三浦宏規(主演)フレンチロックミュージカル「赤と黒」(+フランスのミュージカル史について)
1月6日(土)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティへ。スタンダール原作のミュージカル『赤と黒』を観劇。
作曲はウィリアム・ルソー&ソレル、演出はジェイミー・アーミテージ。2016年にパリで初演された。ウィリアム・ルソーは『1789 〜バスティーユの恋人たち〜 』にも楽曲を提供している(こちらのメイン作曲家はドーヴ・アチア)。
近年フランスでミュージカルは盛んに制作されており、代表的なものとして『壁抜け男』(1997)、『ノートルダム・ド・パリ』(1998)、『ロミオ&ジュリエット』(2001) 、『太陽王』 (2005)、『ロックオペラ モーツァルト』 (2009)、『1789 〜バスティーユの恋人たち〜』(2012)などが挙げられる。大ヒット・ミュージカル『レ・ミゼラブル』も元々は1980年パリ初演で、英語版がロンドンで上演されたのは1985年だ。
更に源流を辿れば、ミシェル・ルグランとジャック・ドゥミ監督のコンビによるミュージカル映画『シェルブールの雨傘』(1964)、『ロシュフォールの恋人たち』(1967)、『ロバと女王』(1970)にたどり着く。ミシェル・ルグランの音楽は基本的にジャズのスタイルだが、21世紀に入ってからのフレンチ・ミュージカルの主流はロックンロールである。
ちなみにアメリカやイギリスでロック・オペラが流行ったのは1960年代後半から70年代前半にかけて。『ヘアー』(1967)、『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1971)、『トミー』(1975)がその代表格。一方、今ブロードウェイで一番ホットなのは天才リン=マニュエル・ミランダ(『イン・ザ・ハイツ』『ハミルトン』)の出現によりヒップホップ系かな。ただ日本人にとってこのジャンルは最先端過ぎて全くついて行けてないので(『ハミルトン』の上演すら実現していない)、フレンチ・ミュージカルあたりがちょうどいい塩梅なのだろう。日本語ラップが(少なくともミュージカル界で)定着するのに、まだ20年位はかかりそう。
出演は三浦宏規、夢咲ねね、田村芽実、東山義久、駒田一ほか。三浦は『テニスの王子様』『刀剣乱舞』など2.5次元ミュージカル出身で、イケメンで歌も上手かった。夢咲ねねは宝塚の娘役時代から大好きな女優で、美人だし文句なし!シンプルな装置で舞台転換が早く、演出も良かった。
本作は宝塚星組が礼真琴主演で先駆けて上演したのだが、宝塚版より今回の方に軍配を上げる。ちなみに宝塚歌劇には柴田侑宏が台本を執筆した別バージョンの『赤と黒』があり1975年に初演されている。菊田一夫版(1957年初演)もあるらしい。知らんけど。
今回鑑賞しながら「赤と黒」とは何を象徴しているのか?と色々考えを巡らせた。〈情熱・愛欲↔信仰・禁欲〉でもあるだろうし、〈血の革命・革新(radical) ↔権力・保守(conservative) 〉でもあるだろう。第一幕はブルジョワ・中産階級篇で、第二幕は貴族階級篇という構成になっているのが面白い。しかし、貧しい平民出身の野心家ジュリアン・ソレルはどちらの階級にも受け入れられず、弾き飛ばされてしまう。実に重層的で奥深い作品だ。
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