テレビくん、ハイ!

2016年7月17日 (日)

祝!ウルトラマン放送開始50年

初代「ウルトラマン」の放送がTBSで始まったのは1966年(昭和41年)7月17日のことだった。つまり今日でちょうど50年である。

僕は「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」(1967)、「帰ってきたウルトラマン」(1971)、「ウルトラマンタロウ」(1973)の主題歌を歌えるのだが、話の内容は全く覚えていない。怪獣の名前も言えない。年齢的にリアルタイムで体験しているとは考え難く、恐らく幼年期に夕方の再放送を観ていたのだと思われる。

小学校3-4年生の頃にはすっかり卒業して、その後は無縁の暮らしをしていた。再び興味を持ったのは10年前に関西に引っ越してきて、落語を聴くようになってからである。噺家の桂文三が熱烈なウルトラマン・ファンで、マクラでよくその話をした。東京から来演した柳家喬太郎も出囃子で「ウルトラQ」を使ったり、ウルトラマンの怪獣を登場させる「抜けガヴァドン」(古典「抜け雀」のパスティーシュ)を高座に掛けたりした。この噺を初めて聴いたのが2015年だが、その時はガヴァドンという名前すら知らなかった。

僕の息子は現在5歳だが、3歳頃から恐竜やウルトラマンの怪獣が好きになりフィギュアを集め始めた(僕自身は親に買って貰ったことがない)。そこでTSUTAYA DISCUSでDVDをレンタルし、「ウルトラマン」全39話と「ウルトラセブン」全49話を息子と一緒に観た(ただし佐々木守脚本、実相寺昭雄監督のセブン第12話「遊星より愛をこめて」はある事情により欠番になっている。画質は悪いが幾つかの動画サイトで試聴可能)。現在は「帰ってきたウルトラマン」を途中まで観ているところである。

元祖「ウルトラマン」のシリーズ中、突出して面白いのは佐々木守脚本、実相寺昭雄監督の回である。ファン投票でトップの人気を誇る「故郷は地球」や、ガヴァドンが登場する「恐怖の宇宙線」もそう。このコンビによる「怪奇大作戦 京都買います」はテレビドラマ史上最高傑作だと信じて疑わないのだが、どうしてなかなかウルトラマンも負けてはいない。

佐々木脚本が傑出しているのは価値観の反転を行っていることにある。ガヴァドンは子どもたちの描いた画が宇宙線を浴びて実体化した怪獣であり、彼等はウルトラマンに「ガヴァドンを殺さないで!」と懇願する。つまりウルトラマン&科学特捜隊は【子どもたちの想像力を踏みにじる大人たち】に成り下がり、どちらが正義でどちらが悪かこんがらがってくるのである。父性原理で「断ち切る」性質を持つ欧米人(キリスト教徒&ユダヤ教徒)の思想は光と闇、天国と地獄、天使と悪魔に分ける二元論がその根幹を成している。しかし「世界はそんな単純な二元論で割り切れるものではない」という立場に立つのが我々日本人なのだ。考えてみればゴジラ(Godzilla)も人間にとっての敵であると同時に、台風や津波、地震など自然災害にも似た「荒ぶる」であり、水爆実験による「被害者」でもある。その多義性に魅力の本質がある。

「故郷は地球」(2016年8月21日午後5時よりNHK BSプレミアムで放送予定)に登場するジャミラも宇宙にひとりぼっちで取り残された宇宙飛行士の成れの果ての姿だ(映画「オデッセイ」のマット・デイモンと同じ)。彼は本当に退治すべき「悪」なのだろうか?それとも……。

「怪獣墓場」では科学特捜隊が今まで倒した怪獣たちを弔うために戒名をつけ、坊さんを呼んでお経を唱える怪獣供養が行われる。そのユニークな発想にびっくりした。そして怪獣墓場から落っこちてくる亡霊怪獣シーボーズ(←坊主?)は空を見上げて泣き叫ぶばかりで破壊行動もせず、もののあはれを感じさせる。余談だが怪獣墓場をもじった怪獣酒場が神奈川県川崎市にあり、大阪・難波にも元祖怪獣酒場があった。後者は惜しまれつつ閉店したのだが。

実相寺監督独特の凝りに凝った構図も見どころのひとつである。

また第一期を企画立案し、メインの脚本家として活躍したのが金城哲夫(きんじょうてつお)。沖縄県出身である。「ウルトラセブン」や「帰ってきたウルトラマン」の多くを執筆した上原正三も沖縄県出身である。彼等は幼少期に凄絶な沖縄戦を体験し、その後アメリカ合衆国に統治された故郷を憂えた。沖縄が返還されたのは1972年、「帰ってきたウルトラマン」放送終了後のことである。そもそも琉球王国は1609年に薩摩藩に征服され付庸国となり、明治維新の時に沖縄県として再編された。つまり彼等にとっては日本人も侵略者なのである。そういう屈折した複雑な想いがシリーズに込められている。

今回初めて「ウルトラマン」と「ウルトラセブン」の明確なコンセプトの違いを知った。マンが戦う相手は怪獣だが、セブンの敵は宇宙人。つまり後者はSF要素が色濃い。セブンにはウルトラホーク1号から3号までのメカの魅力も加味され、ウルトラ警備隊の専用車「ポインター」のデザインも格好いい。また主人公がマンに変身すると必ず巨大化するが、セブンは①人間と等身大のまま、②巨大化するという2段階のプロセスが有る。

「ウルトラセブン」になると佐々木守が2本しか執筆していないのが哀しい。しかもうち1本(「遊星より愛をこめて」)は永久欠番だし。セブンの最高傑作は金城哲夫脚本、実相寺昭雄監督「狙われた街」(2016年8月28日午後5時よりNHK BSプレミアムで放送予定)であることは論を俟たないだろう。卓袱台を挟んでウルトラマンとメトロン星人が対峙するのは史上屈指の名場面である(これぞ昭和!)。また上原正三脚本、実相寺明雄監督「第四惑星の悪夢」は後の映像作家たちに多大な影響を与えた。例えばアニメ「宇宙戦艦ヤマト 2199」の第14話「魔女はささやく」は「第四惑星の悪夢」への熱烈なラヴ・レターである。

セブンに参加した新しい才能で特筆すべきは「快獣ブースカ」で脚本家デビューを果たした市川森一である。「盗まれたウルトラ・アイ」は詩的かつ叙情的な逸品だ。市川は後にTBSの金曜ドラマ「淋しいのはお前だけじゃない」で第1回向田邦子賞を受賞する。また市川が執筆したNHK大河ドラマ「黄金の日日」は三谷幸喜のお気に入りで、松本幸四郎演じる主人公・呂宋助左衛門(るそんすけざえもん)は本日放送される「真田丸」にも特別出演する運びとなった。

あとセブンで注目すべきはアンヌ隊員(菱見百合子)のエロさである。この役は映画出演決定を理由に降板した豊浦美子の代役として急遽決まったため、コスチュームのサイズが合わず体にぴったりとフィットしたものになったという。市川森一や評論家・森永卓郎らが「アンヌは初恋の人」と告白している。また落語家・立川談志も写真集「アンヌへの手紙」に寄稿している。

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「ウルトラセブン」はモロボシ・ダンとアンヌの悲恋物語として観ることも出来る。最終話(2016年9月11日午後5時よりNHK BSプレミアムで放送予定)でシューマンのピアノ協奏曲が流れる趣向はとてもロマンティックで、胸がキュン!とする。一方、「ウルトラマン」の紅一点、フジ・アキコ隊員(桜井浩子)はお色気ゼロだ。

金城哲夫は1969年に円谷プロを退社し沖縄に帰った。「帰ってきたウルトラマン」では第11話のみ脚本を執筆している。佐々木守は完全に撤退し、実相寺昭雄は第28話のみ監督した。その代わり初代「ゴジラ」の名匠・本多猪四郎が第1話・最終話など全5話を監督していることが「帰ってきた」の白眉である。

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2016年3月22日 (火)

観ずに死ねるか!? 傑作ドキュメンタリー10選 プラス1

はじめに、ドキュメンタリーという性質上、映画とテレビ作品との区別をつけなかった。順不同で選りすぐりの逸品をご紹介していこう。

  • 映像の世紀 (NHK/ABC)
  • 未来への遺産 (NHK)
  • プラネットアース (BBC/NHKほか)
  • 戦火のマエストロ・近衛秀麿
    〜ユダヤ人の命を救った音楽家〜 (NHK)
  • 東京裁判
  • 柳川堀割物語
  • ボーリング・フォー・コロンバイン
  • 不都合な真実
  • マン・オン・ワイヤー
  • DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on
    少女たちは傷つきながら夢を見る
  • ゆきゆきて、神軍

映像の世紀」 戦後50周年およびNHKの放送開始70周年記念番組として制作・放送されたドキュメンタリー番組。アメリカABCとの国際共同取材。 1995年3月から1996年2月にかけて、「NHKスペシャル」で放映された。全11集。また2015-6年に「新・映像の世紀」も放送された。これは「映像の世紀」を補完する内容なので、併せてどうぞ。20世紀の歴史が手に取るように良く理解出来る。貴重な映像が満載。歴史を学ぶことは処世術を身につけること。これからの貴方の人生に必ず役に立つ筈だ。加古隆が作曲したテーマ音楽「パリは燃えているか」(下野竜也/NHK交響楽団)が印象的。

未来への遺産」 1974年3月から75年10月までNHK放送開始50周年記念番組として放送された大型番組。「文明はなぜ栄え、なぜ滅びたか」をテーマに制作され、現在では取材不可能な地域を含む、44か国、150か所の文化遺産を徹底取材。ユネスコの世界遺産条約が発効したのが1975年、第1号が世界遺産リストに登録されたのが78年なのでそれ以前の番組ということになる。マヤ文明の遺跡から発掘されたパカル王の翡翠の仮面は番組収録後の1985年に盗難に遭い、4年半後に無事戻ってきた。あまりにも有名で、盗人が売り捌くことが出来なかったようだ。

Palenque

また本作に登場するバーミヤン渓谷の2体の大仏は後にアフガニスタン戦争でタリバンによって破壊されてしまった。武満徹の音楽がいい(岩城宏之/NHK交響楽団)。あと女優・佐藤友美が「幻影」として登場するのには賛否両論あるだろうが、僕は雰囲気があって好きだな。DVDかNHKアーカイブスでどうぞ。

プラネットアース」 

Planet

イギリスBBCによる自然ドキュメンタリー・シリーズ。NHKとアメリカ・ディスカバリーチャンネルとの共同制作、全11集。2006-7年に放送された。エミー賞では作品賞など4部門を受賞。後に「アース」としてダイジェスト版が映画館でも上演されたが、是非オリジナル版を観て欲しい。音楽はジョージ・フェントンで、ベルリン・フィルが演奏していることも話題となった。また姉妹編としてBBCの海洋ドキュメンタリー「ブルー・プラネット」(こちらもベルリン・フィルが参加)やフランスのドキュメンタリー映画「WATARIDORI」もお勧め。宇宙船地球号に有る、雄大な自然を堪能しよう。

戦火のマエストロ・近衛秀麿」は2015年にNHK BS1スペシャルとして放送された最新のドキュメンタリー。番組公式サイトはこちら。事実は小説よりも奇なり。とにかくびっくりした。ベルリン・フィルを指揮し、日本初の常設オーケストラを組織した男、近衛秀麿。彼は内閣総理大臣・近衛文麿の弟でもあった。兄と最後に交わした言葉が切ない。余談だが阪急電鉄・宝塚歌劇団・東宝株式会社の創業者・小林一三は第2次近衛内閣で商工大臣を務めた。このあたりのことはNHK 放送90年ドラマ「経世済民の男 小林一三」で面白く描かれているのでそちらもお勧め。公式サイトはこちら

東京裁判」(1983) 小林正樹監督によるドキュメンタリー映画。上映時間な、なんと4時間37分!!でも僕は公開当時に映画館で一気に観たよ。重厚な手応えがあり。昭和史について学ぼう。音楽は武満徹。

柳川堀割物語」(1987) 

Hori

福岡県柳川市に張り巡らされた水路網「掘割」。荒廃した水路が再生されるまでの物語。「火垂るの墓」「かぐや姫の物語」の高畑勲監督作品。プロデューサーは宮﨑駿。元々アニメの舞台として柳川を登場させるつもりでロケハンを行ったが、水路再生の中心人物である市職員の話を聞いて感銘を受け、柳川そのものを主題にしたドキュメンタリーを製作することに決めたという。上映時間165分。人間と自然(環境)の関係(共生)がテーマという点で、高畑・宮崎アニメに通じるものがある。

マン・オン・ワイヤー」(2008,英)

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アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞。監督のジェームズ・マーシュはフィクションも撮る人で、そちらの代表作には「博士と彼女のセオリー」がある。本作のレビューはこちら。後にジョゼフ・ゴードン=レヴィット主演でハリウッド映画に生まれ変わった。

人は何故、一見無意味に思えることに対して情熱を注ぐのか?哲学的思考の旅へようこそ。

ボーリング・フォー・コロンバイン」(2002,米) アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞受賞。コロンバイン高校銃乱射事件に題材を取り、銃社会アメリカの病んだ姿を浮き彫りにする。2003年公開当時に書いたレビューはこちら。なおこの事件をモチーフにした劇映画「エレファント」は2003年カンヌ国際映画祭でパルム・ドール及び監督賞を受賞した。

不都合な真実」(2006,米) アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞、及びアカデミー歌曲賞を受賞。元アメリカ合衆国副大統領アル・ゴアの講演をベースに、地球温暖化のメカニズム解明に挑む。2007年ゴアは環境問題への取り組みが評価され、ノーベル平和賞を受賞。ノーベル平和賞って何でもありだな。

DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら夢を見る」2012年公開当時に書いたレビューはこちら。アイドル映画を観に行ったら戦争映画だったという衝撃。文字通り戦慄が走った。

ゆきゆきて、神軍」 本作の魅力は奥崎謙三という人物の強烈なキャラクターに負うところが大きい。「カメラを向けられると、演技してしまう出演者」を取材対象として「虚実不明」の状況にし、ドキュメンタリー映画の持つ「いかがわしさ」「やらせ的志向」を徹底的に突き詰めた作品。キネマ旬報ベストテン第2位。

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2015年1月13日 (火)

三谷幸喜版「オリエント急行殺人事件」

フジテレビで二夜連続放送された三谷幸喜(脚本)「オリエント急行殺人事件」を観た。公式サイトはこちら。CMをカットすると第一夜:2時間28分、第二夜:2時間17分の放送時間であった。まず、筆者とアガサ・クリスティの接点について語ろう。

僕は小学校低学年の頃から推理小説が大好きで、シャーロック・ホームズ、アルセーヌ・ルパン、江戸川乱歩の「明智小五郎と少年探偵団」シリーズなどを学校の図書館から借りてよく読んでいた。小学校4,5年生位の頃、新潮文庫でクリスティの「アクロイド殺人事件」を読んでそのトリックの凄さに衝撃を受けた。次に出会ったのが「オリエント急行殺人事件」で、これも驚天動地の犯人で「推理小説って凄い!」と感銘を受けた。その後ポアロものはすべて読破したが、アクロイドとオリエントを超える作品はなかった。丁度その頃、映画館でジョン・ギラーミン監督の「ナイル殺人事件」が封切られ、父親にせがんで観に連れて行ってもらった(ニーノ・ロータの音楽=ほぼ遺作が大好きで、サントラLPレコードも小遣いで買った)。当時は未だDVDはおろかビデオも一般家庭に普及していない時代だったので、シドニー・ルメット監督の映画「オリエント急行殺人事件」を観ることが出来たのは大学生以降である。

三谷版「オリエント急行殺人事件」第一夜を観て、まずびっくりしたのは日本に舞台を移した以外はほぼ原作に忠実だったことである。ポアロ=勝呂が過去に解決した事件というのが「いろは殺人事件」というのには爆笑(「ABC殺人事件」のパロディ)。またオース・スター・キャストであるとか、野村萬斎の扮装がアルバート・フィニーに、八木亜希子のヘアメイクがイングリッド・バーグマンのそれにソックリだとか、シドニー・ルメット版を相当意識した演出になっていた。さて、そして第一夜で事件解決まで一気に行き、つまり映画のラストまで辿り着き、第二夜で過去に何が起こったかというオリジナルな展開となるという大胆な構成に唸った。

警告!!以下ネタバレあり!!




「オリエント急行殺人事件」は復讐劇であり、こうして再構成されるとな、な、なんと!忠臣蔵に繋がっていることに気付かされる(松嶋菜々子が大石内蔵助の役回り)。復讐に参加する同士(義士)を集める過程はさながら「オーシャンと十一人の仲間」や黒澤明監督「七人の侍」の如し。次第に仲間が集まってくる様子は観ていてワクワクする。そして犯人のひとりが陪審員を象徴する「12」という傷口の数にこだわる件はシドニー・ルメットの「十二人の怒れる男」であり、それをパロディにした東京サンシャインボーイズ時代の三谷の代表的芝居「12人の優しい日本人」に繋がっている。チーム・プレイの愉しさ。

第一夜(本編)は幼女誘拐殺人事件という痛ましい悲劇(リンドバーグ事件をモデルにしている)であるが、第二夜は殺人をめぐる喜劇に変容する妙。このユーモアのセンスはアルフレッド・ヒッチコック監督作品の雰囲気を彷彿とさせ、さらに言えば三谷が敬愛するビリー・ワイルダー監督「情婦(原作はクリスティーの「検察側の証人」)」へのオマージュでもある。本作の持つこの多重構造に僕は感服した。大傑作、必見。

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2014年4月16日 (水)

大草原の小さな家

息子が生まれてから、(映画やテレビドラマの中で)将来彼に何を観せたらよいかをしばしば考えるようになった。そしてドラマで真っ先に頭に浮かんだのが「大草原の小さな家」である。

「大草原の小さな家」は1974年から82年までアメリカNBCの製作で9シーズンに渡り放送された。日本では75年からNHKで放送され、僕は小学生の頃に観ていた。

昔発売されたDVDは高価だったようだが、現在は例えばシーズン1(全24話)のバリューパック8枚組がAmazon.co.jpならなんと2,500円程度で手に入る。DVD 1枚が300円少々、1話(45-48分)に換算するとたった100円!あまりの安さにびっくりする。

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調べてみると「父さん」役のマイケル・ランドンは第1話の放送当時37歳で、「母さん」役のカレン・グラッスルが32歳。小学生で観た頃は遥か先をゆく頼もしい大人だと思っていたのに、いつの間にか僕が彼らの年齢を通り越してしまった。しかし今でも「父さん」は逞しく大きな包容力で見守ってくれるし、「母さん」は綺麗で優しく、凛として賢い。ふたりは理想の両親である。そして主人公ローラ役のメリッサ・ギルバートはそばかす顔の可愛い女の子で、姉メアリー役のメリッサ・スー・アンダーソンは中々の美人である。

あと驚いたのは、マイケル・ランドンがこのシリーズに出演するだけではなくエグゼクティブ・プロデューサー(製作総指揮)を務めていたこと。さらに初回のパイロット版「旅立ち」(「大草原の小さな家」特別版DVDに収録)では監督もこなしている。どうも各シーズンの第1話は必ず彼が監督していたようだ。ランドンが脚本・監督したシーズン1の「ローラの祈り」やシーズン2「町一番の金持ち」などは非常に感動的なエピソードである。こんな才能があったなんて全然知らなかった!また「ローラの祈り」には映画「マーティ」でアカデミー主演男優賞を受賞した名優アーネスト・ボーグナインが出演していることも特筆に値する。

古い作品なので画質がどうかと心配したが特に問題ない。同じシーズンでもフィルムの保存状態が違うのか、各回で色合い(褪せ具合)が異なるのはご愛嬌。懐かしい日本語吹き替えでも、日本語字幕付き英語版でも鑑賞可能。今まで吹き替え版しか知らなかったから、初めてインガルス一家の生声を聴いた。

本当に久しぶりに再開して感じたことは「Homeに戻ってきた!」という歓びと安堵感である。それは「風と共に去りぬ」でスカーレット・オハラがタラに帰った時の気持ちに似ている。この物語こそ、僕の原点なのだ。小学生で観たきりなのにパイロット版の映像も記憶に残っていて、我ながら驚いた。デヴィッド・ローズが作曲したテーマ曲も、何もかも皆懐かしい。今回聴き比べて分かったのだが各シーズンごとにオープニングとエンディング曲のアレンジが少しずつ異なるんだね。

放送開始から40年経った現在観ても、十分鑑賞に耐えうるし中身も色褪せていない。これは家族の物語であり、アメリカ開拓史としても面白い。あと倉本聰作の「北の国から」は明らかにこの作品をベースにしていることも判明した。実際、「北の国から」企画の段階から日本版「大草原の小さな家」を目指したとの証言もあり、Wikipediaにもそのことが記載されている。

今の小学生や中学生の子供達にも是非観てもらいたい。「わんぱくでもいい、たくましく育って欲しい(1970年代CMのキャッチコピー)」、そんな願いが込められた愛しい作品である。

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2014年1月22日 (水)

「半沢直樹」の魅力を分析する。

TBSのテレビドラマ「半沢直樹」最終話の視聴率は関東で42.2%、関西で45.5%を記録し、1977年以降の民放のテレビドラマ史上第1位となった。主演の堺雅人は大ブレイク、流行語大賞まで掻っ攫った。

巷で話題になり、僕が観たいと思った時には既に舞台が大阪から東京に移って後半戦に突入していたので、リアルタイムで観ることは諦めた。そして年が明けてからTSUTAYA DISCASでブルーレイを借り、一気に観た。評判に違わずすこぶる面白く、深夜に観ると興奮して眠れない。史上最高の視聴率を叩き出しただけのことはある。そこで「何が他のドラマと異なるのか?」ということについて僕なりに考えてみた。

1.復讐劇:「半沢直樹」の魅力は「やられたらやり返す、倍返しだ!!」の決め台詞が象徴するように、復讐劇であることがまず第一に挙げられるだろう。アレクサンドル・デュマが書いた復讐劇「モンテ・クリスト伯」(巌窟王、1845-46)は今でも世界中で読み継がれているし、最近、舞台ミュージカルにもなった→こちら。また映画化されたスティーヴン・ソンドハイムのミュージカル「スウィーニー・トッド」も「モンテ・クリスト伯」を下敷きにしている。日本でも江戸時代から仇討ちの芝居は庶民に人気だ。「忠臣蔵」などはその典型だろう(「忠臣蔵」は仇討ちに加え、日本独自の美意識=《潔く散る》という価値観に貫かれている)。復讐は相手が巨悪であるほど盛り上がる。しかし民主主義が浸透した現代日本でそういう存在は稀だ。滅多に見つかるものではない。だから「半沢直樹」の着眼点は秀逸であった。上司を呼び捨てにして土下座させるー中々実現することが叶わない甘い夢。日本中のサラリーマンがこれに溜飲を下げた。

2.恋愛の不在:1980年代後半(「男女7人夏物語」)から1990年代(「東京ラブストーリー」「愛という名のもとに」)にかけ一世を風靡したトレンディドラマ。それ以降日本のテレビドラマはターゲットを20〜30代独身女性(女子大生、OL等)に絞った「恋愛至上主義」となった。しかし「半沢直樹」はその風潮に背を向けた。銀行という男の世界を舞台とした無骨な経済ドラマである。全然トレンディじゃない。女性の登場人物は少ないし、半沢も最初から既婚者だ。常識的に考えれば当たる筈がない。しかし、それがかえって新鮮で受けた。従来の作劇法を覆すことで、新たな活路を見出したのである。

3.タイトル:「半沢直樹」というタイトルはテレビドラマとして極めて異例である。主人公の名前だけ。例えば過去に「寺内貫太郎一家」とか「課長島耕作」とかはあったが、人物を説明する修飾語が伴うことが常であった。日本映画のタイトルとしても極めて少ない。パッと思いつくのは「横道世之介」くらいかな?実はハリウッド映画にはこういうケースが比較的多い。トム・クルーズ主演Jerry Maguire→「ザ・エージェント」とか、ジョージ・クルーニー主演のMichael Clayton→「フィクサー」、トム・ハンクス主演のForrest Gump→「フォレスト・ガンプ/一期一会」、Hugo→「ヒューゴの不思議な発明」、Butch Cassidy and the Sundance Kid→「明日に向かって撃て」、Bonnie and Clyde→「俺たちに明日はない」など。つまり邦題では全く違うタイトルになったり、余分な言葉が付け足されたりすることが当たり前になっているのだ。だからこそ逆に「半沢直樹」のシンプルさ、潔さは目立った。ちなみに原作は「オレたちバブル入行組」(第一部・大阪西支店編)と「オレたち花のバブル組」(第二部・東京本店編)である。

4.かぶく(傾く):「半沢直樹」には香川照之(市川中車)、片岡愛之助というふたりの歌舞伎役者が出演している。非常に大仰な演技で見栄を切り、「かぶいて」いる。当然意図的な所作であり、このスタイルがドラマに良く似合っている。また元・劇団四季の石丸幹二や、ニナガワ・スタジオ(蜷川幸雄 主宰)出身の高橋洋を起用したりと、リアリズムよりも演劇的手法を志向しているのは明らかだ。さらにこの「何もそこまで!」というケレン味を増幅するのが、しばしば登場する顔の半分だけ光を当て、残り半分は影にするという演出。輪郭がくっきりした、濃い芝居を引き立たせている。

5.音楽:通常テレビ・ドラマはレコード会社や芸能事務所(例えばジャニーズ)とタイアップして主題歌を流すのが慣例となっている。しかし「半沢直樹」は違う。重厚なオーケストラのサウンドのみで押し切るのだ。ストイックである。また服部隆之が作曲した音楽が素晴らしい。「王様のレストラン」以来の傑作と断言出来るだろう。特にチェンバロを使用したアイディアが秀逸だ。不思議と銀行という舞台に似合っている。

僕が今更言うまでもないことだが、「半沢直樹」は必見ですぞ。特に歌舞伎・文楽・演劇ファン、そして時代劇ファンにこそお勧めしたい。

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2013年10月 1日 (火)

日本のテレビ・ドラマ(オールタイム)ベスト 10選~「岸辺のアルバム」から「あまちゃん」まで

映画は監督で選ぶ/テレビ・ドラマは脚本家で選ぶ。これは常識である。

歴代のテレビ・ドラマの中で印象深いものを厳選した。基本的に連続もので、単発ドラマは除外した(こちらは後述する)。また一作家一作に絞った。

  1. 向田邦子/阿修羅のごとく(昭和54-55年、1979-80)
  2. 山田太一/岸辺のアルバム(昭和52年、1977)
  3. 宮藤官九郎/あまちゃん(平成25年、2013)
  4. 三谷幸喜/王様のレストラン(平成7年、1995)
  5. 市川森一/黄金の日日(昭和53年、1978)
  6. 遊川和彦/女王の教室(平成17年、2005)
  7. 倉本聰/昨日、悲別で(昭和59年、1984)
  8. 大根仁(原作:久保ミツロウ)/モテキ(平成22年、2010)
  9. 田渕久美子(原作:宮尾登美子)/篤姫(平成20年、2008)
  10. 藤本有紀/ちりとてちん(平成19-20年、2007-8)

単発作品では順不同で

  • 市川森一/明日-1945年8月8日・長崎(昭和63年、1988)
  • 佐々木守(脚本)実相寺昭雄(監督)/「怪奇大作戦
     ~第25話「京都買います」(昭和44年、1969)
  • 桂千穂(脚本)大林宣彦(監督)/麗猫伝説(昭和58年、1983)
  • 岩井俊二(脚本・監督)/TVドラマシリーズ「If もしも」より
     「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
     (平成5年、1993)
  • 山田太一/今朝の秋(昭和62年、1987)

阿修羅のごとく」向田邦子は人間の性(さが)をえぐり出す。ドロドロと渦巻く人間の嫌な面が白日のもとに曝け出される。自伝的な「あ・うん」も名作だが、DVD化されていないのが残念。向田は台湾に旅行中、飛行機墜落事故で死去。享年51歳。本当に惜しい人をなくした。「阿修羅のごとく」映画版は別人が脚色しているので、ドラマ版を断固推す。

岸辺のアルバム」つい最近、漸くDVDが発売された。家族の崩壊をシビアに描く。物語が実際に多摩川であった水害(堤防が決壊し、家屋が崩壊・流出)とリンクしている。昭和の作品にしてはキワドイ表現もあり、安易なホームドラマではなく、かなり踏み込んだ内容になっている。山田太一は四流大学生たちの青春群像を描く「ふぞろいの林檎たち」もお勧め。ただしIIIはゴミ。

あまちゃん」は宮藤官九郎(クドカン)による見事なアイドル論である。東京一極集中から地方の時代へ(ジモドルの台頭)という現在進行形の潮流を取り入れ、3・11東日本大震災の絡め方も上手い。とにかく能年玲奈、橋本愛、有村架純ら登場する女の子たちが可愛い!観ていて元気になれる作品だ。

クドカンは江戸落語をテーマにした「タイガー&ドラゴン」や向田邦子賞を受賞した「うぬぼれ刑事」(←無茶苦茶可笑しい!)、そして風変わりなホームコメディ「11人もいる!」もお勧め。あと東野圭吾の推理小説を脚色した「流星の絆」は、はっきり言って原作よりドラマの方が面白い。

王様のレストラン」三谷幸喜はこの作品で向田邦子賞を打診されたが、「未だ僕には早い」と辞退している。馬鹿なことをしたもんだ。彼はその後本作を超える作品を書いていないし、未来永劫無理だろう。映画「がんばれベアーズ」を下敷きにしており、チーム・プレーがテーマという意味では「トイ・ストーリー」など一連のピクサー・アニメーション・スタジオ作品に通じるものがある。なお最終話のエピローグで三谷幸喜がカメオ出演しているが、彼の扮装はビリー・ワイルダー監督「あなただけ今晩は」のジャック・レモンへのオマージュである(三谷はビリー・ワイルダーに会うために渡米したくらい私淑している)。

市川森一の「黄金の日日」は三谷幸喜が一番好きな大河ドラマだそうだ。だから主演の松本幸四郎を「王様のレストラン」に迎えた。また「王様」で向田邦子賞を打診された時に辞退したのは、第1回受賞作が市川の「寂しいのはお前だけじゃない」であり、未だ自分はそのレベルに達していないと感じたからだそうである。港町・堺を舞台にしているのがいい。

遊川和彦は高視聴率を稼ぎ話題になった「家政婦のミタ」も傑作なので迷うところだが、ここは向田邦子賞を受賞した「女王の教室」を選んだ。小学校を舞台にいじめ問題を真正面から取り上げた姿勢を高く評価したい。映画「二十四の瞳」と見比べると興味深い事実が浮かび上がってくる。遊川は《人の悪意》を描くことが実に上手い。逆に彼が起用されたNHK朝ドラ「純と愛」はタイトルと裏腹に徹頭徹尾悪意に満ちた作品で、これは悲惨な失敗作であった。朝は「あまちゃん」みたいに爽やかでないとね。暗い気持ちで出勤したくないじゃない。

いや、皆さんが思っていることは分かるよ。倉本聰なら断然「北の国から」だろ!って言いたいんでしょ?「北の国から」が彼の代表作であることに異論はない。でもさぁ、誰もが認め、知っている作品を選んでも意味ないじゃない?だから僕はここで敢えて、余り見た人がいない「昨日、悲別で」を選んだ。この名作が幻になっている理由は再放送やビデオ・DVD化が一切されていないからだ。タップ・ダンサーになることを夢見て、北海道から上京してきた若者(天宮良)の物語。実はこの作品、「メモリー」などアンドリュー・ロイド=ウエバーのミュージカル「キャッツ」の音楽がふんだんに盛り込まれており、楽曲の二次使用が認められなかったのではないか?と考えている。あの時代はビデオ化まで考えて製作していなかったからね。あと「昨日、悲別で」のエンディングにフォークデュオ「風」の『22歳の別れ』が流れるのが心に残った。

モテキ」はフリーターの若者を主人公にした瑞々しい青春ドラマ。演出のテンポが良く、軽やか。これぞ平成の作品!という気がする。僕が一番お気に入りのエピソードは森山未來が満島ひかるに誘われて岩井俊二監督の「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」のロケ地巡りをする回。これは爆笑ものだった。僕も大林宣彦監督の尾道三部作を観てロケ地巡りをしたクチなので、身に覚えがある。なお映画「モテキ」はテレビの続きだが、独立した作品として愉しめる。

篤姫」は激動の幕末をお姫様の視点から観た作品で、そこがユニーク。宮崎あおいや堺雅人など役者もいい。女性視聴者にも支持される大河ドラマとなった。

ちりとてちん」のお陰で大阪は数年間、空前の上方落語ブームに沸いた(同時期に江戸落語はクドカンの「タイガー&ドラゴン」で湧いた)。古典落語とプロットの結びつけが上手いし、上方落語の歴史・現状がよく分かる。ただラストの主人公の決意に、僕は未だ納得していない。

こうして10本を見てくると、向田邦子・山田太一・倉本聰・市川森一らが大活躍した昭和50年代こそがテレビ・ドラマの黄金期であったことがよく分かるであろう。

次に単発ドラマに移ろう。

市川森一の「明日」は長崎に原爆が投下される瞬間までの市井の人々のささやかなる一日の生活が描かれる。命の愛おしさ。市川は長崎出身である。原作は井上光晴。「明日」は映画版もあるが、僕はドラマ版の方が好き。

京都買います」は古都の美しさと醜さを赤裸々に描き秀逸。夢のようなラストシーンには唸った。あとフェルナンド・ソルが作曲したギター独奏曲「魔笛の主題による変奏曲」の使い方が素晴らしい。

麗猫伝説」は”化け猫映画”で一世を風靡した入江たか子と、その娘・若葉の共演作。プロットはビリー・ワイルダーの「サンセット大通り」を下敷きにしている。

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」小学校・夏休み・花火・プール。奥菜恵の絶頂期が映像の中に永遠に封じ込められた。岩井俊二監督は少女の一瞬の輝きを捉える天才である。「LOVE LETTER」の酒井美紀や「花とアリス」の蒼井優もそうだよね。

今朝の秋」余命3ヶ月を宣告された息子(杉浦直樹)に対し父(笠智衆)は当初どう接すればいいか戸惑う。これは家族の物語である。残された人生をどう過ごすか、ターミナル・ケアについても問いかける不朽の名作。音楽は武満徹。

ちなみに2011年に週刊現代が「決定!懐かしのテレビドラマ ベスト100」を特集している。選者は中野翠(コラムニスト)、中森明夫(エッセイスト)、黒田昭彦(All Aboutドラマガイド)ら識者20人+編集部で構成される「ベストドラマ選定委員会」。その結果は、

  1. 山田太一/岸辺のアルバム
  2. 倉本聰/北の国から
  3. 山田太一/早春スケッチブック

となった。

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2013年5月31日 (金)

映画「中学生円山」と宮藤官九郎(クドカン)論(「あまちゃん」含む)

宮藤官九郎クドカン)の名前を初めて意識したのは2001年に公開された行定勲監督の映画「GO」(窪塚洋介、柴咲コウ、山崎努)である。金城一紀の小説を脚色したのがクドカンだった。日本アカデミー賞最優秀脚本賞や読売文学賞(戯曲・シナリオ)を受賞。そして翌年、映画「ピンポン」(松本大洋 原作)の脚色も素晴らしかった。

彼が劇団「大人計画」(松尾スズキ 主宰)に所属し、台本を書くだけではなく役者もこなし、ロックバンド「グループ魂」のメンバーであることは後に知った。

ただクドカンの初期オリジナル作品「木更津キャッツアイ」「ゼブラーマン」「舞妓Haaaan!!!」にはどうもついていけなかった。登場人物たちが常にハイテンション、エキセントリックで、ギャグを詰め込み過ぎ。Too much !!!の感を否めなかった。

ところが、そんなやんちゃ坊主のクドカンも年をとって落ち着いてきたのか、2005年にギャラクシー賞大賞を受賞した「タイガー&ドラゴン」は江戸落語を題材にして、文句なしの面白さだった。

そして2010年に向田邦子賞を受賞した「うぬぼれ刑事(デカ)」は肩の力が抜けたコメディで完璧な仕上がり。2011年「11人もいる!」はホーム・ドラマとしても出色の出来だった。2008年に放送された「流星の絆」なんか、東野圭吾の原作よりも遥かに面白かった(コメディ・パートは全てクドカンの創作である)。近年の彼の作品は余分なものを削ぎ落とした洗練がある。

こうして年々作家として円熟味を増したクドカンが現在取り組み、常に視聴率20%を超えるスマッシュヒットを飛ばしているのがNHKの朝ドラ「あまちゃん」だ。これはクドカンによる本格的アイドル論になっている。物語は松田聖子、中森明菜、小泉今日子らが全盛期だった1984年とAKB48が世間を席巻した2008年を交互に照射しながら、怒涛の2011年3月11日へと猛進していく。凄まじいエネルギーを感じさせる。しかしこの底抜けの明るさ、ポジティブなパワー、若い生命力の輝きは一体何なんだろう?クドカンの最高傑作が現在進行形で形成されつつあることの醍醐味。生きててよかった。僕はいま、本気で「アイドルは人々を笑顔にし、その力で日本を救えるのかも知れない」と信じつつある。是非今年の紅白歌合戦はキョンキョンの復活(歌は「潮騒のメモリー」)および、AKB48と(「あまちゃん」から生まれる仮想アイドル・グループ)GMT(ジ・モ・ト)47の直接対決を観たい!!

さて現在公開中、宮藤官九郎 脚本・監督の映画「中学生円山」の話だ。公式サイトはこちら

評価:B+

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これは中学生男子の抱く妄想をテーマにした作品である。男なら、誰しも「ある、ある!」と身に覚えがあることばかりの筈だ。僕は凄く共感した。クドカンが主人公の妄想癖を肯定しているのがまた嬉しいね。痛快である。タランティーノ映画風スタイルも粋だ。

草彅剛が言う、「考えない大人になるくらいなら、死ぬまで中学生でいるべきだ」が胸に響いた。僕は今まで役者のとしての草薙くんを全く評価していなかったが、今回初めて彼がイイ!と想った。

また「息もできない」のヤン・イクチュンの起用法が絶妙である。こんなコメディ演技も出来るんだ!と驚いた。最高に可笑しかった。

さらに主人公が恋するヒロインを演じる刈谷友衣子が可愛い。「あまちゃん」の能年玲奈といい、橋本愛といい、美少女揃いでクドカンの趣味の良さ、選択眼の確かさを感じる。

必見。

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2011年11月 7日 (月)

三谷幸喜 脚本・演出「ステキな隠し撮り ~完全無欠のコンシェルジュ~」

現在公開中の映画「ステキな金縛り」(通称”ステカナ”)の姉妹篇というべき作品がフジテレビでオンエアされた。

ステキな隠し撮り」、通称”ステカク”の公式サイトはこちら

評価:B+

ステカナとステカクは全く別の物語である。しかし出演者は同じ。つまりステカナの役者たちを一つの劇団に見立て、座付き作家としての三谷さんが新作を書き下ろしたという形。かつて主宰していた劇団「東京サンシャインボーイズ」同様のスタイルというわけ。「ステキな金縛り」の音楽がそのまま流用され、その主題歌"ONCE IN A BLUE MOON"も流れる。また市村正親、生瀬勝久は映画と同じメイクで登場。

深津絵里演じる新米コンシェルジュを狂言回しに「グランド・ホテル」形式で様々な人間模様が描かれる。そういう意味において映画「THE 有頂天ホテル」を彷彿とさせる。人間という存在の滑稽さ、そして愛おしさ。

三谷さんが自信を持てない神経質な映画監督役を自ら熱演。ヒロインに新作のDVDを渡し、その感想を求めるが、内容を聞いていると明らかにふたりは「ステキな金縛り」の話をしているから可笑しい。この映画監督のモデルはきっとウディ・アレンだね!また、「一番気になるのはネットの評判」という台詞には爆笑した。

作者がヒロインを始めとする登場人物たちを見つめる眼差しが優しい。昔の三谷さんはこうじゃなかった。やはり、仲間の死(「東京サンシャインボーイズ」の伊藤俊人、享年40歳)や小林聡美との離婚など、人生経験を重ね、人間として一回り大きくなったんだなぁという気がした。

深津絵里はステカナ同様、ステカクでもコメディエンヌとしての魅力を発散。三谷さんの術中にはまり、僕もフカッチャーになりそうで怖い(フカッチャーとは?→こちら!)。

また、映画「ステキな金縛り」のレビューに次のようなことを書いた。

深津、西田が歌う主題歌"ONCE IN A BLUE MOON"は本当にチャーミングな曲だ。これを聴きながら、「オケピ!」以来ご無沙汰している三谷さんのミュージカルを久しぶりに観たいと想った。是非、次作はミュージカル映画を!

そんな僕の夢をちょっとだけ叶えてくれるステキな場面がステカクには用意されていて、それもすごく嬉しかった。

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2011年10月31日 (月)

野田総理と三谷幸喜 脚本・監督「ステキな金縛り」

野田佳彦総理が「官邸かわら版」で、特に自分の人生に影響を与えた映画として、ジェームズ・ステュアート主演の「スミス都へ行く」(1939)を挙げている(→こちら!)。1939年は「風と共に去りぬ」がアカデミー賞を席巻した年だが、「スミス都へ行く」も作品賞・監督賞・主演男優賞・助演男優賞など計11部門でノミネートされ、原案賞を受賞している。ちなみにNHKの取材に答えた、新橋の路地裏にある野田総理行きつけの飲み屋夫婦の証言によれば、総理が一番好きなハリウッド女優はヴィヴィアン・リーだそうである。閑話休題。

さて、三谷幸喜脚本・監督の「ステキな金縛り」は何の予備知識なしでも、いっぱい笑って最後は泣ける、とびきりの大傑作。でも、事前にフランク・キャプラ監督のハリウッド映画「スミス都へ行く」と「素晴らしき哉、人生!」を観ておけば、さらに2倍愉しめるだろう。深津絵里演じるヒロインの亡くなった父親(草なぎ剛)が「スミス都へ行く」が大好きで、向こうの世界から落ち武者の幽霊を連れ戻しにやってくる男(小日向文世)が「素晴らしき哉、人生!」をこよなく愛しているという設定。

評価:A+

映画公式サイトはこちら

本作で西田敏行が演じる幽霊は「素晴らしき哉、人生!」に登場する、翼をまだ持っていない二級天使と似た役回りと言える。「素晴らしき…」でベルは天使が翼を貰った合図。そのガジェットを、「ステカナ」ではハーモニカが担う。

「素晴らしき哉、人生!」で自殺しようとしたジェームズ・ステュアートは、自分が多くの人たちから愛され、必要とされる存在であることを二級天使から教えられる。一方、「ステカナ」の深津絵里は落ち武者の幽霊から、自分が死者たちからしっかり見守られていることを学ぶ。どちらも心温まる、感動的なラストである。

また市村正親、篠原涼子、生瀬勝久、深田恭子、浅野和之、戸田恵子、佐藤浩市、梶原善、唐沢寿明ら、多彩なゲスト出演陣も賑やかで愉しい。極上のエンターテイメントと言えるだろう。

深津、西田が歌う主題歌"ONCE IN A BLUE MOON"は本当にチャーミングな曲だ。これを聴きながら、「オケピ!」以来ご無沙汰している三谷さんのミュージカルを久しぶりに観たいと想った。是非、次作はミュージカル映画を!

三谷さんとクドカン(宮藤官九郎)はどちらも小劇場(「東京サンシャインボーイズ」と「大人計画」)出身であり、テレビや映画に進出したコメディ作家ということで共通点が多く、本人が好むと好まざるとに関わらずライバルと見做されてきた。2002年の第25回日本アカデミー賞ではクドカンが映画「GO」で最優秀脚本賞を受賞し、「みんなのいえ」の三谷さんを破った。そして今、三谷さんが幽霊を扱う「ステキな金縛り」を世に問い、クドカンもやはり幽霊のストリッパー(広末涼子)が登場する「11人もいる!」をテレビで放送中。何だか面白い。兎に角このふたりが牽引し、互いに切磋琢磨することで日本のコメディの質がどんどん向上し、洗練されてきていることは誠に喜ばしい限りである。

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2010年10月 9日 (土)

インターネットの発達とコミュニケーション・ツール、そして映画のことなど

むかしむかしパソコン通信なるものがあり、1980年代後半から90年代前半にかけてその全盛期だった。

パソコン通信の映画フォーラムでのやりとりから男女の出会いまでを描いたのが深津絵里(主演)、森田芳光(監督)の映画「(ハル)」(1996)である。ラストシーンの台詞が「はじめまして」というのが印象的だった。

やがてインターネットの普及により、パソコン通信は衰退してゆく。

1998年にはインターネットのチャット・ルームで出会った男女が、メールのやり取りを通じて惹かれあっていく様子を描いた映画「ユー・ガット・メール」が登場する。同様の題材(ネット恋愛)をテーマにしたフジテレビのドラマ、竹野内豊(主演)「WITH LOVE」が放送されたのも、この年であった。

僕がホームページを立ち上げたのが丁度その頃。また、特定の話題に関心を持つグループで情報交換をするメーリングリストにも参加していた。

さらに1999年電子掲示板2ちゃんねるがオープンし、日本最大規模へと発展してゆく。

2ちゃんねるから生まれたの作品が「電車男」。2004年に書籍化され、2005年に山田孝之、中谷美紀(主演)で映画化、同年に伊藤淳史、伊東美咲(主演)でテレビドラマにもなった。

また2002年ごろから急速に広まったのがブログである。誰でも簡単に作れるということで芸能人も書くようになり、2004年眞鍋かをりが開設したらそれが人気となり、彼女は「ブログの女王」という称号を受けるに至る。2006年には同名のテレビ番組も放送された。コメントが殺到し、批判の集中砲火を浴びる現象「ブログ炎上」という言葉もしばしば話題になった。僕がブログを始めたのは2007年のことである。

また社会的ネットワーク(人同士のつながり)をインターネット上で構築するソーシャル・ネット・ワーキング・サービスSNS)も登場。日本では2004年からmixiがオープンした。SNSサイトのFacebookを創設した人物たちを描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」が現在、アメリカで公開中である。

そして現在台頭してきたのがTwitterツイッター)。サービス開始は2006年7月。各ユーザーは140文字以内の短文を「つぶやき」として投稿する。僕が使い始めた感想は、始まりも終わりもないチャット・ルームという感じ。そして横(ユーザー同士)の繋がりも無限に広がっていく。

ブログからTwitter(ツイッター)に完全移行する人々もいるが、僕はまったく別のツールという気がする。確かにチャットのような気軽さはあるが、字数制限があり、長文が書けないのが難点。Twitterはあくまで他者とのコミュニケーション・ツールであり、自分が言いたいこと、エンターテイメントの詳しい感想などはブログの方が適していると想う。しばらくは併用していくことになるだろう。

しかしこうしてパソコン通信から振り返ってみると、インターネットの発展、栄枯盛衰は目まぐるしい。どんどん新しいものが出てきて、付いて行くのがやっと。しんどいなぁ。

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