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2024年2月14日 (水)

From Screen to Stage and back to Screen ミュージカル映画「カラーパープル」(1985年に渦巻いた壮絶なハラスメントについても語ろう)

評価:A+

1985年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『カラーパープル』は猛烈なハラスメント(いじめ/嫌がらせ)の嵐に晒された。今でこそスピルバーグは押しも押されもせぬ大監督として世間から認知されているわけだが、当時はそうでなかった。1975年に『ジョーズ』、1981年に『レイダーズ/失われたアーク《聖櫃》』、そして82年に『E.T.』を撮り爆発的なヒットを連発、同業者から激しい嫉妬を買い「あいつは娯楽映画ばかり撮っている金の亡者」的に見られていた。つまり頑なにスピルバーグ映画の芸術性は認めないぞという雰囲気がハリウッドでは支配的だったのである。例えるならAKB48や坂道シリーズ(乃木坂・欅坂→櫻坂・日向坂)でボロ儲けした秋元康が「秋豚」と蔑称され、作詞家としての彼の才能が軽んじられている日本の現状に似ているだろう。

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『E.T.』は米アカデミー賞で作品賞・監督賞にノミネートされたが、受賞したのはリチャード・アッテンボロー監督の『ガンジー』だった。

Purple

スピルバーグはどうしてもオスカーが欲しかった。そこでアリス・ウォーカーの小説に目をつけた。しかしメイン・キャストがほぼ黒人で、白人が殆どで出てこない『カラーパープル』を白人が監督することに批判が集まった。結局アカデミー賞では作品賞を含む10部門11ノミネート(助演女優賞が重複)されたにもかかわらず、なんとスピルバーグは監督賞候補に入らなかった。そして蓋を開けてみると受賞ゼロ、全滅だった。正に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」だ。そんな風に当時のハリウッドは悪意に満ち溢れていた。結局、作品賞・監督賞を制覇したのはシドニー・ポラックの『愛と哀しみの果て』。凡庸な駄作である。

僕は『未知との遭遇 特別編』(1980)以降、スピルバーグの全映画を公開時に映画館で観ており『カラーパープル』も例外ではない。大いに気に入り、後にレーザーディスク(LD)も購入した。

ここで日本の雑誌「キネマ旬報」1986年度 外国語映画ベストテンを見てみよう。第3位が『蜘蛛女のキス』(アカデミー作品賞・監督賞ノミネート)、第6位が『カラーパープル』、そして『愛と哀しみの果て』が12位。この評価からも分かる通り、アカデミー史上最悪のミスジャッジであった。余談だがミスジャッジで思い出すのが1998年に公開された『恋におちたシェイクスピア』でグウィネス・パルトロウが主演女優賞を受賞した「とんでも事件」。この年は『エリザベス』のケイト・ブランシェットや『セントラル・ステーション』のフェルナンダ・モンテネグロが候補だったわけで、グウィネスというのはどう考えてもあり得ない選択だった。その後"MeeToo"運動を経て、『恋におちたシェイクスピア』のプロデューサーだったハーベイ・ワインスタインが告発され逮捕(禁固刑は合計39年を言い渡された)。グウィネスが証言するかどうかが焦点となり、遂に彼女が受賞したからくりが判明したというわけ。閑話休題。

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漸くスピルバーグ映画がアカデミー作品賞・監督賞を受賞するのは『シンドラーのリスト』(1993)である。これはホロコーストを描いた作品であり、ハリウッドの重役にユダヤ人が多いことは周知の事実(ワインスタイン兄弟もユダヤ人)。有無を言わせぬ鉄板ネタであった。

『カラーパープル』はウーピー・ゴールドバーグの映画デビュー作で、僕はこれでアカデミー主演女優賞を受賞すべきだったと今でも思っている。結局彼女は『ゴースト/ニューヨークの幻』の胡散臭い女霊媒師役で助演女優賞を受賞するのだが、まぁこれは「あの時あげられなくてゴメンね。これで堪忍して」といった残念賞的意味合いが強かった。因みにウーピーはTV界のEmmy(エミー賞)、音楽界のGrammy(グラミー賞)、映画界のOscar(アカデミー賞)、そして舞台のTony(トニー賞)というエンターテイメントの最高峰に位置する栄冠を4つとも受賞したEGOTであり、現時点でEGOTを達成したのはオードリー・ヘップバーン、リチャード・ロジャース、メル・ブルックス、アンドリュー・ロイド・ウェバー、ジェニファー・ハドソン、ジョン・レジェンド、エルトン・ジョンら19人しかいない。

『カラーパープル』は2005年にブロードウェイでミュージカル化され、その10年後にシンシア・エリヴォ、ジェニファー・ハドソン主演で再演。第70回トニー賞ではミュージカル・リバイバル作品賞とミュージカル主演女優賞(シンシア・エリヴォ)の2冠に輝いた(『ハミルトン』が11部門攫った年だ)。シンシア・エリヴォは2019年に映画『ハリエット』に出演しアカデミー主演女優賞にノミネートされ、主題歌も歌った。現在はミュージカル映画『ウィキッド』を撮影中(エルファバ役)。

今回の映画はこのブロードウェイ版に基づいている。製作にスティーヴン・スピルバーグ、クインシー・ジョーンズ(前作で音楽を担当)、オプラ・ウィンフリー(前作でソフィアを演じアカデミー助演女優賞候補に)らが名を連ね、製作総指揮には原作者アリス・ウォーカーの名前も。監督はブリッツ・バザウーレ、ガーナ出身だそう。上映時間141分で、なんと85年版の154分より短い!

製作陣にウーピーの名前がないから彼女は本作に思い入れがないのかな?残念だなと思っていたら、本編を観るとカメオ出演していたのでむっちゃ嬉しかった。

率直な感想。スピルバーグ版よりもミュージカル版の方が良かった。上映時間が短いことからも分かる通り展開が早いし、何よりミュージカル・シーンが素晴らしい。歌も、踊りも。ゴスペル(アフリカ系アメリカ人によって生み出された教会音楽)とかブルースが、黒人たちの辛い労働・日常生活から生まれた「叫び」であることがとても良く理解出来る仕組みになっている。本作にとってミュージカルという形式が最も相応しかった、と言えるだろう。

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