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2023年6月16日 (金)

山田和樹(指揮)ガラ・コンサート「神戸から未来へ」@神戸文化ホール〜何と演奏中に携帯電話が鳴るハプニング!

5月19日(金)「神戸から未来へ」と題されたガラ・コンサートへ行った。神戸文化ホール開館50周年記念事業だそう。

Gala

プログラムは、

 ・ 武満徹:系図 ー若い人たちのための音楽詩ー(岩城宏之編曲・室内管弦楽版)
 ・ 大澤壽人:ベネディクトゥス幻想曲(1944 演奏会として世界初演
 ・ 武満徹:うた より(小さな部屋で/見えないこども/恋のかくれんぼ)
 ・ 神本真理:暁光のタペストリー(委嘱新作・世界初演
 ・ 山本直純:管弦楽と児童合唱のための えんそく
 ・ 信長貴富:未来へ(アンコール・オーケストラ伴奏版初演

演奏者は以下の通り。

山田和樹(指揮)/神戸室内管弦楽団・神戸市混声合唱団・神戸文化ホール50周年記念児童合唱団

ヴァイオリン独奏:高木和弘、アコーディオン:大田智美、語り:宇田琴音(15歳)

武満徹の『系図(Family Tree)』は10代の少女が谷川俊太郎の詩集『はだか』から選ばれた6つの詩を朗読するのだが、僕は今まで初演の遠野凪子をはじめ、上白石萌音、のん(能年玲奈)、山口まゆ、白鳥玉季らの語りで聴いている。音源は残されていないが浜辺美波もステージでやったことがあるそう。

 ・ 武満徹「系図(ファミリー・トゥリー)-若い人たちのための音楽詩-」を初めて生で聴く。(佐渡裕/PACオケ) 2022.01.26

今回の室内楽版は岩城宏之が音楽監督を務めていたオーケストラ・アンサンブル金沢と演奏するために編んだもので僕は初体験。でも全く違和感はなかった。繊細で極上の演奏に大満足。

大澤壽人(おおさわひさと、1906-53)は神戸市出身の作曲家。日本人にも殆ど知られることなく、ピアノ協奏曲 第3番「神風協奏曲」などNAXOSから発売された一連のCDで「再発見」されたと言っても過言ではない。

初演となるベネディクトゥス幻想曲は〈ヴァイオリン独奏と混声合唱と管弦楽〉のための作品でカソリック教会のミサ典礼文から次の2文がひたすら繰り返される。

Benedictus qui venit in nomine Domini. 
神の名のもとに 来られる方に 祝福がありますように

Hosanna in excelsis.
いと高きところに 栄光あれ

自筆譜に書かれた創作の日付は「1944年5月」。第二次世界大戦の最中であり、野坂昭如(著)『火垂るの墓』で描かれた神戸大空襲が1945年なので、その前夜ということになる(神戸は1945年1月3日から終戦までの約8ヶ月間に大小合わせて128回の空襲を受けた)。祈りの中に一瞬の光が垣間見られ、静謐で美しい楽曲だった。天衣無縫のヴァイオリン・ソロも素敵。

神本真理は1975年神戸生まれの作曲家。その新作は正直、心に残るものが何もなかった。

山本直純(1932-2002)は10年間放送されたTBSのTV番組『オーケストラがやって来た』の司会者・指揮者としての印象が強い。今でもよく覚えているのは1978年に『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を特集した回で、例えば“王座の間とエンド・タイトル”の冒頭部はメンデルスゾーンの結婚行進曲(『夏の夜の夢』)にインスパイアされたのではないかと語り、続く弦楽器の旋律とエルガー『威風堂々』第1番(中間部『希望と栄光の国』Land of Hope and Glory の箇所)との類似性についての指摘がすこぶる面白かった(当時僕は小学生)。『男はつらいよ』シリーズとか、童謡『一年生になったら』『8時だョ!全員集合』の音楽で知られる山本だが、現代音楽作曲家として取り上げられることはなく、近年めっきり演奏されなくなったが、どっこい『えんそく』は小学生の学童が歌う朗らかで可愛らしい楽曲でとっても楽しい!身振り手振りによる表現もあり、山田マエストロもノリノリ。微笑ましく、心がほっこりした。その情景は最近観た、指揮者が主人公の映画『TAR/ター』ラスト・シーンに重なるものがあった。

 ・ クラシック通が読み解く映画「TAR/ター」(帝王カラヤン vs. バーンスタインとか)

アンコールの『未来へ』は谷川俊太郎(詩)・信長貴富(作曲)の同声二部合唱曲が原曲。オケ版初演となった。

プログラム前半の演奏中に、会場の携帯電話の着信音が2回鳴った(多分別の場所)。音響の悪い古いホールだが、ここは電波遮断装置すらないのか!こんな経験は20年ぶりくらいで、せっかく充実した内容だっただけに興ざめだった。帰宅し調べたところ施設の老朽化が著しいため神戸市は三宮駅周辺に新ホールを建設し2025年に移転する計画だという。やれやれ(最後は神戸に縁が深い村上春樹風に)。

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