子供の情景

2019年12月25日 (水)

「ターミネーター:ニュー・フェイト」のにおける抹殺計画の杜撰さ

評価:B

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公式サイトはこちら

製作・ストーリーとしてジェームズ・キャメロンが復帰、「ターミネーター2」の正式な続編である。リンダ・ハミルトンも戻ってきた。

悪くない。ティム・ミラー監督のアクション演出も冴えている。ただ正直言って、「ターミネーター」はシリーズ化に向いていない素材だなとつくづく思った。物語はT2で完結しており、続きは要らない。

未来の英雄(人間)を倒すために、殺人ロボットが過去に送り込まれ、ヒーローが生まれる前の母親、あるいは幼少期の彼自身を襲撃しようとする。その計画を阻止すべくヒーロー側も守護者(人またはロボット)を派遣する。ーというプロットの繰り返し。T1→T2の時はアーノルド・シュワルツェネッガーが敵(attacker)→味方(defender)に反転することに新鮮味があった。しかし柳の下に三匹目のどじょうはいない

あと今回気になったのは抹殺計画の杜撰さである。まずターゲットを確実に仕留めようと思えば、ターミネーターを単独に送り込むのではなく、10体一気にタイムスリップさせればよい。チーム・プレイだ。アメリカの特殊部隊SWATみたいに。それと映画「ゼロ・ダーク・サーティ」で描かれていたビン・ラディン暗殺のように、襲撃するのは深夜が基本である。相手の寝込みを襲う。夜ならアジトにいる可能性が高い。そして電源をシャットダウンすれば、暗闇で俊敏に動けず、退路を断つことが出来る。狙撃手は暗視装置があるから問題ない。

だから今回の敵がマヌケなのは昼にターゲットの家を訪ねていることに尽きる。外出している可能性が高いじゃん?すると次はどこに出かけているかを探り、追わねばならなくなる。全くもって労力の無駄である。未来のコンピューター・システムは経験値が低いのか、それとも単なる馬鹿なのか?

それとシュワちゃんはロボットなのに、年老いていることについての説明が一切なかった。何で??

小学校2年生の息子と鑑賞。観終わって「面白かった!」と興奮していた。

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2019年12月24日 (火)

鶴瓶・仁智「笑福亭に乾杯!」&「笑福亭鶴笑一門会 in 町家」

12月15日(日)神戸喜楽館@新開地へ。

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  • 笑福亭たま:ぐつぐつ(柳家小ゑん 作)
  • 笑福亭鶴二:御神酒徳利
  • 笑福亭仁智:いくじい(仁智 作)
  • 笑福亭鶴笑:SDGsを入れた環境落語「ゴミ怪獣の地球破壊」
  • 笑福亭鶴瓶:徂徠豆腐

「ぐつぐつ」はおでん達が主人公の奇想天外な新作。面白い!

「御神酒徳利」は二つの型があり、鶴二は柳家小さんが演っていた別名「占い八百屋」の方のようだ。

「いくじぃ」は嘗て、やんちゃをしていた「源太と兄貴」シリーズの後日譚。仁智の新作は庶民的で、「寅さん」シリーズのような味わいがある。

鶴笑のパペット落語の演出は結局、「立体西遊記」「義経千本桜」「時ゴジラ」などみんな同じで、今回の「ゴミ怪獣の地球破壊」もご多分に漏れないのだけれど、まぁ何度観ても爆笑だわ。ちなみにSDGsって「持続可能な開発目標」のことなのだそうだ。詳しくは外務省のサイトへ。

鶴瓶の「徂徠豆腐」を聴くのはこれが三回目。

12月21日(土)神足ふれあい町家@長岡京へ。

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  • 笑福亭鶴笑:絵本読み聞かせ
  • 笑福亭笑生:桃太郎
  • ぱふく亭レモン:住吉駕籠
  • 笑福亭鶴笑:ラーメン屋
  • ぱふく亭パペット:狸の札
  • 笑福亭笑利:八五郎坊主

笑福亭笑生(しょうき)は以前、福井県住みます芸人「クレヨンいとう」(吉本興業所属)として活躍していたらしい。現在37歳。この11月30日に福井で命名式と落語家デビューを果たしたばかり。

ちょっと残念だったのは鶴笑のパペット落語がなかったこと。チラシには笑福亭つる吉とあったが、恐らく笑生の出演が急遽決まったため、取り止めとなったのだろう。絵本の読み聞かせは、「おおかみだあ!」や「つきよのかいじゅう」が取り上げられた。鶴笑の絶妙な語り口で、会場の子供たちは大喜び。沸きに沸いた。

「ラーメン屋」は五代目古今亭今輔の噺で、五街道雲助はこれを改作し「夜鷹そば屋」として演じている。いや〜しかし、人情噺よりもパペット落語が観たかった。

トリの笑利もパペットを使わない古典落語だったので意表を突かれた(チラシと違う)。でも上手かった。

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2019年8月29日 (木)

ミュージカル映画「ロケットマン」とハグ問題について。

評価:A  公式サイトはこちら

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映画「ボヘミアン・ラプソディ」のレビューで僕は次のように書いた。

主演のラミ・マレックと衝突していたブライアン・シンガー監督が感謝祭の休暇後に現場に戻らなかったことで、撮影終了2週間前にシンガーは解雇された。後任のデクスター・フレッチャーが監督を引き継ぐまでの間、撮影監督ニュートン・トーマス・サイジェルが監督代行を務めたという。(中略)しかし出来上がった作品はそんな混迷を微塵も感じさせない、極めて高い完成度に到達しており、心底驚いた。奇跡と言ってもいい。

エルトン・ジョンの半生を描く「ロケットマン」を観て、漸く「ボヘミアン・ラプソディ」が傑作に仕上がった理由が了解出来た。あとを継いだデクスター・フレッチャーが極めて優秀だったのである。

「ボヘミアン」でクイーンの曲が流れるのは主にコンサートとレコーディング・シーンである。しかしフレッチャーは「ロケットマン」でやり方をごろっと変えた。エルトン・ジョンだけではなく彼を取り巻く人々も歌い、踊る。本格的ミュージカル映画仕立てとなっている。エルトンは(その内面はともかく、見かけ上)ド派手な人なので、イリュージョンに満ちた演出法がピタッとはまった。タロン・エガートンの歌唱もパーフェクト!

上記事で映画のクライマックスで歌われる「黄昏のレンガ道」(Goodbye Yellow Brick Road,1973) について極めて重要なことを書いた。併せてお読み頂きたい。

劇中、繰り返し少年期のエルトンが登場する。「ハグして」と父親に求めてもそれに応えてくれなかったという悲しみが、癒やされることのない心の傷としてずっと尾を引く。本作を観ながら真っ先に想い出したのがエリア・カザン監督ジェームズ・ディーン主演「エデンの東」(原作者はノーベル文学賞を受賞したジョン・スタインベック)である。主人公キャルは「父に愛されていないのではないか」と苦悩する。一方、兄アロンは父から期待され祝福されており、アロンに対するキャルの嫉妬心が物語を転がす原動力となる。これは旧約聖書の「創世記」に書かれたカインとアベルという兄弟の確執がベースになっている。神ヤハウェに愛されたアベルを恨んだカインは弟を殺してしまう。人類最初の殺人である。ヤハウェはカインをエデンの東に追放する。

あと映画「フィールド・オブ・ドリームス」と、山田太一原作・大林宣彦監督の「異人たちとの夏」を観て、父親というものは息子と絶対にキャッチボールをしておくべきだということを学んだ。確かあれは「パンダコパンダ」DVDの特典映像だったと記憶しているが、宮崎駿の息子・吾朗がインタビューに答えて、少年時代に父の仕事が忙しくて彼が起きている間に帰宅することが全くなく、「キャッチボールも一度もしてもらえなかった」と恨みつらみを滔々と並び立てていたのがとても可笑しかった。いやいや吾朗くん、父親があの偉大な宮崎駿じゃなかったら、君がアニメーション映画を監督するチャンスを与えられるなんて一生なかったろうよ。感謝なさい。

というわけで全国のお父さんたち。息子が幼いうちにしっかりハグして、キャッチボールをしてあげておこう。そうじゃないと30年経っても恨まれ続けるハメになるから。

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2019年8月26日 (月)

「シシ神の森」屋久島旅行記

8月3日(土)から7日(水)まで4泊5日で鹿児島県・屋久島に旅をした。

初めて屋久島を訪れたのは1997年夏。映画「もののけ姫」が公開された年である。宮崎駿監督とスタッフがロケハン時に泊まった民宿「水明荘」に僕も宿をとった。監督の色紙が飾られていた。往復8時間かけて縄文杉まで歩いたのだが、その時の旅の記録はここに書き記した。「スタジオジブリ」HPにも掲載された。あと帰りの屋久島空港の待合で、たまたま僕の隣に立川談志が座っていたのも懐かしい思い出だ。その時僕は談志の落語を聴いたことがなかったので話しかけたりしなかったが、付き人に対して何かブツブツ小言を並べていた。

今回宿泊したのはJRホテル屋久島。とろみのある天然温泉が極上だった。和歌山県の龍神温泉、愛媛県今治市にある鈍川温泉など、「美人の湯」と呼ばれる温泉は数あれど、僕が入った中では屋久島の泉質が最高だった。

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上の写真はホテルの展望風呂付き客室からの眺め。絶景のオーシャン・ビューである。食事も美味しかった!

それにしても可笑しいのは、屋久島には鉄道が走っていないんだよね。何故JRホテルがここに??

到着初日は空港近くでレンタカーを借りてヤクスギランドと、その近くにある紀元杉へ。

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屋久杉は何本もの太い縄を寄せ集め、束ねたような印象で、どこか注連縄(しめなわ)を想起させる。

「屋久島はひと月に35日雨が降る」と表現したのは林芙美子の小説「浮雲」である。成瀬巳喜男監督の映画版も日本映画史に燦然と輝く傑作だ。空港では晴れていたのに山中のヤクスギランドに着く頃は土砂降り。また海岸線に車で降りてくると道路はカラッと乾いていた。

旅の2日目は丸一日、ガイドを雇い沢登りを愉しんだ。屋久島の川の水はとてもきれいで、鮎も泳いでいる。ヘルメット、プロテクター、ライフジャケットを身に着けて、小学校2年生の息子は何度も高い岩の上から川に飛び込んでいた。その光景を見ながら映画「明日に向って撃て!」とか「ヤング・ゼネレーション」「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」の一場面を想い出した。

お昼はガイドの人が森の中でパエリアを料理してくれた。有頭海老やムール貝の入った本格的なもの。今まで食べたパエリアの中で一番の味だった。でも同時に飲んだインスタントの味噌汁も美味しかったので、シチュエーションの効果も大きいのだろう。

3日目、白谷雲水峡を歩く。

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今にも森の妖精〈こだま〉が出てきそうな「苔むす森」。

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ちなみに〈こだま〉は漢字で〈木霊〉と書き、樹木に宿る精霊のことである。「もののけ姫」が大好きな人はここと、縄文杉を併せて訪れたい。

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二股の「くぐり杉」である。

大川(おおこ)の滝は「日本の滝 百選」にも選ばれている。

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実にダイナミック。すぐ近くまで行けて、水飛沫を全身に浴びた。

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最終日は千尋(せんぴろ)の滝を訪れた。

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左側にある巨大な花崗岩 の岩盤が壮観である。

そしてトローキの滝へ。海に直接水が落ちる海岸瀑である。

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屋久島は山・川・海と大自然を満喫出来る。あと昨年の沖縄・宮古島でも感じたのだが、関西より断然涼しい。ガイドの人も「屋久島は避暑地です」と断言していた。日本の夏は南の島に限る!

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2019年6月14日 (金)

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(うんちくあり)

評価:B+

公式サイトはこちら

まずは映画レビューを集計する北米のサイトRotten Tomatoes(腐ったトマト)をご覧頂きたい。

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プロの評論家の肯定的意見が40%しかなく、「腐った(Rotten)」評価を与えられているが、一般観客の評価は85%と極めて高い。これだけ両者で差異が出ることは希少である(「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」の場合、評論家の評価が91%で「新鮮(Fresh)」、一般客が44%で真逆の結果になっている)。

プロット・脚本に疵があることは確かである。「どうしてそうなるの?」と登場人物たちの行動原理に首を傾げてしまう場面も多々ある。しかし本作の主眼はあくまで〈怪獣プロレス〉〈怪獣バトル〉であり、はっきり言ってしまえば人間ドラマなんて二の次だ(どうでもいい)。日本では到底成しえないVXF技術の効果も抜群で、当初の目的は見事に達成出来ていると言えるだろう。そもそも本家・東宝のゴジラ・シリーズですら、1954年の第1作は掛け値なしの傑作だが、キングギドラのデビュー作「三大怪獣 地球最大の決戦」(64)だって、「怪獣大戦争」(65)だって、本多猪四郎(監督)×円谷英二(特技監督)のコンビは変わらないものの、脚本はグダグダである。

本作に於けるゴジラ・モスラ・ラドン・キングギドラの大乱闘には童心に帰ってワクワクさせられた。怪獣たちは神々しいまでに美しい。マイケル・ドハティ監督の怪獣愛が作品から滲み出ており、どうしても評価に下駄を履かせざるを得ない。伊福部昭のテーマは勿論のこと、古関裕而が作曲し、ザ・ピーナッツが歌った「モスラの歌」まで流れてきたのには心底びっくりした。おまけに(何の意味もなく)チャン・ツィイーが双子という設定になっているではないか!!さらに第1作へのオマージュとしてオキシジェン・デストロイヤーは登場するし、芹沢博士(渡辺謙)はあんなこと(←ネタバレ回避)するしで、いやはや参りました。あとラドンが飛び立つところで、ラドンの影が街並みを横切る場面は「(怪獣オタクの心を)わかってるぅ〜」と嬉しくなった。

ここでうんちくを傾けておくと、「モスラ」の原作小説「発光妖精とモスラ」を執筆したのは中村真一郎・福永武彦・堀田善衛という錚々たる文学者たちである。福永の息子が芥川賞作家の池澤夏樹。蛾を意味する英語のMothを名称に取り入れた。元祖ラドンは阿蘇山の火口に生息しており、朱雀(火の鳥)のイメージが重ねられていると思われる。

またキングギドラの原型は「古事記」「日本書紀」に記載されたヤマタノオロチ(八岐大蛇である。円谷英二は八岐大蛇が登場する「日本誕生」(1959)で培った技術をキングギドラ開発に投入した。そして庵野秀明(総監督・脚本)による 「シン・ゴジラ」で決行されたヤシオリ作戦は、スサノオ(須佐之男)が八岐大蛇を退治する際に酔わせるために用いた酒「八塩折之酒(やしおりのさけ)」に由来する。

モンスターやSF映画にはしばしばマッドサイエンティスト mad scientist(常軌を逸した科学者)が登場する。その原型であり、最も有名なのはメアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」のヴィクター・フランケンシュタインだろう。他に「博士の異常な愛情」のストレンジラブ博士、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のエメット・ブラウン博士(通称ドク)がいる。「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」にもマッドサイエンティストが登場するのだが、極めてユニークなのは女性だということである。これは僕が知る限り、映画史上初なのではなかろうか?新機軸を打ち出したと言っても過言ではなかろう。

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2019年4月17日 (水)

平成最後の吉野の桜

4月13日(土)奈良県の吉野山を訪ねた。十数年前に関西に引っ越してきてから毎年春に吉野に行くことが我が家の恒例となっているが、昨年は日程が合わず二年ぶりの再会となった。見事に満開であった。

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桜といえばまず現代人はソメイヨシノ(染井吉野)を思い浮かべるが、あれは江戸時代に園芸用に品種改良されたクローン植物であり、吉野とも一切関係がない(お江戸の植木屋が憧れからつけた名称である)。和歌に登場する「桜」は山桜を指す。

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「古今和歌集」から桜が詠まれた歌を紹介しよう。

桜花咲きにけらしなあしひきの山のかいより見ゆる白雲  貫之
(桜がどうやら咲いたらしいよ。山の谷間から見える白雲は)

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み吉野の山べにさける桜花雪かとのみぞあやまたれける  友則
(吉野の山辺に咲く桜は雪ではないかとつい見違えてしまった)

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ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ  友則
(陽の光がおだやかな春の日に、どうして花はあわただしく散るのだろう)

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吉野を愛した西行の歌に、

願わくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月の頃
(願うことなら、旧暦2月15日-満月の頃、満開の桜の下で死のう)

とある。旧暦2月15日は釈迦入滅の日で、現在の4月初旬頃と考えられる。

武士を捨てた西行は法師となり、吉野の奥千本に今もある西行庵で3年間侘び住まいをしたと伝わる。

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西行にはまた、次のような歌もある。

吉野山昨年(こぞ)の枝折(しをり)の道かへてまだ見ぬ方の花をたづねむ

しをり:木の枝を折って道しるべとすること。

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さらに、

世の中を思へばなべて散る花のわが身をさてもいづちかもせむ
(この世の中について考えると、全ては散る花のように無常で儚い。ならばさて、我が身を一体どこへ向かわせたらよいものか)

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吉野の桜は見る人それぞれに死生観に立ち返らせ、物思いに耽らせる。そんな春の日の、穏やかなひとときであった。

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2019年4月12日 (金)

ワンコイン・プレ・レクチャー〈これが『オン・ザ・タウン』だ!〉 by 佐渡裕

4月4日(木)兵庫県立芸術文化センターへ。レナード・バーンスタインのミュージカル「オン・ザ・タウン」上演を前にしたプレ・レクチャーを聴講する。講師は兵庫芸文の芸術監督でレニーから薫陶を受けた佐渡裕。お代は500円ポッキリ。

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佐渡がレニーに出会ったのは1985年。大阪の旧フェスティバルホールでバーンスタイン/イスラエル・フィルによるマーラー:交響曲第9番の伝説的名演を聴いたのだそう。「自由で創造的だった」と。

87年にはタングルウッドで直接指導を受けた。その時の貴重なビデオ映像も見せてくれた。この時英語が喋れず、劣等感を感じていた佐渡に対してレニーは「君は能を知っているか?」と語りかけてきた。お能のマスクの数の話や「俺は3時間じっくり鑑賞したけれど、普通の西洋人だったら耐えられないはずだ」と言い、「例えば君と握手するとしよう。能だとこんな風にゆっくりした動きになる(と実演)。ここに高いエネルギーが集積する。マーラーのアダージョも同じように振りなさい」

佐渡曰く、レニーは「破天荒な人だった」と。ここで清水華澄(メゾソプラノ)、白石准(ピアノ)の演奏で1942年に作曲された歌曲『私は音楽が嫌い』(I Hate Music)が披露された。10歳の少女が作詞したものだそうで、ユーモラスでチャーミングな楽曲。

バーンスタインの父はウクライナ系のユダヤ人移民で理髪店を営んでいた。両親は音楽と無関係の暮らしをしており、10歳の時に叔母の家でピアノに出会った。父は当然、音楽家の道に進むことに反対した。

1943年、急病で降板したブルーノ・ワルターの代わりにニューヨーク・フィルの指揮台に立ち(ラジオでも放送された)、一大センセーションを巻き起こした。それまでアメリカの主要交響楽団のシェフは皆ヨーロッパ出身者で(クーセヴィツキー・ロジンスキ・トスカニーニ・セル・ストコフスキー・オーマンディ・ライナーなど)、アメリカ人はヨーロッパに対する強いコンプレックスを持っていた。そこに初めて自国生まれのスーパースターが誕生したのである。

佐渡が師に「今まであなたが指揮したコンサートのうち、一番思い出深いのはどれですか?」と訊ねたことがあった。ウィーン・フィルとのベートーヴェン・チクルスや、1979年10月ベルリン・フィルとの唯一の共演となったマーラーの9番、89年ベルリンの壁崩壊記念コンサート(東西ドイツ・フランス・イギリス・アメリカ・ソ連の6つのオーケストラに所属する混成メンバー)でのベートーヴェン第九などを佐渡は予想していたが、答えは意外にも米CBSでテレビ中継された〈ヤング・ピープルズ・コンサート〉だった。その時点で佐渡は〈ヤング・ピープルズ・コンサート〉を見たことがなかった。現在ではDVDとBlu-rayが発売されており、つい先日我が家にもAmazon.co.jpからVol.1が届いて小学校一年生の息子と一緒に視聴しているところである(内容はため息が出るくらい素晴らしい!ただし日本語字幕が無茶苦茶。例えば「オーケストレーション」が「指揮」と訳されている。だから寧ろ英語字幕を出して見ている)。間もなくVol.2も市場に出る。

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結局その後日本のテレビで始まった音楽番組「オーケストラがやってきた」(山本直純司会)や「題名のない音楽会」(黛敏郎司会)も、〈ヤング・ピープルズ・コンサート〉をお手本にしている。佐渡が「題名のない音楽会」の司会者を引き継いだのも、恩師への深い思いがあったからである。また佐渡時代はテーマ曲としてレニーのミュージカル『キャンディード』序曲が使用された(現在の司会者は元劇団四季の石丸幹二)。

また1985年「広島平和コンサート」で自作の交響曲 第3番『カディッシュ』を振った時、原爆資料館を見たときの衝撃についてリハーサルで若い演奏家たちに熱く語るレニーの姿を捉えた映像も見せてくれた。

『ウエストサイド物語』について。冒頭口笛で奏でられる〈ソードーファ#〉のモティーフ。〈ファ#〉が「居心地が悪い」と。そこに若者たちの「抑えられないエネルギー」があり、これは♪『マリア』や♪『クール』などのナンバーにも登場する。

また『オン・ザ・タウン』の聴きどころについて、佐渡は「Swing」だと。

そして再び清水と白石が現れ、『オン・ザ・タウン』から♪『私は料理も上手よ』(I Can Cook too)が歌われて、お開きとなった。

夏の上演(7月12日-21日)がとても愉しみである。

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2019年3月30日 (土)

小豆島へ

3月22日(金)から25日(月)にかけて淡路島、小豆島、香川県を旅した。

香川では勿論、うどん巡り。最近のお気に入りは「釜あげうどん 長田in香の香」@善通寺市。以前釜あげうどんといえば〈東のわら家、西の長田〉と称される時代があったが(麺通団の書「恐るべきさぬきうどん」全盛期)、今や「香の香」こそが〈釜あげうどんの王者〉であることは論を俟たない。そのやや濃いめの塩味に中毒性がある。あと今回初めて行った「うどん 一福(いっぷく)」@高松市も細麺で旨かったなぁ!土曜日だったが、14時には麺がなくなり営業終了となった。

小豆島のお昼は井上誠耕園直営の カフェレストラン「忠左衛門」でいただいた。下の写真は「忠左衛門」からの眺め。

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オリーブ牛のハンバーグ、パエリア、蒸し牡蠣などが美味しかった。オリーブの風味が絶品で、パンを浸しても、サラダにかけても旨味を増す。

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小豆島の日の出である。

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朝はオリーブ公園へ。

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ここは実写版「魔女の宅急便」(2014年、清水崇監督)ロケ地で、ギリシャ風車がある。

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また〈グーチョキパン屋〉のロケセットが移築され、「雑貨 コリコ」に。

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下写真のような奇妙なオブジェも。

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オリーブ公園から渡し船で二十四の瞳映画村へ。

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小豆島といえば壺井栄原作・木下恵介監督の映画「二十四の瞳」(高峰秀子主演)と、角田光代原作・成島出監督「八日目の蝉」(永作博美・井上真央主演)がなんと言っても有名。そのロケセットがここに保存されている(「二十四の瞳」は田中裕子主演リメイク版の方)。ここからの海の眺めは最高!さすがしっかりしたロケハンがされている。

また宿泊した小豆島国際ホテルは海に望む部屋風呂がなんとも心地よく、癒やされた。

小豆島は手延べそうめんも有名。「八日目の蝉」の主人公は逃亡の果てに小豆島にたどり着き、素麺屋で働くのだ。

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2019年3月15日 (金)

アカデミー長編アニメ映画賞&アニー賞受賞「スパイダーマン:スパイダーバース」

アカデミー賞の長編アニメーション映画部門及びアニー賞で作品賞を制覇した「スパイダーマン:スパイダーバース」を小学校1年生の息子と一緒に観た。

評価:A+

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僕は基本的にアメコミ映画が好きじゃない。ヒーローなんて胡散臭い存在だとしか思わない。しかし何故か「スパイダーマン」はサム・ライミ監督の三部作、アンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンが共演した「アメイジング・スパイダーマン」二部作(監督はハリウッド実写版「君の名は。」の白羽の矢が立ったマーク・ウェブ!)、リブートされた「スパイダーマン:ホームカミング」を全て観ていて(自分でもその理由が判らない)、本作が何と7本目になる。そして「スパイダーバース」がずば抜けて一番面白かった!

マルチバース(multiverse)の話である。宇宙(universe)が1つ(uni)ではなく、多数(multi)である可能性を考慮し、それら数多くのuniverseの集合体を指す言葉だ。この「宇宙」の外に別の「宇宙」があるかも知れないと現在、多くの物理学者たちは考えている。なお「宇宙」の「宇」は「四方上下」(三次元空間全体)、「宙」は「往古来今」(過去・現在・未来の時間全体)を意味し、「宇」は空間的広がり、「宙」は時間的広がりに対応し、英語におけるspace-timeと同義である。

パラレルワールド(平行世界)と言い換えても良いだろう。時空が歪み、様々な「宇宙」からスパイダーマンたちが一箇所に集結するというアイディアが秀逸である。

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そもそも「マーベル・シネマティック・ユニバース」(Marvel Cinematic Universe)という概念もスーパーヒーローが共有する架空の世界(宇宙)を意味しており、我々のいる宇宙や、マーベル・コミックの描く世界とも別物である。

本作が斬新なのは3DCGと2Dの融合である。基本的にはCGアニメーションだが、アクションシーンで突如擬音が吹出しで文字化され、コミックス仕様に一瞬変化するのだ。あと背景が粒立っており、紙面の質感を意識している。その志は高い。2002年に設立されたソニー・ピクチャーズ アニメーションはエポックメイキングな作品を創り出した。

アカデミー長編アニメ映画賞は2012年の「メリンダとおそろしの森」から17年「リメンバー・ミー」まで6年連続でディズニーとピクサーが交代で独占し続けてきた。そこにソニーが風穴を開けたことはデカイ。さぁ、来年は日本から新海誠「天気の子」が殴り込みをかけるゾ!大いに期待したい。

 

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2019年2月 6日 (水)

イルミネーション「グリンチ」とディズニー「シュガー・ラッシュ:オンライン」

「グリンチ」

評価:B 公式サイトはこちら

Grinch

「怪盗グルー」シリーズで脇役のミニオンが大人気になったように(スピン・オフも製作された)、イルミネーション・エンターテイメント(ユニバーサル・スタジオの子会社)作品の特徴は、精巧に組み立てられたプロットというよりは、寧ろキャラクター重視という色合いが濃い。特に「SING/シング」。

「グリンチ」も例外ではなく、話の面白さよりもキャラが立っているなぁという印象。

ドクター・スースによる原作絵本は2000年にジム・キャリー主演で実写映画化もされている。

本作を観ながら感じたのは、これってディケンズの「クリスマス・キャロル」をベースにしているんじゃないか、ということ。頑固者の初老の男がクリスマス直前にふとしたきっかけで少年時代に引き戻されて、最終的に改心する物語。構造が全く同じだ。

「シュガー・ラッシュ:オンライン」

評価:A 公式サイトはこちら

Ralph

前作はアーケードゲーム(業務用ゲーム機)内のお話だったが、今回はラルフとヴァネロペがインターネットの世界に飛び出した!

脚本が練りに練られている。YouTubeとかeBayをネタにしたギャグが最高に可笑しい。またディズニー・プリンセス総出演が壮観だし、〈王子様依存型ヒロイン〉という過去の自社路線を徹底的にからかい、セルフパロディにしてしまう潔さには感服する。ディズニーもすっかり変わった。

ウォルト・ディズニーが生きていた時代を第一次黄金期とすると、ジェフリー・カッツェンバーグが築いた第二次黄金期(「リトル・マーメイド」から「ライオンキング」まで)を経て、「アナと雪の女王」「ベイマックス」など第三次黄金期をもたらした立役者は間違いなく(低迷期に解雇され後に復帰した)ジョン・ラセターである。本作でもエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねている。

しかし #MeToo 運動の余波で〈ハメられて〉、CCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)だったラセターは放逐された。ディズニー&ピクサーの前途には今、もくもくと暗雲が立ち込めている。

失脚したラセターは既にスカイダンス・アニメーションのトップに就任することが決まっており、それと前後して「トイ・ストーリー3」「リメンバー・ミー」のリー・アンクリッチ監督がピクサーを退社すると表明した。アメリカのアニメーション・スタジオの勢力地図は間もなく、すっかり塗り替えられることになるだろう。「面白くなってきやがった!」(宮崎駿「ルパン三世 カリオストロの城」より)

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