カンヌ国際映画祭で2冠!是枝裕和監督「怪物」と黒澤明監督「羅生門」
評価:A+
『怪物』は今年のカンヌ国際映画祭で脚本賞(坂元裕二)とクィア・パルム賞を受賞。公式サイトはこちら。
クィア・パルム受賞という情報そのものが既にネタバレじゃないかと鼻白んだのだが、その前知識は鑑賞の妨げ/noiseにならなかった。
向田邦子賞受賞歴もある坂元裕二だが、正直僕はTBSのドラマ『カルテット』を観ても、映画『花束みたいな恋をした』にせよ、彼の才能にピンと来なかった。日テレのドラマ『初恋の悪魔』に至ってはくだらなさに呆れ果て、数回で視聴を止めてしまった。ところが!『怪物』は掛け値なしに傑出した作品だった。坂元はNetflixと今後5年間の専属契約を結んだらしい。
3つの視点で1つの事象を描くというのは黒澤明監督と脚本家の橋本忍が映画『羅生門』で発明した手法である。リドリー・スコット監督『最後の決闘裁判』でも踏襲されており、(数々のパニック映画や三谷幸喜の『The 有頂天ホテル』でも活用された)「グランド・ホテル形式」同様、今や「羅生門形式」と命名しても差し障りないのではなかろうか?
『怪物』は「羅生門形式」に立脚しながらも、そこに宮沢賢治『銀河鉄道の夜』の要素を導入したのがミソ。幾原邦彦監督の大傑作TVアニメ『輪るピングドラム』もそうなのだが、『銀河鉄道の夜』ネタに僕は弱いんだよな〜。しびれるねぇ(『ピンドラ』渡瀬眞悧 の台詞)。
これは控えめに言って是枝裕和監督の最高傑作ではないだろうか?少なくとも僕はカンヌでパルムドール獲った『万引き家族』より好き。『誰も知らない』の頃からそうなのだが、子供に対する演出が相変わらず上手いんだ。
つい先日他界した坂本龍一の音楽も心に沁みる。彼は映画全体のスコアを完成させるだけの体力が残っておらず、書き下ろしたのは「Monster 1」「Monster 2」の2曲のみ。他は今年発売されたオリジナル・アルバム『12』から「20220207」、「20220302」など既存曲が選ばれた。僕は「坂本龍一とは何者だったのか?」というテーマで後日新しい記事を書き上げる予定で、現在着々と準備を進めているところである。
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