夜明けのすべて
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評価:A
今から三十数年前、大学生の時に僕は映画館で『恋人たちの予感』(1989)を観た。(「ラブコメの女王」と呼ばれた)絶頂期のメグ・ライアンは光り輝くばかりにキュートで、監督のロブ・ライナーも脚本のノラ・エフロンも大好きなのだが、一つだけどうしても許し難い点があった。冒頭で〈恋愛感情抜きに男女の友情は成立するのか?〉という問題提議がされるが、最終的にハリー(ビリー・クリスタル)とサリー(メグ・ライアン)はセックスする。つまり〈男女の友情など成立し得ない〉という結論を出されたわけで、とてもショックだった。
この心的外傷は癒えぬまま歳月が過ぎていったが、そこへアイルランドから颯爽と登場したのがジョン・カーニー監督である。2007年に公開された『ONCE ダブリンの街角で』や後の『はじまりのうた』で見事に恋愛抜きの男女の友情を描いてくれて、溜飲が下がった。
そして恐らく『恋人たちの予感』が投げかけた問いに対する日本からの初めての回答が『夜明けのすべて』なのではないだろうか?
〈他者の心を理解することは不可能だけれど、その人に寄り添い、歩調を合わせることは出来る。それは男女を問わない〉というテーマがひしひしと胸に迫る。遺伝子を残すための本能としての求愛ではなく、思いやりから生まれる行動こそが人の人たる所以(ゆえん)だろう。
ゆったりと時間が流れる中、声高ではなく静かな波のように心を洗ってくれる、そんな素敵な映画だと思う。
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