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2022年12月

2022年12月31日 (土)

2022年映画ベスト25+α & 個人賞発表!

毎年恒例、映画ベストを発表しよう。2022年に劇場で初公開された作品及び、Netflix, Amazon Prime Videoなどインターネットで配信された作品を対象とする。『ザ・クラウン』『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン 』『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』など連続ドラマは除外するが、今年は特別枠としてTV作品賞・個人賞を設定した。それだけ充実していたということだ。なお、現時点で評判のいい『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』『RRR』『THE FIRST SLAM DUNK』『こちらあみ子』は未見である。悪しからず。

 1.すずめの戸締まり
 2.ウエスト・サイド・ストーリー
 3.ナイトメア・アリー
 4.ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(Netflix配信)
 5.ある男
 6.地球外少年少女(Netflix配信)
 7.ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦 
   (National Geographic / Disney+配信)
 8.ベルファスト
 9.シン・ウルトラマン
 10.ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償(日本未公開 / Netflix配信)
 11.犬王
 12.ちょっと思い出しただけ 
 13.マチルダ・ザ・ミュージカル(Netflix配信)

 14.トップガン マーヴェリック 
 15.西部戦線異状なし(ドイツ映画 / Netflix配信)  
 16.ザ・バットマン 
 17.Coda コーダ あいのうた 
 18.ナイブズ・アウト: グラスオニオン(Netflix配信)  
 19.さがす
 20.ホワイト・ノイズ(Netflix配信)  
 21.プレデター:ザ・プレイ(Disney+配信) 
 22.ハウス・オブ・グッチ    
 23.ウェンデルとワイルド(Netflix配信) 
 24.私ときどきレッサーパンダ(Pixar / Disney+配信) 
 25.NOPE/ノープ
 26.余命10年

監督賞:スティーブン・スピルバーグ(ウエスト・サイド・ストーリー)
主演女優賞:小松菜奈(余命10年)
主演男優賞:佐藤二朗(さがす)
助演女優賞:アリアナ・デボーズ(ウエスト・サイド・ストーリー)
助演男優賞:トロイ・コッツァー(コーダ あいのうた)
オリジナル脚本賞:新海誠(すずめの戸締まり)
脚色賞:トニー・クシュナー(ウエスト・サイド・ストーリー)
撮影賞:クラウディオ・ミランダ(トップガン マーヴェリック)
美術賞:タマラ・デヴェレル、シェーン・ヴィア(ナイトメア・アリー )
衣装デザイン賞:ルイス・セケイラ(ナイトメア・アリー )
編集賞:新海誠(すずめの戸締まり)
作曲賞:アレクサンドル・デスプラ(ギレルモ・デル・トロのピノッキオ )
歌曲賞:野田洋次郎(『すずめの戸締まり』より“すずめ feat.十明”)

TV作品賞:ウェンズデー(Netflix配信)
TV演出賞:大根仁(エルピス ー希望、あるいは災いー)
TV主演女優賞:ジェナ・オルテガ(ウェンズデー)
TV主演男優賞:眞栄田郷敦(エルピス ー希望、あるいは災いー)
TV助演女優賞:宮沢りえ(鎌倉殿の13人)
TV助演男優賞:鈴木亮平(エルピス ー希望、あるいは災いー)
TV脚本賞:渡辺あや(エルピス ー希望、あるいは災いー)、三谷幸喜(鎌倉殿の13人)
TV美術賞:マーク・スクルートン(ウェンズデー)
TV衣装デザイン賞:コリーン・アトウッド(ウェンズデー)
TV作曲賞:ダニー・エルフマン(ウェンズデー)、エバン・コール(鎌倉殿の13人)
TV視覚効果賞:ハウス・オブ・ザ・ドラゴン(HBO Max配信)

『ウエスト・サイド・ストーリー』 とにかく、アカデミー賞を10部門も制覇したロバート・ワイズ監督による不朽の名作『ウエストサイド物語』をリメイクしようなんて、狂気の沙汰である、と誰もが思ったことだろう。「勝算なんか、ある筈がない」と僕も確信していた。ところが!、である。今更ながらスティーブン・スピルバーグの演出力に舌を巻いた。アリアナ・デボーズのアニタにも痺れた。旧バージョンのリタ・モレノを超えた。

『ピノッキオ』は『ナイトメア・アリー』同様、ギレルモ・デル・トロお得意のダーク・ファンタジーだ。出てくるキャラクターが名作『パンズ・ラビリンス』を彷彿とさせる。原作をアレンジし、ムッソリーニとファシスト党・黒シャツ隊を登場させているのも、『パンズ・ラビリンス』がフランコ将軍によるスペイン内戦を背景にしていることに似ている。

『ある男』 久しぶりに骨のある社会派ミステリーを観た。『砂の器』を思い出したのは、僕だけではあるまい。松本清張亡き後、こういう日本映画が減ってしまった。「私は誰?」アイデンティティーの消失。

『地球外少年少女』は本格的SFでありながらジュブナイルでもあるという離れ業を成し遂げた。そういう意味で『時をかける少女』(大林宣彦版/細田守版)の功績に匹敵する作品。

『ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦』は狂気についてのドキュメンタリー映画である。僕はアカデミー賞を受賞した『マン・オン・ワイヤー』とテーマが似ているなと思った。それは不条理についてアルベール・カミュが考察したエッセイ『シーシュポスの神話』に繋がっている。

『犬王』 相変わらず湯浅政明監督はぶっ飛んでいる。能楽師・犬王の人生をロックンロール・ミュージカルとして描くという発想が凄い!

僕は『世界の中心で、愛をさけぶ』だの、『君の膵臓をたべたい』だの、『四月は君の嘘』といった、男性作家が〈夢の女〉を描いた〈お涙頂戴〉の難病ものが嫌いである。反吐が出る。しかし『余命10年』は違った。原作者が女性であり、彼女の持病について語った小説だったからだろう。あざとさが微塵もなく、リアリティを感じたのである。なお彼女は肺動脈性肺高血圧症で2007年に没している。享年38歳だった。そして映画でヒロインを演じた小松菜奈の輝くばかりの美しさときたら!!

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2022年12月18日 (日)

「ハワイの雪」と忠臣蔵特集〜柳家喬太郎 独演会@兵庫芸文 2022

12月17日(土)兵庫県立文化センターへ。

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〈昼の部〉

 ・柳家やなぎ:牛ほめ
 ・柳家喬太郎:ウルトラ仲蔵(喬太郎 作)
 ・一龍斎貞寿:鎌倉星月夜
 ・柳家喬太郎:ハワイの雪(喬太郎 作)

〈夜の部〉

 ・柳家やなぎ:子知る

 ・柳家喬太郎:カマ手本忠臣蔵(喬太郎 作)
 ・一龍斎貞寿:南部坂雪の別れ
 ・柳家喬太郎:俵星玄蕃(喬太郎 作)

柳家喬太郎の出演する落語会は既に40公演以上聴いているのだが、今まで一度も遭遇出来なかったネタが『ハワイの雪』。それを漸く聴けて感無量である。円谷プロ公認〈ウルトラマン落語〉も相変わらず愉しい!

夜の部は忠臣蔵特集で『俵星玄蕃』は三波春夫が歌った〈長編歌謡浪曲〉が有名。遺族から唯一カバーを許された柳亭市馬はこれをデビュー・シングルで歌ったり、 落語会でも自慢の喉を披露している。今回は喬太郎による落語版で堪能した。

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2022年12月16日 (金)

中川晃教(主演)ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」

11月3日(祝)新歌舞伎座@大阪市へ。トニー賞で作品賞を受賞したブロードウェイ・ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』を観劇した。

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あっきーこと、中川晃教(あきのり)は2002年小池修一郎演出のウィーン・ミュージカル『モーツァルト!』日本初演で主演に抜擢され、文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞および読売演劇大賞で(新人が対象の)杉村春子賞を受賞した。2016年に日本初演された『ジャージー・ボーイズ』では読売演劇大賞最優秀主演男優賞および、菊田一夫演劇賞を受賞。また本作は読売演劇大賞においてミュージカルとして初めて最優秀作品賞に選ばれ、藤田俊太郎は最優秀演出家賞に輝いた。

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僕は2018年の全国ツアーを新歌舞伎座で観ているのだが、2020年に予定されていた再再演は新型コロナウィルス感染拡大のため全公演中止となり、代わって『ジャージー・ボーイズ イン コンサート』@帝国劇場が無観客で生ライブ配信された。よって大阪公演は4年ぶりである。

ロックンロール・グループ「フォー・シーズンズ」の結成からその隆盛、崩壊を描くジュークボックス・ミュージカルである。同ジャンルの中では一番成功した作品と言えるのではないだろうか。僕は『マンマ・ミーア』より断然好き。ストーリー的にはレコード・レーベル「モータウン」の黒人女性グループ「スプリームス」(メンバーにダイアナ・ロスがいた)をモデルにした『ドリームガールズ』に近いが、後者はあくまでオリジナル楽曲だ。

とにかく「フォー・シーズンズ」のリード・ヴォーカリスト、フランキー・ヴァリの高音の歌声が特異で、唯一無二と言ってもよく、この役をこなすのは並大抵のことじゃない。その点で中川晃教は完璧であり、特に「君の瞳に恋してる」の歌唱は圧巻。正にショー・ストップ(あまりに素晴らしい歌や演技に対して拍手喝采がやまず、ショーの進行が一時的に中断する状況のこと)の独壇場であった。

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2022年12月12日 (月)

児玉桃 メシアン・プロジェクト「世の終わりのための四重奏曲」

12月11日(日)兵庫県立芸術文化センター小ホールへ。

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児玉桃(ピアノ)、竹澤恭子(ヴァイオリン)、横坂源(チェロ)、古田誠(クラリネット)で、

 ・メシアン:8つの前奏曲集より第1曲「鳩」
 ・ミヨー:ヴァイオリン、クラリネット、ピアノのための組曲
   I.序曲 II.ディヴェルティメント III.遊び IV.導入と終わり
 ・ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲 第2番 ホ短調
 ・メシアン:世の終わりのための四重奏曲

僕は『世の終わりのための四重奏曲』が大好きで、実演を聴くのも3回目である。この楽曲については下記事で詳しく解説した。

 ・〈20世紀の黙示録〉メシアンの最高傑作「世の終わりのための四重奏曲」をめぐって 2019.10.04

腕っこきの音楽家たちによる演奏に陶酔した。第6曲〈7つのラッパのための狂乱の踊り〉は正に阿鼻叫喚の音楽といった感じ。最終曲〈イエスの永遠性への讃歌〉は旋律が次第にゆるゆると上昇していき、浮遊感があって、カタルシス(悲劇が観客の心に怖れと憐れみの感情を呼び起こすことで精神を浄化する効果)を感じた。

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