舞台・ミュージカル

新演出!東宝ミュージカル「マリー・アントワネット」ダブルキャスト観劇記

梅田芸術劇場でミュージカル「マリー・アントワネット」を2度、観劇。

1月9日(水)ソワレのキャスト、

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14日(月・祝日)ソワレのキャストは、

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僕は東宝が製作したこのミュージカルの初演を2007年に梅芸で観ている。原作は遠藤周作の小説「王妃 マリー・アントワネット」で、演出は栗山民也。作詞・作曲は「エリザベート」「モーツァルト!」「レベッカ」のクンツェ&リーヴァイ。その時の配役は、

  • マリー・アントワネット:涼風真世
  • マルグリット・アルノー:新妻聖子/笹本玲奈(ダブルキャスト)
  • アニエス・デュシャン:土居裕子
  • フェルセン伯爵:井上芳雄
  • ルイ16世:石川禅
  • オルレアン公:高嶋政宏
  • カリオストロ:山口祐一郎

新妻と笹本両方の出演回に足を運んだ。栗山民也はその後、ドイツ・ブレーメン(09年)公演でも演出家として招聘された。また本作は韓国(14年)やハンガリー(16年)でも上演された。

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今回はロバート・ヨハンソンによる新演出版となり、台本も大幅に改訂された。カリオストロという役も消滅した。どうやらロバート・ヨハンソンは韓国で活躍している人らしく、韓国バージョンを逆輸入したというのが真相らしい。

  • ローズ・ベルタン:彩吹真央
  • ジャック・エベール:坂元健児
  • オルレアン公:吉原光夫
  • ランバル公爵夫人:彩乃かなみ

〈遠い稲妻〉〈孤独のドレス〉〈私たちは泣かない〉等、新曲がふんだんに追加され、第1幕冒頭フェルセンのソロ〈マリー・アントワネット〉や、第2幕フィナーレで全員が歌う〈どうすれば世界は〉も初演版にはなかった。

旧演出版はギロチンで次々と人の首がはねられるし、民衆は理性を欠いた単なる暴徒だし、「なんて血なまぐさいミュージカルなんだ!」と思った。容赦のない異色作。ただ僕はそれを面白がったが、当然後味は悪く、繰り返し観ようという気にはなれなかった。

ところが新演出版はガラリと雰囲気が変わり、王妃とフェルセンの悲恋にフォーカスが当てられてロマンティックな作品になった。宝塚歌劇「ベルサイユのばら ーフェルゼンとマリー・アントワネット編ー」に接近した、と言えば分かり易いかも知れない。

というわけで、とっても見やすい、王道を征くミュージカルに生まれ変わった。但し、復讐の連鎖で成立する世界を憂う終曲〈どうすれば世界は〉の内容が、木村信司作による宝塚歌劇「王家に捧ぐ歌」に類似している点は些か気になった。

元々、本作のタイトルは「MA」だった。

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MAはマリー・アントワネット( Marie Antoinette )のイニシャルであると同時に、 掃き溜め生まれのマルグリット・アルノー( Marguerite Arno )も意味している。つまり〈ふたりでひとり〉、一人の女性の分身光と影を描いていると解釈出来る。言い換えるならばドッペルゲンガー二重身)であり、ミュージカル「モーツァルト!」に於けるヴォルフガングとアマデの関係にそっくりである。同じ遺伝子を持つ人間でも、環境により全く違った性格に育つというわけだ。

僕は花總まり演じるマリー・アントワネットを都合3回観ている。

  • 「ベルサイユのばら2001」@宝塚大劇場、2001年
  • 「1789 -バスティーユの恋人たち-」@梅芸、2016年
  • 「マリー・アントワネット」@梅芸、2019年

マリーの没年が37歳であり、花ちゃんは現在45歳。流石に最初は「この役には年を取りすぎでは?」と感じたが、追い詰められてゆく物語の後半に進むに従いどんどん良くなっていくので驚嘆した。「ベルばら」時代より演技に深みを増し、断然素晴らしい!〈女であること〉ゆえの哀しみ。気品があり、「やっぱりコスチューム・プレイで彼女の右に出るものはいないなぁ」と改めて確信した。笹本玲奈は歌が上手いし特に欠点はないのだけれど(若さという利点もある)、やっぱり庶民のマルグリット・アルノーの方が似合っていた。

今回のマルグリットについては目力(めぢから)があってパワフルなソニンに軍配を上げる。昆夏美も決して悪くないんだ。しかし、花總まり✕ソニンのコンビの方が強烈過ぎた。圧巻だった。

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大竹しのぶ「ピアフ」

12月16日(日)ピロティホールへ。

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大竹しのぶが主演する「ピアフ」を観劇。演出は栗山民也。〈ミュージカル〉と銘打ってはいないが、大竹がガンガン歌いまくるので〈セミ・ミュージカル〉と言えるだろう。

以前大竹はNHK紅白歌合戦でもピアフの持ち歌を披露しており、自家薬籠中の物としている。まさに入魂の演技で、凄みを感じる。ピアフと大竹が渾然一体となっており、最早その境目が分からない。故・杉村春子にとっての、「欲望という名の電車」のブランチのような関係である。そういえば大竹もブランチを演じた。

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ミュージカル「レベッカ」

12月23日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティへ。

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「エリザベート」「モーツァルト!」を生んだ作詞・作曲のコンビ、クンツェ&リーヴァイが手掛けたミュージカル「レベッカ」を観劇。8年前のレビューは下記。

前回観たキャストは「わたし」:大塚千弘、マキシム:山口祐一郎、ダンヴァース婦人:シルビア・グラブ。今回はマキシムが変わらず、「わたし」:平野綾、ダンヴァース婦人:涼風真世。ほか出演は森公美子、石川禅、吉野圭吾ら。演出は山田和也。

チケットを入手するのに相当苦労した。「わたし」はトリプル・キャストで、大塚と平野の回は先行抽選に申し込んでも落選ばかり。乃木坂46・桜井玲香の回だけ全日、余裕で余っているという状況。僕は桜井が大嫌いなので、絶対に嫌だった。で、5,6回目の挑戦で漸く平野が当たったという次第。歌唱力がある人なので文句なし!彼女は京アニ「涼宮ハルヒの憂鬱」のタイトルロールで一世を風靡したわけだが、ミュージカル「レディ・ベス」のエリザベス一世、「モーツァルト!」のコンスタンツェ、そして「ブロードウェイと銃弾」のアニメ声の愛人と、それぞれの役で全く声質を変えて演じているのが凄い。100の声を持つ女優である。

ダフネ・デュ・モーリア原作による「レベッカ」といえばアルフレッド・ヒッチコック監督の映画が余りにも有名だが、2019年にはリリー・ジェイムズ、アーミー・ハマー主演でリメイクされることが決まっている。Netflixから配信される予定(詳細はこちら)。

つまり「ロミオとジュリエット」とか4度映画化された「スター誕生」同様に、最早古典的名作であり、その主題はいつの時代にも通用する普遍性があるということだ。

〈その死後も影響力を発揮し、死者が生者を支配する〉というのが「レベッカ」の基本構造である。これは世間一般でも見られる現象で、例えば朝比奈隆(指揮者)亡き後の大阪フィルハーモニー交響楽団は未だに朝比奈の亡霊に囚われているとしばしば感じる。後任の音楽監督(大植英次、尾高忠明)が、あまり得意じゃないのにベートーヴェン・チクルスを(無言の圧力で)させられたり、就任記念演奏会にブルックナーのシンフォニーを取り上げたり。また上方落語に目を向けると、故・桂枝雀の芸の支配下にある噺家は(枝雀一門であるかどうかに関わらず)少なくない。

落語は伝承芸能(口伝)なので、弟子の背後に師匠の影が見えることはしばしばある。しかし枝雀自身は米朝師匠の枠を打ち破り、軽やかに全く新しいものを打ち立てた。死者の影から逃れて、どうやって自分の足で立ち上がるか。それが「レベッカ」の主眼である。

やっぱりクンツェ&リーヴァイの音楽はいいね!

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米アカデミー外国語映画賞&監督賞最有力!「ROMA/ローマ」とフェデリコ・フェリーニ

アルフォンソ・キュアロンが監督したメキシコ映画「ROMA/ローマ」はヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、米アカデミー賞でも外国語映画賞及び監督賞受賞をほぼ確実にしている(既にゴールデングローブ賞を同部門で受賞)。焦点は最早、外国語映画として史上初の作品賞(大トリ)を勝ち取るのか!?に移っている。因みに過去、フランス映画「アーティスト」(2011)が作品賞を受賞しているが、ダイアログは英語だった。日本では12月にNetflixから配信されており、本作がアカデミー作品賞や監督賞、外国語映画賞を受賞すれば、配信作品として史上初の快挙となる。

スティーヴン・スピルバーグ監督は動画配信サービスが手掛けた映画に対して、「私は(映画賞の選考対象になるために)数か所の劇場で1週間上映されたくらいの作品を、アカデミー賞候補の選考対象にするべきではないと思っている」「実際にはテレビのフォーマットで製作したならば、それはテレビ映画だと思う」と述べているが、最早時代の流れを押し止めることは出来ないだろう。スピルバーグのように、自由に映画が撮れるような潤沢な資金を持つフィルムメーカーなど稀有の存在なのである。

評価:AA  公式サイトはこちら

Roma

視聴したのは我が家の55型 4Kスマートテレビである。白黒映画。撮影には6Kの65mmデジタル・シネマカメラ ARRI ALEXA 65(詳しくはこちら)が使用された。つまりフィルム撮影ではないので、映画館で観るメリットは皆無である

ROMAというタイトルだがイタリアが舞台ではない。メキシコシティのコロニア・ローマ地区を指す。

キュアロンはここで中流階級の白人家庭に生まれた。本作は彼の幼少期を、住み込みで働く先住民のお手伝いさんクレオを主人公として描いている。映画の最後に「リボへ」という献辞が登場するが、キュアロンの乳母のこと。1970年末から71年にかけての物語である。当時彼は9歳だった。

本作を一言で評すなら、キュアロン版「フェリーニのアマルコルド」。これに尽きるだろう。

Amarcord

「アマルコルド」もアカデミー外国語映画賞を受賞したが、フェデリコ・フェリーニ監督の故郷である北部イタリアのリミニ地方の、今はもう死語になっている言葉"a m'arcord "(私は覚えている)が語源である。「ROMA/ローマ」は幼少期の想い出を描く「アマルコルド」を基調としつつ、やはりフェリーニの自伝的映画「青春群像」の要素も散りばめられている。また身勝手な男を優しく許してしまうヒロイン・クレオのイメージは、間違いなくジュリエッタ・マシーナがフェリーニの「道」で演じたジェルソミーナや、「カビリアの夜」の娼婦カビリアに繋がっている。

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つまり【クレオ ≒ ジェルソミーナ/カビリア ≒ マグダラのマリア(新約聖書に登場する罪深い女)】という等式が成立する。

1971年を迎えた新年パーティの場面で、ターンテーブルのレコードから流れるのはアンドリュー・ロイド・ウェバーが作曲したロック・オペラ「ジーザス・クライスト・スーパースター」である。じつはこれ、1970年にまず先行で2枚組LPレコードが発売され、ブロードウェイで初演されたのは71年なのだ。で、かかっている曲は"I Don't Know How To Love Him"(私はイエスがわからない)で、マグダラのマリアが歌うナンバーなのである!ね、一目瞭然でしょ?

こうして考察していくと、なぜタイトルが(紛らわしい)ROMAなのか、得心が行くだろう。「道」「アマルコルド」など、フェリーニ映画の多くはローマのチネチッタ撮影所で生み出されており、そのものズバリ"ROMA"(フェリーニのローマ)という作品もある。つまり本作は和歌で言うところの〈本歌取り〉なのである。

Roma

またキュアロンの「ROMA/ローマ」では大型車〈フォードのギャラクシー〉が父親の威圧的存在感を象徴するのだが、最初にこの車が登場した時に父親がカーステレオで聴いているのがベルリオーズ:幻想交響曲の第2楽章(演奏はコリン・デイヴィス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)。このシンフォニーは〈幻の女〉に囚われたひとりの男の狂気を扱っているのだが、それがしっかり映画の内容にリンクしている。

アメリカ映画「宇宙からの脱出」を家族で劇場に観に行く場面がある。これでピンときたのが、「うゎ!『ゼロ・グラビティ』(アカデミー監督賞受賞)の原点はこの体験にあったんだ」ということ。

キュアロンと言えば撮影監督エマニュエル・ルベツキ(「ゼロ・グラビティ」「バードマン」「レヴェナント」で3年連続アカデミー撮影賞受賞)とのコンビが有名である。しかし今回ルベツキは参加出来ず、キュアロン自らがカメラを回した。で「トゥモロー・ワールド」同様に、ここぞという時の長回しが効いている。まず映画冒頭の俯瞰ショットはジャック・ドゥミ監督「シェルブールの雨傘」(1964)以来と言っていいくらいの鮮烈な印象を受けた。またクライマックス、海辺での移動撮影(ドリーショット)が「どうやって撮ったの!?」というくらい凄い。

本作には女性に対する敬意・感謝と、メキシコ先住民に対する贖罪の気持ちがいっぱい詰まっている。掛け値なしの傑作である。

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U.S.A.〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 サンタコンサート2018

12月21日(金)大阪ビジネスパーク TWIN21アトリウムへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のサンタコンサートを第2部より聴く。指揮は梅田隆司先生。

今年の桐蔭吹部の躍進は凄まじかった。やはりその切掛を作ったのは甲子園における野球部の快進撃と、その応援であることは間違いない。

10月27日(土)、日本テレビ「嵐にしやがれ」で吹奏楽部が取り上げられ、櫻井翔が大阪桐蔭高校に来校した。

11月に公開された映画「ボヘミアン・ラプソディ」では20世紀フォックスの公式MVで桐蔭が演奏した。

11月15日(木)は読売テレビ「ベストヒット歌謡祭 2018」でDA PUMPとコラボ、大阪城ホールで「U.S.A.」を演奏。12月11日にはNHK「わが心の大阪メロディー」に出演し、再びDA PUMPと「U.S.A.」を共演した(@NHK大阪ホール)。

またDREAMS COME TRUEがNHK朝ドラ「まんぷく」で歌った〈あなたとトゥラッタッタ♪〉のシングルでも桐蔭が演奏している(こちら)。

さて、サンタコンサートはマーチングから始まった。

  • ヴェルディ:歌劇「アイーダ」凱旋行進曲
  • ジョン・ウィリアムズ:映画「スター・ウォーズ」
  • ミシェル・ルグラン:映画「ロシュフォールの恋人たち」より
    〈キャラバンの到着〉

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桐蔭の〈キャラバンの到着〉はパンチが効いていて、何度聴いても感動する。紛うことなきルグランの最高傑作。

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最早〈銀河鉄道999〉と並び、彼らの十八番(おはこ)と呼んでも過言ではないだろう。

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次に、

  • アラン・メンケン:映画「美女と野獣」
  • 甲子園リクエストコーナー:あんたの花道(天童よしみ)

「美女と野獣」で梅田先生は手にバラを持って指揮された。

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ここでリクエストコーナー。大阪桐蔭野球部の生徒が登場し、バットで打ったボールを掴んだ観客が曲目リストの中から選ぶ仕組み。

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まず選ばれたのは、

  • クロード=ミシェル・シェーンベルク:ミュージカル「レ・ミゼラブル」
続いて、
  • サンタが街にやってくる In Swing
  • エルトン・ジョン、ハンス・ジマー:映画「ライオンキング」(リクエスト)
  • タケカワ・ユキヒデ(樽屋雅徳 編):銀河鉄道999

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ここで第2部終了。休憩をはさみ第3部へ。

  • ウィンター・ワンダーランド In Swing

ノリノリで最高!

梅田先生が嵐の「翔ちゃん」が桐蔭にやって来た時のエピソードを語った後に、

  • 嵐メドレー
  • Linked Horizon:アニメ「進撃の巨人」から〈紅蓮の弓矢〉
  • シャーマン兄弟:メリー・ポピンズ(リクエスト)
  • ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー(リクエスト)

「メリー・ポピンズ」は久しぶりということだったが、僕は昨年のサンタコンサートのリハーサルでちょっと聴いただけで、本番での演奏は初体験。すっごく良かった。

「ラプソディ・イン・ブルー」は冒頭のクラリネット・ソロが滅茶苦茶上手い!プロ顔負け。Jazzyでgroovy。うねりがあって雰囲気抜群だった。

  • 葉加瀬太郎:情熱大陸

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そしてDA PUMPの「U.S.A.」登場!

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男子6人が踊った。

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最後は定番/鉄板のアンコール、

  • 銀河鉄道999
  • ディズニー映画「ピノキオ」から〈星に願いを〉

で〆。

余談だがスティーヴン・スピルバーグ監督が今まで撮った映画の中で、彼自身が脚本を書いた作品が2つだけある。「未知との遭遇」と「A.I.」である。そして面白いことに、どちらもピノキオが登場する(「未知との遭遇」には〈星に願いを〉の旋律も流れる)。手塚治虫「鉄腕アトム」もピノキオをベースにしており、「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー作品賞・監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督は次回作として「ピノキオ」を準備中だ(Netflixで配信予定)。またピノキオは旧約聖書のヨナ記と深い関係がある。

今回ちょっと残念だったのはクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」が聴けなかったこと。でも多分、来年2月17日の定期演奏会で演奏してくださいますよね、梅田先生?

ところで桐蔭には是非、BSテレ東の番組「エンター・ザ・ミュージック」(HPはこちら)に出演してもらいたいなぁ、と以前から考えている。関西フィルの正指揮者・藤岡幸夫さんが司会を務め、世界的なサクソフォン奏者・須川展也さんと藤岡さんが全国各地の吹奏楽団を訪問する企画があるんだ。既に千葉県の市柏とか福岡県の精華女子が出演している。藤岡さんは熱血漢で面白い人だし、須川さんと共演出来たらバンドにとって大きな財産になると思うんだよね。

また来年聴きたい曲のリクエストとして、2月1日(金)に公開されるディズニー映画「メリー・ポピンズ・リターンズ」と、7月19日(金)に公開される新海誠監督「天気の子」(公式サイトはこちら)の主題歌(今回組むバンドは未発表)を挙げておく。

「メリー・ポピンズ」の作曲はシャーマン兄弟だが、「リターンズ」で作詞・作曲したのはスコット・ウィットマンとマーク・シェイマン(ふたりは公私共にパートナーである)。このコンビによるブロードウェイ・ミュージカル「ヘアスプレー」はトニー賞を受賞した。他にミュージカル「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」や「チャーリーとチョコレート工場」がある。

僕が最初にマーク・シェイマンの才能に刮目したのはメグ・ライアン、ビリー・クリスタル主演の映画「恋人たちの予感」(1989)。卓越したジャズ・アレンジが実に心地よかった。で、皆さんに是非観て頂きたいのが「サウスパーク/無修正映画版」(1999)!全編ミュージカル仕立てで、アカデミー歌曲賞にノミネートされた"Blame Canada"(すべてカナダのせいにしろ!)は笑える。特に最高なのは「レ・ミゼラブル」のパロディ"La Resistance"。抱腹絶倒間違いなし。トレイ・パーカー監督のミュージカル愛が溢れ出す。因みにトレイ・パーカーは後にブロードウェイに進出し、ミュージカル「ブック・オブ・モルモン」(2011年初演)でトニー賞9部門を独占した。

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風間杜夫 主演「セールスマンの死」@兵庫芸文

12月8日(土)兵庫県立芸術文化センターへ。アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」を初観劇。

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演出は長塚圭史、出演は風間杜夫、片平なぎさ、山内圭哉、菅原永二、村田雄浩ほか。

「セールスマンの死」は1949年にニューヨークで初演され、ピューリッツァー賞を受賞した。演出はエリア・カザン(映画監督として「波止場」「エデンの東」「草原の輝き」がある)、主演はリー・J・コップ(映画「波止場」「十二人の怒れる男」「エクソシスト」)。

余談だがアーサー・ミラーはマリリン・モンローと結婚したが61年に離婚した。

僕は20世紀を代表する演劇作品として、絶対次の3本だけは観ておかなければいけないとず〜っと考えていた。テネシー・ウィリアムズ「欲望という名の電車」(ピューリッツァー賞受賞)と、サミュエル・ベケット「ゴドーを待ちながら」(ノーベル文学賞受賞)、そして「セールスマンの死」である。前2者は既に鑑賞済みだったので、漸く満願成就、想いを果たせた。

なおエリア・カザンは「欲望という名の電車」初演の演出も手がけ、彼が監督を務めた映画版はアカデミー主演女優賞(ヴィヴィアン・リー)・助演男優賞・助演女優賞・美術賞を受賞した。凄腕だ。

しかしラズロ・ベネディク監督、フレデリック・マーチ主演の映画「セールスマンの死」(1951)の評判は芳しくなく、むしろフォルカー・シュレンドルフ監督、ダスティン・ホフマン主演のテレビ映画(1985)の方が高い評価を得ている(何と!主人公の息子をジョン・マルコヴィッチが演じている)。

長塚圭史は大林映画「花筐/HANAGATAMI」で役者として知っていたが、彼が手がける舞台作品はお初。手堅い演出でズシリと心に響いた。次回は是非、マーティン・マクドナーの戯曲を観たい!

風間杜夫はさすがの上手さで、その名演に舌を巻いた。多分現時点でこの役を演れる役者は日本に他にいないのでは?

主人公のウィリー・ローマン(63歳)は今で言う〈認知症〉と推定される。彼が見る幻想(回想)に登場する兄ベンは山師であり、アラスカで金鉱を掘り当て大儲けした。つまりベンは冒険心溢れる人であり、堅実なセールスマンを選択したウィリーの〈なれなかった(大胆な)自分〉を表象している。また隣人チャーリーとその息子バーナードもまた、成功したビジネスマン&敏腕弁護士( Winner)であり、ウィリーとその息子たち(Loser)とは好対照をなす。やはり〈なれなかった(理想の)自分たち〉を表象しているのである。この二項対立の設定が秀逸だなと甚く感心した。チャーリーの具体的職業は劇中で明らかにされない。だから彼は実在の人物なのか、それともウィリーの脳内の住人なのか、はっきりしないところも憎いねぇ。

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望海風斗 主演/宝塚雪組「ファントム」

12月11日(火)宝塚大劇場へ。モーリー・イェストン(作詞・作曲)ミュージカル「ファントム」を観劇。

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主なキャストはファントム:望海風斗(のぞみふうと)、クリスティーヌ:真彩希帆(まあやきほ)、キャリエール:彩風咲奈 (あやかぜさきな)、シャンドン伯爵(役替り):朝美絢(あさみじゅん)ほか。    

今回は2004年宙組、06年花組、11年花組に続く宝塚での4度目の上演であり、望海風斗は3回目の出演になるという。そして僕は全バージョンを観ている。                 

演出も初演時から色々様変わりしている。まず新曲が入っている。"What will I do"は元々、韓国版のため用意された楽曲だったらしい。そしてスクリーンに映し出される映像が増えた。

宙組初演時にはエリックが"My Mother Bore Me"(私を生んだ母)をひとりで歌う場面で、背景に赤ちゃんを抱く母親のどデカい絵が登場し、僕は思わず「ダサっ……」と嘆息した。「やっぱり中村一徳(演出家)は小池修一郎と比べるとセンスがない」と悲観に暮れたものだ。しかし時の洗礼を受けその少女漫画風の安っぽいイラストもなくなり、随分と洗練された印象を受けた。

望海風斗の歌はなかなか聴かせるが、ダンスが下手。容姿は地味だなと想った。真彩希帆は可憐なルックで魅了された。透明感ある歌声も素晴らしい!オールタイム・ベスト「クリスティーヌ」認定。彩風咲奈もしっかり/しっとりと歌を聴かせ、初演でキャリエールを演じた樹里咲穂に肉薄した。

総じて見応えあるプロダクションだった。

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贋作・桜の森の満開の下

10月19日(金)新歌舞伎座@大阪市で野田秀樹(作・演出)「贋作・桜の森の満開の下」を観劇した。

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妻夫木聡・深津絵里・天海祐希・古田新太・藤井隆・門脇麦・野田秀樹といった超豪華出演陣で、チケット券面には「公演当日、本人確認をする場合がありますので、身分証明書を持参してください」と記載されていたのだが、結局実施はされなかった。

天海は大海人皇子(後の天武天皇)を演じ、男役なのでビッタリ!因みに宝塚歌劇には大海人皇子と中大兄皇子(後の天智天皇)の確執を描く「あかねさす紫の花」(作・演出:柴田侑宏)という名作がある(現役時代に天海はこれに出演していない)。

国造りと”鬼”のはなしである。桜吹雪が舞い、日本的様式美が堪能出来る。本作は歌舞伎化されているが、能舞台を彷彿とさせるところもある。

深津絵里演じる夜長姫が最後に煙のように消え去る演出はまるでハロルド・プリンス演出のミュージカル「オペラ座の怪人」みたいだった。帰宅後調べてみると「贋作・桜の森の満開の下」が劇団「夢の遊民社」で初演されたのは1989年2月。「オペラ座の怪人」ロンドン初演が1986年、日本初演が88年4月なので、野田がインスパイアされたのは間違いない。

尚この公演は2019年3月にWOWOWで放送される予定である。

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バッティストーニ指揮/血湧き肉躍るヴェルディ「アイーダ」

10月24日(水)兵庫県立芸術文化センターへ。

  • ヴェルティ:オペラ「アイーダ」

を観劇。

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国内4つの劇場で上演する共同制作公演で、

アンドレア・バッティストーニ/東京フィルハーモニー交響楽団、兵庫芸術文化センター管弦楽団(バンダ)、二期会合唱団、ひょうごプロデュースオペラ合唱団らによる演奏。バレエは東京シティ・バレエ団。

独唱はモニカ・ザネッティン(アイーダ)、福井敬(ラダメス)、清水華澄(アムネリス)、上江隼人(アモナズロ)、妻屋秀和(ランフィス)、ジョン ハオ(エジプト国王)ほか。演出はジュリオ・チャバッティで大道具・衣装・小道具はローマ歌劇場が製作した。

バッティストーニはイタリア・ヴェローナ生まれの31歳。故郷にあるローマ帝国時代の闘技場(アレーナ)が会場となる野外オペラ祭でも看板演目「アイーダ」を振っている。また現在、ジェノヴァ・カルロ・フェリーチェ歌劇場の首席客演指揮者を務めている。

僕の席は最前列ど真ん中。1.5m先にバッティストーニの頭が見える状態。彼は全て暗譜で振ったので度肝を抜かれた!切ればが吹き出すような熱血指揮ぶりを眺めていると、「若き日のリッカルド・ムーティはこんな感じだったんじゃないか?」と思った。時折、唸り声を発し、〈勝ちて帰れ(Ritorna vincitor) !〉では一緒に歌っていた。

バッティストーニの棒振りスタイルは、フェラーリ、ランボルギーニ、アルファ ロメオなどイタリアのスポーツカーを想起させる。熱き血潮が滾る第2幕フィナーレではアクセルをグイグイ踏む込み、ガンガン加速して、聴衆を興奮の坩堝に叩き込んだ

かと言ってただオケを鳴らすだけではなく、しっかりと弱音の美しさも際立たせ、強弱がくっきりとしたメリハリある音楽づくりが成し遂げられていた。

舞台上だけではなく、オーケストラ・ピット(オケピ)の中で巻き起こるドラマにも目が離せない!こんな体験は、カルロス・クライバーが指揮するヴェルディの「オテロ」や、R.シュトラウスの「ばらの騎士」に近いものがあるのではないだろうか?因みに僕は中学生の時に、カルロスが指揮するミラノ・スカラ座の「ラ・ボエーム」(フランコ・ゼフィレッリ演出)を旧フェスティバルホール@大阪市で観劇している。

モニカ・ザネッティンの体型は細く、美しい人で、声量もあって文句なし。情感あふれる歌いっぷりだった。

福井は時折声が掠れるのが気になったが、及第点。掘り出し物だったのが上江のアモナズロ。美声で迫力があった。アムネリスはX。普段、ジュリエッタ・シミオナート(カラヤン盤)とかエレナ・オブラスツォワ(アバド版)などの名唱を聴き慣れていると、いかんせん物足りない。

美術や衣装はミラノ・スカラ座や新国立劇場で上演されたフランコ・ゼフィレッリ版みたいな絢爛豪華でド派手なものではないが、シックで品があり、まるでルキノ・ヴィスコンティ監督の映画を観ているようであった(因みにゼフィレッリは若い頃、ヴィスコンティの助監督を務めた)。

兎に角、これだけの充実したパフォーマンスを、たった1,2000円で観られるなんて、なんて幸せなことだろう。今回の公演に携わった諸氏に心から感謝したい。

ところで、イタリア・オペラでテノールが演じる役には、ある共通する特徴がある。

  1. 直情径行型:何も考えず直ちに行動する。すぐ激昂する。
  2. コロッと騙されやすい:つまり、おつむが少々足りない。
  3. 嫉妬深い:単純な誤解から女を殺したり、暴力を振るう。

ヴェルディなら、「椿姫」のアルフレードとか「イル・トロヴァトーレ」のマンリーコ、「オテロ」のタイトルロール、そして「アイーダ」のラダメスがその典型だろう。またプッチーニ「トスカ」の主人公は女だけれど、上記特徴にピッタリ当てはまる。逆にドイツ・オペラには、こういう性格の人物は稀だ。

イタリア・オペラの登場人物は〈過剰な人々〉である。理性の欠片もない。しかし久しぶりに今回「アイーダ」を再見して、こういう欲望の赴くままに突っ走る生き方も素敵だなと思った。つまりイタリア・オペラは禁欲とか倫理などを押し付けてくるキリスト教へのアンチテーゼであり、野生の思考が息づいているのだ。カトリック教会が支配的なイタリア社会に於いて、オペラは長年ガス抜きの役割を果たしてきたのだろう。そもそも「アイーダ」で描かれるエジプトは非キリスト教社会だ。「オテロ」はムーア人=異教徒だし、「椿姫」の原題La traviata(ラ・トラヴィアータ)の意味は〈道を踏み外した女〉、つまりアウトローはみ出し者。いずれもキリスト教的価値観からの逸脱束縛からの開放を虎視眈々と狙っている。

イタリア人の多くが「ドイツ・オペラは退屈だ」と思う気持ちがよく理解出来た。我を忘れた熱狂陶酔はイタリア・オペラにしかない。

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神田沙也加主演 ミュージカル「マイ・フェア・レディ」の〈正体〉

10月20日梅田芸術劇場へ。ミュージカル「マイ・フェア・レディ」舞台版を人生初観劇した。

この作品との最初の出会いは高校生の時、1980年代である。「雨に唄えば」「サウンド・オブ・ミュージック」などミュージカル映画が大好きになった僕は「マイ・フェア・レディ」のサウンド・トラックLPレコードを購入し、歌詞対訳を見ながら繰り返し聴いた。「スペインの雨」"The Rain In Spain"とか「踊り明かそう」"I Could Have Danced All Night"は英語歌詞を丸暗記した(今でもそらで歌える)。DVDはおろか、レンタルビデオとかレーザーディスク(LD)すらなかった時代である。映画自体を見ることが出来たのは、大学生になってからだった。正直冗長で退屈だった。ロバート・ワイズ監督のような映画的飛躍(編集のキレ)がなく、まるごとセット撮影(ロケ一切なし)で、まるで舞台を観ているかのようだった。

ジョージ・キューカー監督の映画「マイ・フェア・レディ」(1964)にオードリー・ヘップバーンが出演したのは35歳だった。はっきり言って年を取りすぎ、そして痩せすぎ。全く魅力がないヒロインだった。おまけに歌はマーニ・ニクソンによる吹替えである(マーニは「王様と私」のデボラ・カー、「ウエストサイド物語」のナタリー・ウッドの吹替えもしている)。ちなみに1956年にジュリー・アンドリュースがブロードウェイの舞台でイライザを演じたのは20歳の時。製作者ジャック・L・ワーナーは大馬鹿者である(彼はヒギンズ教授役をケーリー・グラントに打診し、けんもほろろに断られている)。

映画「マイ・フェア・レディ」は結局、作品賞・監督賞・主演男優賞(レックス・ハリソン)などアカデミー賞で8部門受賞したが、オードリーはノミネートすらされず、代わって主演女優賞を征したのは「メリー・ポピンズ」のジュリー・アンドリュースだった。ぶっちゃけジュリーの演技は大したことないので、同情票が集まったものと見られる。

この主演女優をめぐる大騒動の結果、後に創られるハリウッド製ミュージカル映画で主演級の俳優の歌に吹替えを使うのは一切なくなった。逆に映画で本人が実際に歌えば、アカデミー賞が受賞し易いという状況が生まれている(「ファニー・ガール」のバーブラ・ストライサンド、「キャバレー」のライザ・ミネリ、「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」のリース・ウィザースプーン、「シカゴ」のキャサリン・ゼタ・ジョーンズ、「ドリームガールズ」のジェニファー・ハドソン、「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイ)。

映画「マイ・フェア・レディ」にジュリーが出演出来なかったのは痛恨の極みなのだが、もし彼女が役を掴んでいれば逆にスケジュール的に「メリー・ポピンズ」に出演することもなかっただろう。どちらが幸いだったのか、難しいところである。因みに僕は現在、彼女が歌うブロードウェイ・オリジナル・キャスト版とロンドン・キャスト版のCDを所有している。

原作はバーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」。題名はギリシャ神話に基づく。こちらを1938年にレスリー・ハワード主演で映画化したバージョンの方が出来は良い。ちなみにレスリー・ハワードは翌年「風と共に去りぬ」にアシュレー役で出演。43年に彼が乗っていた旅客機をチャーチル首相搭乗機と勘違したドイツ空軍が誤爆し、非業の死を遂げた。

2009年にはキーラ・ナイトレイ主演で映画「マイ・フェア・レディ」のリメイク企画が持ち上がった(記事はこちら)。ヒギンズ教授役はリヴァイヴァルの舞台でも演じたジョナサン・プライスが適役なのでは?と思っていたのだが、結局立ち消えになった。そして2014年、周防正行監督の映画「舞妓はレディ」は極めて質の高い「マイ・フェア・レディ」のパスティーシュであった。

以前から舞台版を是非観たいと希っていたのだが、大地真央が花売り娘イライザ役を長年牛耳っていたので、全く行く気になれなかった。彼女が演じ始めたのが34歳の時で、結局54歳まで続けた。言語道断である。恐らくギネスブックに申請すれば世界最年長記録であろう。ババアのイライザなんか絶対嫌だ。

大地真央の次に抜擢されたのは霧矢大夢真飛聖。どちらも宝塚男役トップスター出身であり、やはり年を取りすぎていた。

僕は待ち続けた。そして神田沙也加出演の報を聞き、漸く「時は来た!」と快哉を叫んだのであった。

Kanda

翻訳/訳詞/演出:G2

出演は神田沙也加、別所哲也、相島一之、今井清隆、平方元基、前田美波里ほか。

僕は神田沙也加が初舞台を踏んだミュージカル「INTO THE WOODS」(宮本亜門演出)を2004年6月に東京の新国立劇場中劇場で観ている。赤ずきんちゃん役で、未だ17歳だった。

彼女のイライザは素晴らしかった!すっごく可愛いし、はっきり言ってオードリー・ヘップバーンより断然いい。歌も、映画吹替えのマーニ・ニクソンを上回っていた。「踊り明かそう」のナンバーは柔らかくしっとり歌い上げ、イライザのレディとしての覚醒を見事に表現していた。パーフェクトである。長年待った甲斐があった。また今井清隆のドゥーリトルははまり役だったし、歌わない前田美波里も気品と威厳があって素敵だった。

ポスターでも分かる通り、衣装はブロードウェイ版及び、映画で美術・衣装デザインを担当したセシル・ビートン(アカデミー賞ダブル受賞)のデザインを踏襲している。例えばアスコット競馬場の場面は全員の衣装が白黒のモノトーンで統一されているといった具合。

実は、映画「マイ・フェア・レディ」を初めて観たときから、僕はモヤモヤとした違和感、腑に落ちない〈何か〉が気にかかっていた。この居心地の悪さの正体は、一体……?

本作はしばしば世間で〈ロマンティック・コメディ〉と称されるが、それは果たして本当だろうか?そもそもイライザとヒギンズは恋愛関係なの??劇の終盤、戻ってきたイライザに対してヒギンズは"Where the devil are my slippers?"(私のスリッパは一体どこにある?)と言うのだが、それって〈愛の告白〉ですか???少なくとも〈将来の妻〉に対して言う台詞ではないだろう。

30年以上抱えていた問いに対して、明快な解(かい)を見出したのは、つい最近のことである。

この物語の中で非常に不可解なのはピッカリング大佐の存在である。ヒギンズとピッカリングは共に〈独身主義者 bachelor〉であり、意気投合したふたりは一緒に暮らし始める……。そうか!彼らはゲイカップルで、最後にイライザを養女として迎え入れる。そう解釈すればすべての謎が氷解する。つまりミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」と同じ構造なのだ。娘に「スリッパはどこだ?」と訊ねるのなら、不自然じゃない。

そして映画版の監督ジョージ・キューカーとセシル・ビートンはゲイだった。成る程、繋がっている。

最後に。今後イライザとして観たい日本のミュージカル女優たちの名を挙げておこう。

  • 昆夏美
  • 木下晴香
  • 高畑充希
  • 上白石萌歌

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