舞台・ミュージカル

2026年4月10日 (金)

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2026(思い出の「アナと雪の女王」「ライオンキング」)

3月15日(日)フェスティバルホールへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部定期演奏会(最終公演)を聴く。指揮は監督の梅田隆司先生。

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 I部

 ・ミュージカル「アナと雪の女王」
 ・ミュージカル「ライオン・キング」

II部

 ・ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」より
 ・吹奏楽部21年間の歩み(郷間幹男 編曲「嵐メドレー」)
 ・甲子園応援コーナー〜リクエストコーナー
 ・卒業生を送る歌(ゆず「友 〜旅立ちの時〜」)
 ・Superfly「愛をこめて花束を」
 ・フィナーレ(「銀河鉄道999」「星に願いを」「Sing Sing Sing」)

今年の1月10日まで定演でミュージカル『キャッツ』をする予定だったが、梅田先生が姪っ子に訊ねると「それ知らない。『ライオンキング』ならよく知ってる」と反応があり、急遽演目を変更したそう。学校は今回の演目のために4台の3Dプリンターを購入した。それにより、『アナと雪の女王』のオラフ(雪だるま)や『ライオンキング』に登場するライオンのお面、キリン、プンバァ(イボイノシシ)などの造形が素晴らしく、ブロードウェイ版と比べても遜色ないと思った。またアナとエルサが着る、青と緑のドレスが洗練されたデザインでとても美しく、息を呑んだ。

『アナ雪』のナンバー〈雪だるまつくろう〉〈生まれてはじめて〉を久しぶりに聴きながら、いろいろなことが頭の中を走馬灯のように駆けめぐった。真っ先に目に浮かんだのがアニメの日本語吹替版を担当した神田沙也加だ。彼女が18歳で舞台デビューしたミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』(スティーヴン・ソンドハイム作詞・作曲)の赤ずきんちゃん役を僕は東京で観ており(可憐だった!)、最後に出演したミュージカル『マイ・フェア・レディ』大阪公演のチケットも持っていた。しかし大阪に来る前の札幌公演で彼女は宿泊していたホテルから飛び降り自殺してしまった。痛ましいことだ。愛着障害が原因と考えられ(共演していた前山剛久の言動はトリガーでしかなく、根はもっと深い)、幼少期に受けた心の傷(両親の不在)は大人になっても癒やされないのだということを思い知らされた。彼女が14歳の頃から大地真央のことを「ママ」と呼び慕っていたというエピソードが胸に刺さる。『アナと雪の女王3』は2027年に公開予定だが、アナの吹替は誰がするのだろう?考えただけでも胸がキュッとなる。

『アナ雪』が2014年3月に日本で公開された当時僕は劇場で3D上映を観たと記憶している。雪が立体的に降り落ちてくるのが印象的だった。あの頃は3Dがブームだったが、3D眼鏡が煩わしいからなのか現在は完全に下火になった。特にアニメの3D上映って皆無なのでは?

また映画が公開された年、紅白歌合戦で『アナ雪』コーナーがあり神田も出演したが〈ありのままで〉を歌ったのはMay J.であり、エルサ役の松たか子はこの曲を一度もTVの歌番組で披露していない。あくまで声優としての契約であり、どうやら生歌を披露するにはディズニーからの許可が必要らしい(それを一手に引き受けているのがMay J.というわけ)。

『アナ雪』は一応アンデルセンが原作ということになっているが、映画『ウィキッド ふたりの魔女』を観てむしろミュージカル『ウィキッド』を徹底的に研究し作劇しているのだな、ということにはたと気付いた。『ウィキッド』のエルファバとグリンダの友情=シスターフッドが、エルサとアナという文字通り姉妹の関係に置き換えられており(アンデルセン童話に姉妹は登場しない)、『ウィキッド』第一幕のクライマックスで歌われる"Defying Gravity"を基に『アナ雪』の名曲"Let It Go"〈ありのままで〉が生まれた。歌詞の内容は殆んど同じである。両者の繋がりの決定的証拠は舞台版『ウィキッド』のエルファバ初演キャストであるイディナ・メンゼルが『アナ雪』英語版でもエルサのアフレコを担当し、"Let It Go"〈ありのままで〉を歌っていること。因みにイディナ・メンゼルは伝説的傑作ミュージカル『レント』モーリーン役のオリジナル・キャストであり、映画『ウィキッド ふたりの魔女』でもエメラルド・シティの場面でグリンダ役だったクリスティン・チェノウェスと一緒にカメオ出演している。

というわけで梅田先生、いつか大阪桐蔭の定演でも『ウィキッド』を取り上げてください!

それからオラフの日本語吹替は元々ピエール瀧だったのだが、2019年に麻薬取締法違反容疑で逮捕された後はオラフの声を差し替えたものが配信・販売されている。よってピエール瀧バージョンは今や幻となってしまった。なおテレビ出演も出来なくなった彼はその後『全裸監督』『地面師たち』『新幹線大爆破』などNetflix専属俳優として大活躍している。こうしたキャンセル・カルチャーは本当に愚かなこと。ディズニーには猛省を促したい。

『ライオン・キング』演奏前に梅田先生が「先日劇団四季の公演を家族と観てきましたが、うちの方が優れているという自信があります」と仰った。その根拠の一つとして劇団四季はオーケストラが録音音源であり、大阪桐蔭は迫力のある生演奏であることを挙げておられた。

ここで少し補足説明をしておきたい。1998年12月20日(日曜日)『ライオンキング』東京公演初日、僕は四季劇場[春]の客席にいた。これがこけら落としだった。その時はブロードウェイと同様、全てが生演奏だった。

調べてみると劇団四季『ライオン・キング』が東京限定で生オーケストラ演奏を実施していたのは2011年までだっようだ。つまりその年の3月11日に東日本大震災があり公演を一時休止。再開にあたり節電への協力や公演維持の安定性を考慮する形で、現在のスタイル〈(管弦楽器は)カラオケ+客席左右のバルコニー等で演奏する生パーカッション〉へと移行したらしい。

現在劇団四季が東京公演で生オーケストラを起用しているのは『オペラ座の怪人』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のみ。ただしこれらの演目も東京以外の劇場では全てカラオケである。

過去に遡ってみよう。ミュージカル『キャッツ』1983年の東京初演(新宿・西口の特設テント劇場「キャッツ・シアター」)は生演奏だったが、85年に大阪(梅田「キャッツ・シアター」)へ移る際、以下のような理由で録音音源に切り替わったと言われている。

劇団四季を創設した演出家・浅利慶太は「生オーケストラだと、その日の指揮者や奏者のコンディションでテンポが微妙にズレる」「ダンサーは(ジャンプしたあと)空中で止まることができない。重力に従って必ず決まった時間に着地する。だから完璧に計算されたダンスを見せるためには、テンポが不変のテープ(当時)でなければならない」 という屁理屈を展開した。また劇団四季は最新の音響設備を導入しており、「生演奏よりも録音の方が、劇場内のどこにいてもクリアで迫力のある理想的なバランスで音楽を届けられる」とも主張した。もしこの言い分がまかり通るのであれば『白鳥の湖』『ジゼル』『ロメオとジュリエット(プロコフィエフ)』などすべてのバレエ演目は生演奏ではなく、録音音源に切り替えなければならないことになる……んなアホな!!

また1989年10月1日近鉄劇場(天王寺区上本町)で開幕した『オペラ座の怪人』大阪初演は生オーケストラによる演奏だったが、1995年MBS劇場(大阪市北区堂島)での再演はカラオケになった。

まぁ要するに真の目的は経費、特に人件費を削減したかったのだろうと僕は推測する。劇団の仕事だけで役者が食っていけるようにするということが一番重要で、浅利にミュージカルに対するはそもそもなかったのだ。

では何故東京だけ(一部劇場は)生オーケストラなのか?おそらくそれは演劇評論家などマスコミ対策なのだろうと僕は邪推する。「どうして生の舞台なのに音楽はカラオケなの?」と問い詰められたり、記事に書き立てられたら都合が悪いでしょ?再演とか地方公演なら口うるさいライターは来ない。

ただ劇団四季の名誉のために言い添えておくと、1999年11月14日に福岡シティ劇場(福岡県福岡市博多区)で幕を開けたミッシェル・ルグラン作曲のミュージカル『壁抜け男』は地方公演としては珍しく生演奏だった(僕は初日に観た)。実はこれ、たった3人の奏者でピアノ・木管楽器・パーカッションを演奏するという小編成なので、人件費がかからないから実現したのだろう。しかし後の全国ツアーでは従来のカラオケ上演になってしまったのだけれど……閑話休題。

大阪桐蔭定演の感想に戻ろう。全日本吹奏楽コンクールで銀賞に終わった自由曲『火の鳥』は精彩を欠いた(指揮者と曲目との相性の問題だろう)。

 ・ 史上初の快挙「オペラ座の怪人」全日本吹奏楽コンクールへ!〜梅田隆司/大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 (2024年はこの自由曲で全国大会金賞受賞)

〈リクエストコーナー〉で客席から要望があったのは『ハウルの動く城』から〈人生のメリーゴーランド(JAZZ Ver.)〉と〈カリスマックス(Snow Man)〉。〈カリスマックス〉ではサングラスをした9人の男子生徒が歌った。特に〈人生のメリーゴーランド(JAZZ Ver.)〉に痺れた!『ウエスト・サイド物語』やミシェル・ルグラン作曲の〈キャラバンの到着(映画『ロシュフォールの恋人たち』より)〉でも感じるのだが、梅田先生のタクトって『火の鳥』のような生真面目なクラシック音楽ではなく、こういったJAZZYな曲でその真価を最大限に発揮するんだよね。グルーヴがある。

そしてアンコール。大阪桐蔭の魅力爆発、真骨頂の『銀河鉄道999』を聴きながら、アニメでメーテルの声を当てた池田昌子に思いを馳せた。彼女は今年3月3日に亡くなった。享年87歳。原作者の松本零士はメーテルのモデルの一人としてジュリアン・デュヴィヴィエ監督のフランス映画『わが青春のマリアンヌ』のヒロインを挙げており、実はテレビ放映時にマリアンヌの吹替を担当したのが池田昌子だったのである。松本零士には『わが青春のアルカディア』という作品もあり、タイトルの類似は決して偶然ではない。『わが青春のマリアンヌ』はとっても素敵な映画なので機会があればぜひ観てみてください。

 ・ 大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定演/ミュージカル「銀河鉄道の夜」〜宮沢賢治の深層心理にダイブする。 2017.02.21

で通常は『銀河鉄道999』の後に『星に願いを』で〆なのだが、曲が終わると梅田先生が「もうあと2分ある」と無茶ぶりで疾風怒濤の『Sing Sing Sing』に突入!えっ、えっ、えっ!!前代未聞のアンコールに大興奮。ノリノリで最高!!!場内が熱気で包まれたことは言うまでもない。いいものを聴かせてもらった。来年もまた来ます。

 ・ 第55回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 前編 2007.10.25 (大阪桐蔭の演奏をこの日初めて聴いた)
 ・ 
第57回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 2009 《後編》 2009.10.31 (大阪桐蔭がこの年初めて全国大会金賞に輝く)

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2025年10月16日 (木)

近況報告(あるいは、なぜ当ブログは最近更新頻度が低下しているのか?)

最近、記事の更新を怠っていて読者に対して申し訳なく思っている。事情を説明しよう。

ふと「フランス語を勉強しよう!」と思い立ち、2020年4月からNHKラジオ『まいにちフランス語』を3年間聴いた。

それと並行して22年4月から『まいにちドイツ語』を3年、23年4月から『まいにちイタリア語』を聴いている。

週に6日ラジオ講座を聴いて学習期間は25年4月に1500日を達成、イタリア語とドイツ語講座の聴講はそれぞれ1000回を超えた(来年度からフランス語に戻ろうと考えている)。同じ日に3つ以上の放送を聴いたのは現在520回に上る(ラジオストリーミング『NHKゴガク』で自分の視聴履歴が確認出来る)。だからブログを書く時間的余裕がなくなった。

まさに「五十の手習い」である。動機となったのは以下の通りだ。

僕は中学生の頃からオペラを愛好していた。まずはヴェルディやプッチーニのイタリア・オペラ、そしてワーグナー(ドイツ)が作曲した楽劇『ニーベルングの指環』(全4夜)のLPレコードをお小遣いをためて購入し、熱心に聴いた。たしか全部で16枚だったと記憶している(『ラインの黄金』3枚+『ワルキューレ』4枚+『ジークフリート』4枚+『神々の黄昏』5枚)。1980年前後の話だ。当時LPレコードには日本語対訳が添付されており内容の理解には困らなかった。

配信時代の今、逆に歌詞対訳を手に入れることが難しくなってしまった(対訳付きCDのニューリリースもコストが嵩むのでなかなか困難だ。CDの売上は落ち込むばかりで、はっきり言って採算が取れない)。

そういった経緯でオペラやベートーヴェンの第九の歌詞を原語で理解出来たら楽しいだろうな、と思った。ただ想定外の事態が発生した。先日より『ニーベルングの指環』対訳本を購入し勉強し始めたのだが、なんと!現在の辞書には載っていない中世ドイツ語とか、古ゲルマン語がいくつも登場するのだ。そうか、この作品は神話の世界を描いており、現代の日本人が『古事記』とか『源氏物語』を原文で理解しようとしても困難なのと多分似ているのだろう。

フランス語についてはフランソワ・トリュフォー監督の『大人は判ってくれない』『恋のエチュード』やジャン=リュック・ゴダール監督『気狂いピエロ』、ジャック・ドゥミ監督『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』などヌーベルバーグの作品理解に役立つだろうと考えた。イタリア映画もフェデリコ・フェリーニの『カビリアの夜』『甘い生活』『8 1/2』とかルキノ・ヴィスコンティ監督『山猫』『ルートヴィヒ/神々の黄昏』、あるいはジョゼッペ・トルナトーレ監督『ニュー・シネマ・パラダイス』なんか大好きだしね。クラシック音楽の楽譜も「アレグロ」とか「アダージョ」とか全てイタリア語で表記されている。

先日、テレビでNHK交響楽団の定期演奏会を視聴していたら音楽監督ファビオ・ルイージのインタビューがあった。彼はイタリア語で話していたのだが、その半分くらい何を言っているか聴き取れたので嬉しかった。

オーストリア・ウィーン在住のある日本人音楽家夫婦がYouTubeで語っていたのだが(夫はウィーン放送交響楽団に在籍)言語とその国の音楽には密接な関係があるのだという。確かにJ.S.バッハやベートーヴェンの音楽とドイツ語の硬い響き、ドビュッシーやラヴェルなど柔らかく曖昧模糊として拍子がはっきりしない印象派の音楽とフランス語には共通点がある。つまり言語学習は音楽理解にも役に立つ。

日本語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語。さて、次はどうしよう?いま取り組みたいと考えているのはラテン語。公用語としてはバチカン市国でしか話されていない特殊な言語である。映画『教皇選挙』では台詞に沢山取り入れられていた。イタリア語のルーツであり、イタリア人にとっては日本の中学・高校で古文を勉強するような感覚だろう。そしてフランス語とスペイン語もラテン語から派生した言語。だからヨーロッパの中学・高校ではラテン語が選択科目になっている。一般教養として重要なのだ。

レクイエムやその他のミサ曲など、宗教音楽は全てラテン語で歌われる。だから習得したい。ただし学習には難点があって、残念ながらNHKの語学講座にはないんだよね。しばらく独学でやってみよう。

何事を始めるのにも決して遅すぎることなどない。そうつくづく思う今日このごろである。僕はこのことをこよなく愛する大林宣彦監督の映画『はるか、ノスタルジィ』から学んだ。

(追伸)なお毎年恒例、年末の映画ベスト20(または30?)や来年のアカデミー賞大予想は実施する予定だ。乞うご期待。今年観た作品では『ワン・バトル・アフター・アナザー』『チェンソーマン レゼ編』『ハウス・オブ・ダイナマイト』『教皇選挙』『ウィキッド ふたりの魔女』『国宝』とか痺れたなぁ。あ、アカデミー作品賞・監督賞を受賞した『ANORA アノーラ』はイマイチ。

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2024年9月 4日 (水)

史上初の快挙「オペラ座の怪人」全日本吹奏楽コンクールへ!〜梅田隆司/大阪桐蔭高等学校吹奏楽部

台風の影響で延期になった関西吹奏楽コンクール高等学校の部Aが無観客で9月3日(火)に開催された。そして梅田隆司/大阪桐蔭高等学校が代表に選出され、全国大会への切符を手に入れた。彼らが今年自由曲に選んだのがアンドルー・ロイド・ウェバーが作曲したミュージカル『オペラ座の怪人』である。

念のため「吹奏楽コンクールデータベース」で確認した(裏を取った)のだが、実は昨年度まで『オペラ座の怪人』で全国大会に進出した団体は(中学、高校、大学、職場・一般の部合わせても)皆無である。いや、それどころか『オペラ座の怪人』のみならず、『キャッツ』『ジーザス・クライスト・スーパースター』『ウーマン・イン・ホワイト』などロイド・ウェバー作品すべてが一度も全国大会で演奏されたことがない。

一方でクロード=ミシェル・シェーンベルクが作曲したミュージカル『ミス・サイゴン』(宍倉晃 編曲)は2002年に大滝実/埼玉栄高等学校が全国大会で金賞に輝き、一大センセーションを巻き起こしたのは記憶に新しい。あれは衝撃的だった。

また2013年と21年に宇畑知樹/埼玉県立伊奈学園総合高等学校が同じシェーンベルクのミュージカル『レ・ミゼラブル』(森田一浩 編曲)で全国金を受賞しているし、2017年にはアラン・メンケン作曲ミュージカル『ノートルダムの鐘』(森田一浩 編曲)でもてっぺんを取った。

ロイド・ウェバーが紡ぐ旋律はプッチーニのオペラみたいにキャッチーで耳に残るのだが、器楽演奏としては難易度が低く、コンクールに向かない。どうしても全国大会に選ばれる学校の自由曲はラヴェルの『ダフニスとクロエ』とか、レスピーギ『ローマの祭り』(グレード5〜6)、吹奏楽オリジナル曲ならピーター・グレイアム『ハリソンの夢』(グレード7)といった、技術的に超難しい楽曲に偏りがちである。

だから『オペラ座の怪人』で全国進出を果たすのは画期的事件だし、ここまできたら是非頂点に上り詰めてほしいと願わずにはいられない。

僕はミュージカル『オペラ座の怪人』が死ぬほど好きで、ブロードウェイ(NY)、ウエストエンド(ロンドン)のみならず、ラスベガスにまで行って観劇している(ラスベガス版は2012年に閉幕)。

 ・ オペラ座の怪人 2007.05.19
 ・ ラスベガス便りその1 《オペラ座の怪人》 2009.01.02

大阪桐蔭が演奏する『オペラ座の怪人』は、『指輪物語』で名高いオランダの作曲家ヨハン・デ・メイの編曲で聴いたことがある。また2024年定期演奏会での演奏は郷間幹男によるもの(歌付き)だった。

 ・ 「吹奏楽の神様」屋比久勲登場!~大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2014@ザ・シンフォニーホール
 ・  大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会2024(「サウンド・オブ・ミュージック」「オペラ座の怪人」のおもひでぽろぽろ)

また建部知弘による編曲版も素晴らしい。今回梅田先生は誰の編曲を採用したのだろう?興味津々である。

ただ気がかりなのは楽曲の著作権(二次使用権)の問題だ。関西大会の高校Aライブ配信では大阪桐蔭の自由曲が配信不可だった。つまり二次使用が認められなかったわけだ。だから全国大会での演奏が、DVD・Blu-rayで発売される際に収録されるかビミョーである。

ミュージカル作品の中で版権問題が一番厳しいことで有名なのがレナード・バーンスタインの『ウエスト・サイド物語』である。日本で初演したのは宝塚歌劇団だが、その公演がテレビで放送されたり、ビデオやDVD、Blu-rayで発売されたことは一切ない。つまり映像による二次使用は認められていない。宝塚歌劇が上演する他の海外ミュージカル(『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』『ファントム』等)と比較すると雲泥の差だ。まぁさすがにロイド・ウェバーの場合、そこまで厳しくはないと思うのだが……。

なおこれを機会に作品を観てみたいという方、ジョエル・シューマッカー監督による映画版(2004)は余りお勧めしない。如何にもB級ホラーの匂いがプンプンするのだ。エミー・ロッサム演じるヒロイン・クリスティーヌは良い。しかしジェラルド・バトラーの怪人とパトリック・ウィルソンのラウル子爵がいただけない。カルロッタ役のミニー・ドライヴァーも✕。ロイド・ウエバーが書き下ろした新曲もお粗末極まりない。因みに当初怪人役はヒュー・ジャックマンが予定されていたのだが映画の撮影と、ブロードウェイ・デビュー『ザ・ボーイ・フロム・オズ』出演が重なったため、ヒューは舞台を選び、見事トニー賞でミュージカル主演男優賞を受賞した。彼が『オペラ座の怪人』に出ていたら、もっとマシな作品になっただろうに。なお、舞台のプロデューサー、キャメロン・マッキントッシュは再映画化したいと考えているようなので、そちらに期待したい。

というわけで、映像として観るのなら断然『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』の方が遥かに素晴らしい!ラミン・カリムルーも、シエラ・ボーゲスも文句なしだ。

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全日本吹奏楽コンクール 高等学校の部は2024年10月20日(日)に宇都宮市文化会館で開催される。刮目して待て。

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2024年5月24日 (金)

段田安則の「リア王」

4月20日(土)ブロードウェイ・ミュージカル『カム フロム アウェイ』に゙続き、大阪に新たに出来たSkyシアターMBSで『リア王』を観劇した。

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翻訳:松岡和子、演出:ショーン・ホームズ、美術・衣装:ポール・ウィルス。出演は...

段田安則、小池徹平、上白石萌歌、江口のりこ、田畑智子、玉置玲央、入野自由、前原滉、盛隆二、平田敦子、高橋克実、浅野和之  ほか。

因みに段田安則と浅野和之はかつて野田秀樹が主催していた「夢の遊眠社」で活躍した仲間である。

段田は2022年にもショーン・ホームズとタッグを組んだ『セールスマンの死』で読売演劇大賞 最優秀男優賞を受賞している。

ポスターでリア王の顔は傷だらけ、泥まみれになっているが実際の舞台ではこれほど汚いメイクではなかった。コピー機やウォーターサーバーがあるオフィスみたいな舞台装置に登場人物はスーツにネクタイ姿、つまり現代を舞台にした「読み替え」演出だ。

実はヨーロッパの歌劇場ではオペラの「読み替え」演出が当たり前のことになっており、例えばかつてのジャン=ピエール・ポネルとか、『ラ・ボエーム』『トゥーランドット』で名高いフランコ・ゼフィレッリのような、台本に書かれた時代に合わせた衣装や舞台装置による演出は現在、殆ど見かけない(アメリカのメトロポリタン歌劇場なら、まだたまにある)。多分「読み替え」演出の先駆者と言えるのは1976年バイロイト音楽祭におけるパトリス・シェローによる楽劇『ニーベルングの指環』あたりではないだろうか?ピエール・ブーレーズが指揮したあれだ。

「読み替え」には当初、違和感を覚えたし世間では賛否両論ある。しかしもう慣れた。結局、この手法の肝は「21世紀の現代において古典を上演する意義を考えろ!」ということなのだろう。1600年代初頭に初演されたシェイクスピア劇を、当時のまま再現することに果たして意味はあるのだろうか?そういうことだ。

段田は無論のことだが、底意地が悪い長女ゴリネル(江口のりこ )と次女リーガン(田畑智子)、そして清純なコーディリア(上白石萌歌)の三姉妹が出色の出来。大満足。

考えてみれば今までミュージカル『ロミオ&ジュリエット』やブリテンのオペラ『夏の夜の夢』、ヴェルディの『オテロ(オリジナルは『オセロー』)』など観劇してきたが、シェイクスピアのストレート・プレイを観るのはこれが初めてかも。『ハムレット』もオペラ化されているし(アンブロワーズ・トマ/ブレット・ディーン )、『十二夜』は色々なヴァージョンでミュージカル化されている(例えば原田諒が作・演出した宝塚歌劇団『ピガール狂騒曲』)。しかし『リア王』は聞いたことがない。そういったアレンジには向いていないのかも。

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2024年5月23日 (木)

ブロードウェイ・ミュージカル「カム フロム アウェイ」@SkyシアターMBS(大阪)

4月6日(土)JR大阪駅・西口に直結、新しく出来たばかりのSkyシアターMBSへ。ミュージカル『カム フロム アウェイ』を観劇した。

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1,289席の中規模劇場である。梅田芸術劇場メインホールが1,905席、その地下にあるシアター・ドラマシティが898席なのでちょうど中間ということになる。因みに座席が狭くて古くで僕が大嫌いな森ノ宮ピロティホールは1,030席。SkyシアターMBSは観易く、いいハコだった。

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2001年9月11日ニューヨークが混迷した同時多発テロの裏で、カナダにある小さな町・ニューファンドランドで起きた驚くべき実話を基にしている。100分というコンパクトな上演時間で途中休憩なし、ノン・ストップ。2017年のトニー賞において本作でミュージカル演出賞に輝いたクリストファー・アシュリーが日本版も引き続き担当した。この年、トニー賞でミュージカル作品賞など総なめにしたのが『ディア・エヴァン・ハンセン』なのだが、作品の内容にせよ、音楽にせよ、僕は本作のほうが断然好き。因みにイギリスのローレンス・オリヴィエ賞ではミュージカル作品賞・楽曲賞・振付賞・音響賞を受賞した。

登場人物は100人近く。しかし出演者はたった12名。

安蘭けい、石川禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森公美子、柚希礼音、吉原光夫

このメンツ、theatergoer(観劇好き、芝居好き)なら分かると思うけど超豪華キャストである。主役を張れる人たちばかり。〝日本ミュージカル界のアベンジャーズ”と評されたのもむべなるかな。おまけに僕が観劇した日は安蘭けいと柚希礼音という元・宝塚歌劇団男役トップスターによるアフタートークもあったので超オトクであった。昔から安蘭けいは話術が巧みなので場内が爆笑の渦に包まれたことは言うまでもない。

展開はスピーディだし、内容的にも深く文句なし。再演があれば是非また観たい。

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2024年4月 1日 (月)

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会2024(「サウンド・オブ・ミュージック」「オペラ座の怪人」のおもひでぽろぽろ)

3月17日(日)フェスティバルホールへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の第19回定期演奏会を聴く。監督の梅田隆司先生が指揮した。

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まず能登震災復興を願ってユーミンの『春よ、こい』が歌われ、2019年に初演されたショー〈歴史の「夢」を訪ねて〉の再演から始まった(〈ローマを訪ねて〉に改題)。

 ・ 大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会2019とディズニー「ファンタジア」

ここで演奏された曲目は、

 ・レスピーギ(杉本幸一編):「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3組曲
 ・ハンス・ジマー:アニメ映画「プリンス・オブ・エジプト」より
 ・レスピーギ:交響詩「ローマの祭」より
 ・グノー:アヴェ・マリア
 ・フォーレ:付随音楽「ペリアスとメリザンド」よりシチリアーナ
 ・レスピーギ:交響詩「ローマの松」より

クライマックスでホールの四方八方からバンダ(別働隊の小規模金管アンサンブル)が鳴り響き、迫力満点。

続いてミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』と『オペラ座の怪人』が歌・衣裳付きで上演された。『オペラ座の怪人』は嘗てヨハン・デ・メイ編曲版(歌なし)が定演で披露されたが、今回は郷間幹男による編曲。

 ・「吹奏楽の神様」屋比久勲登場!~大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2014@ザ・シンフォニーホール

僕はこの2つのミュージカルに強い思い入れがあり、生徒さんたちのパフォーマンスを見ながらさまざまな思い出が走馬灯のように脳裏を駆け巡った。多分これから演奏しようという若い人たちにも参考になる情報(ネタ)も含まれていると思うので、手繰った記憶を紐解いていこう。

映画『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)に初めて触れたのは地元の岡山市で中学生の時。昭和の時代、1980年ごろの話だ。家庭用ビデオデッキは未だ普及しておらず、レンタルビデオ店すらなかった。昔の映画はテレビ放送をリアルタイムで観るしか手段がなかった。文化祭の日に学校の教室で(8mmか16mmの)フィルム上映されたのだ。しかも3-40分に短縮されたハイライト版。それでも僕は感動した。そして全編を観たいと強く思った。数年後、岡山大学映画研究部が土曜日に映画館を夜間貸し切って名作映画4本を上映するイベントがあり、プログラム最初が『サウンド・オブ・ミュージック』だった。確か、岡山市千日前商店街にあったSY松竹文化だったと記憶している。21時上映開始で僕は1本目だけを観た(他にロベール・アンリコ監督、アラン・ドロン主演『冒険者たち』があったのを覚えている)。全長版を観てびっくりしたのは、短縮版に収録されていた修道院長(ペギー・ウッド)が歌う「すべての山を登れ Climb Ev'ry Mountain」がごっそり無くなっていたこと!大好きな曲なのに……。

のちに判明したのだが、公開直前になってロバート・ワイズ監督からこのソロ・ナンバーをカットするよう指示があったらしい。映画のテンポが間延びすると判断されたのだろう。しかしテレビ放送、ビデオ、DVD、Blu-ray、配信版にはカットされることなく丸々収録されているし、「午前10時の映画祭」でリバイバル上映された際にもあった(多分フィルムではなくデジタル上映だったからだろう)。因みにクレジットされていないがペギー・ウッドの歌はマージェリー・マッケイ(Margery MacKay)による吹替である。

大学入学のお祝いとしてパイオニアのレーザーディスク(LD)プレイヤーを買ってもらい、最初に購入したソフトが『サウンド・オブ・ミュージック』。当時のブラウン管テレビ(横:縦の長さが4:3)のサイズに合わせたトリミング版だった(つまり左右の映像がカットされていた)。後に特典ディスク付きワイドスクリーン版LDを買い、DVDを買い、さらにBlu-rayで買い直した。製作40周年記念版からマリア:島田歌穂、トラップ大佐:布施明という布陣で歌も含めた日本語吹替音声が実現し、製作50周年記念版ではマリア:平原綾香、トラップ大佐:石丸幹二となりこちらも購入。現在はディズニープラスで配信されている(個人的にはどちらかと言えば島田歌穂の歌声の方が好きだ)。

そして大学の卒業旅行で僕はオーストリアのザルツブルクを訪れ、映画のロケ地巡りをした。ドレミの歌が歌われたミラベル宮殿・庭園(花壇がとても美しい!)から毎日、半日ツアーバスが出ており、マリアとトラップ大佐が結婚式を挙げた湖畔の教会にも行った。ツアーの日本人は僕1人だけ。ガイドさんの解説(英語)によると地元の人々は殆どこの映画を観ておらず、全く知られていないそうだ。

アカデミー賞では作品賞・監督賞など5部門受賞した名作だが、Wikipediaによるとオーストリアではザルツブルクを除いて、21世紀に入るまで本作は1度も上映されていないそう。会話が英語なのも馴染めないだろうし、現地の人にとってナチス=ドイツによる併合は忘れたい過去なのだろう。このようにドイツ語圏では否定的な評価を受けている。

アンドリュー・ロイド・ウェバーがプロデュースし、2006年ロンドンで開幕した舞台版も東京の四季劇場〔秋〕で観劇した。

 ・ 劇団四季「サウンド・オブ・ミュージック」 2010.10.18

以前、大阪桐蔭も上演したミュージカル『マイ・フェア・レディ』のブロードウェイとロンドン初演でイライザを演じたのはジュリー・アンドリュースだった。ワーナー・ブラザースがこの映画化権を獲得し、社長のジャック・L・ワーナーがジュリーにスクリーン・テストを受けさそうとした時、彼女は「スクリーン・テストですって? 私があの役を立派にやれることを知っているはずよ」と拒否した。結局、無名の新人ではなく知名度の高いオードリー・ヘップバーンに同役は決まった。オードリーはこの役はジュリーのものだと考え断ろうとしたのが、そうすればエリザベス・テーラーに役が回ると分かりサインしたのだ。

失意のジュリーは『メリー・ポピンズ』(1964)に主演。そしてアカデミー主演女優賞を獲得した。同年公開された『マイ・フェア・レディ』は作品賞・監督賞などアカデミー賞を8部門獲得するがオードリーはノミネートすらされなかった。舞台と同様ヒギンズ教授を演じ主演男優賞を得たレックス・ハリスンは授賞式の壇上で「ふたりのイライザに感謝します」とスピーチした。

オードリーは歌が下手なのでマーニ・ニクソンという女優が吹替を担当した。しかし映画にはクレジットされずマーニは「他人に口外しない」という契約書にサインしている。ただし「いまに見てらっしゃい (Just You Wait)」というナンバーの前半部はオードリーの地声で、高音に移行する途中からマーニに切り替わる。注意深く聴けばはっきりと分かる。声域が狭いオードリーのためにヘンリー・マンシーニが『ティファニーで朝食を』(1961)の主題歌「ムーン・リバー」の音域を1オクターブと1音(つまりドから高いレまでの9音)で収まるように作曲し、アカデミー歌曲賞を受賞したのは有名な話。

マーニ・ニクソンは『王様と私』(1956)のデボラ・カー、『ウエストサイド物語』(1961)のナタリー・ウッドの歌の吹替も担当しているがいずれもノンクレジットである。しかし業界で彼女のことは知れ渡っていた。『ウエストサイド物語』の監督ロバート・ワイズは彼女を『サウンド・オブ・ミュージック』の尼僧役として出演させている。どの役かは歌声を聴けば分かるから探してみてください。映画の撮影が開始されたのは1964年。マーニは主演を務めるジュリー・アンドリュースと初めて対面する時に緊張した。ジュリーはマーニを見つけるとつかつかと彼女に歩み寄り手を差し伸べてこう言った「マーニ、私はあなたのファンです」。

ミュージカル『エリザベート』の演出で有名な小池修一郎(宝塚歌劇団)はかつてジュリー・アンドリュースのファンクラブ会長を努め、彼女が来日したときインタビューしている。故に彼のオリジナル作品には時々『サウンド・オブ・ミュージック』へのオマージュが盛り込まれていたりする(たとえば『蒼いくちづけ』)。

梅田先生も仰っていたが「私のお気に入り/My Favorite Things」はジャズのスタンダード・ナンバーになっており、一番有名なアレンジはジョン・コルトレーンがソプラノ・サックスを吹いた究極の名盤。次にお勧めしたいのはトニー・ベネットがカウント・ベイシー・ビッグ・バンドをバックに歌ったもの。ジャズ・オーケストラのサウンドがゴージャスで堪らない!

僕が『オペラ座の怪人』を初めて観たのは大学生の時。劇団四季の大阪公演でファントム:山口祐一郎、クリスティーヌ:井料瑠美、ラウル:柳瀬大輔というキャストだった。劇団四季は東京公演以外基本カラオケ上演だが、それでも感銘を受けた。後に東京でオーケストラ生演奏版も体験したが楽団員の人数が少なすぎて(弦楽器の各パート1人づつ)音がペラペラ、これなら厚みがあるカラオケの方がマシだと思った。

さらにウエストエンド(ロンドン)とブロードウェイ(NY)、ラスベガスでも『オペラ座の怪人』を観た。生演奏の質は桁違いに良かったし、ハロルド・プリンス新演出によるラスベガス版は舞台で炸裂する火薬の量が多く、シャンデリアは巨大で豪華だった。なんと4つのパーツが空中で回転しながら合体するのである!

 ・ ラスベガス便りその1 《オペラ座の怪人》 2009.01.02

こちらは残念ながら2012年で幕を閉じた。

ガストン・ルルー原作『オペラ座の怪人』のミュージカル化は既成のクラシック音楽を使用したケン・ヒル版や、日本では宝塚歌劇が初演したモーリー・イェストン作詞・作曲による『ファントム』もある。

 ・ 城田優 主演/ミュージカル「ファントム」 2014.10.11 
 ・ 音楽の天使が舞い降りた!!〜ミュージカル「ファントム」 2019.12.12

面白いのはモーリー・イェストン版で怪人(エリック)は歌姫クリスティーヌに亡き母の姿を重ねており(エディプス・コンプレックス)、アンドルー・ロイド・ウェバー(ALW)版ではクリスティーヌがファントムに亡き父の姿を重ねている(エレクトラ・コンプレックス)。つまり解釈が全く異なるのだ。ALWは間違いなくクリスティーヌとファントムの関係性にサラ・ブライトマンと自分のそれを見出している。

ALWとサラ・ブライトマンの年齢差は12歳。サラは1981年『キャッツ』のジェミマ役に起用された際ウェバーに見そめられ84年に結婚、86年『オペラ座の怪人』のクリスティーヌ役に大抜擢され一躍有名になった。しかし1990年に離婚した。そして93年の『サンセット大通り』が事実上ウェバー最後の傑作であり、その後彼の才能は枯渇した。サラは彼にとって正にミューズだった。実際、Blu-rayも発売されている『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』でALWはサラを「私の音楽の天使(My Angel of Music)!」と紹介している(ここで嫌そうな表情を浮かべるサラが可笑しい)。

21世紀に入ってからのALWの作品は目を覆いたくなるほど酷いものばかり。映画『オペラ座の怪人』や、『キャッツ』でテイラー・スウィフト演じるボンバルリーナが歌う新曲もどうしようもない代物である。『キャッツ』は映画そのものも惨憺たる評判で、その年のゴールデンラズベリー(通称ラジー)賞で最低作品賞・最低監督賞(トム・フーパー)など最多6部門受賞するという不名誉を授かった。製作総指揮を担ったウェバーはこれにショックを受け、猫好きをやめて犬を飼い始めたという(参考記事はこちら)。かつて「20世紀のモーツァルト」と称賛された天才作曲家は今では見る影もなく、僕の脳内でアンドルー・ロイド・ウェバーは『サンセット大通り』作曲後、人々に惜しまれつつ急逝したことになっている。

大阪桐蔭の生徒さんたちの歌唱力は相当高く、感心することしきり。特に表題曲“The Phantom Of The Opera”でクリスティーヌは最高音hiEを出さなければならない。これを劇場で毎日歌うのは相当過酷であり、世界各国の公演で一部事前録音が使用されているのは有名な話。Bravissimo !

休憩を挟み第II部最初はベルギーの作曲家ベルト・アッペルモントの『ブリュッセル・レクイエム』。2016年3月に発生したベルギーの首都で発生した連続爆破テロ事件をテーマに、その犠牲者への想いが死者のためのミサ曲として結実した。大阪桐蔭は2023年の吹奏楽コンクールでこれを自由曲に選び、全国大会で見事金賞受賞。演奏は正確で緻密、そして伸びやかに歌い、文句なし。ただ背景の映像字幕による曲の解説があったのだが、事件の「犯人像」に全く言及していないのは片手落ちだと思う。イスラム過激派のテロ組織ISIL(イスラム国)が実行犯で、ISILは2015年パリ同時多発テロにも関与している。ISILに触れないのなら生半可な形で背景を語るべきではない。"All or Nothing"だ。

《19年の歩み》は「Mrs.GREEN APPLEメドレー」(編曲:郷間幹男)。全然聴いたことのない曲ばかりで、このバンドが昨年末に日本レコード大賞を受賞したことも今回の演奏会で初めて知った。YOASOBIの『アイドル』が優秀作品賞候補の10作に選ばれなかった時点で「茶番だ、あり得ない!所詮、所属事務所の力関係で決まってしまうんだね」と失望し、完全にレコ大に対する興味を失ったのだ。因みに調べてみるとMrs.GREEN APPLEの所属はユニバーサルミュージックでレーベルはEMI Records。大手だ。結局YOASOBIのAyaseとか米津玄師とかボカロP出身者はレコード会社(仲介業者/エージェント)を通さずインターネットから直接人気者になったわけで、業界が甘い汁を吸えないから無視する、そういうことなのだろう。大人の世界って本当に汚いよね。というわけで近いうちに大阪桐蔭が演奏する『アイドル』を是非生で聴きたい。YOASOBIとコラボした『ラブレター』も死ぬほど好きだ!

 ・ 【考察】全世界で話題沸騰!「推しの子」とYOASOBI「アイドル」、45510、「レベッカ」、「ゴドーを待ちながら」、そしてユング心理学

《野球応援・リクエストコーナー》で飛んできたボールをキャッチした聴衆が選んだのは『北酒場』『パイレーツ・オブ・カリビアン〜彼こそが海賊』(作曲:クラウス・バデルト)そしてMISIAの『アイノカタチ』。

プログラム最後は《卒業生を送る歌》『さくら』(作曲:森山直太朗)。しみじみ。

そしてアンコールは定番『銀河鉄道999』(編曲:樽屋雅徳)と『星に願いを』で〆。そこには壮大な宇宙の広がりと神秘性があった。

例年通り、充実した3時間だった。卒業生たちの未来に幸あれ!

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2024年2月28日 (水)

祝・読売演劇大賞受賞!藤田俊太郎(演出家)

第31回読売演劇大賞に演出家・藤田俊太郎が決まった。対象となった作品は『ラビット・ホール』と『ラグタイム』。詳細はこちら

また、『ラグタイム』で舞台美術を担当した松井るみが最優秀スタッフ賞を受賞した。おめでとうございます。

僕は『ラグタイム』を2023年10月5日および7日に観劇し、劇評を下記事に書いた。

 ・ 石丸幹二・安蘭けい・井上芳雄 /ミュージカル「ラグタイム」待望の日本初演!

何故アメリカ初演から日本初演まで25年掛かったのか、藤田の演出の何が凄かったのかについて詳しく述べている。ミュージカルに興味のある方はご一読ください。

また藤田が演出した他の作品のレビューは以下の通り。

 ・ 中川晃教(主演)ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」 2022.12.16
 ・ 城田優(主演)ミュージカル「NINE」 2020.12.10
 ・ ブロードウェイ・ミュージカル「ピーターパン」(+昨年の大事故について) 2017.08.15

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2024年2月14日 (水)

From Screen to Stage and back to Screen ミュージカル映画「カラーパープル」(1985年に渦巻いた壮絶なハラスメントについても語ろう)

評価:A+

1985年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『カラーパープル』は猛烈なハラスメント(いじめ/嫌がらせ)の嵐に晒された。今でこそスピルバーグは押しも押されもせぬ大監督として世間から認知されているわけだが、当時はそうでなかった。1975年に『ジョーズ』、1981年に『レイダーズ/失われたアーク《聖櫃》』、そして82年に『E.T.』を撮り爆発的なヒットを連発、同業者から激しい嫉妬を買い「あいつは娯楽映画ばかり撮っている金の亡者」的に見られていた。つまり頑なにスピルバーグ映画の芸術性は認めないぞという雰囲気がハリウッドでは支配的だったのである。例えるならAKB48や坂道シリーズ(乃木坂・欅坂→櫻坂・日向坂)でボロ儲けした秋元康が「秋豚」と蔑称され、作詞家としての彼の才能が軽んじられている日本の現状に似ているだろう。

 ・ 秋元康プロデュース・欅坂46「サイレントマジョリティー」を讃えて(あるいは、アメリカの闇)
 ・ 【増補改訂版】「君の名は希望」〜作詞家・秋元康を再評価する

『E.T.』は米アカデミー賞で作品賞・監督賞にノミネートされたが、受賞したのはリチャード・アッテンボロー監督の『ガンジー』だった。

Purple

スピルバーグはどうしてもオスカーが欲しかった。そこでアリス・ウォーカーの小説に目をつけた。しかしメイン・キャストがほぼ黒人で、白人が殆どで出てこない『カラーパープル』を白人が監督することに批判が集まった。結局アカデミー賞では作品賞を含む10部門11ノミネート(助演女優賞が重複)されたにもかかわらず、なんとスピルバーグは監督賞候補に入らなかった。そして蓋を開けてみると受賞ゼロ、全滅だった。正に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」だ。そんな風に当時のハリウッドは悪意に満ち溢れていた。結局、作品賞・監督賞を制覇したのはシドニー・ポラックの『愛と哀しみの果て』。凡庸な駄作である。

僕は『未知との遭遇 特別編』(1980)以降、スピルバーグの全映画を公開時に映画館で観ており『カラーパープル』も例外ではない。大いに気に入り、後にレーザーディスク(LD)も購入した。

ここで日本の雑誌「キネマ旬報」1986年度 外国語映画ベストテンを見てみよう。第3位が『蜘蛛女のキス』(アカデミー作品賞・監督賞ノミネート)、第6位が『カラーパープル』、そして『愛と哀しみの果て』が12位。この評価からも分かる通り、アカデミー史上最悪のミスジャッジであった。余談だがミスジャッジで思い出すのが1998年に公開された『恋におちたシェイクスピア』でグウィネス・パルトロウが主演女優賞を受賞した「とんでも事件」。この年は『エリザベス』のケイト・ブランシェットや『セントラル・ステーション』のフェルナンダ・モンテネグロが候補だったわけで、グウィネスというのはどう考えてもあり得ない選択だった。その後"MeeToo"運動を経て、『恋におちたシェイクスピア』のプロデューサーだったハーベイ・ワインスタインが告発され逮捕(禁固刑は合計39年を言い渡された)。グウィネスが証言するかどうかが焦点となり、遂に彼女が受賞したからくりが判明したというわけ。閑話休題。

 ・ 映画「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」 2023.02.07

漸くスピルバーグ映画がアカデミー作品賞・監督賞を受賞するのは『シンドラーのリスト』(1993)である。これはホロコーストを描いた作品であり、ハリウッドの重役にユダヤ人が多いことは周知の事実(ワインスタイン兄弟もユダヤ人)。有無を言わせぬ鉄板ネタであった。

『カラーパープル』はウーピー・ゴールドバーグの映画デビュー作で、僕はこれでアカデミー主演女優賞を受賞すべきだったと今でも思っている。結局彼女は『ゴースト/ニューヨークの幻』の胡散臭い女霊媒師役で助演女優賞を受賞するのだが、まぁこれは「あの時あげられなくてゴメンね。これで堪忍して」といった残念賞的意味合いが強かった。因みにウーピーはTV界のEmmy(エミー賞)、音楽界のGrammy(グラミー賞)、映画界のOscar(アカデミー賞)、そして舞台のTony(トニー賞)というエンターテイメントの最高峰に位置する栄冠を4つとも受賞したEGOTであり、現時点でEGOTを達成したのはオードリー・ヘップバーン、リチャード・ロジャース、メル・ブルックス、アンドリュー・ロイド・ウェバー、ジェニファー・ハドソン、ジョン・レジェンド、エルトン・ジョンら19人しかいない。

『カラーパープル』は2005年にブロードウェイでミュージカル化され、その10年後にシンシア・エリヴォ、ジェニファー・ハドソン主演で再演。第70回トニー賞ではミュージカル・リバイバル作品賞とミュージカル主演女優賞(シンシア・エリヴォ)の2冠に輝いた(『ハミルトン』が11部門攫った年だ)。シンシア・エリヴォは2019年に映画『ハリエット』に出演しアカデミー主演女優賞にノミネートされ、主題歌も歌った。現在はミュージカル映画『ウィキッド』を撮影中(エルファバ役)。

今回の映画はこのブロードウェイ版に基づいている。製作にスティーヴン・スピルバーグ、クインシー・ジョーンズ(前作で音楽を担当)、オプラ・ウィンフリー(前作でソフィアを演じアカデミー助演女優賞候補に)らが名を連ね、製作総指揮には原作者アリス・ウォーカーの名前も。監督はブリッツ・バザウーレ、ガーナ出身だそう。上映時間141分で、なんと85年版の154分より短い!

製作陣にウーピーの名前がないから彼女は本作に思い入れがないのかな?残念だなと思っていたら、本編を観るとカメオ出演していたのでむっちゃ嬉しかった。

率直な感想。スピルバーグ版よりもミュージカル版の方が良かった。上映時間が短いことからも分かる通り展開が早いし、何よりミュージカル・シーンが素晴らしい。歌も、踊りも。ゴスペル(アフリカ系アメリカ人によって生み出された教会音楽)とかブルースが、黒人たちの辛い労働・日常生活から生まれた「叫び」であることがとても良く理解出来る仕組みになっている。本作にとってミュージカルという形式が最も相応しかった、と言えるだろう。

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2024年2月 8日 (木)

三浦宏規(主演)フレンチロックミュージカル「赤と黒」(+フランスのミュージカル史について)

1月6日(土)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティへ。スタンダール原作のミュージカル『と黒』を観劇。

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作曲はウィリアム・ルソー&ソレル、演出はジェイミー・アーミテージ。2016年にパリで初演された。ウィリアム・ルソーは『1789 〜バスティーユの恋人たち〜 』にも楽曲を提供している(こちらのメイン作曲家はドーヴ・アチア)。

近年フランスでミュージカルは盛んに制作されており、代表的なものとして『壁抜け男』(1997)、『ノートルダム・ド・パリ』(1998)、『ロミオ&ジュリエット』(2001) 、『太陽王』 (2005)、『ロックオペラ モーツァルト』 (2009)、『1789 〜バスティーユの恋人たち〜』(2012)などが挙げられる。大ヒット・ミュージカル『レ・ミゼラブル』も元々は1980年パリ初演で、英語版がロンドンで上演されたのは1985年だ。

更に源流を辿れば、ミシェル・ルグランとジャック・ドゥミ監督のコンビによるミュージカル映画『シェルブールの雨傘』(1964)、『ロシュフォールの恋人たち』(1967)、『ロバと女王』(1970)にたどり着く。ミシェル・ルグランの音楽は基本的にジャズのスタイルだが、21世紀に入ってからのフレンチ・ミュージカルの主流はロックンロールである。

ちなみにアメリカやイギリスでロック・オペラが流行ったのは1960年代後半から70年代前半にかけて。『ヘアー』(1967)、『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1971)、『トミー』(1975)がその代表格。一方、今ブロードウェイで一番ホットなのは天才リン=マニュエル・ミランダ(『イン・ザ・ハイツ』『ハミルトン』)の出現によりヒップホップ系かな。ただ日本人にとってこのジャンルは最先端過ぎて全くついて行けてないので(『ハミルトン』の上演すら実現していない)、フレンチ・ミュージカルあたりがちょうどいい塩梅なのだろう。日本語ラップが(少なくともミュージカル界で)定着するのに、まだ20年位はかかりそう。

出演は三浦宏規、夢咲ねね、田村芽実、東山義久、駒田一ほか。三浦は『テニスの王子様』『刀剣乱舞』など2.5次元ミュージカル出身で、イケメンで歌も上手かった。夢咲ねねは宝塚の娘役時代から大好きな女優で、美人だし文句なし!シンプルな装置で舞台転換が早く、演出も良かった。

本作は宝塚星組が礼真琴主演で先駆けて上演したのだが、宝塚版より今回の方に軍配を上げる。ちなみに宝塚歌劇には柴田侑宏が台本を執筆した別バージョンの『と黒』があり1975年に初演されている。菊田一夫版(1957年初演)もあるらしい。知らんけど。

今回鑑賞しながら「と黒」とは何を象徴しているのか?と色々考えを巡らせた。〈情熱愛欲↔信仰・禁欲〉でもあるだろうし、〈血の革命革新(radical) ↔権力・保守(conservative) 〉でもあるだろう。第一幕はブルジョワ・中産階級篇で、第二幕は貴族階級篇という構成になっているのが面白い。しかし、貧しい平民出身の野心家ジュリアン・ソレルはどちらの階級にも受け入れられず、弾き飛ばされてしまう。実に重層的で奥深い作品だ。

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2024年2月 6日 (火)

古川雄大・柚希礼音・真風涼帆(出演)ミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』

梅田芸術劇場でミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』を観劇した。

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1月3日(水・マチネ)の役替り

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1月7日(日・ソワレ)の役替り

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脚本・演出は『エリザベート』『グレート・ギャツビー』『ポーの一族』で知られる小池修一郎、作曲は『1789 -バスティーユの恋人たち-』で小池と組んだドーヴ・アチア。モーリス・ルブランの小説「怪盗ルパン」シリーズを下敷きに、アルセーヌ・ルパン(古川雄大)とカリオストロ伯爵夫人(Wキャスト:柚希礼音/真風涼帆) 、令嬢クラリス(真彩希帆)、シャーロック・ホームズ(小西遼生)をはじめとした様々な登場人物たちが財宝を巡って様々な駆け引きを繰り広げる。さらに悪党(Villain)ボーマニャン役を立石俊樹が演じる。

年4月に宝塚大劇場で上演された小池修一郎(作・演出)『カジノ・ロワイヤル』のレビューで、「これはジェームズ・ボンドではなく内容的にアルセーヌ・ルパンものであり、宮崎駿の『ルパン三世 カリオストロの城』を彷彿とさせる作品だ」と書いた(ルブランの小説『カリオストロ伯爵夫人』についても言及)。

 ・ 真風涼帆/潤 花(主演)宝塚宙組「カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~」は駄作!(原作小説/映画版との比較あり) 2023.04.06

今回の新作の制作発表が行われたのはこの後であり、「やっぱり小池はアルセーヌ・ルパンや『カリ城』がやりたかったんだ!」と僕の直感が正しかったことが判明した。正直『カジノ・ロワイヤル』は救いようのない駄作だったが、本作はむっちゃ面白かった。2回観ても全く飽きない。

小池作品には『グレート・ギャツビー』『NEVER SAY GOODBYE』など〈文学系〉、『ヴァレンチノ』『カサブランカ』『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』など〈映画系〉、さらに『蒼いくちづけ』『ポーの一族』など〈耽美系〉と色々あるが、本作が一番近いのは98年宝塚宙組公演の『エクスカリバー 〜美しき騎士たち〜 』だろう。ズバリ〈脳天気/アホ系〉。エンターテイメント要素が満載、理屈抜きでディズニーランドのアトラクション的楽しさが味わえる。

テンプル騎士団の残した財宝の在り処を示す、生命の樹=メノラー(燭台)の失われた7本の枝を探すというプロットのバカバカしさ!!最高に可笑しい。アーサー王と円卓の騎士が聖杯を探す旅に出る物語を想起させ、その意味でエクスカリバーに繋がっているし、最後に聖杯を守る騎士が登場する『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』にも近い雰囲気と言えるだろう。つまり正真正銘冒険活劇だ。

カリオストロ伯爵夫人は〈男装の麗人〉という設定で登場するので、元・宝塚歌劇団の男役トップスターだった柚希と真風はピッタリ。甲乙つけ難かった。タンゴを踊る場面もあり格好いい!

また一幕最後はルパンがピカピカ光る蝶ネクタイ型ゴンドラに乗り空中浮遊する場面もあってサービス精神旺盛。『ポーの一族』の演出を想い出した。

再演があれば是非また観たい。

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