子供の情景

【増補改訂版】近・現代芸術を理解するための必読書 その2

これは、過去に書いた記事

の続編となる。今回まず、お薦めしたいのは臨床心理学者・河合隼雄による一連の著作である。

そもそも河合の名前を初めて知ったのは2016年夏に兵庫芸文で上演されたブリテンのオペラ「夏の夜の夢」について勉強している時だった。ことの詳細は下記に書いた。

河合と翻訳家・松岡和子との対談、「快読シェイクスピア」(ちくま文庫)は目から鱗の連続だった。特に「夏の夜の夢」が意識↔無意識の4層構造になっているという解釈はまるでクリストファー・ノーラン監督の映画「インセプション」みたいで新鮮だった。調べてみると河合は、村上春樹や小川洋子、遠藤周作、安部公房ら小説家、ノンフィクション作家・柳田邦男、詩人・谷川俊太郎、宗教学者・中沢新一、脳科学者・茂木健一郎ら錚々たるメンツと対談本を上梓していることが判明した。その後夢中になって彼の著作を読み漁った。

僕は生まれてこの方、2,700本以上の映画を観てきた。膨大な数だ。どうしてこれほどまでにフィクションに魅了されるのか、自分でも不思議だった。過去には次のような記事も書いた。

「博士の愛した数式」で有名な小説家・小川洋子は二十代半ばでデビューした当時、「なぜ小説を書くのですか」とインタビューで問われる度に明確な回答が出来ず、その質問が苦痛でならなかったという。しかし河合隼雄の著作を読み、物語というものの解釈に出会って彼女の目の前に立ち込めていた霧が晴れた。河合と小川の共著「生きるとは、自分の物語をつくること」(新潮文庫)に小川が書いたあとがきから引用する。

物語を持つことによって初めて人間は、身体と精神、外界と内界、意識と無意識を結びつけ、自分を一つに統合できる。(中略)内面の深いところにある混沌は理論的な言語では表現できない。それを表出させ、表層の意識とつなげて心を一つの全体とし、更に他人ともつながってゆく、そのために必要なのが物語である。物語に託せば、言葉にできない混沌を言葉にする、という不条理が可能になる。生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語を作り上げてゆくことに他ならない。

まさにこれこそが、河合隼雄から僕が学んだことである。

現在までに彼の著書を30冊読んだが、お勧めのベスト5を挙げておく。

  • 無意識の構造(中公新書)
  • 母性社会日本の病理(講談社+@文庫)
  • 昔話と日本人の心(岩波現代文庫)
  • 快読シェイクスピア 増補版(ちくま文庫)
  • 神話と日本人の心(岩波現代文庫)

「母性社会日本の病理」や「昔話と日本人の心」を読み、如何に自分がイザナギ・イザナミ・アマテラス・ツクヨミ・スサノオなど日本の神話のことを知らないかを思い知らされた。理由のひとつには学校教育で教わらないということもあるだろう。第2次世界大戦において、日本の神話は軍部に利用された。それへの反省もあり、また日本神話は天皇制に結びつくということもあって、日教組から徹底的に嫌悪され教育現場から排除された。河合がスイスのユング研究所での留学を終えて帰国してからも暫くの間、神話の話など持ち出そうものなら「この右翼め!」と袋叩きに合いそうな雰囲気だったので、口を閉ざしていたという(1960年代は安保闘争や学生運動が花盛りだった)。

しかしキリスト教を知らなければ欧米人のものの考え方を理解出来ないように、日本の神話や昔話を知らずして、日本人の深層心理、無意識の在り方に到達することなど到底不可能なのではないだろうか?「君の名は。」の新海誠監督も日本の昔話や神話、万葉集、古今和歌集などを読み、創作の参考にしていると語っている→こちら

ユング心理学を応用すれば、こんな解釈も可能だということを示したのが以下の記事である。

深層心理学は自然科学とは異なり、客観性よりも主観が大切である(故に「科学じゃない」という批判もある)。それは自己(self)の問題であり、物語の読解に実に役立つのである。

もう一つ挙げたいのはニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」だ。

フロイトやユングの打ち立てた心理学はニーチェ哲学を土台にしているし、「ツァラトゥストラ」を通して、映画「2001年宇宙の旅」「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」「攻殻機動隊」「魔法少女まどか☆マギカ」「風の谷のナウシカ」「崖の上のポニョ」「プロメテウス」「エイリアン:コヴェナント」などが何を物語ろうとしているのか、一層深く読み取れるだろう。

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ブロードウェイ・ミュージカル「ピーターパン」(+昨年の大事故について)

8月12日(土)梅田芸術劇場へ。ブロードウェイ・ミュージカル「ピーターパン」を6歳の息子と一緒に観劇。

Peter

配役は、

  • ピーターパン:吉柳咲良(10代目)
  • ウェンディ:神田沙也加
  • タイガー・リリー:宮澤佐江
  • ダーリング夫人:入絵加奈子
  • フック船長/ダーリング氏:鶴見辰吾
    ほか

スタッフは今年から一新され、演出を担当するのは「ジャージー・ボーイズ」で読売演劇大賞 優秀賞を受賞した藤田俊太郎。

僕自身は「ピーターパン」を観るのが3回目である。

実は2016年8月17日もチケットを購入し、息子と梅芸に足を運んだのだが、舞台稽古のワイヤーアクション中にスタッフの操作ミスで9代目・唯月ふうかが高さ3メートルの宙吊りから逆さまの状態で床面に落下、眼窩底吹き抜け骨折で入院するという大事故があり、公演は中止・払い戻しとなった(新聞記事はこちら)。結局その日はキッズプラザ大阪に行った。幸いなことに唯月はその後舞台復帰し、「デス・ノート」「レ・ミゼラブル」などで元気な姿を見せている。あの時はもう2度と上演されないのではないか?と危惧していたのだが、本当に良かった。

今回の主演は昨年のホリプロスカウトキャラバンでグランプリに輝いた吉柳咲良(きりゅうさやか)。13歳、中学1年生だそう。ボーイッシュな可愛い娘で、ピーターパンにピッタリ!8代目・ピーターパンを演じた高畑充希とどこか似た雰囲気があり、もしかしたら将来ブレイクするかも!?

元AKB48の佐江ちゃんは初めて生で観た。フツーに上手だった。これならミュージカル界で生き残れるだろう。

本作の魅力は何といってもフライングだ。特にカーテンコールでピーターパンが客席側に飛び、上空から魔法の粉をふりかける場面は何度観てもジーンとする。息子も気に入った様子で、帰ってからもしきりにピーターパンの話をしていた。

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ブロードウェイ・ミュージカル「アニー」

8月11日(祝)シアター・ドラマシティへ。

6歳の息子とブロードウェイ・ミュージカル「アニー」を観劇。

Annie

キャストは

  • アニー:野村里桜
  • モリー:小金花奈
  • ウォーバックス:藤本隆宏
  • ハニガン:マルシア
  • グレース:彩乃かなみ
  • ルーズベルト大統領:園岡新太郎
    ほか

演出は山田和也。

「アニー」の起源は1924年に新聞「ニューヨーク・デイリー・ニューズ」に連載された漫画"Little Orphan Annie"である。ミュージカル版は1977年にブロードウェイで初演され、作品賞など7部門を受賞した。僕はジョン・ヒューストン監督による82年の映画版を封切り当時映画館で観ている。高校生だった。またディズニーによる99年テレビ映画版(「シカゴ」「イントゥ・ザ・ウッド」のロブ・マーシャル監督)は北米版DVDで所有している。オリジナル・キャストとしてアニーを演じたアンドレア・マッカードルはミュージカル「キャバレー」(ツアー・カンパニー)のサリー役で2度来日した(僕はどちらも観ている)。またロブ・マーシャル版「アニー」の"NYC"の場面で、特別ゲストとして歌っている。

舞台版を観るのは今回が初めて。興味深かったのは大富豪ウォーバックス氏がスキンヘッドじゃなかったこと。何故なら漫画がそういう設定なんだよね。

Warbucks

ジョン・ヒューストン版(アルバート・フィニー)もロブ・マーシャル版(ヴィクター・ガーバー)も原作を踏襲していた。ただ、日本人には馴染みのない漫画なので、拘る必要は全く無いだろう。寧ろカツラだと不自然だし。

驚いたのは生オーケストラの演奏だったこと。子供向けだから当然、カラオケだと思っていた(ホリプロ「ピーターパン」はカラオケ)。子役を含めキャストのレベルも高く、製作者の本気を感じた。

あと映画やTV版でカットされた楽曲がいくつか歌われるのだが、省かれるのも宜なるかなと想った。

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尾瀬へ!

7月20日から25日にかけて、尾瀬に旅をした。尾瀬は新潟・群馬・福島の県境にある。3県のどこからでもアプローチ可能だ。

入山前日には「日本秘湯を守る会」の宿、梅田屋旅館@群馬県に泊まった。なにより温泉の泉質が素晴らしかった!

尾瀬といえば

夏が来れば 思い出す
はるかな尾瀬 遠い空
(中略)
水芭蕉の花が 咲いている
夢見て咲いている水のほとり

という、江間章子作詞、中田喜直作曲「夏の思い出」を想い出す人が多いだろう。1954年NHKラジオ歌謡で放送され、一躍有名になった。しかし水芭蕉が見頃なのは5月下旬から6月中旬まで。7月下旬はニッコウキスゲが花盛りだ。

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写真正面に見えるのが至仏山。背後には燧ヶ岳が聳えており、この二つの山に挟まれて広大な湿原・尾瀬ヶ原が広がっている。

僕が尾瀬に行くのはこれが6回目。その内訳は5月下旬に1回、盛夏に4回、紅葉の秋に1回。至仏山も燧ヶ岳にも登った。山小屋で旅人に訊ねても、ニッコウキスゲが咲き誇る7月下旬の尾瀬が一番好きという人が圧倒的に多い。水芭蕉ってね、何か地味なんよ。湿原に沢山咲いていても、直ぐに飽きてしまう。

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写真奥の白い草はワタスゲだ。ウグイスやカッコウの声が聞こえてくる。

僕にとって尾瀬はディーリアス音詩(tone poem)と密接に結びついている。特に「夏の夕べ Summer Evening」。そして「夏の歌 Song of Summer」「夏の庭園にて In a Summer Garden」などを聴くと否応なく尾瀬の風景が目の前に広がるのだ。

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2011年に東日本大震災及び福島原発事故が発生し、しばらく足が遠のいていた。実際、環境省の公表資料を見てみると2010年の総入山者数が34,7万人だったのに対し、11年には28,1万人に落ち込んでいる。15年には32,6万人にまで回復した。因みに尾瀬ヶ原には昔から東電小屋があるが、東京電力は未だ手放していなかった(→サイト「尾瀬と東京電力」へ)。

しかし6歳になる息子に「地上の楽園」尾瀬をどうしても見せたいと想い、漸く再訪する決意を固めた。

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鳩待峠から入山し、見晴にある弥四郎小屋で2泊した。上の写真は小屋の2階からの眺め。標高のせいか小屋で飲む生ビールの旨さは絶品だ。翌日は尾瀬沼へ向かって出発した。

見晴の標高が1,400mで尾瀬沼が1,660m。標高差約250mの長い上り坂となっている。途中、珍しく水芭蕉がまだ可憐に咲いている場所が一箇所だけあった。

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尾瀬沼では毎回、長蔵小屋に泊まっていた。明治23年(1890年)に建てられた、尾瀬で最も古い小屋だ。しかし今回は初めて尾瀬沼ヒュッテに宿泊。雑魚寝の長蔵小屋とは違い個室で、食事も翌日のお弁当(おにぎり)も美味しかった!風呂も快適。次回からもここを利用しよう。

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尾瀬沼近くの大江湿原。ここのニッコウキスゲの群生は尾瀬ヶ原の比ではない。10倍は下らないだろう。

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写真中央に紫色のヒオウギアヤメ(檜扇菖蒲)が見えるだろうか?

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息子も気に入ってくれたようで良かった。1日12Km(1万8千歩)歩くこともあり、自分の体力(足)にも自信を持ったようだ。

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最終日は早朝に山小屋を発ち、1時間半歩いて沼山峠に出た。バスを経て会津高原尾瀬口から新型特急リバティに乗り、帰途についた。

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怪盗グルーのミニオン大脱走

怪盗グルー・シリーズ第3弾。サブキャラクターだったミニオンたちが思いもかけぬ大人気となり、「ミニオンズ」というスピンオフ映画まで製作された。USJでは「ミニオン・パーク」が誕生し、今や完全に主役(グルー)を食っている。日本の配給会社が当初は彼らに期待していなかった事が、第1作「怪盗グルーの月泥棒」という邦題からも窺い知れる(原題はDespicable Me,Despicable Me 2,Despicable Me 3 ←3作目まで一切ミニオンという言葉が登場しない)。

Despicable

評価:A

鉄板の面白さ。文句なし。今回初登場となる双子の兄弟ドルーとグルーでひとつの人格と考えるべきだろう。悪事から足を洗い善人になろうとするグルー vs. 悪党の魅力に取り憑かれるドルーという構図。矛盾した意識、分裂した自己がそこに描かれる。

今回の敵バルタザール・ブラットの場面では80年代ポップスの使い方が絶妙。特に冒頭、ベルリン【愛は吐息のように(Take My Breath Away from "Top Gun"】→マイケル・ジャクソン【Bad】→a-ha【Take on Me】の流れには爆笑した。Take on Me】は映画「ラ・ラ・ランド」にも登場。80年代を代表する曲ということなのだろう。

バルタザールの声を当てるのはアニメ「サウスパーク」のトレイ・パーカー。実は「サウスパーク」第1シーズン 第12話に【メカ・ストライザンドの大迷惑】という傑作エピソードがあり、バーブラ・ストライザンドがゴジラみたいに巨大化し、サウスパークの町を破壊するという物語だった。何だか凄くこの映画に似ていませんか?

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映画「君の名は。」Blu-rayとティアマト彗星の軌道問題

待ちに待ったアニメーション映画「君の名は。」のBlu-ray 「コレクターズ・エディション」が我が家に届き、6歳の息子と一緒に、途中僕の解説を挟みながら早速鑑賞した。圧倒的な高画質で、IMAX版を遥かに凌駕していた(我が家は4Kテレビ)。

幼稚園児に理解出来るのか(特に3年間のズレ)?と些か不安があったが、「男の子と女の子の入れ替わりが面白かった!」と好評で、胸をなでおろした。因みに「今まで観たアニメの中で何が一番好き?」と訊ねると、「君の名は。」だそう(「太陽の王子 ホルスの大冒険」「どうぶつ宝島」「長靴をはいた猫」「空飛ぶゆうれい船」「パンダコパンダ」「カリ城」「ナウシカ」「ラピュタ」「トトロ」「魔女の宅急便」「千と千尋」「ポニョ」「バケモノの子」「アナ雪」「白雪姫」「ダンボ」「ファンタジア」「バンビ」「ピノキオ」「アラジン」「ヒックとドラゴン」「アイアン・ジャイアント」「怪盗グルーの月泥棒」「LEGO® ムービー」「ベイマックス」「ズートピア」「ソング・オブ・ザ・シー」なども観せているのだが)

さて、

上記事に書いたが、映画公開直後からティアマト彗星の軌道がニュース映像の2回目・3回目で物理学的に間違っていると話題になっていた。彗星は太陽(恒星)の重力に引っ張られてその外縁を弧を描くように曲がる筈だが、アニメの作画では太陽に到達する手前、地球(惑星)の外縁でUターンしていた。劇場で観たIMAX版も英語主題歌版でもそのままだったのだが、遂に今回発売のBlu-ray/DVDで修正された。一安心だ。

Suisei

Blu-ray「コレクターズ・エディション」は映像特典ディスクが3枚に及び、なんと9時間超えの大容量となっている。製作発表記者会見&舞台挨拶だけでも大量に収録されており、RADWIMPSの野田洋次郎がサプライズで登場し、「前前前世」をギター1本で唄ったアコースティック・バージョンや、上白石萌音(三葉)が野田の伴奏で唄う「なんでもないや」まで聴ける。

他に英語主題歌版本編、新海誠監督によるビデオコンテ全編(効果音付き、声を監督自身と、その妻で女優の三坂知絵子のふたりが入れている。「まんが日本昔ばなし」みたいなスタイル。因みに「まんが日本昔ばなし」の市原悦子は「君の名は。」で宮水一葉の声を当てている)、神木隆之介・上白石萌音・RADWIMPSによるビジュアルコメンタリー全編(スプリット画面でコメンテーターの表情も見れる)、本編映像に未使用音声をのせた音声クリップ、サントリー天然水CM、スパークル [original ver.](新海誠監督が新たに編集したMusic Video。映画本編にない新規カットあり)、新海監督講演映像(『君の名は。』の物語~現代の物語の役割)など盛り沢山。ファン垂涎の中身になっている。プロモーション映像集(特報・予告)では公開前のものから公開後に観客動員数がどんどん増えていく様子、興行成績ランキングでアジア圏5冠(日本、台湾、タイ、香港、中国)さらに6冠(+韓国)を達成、おまけに2017年春休みバージョンまで収録されていて愉しい。

あとメイキングドキュメンタリーでは

  • 企画書:「夢と知りせば(仮)」
         ー男女とりかえばや物語
  • 脚本第2稿:「きみはこの世界の、はんぶん」
  • 脚本第3稿:「夢にさえ、逢うこと難く」
  • 脚本第4稿:「かはたれそ」(彼は、誰そ)
  • 脚本第5稿:「かたわれの恋人」

と、タイトルがどんどん変わっていったのが興味深かった。

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「レゴバッドマン ザ・ムービー」と「デッドプール」

「レゴバッドマン ザ・ムービー」 評価:B

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巷で評判が高い「レゴバッドマン ザ・ムービー」を5歳の息子を連れて観に行った。バットマンは言わずと知れた、スーパーマンと並ぶDCコミックスのヒーローである。

「デッドプール」 評価:B

昨年公開された「デッドプール」はマーベルのX-MENシリーズのスピンオフ作品。全米製作者組合協会賞(Producers Guild Awards)のノミネート10作品の中にも「ムーンライト」「ラ・ラ・ランド」「マンチェスター・バイ・ザ・シー」と並んで選ばれた。こちらはBlu-rayで鑑賞。

いや、確かにどちらも出来は良いと想うよ。ただ、今回悟ったのはやっぱり僕はアメコミが好みじゃないということ。観ていて途中で飽いてしまう。夢中になれて、心底傑作だと認められるのはクリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」だけかな。

僕には勧善懲悪が信じられない。Heroなんて胡散臭い。アメコミはキリスト教社会だからこそ生み出された文化だと想う。光と影、天と地、天使と悪魔、正義(Hero)と悪(Villain)。単純な二元論。物事を分類するのが父性原理(キリスト教)の特徴であり、コンピューターも0と1の二進法で解析・表示する。たしかに便利ではあるが、世の中そんなに単純に割り切れるものではない。こういう単細胞的思考は時にアーリア人(ゲルマン民族)を最も優れた英雄とし、ユダヤ人を不倶戴天の敵・ペストと見做すヒトラーの思想(著書「我が闘争」)や、サダム・フセインを「大量破壊兵器」を持つ悪の枢軸と断じ、イラクを侵略したジョージ・W・ブッシュのような人物を生み出すことになる。

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ピートと秘密の友達

評価:B+

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ディズニー映画「ピートとドラゴン」(1977年、日本未公開)のリメイクである。実写とアニメを融合した映画で、ドラゴンのみアニメだったという。

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「ピートとドラゴン」が北米で公開されたのは「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」と同じ年で、ディズニー・スタジオはどん底の状態だった。ジョン・ラセターがディズニーに入社するのは1979年、同じ頃、ブラッド・バード(アイアン・ジャイアント、Mr.インクレディブル、レミーのおいしいレストラン)も入社するが、程なくボスと対立して去り、やがてラセターも解雇される。

一般的にドラゴンは爬虫類であり、肌はつるつるというイメージだが(オリジナルのセル画もそう)、「ピートと秘密の友達」のドラゴンは体中に毛が生えたもふもふ系(英語で表現すればfurry)で、僕は「ネバー・エンディング・ストーリー」を想い出した。

Neverendingstory

プロットとしてはスピルバーグの「E.T.」やバードの「アイアン・ジャイアント」と似通っていて新鮮味がないが、人間ドラマが充実しており(ロバート・レッドフォードも登場)、質が高い作品に仕上がっている。CGの出来は悪くないが、実写版「ジャングル・ブック」の後だから分が悪い。

僕は5歳の息子と鑑賞したが、子供向き映画として推薦したい。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 サンタコンサート 2016 & 全日本吹奏楽コンクール「ポーギーとベス」の感想

12月17日(土)、5歳の息子を連れて大阪ビジネスパーク TWIN21アトリウムへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のサンタコンサートを聴く。指揮は梅田隆司先生。

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まず最初にマーチングのパフォーマンスあり。

  • 歌劇「アイーダ」凱旋行進曲
  • 映画「スター・ウォーズ」メドレー
  • ミュージカル「キャッツ」メドレー

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続いて座奏に移り、子ども向けのコンサートが始まる。

  • ジングル・ベル
  • 映画「ライオンキング」メドレー
  • 映画「となりのトトロ」さんぽ、となりのトトロ
  • 映画「ハウルの動く城」世界の約束
  • 魔法使いプリキュア!
  • 動物戦隊ジュウオウジャー
  • 赤鼻のトナカイ

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すでに息子には大阪四季劇場でミュージカル「ライオンキング」と「キャッツ」を観せているので、今回はすごく興味を持って目をキラキラさせながら聴いていた。この日は他にキッズプラザ大阪(コーイチシェフのスイーツ工房に参加)とか公園にも行ったのだが、「みんな愉しかった!」とご機嫌だった。

さて、大阪桐蔭は今年、全日本吹奏楽コンクールで5年ぶりに金賞に輝いた(前回は2011年、自由曲はワーグナーの楽劇「ワルキューレ」)。僕は2016年度の金賞団体を集めたBlu-ray Discで鑑賞した。心が震えるくらい素晴らしかった!

銀賞に終わった2014年の自由曲「キャンディード」や2015年の「蝶々夫人」を聴いたときは「何か違う」と喉に骨が引っかかったような想いを最後まで払拭出来なかった。硬いというか萎縮しているというか……。僕は原曲であるミュージカル「キャンディード」やオペラ「蝶々夫人」の舞台を観ているのだが、桐蔭の演奏から元々の歌("Make Our Garden Grow"や”ある晴れた日に”)を残念ながら連想出来なかった。曲(アレンジ)が吹奏楽に合っていなかったというのもあるだろう。

しかし今年の自由曲ガーシュウィンの歌劇「ポーギーとベス」(建部知弘・森田拓夢 編)は水を得た魚という表現がピッタリで、見違えるようだった。まずサウンドが垢抜けている(英語で言えばsophisticated)。スポーンと抜けるような青空が眼前に広がるのだ。また”サマータイム”のフリューゲルホルンや、”いつもそうとは限らない(It Ain't Necessarily So)”のトロンボーン・ソロはアンニュイな(気怠い)感じが凄く出ていて、「これぞブルース!」と快哉を叫びたくなった。そこには伸びやかな歌があった(実際に練習時に歌ったのでは?)。現在の桐蔭はストコフスキーやオーマンディ時代の「フィラデルフィア・サウンド」に一番近いのではないかとすら感じられた。これだけ洗練されたジャズの音が出せるのなら、ミシェル・ルグランが作曲したミュージカル映画「ロシュフォールの恋人たち」の音楽(特に”キャラバンの到着”!)なんか、最高に似合っているんじゃないだろうか?(視聴はこちら)因みにこの曲は宮川彬良の卓越した吹奏楽アレンジがある。また今度のアカデミー賞で歌曲賞と作曲賞を受賞するのは100%間違いない、ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」の音楽(作曲は「セッション」のジャスティン・フルビッツ)も将来是非、大阪桐蔭の演奏で聴いてみたいと、ここで熱くリクエストしておく(公式サイトはこちら、お洒落なこちらのミュージック・クリップもどうぞ)。イントロを聴いた瞬間に判る、「ロシュフォールの恋人たち」への鮮烈なオマージュだ(でも、ちっとも模倣じゃない)。閑話休題。

コンクールの話題に戻るが、桐蔭が選んだ課題曲はIII:「ある英雄の記憶 」(西村友)。ゲーム(RPG)とか大河ドラマの音楽を彷彿とさせる。こちらも非常に物語性が感じられる充実した演奏だった。

2月に開催される定期演奏会で「ポーギーとベス」が演奏される筈なので、生で聴けるのが今からもの凄く愉しみだ。

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Film Musicへの扉を開いてくれたスタンリー・ブラックのことを語ろう。

僕が映画音楽に目覚めたのは小学校5年生の頃。ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィルの演奏する「スター・ウォーズ」組曲をFMで聴いた時だった。第一作「エピソード4」公開前の話である。

高校生の頃購入したLPレコードに「フィルム・スペクタキュラー(FILM SPECTACULAR)」シリーズがあった。廉価版で確か1枚1,500円くらいだったと記憶している。

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Film_spectacular

スタンリー・ブラック/ロンドン祝祭管弦楽団・合唱団(London Festival Orchestra & Chorus)の演奏で、効果音も入り、なにより録音が抜群に良かった。

【フェイズ(phase)4】という1963年にデッカ・アメリカが開発した録音方式で、20チャンネルのマルチ・マイク・システムで収録した音を特別なミキサーを通してアンペックスの4トラック・レコーダーで録音、2チャンネルのステレオにミックスダウンするというものだった。ストコフスキーの一連の録音(シェエラザード、チャイコフスキー5番、J.S.バッハ編曲集)やバーナード・ハーマンの自作自演(北北西に進路を取れ、サイコ、めまい)、フィードラー/ボストン・ポップスのアルバムなどに採用されている。

ロンドン・フェスティバル管弦楽団は録音のために特別編成されたオーケストラらしい(似た例としてコロンビア交響楽団やRCAビクター交響楽団がある)。実力は折り紙付きで、ロンドン交響楽団やロンドン・フィルと同等。恐らくそれら楽員たちが参加していたのだと想われる。少なくともハレ管弦楽団、フルハーモニア管弦楽団より上。

編曲も見事で、格調高いシンフォニックな映画音楽を堪能した。

特に鮮烈な印象を受けたのがエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトが作曲した「シー・ホーク」組曲。兎に角冒頭トランペット・ソロが勇壮で格好いい!「スター・ウォーズ」の作曲に際し、ジョン・ウィリアムズがコルンゴルトの多大な影響を受けていることをそれで知った(後に聴いたコルンゴルト「嵐の青春(King's Row)」のテーマは「スター・ウォーズ」と瓜二つだった)。

他にフィルム・スペクタキュラー・シリーズで大のお気に入りになった映画音楽は、

  • ハインツ・プロヴォスト:「間奏曲」←独奏ヴァイオリンとピアノのみ。
    I・バーグマン主演のスウェーデン映画及びハリウッド・リメイク版「別離」に流れた。
  • マックス・スタイナー:「風と共に去りぬ」「カサブランカ」
  • ウィリアム・ウォルトン:「スピットファイア」〜前奏曲とフーガ
  • アーネスト・ゴールド:「栄光への脱出」
  • ジェローム・モロス:「大いなる西部」
  • ディミトリー・ティオムキン:「アラモ」←合唱が素晴らしい!
  • ロン・グッドウィン:「633爆撃隊 」←スカッとする!

このフィルム・スペクタキュラー・シリーズのごく一部は現在、ナクソス・ミュージック・ライブラリー NML でも聴くことが出来る。→こちら

大学生になりCD時代となり、そこで出会ったのがRCAレコードからリリースされていたチャールズ・ゲルハルト/ナショナル・フィルハーモニック管弦楽団の"Classic Film Scores"シリーズである。ナショナル・フィルも録音専用の臨時編成で、ロンドン5大オーケストラの首席奏者らが集められた。こちらの録音も優れものだった(ドルビー・サラウンド)。

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衝撃的だったのがエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト作品集(「シー・ホーク」含む)。プロデューサーはジョージ・コルンゴルトで1928年ウィーン生まれ。言うまでもなくエーリヒの息子である。ジョージは晩年にジョン・ウィリアムズ/ボストン・ポップス・オーケストラの録音プロデューサーも務めている。

スタンリー・ブラックもチャールズ・ゲルハルトも棒捌きが巧みで、いずれもスマートでシャープ。洗練されている。彼ら以上の解釈に今までお目にかかったことはない。またゲルハルト/ナショナル・フィルにはハワード・ハンソン:交響曲第2番「ロマンティック」の超名演もある。是非機会があれば彼らの演奏を耳にして頂きたいものである。

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