パトリツィア・コパチンスカヤ ヴァイオリンリサイタル 2023
3月19日(日)フェニックスホール@大阪市へ。
モルドヴァ生まれのヴァイオリニスト、パトリツィア・コパチンスカヤを聴く。共演はフィンランド出身のピアニスト、ヨーナス・アホネン。アホネン(「草原から来た者」を意味する)はアイヴズら現代音楽も得意とするが、テオドール・クルレンツィスが主宰するフェスティバルに参加したり、フォルテピアノの弾き手でもある。
2014年にも同ホールで彼女の演奏を聴いている。
・ 激震!コパチンスカヤ 2014.06.20
上記事の中で僕はアンコールとして演奏されたクロイツェル・ソナタの終楽章を聴きながら、松明が煌々と焚かれた闇夜の野営地でジプシー(ロマ)の女がヴァイオリンを弾いていおり、その後彼女が火あぶりの刑に処せられる光景を幻視した、と書いた。つまりヴェルディのオペラ「イル・トロヴァトーレ」に登場するアズチェーナのイメージがピッタリ重なったのだ。全く同じイメージが今回も目に浮かんだので、なんだか可笑しかった。
・ シェーンベルク:幻想曲 op.47
・ ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第7番
・ ウェーベルン:ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 op.7
・ ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番「クロイツェル」
・ リゲティ:Adagio molto semplice (アンコール)
・ カンチェリ:RAG-GIDON-TIME (アンコール)
ラディカルで挑発的、赤裸々。がっぷり四つに組んだ二人の音楽家のパフォーマンスは暴れ馬同士が激しくせめぎ合っている印象。
コパチンの弓が激しく弦を叩き、雑音が混じっても意に介さない。疾風怒濤、型破り、奇想天外。装飾音以外、基本的にヴィブラートをかけないので、ピリオド・アプローチと言ってもいいくらい。
彼女は野生児だから素足でステージに現れ、ドンドン床を踏み鳴らす。グイグイ動かすテンポ、あまりにもとんでもない演奏で笑ってしまう。ヤバイ!!ベートーヴェンが生きていたらビックリして席から転げ落ちるだろう。
「滑らか」とか「落ち着いた」という表現と対極に位置していて尖っている。細かいことは気にしない。ADHD(注意欠如・多動症)的という表現が相応しいかも知れない(褒めてます)。唯一無二、規格外。「音楽は自由だ!」と、快哉を叫びたくなった。
アンコールで演奏された『ラグ・ギドン・タイム』はジョージア(グルジア)の作曲家ギア・カンチェリの作品で、恐らくギドン・クレーメル(ラトビア出身)のために書かれたものと推定される。クレーメル本人もしばしばアンコールで取り上げているようだ。
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