演も観たが、日本版の方が優れていると断言出来る。因みに『モーツァルト!』の演出も小池だ。

〈ロミオ&ジュリエット〉

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シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』はオペラ化されたものとしてグノーやベッリーニの作品(『カプレーティ家とモンテッキ家』)が有名だが、これまで少なくとも40作品以上あると言われている(50作品近くという説もある)。他にもベルリオーズの劇的交響曲やプロコフィエフのバレエ音楽、チャイコフスキーの幻想序曲(管弦楽曲)がある。

因みにシェイクスピアの戯曲を基に作られたオペラは200作品以上あり、最も多いのが『ロミオとジュリエット』、次が『ハムレット』で30作品以上あるらしい。

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』はジェラール・プレスギュルヴィックが作詞・作曲し、2001年フランスのパリで初演された。日本では小池修一郎が潤色・演出し、2010年宝塚星組が梅田芸術劇場で初演した。後に東宝版が上演され、後者も小池修一郎が演出。パリからの引っ越公演も観たが日本版は遜色なし。

〈ファン・ホーム〉

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2015年のトニー賞でミュージカル作品賞・台本賞・楽曲賞・主演男優賞・演出賞の5部門を受賞した。アリソン・ベクダルが書いた自伝的漫画(グラフィックノベル)を原作とし、レズビアンの女性を主人公とするミュージカルはこれがブロードウェイ史上初。作詞・台本・作曲を全て女性が手掛けた。主人公アリソンを3人の女優が演じる(社会人・大学生・小学生)。単なる回想形式ではなく、彼女らは同時に舞台に存在する。僕はこの手法にとても感銘を受けた。過ぎ去り死に向かう現在と、保存され、生の核を保持する過去は絶えず干渉しあい、交差しあう。アリソンはこの空間=記憶の中を自由に飛翔し、また戻ってくるのである。

〈ファンタスティックス〉1960年5月3日の初演以来、実に40年以上の長きに渡りオフ・ブロードウェイでロングランされていた(ロンドンの「ねずみとり」みたいなもの)。 ところが2001年9月11日にニューヨークで同時多発テロが勃発。観光客が激減し、そのあおりを受けて翌年の2002年1月13日に閉幕してしまう。

本作を観て毎回思うのは「これぞミュージカルの原点!」ということ。落下してくるシャンデリア(オペラ座の怪人)とか、左右舞台袖から登場し中央で合体する巨大バリケード(レ・ミゼラブル)、天井から舞い降りてくる実物大ヘリコプター(ミス・サイゴン)などド派手でスペクタクルな仕掛けはミュージカルに必ずしも必要ではなく、簡素な装置で美しい歌があり達者な演者さえいたらそれでいいんだ、ということ。洗練された宮本亜門の演出が心に強く残っている。後に彼はウエストエンド@ロンドンでも『ファンタスティックス』を手掛けることになる。

〈Merrily We Roll Along〉

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泣く子も黙る大御所スティーヴン・ソンドハイムが作詞・作曲を手掛けた名作である。ソンドハイムの傑作といえば『ア・リトル・ナイト・ミュージック』『カンパニー』『スウィーニー・トッド』『太平洋序曲』『イントゥ・ザ・ウッズ』『パッション』『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ(日曜日にジョージと公園で)』など枚挙にいとまがないが(以上全て鑑賞済)、中でも衝撃を受けたのは『Merrily We Roll Along』だった。舞台の進行と共に物語は時間を遡っていく。こんなの観たことない!!『オペラ座の怪人』のハロルド・プリンスが演出した初演は52回のプレビュー、そしてたった16回の本公演で幕を閉じた。惨敗だった。しかし仕方がない、中身が前代未聞、斬新すぎたのだ。現在、リチャード・リンクレーター監督がポール・メスカル主演で映画を製作中なのだが、なにしろ『6才のボクが、大人になるまで。』と同様の方法で20年間かけて撮影中で、公開予定が2040年頃ということだから気が遠くなる話だ。それまで出演者やリンクレーター本人が生きているのかすら定かではない。

『スウィーニー・トッド』も凄い作品だ。こちらはジョニー・デップ主演でティム・バートンが監督した映画の出来も上々なのでお勧め。基本的にソンドハイムの舞台ミュージカルは宮本亜門の演出がいずれも出来が良い。日本で上演されていた『太平洋序曲』をたまたま来日中だったソンドハイムが観て、ブロードウェイでのリバイバル上演時に宮本を推薦したというエピソードはあまりにも有名。

〈ポーの一族〉

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宝塚歌劇が生み出したミュージカルの最高傑作。台本・演出はエース・小池修一郎。小池は歌劇団の演出家になって間もない頃に、原作漫画を書いた萩尾望都とミュージカル化の約束を交わしていて、正にライフワーク/集大成的作品となった。

花組の初演でエドガーを演じた明日海りおは、まるで漫画の中から飛び出してきたかのよう。再演でエドガーを演じた朝美絢も遜色なし。他の雪組キャストも概ね好演で、特にメリーベル役の音彩唯(ねいろゆい)が儚げで歌声も美しく、出色の出来だった。

幽玄、かつ耽美。とにかく観ろ!観ればわかる。以上。

〈キャバレー〉1929年、ナチス・ドイツが台頭する前夜のベルリン。「キット・カット・クラブ」が舞台となる。ちなみにアドルフ・ヒトラーが首相に就任するのは1933年1月30日。『キャバレー』はベルトルト・ブレヒトが戯曲を書き、クルト・ヴァイルが作曲した音楽劇『三文オペラ』を踏まえた作品であり、鑑賞の手引きとしてそちらの方もぜひ抑えておきたい。両者の関係性を示す動かしがたい証拠として、1966年の『キャバレー』初演時にロッテ・レーニャがキャスティングされていたことが挙げられる。『三文オペラ』は1928年にベルリンの劇場で初演され、ロッテ・レーニャは娼婦のジェニーを演じた。彼女はクルト・ヴァイルの妻でもあった。ちなみにヴァイルはユダヤ人でナチスの台頭とともにアメリカに亡命、ブロードウェイの作曲家に転身した。

『キャバレー』は映画化され、アカデミー賞でライザ・ミネリが主演女優賞、ボブ・フォッシーが監督賞を受賞するなど確かに優れてはいるのだが、かつてロッテ・レーニャが演じた下宿屋の主人フロウライン・シュナイダーとユダヤ人果物店店主シュルツとの老いらくの恋のエピソードとか、ふたりの歌がばっさりカットされており映画しか知らない人は是非舞台版も観て欲しい。

後者の一押しは映画『アメリカン・ビューティー』でアカデミー作品賞・監督賞を受賞し、現在ビートルズの伝記映画4部作を撮影中のサム・メンデスが演出したバージョン。ロンドンの劇場ドンマー・ウェアハウスで初演され、ブロードウェイに進出する際にロブ・マーシャル(ミュージカル映画『シカゴ』でアカデミー作品賞受賞。他にソンドハイムのミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』映画版やディズニー実写版『リトル・マーメイド』を監督)が共同演出・振付で加わったという超豪華スタッフ陣である。何よりMCを演じトニー賞でミュージカル主演男優賞に輝いたアラン・カミングのパフォーマンスに息を呑む。1998年のトニー賞授賞式でも観ることが出来るし、ドンマー・ウェアハウスの公演は全編が録画収録されイギリスでテレビ放送された。残念なことにこの映像はDVD,Blu-rayなどソフト化されていないのだが、観る手段がないわけではない……(試しに"donmar warehouse cabaret"で動画検索してみてください)。

MC(Master of Ceremonies)というのは司会進行役であり、つまりは狂言回しだ。『キャバレー』におけるMCの役回りを応用したのが『ジーザス・クライスト・スーパースター』のユダであり、『エビータ』のチェ、そして『エリザベート』のルキーニ。後世の作品に多大な影響を与えた。

なおジョン・カンダー(作曲)とフレッド・エブ(作詞)のコンビ作なら『蜘蛛女のキス』もお勧め。『シカゴ』も彼らの作品だよ。

〈ミス・サイゴン〉クロード=ミシェル・シェーンベルク(作曲)とアラン・ブーブリル(台本・作詞)のコンビは何と言っても『レ・ミゼラブル』が有名だが、僕は断然『ミス・サイゴン』を推す。ベトナムを舞台にプッチーニの歌劇『蝶々夫人』を下敷きにしている。プッチーニといえば『ラ・ボエーム』を基に『RENT』が生まれるなど、ミュージカルと縁が深い。

 ・  僕とミュージカル「レ・ミゼラブル」、愛憎の20年 (+オールタイム・ベスト・キャスト選出あり) 2012.11.23

〈ハミルトン〉作詞・台本・作曲・主演はリン=マニュエル・ミランダ。トニー賞で史上最多16ノミネートを獲得し、11部門受賞。さらにピューリッツァー賞(戯曲部門)に輝いた。因みにピューリッツァー賞を受賞したミュージカルは『南太平洋』『努力しないで出世する方法』『コーラスライン』、『RENT』、そしてソンドハイムの『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』などがある。現時点で『ハミルトン』がヒップホップ・ミュージカルの最高峰であるのは間違いない。

この作品を通してアメリカ建国史が手によるように分かるし、ジョージ・ワシントンなど建国の父は全員白人で、その多くが荘園(プランテーション)を持ち黒人奴隷を使役していた。その彼らを全員〈非白人〉が演じるというコンセプトが面白い。故に白人至上主義者であるドナルド・トランプが本作を気に入らないのは当然のことであり、首都ワシントンにあるケネディ・センターで上演される予定だった『ハミルトン』を彼が阻止したのはこうした事情があったのである。なお本作はオジリナル・キャストで上演された公演を完全収録した映像をディズニープラスで観ることが出来る(日本語字幕付き)。

〈ラグタイム〉

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本作が不幸だったのは、初演が『ライオンキング』の年と重なり、トニー賞のミュージカル作品賞や演出賞などをあちらに攫われてしまったことである(『ラグタイム』は台本・楽曲賞などを受賞)。しかし2026年のトニー賞ではミュージカル・リヴァイヴァル作品賞・主演女優賞・主演男優賞に輝いて気を吐いた。

日本での上演までになんと25年もかかってしまった。最大の難問は民族の衝突を主題にしているから。つまりWASP(ホワイト/アングロ・サクソン/プロテスタント)、ラトビアなど北欧や東欧から舶来したユダヤ系移民、そして黒人(アフリカ系アメリカ人)の3つのグループが登場する。しかし、これを軽々とクリアした藤田俊太郎の演出(発想)が鮮やか!

 ・  石丸幹二・安蘭けい・井上芳雄 /ミュージカル「ラグタイム」待望の日本初演! 2023.10.15

〈ゴースト&レディ〉劇団四季オリジナル・ミュージカル『ゴースト&レディ』は隔月誌「ミュージカル」において18名の評論家やジャーナリストの選考による2024年ミュージカル・ベストテンで【作品部門】第1位、【演出家部門】でスコット・シュワルツが第2位(第1位は『この世界の片隅に』の上田一豪)、主演の谷原志音が【女優部門】第3位、萩原隆匡が【男優部門】第6位に選出された。またMusical Awards TOKYO 2024 プレシーズンでは大賞・脚本賞・作曲賞・音楽監督(編曲)賞を受賞している。

紛れもなく本作は劇団四季オリジナル・ミュージカルのベストワンである。台本も音楽も文句なし!世界で勝負出来る作品に仕上がった。

浅利慶太時代の『李香蘭』『ドリーミング(青い鳥)』などは箸にも棒にもかからないお粗末な代物だった。比較的『夢から醒めた夢』は鑑賞に耐えうるものだったが、戦争、災害、飢餓などで亡くなった子供たちの幽霊が沢山いる霊界空港の場面には鼻白んだ。こんな取ってつけたようなエピソード要る??ー浅利は作劇の才能が皆無だった、と心底思う。演歌・歌謡曲が専門の三木たかし(津軽海峡・冬景色/夜桜お七)に作曲を依頼するというセンスもいただけない。

『ゴースト&レディ』の成功は2018年4月に劇団内に新設された企画開発室の功績が大きいだろう(浅利は2014年に退任した)。ここから他に『バケモノの子』『ロボット・イン・ザ・ガーデン』等が生み出されている。

〈パレード〉1913年アメリカ南部のアトランタを舞台にユダヤ人差別を背景にした冤罪事件(実話)を描いているが、非常に似た話で映画「死刑台のメロディ」(1971)がある。これは1920年アメリカ北部マサチューセッツ州で実際に起こったイタリア移民サッコとヴァンゼッティ冤罪事件を扱っている。

救いのない陰惨な物語で、よくぞこれをミュージカルにしたな!と思った。トニー賞では最優秀台本賞、楽曲(作詞・作曲)賞を受賞。森新太郎の日本版演出が鮮烈で心に突き刺さった。

 ・  石丸幹二&堀内敬子(久々の)共演、そして衝撃的傑作!〜ミュージカル「パレード」 2017.06.14

〈シー・ラヴズ・ミー〉本作は1963年にブロードウェイで初演され、僕は涼風真世、市村正親の主演で何度か観た。その後、新演出/別キャストで再演されている。作詞:シェルドン・ハーニック、作曲:ジェリー・ボックのコンビは1964年に初演された『屋根の上のヴァイオリン弾き』を生み出したことでも世界中にその名を轟かせている。20世紀初頭、帝政ロシアの圧政下、ウクライナ地方に生きるユダヤ人一家の運命を追う(ポグロムも描かれる)不朽の名作『屋根の上のヴァイオリン弾き』は大好きなミュージカルで、市村正親主演で再演される度に観劇しているのだが、ここは涙を呑んで『屋根〜』ほど知られていない『シー・ラヴズ・ミー』を紹介したい。

クリスマスを舞台に展開される心温まるロマンティック・コメディで、元になったのは1940年エルンスト・ルビッチ監督の映画『The Shop Around the Corner』。日本未公開で、ビデオ発売時の邦題は『街角 桃色の店』。この映画の原作はハンガリーの劇作家ミクローシュ・ラーズローが執筆し、1937年ブタペストで初演された戯曲 "Illatszertár(英題 Parfumerie)" である。

映画『恋人たちの予感』で脚本を書き、『めぐり逢えたら』で監督業にも進出したノーラ・エフロンの両親は二人とも脚本家で、ミュージカル映画『回転木馬』『足ながおじさん』『ショウほど素敵な商売はない』のシナリオを共同で執筆している。ノーラは少女時代、クリスマスの時期になると両親に連れられ劇場で『シー・ラヴズ・ミー』を観て幸福感に包まれた思い出があり、その記憶を元にメグ・ライアンとトム・ハンクス主演で『ユー・ガット・メール』の脚本・監督をした。文通というガジェット(小道具)がメールに翻案された、というわけ。

〈銀河鉄道の夜〉

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これは劇団ひまわりが創り上げたミュージカルで、僕は大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の定期演奏会で初めて出会った。

 ・ 大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定演/ミュージカル「銀河鉄道の夜」〜宮沢賢治の深層心理にダイブする。 2017.02.21

劇団ひまわり版はDVDを購入して鑑賞。主人公が石川由依だったのでびっくり仰天した。後に彼女は声優となり、『進撃の巨人』のミカサ・アッカーマンや『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の主人公(タイトルロール)で名を馳せた。

西村友の音楽がしみじみ良い。

〈ライオンキング〉『美女と野獣』の舞台ミュージカル版を観たときは、「所詮子供だまし。つまらん」と思った。しかしトニー賞授賞式における『ライオンキング』のパフォーマンス(冒頭部)は息を呑んだ。アニメとは全く別物。凄い。女性として初めてトニー賞でミュージカル演出賞を受賞したジュリー・テイモアの手腕にただひれ伏すのみ。インドネシアのワヤン・クリット(影絵芝居)、バリ島の仮面舞踊劇トペン、文楽人形(パペット)など様々な手法を駆使し、圧巻である。

しかしその後、ジュリー・テイモアはブロードウェイ・ミュージカル「Spider-Man Turn Off The Dark」の演出に起用されるも制作が遅れ度重なる公演の延期、膨れ上がった予算、相次ぐキャストの負傷、散々な前評判で本公演前に解雇された。ブロードウェイの長い歴史のなかでも最も多くのトラブルに見舞われた作品として今では知られている。

〈デスノート〉本作はそもそも物語自体がむっちゃ面白いし、ミュージカル台本の完成度も高く、フランク・ワイルドホーンの音楽も極上。ワイルドホーン作品としては初期の『ジキル&ハイド』も捨てがたい魅力がある。人格が分裂して歌うソロ・ナンバーなんか最高!

〈プロデューサーズ〉1968年にメル・ブルックスが監督した映画『プロデューサーズ』はコメディの傑作として名高い。それをメル・ブルックス自身が製作・脚本・作詞・作曲を務めたミュージカル『プロデューサーズ』は2001年に初演され、トニー賞で12部門をかっさらった。僕はこの年にブロードウェイで全オリジナル・キャストが揃った公演を観劇しており、抱腹絶倒の面白さだった(9・11同時多発テロの約2週間前の話だ)。後に演出を担当したスーザン・ストローマンが監督を務め、ネイサン・レインやマシュー・ブロデリックなどオリジナルキャストも多数出演した映画版が2005年に公開されたのだが、こちらは救いようがない駄作(flop)。スーザン・ストローマンには全く映像センスがなく、その後再び彼女が映画を撮ることもなかった。今にして思えば『ハミルトン』みたいに劇場でのパフォーマンスをそのまま映像に記録した方が良かったのではないだろうか?

〈ラ・カージュ・オ・フォール〉1973年に上演されたフランスの舞台劇をミュージカル化。その前に映画化もされており、原題はそのままなのだが、日本では『Mr.レディ Mr.マダム』というとんでもない邦題で公開された。ゲイのカップルが養子を迎えている設定なのだが、実は『マイ・フェア・レディ』も同様な構造なのではないかということに最近気が付いた!つまりヒギンズ教授とピカリング大佐というゲイカップルがイライザを養子として迎えるという物語。そう考えればヒギンズ最後の台詞「私のスリッパはどこだい?(Where the devil are my slippers? )」に納得がいく。どう見ても喧嘩した恋愛中の男女の会話とは思えないし。

〈ジェーン・エア〉僕は激情に駆られたようなブロンテ姉妹の小説『嵐が丘』と『ジェーン・エア』が大好きだ。そしてミュージカル『ジェーン・エア』は脚色が上手くよくまとめてあるしポール・ゴードンの音楽も◯。ジョン・ケアード(台本・作詞・演出)がお見事であった。日本のダブル・キャスト上白石萌音/屋比久知奈 のどちらも良い。

〈RENT〉山本耕史が主演した日本語版初演を僕は観ているのだが、当時はどうも本作の良さが理解不能だった。その後オリジナル・ブロードウェイ・キャストが多数出演した映画版(『ホーム・アローン』『ハリー・ポッター』シリーズのクリス・コロンバス監督)や、Blu-ray『レント・ライヴ・オン・ブロードウェイ』を観て、初めて真価が分かった。ストレートやゲイなどの性指向の違い、白人・黒人・ヒスパニックといった人種の違いなど多様性(diversity)が重大なモチーフとなっているので、日本人キャストだけだとそのニュアンスが十分に描き切れないのだ。それは『ウエスト・サイド物語』や『イン・ザ・ハイツ』でも同様だろう。そういう意味でとてもアメリカ的なミュージカルである。

〈ノバ・ボサ・ノバ〉宝塚歌劇はしばしば〈芝居(ミュージカル)〉+〈ショー(レビュー)〉という二本立てで興行するのだが、芝居の代表作が『ポーの一族』なら、ショー(レビュー)の最高傑作は間違いなく鴨川清作(作)『ノバ・ボサ・ノバ』である。異論は認めない。ショーで次にお勧めなのは荻田浩一(作)『パッサージュー硝子の空の記憶ー』かな?『ノバ』は宝塚歌劇にしか成し得ない、途轍もない作品である!観ていてその迫力に圧倒されること間違いなし。

〈回転木馬〉ロジャース&ハマースタイン2世のコンビで1つ選ぶなら、やはりこれかな?『サウンド・オブ・ミュージック』は映画の出来が良すぎるのであって、舞台版はそれほどじゃない。ただ『回転木馬』は父親が娘をひっぱたく場面があったり(しかも肯定的に描かれる)、現代人の価値観から言って「それってどうなの?」という複雑な気持ちになることも確かである。白人しか出てこない『オクラホマ!』も同様だ。

劇中のナンバー"You'll never walk alone"は感動的な名曲で今ではサッカー・ファンにとってのアンセムになっている。

〈コーラスライン〉泣く子も黙る名作中の名作。パンチが効いたマーヴィン・ハムリッシュの音楽は文句なし。ただ、複数の登場人物がバレエ映画『赤い靴』の話をするので、予めそちらの方も観ておいた方が感動が増すかも。リチャード・アッテンボロー監督による映画版の出来も良く、舞台版にはない新曲がある。

〈ガイズ&ドールズ〉僕は三度、宝塚歌劇版(2002年月組/2015年星組/2025年月組)を楽しんで来たのだが、『野郎どもと女たち』という邦題で公開された映画版(マーロン・ブランド、フランク・シナトラ主演)もすこぶる出来が良い。ニューヨークを舞台にした粋で洒脱な作品である。

〈42nd Street〉兎に角、タップ・タップ・タップ!! (←言うまでもなくtap danceのことね)

〈春のめざめ〉トニー賞でミュージカル作品賞を筆頭に8部門受賞。青春の、爆発し暴走するエネルギーが溢れんばかりに描かれる。僕はこれを東京の劇団四季・自由劇場で観たのだが、主人公メルヒオールを演じた柿澤勇人に「スターを見つけた!」と一目惚れした。彼の演技は突出していた。カッキーはご承知の通り、その後まもなく劇団四季を辞め、今や『ジキル&ハイド』や「ディア・エヴァン・ハンセン』などで大活躍している。

 ・  「春のめざめ」と現代ブロードウェイ・ミュージカル論 (2009年9月@東京)

〈カン・カン〉コール・ポーターが作曲した傑作。1996年宝塚月組が久世星佳と風花舞主演で上演したのだが、その後全く再演されていない。大好きなミュージカルなのでとても残念だ。兎に角、クルクル舞う風花を観ているだけで気持ちよく、幸福感に浸った。

〈翼ある人びと-ブラームスとクララ・シューマン-〉宝塚歌劇団がシアター・ドラマシティで上演した作品。作・演出:上田久美子の才能に心底惚れた。彼女が早期退団してしまったのが残念でならない(理不尽な言いがかりをつけられ歌劇団を去らねばならなかった原田諒も!!)。

〈壁抜け男〉劇団四季が福岡シティ劇場で日本初演したフランス産ミュージカル。初日に僕は劇場にいた。作曲は『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』で有名なミシェル・ルグラン。四季の地方公演としては珍しく生演奏(通常はカラオケ)だったのだが、これは奏者が3人という少人数だから実現したのだろう。地味だけど滋味深い愛すべき小品。

〈ジャージー・ボーイズ〉ジャンルとしては『マンマ・ミーア!』同様、ジュークボックス・ミュージカルである。トニー賞でミュージカル作品賞受賞。日本版は『ラグタイム』の藤田俊太郎による演出が隙がなく、そしてアッキーこと中川晃教のパフォーマンスに打ちのめされること間違いなし。いやもう言葉を失う⋯⋯。クリント・イーストウッド監督が手掛けた映画版も極上の出来。

〈ミー&マイ・ガール〉よく『マイ・フェア・レディ』の男性版と言われるのだが、初演は本作の方が先(1937年)。但し、『マイ・フェア・レディ』の原作であるジョージ・バーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』は1913年初演なので、そちらを参考にした可能性は否めない。能天気で底抜けに明るいハッピー・ミュージカルである。

〈ピーター・パン〉何と言っても本作の魅力はフライングである。日本ではホリプロが昔から上演しており、そこから笹本玲奈・高畑充希・唯月ふうかといったスターたちが羽ばたいて行った。

〈ファントム〉もう一つの『オペラ座の怪人』。どちらもガストン・ルルーの同じ小説を原作としている。本作の出来は優れているのに、アンドルー・ロイド・ウェバー版が先行したために、気の毒なことにオン・ブロードウェイに進出出来なかった。アメリカよりもむしろ日本の方で愛されている作品ではないだろうか?ロイド・ウェバー版がファーザー・コンプレックスの話であることに対し、本作はマザー・コンプレックスの物語になっているという点が実に興味深い。作曲したモーリー・イェストンの作品としては『グランド・ホテル』や『タイタニック』もお勧め。

〈ウエスト・サイド物語〉僕は劇団四季版も宝塚歌劇版も生で観ているのだが、正直作品が既に古すぎると思う。民族対立の話なのに日本人だけで演じることにも無理がある。映画はロバート・ワイズ監督とスティーヴン・スピルバーグ監督の2つのバージョンが有り、どちらも傑作なのでそれで十分だろう。舞台版は必要なし!!

〈クレイジー・フォー・ユー〉ガーシュウィンの名曲の数々が堪能出来る。正直プロットには無理があると思うが、ハッピーな気持ちになれる作品なので大目に見ようではないか⋯⋯だってタップ・ダンスが大好きだもん!

〈オケピ!〉三谷幸喜が台本を書いたミュージカルとしては2026年に初演された『新宿発8時15分』も緻密に伏線が張り巡らされた作品で感銘を受けたのだが、音楽に関しては服部隆之が作曲した『オケピ!』に軍配を上げる。初演時に指揮者(主人公)を演じた真田広之が素晴らしく、DVD/Blu-rayとして発売されなかったことがとても残念だ(市販されなかったが映像は残っている筈)。三谷は本作で第45回岸田國士戯曲賞を受賞した。

〈ザ・ミュージック・マン〉僕は2001年にブロードウェイでスーザン・ストローマンが振付・演出したリヴァイヴァル版を観劇したが、正直今一つだった。しかし2023年坂本昌行主演で観た公演は凄く良かった(演出:ダニエル・ゴールドスタイン/振付:エミリー・モルトビー)。1957年に初演され、トニー賞でミュージカル作品賞・演出賞・主演男優賞(ロバート・プレストン)など5部門受賞。同じ年に初演された『ウエスト・サイド物語』を抑えての快挙だった。ロバート・プレストンは62年の映画版にも出演、そちらの出来もすこぶる良い。

〈ある男〉映画にもなっているが、よくぞこれだけ難しいテーマ(社会問題)の小説をミュージカルにしたもんだと感心した。ホリプロ偉い!ジェイソン・ハウランドはミュージカル『若草物語』などブロードウェイでも活躍する作曲家であり高品質。

〈マイ・フェア・レディ〉

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イライザを大地真央が演じている間は「絶対観に行かない!」と誓いを立てていた。漸く神田沙也加になり若返ったと喜んでいた最中⋯⋯。彼女が投身自殺をしたのは『マイ・フェア・レディ』札幌公演中に宿泊していたホテルだった。その後、大阪公演が予定されており僕はそのチケットを持っていた。ダブルキャストの朝夏まなとが代演すると発表があったものの到底劇場に足を運ぶ気にもなれず払い戻しをした。考えてみれば僕は神田沙也加がミュージカル女優としてデビューした『イントゥ・ザ・ウッズ』(宮本亜門演出)も東京で観ていた。可憐で素敵な赤ずきんちゃんだった。

〈ジプシー〉究極のステージ・ママ(stage mother)を主人公とする実話である。毒親の物語とも言える(マイケル・ジャクソンの父親を彷彿とさせる)。このローズというキャラクターが強烈であり、今まで沢山の大女優が演じてきた。初演のエセル・マーマンを筆頭にアンジェラ・ランズベリー、バーナデット・ピーターズ、パティ・ルポーン、オードラ・マクドナルドなど錚々たるメンツである。TV版のベット・ミドラーも良かった。日本では現在、大竹しのぶが演じており見応えあり。

〈ノートルダムの鐘〉僕は本作がアラン・メンケンの最高傑作だと確信している。特にクワイヤ(聖歌隊)によるコラール(讃美歌)の美しさは筆舌に尽くしがたい。ディズニー・アニメでは無理やりハッピー・エンドに改変されてしまい「なんだかなぁ」だったが、舞台版はヴィクトル・ユーゴーの原作通り、悲劇的な幕切れとなっている。

〈カム フロム アウェイ〉2001年9月11日、アメリカ同時多発テロが発生し、全米の領空が閉鎖された。その日、カナダの小さな町に何が起こったか?を描く実話。目の付け所がいいね👍️ 企画の勝利である。舞台を丸ごと収録した映像作品がアップルTVから配信されている。

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2026年4月10日 (金)

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2026(思い出の「アナと雪の女王」「ライオンキング」)

3月15日(日)フェスティバルホールへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部定期演奏会(最終公演)を聴く。指揮は監督の梅田隆司先生。

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 I部

 ・ミュージカル「アナと雪の女王」
 ・ミュージカル「ライオン・キング」

II部

 ・ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」より
 ・吹奏楽部21年間の歩み(郷間幹男 編曲「嵐メドレー」)
 ・甲子園応援コーナー〜リクエストコーナー
 ・卒業生を送る歌(ゆず「友 〜旅立ちの時〜」)
 ・Superfly「愛をこめて花束を」
 ・フィナーレ(「銀河鉄道999」「星に願いを」「Sing Sing Sing」)

今年の1月10日まで定演でミュージカル『キャッツ』をする予定だったが、梅田先生が姪っ子に訊ねると「それ知らない。『ライオンキング』ならよく知ってる」と反応があり、急遽演目を変更したそう。学校は今回の演目のために4台の3Dプリンターを購入した。それにより、『アナと雪の女王』のオラフ(雪だるま)や『ライオンキング』に登場するライオンのお面、キリン、プンバァ(イボイノシシ)などの造形が素晴らしく、ブロードウェイ版と比べても遜色ないと思った。またアナとエルサが着る、青と緑のドレスが洗練されたデザインでとても美しく、息を呑んだ。

『アナ雪』のナンバー〈雪だるまつくろう〉〈生まれてはじめて〉を久しぶりに聴きながら、いろいろなことが頭の中を走馬灯のように駆けめぐった。真っ先に目に浮かんだのがアニメの日本語吹替版を担当した神田沙也加だ。彼女が18歳で舞台デビューしたミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』(スティーヴン・ソンドハイム作詞・作曲)の赤ずきんちゃん役を僕は東京で観ており(可憐だった!)、最後に出演したミュージカル『マイ・フェア・レディ』大阪公演のチケットも持っていた。しかし大阪に来る前の札幌公演で彼女は宿泊していたホテルから飛び降り自殺してしまった。痛ましいことだ。愛着障害が原因と考えられ(共演していた前山剛久の言動はトリガーでしかなく、根はもっと深い)、幼少期に受けた心の傷(両親の不在)は大人になっても癒やされないのだということを思い知らされた。彼女が14歳の頃から大地真央のことを「ママ」と呼び慕っていたというエピソードが胸に刺さる。『アナと雪の女王3』は2027年に公開予定だが、アナの吹替は誰がするのだろう?考えただけでも胸がキュッとなる。

『アナ雪』が2014年3月に日本で公開された当時僕は劇場で3D上映を観たと記憶している。雪が立体的に降り落ちてくるのが印象的だった。あの頃は3Dがブームだったが、3D眼鏡が煩わしいからなのか現在は完全に下火になった。特にアニメの3D上映って皆無なのでは?

また映画が公開された年、紅白歌合戦で『アナ雪』コーナーがあり神田も出演したが〈ありのままで〉を歌ったのはMay J.であり、エルサ役の松たか子はこの曲を一度もTVの歌番組で披露していない。あくまで声優としての契約であり、どうやら生歌を披露するにはディズニーからの許可が必要らしい(それを一手に引き受けているのがMay J.というわけ)。

『アナ雪』は一応アンデルセンが原作ということになっているが、映画『ウィキッド ふたりの魔女』を観てむしろミュージカル『ウィキッド』を徹底的に研究し作劇しているのだな、ということにはたと気付いた。『ウィキッド』のエルファバとグリンダの友情=シスターフッドが、エルサとアナという文字通り姉妹の関係に置き換えられており(アンデルセン童話に姉妹は登場しない)、『ウィキッド』第一幕のクライマックスで歌われる"Defying Gravity"を基に『アナ雪』の名曲"Let It Go"〈ありのままで〉が生まれた。歌詞の内容は殆んど同じである。両者の繋がりの決定的証拠は舞台版『ウィキッド』のエルファバ初演キャストであるイディナ・メンゼルが『アナ雪』英語版でもエルサのアフレコを担当し、"Let It Go"〈ありのままで〉を歌っていること。因みにイディナ・メンゼルは伝説的傑作ミュージカル『レント』モーリーン役のオリジナル・キャストであり、映画『ウィキッド ふたりの魔女』でもエメラルド・シティの場面でグリンダ役だったクリスティン・チェノウェスと一緒にカメオ出演している。

というわけで梅田先生、いつか大阪桐蔭の定演でも『ウィキッド』を取り上げてください!

それからオラフの日本語吹替は元々ピエール瀧だったのだが、2019年に麻薬取締法違反容疑で逮捕された後はオラフの声を差し替えたものが配信・販売されている。よってピエール瀧バージョンは今や幻となってしまった。なおテレビ出演も出来なくなった彼はその後『全裸監督』『地面師たち』『新幹線大爆破』などNetflix専属俳優として大活躍している。こうしたキャンセル・カルチャーは本当に愚かなこと。ディズニーには猛省を促したい。

『ライオン・キング』演奏前に梅田先生が「先日劇団四季の公演を家族と観てきましたが、うちの方が優れているという自信があります」と仰った。その根拠の一つとして劇団四季はオーケストラが録音音源であり、大阪桐蔭は迫力のある生演奏であることを挙げておられた。

ここで少し補足説明をしておきたい。1998年12月20日(日曜日)『ライオンキング』東京公演初日、僕は四季劇場[春]の客席にいた。これがこけら落としだった。その時はブロードウェイと同様、全てが生演奏だった。

調べてみると劇団四季『ライオン・キング』が東京限定で生オーケストラ演奏を実施していたのは2011年までだっようだ。つまりその年の3月11日に東日本大震災があり公演を一時休止。再開にあたり節電への協力や公演維持の安定性を考慮する形で、現在のスタイル〈(管弦楽器は)カラオケ+客席左右のバルコニー等で演奏する生パーカッション〉へと移行したらしい。

現在劇団四季が東京公演で生オーケストラを起用しているのは『オペラ座の怪人』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のみ。ただしこれらの演目も東京以外の劇場では全てカラオケである。

過去に遡ってみよう。ミュージカル『キャッツ』1983年の東京初演(新宿・西口の特設テント劇場「キャッツ・シアター」)は生演奏だったが、85年に大阪(梅田「キャッツ・シアター」)へ移る際、以下のような理由で録音音源に切り替わったと言われている。

劇団四季を創設した演出家・浅利慶太は「生オーケストラだと、その日の指揮者や奏者のコンディションでテンポが微妙にズレる」「ダンサーは(ジャンプしたあと)空中で止まることができない。重力に従って必ず決まった時間に着地する。だから完璧に計算されたダンスを見せるためには、テンポが不変のテープ(当時)でなければならない」 という屁理屈を展開した。また劇団四季は最新の音響設備を導入しており、「生演奏よりも録音の方が、劇場内のどこにいてもクリアで迫力のある理想的なバランスで音楽を届けられる」とも主張した。もしこの言い分がまかり通るのであれば『白鳥の湖』『ジゼル』『ロメオとジュリエット(プロコフィエフ)』などすべてのバレエ演目は生演奏ではなく、録音音源に切り替えなければならないことになる……んなアホな!!

また1989年10月1日近鉄劇場(天王寺区上本町)で開幕した『オペラ座の怪人』大阪初演は生オーケストラによる演奏だったが、1995年MBS劇場(大阪市北区堂島)での再演はカラオケになった。

まぁ要するに真の目的は経費、特に人件費を削減したかったのだろうと僕は推測する。劇団の仕事だけで役者が食っていけるようにするということが一番重要で、浅利にミュージカルに対するはそもそもなかったのだ。

では何故東京だけ(一部劇場は)生オーケストラなのか?おそらくそれは演劇評論家などマスコミ対策なのだろうと僕は邪推する。「どうして生の舞台なのに音楽はカラオケなの?」と問い詰められたり、記事に書き立てられたら都合が悪いでしょ?再演とか地方公演なら口うるさいライターは来ない。

ただ劇団四季の名誉のために言い添えておくと、1999年11月14日に福岡シティ劇場(福岡県福岡市博多区)で幕を開けたミッシェル・ルグラン作曲のミュージカル『壁抜け男』は地方公演としては珍しく生演奏だった(僕は初日に観た)。実はこれ、たった3人の奏者でピアノ・木管楽器・パーカッションを演奏するという小編成なので、人件費がかからないから実現したのだろう。しかし後の全国ツアーでは従来のカラオケ上演になってしまったのだけれど……閑話休題。

大阪桐蔭定演の感想に戻ろう。全日本吹奏楽コンクールで銀賞に終わった自由曲『火の鳥』は精彩を欠いた(指揮者と曲目との相性の問題だろう)。

 ・ 史上初の快挙「オペラ座の怪人」全日本吹奏楽コンクールへ!〜梅田隆司/大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 (2024年はこの自由曲で全国大会金賞受賞)

〈リクエストコーナー〉で客席から要望があったのは『ハウルの動く城』から〈人生のメリーゴーランド(JAZZ Ver.)〉と〈カリスマックス(Snow Man)〉。〈カリスマックス〉ではサングラスをした9人の男子生徒が歌った。特に〈人生のメリーゴーランド(JAZZ Ver.)〉に痺れた!『ウエスト・サイド物語』やミシェル・ルグラン作曲の〈キャラバンの到着(映画『ロシュフォールの恋人たち』より)〉でも感じるのだが、梅田先生のタクトって『火の鳥』のような生真面目なクラシック音楽ではなく、こういったJAZZYな曲でその真価を最大限に発揮するんだよね。グルーヴがある。

そしてアンコール。大阪桐蔭の魅力爆発、真骨頂の『銀河鉄道999』を聴きながら、アニメでメーテルの声を当てた池田昌子に思いを馳せた。彼女は今年3月3日に亡くなった。享年87歳。原作者の松本零士はメーテルのモデルの一人としてジュリアン・デュヴィヴィエ監督のフランス映画『わが青春のマリアンヌ』のヒロインを挙げており、実はテレビ放映時にマリアンヌの吹替を担当したのが池田昌子だったのである。松本零士には『わが青春のアルカディア』という作品もあり、タイトルの類似は決して偶然ではない。『わが青春のマリアンヌ』はとっても素敵な映画なので機会があればぜひ観てみてください。

 ・ 大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定演/ミュージカル「銀河鉄道の夜」〜宮沢賢治の深層心理にダイブする。 2017.02.21

で通常は『銀河鉄道999』の後に『星に願いを』で〆なのだが、曲が終わると梅田先生が「もうあと2分ある」と無茶ぶりで疾風怒濤の『Sing Sing Sing』に突入!えっ、えっ、えっ!!前代未聞のアンコールに大興奮。ノリノリで最高!!!場内が熱気で包まれたことは言うまでもない。いいものを聴かせてもらった。来年もまた来ます。

 ・ 第55回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 前編 2007.10.25 (大阪桐蔭の演奏をこの日初めて聴いた)
 ・ 
第57回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 2009 《後編》 2009.10.31 (大阪桐蔭がこの年初めて全国大会金賞に輝く)

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2025年10月16日 (木)

近況報告(あるいは、なぜ当ブログは最近更新頻度が低下しているのか?)

最近、記事の更新を怠っていて読者に対して申し訳なく思っている。事情を説明しよう。

ふと「フランス語を勉強しよう!」と思い立ち、2020年4月からNHKラジオ『まいにちフランス語』を3年間聴いた。

それと並行して22年4月から『まいにちドイツ語』を3年、23年4月から『まいにちイタリア語』を聴いている。

週に6日ラジオ講座を聴いて学習期間は25年4月に1500日を達成、イタリア語とドイツ語講座の聴講はそれぞれ1000回を超えた(来年度からフランス語に戻ろうと考えている)。同じ日に3つ以上の放送を聴いたのは現在520回に上る(ラジオストリーミング『NHKゴガク』で自分の視聴履歴が確認出来る)。だからブログを書く時間的余裕がなくなった。

まさに「五十の手習い」である。動機となったのは以下の通りだ。

僕は中学生の頃からオペラを愛好していた。まずはヴェルディやプッチーニのイタリア・オペラ、そしてワーグナー(ドイツ)が作曲した楽劇『ニーベルングの指環』(全4夜)のLPレコードをお小遣いをためて購入し、熱心に聴いた。たしか全部で16枚だったと記憶している(『ラインの黄金』3枚+『ワルキューレ』4枚+『ジークフリート』4枚+『神々の黄昏』5枚)。1980年前後の話だ。当時LPレコードには日本語対訳が添付されており内容の理解には困らなかった。

配信時代の今、逆に歌詞対訳を手に入れることが難しくなってしまった(対訳付きCDのニューリリースもコストが嵩むのでなかなか困難だ。CDの売上は落ち込むばかりで、はっきり言って採算が取れない)。

そういった経緯でオペラやベートーヴェンの第九の歌詞を原語で理解出来たら楽しいだろうな、と思った。ただ想定外の事態が発生した。先日より『ニーベルングの指環』対訳本を購入し勉強し始めたのだが、なんと!現在の辞書には載っていない中世ドイツ語とか、古ゲルマン語がいくつも登場するのだ。そうか、この作品は神話の世界を描いており、現代の日本人が『古事記』とか『源氏物語』を原文で理解しようとしても困難なのと多分似ているのだろう。

フランス語についてはフランソワ・トリュフォー監督の『大人は判ってくれない』『恋のエチュード』やジャン=リュック・ゴダール監督『気狂いピエロ』、ジャック・ドゥミ監督『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』などヌーベルバーグの作品理解に役立つだろうと考えた。イタリア映画もフェデリコ・フェリーニの『カビリアの夜』『甘い生活』『8 1/2』とかルキノ・ヴィスコンティ監督『山猫』『ルートヴィヒ/神々の黄昏』、あるいはジョゼッペ・トルナトーレ監督『ニュー・シネマ・パラダイス』なんか大好きだしね。クラシック音楽の楽譜も「アレグロ」とか「アダージョ」とか全てイタリア語で表記されている。

先日、テレビでNHK交響楽団の定期演奏会を視聴していたら音楽監督ファビオ・ルイージのインタビューがあった。彼はイタリア語で話していたのだが、その半分くらい何を言っているか聴き取れたので嬉しかった。

オーストリア・ウィーン在住のある日本人音楽家夫婦がYouTubeで語っていたのだが(夫はウィーン放送交響楽団に在籍)言語とその国の音楽には密接な関係があるのだという。確かにJ.S.バッハやベートーヴェンの音楽とドイツ語の硬い響き、ドビュッシーやラヴェルなど柔らかく曖昧模糊として拍子がはっきりしない印象派の音楽とフランス語には共通点がある。つまり言語学習は音楽理解にも役に立つ。

日本語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語。さて、次はどうしよう?いま取り組みたいと考えているのはラテン語。公用語としてはバチカン市国でしか話されていない特殊な言語である。映画『教皇選挙』では台詞に沢山取り入れられていた。イタリア語のルーツであり、イタリア人にとっては日本の中学・高校で古文を勉強するような感覚だろう。そしてフランス語とスペイン語もラテン語から派生した言語。だからヨーロッパの中学・高校ではラテン語が選択科目になっている。一般教養として重要なのだ。

レクイエムやその他のミサ曲など、宗教音楽は全てラテン語で歌われる。だから習得したい。ただし学習には難点があって、残念ながらNHKの語学講座にはないんだよね。しばらく独学でやってみよう。

何事を始めるのにも決して遅すぎることなどない。そうつくづく思う今日このごろである。僕はこのことをこよなく愛する大林宣彦監督の映画『はるか、ノスタルジィ』から学んだ。

(追伸)なお毎年恒例、年末の映画ベスト20(または30?)や来年のアカデミー賞大予想は実施する予定だ。乞うご期待。今年観た作品では『ワン・バトル・アフター・アナザー』『チェンソーマン レゼ編』『ハウス・オブ・ダイナマイト』『教皇選挙』『ウィキッド ふたりの魔女』『国宝』とか痺れたなぁ。あ、アカデミー作品賞・監督賞を受賞した『ANORA アノーラ』はイマイチ。

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2024年9月 4日 (水)

史上初の快挙「オペラ座の怪人」全日本吹奏楽コンクールへ!〜梅田隆司/大阪桐蔭高等学校吹奏楽部

台風の影響で延期になった関西吹奏楽コンクール高等学校の部Aが無観客で9月3日(火)に開催された。そして梅田隆司/大阪桐蔭高等学校が代表に選出され、全国大会への切符を手に入れた。彼らが今年自由曲に選んだのがアンドルー・ロイド・ウェバーが作曲したミュージカル『オペラ座の怪人』である。

念のため「吹奏楽コンクールデータベース」で確認した(裏を取った)のだが、実は昨年度まで『オペラ座の怪人』で全国大会に進出した団体は(中学、高校、大学、職場・一般の部合わせても)皆無である。いや、それどころか『オペラ座の怪人』のみならず、『キャッツ』『ジーザス・クライスト・スーパースター』『ウーマン・イン・ホワイト』などロイド・ウェバー作品すべてが一度も全国大会で演奏されたことがない。

一方でクロード=ミシェル・シェーンベルクが作曲したミュージカル『ミス・サイゴン』(宍倉晃 編曲)は2002年に大滝実/埼玉栄高等学校が全国大会で金賞に輝き、一大センセーションを巻き起こしたのは記憶に新しい。あれは衝撃的だった。

また2013年と21年に宇畑知樹/埼玉県立伊奈学園総合高等学校が同じシェーンベルクのミュージカル『レ・ミゼラブル』(森田一浩 編曲)で全国金を受賞しているし、2017年にはアラン・メンケン作曲ミュージカル『ノートルダムの鐘』(森田一浩 編曲)でもてっぺんを取った。

ロイド・ウェバーが紡ぐ旋律はプッチーニのオペラみたいにキャッチーで耳に残るのだが、器楽演奏としては難易度が低く、コンクールに向かない。どうしても全国大会に選ばれる学校の自由曲はラヴェルの『ダフニスとクロエ』とか、レスピーギ『ローマの祭り』(グレード5〜6)、吹奏楽オリジナル曲ならピーター・グレイアム『ハリソンの夢』(グレード7)といった、技術的に超難しい楽曲に偏りがちである。

だから『オペラ座の怪人』で全国進出を果たすのは画期的事件だし、ここまできたら是非頂点に上り詰めてほしいと願わずにはいられない。

僕はミュージカル『オペラ座の怪人』が死ぬほど好きで、ブロードウェイ(NY)、ウエストエンド(ロンドン)のみならず、ラスベガスにまで行って観劇している(ラスベガス版は2012年に閉幕)。

 ・ オペラ座の怪人 2007.05.19
 ・ ラスベガス便りその1 《オペラ座の怪人》 2009.01.02

大阪桐蔭が演奏する『オペラ座の怪人』は、『指輪物語』で名高いオランダの作曲家ヨハン・デ・メイの編曲で聴いたことがある。また2024年定期演奏会での演奏は郷間幹男によるもの(歌付き)だった。

 ・ 「吹奏楽の神様」屋比久勲登場!~大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2014@ザ・シンフォニーホール
 ・  大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会2024(「サウンド・オブ・ミュージック」「オペラ座の怪人」のおもひでぽろぽろ)

また建部知弘による編曲版も素晴らしい。今回梅田先生は誰の編曲を採用したのだろう?興味津々である。

ただ気がかりなのは楽曲の著作権(二次使用権)の問題だ。関西大会の高校Aライブ配信では大阪桐蔭の自由曲が配信不可だった。つまり二次使用が認められなかったわけだ。だから全国大会での演奏が、DVD・Blu-rayで発売される際に収録されるかビミョーである。

ミュージカル作品の中で版権問題が一番厳しいことで有名なのがレナード・バーンスタインの『ウエスト・サイド物語』である。日本で初演したのは宝塚歌劇団だが、その公演がテレビで放送されたり、ビデオやDVD、Blu-rayで発売されたことは一切ない。つまり映像による二次使用は認められていない。宝塚歌劇が上演する他の海外ミュージカル(『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』『ファントム』等)と比較すると雲泥の差だ。まぁさすがにロイド・ウェバーの場合、そこまで厳しくはないと思うのだが……。

なおこれを機会に作品を観てみたいという方、ジョエル・シューマッカー監督による映画版(2004)は余りお勧めしない。如何にもB級ホラーの匂いがプンプンするのだ。エミー・ロッサム演じるヒロイン・クリスティーヌは良い。しかしジェラルド・バトラーの怪人とパトリック・ウィルソンのラウル子爵がいただけない。カルロッタ役のミニー・ドライヴァーも✕。ロイド・ウエバーが書き下ろした新曲もお粗末極まりない。因みに当初怪人役はヒュー・ジャックマンが予定されていたのだが映画の撮影と、ブロードウェイ・デビュー『ザ・ボーイ・フロム・オズ』出演が重なったため、ヒューは舞台を選び、見事トニー賞でミュージカル主演男優賞を受賞した。彼が『オペラ座の怪人』に出ていたら、もっとマシな作品になっただろうに。なお、舞台のプロデューサー、キャメロン・マッキントッシュは再映画化したいと考えているようなので、そちらに期待したい。

というわけで、映像として観るのなら断然『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』の方が遥かに素晴らしい!ラミン・カリムルーも、シエラ・ボーゲスも文句なしだ。

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全日本吹奏楽コンクール 高等学校の部は2024年10月20日(日)に宇都宮市文化会館で開催される。刮目して待て。

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2024年5月24日 (金)

段田安則の「リア王」

4月20日(土)ブロードウェイ・ミュージカル『カム フロム アウェイ』に゙続き、大阪に新たに出来たSkyシアターMBSで『リア王』を観劇した。

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翻訳:松岡和子、演出:ショーン・ホームズ、美術・衣装:ポール・ウィルス。出演は...

段田安則、小池徹平、上白石萌歌、江口のりこ、田畑智子、玉置玲央、入野自由、前原滉、盛隆二、平田敦子、高橋克実、浅野和之  ほか。

因みに段田安則と浅野和之はかつて野田秀樹が主催していた「夢の遊眠社」で活躍した仲間である。

段田は2022年にもショーン・ホームズとタッグを組んだ『セールスマンの死』で読売演劇大賞 最優秀男優賞を受賞している。

ポスターでリア王の顔は傷だらけ、泥まみれになっているが実際の舞台ではこれほど汚いメイクではなかった。コピー機やウォーターサーバーがあるオフィスみたいな舞台装置に登場人物はスーツにネクタイ姿、つまり現代を舞台にした「読み替え」演出だ。

実はヨーロッパの歌劇場ではオペラの「読み替え」演出が当たり前のことになっており、例えばかつてのジャン=ピエール・ポネルとか、『ラ・ボエーム』『トゥーランドット』で名高いフランコ・ゼフィレッリのような、台本に書かれた時代に合わせた衣装や舞台装置による演出は現在、殆ど見かけない(アメリカのメトロポリタン歌劇場なら、まだたまにある)。多分「読み替え」演出の先駆者と言えるのは1976年バイロイト音楽祭におけるパトリス・シェローによる楽劇『ニーベルングの指環』あたりではないだろうか?ピエール・ブーレーズが指揮したあれだ。

「読み替え」には当初、違和感を覚えたし世間では賛否両論ある。しかしもう慣れた。結局、この手法の肝は「21世紀の現代において古典を上演する意義を考えろ!」ということなのだろう。1600年代初頭に初演されたシェイクスピア劇を、当時のまま再現することに果たして意味はあるのだろうか?そういうことだ。

段田は無論のことだが、底意地が悪い長女ゴリネル(江口のりこ )と次女リーガン(田畑智子)、そして清純なコーディリア(上白石萌歌)の三姉妹が出色の出来。大満足。

考えてみれば今までミュージカル『ロミオ&ジュリエット』やブリテンのオペラ『夏の夜の夢』、ヴェルディの『オテロ(オリジナルは『オセロー』)』など観劇してきたが、シェイクスピアのストレート・プレイを観るのはこれが初めてかも。『ハムレット』もオペラ化されているし(アンブロワーズ・トマ/ブレット・ディーン )、『十二夜』は色々なヴァージョンでミュージカル化されている(例えば原田諒が作・演出した宝塚歌劇団『ピガール狂騒曲』)。しかし『リア王』は聞いたことがない。そういったアレンジには向いていないのかも。

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2024年5月23日 (木)

ブロードウェイ・ミュージカル「カム フロム アウェイ」@SkyシアターMBS(大阪)

4月6日(土)JR大阪駅・西口に直結、新しく出来たばかりのSkyシアターMBSへ。ミュージカル『カム フロム アウェイ』を観劇した。

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1,289席の中規模劇場である。梅田芸術劇場メインホールが1,905席、その地下にあるシアター・ドラマシティが898席なのでちょうど中間ということになる。因みに座席が狭くて古くで僕が大嫌いな森ノ宮ピロティホールは1,030席。SkyシアターMBSは観易く、いいハコだった。

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2001年9月11日ニューヨークが混迷した同時多発テロの裏で、カナダにある小さな町・ニューファンドランドで起きた驚くべき実話を基にしている。100分というコンパクトな上演時間で途中休憩なし、ノン・ストップ。2017年のトニー賞において本作でミュージカル演出賞に輝いたクリストファー・アシュリーが日本版も引き続き担当した。この年、トニー賞でミュージカル作品賞など総なめにしたのが『ディア・エヴァン・ハンセン』なのだが、作品の内容にせよ、音楽にせよ、僕は本作のほうが断然好き。因みにイギリスのローレンス・オリヴィエ賞ではミュージカル作品賞・楽曲賞・振付賞・音響賞を受賞した。

登場人物は100人近く。しかし出演者はたった12名。

安蘭けい、石川禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森公美子、柚希礼音、吉原光夫

このメンツ、theatergoer(観劇好き、芝居好き)なら分かると思うけど超豪華キャストである。主役を張れる人たちばかり。〝日本ミュージカル界のアベンジャーズ”と評されたのもむべなるかな。おまけに僕が観劇した日は安蘭けいと柚希礼音という元・宝塚歌劇団男役トップスターによるアフタートークもあったので超オトクであった。昔から安蘭けいは話術が巧みなので場内が爆笑の渦に包まれたことは言うまでもない。

展開はスピーディだし、内容的にも深く文句なし。再演があれば是非また観たい。

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2024年4月 1日 (月)

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会2024(「サウンド・オブ・ミュージック」「オペラ座の怪人」のおもひでぽろぽろ)

3月17日(日)フェスティバルホールへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の第19回定期演奏会を聴く。監督の梅田隆司先生が指揮した。

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まず能登震災復興を願ってユーミンの『春よ、こい』が歌われ、2019年に初演されたショー〈歴史の「夢」を訪ねて〉の再演から始まった(〈ローマを訪ねて〉に改題)。

 ・ 大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会2019とディズニー「ファンタジア」

ここで演奏された曲目は、

 ・レスピーギ(杉本幸一編):「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3組曲
 ・ハンス・ジマー:アニメ映画「プリンス・オブ・エジプト」より
 ・レスピーギ:交響詩「ローマの祭」より
 ・グノー:アヴェ・マリア
 ・フォーレ:付随音楽「ペリアスとメリザンド」よりシチリアーナ
 ・レスピーギ:交響詩「ローマの松」より

クライマックスでホールの四方八方からバンダ(別働隊の小規模金管アンサンブル)が鳴り響き、迫力満点。

続いてミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』と『オペラ座の怪人』が歌・衣裳付きで上演された。『オペラ座の怪人』は嘗てヨハン・デ・メイ編曲版(歌なし)が定演で披露されたが、今回は郷間幹男による編曲。

 ・「吹奏楽の神様」屋比久勲登場!~大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2014@ザ・シンフォニーホール

僕はこの2つのミュージカルに強い思い入れがあり、生徒さんたちのパフォーマンスを見ながらさまざまな思い出が走馬灯のように脳裏を駆け巡った。多分これから演奏しようという若い人たちにも参考になる情報(ネタ)も含まれていると思うので、手繰った記憶を紐解いていこう。

映画『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)に初めて触れたのは地元の岡山市で中学生の時。昭和の時代、1980年ごろの話だ。家庭用ビデオデッキは未だ普及しておらず、レンタルビデオ店すらなかった。昔の映画はテレビ放送をリアルタイムで観るしか手段がなかった。文化祭の日に学校の教室で(8mmか16mmの)フィルム上映されたのだ。しかも3-40分に短縮されたハイライト版。それでも僕は感動した。そして全編を観たいと強く思った。数年後、岡山大学映画研究部が土曜日に映画館を夜間貸し切って名作映画4本を上映するイベントがあり、プログラム最初が『サウンド・オブ・ミュージック』だった。確か、岡山市千日前商店街にあったSY松竹文化だったと記憶している。21時上映開始で僕は1本目だけを観た(他にロベール・アンリコ監督、アラン・ドロン主演『冒険者たち』があったのを覚えている)。全長版を観てびっくりしたのは、短縮版に収録されていた修道院長(ペギー・ウッド)が歌う「すべての山を登れ Climb Ev'ry Mountain」がごっそり無くなっていたこと!大好きな曲なのに……。

のちに判明したのだが、公開直前になってロバート・ワイズ監督からこのソロ・ナンバーをカットするよう指示があったらしい。映画のテンポが間延びすると判断されたのだろう。しかしテレビ放送、ビデオ、DVD、Blu-ray、配信版にはカットされることなく丸々収録されているし、「午前10時の映画祭」でリバイバル上映された際にもあった(多分フィルムではなくデジタル上映だったからだろう)。因みにクレジットされていないがペギー・ウッドの歌はマージェリー・マッケイ(Margery MacKay)による吹替である。

大学入学のお祝いとしてパイオニアのレーザーディスク(LD)プレイヤーを買ってもらい、最初に購入したソフトが『サウンド・オブ・ミュージック』。当時のブラウン管テレビ(横:縦の長さが4:3)のサイズに合わせたトリミング版だった(つまり左右の映像がカットされていた)。後に特典ディスク付きワイドスクリーン版LDを買い、DVDを買い、さらにBlu-rayで買い直した。製作40周年記念版からマリア:島田歌穂、トラップ大佐:布施明という布陣で歌も含めた日本語吹替音声が実現し、製作50周年記念版ではマリア:平原綾香、トラップ大佐:石丸幹二となりこちらも購入。現在はディズニープラスで配信されている(個人的にはどちらかと言えば島田歌穂の歌声の方が好きだ)。

そして大学の卒業旅行で僕はオーストリアのザルツブルクを訪れ、映画のロケ地巡りをした。ドレミの歌が歌われたミラベル宮殿・庭園(花壇がとても美しい!)から毎日、半日ツアーバスが出ており、マリアとトラップ大佐が結婚式を挙げた湖畔の教会にも行った。ツアーの日本人は僕1人だけ。ガイドさんの解説(英語)によると地元の人々は殆どこの映画を観ておらず、全く知られていないそうだ。

アカデミー賞では作品賞・監督賞など5部門受賞した名作だが、Wikipediaによるとオーストリアではザルツブルクを除いて、21世紀に入るまで本作は1度も上映されていないそう。会話が英語なのも馴染めないだろうし、現地の人にとってナチス=ドイツによる併合は忘れたい過去なのだろう。このようにドイツ語圏では否定的な評価を受けている。

アンドリュー・ロイド・ウェバーがプロデュースし、2006年ロンドンで開幕した舞台版も東京の四季劇場〔秋〕で観劇した。

 ・ 劇団四季「サウンド・オブ・ミュージック」 2010.10.18

以前、大阪桐蔭も上演したミュージカル『マイ・フェア・レディ』のブロードウェイとロンドン初演でイライザを演じたのはジュリー・アンドリュースだった。ワーナー・ブラザースがこの映画化権を獲得し、社長のジャック・L・ワーナーがジュリーにスクリーン・テストを受けさそうとした時、彼女は「スクリーン・テストですって? 私があの役を立派にやれることを知っているはずよ」と拒否した。結局、無名の新人ではなく知名度の高いオードリー・ヘップバーンに同役は決まった。オードリーはこの役はジュリーのものだと考え断ろうとしたのが、そうすればエリザベス・テーラーに役が回ると分かりサインしたのだ。

失意のジュリーは『メリー・ポピンズ』(1964)に主演。そしてアカデミー主演女優賞を獲得した。同年公開された『マイ・フェア・レディ』は作品賞・監督賞などアカデミー賞を8部門獲得するがオードリーはノミネートすらされなかった。舞台と同様ヒギンズ教授を演じ主演男優賞を得たレックス・ハリスンは授賞式の壇上で「ふたりのイライザに感謝します」とスピーチした。

オードリーは歌が下手なのでマーニ・ニクソンという女優が吹替を担当した。しかし映画にはクレジットされずマーニは「他人に口外しない」という契約書にサインしている。ただし「いまに見てらっしゃい (Just You Wait)」というナンバーの前半部はオードリーの地声で、高音に移行する途中からマーニに切り替わる。注意深く聴けばはっきりと分かる。声域が狭いオードリーのためにヘンリー・マンシーニが『ティファニーで朝食を』(1961)の主題歌「ムーン・リバー」の音域を1オクターブと1音(つまりドから高いレまでの9音)で収まるように作曲し、アカデミー歌曲賞を受賞したのは有名な話。

マーニ・ニクソンは『王様と私』(1956)のデボラ・カー、『ウエストサイド物語』(1961)のナタリー・ウッドの歌の吹替も担当しているがいずれもノンクレジットである。しかし業界で彼女のことは知れ渡っていた。『ウエストサイド物語』の監督ロバート・ワイズは彼女を『サウンド・オブ・ミュージック』の尼僧役として出演させている。どの役かは歌声を聴けば分かるから探してみてください。映画の撮影が開始されたのは1964年。マーニは主演を務めるジュリー・アンドリュースと初めて対面する時に緊張した。ジュリーはマーニを見つけるとつかつかと彼女に歩み寄り手を差し伸べてこう言った「マーニ、私はあなたのファンです」。

ミュージカル『エリザベート』の演出で有名な小池修一郎(宝塚歌劇団)はかつてジュリー・アンドリュースのファンクラブ会長を努め、彼女が来日したときインタビューしている。故に彼のオリジナル作品には時々『サウンド・オブ・ミュージック』へのオマージュが盛り込まれていたりする(たとえば『蒼いくちづけ』)。

梅田先生も仰っていたが「私のお気に入り/My Favorite Things」はジャズのスタンダード・ナンバーになっており、一番有名なアレンジはジョン・コルトレーンがソプラノ・サックスを吹いた究極の名盤。次にお勧めしたいのはトニー・ベネットがカウント・ベイシー・ビッグ・バンドをバックに歌ったもの。ジャズ・オーケストラのサウンドがゴージャスで堪らない!

僕が『オペラ座の怪人』を初めて観たのは大学生の時。劇団四季の大阪公演でファントム:山口祐一郎、クリスティーヌ:井料瑠美、ラウル:柳瀬大輔というキャストだった。劇団四季は東京公演以外基本カラオケ上演だが、それでも感銘を受けた。後に東京でオーケストラ生演奏版も体験したが楽団員の人数が少なすぎて(弦楽器の各パート1人づつ)音がペラペラ、これなら厚みがあるカラオケの方がマシだと思った。

さらにウエストエンド(ロンドン)とブロードウェイ(NY)、ラスベガスでも『オペラ座の怪人』を観た。生演奏の質は桁違いに良かったし、ハロルド・プリンス新演出によるラスベガス版は舞台で炸裂する火薬の量が多く、シャンデリアは巨大で豪華だった。なんと4つのパーツが空中で回転しながら合体するのである!

 ・ ラスベガス便りその1 《オペラ座の怪人》 2009.01.02

こちらは残念ながら2012年で幕を閉じた。

ガストン・ルルー原作『オペラ座の怪人』のミュージカル化は既成のクラシック音楽を使用したケン・ヒル版や、日本では宝塚歌劇が初演したモーリー・イェストン作詞・作曲による『ファントム』もある。

 ・ 城田優 主演/ミュージカル「ファントム」 2014.10.11 
 ・ 音楽の天使が舞い降りた!!〜ミュージカル「ファントム」 2019.12.12

面白いのはモーリー・イェストン版で怪人(エリック)は歌姫クリスティーヌに亡き母の姿を重ねており(エディプス・コンプレックス)、アンドルー・ロイド・ウェバー(ALW)版ではクリスティーヌがファントムに亡き父の姿を重ねている(エレクトラ・コンプレックス)。つまり解釈が全く異なるのだ。ALWは間違いなくクリスティーヌとファントムの関係性にサラ・ブライトマンと自分のそれを見出している。

ALWとサラ・ブライトマンの年齢差は12歳。サラは1981年『キャッツ』のジェミマ役に起用された際ウェバーに見そめられ84年に結婚、86年『オペラ座の怪人』のクリスティーヌ役に大抜擢され一躍有名になった。しかし1990年に離婚した。そして93年の『サンセット大通り』が事実上ウェバー最後の傑作であり、その後彼の才能は枯渇した。サラは彼にとって正にミューズだった。実際、Blu-rayも発売されている『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』でALWはサラを「私の音楽の天使(My Angel of Music)!」と紹介している(ここで嫌そうな表情を浮かべるサラが可笑しい)。

21世紀に入ってからのALWの作品は目を覆いたくなるほど酷いものばかり。映画『オペラ座の怪人』や、『キャッツ』でテイラー・スウィフト演じるボンバルリーナが歌う新曲もどうしようもない代物である。『キャッツ』は映画そのものも惨憺たる評判で、その年のゴールデンラズベリー(通称ラジー)賞で最低作品賞・最低監督賞(トム・フーパー)など最多6部門受賞するという不名誉を授かった。製作総指揮を担ったウェバーはこれにショックを受け、猫好きをやめて犬を飼い始めたという(参考記事はこちら)。かつて「20世紀のモーツァルト」と称賛された天才作曲家は今では見る影もなく、僕の脳内でアンドルー・ロイド・ウェバーは『サンセット大通り』作曲後、人々に惜しまれつつ急逝したことになっている。

大阪桐蔭の生徒さんたちの歌唱力は相当高く、感心することしきり。特に表題曲“The Phantom Of The Opera”でクリスティーヌは最高音hiEを出さなければならない。これを劇場で毎日歌うのは相当過酷であり、世界各国の公演で一部事前録音が使用されているのは有名な話。Bravissimo !

休憩を挟み第II部最初はベルギーの作曲家ベルト・アッペルモントの『ブリュッセル・レクイエム』。2016年3月に発生したベルギーの首都で発生した連続爆破テロ事件をテーマに、その犠牲者への想いが死者のためのミサ曲として結実した。大阪桐蔭は2023年の吹奏楽コンクールでこれを自由曲に選び、全国大会で見事金賞受賞。演奏は正確で緻密、そして伸びやかに歌い、文句なし。ただ背景の映像字幕による曲の解説があったのだが、事件の「犯人像」に全く言及していないのは片手落ちだと思う。イスラム過激派のテロ組織ISIL(イスラム国)が実行犯で、ISILは2015年パリ同時多発テロにも関与している。ISILに触れないのなら生半可な形で背景を語るべきではない。"All or Nothing"だ。

《19年の歩み》は「Mrs.GREEN APPLEメドレー」(編曲:郷間幹男)。全然聴いたことのない曲ばかりで、このバンドが昨年末に日本レコード大賞を受賞したことも今回の演奏会で初めて知った。YOASOBIの『アイドル』が優秀作品賞候補の10作に選ばれなかった時点で「茶番だ、あり得ない!所詮、所属事務所の力関係で決まってしまうんだね」と失望し、完全にレコ大に対する興味を失ったのだ。因みに調べてみるとMrs.GREEN APPLEの所属はユニバーサルミュージックでレーベルはEMI Records。大手だ。結局YOASOBIのAyaseとか米津玄師とかボカロP出身者はレコード会社(仲介業者/エージェント)を通さずインターネットから直接人気者になったわけで、業界が甘い汁を吸えないから無視する、そういうことなのだろう。大人の世界って本当に汚いよね。というわけで近いうちに大阪桐蔭が演奏する『アイドル』を是非生で聴きたい。YOASOBIとコラボした『ラブレター』も死ぬほど好きだ!

 ・ 【考察】全世界で話題沸騰!「推しの子」とYOASOBI「アイドル」、45510、「レベッカ」、「ゴドーを待ちながら」、そしてユング心理学

《野球応援・リクエストコーナー》で飛んできたボールをキャッチした聴衆が選んだのは『北酒場』『パイレーツ・オブ・カリビアン〜彼こそが海賊』(作曲:クラウス・バデルト)そしてMISIAの『アイノカタチ』。

プログラム最後は《卒業生を送る歌》『さくら』(作曲:森山直太朗)。しみじみ。

そしてアンコールは定番『銀河鉄道999』(編曲:樽屋雅徳)と『星に願いを』で〆。そこには壮大な宇宙の広がりと神秘性があった。

例年通り、充実した3時間だった。卒業生たちの未来に幸あれ!

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2024年2月28日 (水)

祝・読売演劇大賞受賞!藤田俊太郎(演出家)

第31回読売演劇大賞に演出家・藤田俊太郎が決まった。対象となった作品は『ラビット・ホール』と『ラグタイム』。詳細はこちら

また、『ラグタイム』で舞台美術を担当した松井るみが最優秀スタッフ賞を受賞した。おめでとうございます。

僕は『ラグタイム』を2023年10月5日および7日に観劇し、劇評を下記事に書いた。

 ・ 石丸幹二・安蘭けい・井上芳雄 /ミュージカル「ラグタイム」待望の日本初演!

何故アメリカ初演から日本初演まで25年掛かったのか、藤田の演出の何が凄かったのかについて詳しく述べている。ミュージカルに興味のある方はご一読ください。

また藤田が演出した他の作品のレビューは以下の通り。

 ・ 中川晃教(主演)ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」 2022.12.16
 ・ 城田優(主演)ミュージカル「NINE」 2020.12.10
 ・ ブロードウェイ・ミュージカル「ピーターパン」(+昨年の大事故について) 2017.08.15

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2024年2月14日 (水)

From Screen to Stage and back to Screen ミュージカル映画「カラーパープル」(1985年に渦巻いた壮絶なハラスメントについても語ろう)

評価:A+

1985年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『カラーパープル』は猛烈なハラスメント(いじめ/嫌がらせ)の嵐に晒された。今でこそスピルバーグは押しも押されもせぬ大監督として世間から認知されているわけだが、当時はそうでなかった。1975年に『ジョーズ』、1981年に『レイダーズ/失われたアーク《聖櫃》』、そして82年に『E.T.』を撮り爆発的なヒットを連発、同業者から激しい嫉妬を買い「あいつは娯楽映画ばかり撮っている金の亡者」的に見られていた。つまり頑なにスピルバーグ映画の芸術性は認めないぞという雰囲気がハリウッドでは支配的だったのである。例えるならAKB48や坂道シリーズ(乃木坂・欅坂→櫻坂・日向坂)でボロ儲けした秋元康が「秋豚」と蔑称され、作詞家としての彼の才能が軽んじられている日本の現状に似ているだろう。

 ・ 秋元康プロデュース・欅坂46「サイレントマジョリティー」を讃えて(あるいは、アメリカの闇)
 ・ 【増補改訂版】「君の名は希望」〜作詞家・秋元康を再評価する

『E.T.』は米アカデミー賞で作品賞・監督賞にノミネートされたが、受賞したのはリチャード・アッテンボロー監督の『ガンジー』だった。

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スピルバーグはどうしてもオスカーが欲しかった。そこでアリス・ウォーカーの小説に目をつけた。しかしメイン・キャストがほぼ黒人で、白人が殆どで出てこない『カラーパープル』を白人が監督することに批判が集まった。結局アカデミー賞では作品賞を含む10部門11ノミネート(助演女優賞が重複)されたにもかかわらず、なんとスピルバーグは監督賞候補に入らなかった。そして蓋を開けてみると受賞ゼロ、全滅だった。正に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」だ。そんな風に当時のハリウッドは悪意に満ち溢れていた。結局、作品賞・監督賞を制覇したのはシドニー・ポラックの『愛と哀しみの果て』。凡庸な駄作である。

僕は『未知との遭遇 特別編』(1980)以降、スピルバーグの全映画を公開時に映画館で観ており『カラーパープル』も例外ではない。大いに気に入り、後にレーザーディスク(LD)も購入した。

ここで日本の雑誌「キネマ旬報」1986年度 外国語映画ベストテンを見てみよう。第3位が『蜘蛛女のキス』(アカデミー作品賞・監督賞ノミネート)、第6位が『カラーパープル』、そして『愛と哀しみの果て』が12位。この評価からも分かる通り、アカデミー史上最悪のミスジャッジであった。余談だがミスジャッジで思い出すのが1998年に公開された『恋におちたシェイクスピア』でグウィネス・パルトロウが主演女優賞を受賞した「とんでも事件」。この年は『エリザベス』のケイト・ブランシェットや『セントラル・ステーション』のフェルナンダ・モンテネグロが候補だったわけで、グウィネスというのはどう考えてもあり得ない選択だった。その後"MeeToo"運動を経て、『恋におちたシェイクスピア』のプロデューサーだったハーベイ・ワインスタインが告発され逮捕(禁固刑は合計39年を言い渡された)。グウィネスが証言するかどうかが焦点となり、遂に彼女が受賞したからくりが判明したというわけ。閑話休題。

 ・ 映画「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」 2023.02.07

漸くスピルバーグ映画がアカデミー作品賞・監督賞を受賞するのは『シンドラーのリスト』(1993)である。これはホロコーストを描いた作品であり、ハリウッドの重役にユダヤ人が多いことは周知の事実(ワインスタイン兄弟もユダヤ人)。有無を言わせぬ鉄板ネタであった。

『カラーパープル』はウーピー・ゴールドバーグの映画デビュー作で、僕はこれでアカデミー主演女優賞を受賞すべきだったと今でも思っている。結局彼女は『ゴースト/ニューヨークの幻』の胡散臭い女霊媒師役で助演女優賞を受賞するのだが、まぁこれは「あの時あげられなくてゴメンね。これで堪忍して」といった残念賞的意味合いが強かった。因みにウーピーはTV界のEmmy(エミー賞)、音楽界のGrammy(グラミー賞)、映画界のOscar(アカデミー賞)、そして舞台のTony(トニー賞)というエンターテイメントの最高峰に位置する栄冠を4つとも受賞したEGOTであり、現時点でEGOTを達成したのはオードリー・ヘップバーン、リチャード・ロジャース、メル・ブルックス、アンドリュー・ロイド・ウェバー、ジェニファー・ハドソン、ジョン・レジェンド、エルトン・ジョンら19人しかいない。

『カラーパープル』は2005年にブロードウェイでミュージカル化され、その10年後にシンシア・エリヴォ、ジェニファー・ハドソン主演で再演。第70回トニー賞ではミュージカル・リバイバル作品賞とミュージカル主演女優賞(シンシア・エリヴォ)の2冠に輝いた(『ハミルトン』が11部門攫った年だ)。シンシア・エリヴォは2019年に映画『ハリエット』に出演しアカデミー主演女優賞にノミネートされ、主題歌も歌った。現在はミュージカル映画『ウィキッド』を撮影中(エルファバ役)。

今回の映画はこのブロードウェイ版に基づいている。製作にスティーヴン・スピルバーグ、クインシー・ジョーンズ(前作で音楽を担当)、オプラ・ウィンフリー(前作でソフィアを演じアカデミー助演女優賞候補に)らが名を連ね、製作総指揮には原作者アリス・ウォーカーの名前も。監督はブリッツ・バザウーレ、ガーナ出身だそう。上映時間141分で、なんと85年版の154分より短い!

製作陣にウーピーの名前がないから彼女は本作に思い入れがないのかな?残念だなと思っていたら、本編を観るとカメオ出演していたのでむっちゃ嬉しかった。

率直な感想。スピルバーグ版よりもミュージカル版の方が良かった。上映時間が短いことからも分かる通り展開が早いし、何よりミュージカル・シーンが素晴らしい。歌も、踊りも。ゴスペル(アフリカ系アメリカ人によって生み出された教会音楽)とかブルースが、黒人たちの辛い労働・日常生活から生まれた「叫び」であることがとても良く理解出来る仕組みになっている。本作にとってミュージカルという形式が最も相応しかった、と言えるだろう。

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2024年2月 8日 (木)

三浦宏規(主演)フレンチロックミュージカル「赤と黒」(+フランスのミュージカル史について)

1月6日(土)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティへ。スタンダール原作のミュージカル『と黒』を観劇。

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作曲はウィリアム・ルソー&ソレル、演出はジェイミー・アーミテージ。2016年にパリで初演された。ウィリアム・ルソーは『1789 〜バスティーユの恋人たち〜 』にも楽曲を提供している(こちらのメイン作曲家はドーヴ・アチア)。

近年フランスでミュージカルは盛んに制作されており、代表的なものとして『壁抜け男』(1997)、『ノートルダム・ド・パリ』(1998)、『ロミオ&ジュリエット』(2001) 、『太陽王』 (2005)、『ロックオペラ モーツァルト』 (2009)、『1789 〜バスティーユの恋人たち〜』(2012)などが挙げられる。大ヒット・ミュージカル『レ・ミゼラブル』も元々は1980年パリ初演で、英語版がロンドンで上演されたのは1985年だ。

更に源流を辿れば、ミシェル・ルグランとジャック・ドゥミ監督のコンビによるミュージカル映画『シェルブールの雨傘』(1964)、『ロシュフォールの恋人たち』(1967)、『ロバと女王』(1970)にたどり着く。ミシェル・ルグランの音楽は基本的にジャズのスタイルだが、21世紀に入ってからのフレンチ・ミュージカルの主流はロックンロールである。

ちなみにアメリカやイギリスでロック・オペラが流行ったのは1960年代後半から70年代前半にかけて。『ヘアー』(1967)、『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1971)、『トミー』(1975)がその代表格。一方、今ブロードウェイで一番ホットなのは天才リン=マニュエル・ミランダ(『イン・ザ・ハイツ』『ハミルトン』)の出現によりヒップホップ系かな。ただ日本人にとってこのジャンルは最先端過ぎて全くついて行けてないので(『ハミルトン』の上演すら実現していない)、フレンチ・ミュージカルあたりがちょうどいい塩梅なのだろう。日本語ラップが(少なくともミュージカル界で)定着するのに、まだ20年位はかかりそう。

出演は三浦宏規、夢咲ねね、田村芽実、東山義久、駒田一ほか。三浦は『テニスの王子様』『刀剣乱舞』など2.5次元ミュージカル出身で、イケメンで歌も上手かった。夢咲ねねは宝塚の娘役時代から大好きな女優で、美人だし文句なし!シンプルな装置で舞台転換が早く、演出も良かった。

本作は宝塚星組が礼真琴主演で先駆けて上演したのだが、宝塚版より今回の方に軍配を上げる。ちなみに宝塚歌劇には柴田侑宏が台本を執筆した別バージョンの『と黒』があり1975年に初演されている。菊田一夫版(1957年初演)もあるらしい。知らんけど。

今回鑑賞しながら「と黒」とは何を象徴しているのか?と色々考えを巡らせた。〈情熱愛欲↔信仰・禁欲〉でもあるだろうし、〈血の革命革新(radical) ↔権力・保守(conservative) 〉でもあるだろう。第一幕はブルジョワ・中産階級篇で、第二幕は貴族階級篇という構成になっているのが面白い。しかし、貧しい平民出身の野心家ジュリアン・ソレルはどちらの階級にも受け入れられず、弾き飛ばされてしまう。実に重層的で奥深い作品だ。

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