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2024年9月

2024年9月 4日 (水)

史上初の快挙「オペラ座の怪人」全日本吹奏楽コンクールへ!〜梅田隆司/大阪桐蔭高等学校吹奏楽部

台風の影響で延期になった関西吹奏楽コンクール高等学校の部Aが無観客で9月3日(火)に開催された。そして梅田隆司/大阪桐蔭高等学校が代表に選出され、全国大会への切符を手に入れた。彼らが今年自由曲に選んだのがアンドルー・ロイド・ウェバーが作曲したミュージカル『オペラ座の怪人』である。

念のため「吹奏楽コンクールデータベース」で確認した(裏を取った)のだが、実は昨年度まで『オペラ座の怪人』で全国大会に進出した団体は(中学、高校、大学、職場・一般の部合わせても)皆無である。いや、それどころか『オペラ座の怪人』のみならず、『キャッツ』『ジーザス・クライスト・スーパースター』『ウーマン・イン・ホワイト』などロイド・ウェバー作品すべてが一度も全国大会で演奏されたことがない。

一方でクロード=ミシェル・シェーンベルクが作曲したミュージカル『ミス・サイゴン』(宍倉晃 編曲)は2002年に大滝実/埼玉栄高等学校が全国大会で金賞に輝き、一大センセーションを巻き起こしたのは記憶に新しい。あれは衝撃的だった。

また2013年と21年に宇畑知樹/埼玉県立伊奈学園総合高等学校が同じシェーンベルクのミュージカル『レ・ミゼラブル』(森田一浩 編曲)で全国金を受賞しているし、2017年にはアラン・メンケン作曲ミュージカル『ノートルダムの鐘』(森田一浩 編曲)でもてっぺんを取った。

ロイド・ウェバーが紡ぐ旋律はプッチーニのオペラみたいにキャッチーで耳に残るのだが、器楽演奏としては難易度が低く、コンクールに向かない。どうしても全国大会に選ばれる学校の自由曲はラヴェルの『ダフニスとクロエ』とか、レスピーギ『ローマの祭り』(グレード5〜6)、吹奏楽オリジナル曲ならピーター・グレイアム『ハリソンの夢』(グレード7)といった、技術的に超難しい楽曲に偏りがちである。

だから『オペラ座の怪人』で全国進出を果たすのは画期的事件だし、ここまできたら是非頂点に上り詰めてほしいと願わずにはいられない。

僕はミュージカル『オペラ座の怪人』が死ぬほど好きで、ブロードウェイ(NY)、ウエストエンド(ロンドン)のみならず、ラスベガスにまで行って観劇している(ラスベガス版は2012年に閉幕)。

 ・ オペラ座の怪人 2007.05.19
 ・ ラスベガス便りその1 《オペラ座の怪人》 2009.01.02

大阪桐蔭が演奏する『オペラ座の怪人』は、『指輪物語』で名高いオランダの作曲家ヨハン・デ・メイの編曲で聴いたことがある。また2024年定期演奏会での演奏は郷間幹男によるもの(歌付き)だった。

 ・ 「吹奏楽の神様」屋比久勲登場!~大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2014@ザ・シンフォニーホール
 ・  大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会2024(「サウンド・オブ・ミュージック」「オペラ座の怪人」のおもひでぽろぽろ)

また建部知弘による編曲版も素晴らしい。今回梅田先生は誰の編曲を採用したのだろう?興味津々である。

ただ気がかりなのは楽曲の著作権(二次使用権)の問題だ。関西大会の高校Aライブ配信では大阪桐蔭の自由曲が配信不可だった。つまり二次使用が認められなかったわけだ。だから全国大会での演奏が、DVD・Blu-rayで発売される際に収録されるかビミョーである。

ミュージカル作品の中で版権問題が一番厳しいことで有名なのがレナード・バーンスタインの『ウエスト・サイド物語』である。日本で初演したのは宝塚歌劇団だが、その公演がテレビで放送されたり、ビデオやDVD、Blu-rayで発売されたことは一切ない。つまり映像による二次使用は認められていない。宝塚歌劇が上演する他の海外ミュージカル(『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』『ファントム』等)と比較すると雲泥の差だ。まぁさすがにロイド・ウェバーの場合、そこまで厳しくはないと思うのだが……。

なおこれを機会に作品を観てみたいという方、ジョエル・シューマッカー監督による映画版(2004)は余りお勧めしない。如何にもB級ホラーの匂いがプンプンするのだ。エミー・ロッサム演じるヒロイン・クリスティーヌは良い。しかしジェラルド・バトラーの怪人とパトリック・ウィルソンのラウル子爵がいただけない。カルロッタ役のミニー・ドライヴァーも✕。ロイド・ウエバーが書き下ろした新曲もお粗末極まりない。因みに当初怪人役はヒュー・ジャックマンが予定されていたのだが映画の撮影と、ブロードウェイ・デビュー『ザ・ボーイ・フロム・オズ』出演が重なったため、ヒューは舞台を選び、見事トニー賞でミュージカル主演男優賞を受賞した。彼が『オペラ座の怪人』に出ていたら、もっとマシな作品になっただろうに。なお、舞台のプロデューサー、キャメロン・マッキントッシュは再映画化したいと考えているようなので、そちらに期待したい。

というわけで、映像として観るのなら断然『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』の方が遥かに素晴らしい!ラミン・カリムルーも、シエラ・ボーゲスも文句なしだ。

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全日本吹奏楽コンクール 高等学校の部は2024年10月20日(日)に宇都宮市文化会館で開催される。刮目して待て。

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