第10回 神戸国際フルートコンクール 優勝記念演奏会
2月23日(木・祝)神戸文化ホールへ。第10回 神戸国際フルートコンクールで優勝したラファエル・アドバス・バヨグ(スペイン)とマリオ・ブルーノ(イタリア)の演奏を聴く。共演は鈴木華重子(ピアノ)と神戸室内管弦楽団のメンバーたち。
このコンクールは4年ごとに開催されてきたが、今回は新型コロナウイルス禍の影響で全審査がオンラインで行われた。
過去の入賞者にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団首席のエマニュエル・パユ(第1位)と元・首席マチュー・デュフォー(第2位)、ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団首席エミリー・バイノン(第3位)らがいる。新型コロナウィルス(パンデミック)に対する楽団の対応に不満を抱いていたため辞めたと言われるデュフォーの代わりにベルリン・フィルの首席となったセバスチャン・ジャコーも第8回大会(2013年)の優勝者だ。僕が第7回を聴いた感想は下記。
・ 第7回神戸国際フルートコンクール/入賞者による披露演奏会 2009.04.06
この時優勝したダニエラ・コッホは現在バンベルク交響楽団の首席フルート奏者。 第3位のデニス・ブリアコフはロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団首席フルート奏者として活躍している。なお、マチュー・デュフォーは嘗てロサンゼルス・フィルとシカゴ交響楽団の首席を兼任していたことがある。
演奏会のプログラムは以下の通り。
・ W.F.バッハ:2つのフルートのための二重奏曲第1番(アドバス・バヨグ、ブルーノ )
・ ジャレル:無伴奏フルートのための3つの小品(ブルーノ)
・ ドブリエール:5つの不思議な小品(ブルーノ、鈴木)
・ シュルホフ:フルート・ソナタ(アドバス・バヨグ、鈴木)
・ アドバス・バヨグ:"Music is Life"(アドバス・バヨグ)
・ フランセ:五重奏曲(ブルーノ、鈴木、弦楽のメンバー)
・ モーツァルト:フルート四重奏曲第1番(アドバス・バヨグ、弦楽のメンバー)
・ F & K ドップラー:「ハンガリーの羊飼いの歌」による幻想曲(アドバス・バヨグ、ブルーノ、鈴木 )
僕はどちらかというと低音が豊かに響くブルーノの音色に心惹かれた。
スイス出身の現代音楽作曲家ジャレルの小品は蚊の鳴く声のようだったり鼓だったり“フルートらしくない”音響が面白い。
フランスの作曲家ドブリエールの小品では高音の弱音が掠れず、綺麗だった。
チェコのプラハに生まれたユダヤ人作曲家シュルホフはナチスドイツに「退廃音楽」の烙印を押され、強制収容所で亡くなるという悲劇的人生を送った。そのフルート・ソナタをアドバス・バヨグは暗譜で吹いた。ジャズの要素が加味され、第3楽章はミステリアスで痺れる。
アドバス・バヨグの自作自演は途中に何度も"Music is Life !"と叫び、唾を飛ばしたり足踏みするなど実にユニークなパフォーマンス。尺八的な響きで「さくら」が奏でられたり、J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番の旋律が聴こえたりする場面も。
フランセは軽妙洒脱、モーツァルトのフルート四重奏は昔から大好きな曲で、ドップラーのハンガリー田園幻想曲は僕自身フルートをたしなむので吹いたことがあるが、「ハンガリーの羊飼いの歌」は初体験。とても美しく、聴き惚れた。
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