河村尚子 ピアノ・リサイタル〜オール・シューベルト・プログラム
兵庫県立芸術文化センター小ホール@西宮市へ。
河村尚子を2日に渡り聴く。オール・シューベルト・プログラムで、
3月12日(土)
・即興曲 第3番 変ロ長調 D935/3
・ピアノ・ソナタ 第18番ト長調 D894「幻想」
・「3つの小品」より 第1番 変ホ短調 D946/1
・ピアノ・ソナタ 第19番 ハ短調 D958
アンコール曲
・シューベルト:即興曲 第2番 D935
・シューベルト(リスト編):12の歌「糸を紡ぐグレートヒェン」
・バッハ(ペトリ編):羊は安らかに草を食み
9月19日(月・祝)
・「楽興の時」第3番 ヘ短調 D 780/3
・「3つの小品」より 第3番 ハ長調 D 946/3
・ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D 959
・即興曲 第3番 変ト長調 D 899/3
・ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D 960
アンコール曲
・「楽興の時」 第2番 変イ長調 D 780/2
シューベルト最後のピアノ・ソナタ第19-21番は1828年9月に一気に書かれた。その年の11月9日に作曲家は亡くなっているので正に死の直前、白鳥の歌である。3部作と言っても過言ではなく、そういう意味でベートーヴェンのピアノ・ソナタ30-32番と成立過程が似ている。ベートーヴェン最後のピアノ・ソナタは3曲連続で演奏される機会が多く、シューベルトの3部作もそれが理想である。ただし、シューベルトのソナタの方が演奏時間が長いので、なかなか一夜で一気にというわけにいかない。そこが難しいところ。
河村尚子は兵庫県西宮市出身。地元なので彼女の気合が入った演奏を沢山聴けるのは嬉しい限りだ。河村はドイツのハノーファー音楽演劇大学でロシア出身のピアニスト、ウラジミール・クライネフ(チャイコフスキー国際コンクールで第1位)に師事した。師匠譲りの剛直なタッチで、やはりロシアピアニズムの継承者だなぁとつくづく感じる。だからどこか彼女の演奏はリヒテルのそれに近いのである。リヒテルもシューベルトを得意としており、特に1972年に録音された第21番は今でも超一級の名演として知れ渡っている(メロディア音源で当初日本ではビクターから発売されていたが、現在はAlto レーベルから出ており、Spotifyなどサブスクリプションでも聴ける)。
第20番は深淵を覗き込むような虚無感に襲われる第2楽章が白眉で、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したトルコ映画『雪の轍』で印象的に使われた。また第21番は純粋無垢に歌い続ける天使(ピアノの右手)≒シューベルトと、彼を死の闇に引きずり込もうとするとする悪魔(左手)の相克がスリリングだ。
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