イニシェリン島の精霊
評価:A
アカデミー賞で作品・監督・主演男優・助演女優・助演男優(×2人)・脚本・作曲・編集の8部門9ノミネートを果たした。公式サイトはこちら。
本作を見る前にアイルランド内戦についておさらいしておこうと思い、ニール・ジョーダン監督の映画『マイケル・コリンズ』を見直したところ、とても良い補助線になった。1923年という『イニシェリン島の精霊』の時代設定は独立運動家コリンズが暗殺された翌年。よって海を隔てた対岸のアイルランド島では戦争の火焔が上がっている。
本作におけるパードリック(コリン・ファレル)とコルム(ブレンダン・グリーソン)の諍いは、アイルランドの独立を目指しIRAで共闘していたコリンズと後に大統領になるデ・ヴァレラが、イギリスと締結した条約の内容で対立し、アイルランド自由国と共和国政府に分裂し戦争に発展していく歴史に重ねて見ることが出来る。
コルムが言いたいことは「行動変容」という言葉に集約されるが、長年友情を育んできたパードリックには全く理解出来ない。ふたりはコミュニケーションの不全状態に陥っている。しかし旧弊な島民の中でおそらく一番教養があると思われるパードリックの妹シボーン(ケリー・コンドン)にコルムのメッセージはしっかりと伝わり、彼女は動き始める。ここがこの物語の面白いところである。
指を切断するというのは甚だ過激な行動だが内部分裂のメタファーにもなっており、1960年代に日本の学生運動が内ゲバに明け暮れた挙げ句の果て連合赤軍によるリンチ殺人事件に至る過程や、オウム真理教による男性信者リンチ殺人事件にも繋がっているな、と思った。
つまりこの奇妙で深遠な物語には普遍性があるということだ。
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