子供の情景

高校生の間に一度は絶対観ておけ、この映画!/ジャンル別ベスト

高校生の三年間でこれだけは是非観ておいてほしい、君たちにとってこれからの人生が変わるかもしれないという映画を厳選した。

【青春映画】

  • ふたり
  • 廃市
  • 青春デンデケデケデケ
  • 幕が上がる
  • ヒポクラテスたち
  • 太陽の少年
  • 冒険者たち
  • ブレックファスト・クラブ
  • ヤング・ゼネレーション
  • スウィングガールズ

いつも青春は時をかけるー大林宣彦監督「時をかける少女」のキャッチコピーである。

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赤川次郎原作「ふたり」は事故死してしまったしっかり者の姉と、姉に頼ってばかりいた妹との、奇妙な共同生活を描いている。表面上は幽霊譚になっているけれど、一人の少女の意識(自我)と無意識(自己)という二面性および、その融合(自己実現)の物語であるとも言える。それを象徴するのがラストシーン。まず丘を登ってくる妹・美加(石田ひかり)をカメラが正面から捉える。次のショットで歩き去ってゆく後ろ姿を捉えるのだが、よくよく観るとそれは姉・千津子(中嶋朋子)なのだ。ふたりでひとり。実は、僕も初めてこの作品に出会ってから10年間くらい全く気が付かなかった。その間、繰り返し観ていたのに。このシーンで流れ出すのが大林宣彦作詞、久石譲作曲の主題歌「草の想い」。名曲中の名曲である。大林監督と久石さん本人が歌う。

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僕にとって我が生涯ベスト・ワンである大林宣彦監督「はるか、ノスタルジィ」も似たような構造を持っている。東京で小説家になった中年の主人公・綾瀬慎介(ペンネーム)は数十年ぶりに故郷・小樽を訪ねる。そこでバンカラ姿の学生・佐藤弘に出会う。それは青年時代の慎介そのものだった(佐藤弘は本名)。これはユング心理学でいうところの無意識に存在する子供元型(The Child Archetype)に遭遇する物語であり、最後に自我(意識)と元型(無意識)は融合され、自己実現に至る。どんなに年令を重ねても、人は変われるのだ。

僕が映画「廃市」と出会ったのは18歳だった。それから原作者・福永武彦の文学にのめり込み、20代の時に全小説を読破した。大林監督がライフワークとしていた福永の小説「草の花」映画化が実現しなかったことが無念で仕方ない。

幕が上がる」は全国高等学校演劇大会という特殊な世界が描かれている。火傷するくらい熱いぞ!

京都府立医科大学を卒業した大森一樹監督「ヒポクラテスたち」は医学生たちの群像劇。僕は高校生の時にこれを観て、「医学部って面白そう」と興味を持ち、進学を決めた。そして現在は医学博士である。やはり医師免許を持つ手塚治虫が映画で小児科教授を演じ(学生のひとりが手塚漫画「ブラック・ジャック」を読んでいたりもする)、怪盗役で映画監督の鈴木清順が登場する。

「太陽の少年」は中国映画の傑作。岩井俊二監督「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」に通じるものがある。

Lesaventuriers

「冒険者たち」はフランスのフィルム・ノワール。でも暗黒ではなくロマンティック。なんと言っても口笛で奏でられる〈レティシアのテーマ〉!→こちら

ジョン・ヒューズ監督「ブレックファスト・クラブ」は恐らく世界で初めてスクール・カーストを描いた映画だと思う。画期的なディスカッションが展開され、ワクワクする。併せて「フェリスはある朝突然に」もどうぞ。映画「デッドプール」の元ネタだ。

「ヤング・ゼネレーション」はアカデミー脚本賞受賞。自転車レースに青春を賭ける若者たちを描く。心に翼を持て。

【恋愛映画】

  • ラ・ラ・ランド
  • 太陽がいっぱい
  • Love Letter(岩井俊二監督)
  • ボヴァリー夫人(ヴィンセント・ミネリ監督)
  • ライアンの娘
  • ある日どこかで
  • フォロー・ミー
  • いつも2人で
  • ピアノ・レッスン
  • めまい

「ラ・ラ・ランド」については以下の記事をご参照あれ。

「太陽がいっぱい」はアラン・ドロンが主演した1960年のフランス映画。パトリシア・ハイスミス原作でミステリとしても大傑作なのだが、ゲイ映画という観点で見直すと全く別の物語が浮かび上がってくるという驚くべき仕掛けが施されている。その構造を世界で最初に見抜いたのがテレビ「日曜洋画劇場」の解説を長年勤め、「サヨナラ」おじさんと呼ばれた映画評論家・淀川長治氏で、彼もゲイだった。パトリシア・ハイスミスも同性愛者で偽名を使って「キャロル」を書き、そちらも映画化された。

アラン・ドロンはロミー・シュナイダーと同棲・婚約したり、ナタリー・ドロンと結婚・離婚するなど華麗な女性遍歴があるので多分ストレート(ノン気)なのだろう。しかしバイセクシャルだったイタリアのルキノ・ヴィスコンティ監督から愛され、その切実な想いは「若者のすべて」や「山猫」といった芸術映画に昇華された。ヴィスコンティがアラン・ドロンとロミー・シュナイダー主演で計画していたマルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の映画化が頓挫したことは大変惜しまれる。そして、小説「失われた時を求めて」は岩井俊二の映画「Love Letter」で極めて重要な役割を果たす。映画は繋がっている。「Love Letter」の25年後に撮られた姉妹編「ラストレター」も併せてどうぞ。

ヴィンセント・ミネリの「ボヴァリー夫人」については下記事をお読み頂きたい。狂気が疾走する。

そしてデイヴィッド・リーン監督の名作「ライアンの娘」は「ボヴァリー夫人」を下敷きにしている。

「ある日どこかで」については、

「フォロー・ミー」については、

「いつも2人で」の監督は「雨に唄えば」「シャレード」のスタンリー・ドーネン。キネマ旬報社から発行された「私の一本の映画」という本があり、そこに村上春樹がエッセイを書いたのが本作。彼が高校生の時、当時のガールフレンドと神戸の映画館でこれを観たそうだ。主演はオードリー・ヘップバーンとアルバート・フィニー(「オリエント急行殺人事件」のポアロ役)。中年夫婦の危機を描くが、ふたりの12年間を5つの時間軸が交差する形で描く凝った構成になっている。何より僕は"Two for the Road"という原題が好き!味がある。

ホリー・ハンターがアカデミー主演女優賞を受賞し、カンヌ国際映画賞では最高賞のパルム・ドールに輝いたフランス、ニュージーランド、オーストラリアによる合作映画「ピアノ・レッスン」の主人公エイダを一言で評するならば〈女ヒースクリフ〉。本作が描いているのはエミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」と同じ、狂恋。不用意に触ると火傷する。だから「嵐が丘 」を事前に読んでおくことは必須。ジェーン・カンピオン監督にはいつか映画「嵐が丘」を撮って貰いたい。

Vertigo

「めまい」はアルフレッド・ヒッチコック監督の最高傑作。過去の女の記憶に囚われて目の前の女を愛すことが出来ず、自分の持つ理想像(ユング心理学におけるアニマ・アニムス)を投影してそれに女を近づけようと画策する男の異常心理を描いている。これは大林宣彦監督「時をかける少女」冒頭に掲げられるテロップと、密接な関係がある。

ひとが、現実よりも、
理想の愛を知ったとき、
それは、ひとにとって、
幸福なのだろうか?
不幸なのだろうか?

【深く人生を考える/哲学的映画】

  • メッセージ
  • 桐島、部活やめるってよ
  • タクシー・ドライバー
  • ブレードランナー
  • 山の音
  • 市民ケーン
  • イヴの総て
  • サンセット大通り
  • カビリアの夜
  • ベニスに死す
  • ピクニック at ハンギング・ロック
  • いまを生きる
  • 生きる(黒澤明監督)
  • ミツバチのささやき/エル・スール
  • ギルバート・グレイプ
  • フィールド・オブ・ドリームス

SF映画「メッセージ」は時間とは何か?を深く考えさせてくれる。そして思考はその人が学んだ言語と密接に結びついているという説が非常に興味深かった。これを〈サピア=ウォーフの仮説(言語相対性仮説)〉という。あと〈非ゼロ和 non zero sum〉!

桐島、部活やめるってよ」はキネマ旬報ベストテンで第2位、ヨコハマ映画祭では作品賞・監督賞など4冠を獲得した。高校生ではちょっと難しいかも知れない。ある意味フェデリコ・フェリーニ監督「甘い生活」に似たところがある。正直僕も高校生の時に「甘い生活」に歯が立たなかったからね。真の傑作だと漸く理解出来たのは40歳くらい。まぁ挑戦してみて。時には背伸びしてみることも必要、当たって砕けろ!だ。

「タクシー・ドライバー」はベトナム帰りの元兵士が主人公なので、社会派ジャンルとも言える。

「ブレードランナー」(1982)は近未来都市のヴィジュアル造形が秀逸。ただ映画の設定は2019年11月なので、既に現実が追い越しているのだけれど。本作には、レプリカント(人造人間/人工知能)は人の心を持てるのか?という問いがある。主人公デッカードが人なのか、レプリカントなのか?ということもしっかり考えてみてください。「メッセージ」のドゥニ・ヴィルヌーブ監督が撮った続編「ブレードランナー 2049」も傑作。

川端康成原作「山の音」は鎌倉を舞台に初老の男(山村聡)が息子の嫁(原節子)に対して抱く、淡い恋心を繊細に描いている。死への恐怖、そして色恋沙汰に進展するかどうかの境界で揺れ動く心理描写が絶妙。大人の世界を垣間見よう。

「市民ケーン」といえば〈バラのつぼみ Rosebud〉。これは隠れキリシタンをテーマとする遠藤周作原作、マーティン・スコセッシ監督「沈黙 -サイレンス-」のラストシーンにも引用されている。

アカデミー作品賞・監督賞・脚本賞などを受賞した「イヴの総て」は食うか食われるかという、芸能界における生存競争の苛烈さを、鮮やかに描いている。これを下敷きにしたのがポール・バーホーベン監督「ショーガール」で、こちらの方は最低の映画を選ぶラジー(ゴールデン・ラズベリー)賞で7部門を制覇した。

ビリー・ワイルダー監督「サンセット大通り」は後世の映画に多大な影響を与えた。例えばロバート・アルドリッチ監督「何がジェーンに起ったか?」とか、デヴィッド・リンチ監督「マルホランド・ドライブ」は、完全に「サンセット大通り」のヴァリエーションである(そもそもマルホランド・ドライブとサンセット・ブルーバードはどちらもロサンゼルスを走る道路の名称)。また死者が語り始めるという手法はサム・メンデス監督「アメリカン・ビューティ」(アカデミー作品賞・監督賞受賞)に引き継がれた。

「ベニスに死す」については、次のようなことを書いた。

「ピクニック at ハンギング・ロック」については下記。

「いまを生きる」はこちら。

黒澤明「生きる」は進行がん患者への病名告知やquality of lifeの問題をテーマとしている。

「ミツバチのささやき/エル・スール」については、

「ギルバート・グレイプ」は当時未だ10代だったレオナルド・デカプリオの演技に注目!時には束縛にもなる家族から解き放たれて、主人公(ジョニー・デップ)が旅立つ物語。

「フィールド・オブ・ドリームス」に登場する作家テレンス・マン(ダース・ベイダーの声で有名なジェームズ・アール・ジョーンズが演じる)は原作小説で「ライ麦畑でつかまえて」のサリンジャーであることは重要。だから映画「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」と併せて観ると、より理解が深まるだろう。

【歴史を知る映画】

  • 大いなる西部
  • 死刑執行人もまた死す
  • 大いなる幻影
  • 灰とダイヤモンド
  • 無防備都市
  • 第三の男
  • アンネの日記
  • アラビアのロレンス
  • ドクトル・ジバゴ
  • 僕の村は戦場だった
  • ひとりぼっちの青春
  • さらばわが愛/覇王別姫
  • 善き人のためのソナタ

イタリア映画「無防備都市」はネオレアリズモの代表選手。大きな歴史のうねりとしてネオレアリズモ(イタリア)の精神は→ヌーヴェル・ヴァーグ(フランス)→アメリカン・ニューシネマと伝播した。共通する志は〈既成の価値観・体制の破壊〉である。ハリウッドで「無防備都市」を観て感激したイングリッド・バーグマンは直ちにロベルト・ロッセリーニ監督にファン・レターを書き、夫や娘を捨ててローマに旅立った。一大スキャンダルになったことは言うまでもない。イングリッドとロベルトの間に生まれたのがイザベラ・ロッセリーニで、長じて女優となり「ブルーベルベット」や「フィアレス」などに出演した。イングリットも〈既成の価値観の破壊者〉であった。

「第三の男」は第二次世界大戦後、敗戦国オーストリア(首都:ウィーン)が勝者である連合国ーアメリカ、ソ連、イギリス、フランスの4国によって分割統治されていた時代のお話。白黒映像美の極致。

「アンネの日記」は1959年にジョージ・スティーヴンスが監督・製作したもの。アンネを演じたミリー・パーキンスが素晴らしい!1995年に日本が製作したアニメーション版もあるが、こちらはイマイチ。但し、マイケル・ナイマンによる音楽は◯。

「ひとりぼっちの青春」の原題は"They Shoot Horses, Don't They?"つまり「彼らは廃馬を撃つ」。1932年、大恐慌時代の悲惨を描くアメリカン・ニューシネマの傑作。ここでアメリカン・ニューシネマについて説明しておこう。1960年代後半から1970年代前半までのムーブメントで、ベトナム戦争に対する反戦運動や、ヒッピー文化と連動している。反抗的な若者が体制に敢然と闘いを挑むのだが、最後は大人・社会に圧殺されるなど、悲劇的な結末で幕を閉じる。基本的に挫折する物語だ。「俺たちに明日はない」「明日に向って撃て!」「イージー・ライダー」が代表格。

カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝いた「さらばわが愛/覇王別姫」が描くのは中国・文化大革命の悪夢。コン・リーとレスリー・チャン最高。また、僕たちが知らない京劇の世界を垣間見ることができる。

ドイツ映画「善き人のためのソナタ」はアカデミー外国語映画賞を受賞。冷戦時代の東ドイツが舞台で、監視社会の実像に迫る。

【コメディ/ブラック・ユーモア】

  • 雨に唄えば
  • プロデューサーズ
  • 博士の異常な愛情
  • まぼろしの市街戦
  • チャップリンの独裁者
  • 恋はデジャ・ブ
  • 生きるべきか死ぬべきか

フランス映画「まぼろしの市街戦」(1966)は第一次世界大戦末期、フランスの田舎町が舞台。人々が町から逃亡し、取り残された精神病院の患者たちと、町を取り巻く軍隊の人間と、どちらが〈狂気〉でどちらが〈正気〉なのかという問いが本作にはある。

「恋はデジャ・ブ」(1993)の原題はGroundhog Day。Groundhogはウッドチャックを意味し、2月2日に開催される春の訪れを予想する占い行事のこと。 ある一日をエンドレスに繰り返す男の話である。ビル・マーレイがすっとぼけた、いい味を出している。同じネタで押井守監督「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(1984)という先達があり、こちらも傑作。さらに派生作品として京アニ「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンドレスエイト(第12-19話)や、「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ【新編】叛逆の物語」がある。こうしたループものとして、ケン・グリムウッドのSF小説「リプレイ」が有名だが、1987年の出版であり、やはり「ビューティフル・ドリーマー」が元祖と言えるだろう。

【社会を知る映画】

  • 真昼の暗黒
  • 橋のない川 
  • バトル・ロワイアル
  • ブラッド・ダイヤモンド
  • シティ・オブ・ゴッド
  • 風の丘を越えて/西便制
  • トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
  • 殺人の追憶
  • パラサイト 半地下の家族

「真昼の暗黒」(1956)は冤罪事件を扱う。橋本忍のシナリオが秀逸。

部落差別を扱う「橋のない川」は1969-70年の今井正監督版(第一部・第二部)と、1992年東陽一監督版がある。どちらも見応えあり。

「バトル・ロワイアル」(2000)は劇薬だ。中学生どうしが国家命令により殺し合いをするという衝撃的な内容で、R-15指定のため中学生は劇場で観ることが出来なかった。公開当時、この映画に対する政府の見解を求める質疑が国会で行われるなど物議を醸した。そもそも高見広春が書いた原作自体、日本ホラー小説大賞の最終候補まで残るが、選考委員から猛烈な非難を浴び落選した。その後高見は一切作品を発表していない。深作欣二監督は太平洋戦争中、学徒動員に駆り出されたときの「国家への不信」「大人への憎しみ」といった自分の想いを本作に託した。

レオナルド・ディカプリオ主演「ブラッド・ダイヤモンド」を観れば、アフリカは地獄だ、と思い知るだろう。

「シティ・オブ・ゴッド」はブラジルに住むストリートチルドレンたちの抗争を描く。

韓国映画「風の丘を越えて/西便制」では朝鮮文化における恨(ハン)という感情について学ぼう。

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」は赤狩りの勉強として。本作の後でダルトン・トランボがシナリオを書いた「ローマの休日」や「パピヨン」(1973年版)を鑑賞しよう。隠された寓意が見えてくる。

アカデミー作品賞・監督賞・国際長編映画賞を受賞した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が光を当てるのは格差社会である。

【アニメーション映画】

「秒速5センチメートル」については以下を参照されたし。

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【2020年最新版】選定!中学生に観せたい映画・アニメ

選定!中学生に観せたい映画」という記事を書いたのが2013年。あれから7年経過した。些か内容が古びた感があるので、ここでアップデートすることにした。新型コロナウィルスで非常事態宣言が発令され、遊びに出ることもままならない子どもたちを持て余している親御さんも少なくないだろう。何かの参考になれば幸いである。

新しい作品を優先して選んだが、「これだけは絶対に落とせない!」という古典的名作も残している。なお、過去にレビューを書いている作品は、タイトルをクリックすると該当記事に飛ぶようにしている。気に入るかどうかに性差があると思われる作品には男の子向け/女の子向けを明記した。

まずは基本中の基本、実写部門BEST 10。

ここで紹介している「ちはやふる」は広瀬すず主演の実写映画だが、テレビ・アニメ(シリーズ)版も良い。競技かるたと百人一首(和歌)の世界を垣間見よう。

蜜蜂と遠雷」は音楽映画の傑作中の傑作。恩田陸の原作小説も併せて読みたい。

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「遠い空の向こうに」の原題はOctober Skyで、アルファベットの順番を入れ替えると原作小説のタイトルRocket Boysになる。アナグラムだ。NASAの技術者になったホーマー・ヒッカムの自伝である。

「リトル・ダンサー」(原題:ビリー・エリオット Billy Elliot)は後に舞台化され、トニー賞でミュージカル作品賞・演出賞など10部門を独占した。「ビリー・エリオット ミュージカルライブ/リトル・ダンサー」というタイトルでBlu-ray/DVDが発売されている。男らしさ/女らしさ って、一体何?という問いが本作にはある。映画の最後に名ダンサー、アダム・クーパーが踊るのにも注目!

沈黙 -サイレンス-」は遠藤周作原作。篠田正浩監督版もあるが、マーティン・スコセッシ監督版の方が俄然出来が良い。キリシタン弾圧の歴史を学ぼう。

おくりびと」では死と向き合うことで、生についてしっかり考えよう。

舟を編む」は辞書編纂という作業を通して、日本語について学べる。

ドリーム」は邦題が酷い。原題は"Hidden Figures"つまり「隠された姿」という意味で、NASAでアポロ計画に先立つマーキュリー(有人宇宙飛行)計画に携わった3人の黒人女性にスポットライトを当てる。「ライト・スタッフ」と併せて観ることで、より深く味わうことが出来るだろう。

英国王のスピーチ」はアカデミー作品賞・監督賞を受賞。人前で上手に話すコツが詰まっている。そして、吃音の原因として幼児虐待があることを教えてくれる。

ゼロ・グラビティ」は宇宙を舞台にしているが、物語構造は受精卵→胎児→誕生のメタファーとなっており、同時に海洋生物が陸に上がり、直立歩行するまでの人の進化についても語っている(人間の胎児は進化の過程を繰り返すー反復説)。

続いてBEST 20まで。

シン・ゴジラ」はダイアログの洪水。繰り返し観て社会勉強をしよう。

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「大人は判ってくれない」の切実さを理解するのは中学生には難しいかも知れない。しかし将来きっと判る日が来る。諦めないで。

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 」と「スタンド・バイ・ミー」は精神的に繋がっている。原作者が同じスティーヴン・キングだしね。そしてNetflixのドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」も、J・J・エイブラムス監督「SUPER 8/スーパーエイト」も「スタンド・バイ・ミー」なくして生まれなかった。

アカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画「ボーリング・フォー・コロンバイン」は銃社会アメリカについて考えさせられる。

ファースト・マン」はアポロ11号の船長ニール・アームストロングを主人公とする実話。トム・ハンクスが主演した「アポロ13」も併せて観よう。

ソロモンの偽証」は宮部みゆき原作のミステリ。中学生たちが主人公で、学校内裁判を開廷するという展開がユニーク。

Ganba

「がんばっていきまっしょい」は愛媛県松山市の高校を舞台に、ボート部の活動に打ち込む5人の女子高校生たちの姿を描いた物語。テレビドラマにもなった(放送途中で内博貴が不祥事を起こし降板、第4話から役者が変わった)。これに似た青春映画として「幕が上がる」とか「青春デンデケデケデケ」「ヤング・ゼネレーション」も取り上げたかったのだが、どちらかといえば高校生向きかなと思い直した。特に高校演劇を扱う「幕が上がる」なんか、ニッチでディープだからね。

尾道三部作「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」は言わずと知れた大林宣彦監督の名作中の名作。まずは黙って観ろ!後悔なんてさせないから。

Senjo

1917 命をかけた伝令」と「戦場の小さな天使たち」は、戦争とは何か?について学ぶテキストとして最適。残酷描写もないしね。

さらにBEST30。

グローリー ー明日への行進ー」を観て、マーティン・ルーサー・キング牧師のことを知ろう。その際、是非キング牧師の歴史的なスピーチ"I Have A Dream"も勉強しよう。動画はこちら!併せてアカデミー作品賞・監督賞を受賞した「ガンジー」も観ておきたい。

「インファナル・アフェア」は香港映画の金字塔。フィルム・ノワールの大傑作で後にハリウッドでリメイクされた。→マーティン・スコセッシ監督「ディパーテッド」

「不都合な真実」は地球温暖化について学べるドキュメンタリー映画。アカデミー賞受賞。

北野武監督の「キッズ・リターン」はラストの決め台詞に痺れろ!中学生たちよ、大志を抱け。

あと古典的名作として、

  • 風と共に去りぬ
  • 嵐が丘(1939年版)
  • カサブランカ (男の子)
  • ローマの休日 (女の子)
  • 赤い靴 (女の子)
  • 七人の侍 (男の子)
  • アラバマ物語
  • シベールの日曜日
  • まぼろしの市街戦
  • 屋根の上のバイオリン弾き
  • ハロルドとモード/少年は虹を渡る
  • ゴッドファーザー/ゴッドファーザー PART Ⅱ
  • 砂の器
  • ジョーズ
  • 未知との遭遇
  • ロッキー
  • ポセイドン・アドベンチャー
  • タワーリング・インフェルノ
  • バックドラフト
  • アマデウス
  • ショーシャンクの空に
  • 櫻の園(1990年版) (女の子)
  • ターミネーター/ターミネーター2 (男の子)
  • リング/仄暗い水の底から

を推しておく。

「櫻の園」は1990年版と2008年版があるので要注意。中島ひろ子やつみきみほが出演している方。キネマ旬報ベスト・ワンに輝いた。

エミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」は繰り返し映画化されており、松田優作主演で舞台を鎌倉時代の日本に置き換えたバージョンまである。僕の一押しはウィリアム・ワイラー監督版。これをハリウッドで撮っていたローレンス・オリヴィエを追っかけてヴィヴィアン・リーが英国から渡米。その時なかなか決まらなかった「風と共に去りぬ」スカーレット・オハラ役をオーディションで勝ち取るという伝説を生んだ。

フランス映画「まぼろしの市街戦」(1966)は第一次世界大戦末期、フランスの田舎町が舞台。人々が町から逃亡し、取り残された精神病院の患者たちと、町を取り巻く軍隊の人間と、どちらが〈狂気〉でどちらが〈正気〉なのかという問いが本作にはある。

「ジョーズ」は当初小学生向けにお勧めしようかと考えたのだが、これを観て水恐怖症になったという人の話を聞き対象年齢を上げた。本多猪四郎監督「マタンゴ」を幼少期に観てキノコが食べられなくなったという人もいて、正にトラウマ映画だね。

「未知との遭遇」については下記事をお読みください。

「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」はパニック映画(Disaster Movies)の代表作。他に「大空港」がある。

そして長編アニメーション映画部門。

テレビ・アニメ(シリーズ)

「君の名は。」については過去に当ブログで語り尽くした。

「天気の子」は以下の通り。

「風立ちぬ」については下記。

〈大切なことは言葉にならない〉〜「海獣の子供」の名台詞。

Maimai

マイマイ新子と千年の魔法」は「この世界の片隅に」の片渕須直監督作品。高校生になったら「この世界の片隅に」も観よう。

響け!ユーフォニアム」2nd seasonは既視(マンネリ)感が強いので、1st seasonのみで十分だろう。続いてスピンオフ「リズと青い鳥」を観よう。

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【2020年最新版】選定!小学生に観せたい映画・アニメ

選定!小学生に観せたい映画」という記事を書いたのが2013年。あれから7年経過した。些か内容が古びた感があるので、ここでアップデートすることにした。新型コロナウィルスで非常事態宣言が発令され、遊びに出ることもままならない子どもたちを持て余している親御さんも少なくなかろう。何かの参考になれば幸いである。

近日中に「【2020年最新版】選定!中学生に観せたい映画・アニメ」も上げる予定なので、乞うご期待。

新しい作品を優先して選んだが、「これだけは絶対に落とせない!」という古典的名作も残している。なお、過去にレビューを書いている作品は、タイトルをクリックすると該当記事に飛ぶようにしている。気に入るかどうかに性差があると思われる作品には男の子向け/女の子向けを明記した。

まずは基本中の基本、実写部門BEST 10。

  • オズの魔法使い
  • やかまし村の子どもたち/やかまし村の春夏秋冬
  • スター・ウォーズ エピソード4-6 (男の子)
  • E.T.
  • リトル・プリンセス (女の子)
  • ハリー・ポッター(シリーズ)
  • サウンド・オブ・ミュージック (3・4年生以上)
  • パディントン/パディントン2
  • 美女と野獣
  • シンデレラ (女の子)

ハーマイオニーこと、エマ・ワトソンが主演したディズニー映画「美女と野獣」(2017)と、絶世の美女リリー・ジェームズが主演した「シンデレラ」(2015)は勿論アニメ版もあるが、こちらは実写版。また「美女と野獣」アニメ版(1991)はアニメーション映画史上初めてアカデミー作品賞にノミネートされた名作中の名作(これを契機に長編アニメーション部門が新設された)。

Oz

ジュディ・ガーランド主演「オズの魔法使い」はスティーブン・スピルバーグ監督が新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために自宅隔離している人々に向けて、お勧めの一本として選んだ作品。詳細はこちら。キーとなる台詞は"There's no place like home."(わが家にまさるところなし)。

「やかまし村」二部作はスウェーデンのラッセ・ハルストレム監督で、原作は児童文学作家アストリッド・リンドグレーン。「長く下のピッピ」が有名。実は高畑勲と宮崎駿は「長くつ下のピッピ」のアニメーション映画化を準備していたが原作者からの許可が降りず、いくつかの設定を流用して製作したのが「パンダコパンダ/パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻」なのだ。

「リトル・プリンセス」のアルフォンソ・キュアロンは後に「ゼロ・グラビティ」と「ローマ」で2度アカデミー監督賞を受賞。撮影監督のエマニュエル・ルベツキは3年連続でアカデミー撮影賞を受賞した。緑が美しい。「女の子はみんな、プリンセスなのよ」

「ハリー・ポッター」は第一作「賢者の石」から第三作「アズカバンの囚人」まで観れば十分だろう。「アズカバンの囚人」はキュアロンが監督している。

続いて実写BEST 20に入るのは、

さらに白黒映画だが、チャップリンの「モダン・タイムズ」や、心温まるクリスマス物語「素晴らしき哉、人生!」も是非観ておきたい名作である。そして特撮もので忘れてはいけないのが平成ガメラ三部作(「ガメラ 大怪獣空中決戦」「ガメラ2 レギオン襲来」「ガメラ3 邪神覚醒」)。

「禁じられた遊び」は子どもたちに、戦争とは何か?を教える教材として極めて重要。

「赤い風船」と「白い馬」はフランスのアルベール・ラモリスが監督したファンタジー映画の秀作。「素晴らしい風船旅行」という素敵な作品もある。

イギリス映画「小さな恋のメロディ」(1971)は既に欧米ですっかり忘れ去られているが、日本でだけ大ヒットして未だに愛されているという不思議な映画。トレイシー・ハイドとマーク・レスターが大変魅力的。あとビー・ジーズの音楽!

マイライフ・アズ・ア・ドッグ」はラッセ・ハルストレムがスウェーデン時代に撮った名作で、人工衛星に乗せられて地球最初の宇宙旅行生物になったライカ犬の話が出てくる。ハルストレムは相当な犬好きらしく、ハリウッドに進出してからも「HACHI 約束の犬」とか「僕のワンダフル・ライフ」を撮っている。

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」は後にアニメ版が制作されたが、こちらは岩井俊二が監督したオリジナル実写版。僕は奥菜恵に胸を射抜かれた。

「GODZILLA ゴジラ」はギャレス・エドワーズが監督した2014年ハリウッド版。ローランド・エメリッヒが監督した1998年版は救いようのない駄作なので絶対に間違わないで!!本来なら本多猪四郎(監督)・円谷英二(特技監督)の1954年オリジナル版を観て欲しいところだが、古い白黒映画だからねぇ……。

「パシフィッ・リム」も怪獣映画。ギレルモ・デル・トロ監督は後に半魚人を主人公とする「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー作品賞・監督賞受賞という快挙を成し遂げた。

レディ・プレーヤー1」はゲーム感覚で楽しめるが、出来れば事前にスタンリー・キューブリック監督「シャイニング」をご覧になっておかれることをお勧めする。

他にも色々あるので旧版「選定!小学生に観せたい映画」も併せてご覧頂きたい。

では、長編アニメーション部門に移ろう。まずBEST 10。

ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」はアイルランドのスタジオ、カートゥーン・サルーンの作品。ケルト神話を題材にしているのがとっても素敵。後で紹介するテレビ・シリーズ「ウーナとババの島」(Netflix)もここが手掛けた。

ティム・バートンのダーク・ファンタジー「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」と併せて、「フランケンウィニー」も是非どうぞ。

怪盗グルー(シリーズ)」の魅力はなんと言ってもサブキャラのミニオンズだろう。

続いてBEST 20は、

さらにBEST30。

「メトロポリス」は手塚治虫原作で、監督が「銀河鉄道999」のりんたろう、脚本が「AKIRA」の大友克洋という強力な布陣。全米で最も影響力のある映画評論家といわれたロジャー・イーバートは満点評価である4つ星を与え、アニメ史上最高の作品の一つであると称えた。

ここまでに入り切らなかった古い名作を下にまとめた。

  • 太陽の王子ホルスの大冒険
  • 空飛ぶゆうれい船
  • パンダコパンダ/パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻
  • ふしぎの国のアリス
  • ダンボ
  • くまのプーさん (1977年完全保存版/2011年版)
  • ルパン三世カリオストロの城
  • 機動警察パトレイバー the movie 1・2
  • アラジン
  • ライオンキング
  • アイアン・ジャイアント
  • ウォレスとグルミット 短編三部作

クレイアニメ「ウォレスとグルミット」短編三部作とは「チーズ・ホリデー」「ペンギンに気をつけろ!」「危機一発!」を指す。長編の「野菜畑で大ピンチ!」は詰まらない。

パンダコパンダ/パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻」は「となりのトトロ」の原点であり、街が水没する設定は「崖の上のポニョ」に流用されている。

最後にテレビ・アニメ(シリーズ)もいくつかご紹介しておこう。

宇宙よりも遠い場所」はニューヨーク・タイムズの「ベストTV 2018 インターナショナル部門」(The Best International Shows)に選出、激賞された。Netflixで配信中。京アニの「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」もNetflixで観れます。

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クラシック音楽をどう聴くか?〜初心者のための鑑賞の手引き

クラシック音楽に興味があるけれど、どう聴いたら良いのサッパリかわからない、途方に暮れるという若い方、特に中学生・高校生に向けてこれを書いてみようと思う。勿論、大人の初心者の方も大歓迎だ。出来る限りわかり易く、奥深い森への道案内をしたい。

記事全体の構成をご紹介しよう。①「まず、何から手を付けたら良いの?」……取っ掛かりに最適の曲をご紹介する。②映画を大いに活用しよう!……ぼんやり観ているだけで良いので即効性があり、とっても効果的だ。③「演奏時間が30分以上もある交響曲とかソナタを、どう受け止めれば理解出来るの?」……そのコツを伝授する。意外と簡単。

では早速始めよう。

①「まず、何から手を付けたら良いの?」

僕の経験からお話しよう。最初にクラシック音楽って楽しい!と開眼したのは小学校4,5年生の頃。切っ掛けはヴィヴァルディの「四季」だった。

初心者にとって長大なクラシック音楽は雲を掴むようで覚束なく、聴いていると眠くなってしまう。抽象的で、具体的な絵とか形(目に見えるもの-vision)や物語がないからである。しかしヴィヴァルディの「四季」は標題音楽であり、物語がある。それを読みながら聴けば、情景が目に浮かんでくる。CDの解説書を読めば良いのだが、最近はSpotify,Amazon Musicなど定額制音楽配信(サブスクリプション)サービスを利用している方も多いだろう。そういう場合に便利なのがWikipediaである。「四季」の解説はこちら。【ヴィヴァルディ】【四季】でgoogle検索すれば、直ぐ見つけられる(キーワードに【wiki】 を加えても、加えなくても良い)。おすすめの演奏は◎ビオンディ/エウローパ・ガランテ、◯スタンデイジ/ピノック/ イングリッシュ・コンサート、◯カルミニョーラ/ヴェニス・バロック・オーケストラといったところ。

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ヴィヴァルディ「四季」に似た趣向の作品としてベートーヴェン:交響曲第6番「田園」が挙げられる(【ベートーヴェン】【田園】でググる=google検索)。お勧めの演奏は◎ベーム/ウィーン・フィルか、◯ネルソンス/ウィーン・フィル、◯パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィル。同じベートーヴェン:交響曲第5番「運命」は苦難(第1楽章 ハ短調)を乗り越えて歓喜(第4楽章 ハ長調)へ!という明快なコンセプトがあるのでこれも判り易い。◎クライバー/ウィーン・フィルか、◯アーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス 、◯クルレンツィス/ムジカエテルナあたりで。この「運命」のコンセプトに追随したのがチャイコフスキー/交響曲第5番、マーラー/交響曲第5番、ショスタコーヴィッチ/交響曲第5番。ただしショスタコの場合は屈折しており、一筋縄ではいかない。

本題に戻ろう。他に標題音楽としてホルスト:組曲「惑星」(カラヤン/ベルリン・フィル)、リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェヘラザード」(デュトワ/モントリオール交響楽団)、ムソルグスキー(ラヴェル編):組曲「展覧会の絵」(ショルティ/シカゴ交響楽団)、チャイコフスキー:組曲「くるみ割り人形」(カラヤン/ベルリン・フィル)、サン=サーンス:組曲「動物の謝肉祭」(アルゲリッチ、マイスキー、クレーメルほか)、プロコフィエフ:交響的物語「ピーターと狼」、グリーグ:劇付随音楽「ペール・ギュント」組曲(カラヤン/ベルリン・フィル)、メンデルスゾーン:劇付随音楽「夏の夜の夢」(プレヴィン/ウィーン・フィル)、ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、交響詩「海」(ブーレーズ/クリーヴランド管)、レスピーギ:交響詩「ローマの松/祭り/噴水」(ローマ三部作) などが挙げられる。ローマ三部作は◎ムーティ/フィラデルフィア管か、◯バッティストーニ指揮/東京フィルハーモニー交響楽団で。

ロックが好きな人にはストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」がピッタリ。ピンク・フロイドの「原子心母」とか、エマーソン・レイク・アンド・パーマーの「タルカス」、イエス(バンド)などプログレッシブ・ロックに近い。◎クルレンツィス/ムジカエテルナか、◎ロト/レ・シエクル、◯ブーレーズ/クリーヴランド管で。

標題音楽じゃないけれど、ジャズ好きにはガーシュウィン:「ラプソディ・イン・ブルー」や「パリのアメリカ人」がお勧め。指揮&ピアノはバーンスタインかプレヴィン、レヴァインで。

またベルリオーズ:幻想交響曲は失恋のショックで悶々とし、アヘンを吸いながら作曲された狂気の音楽(サイケデリック・ミュージック)だ。すこぶる面白い!◎アバド/シカゴ交響楽団や◯ミンコフスキ/ルーヴル宮音楽隊、◯ロト/レ・シエクルの演奏でどうぞ。

小品ではデュカス:交響詩「魔法使いの弟子」、スメタナ:交響詩「モルダウ」、ムソルグスキー(リムスキー=コルサコフ編):交響詩「禿山の一夜」、ボロディン:交響詩「中央アジアの草原にて」、シベリウス:交響詩「フィンランディア」「トゥオネラの白鳥」、ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「美しく青きドナウ」「春の声」「ウィーンの森の物語」「トリッチ・トラッチ・ポルカ」、イヴァノヴィッチ:ワルツ「ドナウ川のさざなみ」、ワルトトイフェル:スケーターズ・ワルツ、メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」、マスネ:タイスの瞑想曲、ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲、スッペ:オペレッタ「軽騎兵」序曲、ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲、ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死、歌劇「ローエングリン」第三幕への前奏曲、マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲あたり。シュトラウス一家のワルツ・ポルカならウィーン・フィルの演奏で。指揮者はカルロス・クライバー、ボスコフスキー、ティーレマン、ネルソンスあたり。その他の小品は◯カラヤン/ベルリン・フィルか、◯ロビン・ステープルトン/ロイヤル・フィルで。Spotifyで【ステープルトン】と入力し、検索すれば僕が作成したプレイリストが出てくる。

女性の場合はオーケストラ曲よりもピアノ曲のほうが馴染みやすいかも知れない。モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付き」、ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」、第17番「テンペスト」、第23番「熱情」、エリーゼのために、ドビュッシー:月の光(ベルガマスク組曲)、夢、アラベスク第1番、亜麻色の髪の乙女、ショパン:革命、雨だれ、エオリアン・ハープ、英雄ポロネーズ、子犬のワルツ、シューマン:トロイメライ(子供の情景)、ノヴェレッテ第1番、リスト:愛の夢第3番、ため息(3つの演奏会用練習曲)、ラ・カンパネッラ(パガニーニ大練習曲)、グリーグ:ノクターン(抒情小曲集)といったところか。ピアニストとしてはピリス(モーツァルト)、内田光子(モーツァルト)、河村尚子(ベートーヴェン、ショパン)、ポリーニ(ベートーヴェン、ショパン)、アルゲリッチ(ショパン、シューマン)、フランソワ(ドビュッシー)、メジューエワ(ベートーヴェン、シューマン、ショパン)、ボレット(リスト)、アムラン(リスト)、ギレリス(ベートーヴェン、グリーグ)なら間違いなし。

②映画を大いに活用しよう!

映画は得体の知れないクラシック音楽を、明確なvision(視覚)に結びつける力がある。一番のお勧めはディズニーの「ファンタジア」(1940)。「ファンタジア 2000」もある。①でご紹介した小品がいくつも登場する。次に恩田陸原作の日本映画「蜜蜂と遠雷」。浜松国際ピアノコンクールがモデルになっている。またウディ・アレンの「マンハッタン」を観ればガーシュウィンの曲が大好きになるだろう。そしてMGMミュージカルの最高傑作「巴里のアメリカ人」。劇団四季が上演している舞台版を観てもいいい。あとクロード・ルルーシュ監督「愛と哀しみのボレロ」、アカデミー作品賞・監督賞に輝いた「アマデウス」。〈春の祭典〉初演時に於ける阿鼻叫喚の大混乱を活写した「シャネル&ストラヴィンスキー」や、ブラームスとクララの関係を描く「クララ・シューマン 愛の協奏曲」も面白い。また古い白黒映画だが今井正監督「ここに泉あり」と、大指揮者ストコフスキーも出演するディアナ・ダービン主演「オーケストラの少女」は名作中の名作。ジェニファー・ジョーンズ主演の美しい幻想映画「ジェニーの肖像」は全編にドビュッシーの名曲が散りばめられている。

あと大林宣彦監督「さびしんぼう」ではショパンの〈別れの曲〉、「ふたり」ではシューマンの〈ノヴェレッテ第1番〉とベートーヴェンの第九、「転校生」では〈トロイメライ〉〈タイスの瞑想曲〉〈アンダンテ・カンタービレ〉、細田守監督のアニメ版「時をかける少女」ではJ.S.バッハの〈ゴルトベルク変奏曲〉、ルキノ・ヴィスコンティ監督「ベニスに死す」ではマーラーの交響曲第5番が好きになるだろう。おっと、ヴィスコンティの「ルートヴィヒ」も忘れちゃいけない。〈ジークフリート牧歌〉〈子供の情景〉が印象的。タイムトラベルもの「ある日どこかで」はラフマニノフの〈パガニーニの主題による狂詩曲〉、中国映画「太陽の少年」は〈カヴァレリア・ルスティカーナ〉間奏曲がフィーチャーされている。またスタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」を観る前には是非、ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」を読んでおきたい。貴方がさらにディープな世界を体験したければ、ケン・ラッセル監督「マーラー」、「エルガー 〜ある作曲家の肖像〜 Elgar : Portrait of a Composer」、そしてディーリアスの晩年を描く「夏の歌 Song of Summer」をご覧あれ。

③「演奏時間が30分以上もある交響曲とかソナタを、どう受け止めれば理解出来るの?」

長大な交響曲や、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、フルートなど独奏楽器のためのソナタは、基本的に同じ構造を持っている。その共通項さえ把握しておけば、比較的聴き易くなるだろう。

古典派のハイドンからロマン派のシューマン、ブラームスあたりまで、交響曲や協奏曲、ソナタの大半は3楽章か4楽章で構成される(5楽章の「田園」など例外はあるが、ごく僅か)。全3楽章の場合は第2楽章、全4楽章の場合は第2,3楽章のことを【中間楽章】と呼ぶ。そして速度(tempo)は【開始楽章ー中間楽章ー終楽章】が、【急(fast)ー緩(slow)ー急(fast)】となっている。全4楽章の場合、【中間楽章】は【緩徐(slow)楽章】と【舞踏(dance)楽章】で構成される。ハイドンとモーツァルトの時代、【舞踏楽章】は基本にメヌエットだったが、ベートーヴェンがそれをスケルツォに変えた。イタリア語で「冗談」を意味し、語源的にはふざけた、諧謔(かいぎゃく)的音楽を指す。道化的と言い換えても良い。チャイコフスキーの場合、スケルツォの代わりにワルツを置いた。またブルックナーのスケルツォはホルンが活躍する「狩り」の音楽だ。【緩徐楽章】と【舞踏楽章】の順番はまちまち。マーラー:交響曲第6番みたいに、指揮者の解釈によって入れ替わる場合もある。

【開始(第1)楽章】は大半がソナタ形式である。【提示部ー展開部ー再現部ー結尾部(Coda)】で構成される。時に冒頭に【序奏】が置かれることがある。開始楽章は前述したようにテンポが速いが、【序奏】は対照的にゆったりしている。代表的なものにモーツァルト:交響曲第39番、ベートーヴェン:交響曲第7番、ブラームス:交響曲第1番がある。

【提示部】では主題(テーマ)が提示される。ハイドン、モーツァルトからブラームスあたりまで基本的に第二主題まで。ブルックナーの交響曲は第三主題がある。肥大化したマーラーの交響曲はもっと複雑で、第3番なんか第四主題まである。第一主題が長調の場合、第二主題は属調、第一主題が短調なら第二主題は平行調となる。例えば第一主題がハ長調(ドレミファソラシ)なら第二主題はト長調(ソラシドレミファ#)、半音階で七つ上(完全五度)。第一主題がイ短調(ラシドレミファソ)なら第二主題はハ長調(ドレミファソラシ)となる。つまり転調することで第二主題の開始が分かる。交響曲の場合、第一主題(動)は弦楽器、第二主題(静)は木管楽器が主体となる。基本的に【提示部】の終わりには繰り返し記号がある(最初に戻る)。聴衆に主題を覚えてもらうためだ。しかし指揮者によっては繰り返しを無視してサッサと次に移る人もいる。古楽器系オーケストラを振る指揮者は大抵、律儀に繰り返しを実行する(アーノンクール、ブリュッヘン、ノリントン、コープマン、ホグウッド、延原武春、鈴木秀美、ガーディナー、インマゼール、ラトル、パーヴォ・ヤルヴィ、ミンコフスキ、ロト、クルレンツィスら)。

【展開部】提示部で示された主題を様々に変奏、料理する。第一主題だけ扱われることが多い。

【再現部】提示部の主題が元の形で再現される。第二主題→第一主題の順番になることがしばしば。

【終楽章】はソナタ形式か、ロンド形式。特に協奏曲はロンド形式が圧倒的に多い。ロンド形式とは異なる主題をはさみながら、同じ旋律(ロンド主題)を何度も繰り返す。図式化すると、

A-B-A-C-A-D-...-A

つまり、常にAに戻ってくる。フランス語でrond(ロン)/ronde(ロンド)は「丸い」という意味で、英語ではround(ラウンド)となる。日本語で輪舞曲というのはそのため。

【舞踏楽章(メヌエット/スケルツォ/ワルツ)】は、ほぼ三部形式(A-B-A)だと考えて間違いない。Aを主部、Bを中間部(トリオ)という。トリオが2回登場するA-B-A-B-Aという特殊形もある(ベートーヴェン:交響曲第7番)。また複合三部形式というのもあり、主部や中間部がさらに細かくa-b-a/c-d-cで構成される。

【緩徐楽章】は一番バラエティに富む。ソナタ形式だったり、展開部を欠くソナタ形式(A-B-A-B)だったり(ベートーヴェン:交響曲第4番)、 ロンド形式だったり(ベートーヴェン「英雄」)、主題と変奏曲だったり(ベートーヴェン「運命」)する。

今まで述べてきた形式が基本形だが、時にフーガが登場することもある。代表例がモーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」やベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番、サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」、ブルックナー:交響曲第5番の終楽章。ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番は終楽章が後に独立し「大フーガ」となり、続く弦楽四重奏曲第14番は第1楽章がフーガ。

ブラームス:交響曲第4番は特殊で、第4楽章がシャコンヌ(またはパッサカリアとも言う)。たった8小節のシャコンヌ主題に、30もの変奏及びコーダが続く。これはJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番の終曲シャコンヌと併せて聴きたい。バッハのシャコンヌはストコフスキーや斎藤秀雄の編曲による管弦楽版もある。

いかがでしたか?例外もあるが、概ね基本構造はどれも同じ。何も難しいことはない。だから「ここまでが提示部(第一主題/第二主題)、この先が展開部…」といった具合に構造を意識して聴こう。これから聴く曲がどういう形式になっているか、予め解説書かWikipediaに目を通せば良い。Wikiには大抵の曲が載っているから。便利な時代になったものである。

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「ターミネーター:ニュー・フェイト」のにおける抹殺計画の杜撰さ

評価:B

Termi

公式サイトはこちら

製作・ストーリーとしてジェームズ・キャメロンが復帰、「ターミネーター2」の正式な続編である。リンダ・ハミルトンも戻ってきた。

悪くない。ティム・ミラー監督のアクション演出も冴えている。ただ正直言って、「ターミネーター」はシリーズ化に向いていない素材だなとつくづく思った。物語はT2で完結しており、続きは要らない。

未来の英雄(人間)を倒すために、殺人ロボットが過去に送り込まれ、ヒーローが生まれる前の母親、あるいは幼少期の彼自身を襲撃しようとする。その計画を阻止すべくヒーロー側も守護者(人またはロボット)を派遣する。ーというプロットの繰り返し。T1→T2の時はアーノルド・シュワルツェネッガーが敵(attacker)→味方(defender)に反転することに新鮮味があった。しかし柳の下に三匹目のどじょうはいない

あと今回気になったのは抹殺計画の杜撰さである。まずターゲットを確実に仕留めようと思えば、ターミネーターを単独に送り込むのではなく、10体一気にタイムスリップさせればよい。チーム・プレイだ。アメリカの特殊部隊SWATみたいに。それと映画「ゼロ・ダーク・サーティ」で描かれていたビン・ラディン暗殺のように、襲撃するのは深夜が基本である。相手の寝込みを襲う。夜ならアジトにいる可能性が高い。そして電源をシャットダウンすれば、暗闇で俊敏に動けず、退路を断つことが出来る。狙撃手は暗視装置があるから問題ない。

だから今回の敵がマヌケなのは昼にターゲットの家を訪ねていることに尽きる。外出している可能性が高いじゃん?すると次はどこに出かけているかを探り、追わねばならなくなる。全くもって労力の無駄である。未来のコンピューター・システムは経験値が低いのか、それとも単なる馬鹿なのか?

それとシュワちゃんはロボットなのに、年老いていることについての説明が一切なかった。何で??

小学校2年生の息子と鑑賞。観終わって「面白かった!」と興奮していた。

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鶴瓶・仁智「笑福亭に乾杯!」&「笑福亭鶴笑一門会 in 町家」

12月15日(日)神戸喜楽館@新開地へ。

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  • 笑福亭たま:ぐつぐつ(柳家小ゑん 作)
  • 笑福亭鶴二:御神酒徳利
  • 笑福亭仁智:いくじい(仁智 作)
  • 笑福亭鶴笑:SDGsを入れた環境落語「ゴミ怪獣の地球破壊」
  • 笑福亭鶴瓶:徂徠豆腐

「ぐつぐつ」はおでん達が主人公の奇想天外な新作。面白い!

「御神酒徳利」は二つの型があり、鶴二は柳家小さんが演っていた別名「占い八百屋」の方のようだ。

「いくじぃ」は嘗て、やんちゃをしていた「源太と兄貴」シリーズの後日譚。仁智の新作は庶民的で、「寅さん」シリーズのような味わいがある。

鶴笑のパペット落語の演出は結局、「立体西遊記」「義経千本桜」「時ゴジラ」などみんな同じで、今回の「ゴミ怪獣の地球破壊」もご多分に漏れないのだけれど、まぁ何度観ても爆笑だわ。ちなみにSDGsって「持続可能な開発目標」のことなのだそうだ。詳しくは外務省のサイトへ。

鶴瓶の「徂徠豆腐」を聴くのはこれが三回目。

12月21日(土)神足ふれあい町家@長岡京へ。

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  • 笑福亭鶴笑:絵本読み聞かせ
  • 笑福亭笑生:桃太郎
  • ぱふく亭レモン:住吉駕籠
  • 笑福亭鶴笑:ラーメン屋
  • ぱふく亭パペット:狸の札
  • 笑福亭笑利:八五郎坊主

笑福亭笑生(しょうき)は以前、福井県住みます芸人「クレヨンいとう」(吉本興業所属)として活躍していたらしい。現在37歳。この11月30日に福井で命名式と落語家デビューを果たしたばかり。

ちょっと残念だったのは鶴笑のパペット落語がなかったこと。チラシには笑福亭つる吉とあったが、恐らく笑生の出演が急遽決まったため、取り止めとなったのだろう。絵本の読み聞かせは、「おおかみだあ!」や「つきよのかいじゅう」が取り上げられた。鶴笑の絶妙な語り口で、会場の子供たちは大喜び。沸きに沸いた。

「ラーメン屋」は五代目古今亭今輔の噺で、五街道雲助はこれを改作し「夜鷹そば屋」として演じている。いや〜しかし、人情噺よりもパペット落語が観たかった。

トリの笑利もパペットを使わない古典落語だったので意表を突かれた(チラシと違う)。でも上手かった。

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ミュージカル映画「ロケットマン」とハグ問題について。

評価:A  公式サイトはこちら

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映画「ボヘミアン・ラプソディ」のレビューで僕は次のように書いた。

主演のラミ・マレックと衝突していたブライアン・シンガー監督が感謝祭の休暇後に現場に戻らなかったことで、撮影終了2週間前にシンガーは解雇された。後任のデクスター・フレッチャーが監督を引き継ぐまでの間、撮影監督ニュートン・トーマス・サイジェルが監督代行を務めたという。(中略)しかし出来上がった作品はそんな混迷を微塵も感じさせない、極めて高い完成度に到達しており、心底驚いた。奇跡と言ってもいい。

エルトン・ジョンの半生を描く「ロケットマン」を観て、漸く「ボヘミアン・ラプソディ」が傑作に仕上がった理由が了解出来た。あとを継いだデクスター・フレッチャーが極めて優秀だったのである。

「ボヘミアン」でクイーンの曲が流れるのは主にコンサートとレコーディング・シーンである。しかしフレッチャーは「ロケットマン」でやり方をごろっと変えた。エルトン・ジョンだけではなく彼を取り巻く人々も歌い、踊る。本格的ミュージカル映画仕立てとなっている。エルトンは(その内面はともかく、見かけ上)ド派手な人なので、イリュージョンに満ちた演出法がピタッとはまった。タロン・エガートンの歌唱もパーフェクト!

上記事で映画のクライマックスで歌われる「黄昏のレンガ道」(Goodbye Yellow Brick Road,1973) について極めて重要なことを書いた。併せてお読み頂きたい。

劇中、繰り返し少年期のエルトンが登場する。「ハグして」と父親に求めてもそれに応えてくれなかったという悲しみが、癒やされることのない心の傷としてずっと尾を引く。本作を観ながら真っ先に想い出したのがエリア・カザン監督ジェームズ・ディーン主演「エデンの東」(原作者はノーベル文学賞を受賞したジョン・スタインベック)である。主人公キャルは「父に愛されていないのではないか」と苦悩する。一方、兄アロンは父から期待され祝福されており、アロンに対するキャルの嫉妬心が物語を転がす原動力となる。これは旧約聖書の「創世記」に書かれたカインとアベルという兄弟の確執がベースになっている。神ヤハウェに愛されたアベルを恨んだカインは弟を殺してしまう。人類最初の殺人である。ヤハウェはカインをエデンの東に追放する。

あと映画「フィールド・オブ・ドリームス」と、山田太一原作・大林宣彦監督の「異人たちとの夏」を観て、父親というものは息子と絶対にキャッチボールをしておくべきだということを学んだ。確かあれは「パンダコパンダ」DVDの特典映像だったと記憶しているが、宮崎駿の息子・吾朗がインタビューに答えて、少年時代に父の仕事が忙しくて彼が起きている間に帰宅することが全くなく、「キャッチボールも一度もしてもらえなかった」と恨みつらみを滔々と並び立てていたのがとても可笑しかった。いやいや吾朗くん、父親があの偉大な宮崎駿じゃなかったら、君がアニメーション映画を監督するチャンスを与えられるなんて一生なかったろうよ。感謝なさい。

というわけで全国のお父さんたち。息子が幼いうちにしっかりハグして、キャッチボールをしてあげておこう。そうじゃないと30年経っても恨まれ続けるハメになるから。

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「シシ神の森」屋久島旅行記

8月3日(土)から7日(水)まで4泊5日で鹿児島県・屋久島に旅をした。

初めて屋久島を訪れたのは1997年夏。映画「もののけ姫」が公開された年である。宮崎駿監督とスタッフがロケハン時に泊まった民宿「水明荘」に僕も宿をとった。監督の色紙が飾られていた。往復8時間かけて縄文杉まで歩いたのだが、その時の旅の記録はここに書き記した。「スタジオジブリ」HPにも掲載された。あと帰りの屋久島空港の待合で、たまたま僕の隣に立川談志が座っていたのも懐かしい思い出だ。その時僕は談志の落語を聴いたことがなかったので話しかけたりしなかったが、付き人に対して何かブツブツ小言を並べていた。

今回宿泊したのはJRホテル屋久島。とろみのある天然温泉が極上だった。和歌山県の龍神温泉、愛媛県今治市にある鈍川温泉など、「美人の湯」と呼ばれる温泉は数あれど、僕が入った中では屋久島の泉質が最高だった。

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上の写真はホテルの展望風呂付き客室からの眺め。絶景のオーシャン・ビューである。食事も美味しかった!

それにしても可笑しいのは、屋久島には鉄道が走っていないんだよね。何故JRホテルがここに??

到着初日は空港近くでレンタカーを借りてヤクスギランドと、その近くにある紀元杉へ。

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屋久杉は何本もの太い縄を寄せ集め、束ねたような印象で、どこか注連縄(しめなわ)を想起させる。

「屋久島はひと月に35日雨が降る」と表現したのは林芙美子の小説「浮雲」である。成瀬巳喜男監督の映画版も日本映画史に燦然と輝く傑作だ。空港では晴れていたのに山中のヤクスギランドに着く頃は土砂降り。また海岸線に車で降りてくると道路はカラッと乾いていた。

旅の2日目は丸一日、ガイドを雇い沢登りを愉しんだ。屋久島の川の水はとてもきれいで、鮎も泳いでいる。ヘルメット、プロテクター、ライフジャケットを身に着けて、小学校2年生の息子は何度も高い岩の上から川に飛び込んでいた。その光景を見ながら映画「明日に向って撃て!」とか「ヤング・ゼネレーション」「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」の一場面を想い出した。

お昼はガイドの人が森の中でパエリアを料理してくれた。有頭海老やムール貝の入った本格的なもの。今まで食べたパエリアの中で一番の味だった。でも同時に飲んだインスタントの味噌汁も美味しかったので、シチュエーションの効果も大きいのだろう。

3日目、白谷雲水峡を歩く。

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今にも森の妖精〈こだま〉が出てきそうな「苔むす森」。

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ちなみに〈こだま〉は漢字で〈木霊〉と書き、樹木に宿る精霊のことである。「もののけ姫」が大好きな人はここと、縄文杉を併せて訪れたい。

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二股の「くぐり杉」である。

大川(おおこ)の滝は「日本の滝 百選」にも選ばれている。

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実にダイナミック。すぐ近くまで行けて、水飛沫を全身に浴びた。

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最終日は千尋(せんぴろ)の滝を訪れた。

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左側にある巨大な花崗岩 の岩盤が壮観である。

そしてトローキの滝へ。海に直接水が落ちる海岸瀑である。

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屋久島は山・川・海と大自然を満喫出来る。あと昨年の沖縄・宮古島でも感じたのだが、関西より断然涼しい。ガイドの人も「屋久島は避暑地です」と断言していた。日本の夏は南の島に限る!

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ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(うんちくあり)

評価:B+

公式サイトはこちら

まずは映画レビューを集計する北米のサイトRotten Tomatoes(腐ったトマト)をご覧頂きたい。

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プロの評論家の肯定的意見が40%しかなく、「腐った(Rotten)」評価を与えられているが、一般観客の評価は85%と極めて高い。これだけ両者で差異が出ることは希少である(「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」の場合、評論家の評価が91%で「新鮮(Fresh)」、一般客が44%で真逆の結果になっている)。

プロット・脚本に疵があることは確かである。「どうしてそうなるの?」と登場人物たちの行動原理に首を傾げてしまう場面も多々ある。しかし本作の主眼はあくまで〈怪獣プロレス〉〈怪獣バトル〉であり、はっきり言ってしまえば人間ドラマなんて二の次だ(どうでもいい)。日本では到底成しえないVXF技術の効果も抜群で、当初の目的は見事に達成出来ていると言えるだろう。そもそも本家・東宝のゴジラ・シリーズですら、1954年の第1作は掛け値なしの傑作だが、キングギドラのデビュー作「三大怪獣 地球最大の決戦」(64)だって、「怪獣大戦争」(65)だって、本多猪四郎(監督)×円谷英二(特技監督)のコンビは変わらないものの、脚本はグダグダである。

本作に於けるゴジラ・モスラ・ラドン・キングギドラの大乱闘には童心に帰ってワクワクさせられた。怪獣たちは神々しいまでに美しい。マイケル・ドハティ監督の怪獣愛が作品から滲み出ており、どうしても評価に下駄を履かせざるを得ない。伊福部昭のテーマは勿論のこと、古関裕而が作曲し、ザ・ピーナッツが歌った「モスラの歌」まで流れてきたのには心底びっくりした。おまけに(何の意味もなく)チャン・ツィイーが双子という設定になっているではないか!!さらに第1作へのオマージュとしてオキシジェン・デストロイヤーは登場するし、芹沢博士(渡辺謙)はあんなこと(←ネタバレ回避)するしで、いやはや参りました。あとラドンが飛び立つところで、ラドンの影が街並みを横切る場面は「(怪獣オタクの心を)わかってるぅ〜」と嬉しくなった。

ここでうんちくを傾けておくと、「モスラ」の原作小説「発光妖精とモスラ」を執筆したのは中村真一郎・福永武彦・堀田善衛という錚々たる文学者たちである。福永の息子が芥川賞作家の池澤夏樹。蛾を意味する英語のMothを名称に取り入れた。元祖ラドンは阿蘇山の火口に生息しており、朱雀(火の鳥)のイメージが重ねられていると思われる。

またキングギドラの原型は「古事記」「日本書紀」に記載されたヤマタノオロチ(八岐大蛇である。円谷英二は八岐大蛇が登場する「日本誕生」(1959)で培った技術をキングギドラ開発に投入した。そして庵野秀明(総監督・脚本)による 「シン・ゴジラ」で決行されたヤシオリ作戦は、スサノオ(須佐之男)が八岐大蛇を退治する際に酔わせるために用いた酒「八塩折之酒(やしおりのさけ)」に由来する。

モンスターやSF映画にはしばしばマッドサイエンティスト mad scientist(常軌を逸した科学者)が登場する。その原型であり、最も有名なのはメアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」のヴィクター・フランケンシュタインだろう。他に「博士の異常な愛情」のストレンジラブ博士、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のエメット・ブラウン博士(通称ドク)がいる。「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」にもマッドサイエンティストが登場するのだが、極めてユニークなのは女性だということである。これは僕が知る限り、映画史上初なのではなかろうか?新機軸を打ち出したと言っても過言ではなかろう。

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平成最後の吉野の桜

4月13日(土)奈良県の吉野山を訪ねた。十数年前に関西に引っ越してきてから毎年春に吉野に行くことが我が家の恒例となっているが、昨年は日程が合わず二年ぶりの再会となった。見事に満開であった。

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桜といえばまず現代人はソメイヨシノ(染井吉野)を思い浮かべるが、あれは江戸時代に園芸用に品種改良されたクローン植物であり、吉野とも一切関係がない(お江戸の植木屋が憧れからつけた名称である)。和歌に登場する「桜」は山桜を指す。

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「古今和歌集」から桜が詠まれた歌を紹介しよう。

桜花咲きにけらしなあしひきの山のかいより見ゆる白雲  貫之
(桜がどうやら咲いたらしいよ。山の谷間から見える白雲は)

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み吉野の山べにさける桜花雪かとのみぞあやまたれける  友則
(吉野の山辺に咲く桜は雪ではないかとつい見違えてしまった)

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ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ  友則
(陽の光がおだやかな春の日に、どうして花はあわただしく散るのだろう)

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吉野を愛した西行の歌に、

願わくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月の頃
(願うことなら、旧暦2月15日-満月の頃、満開の桜の下で死のう)

とある。旧暦2月15日は釈迦入滅の日で、現在の4月初旬頃と考えられる。

武士を捨てた西行は法師となり、吉野の奥千本に今もある西行庵で3年間侘び住まいをしたと伝わる。

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西行にはまた、次のような歌もある。

吉野山昨年(こぞ)の枝折(しをり)の道かへてまだ見ぬ方の花をたづねむ

しをり:木の枝を折って道しるべとすること。

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さらに、

世の中を思へばなべて散る花のわが身をさてもいづちかもせむ
(この世の中について考えると、全ては散る花のように無常で儚い。ならばさて、我が身を一体どこへ向かわせたらよいものか)

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吉野の桜は見る人それぞれに死生観に立ち返らせ、物思いに耽らせる。そんな春の日の、穏やかなひとときであった。

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