テレビくん、ハイ!

続報!のだめカンタービレと飯森範親さん

これは以前書いた記事「のだめカンタービレと飯森範親さん」と併せてお読み下さい。

映画版「のだめカンタービレ」(主演: 玉木宏、上野樹里)のヨーロッパ・ロケが現在、進行中である。この度、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地であるウィーン楽友協会(ムジークフェライン)大ホールでロケが行われた(くわしくはこちら)。楽友協会が映画の撮影で使用されるのは世界で初めてだそうである。演奏されたのはお馴染み、ベートーヴェン/交響曲第7番。楽団員はチェコのプロの交響楽団63人が動員された。何故チェコかというと、物価の関係で安く雇用できるからだと推測される(久石譲さんも「もののけ姫」「ハウルの動く城」などをチェコ・フィルハーモニー管弦楽団とレコーディングしている)。

これに関連して指揮者の飯森範親さんがブログで意味深なことを書かれている→こちら。調べてみると、映画「のだめカンタービレ」のロケがウィーン楽友協会で行われたのはこの6月28日(日)であることが判明した。飯森さんはスロヴァキアの首都ブラチスラバで行われたロケにも立ち会われたようだ→こちら

ということは、映画版「のだめカンタービレ」では影武者ならぬ影の指揮者として飯森さんのベト7が聴けるということだろう。これは実に愉しみである。飯森さんのことだ、果たして千秋がウィーン楽友協会で振るベートーヴェンはピリオド奏法になるのか!?その際バロック・ティンパニは使用するのか等、興味は尽きない(東欧諸国にはピリオド奏法は浸透していないので、恐らくモダン奏法だろうと想われるが……)。

なお、僕もこのウィーン楽友協会でコンサートを聴いたことが一度だけある。黄金色に輝く、世界で最も美しいホールである。

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聴いておきたい吹奏楽の名曲、ベスト25

5月24日オン・エアされるテレビ朝日「題名のない音楽会」は《吹奏楽の歴史(2)人気曲ベスト10》という内容だそうだ。先週に引き続き、大阪府立淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部の丸谷明夫先生(丸ちゃん)がゲスト出演し、佐渡裕/シエナ・ウインド・オーケストラが演奏する。更に「一音入魂!全日本吹奏楽コンクール名曲名演50」という著書で一世を風靡した音楽ライター、富樫鉄火さんも登場。番組視聴者からのアンケートを元に、ベスト10が発表されるらしい。

次回予告で、バックに流れていたのはなんと「アルヴァマー序曲」!つまりベスト10入りしているのは確実ということだ。これはとても嬉しい。

僕は高校1年生の時、岡山県吹奏楽コンクールでこの「アルヴァマー序曲」を演奏した。楽譜が出版された翌年くらいの頃である。「スター・ウォーズ」のテーマみたいに勇壮で、血湧き肉躍るカッコイイ曲。今でも聴く度にワクワクする。

そこで、これを機会に僕が考える吹奏楽の名曲を挙げてみたい。当初はベスト10を予定していたのだが、「あれも入れたい、こちらも捨てがたい…」と収まりきらず、途中でベスト20に計画変更。それでもまだ未練が残り、最終的に25選で決着をつけた。原則としてオリジナル曲、1作曲家につき1曲に絞り選考した。

勿論、独断と偏見によるチョイスである。当然異論もあるだろう。そういうご意見は大歓迎なので、コメント欄にどしどしお書き頂きたい。語り合いましょう。

  1. アルフレッド・リード/アルメニアン・ダンス PART 1
  2. ジェイムズ・バーンズ/アルヴァマー序曲
  3. 保科 洋/風紋
  4. パーシー・グレインジャー/リンカンシャーの花束
  5. グスタフ・ホルスト/吹奏楽のための第1組曲
  6. ロバート・ジェイガー/シンフォニア・ノビリッシマ
  7. 大栗 裕/大阪俗謡による幻想曲
  8. ヤン・ヴァンデルロースト/コンサートマーチ「アルセナール」
  9. カレル・フサ/プラハのための音楽1968
  10. ヨハン・デ=メイ/交響曲第1番「指輪物語」
  11. フィリップ・スパーク/宇宙の音楽
  12. ハワード・ハンソン/ディエス・ナタリス
  13. クロード・T・スミス/フェスティバル・バリエーションズ
  14. W.F.マクベス/マスク
  15. 真島俊夫/鳳凰が舞う〜印象、京都 石庭 金閣寺〜
  16. 諏訪雅彦/16世紀のシャンソンによる変奏曲
  17. 酒井 格/The Seventh Night of July(たなばた)
  18. 櫛田胅之扶/雲のコラージュ
  19. ジェームス・スウェアリンジェン/ロマネスク
  20. 岩井直溥/ポップス描写曲「メインストリートで」
  21. ジョン・マッキー/レッドライン・タンゴ
  22. 中橋愛生/科戸の鵲巣-吹奏楽のための祝典序曲
  23. 伊藤康英/吹奏楽のための交響詩「ぐるりよざ」
  24. J. A. コーディル/吹奏楽のための民話
  25. ケネス・アルフォード/行進曲「ナイルの守り」

問答無用のベスト1については、下記に詳しく書いた。

風紋」は1987年度全日本吹奏楽コンクール課題曲。まるでドビュッシーやラヴェルなど印象派のような、繊細で美しい曲である。今年8月に秋山隆/保科アカデミー室内管弦楽団により、岡山と東京でこの管弦楽版が初演される予定。詳細はこちら

イギリス民謡を採譜し、再構成した「リンカンシャーの花束」は何だか懐かしいような、そしてちょっぴり切ない気持ちになる組曲。一度聴いたら、その旋律が何度も耳の奥でリフレインされることだろう。

大栗 裕については過去に何度も触れている。

アルセナール」といえば全日本マーチングコンテストでの滝川第二高等学校のパフォーマンスを、そして「宇宙の音楽」と「フェスティバル・バリエーションズ」は精華女子高等学校による全日本吹奏楽コンクールでの極めつけの名演が忘れ難い(特に咆哮するホルンが凄かった)。また「宇宙の音楽」はザ・シンフォニーホールで行われた大阪市音楽団定期演奏会で世界初演された日に、僕も会場にいた。圧倒的パワーを持つ作品である。

プラハのための音楽1968」についてはこちらのサイトが詳しい。

ディエス・ナタリス」はこちらをご参照下さい。崇高なまでに澄み切った響きで、心が洗われる音楽。

マクベスなら「聖歌と祭り」とか「カディッシュ」を挙げる方もいらっしゃるだろう。でも僕は断固「マスク」を推す。あの畳み掛けるような、切迫した緊張感が堪らない。いつの日か、なにわ《オーケストラル》ウィンズでも取り上げてくれないかなぁ……。

鳳凰が舞う」はフランスで開催された国際作曲コンクールで応募総数214曲の中からグランプリに輝いた傑作。詳しくはこちらへ。

たなばた」は酒井 格さんが高校生の時に作曲したもの。当時憧れていた女性の誕生日が7月7日だったとか。優しくて、可愛らしい曲調。酒井さんは大阪府枚方(ひらかた)市出身。枚方市内にはその名もずばり「天の川」が流れているそうである。酒井さんなら「森の贈り物」とか「七五三」も好きだなぁ。

雲のコラージュ」は1994年度全日本吹奏楽コンクール課題曲。日本情緒溢れる作風。これは同じ作曲家の「飛鳥」と入れ替え可。

愉しくて心が躍る「メインストリートで」は1976年度、そして「16世紀のシャンソンによる変奏曲」は今年の課題曲(第19回朝日作曲賞受賞)。鄙びた古楽的響きが耳に心地良い。コンクールからまた名曲が生まれた。

スウェアリンジェンは胸に沁み入るハーモニーの美しさで「ロマネスク」にトドメを刺す。

レッドライン・タンゴ」は2005年オストウォルド賞受賞。絶え間なく変化する拍子、先鋭なスタイルが超クール。21世紀という新しい時代を切り開く傑作。マッキーが2007年に発表した「翡翠(かわせみ)」も心に残る素敵な曲である。

アルフォードなら「ボギー大佐(クワイ河マーチ)」の方が有名だろう、しかし「ナイルの守り」は短調の第1マーチで始まり、第2マーチで長調に転調する所の、なんと鮮やかなことか!僕はやっぱりこっちの方が断然好きだなぁ。

吹奏楽の名曲《アレンジ編》も併せて是非、お読み下さい。

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NHK大河ドラマ「篤姫」礼賛

遂に「篤姫」が終わってしまった。大河ドラマ史上、空前絶後の面白さであった。それにしても最終回のタイトルバック、篤姫の歩む《一本道》が光ったのには吃驚した!

NHKは今年度、上半期のゴールデンタイム(午後7時〜同10時)平均視聴率で民放各局を押さえ堂々第1位となった。同局がこの時間帯に単独トップとなるのは記録の残る1963年度以降、初めてのことである。正に「篤姫」効果であろう。

この傑作を見逃したという不幸な方は12月26-28日に放送される総集編をお待ちあれ(詳しくは公式サイトへ→こちら)。でも総集編では決してこのドラマの本質的魅力は伝わらないから、もしこれを気に入られたら再放送かDVD(ブルーレイ?)で全篇ご覧になることをお勧めしたい。

幕末は複雑怪奇だ。その一番の原因が節操のない薩摩・長州の動きであろう。なんで「尊皇攘夷」と叫んでいた連中が、途中から開国へと180度転換するのか?……要するに彼らは権力が欲しかっただけで、そこに理念など何もなかったという事情が今回のドラマで分かりやすく描かれていた。

幕末の物語で主人公となるのは概ね、坂本竜馬、西郷隆盛、勝海舟、徳川慶喜、そして新撰組といった面々である。しかし今回は天璋院篤姫小松帯刀といった、いままで表舞台に出ることの少なかった日陰の存在にスポットライトを当てるという着眼点がすこぶる面白かった。

篤姫の人生にも目を瞠った。薩摩・島津家の分家の出という低い身分から将軍家の正室に。まるで宝塚歌劇の人気演目「エリザベート」みたいなシンデレラ・ストーリーではないか。また篤姫の意志の強さは「風と共に去りぬ」のヒロイン、スカーレット・オハラを彷彿とさせる。こういったところが視聴者の女性たちの絶大な支持を得たポイントなのだろう。

ヒロインを演じた宮崎あおいは、オリコン調査の「なりたい顔ランキング」(20-35歳女性が対象)で第2位となり、今年生まれた女の赤ちゃんの命名ランキングでは「葵」が1位になったという。その人気たるや、恐るべし。

「篤姫」のあおいちゃんは本当に綺麗だった。そして薩摩時代の肌はとても日に焼けていて、それが薩摩藩の江戸屋敷に移り江戸城入りする過程で次第に白く変化していく。それと共に彼女の声のトーンも次第に下がってくる。この計算された演技が実に見事であった。

小松帯刀を演じた瑛太の情けない感じも良かった。彼は映画「サマータイムマシーン・ブルース」とか「アヒルと鴨のコインロッカー」、テレビ「のだめカンタービレ」などで観てきたが、今迄で最高のはまり役と言えるだろう。特に幼なじみだった篤姫のことを他人から尋ねられ、「あの方は、私の碁の師匠のような方でした」と答えた場面には腹を抱えて笑ってしまった。

そしてこのドラマで大ブレイクしたのは何と言っても第13代将軍、徳川家定を演じた堺雅人だろう。大河ドラマ「新選組!」の山南敬助役も好演だったが、今回はそれを上回るものだった。特に、ゆっくりとした《瞬き》がとても印象的。あれが彼の演技に深みを与え、視聴者の心を鷲掴みにするのだ。総集編でご覧になる方は《瞬き王子》に注目!

何を考えているか分からない屈折した男・徳川慶喜を演じた平 岳大(平幹二朗の息子)、真っ直ぐで誠実な男・西郷隆盛を演じた小澤征悦(世界的指揮者・小澤征爾の息子。顔がそっくり!)、そしてドラマ中盤から《鬼》になる腹黒い男・大久保利通を演じた原田泰造らも好演。

しかし、このドラマ最大の功労者は何と言っても脚本を執筆した田渕久美子であろう。「篤姫」のテーマはずばり《家族》である。でもそれは例えば「ゴッドファーザー」のコルレオーネ・ファミリーのような、血縁や婚姻関係を必ずしも意味しない。

篤姫はまず薩摩藩主の養女となり、さらに京都の公家・近衛家の養女となって徳川将軍家に嫁ぐ。そして大奥の女たちを家族として扱い、さらに血の繋がらない家茂(松田翔太)を"息子"とする。さらに家茂に嫁いできた孝明天皇の妹・和宮(堀北真希)が彼女の"娘"となる。

ヒロインが様々な人々と《家族》を形成していく過程を主軸として、田淵は極めて繊細緻密で、躍動感に溢れたドラマを紡いだ。心に残る台詞も多い。この功績は十分、向田邦子賞に値するものである。ただ、向田邦子賞は今まで基本的に原作のないオリジナル・シナリオが受賞してきたし、大河ドラマが選ばれたことは過去26回において皆無である。これは恐らく、毎年4月1日から翌年3月31日まで、原則として放送されたテレビドラマを対象とするという規定があるためではないかと推測する。大河の放送は1月から12月までなので、当てはまらないのだ。「篤姫」が越えなければならないハードルはいくつかあるが、前例を覆してでもこの作品が受賞するべきだと僕は信じて疑わない。

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流星の絆、アリアケ、ハヤシライス

今、テレビドラマは「篤姫」と「流星の絆」が面白い。宮崎あおいはとても綺麗になったし、戸田恵梨香は可愛い <それかよ!

宮崎あおいは映画デビュー作「あの、夏の日/とんでろ、じいちゃん」(1999、大林宣彦監督)から観ているが、撮影当時彼女はまだ13歳だった(遠い目)。塩田昭彦監督の映画「害虫」(2002)も好きだったなぁ。これであおいちゃんはナント三大陸映画祭の主演女優賞を獲ったんだ。しかし、まさか彼女がここまで国民的女優となるとは想像だにしなかった。つい最近、オリコンが20~35歳の女性を対象に行なった調査「なりたい顔」ランキングでは第2位だったそうだ(1位は柴咲コウ)。

閑話休題。で「流星の絆」の話だ。東野圭吾が原作で、脚色が劇団「大人計画」のクドカン(宮藤官九郎)ということで「これは期待出来るぞ!」と観始めた。

東野圭吾のミステリーは好きで、10冊くらい読んでいる。今はガリレオ・シリーズが人気があるみたいだが、僕が東野の最高傑作だと思うのは「白夜行」('99出版)。次点が「手紙」かな?彼は「容疑者Xの献身」('05出版)ではなく、「白夜行」で直木賞を受賞すべきだったと今でも信じて疑わない。真面目なミステリーだけではなく、「名探偵の掟」「超・殺人事件」などバカミス(ユーモア小説)の東野も好きだ。

クドカンの脚本はオリジナルだと変な方向に暴走して失敗することもしばしばあるが、原作付き(映画「GO」「ピンポン」)とか落語(「タイガー&ドラゴン」)といった縛りがあると、卓越した才能を発揮する。

「流星の絆」は初っぱなの第1話から驚かされた。コメディ・タッチでクドカン・ワールド全開だったからである。シリアスな物語をここまで自分の色に染めてしまうクドカンも天晴れだし、それを許す東野の懐の広さも大したものだ。

原作に忠実であることを求める東野ファンからは非難囂々のドラマ版だが、僕はクドカンのオリジナル部分に違和感を感じないし、断固支持したい。

さて、「流星の絆」で重要な役割を果たすのが洋食屋”アリアケ”のハヤシライスである。おかげで今、ハヤシライスが静かなブームになっているという。なんとハウスから「流星の絆《特製ハヤシライス》」というレトルト食品も発売されているようだ。詳細はこちら

僕が大阪で一番お気に入りなのがJR野田駅に近い元船場「精養軒」のハヤシライス(二番目に好きなのは心斎橋「グリルばらの木」のハッシュドビーフ)。

先日、ザ・シンフォニーホールに市音の定期を聴きに往く前、夕方6時頃「精養軒」に立ち寄った。

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ハヤシライスを注文すると、「済みません、今日はいつもよりハヤシの注文が多くて、もう肉がなくなってしまったんです」……え、えーっ!

こんな事態は初めてだ。ドラマの影響なんだろうか……。

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その日のまえに 

評価:B+

映画公式サイトはこちら

はじめに断っておくが、僕は大林宣彦監督の筋金入りファンである。尾道三部作、新三部作を観ては広島県・尾道市でロケ地めぐりをし、「廃市」の福岡県・柳川市、「なごり雪」「22歳の別れ」の大分県・臼杵市、「はるか、ノスタルジイ」の北海道・小樽市にも旅をした。そして遂には「天国に一番近い島」こと、ニューカレドニアのウベア島にまで往ってしまった人間である。常軌を逸していることは重々自覚しているつもりだ。だから、どうしても評価は甘くなる。

大林作品は基本的にカルト(既成の社会からは正統的とは見なされない)映画である。だから本作に関しての感想は一切、責任が持てない。そのつもりで、以下読んで頂きたい。

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余命わずかと宣告された妻、そして彼女を見守る夫や子供達との最後の日々を綴った重松清の同名小説(連作短編)に基づく。大林監督がこれを映画化したいと企画していることは以前から知っており、2年ほど前に原作を読んだ。

重松清が書く、あざとい小説世界が僕は大嫌いだ。「流星ワゴン」も途中まで読みかけて、読者を泣かせようという意図ありありの展開に閉口してやめた。「その日のまえに」はヒロイン《和美》の無神経な台詞の数々(例えば、再開発のため立ち退きを余儀なくされた商店街の人々に対し、「みんな幸せにやってるよね」など)に腹が立ったが、それでも我慢して何とか最後まで読んだ。しかし一体全体この小説のどこに大林監督が惹かれたのか、皆目理解出来なかった。

それでも映画は違うのではないかと期待していた。何故なら脚色が市川森一だからである。彼が大林監督と組んだ映画「異人たちとの夏」(原作:山田太一)も良かったし、大河ドラマ「黄金の日々」('78、NHK)、第1回向田邦子賞を受賞した「淋しいのはお前だけじゃない」('82、TBS)、そして 「明日(あした)-1945年8月8日・長崎」('88、日テレ)等が僕はとても好きだ。現実とファンタジーの融合が巧みなシナリオライターである。

映画「その日のまえに」を観て、期待通り、いや、それ以上の出来で嬉しかった。原作小説を換骨奪胎し、しかもそれに宮沢賢治の詩「永訣の朝」や「銀河鉄道の夜」「セロ弾きのゴーシュ」を合体、さらに短編童話「やまなし」に出てくるクラムボンまで登場させるという力技。こりゃあ、重松清のファンは怒るだろうなぁ(実際に評判はすこぶる悪いようだ)。しかし小説の嫌らしい部分=灰汁(あく)を浄化し、夢か現か幻かという境界線を曖昧にして紛れもない大林+市川ワールドに転化したその手腕を高く評価したい。不覚にも僕は感動し、涙が零れた。

兎に角、《とし子》を演じた永作博美が素晴らしい。こんな魅力的な女優だったのかと目を瞠った。これは彼女のための映画である。《駅長君》も良かった。

それにしても大林監督は相変わらず作為に満ちた人工的映画に仕上げている。永作以外の役者は全員台詞が棒読み。はめ込み合成を駆使した画面を多用し、雨のシーンでは実際には水を降らさず、撮影済みのフィルムに後から特殊効果の雨脚を加えたりしている(この手法は「時をかける少女」でも用いられた)。一般の観客には何故このような演出法を用いるのか理解して貰えまい。そりゃ、僕だって上手く説明は出来ない。「だって、監督の流儀だから」と答えるしかない。

寂しいことに「その日のまえに」は大阪府では梅田ブルク7の単館上映である。余り多くの人の目には触れないだろう。しかしこれはカルト映画の宿命であり、詮ないことである。

こちらに監督のロング・インタビューが掲載されている。原作との出会い、宮沢賢治がこの物語と合体した経緯、ヒロインが《和美》から《とし子》に代わった理由などなかなか面白い。

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朝ドラ「ちりとてちん」のすゝめ (外伝「まいご3兄弟」含む)

NHK連続テレビ小説を一度も通して観たことがない。《落語家を目指す女の子の物語》と宣伝されていた「ちりとてちん」にも全く興味がなくて、放送中は完全無視だった。

ところが今年の2月頃からだろうか?落語会に往くと、必ず「ちりとてちん」の話題が出る。何時しかインターネット上でもすこぶる面白いとの評判が飛び交うようになっていた。

それならば一度、味見してみるかと重い腰を上げたのがこの5月。総集編を観て目を瞠った。「こ、こ、……これは、凄い!」

そこで丁度発売が開始された完全版DVD-BOX全3巻を購入。毎日毎日、夢中になって観た。腰を抜かした。総集編はこのドラマの面白さを半分も伝えてはいなかった。

ちりとてちん

僕が今まで観たテレビドラマ(シリーズ)で真の傑作だと想ったのは以下の作品である。

  • 向田邦子「あ・うん」「阿修羅のごとく」
  • 倉本 聰「北の国から」「昨日、悲別で」
  • 市川森一「黄金の日々」
  • 山田太一「ふぞろいの林檎たち」(代表作「岸辺のアルバム」は未見)
  • 三谷幸喜「王様のレストラン」
  • 宮藤官九郎「タイガー&ドラゴン」

そして「ちりとてちん」は間違いなく、これらと肩を並べる作品であると太鼓判を押す。

まず藤本有紀の脚本の素晴らしさ、これに尽きるだろう。ドジな主人公・和田代美=B子と、優等生で同姓同名の友人・和田海=A子の葛藤を軸に物語りは展開していく。このふたりはカードの表と裏。後に彼女たちの名前は上方落語に登場するコンビ、六(きろく)と八(せいはち)に由来することが明らかとなる。そして、何故ふたりが同名なのかという秘密も最終週で解き明かされる仕組みになっている。

この伏線の張り方が尋常ではない。蜘蛛の巣のように張りめぐらされたその数は正にギネス級である。何気なく観ていたエピソードが後に伏線だったことに気付き、一体何度驚かされたことだろう!

作者の上方落語に対する畏敬の念が物語の行間から滲み出してくるのも感動的である。「愛宕山」「宿替え」「辻占茶屋」「崇徳院」「算段の平兵衛」「天災」「鴻池の犬」「たちぎれ線香」「地獄八景亡者戯」「鉄砲勇助」「はてなの茶碗」など、劇中に登場する落語(出演者によって再現シーンが演じられ、視聴者に分かりやすく解説される)だけではなく、居酒屋「寝床」や中華料理店「延陽伯」という名称も落語の演題だし、喧嘩の仲裁が趣味の魚屋食堂の主人が「胴乱の幸助」そっくりだったり、喜代美の叔父が買う宝くじの当選番号が「高津の富」と同一だったりするなど非常に芸が細かい。

登場人物のモデルを推定してみるのも一興であろう。ヒロインにまつわるエピソードの幾つかは最終話のエンディング「ただいま修行中!」に写真で登場した露の団姫(まるこ)さんを取材したと想われる節があり、また師匠・徒然亭草若から「お前は創作落語をやれ」と言われる下りは、桂あやめさんが文枝師匠から助言された内容そのものである。

草若の息子、小草若は桂米朝さんのご子息・小米朝さんと故・笑福亭松鶴の長男・枝鶴(廃業し、現在消息不明)を合わせたようなキャラクターで、徒然亭草々桂ざこばさんを彷彿とさせる。草若の命を奪う病因は、草原役で出演した桂吉弥さんの師匠・吉朝と同じ胃癌と考えられる。

さらに、「天狗芸能」のモデルは吉本興業+松竹芸能であり、上方落語初の常打ち小屋「ひぐらし亭」は天満天神繁昌亭+帝塚山・無学といった具合。

このように「ちりとてちん」を観れば、上方落語が歩んできた過去と現在が鮮やかに俯瞰できる構成となっているのである。

さらに小編成のオーケストラを起用し、丁寧に作曲された音楽(佐橋俊彦)や、建物の歴史を感じさせる重厚な美術デザイン(山内浩幹、深尾高行、小澤直行)も素晴らしい。テレビ日本美術家協会が主催する第35回伊藤熹朔賞に「ちりとてちん」のスタジオセットが選ばれたのも当然であろう。

また、上方落語への愛を感じさせる美しいオープニングCGも特筆に価する。途中、11個の定紋がパッと花が咲いたように登場する場面があるが、これらは全て実際に上方の噺家が用いている紋である。

演技陣も充実している。特に草若を演じる渡瀬恒彦は改めて「こんなに味のある、いい役者だったのか!」と見惚れた。落語も上手だし、師匠としての風格と気品があった。

和久井映見は映画「息子」(1991)の頃から好きな女優だったが、今回はヒロインの母親役を見事に演じ切った。70年生まれの彼女に対して貫地谷 しほりは85年生まれなので、実際にふたりは15歳しか違わない。それでも、ちゃんと母子に見えるのだから大したものである。役者って本当に凄いなとつくづく想った。

ただ、ドラマの最後に主人公が出した結論については賛否両論があり、ネット上でも激論が交わされた。朝ドラの主な視聴者である家庭の主婦に媚びたようなこの結末には、僕も首を傾げざるを得ない。皆を納得させるためにも藤本さん、是非この物語の続きを書いて下さい。「ちりとてちん」を愛する人々の多くが、それを待ち望んでいるのですから。

さてスピンオフドラマ、ちりとてちん外伝「まいご3兄弟」がいよいよ8月10日(日)に全国放送される。僕は関西での先行放送を一足お先に観たのだが、さすが文句なしの完成度の高さで藤本有紀の天才ぶりをいかんなく発揮している。

誰が真実を語っているのか最後まで明らかにしないという構成は、黒澤明監督の「羅生門」を彷彿とさせる。本当はどうだったのかを考えるヒントとして、今回の噺が上方落語「宿屋仇」を下敷きにしているということだけ、ここでは書いておこう。

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田辺寄席 in 寺西家 その弐

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演目は以下の通り。

  • 露の団姫/鉄砲勇助
  • 桂まめだ/まめだ
  • 桂   文太/六尺棒
  • 桂   千朝/はてなの茶碗

露の団姫(まるこ)さんは現在21歳。静岡県出身で、顔が丸いので団姫と命名されたそうな。確かに雰囲気が"ちびまる子ちゃん"に似て可愛らしい。→団姫さんのブログ

NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」は毎回、放送の一番最後に「ただいま修行中!」というコーナーがあったのだが、最終回でこれに登場したのが団姫さん。テレビ「おはよう朝日です」ではレポーターもされているそうで、このあたりも「ちりとてちん」のヒロイン・喜代美と境遇が似ている。

「鉄砲勇助」は朝ドラ「ちりとてちん」で取り上げられたネタ。はきはきとした高座で澱みなく喋り、若いのになかなか上手いなぁと感心した。女性が古典落語を掛ける時にしばしば問題となる違和感も全くなかった。

「はてなの茶碗」は以前、南光さんの高座を生で聴いている。この噺を現在の形に整えた米朝さんの高座はビデオ、(南光さんの師)枝雀さんの「はてなの茶碗」はDVDで観た。今回の千朝さんはじっくり聴かせるタイプの噺家さんだったが、ポンポン矢継ぎ早に言葉が出てくる枝雀落語に馴れてしまうと千朝さんのそれは余りにもテンポが遅く、途中でダレてしまった。僕はこの人の語り口は余り好きになれないなぁ。

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桂吉弥の《新》お仕事です。 

NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」で大ブレイクした桂 吉弥さんの落語を聴きに繁昌亭に往った。

間もなく朝ドラ史上初のスピンオフドラマ「ちりとてちん外伝 まいご3兄弟」が放送される。詳しくはこちら。7/21(月)に吉弥さんはNHK「トップランナー」にも出演される。

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今回の演目は以下の通り。

  • 吉之丞/軽業
  • しん吉/住吉駕籠
  • ざこば/子ほめ
  • 吉弥/蛇含草
  • 吉弥/三十石

ざこばさんはサプライズ・ゲスト。なびら(演者の名前が書いてある紙)をめくるとざこばさんの名前が現れて場内がどよめいた。お囃子にのって本人が登場すると、やんややんやの大喝采。ちなみに吉弥さんの師匠・吉朝(故人)とざこばさんは兄弟弟子の関係にあたる。

ざこばさんが今回された「子ほめ」は以前、関西テレビで放送された桂ざこば芸歴45周年&還暦記念ドラマ「子ほめ」のDVD特典として収録される予定だそうである。実に面白かった!

落語会に集まる聴衆は男性率が高く、50歳以上の中高年が目立つのが特徴である。しかし吉弥さんの場合、20-30代の若い女性が圧倒的に多かった。これも「ちりとてちん」効果だろう。

彼女たちは例えば「三十石」で六と八が登場しただけでコロコロと笑う。このふたりの名前は「ちりとてちん」に何度も出てくるからである。ドラマの主人公、和田代美(きよみ)=B子と、その幼なじみ、和田海(きよみ)=A子の名前も六・八に由来する。

また「蛇含草」の餅を食べるところで、吉弥さんが"お染久松比翼投げ"と言うと、彼女たちは嬉しそうに顔を見合わせ、ひそひそと囁きあった。この"お染久松比翼投げ"もドラマで重要な役割を果たす上方落語「愛宕山」に出てくる台詞だからである。

吉弥さんは「ちりとてちん」に出演することで、明らかに落語ファンの枠を広げた。このことは高く評価されてしかるべきだろう。繁昌亭が毎日盛況なのもこのドラマのお陰である。

しかし偏狭な、いわゆる落語通の中には、役者として活躍しスターとなった吉弥さんのことを(嫉妬心から)快く想っていない人も少なくはない。

映画「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」の名場面で、アラゴルンは「フロドのために!」と叫んで突進する。結局、吉弥さんがしていることも全て「上方落語のために」なっているのだと僕は信じて疑わない。

ただ吉弥さん、今度発売される吉弥全集のDVD-BOX「桂吉弥のお仕事です そろそろ」特典ディスクの内容が"スチル写真のスライド・ショー "だけというのは如何なものだろう?やっぱりこういった特典には落語をもう一席収録するなど気が利いた工夫が欲しかったなぁ。

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桂吉弥&柳家三三 落語会

NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」完全版DVD-BOXを毎日、夢中になって観ている。このDVDの販売総数1万7000セットは「おしん」の9000セットを抜いて(約2倍!)、朝ドラ史上ぶっちぎりのトップだそうである。テレビドラマ史に新たな金字塔を打ちたて、人々を熱狂させて止まないこの空前絶後の名作の何処が凄いのか?その魅力についてはいずれ改めて、言葉を尽くして語りたいと想う。

「ちりとてちん」に出演し、一躍時の人となった上方の落語家が"徒然亭草原"こと、桂 吉弥さん(米朝一門)である。僕は三谷幸喜さんの大ファンなので大河ドラマ「新選組!」に吉弥さんが出演されていた頃から知ってはいたが、今や彼の人気は想像を絶するものがある。吉弥さんの出演する落語会は全て即日完売。大阪に住んでいてもなかなか、彼の高座を聴く機会には恵まれない(吉弥さんはこれを"「ちりとてちん」バブル"と言って謙遜する)。日本中から引っ張り凧で、つい最近も《別府日帰り》とか《鹿児島日帰り》といった強行軍をされたそうだ。しかも別府では2回公演で温泉に入る暇もなく、帰りの飛行機の中で立ち上る湯煙を眺めながらため息をつかれたとか。

そんな中、6月19日に吉弥さんと柳家三三(やなぎや さんざ)さんの「ふたり会」を聴きに、繁昌亭に足を向けた。これも発売10分でチケットが完売したそうである。

吉弥さんは第2回繁昌亭大賞で奨励賞を受賞、その授賞式および落語会が翌20日に繁昌亭で行われたのだが、こちらは欠席された。同じ日に「第77回堺一条じょいふる亭」という落語会に出ることが、先に決まっていたからである。これは師匠の故・桂 吉朝さんが生前、中心となって開催されていた会だそうだ(→吉弥さんのブログへ)。

受賞の連絡を受けた日はある劇団の公演に役者として出演中で、その日にあった記者会見も出席出来なかったとか。「『本当は吉弥は大賞が欲しかったのに、次点の奨励賞だったからへそを曲げて来ないんじゃないか』と誤解されてるかも知れませんが、全然そんなことないんですよ」と吉弥さん。

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今回の演目は以下の通り。

  • 桂  二条 「つる」
  • 柳家三三 「五目講釈」
  • 桂  吉弥 「蛸芝居」
  • 桂  吉弥 「短命」
  • 柳家三三 「笠碁」

東京から来られた三三さんは、特に「五目講釈」が絶品だった。道楽が過ぎて勘当され居候する若旦那が、長屋の連中を集めて講釈を語る。これが色々な内容がごちゃ混ぜになって迷走。挙句の果てにはフーテンの寅さんとか福田康夫、小沢一郎、オシム監督など時事ネタも飛び出すなど奇想天外な展開に大笑い。

吉弥さんは師匠も得意としていたネタ、「蛸芝居」がさすがの上手さだった。やっぱり役者もやっているだけに口跡がよく、「七段目」などの芝居噺が光る。

しかしそこは所謂《落語通》が沢山詰め掛けている繁昌亭。中入り(休憩)の時に、「あの蛸が登場するところはもっと芝居をたっぷり見せる所なのに……。あっさり流されちゃって、えっ、これで終わり!?って拍子抜けしたわ」「まあ別府から日帰りでお疲れなんでしょう」「いつの間にやら偉くなっちゃって」などと陰口も聴こえてきた。僕に言わせればこれは、最早《自分たちの吉弥》ではなくなった事に対するヤッカミ半分にしか聴こえないのだが、人気者はつらいねぇ。

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「崇徳院」の舞台で落語を聴く 《文太の会》

瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の
われても末に 逢はむとぞ思ふ

小倉百人一首の歌である。これを元にして落語「崇徳院(すとくいん)」が生まれた。上方随一のロマンティック・コメディである。この落語は朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」にも登場した。物語の発端はこうだ。

商家の若旦那・作次郎はある日、高津神社に参詣する。茶店で休憩していると、年のころにして十七、八の美しい娘が現れて一目惚れする。しばらくして娘は立ち上がり茶袱紗を置き忘れていったので、作次郎は追いかけて手渡す。すると彼女は料紙に「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の」と崇徳院の歌の上の句だけさらさらと書き残し、どこへともなく去っていった……。

このふたりが出合った場所、高津宮で落語《文太の会》があったので聴きに往った。ここはまた、富くじを題材にした落語「高津の富」の舞台にもなっている。

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境内には《五代目 桂 文枝之碑》もあった。碑文は三代目 桂春団治さんの筆。文枝最後の高座は、ここ高津宮での「高津の富」だったそうである。思えば、桂 文太さんの落語を初めて聴いたのは、繁昌亭で行われた桂文枝 追善落語会であった。

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今回の演目は以下の通り。

  • 桂 文太 「ないもん買い」「いらちの愛宕参り」「南京屋裁き」
  • 笑福亭たま 「芝浜」

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文太さんがマクラ(導入部)でされた、色々な噺家の話題は爆笑ものだったのだが、「ここだけの話でっせ、インターネットには書かんといて下さいよ」と高座で釘を刺されたからナイショだ。

文太さんの話術は巧みなので引き込まれて聴いた。どの噺も実に面白かった。「いらちの愛宕参り」は桂 枝雀さんの高座をDVDで観ていたのだが、文太さんの噺は枝雀版で省かれていたエピソードもあって、とても新鮮だった。

笑福亭たまさんは先日発表された繁昌亭大賞で輝き賞を受賞。京都大学経済学部卒、入門10年目。今一番、勢いのある若手噺家である。「芝浜」は僕が苦手とする退屈な人情噺(江戸落語)であるが、たまさんはふんだんに笑いの要素を盛り込み、また賑やかなお囃子を入れてドラマ仕立てにするなど創意工夫が感じられた。但しこの噺の中で、おかみさんがつく嘘は三年後の大晦日の夜まで観客にも事の真相が明かされないというミステリー仕立てになっている。ところがたまバージョンでは早々とネタ晴らししてしまう構成になっており、作劇術として如何なものかという気もした。まあたまさんは賢い努力家だから、今後に期待したい。

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