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2022年9月

2022年9月29日 (木)

やっと会えたね。高畑充希(主演)ミュージカル「ミス・サイゴン」

舞台ミュージカルをこよなく愛するtheatergoer(観劇好きの人/芝居の常連/芝居通)にとって、その作品を初演キャストで観劇したというのは何ものにも代え難い勲章である。例えばブロードウェイやウエストエンド(ロンドン)ならジュリー・アンドリュース(イライザ)で『マイ・フェア・レディ』を観たとか、エセル・マーマンで『アニーよ銃をとれ』、マイケル・クロフォードとサラ・ブライトマンで『オペラ座の怪人』、レア・サロンガとジョナサン・プライスで『ミス・サイゴン』といった具合。僕が自慢出来るとしたら2001年にブロードウェイでネイサン・レインとマシュー・ブロデリックら初演キャストが勢揃いしたミュージカル『プロデューサーズ』を観劇したことかな。

日本の場合、もし僕の目の前に市村正親主演で『オペラ座の怪人』を観たという人が現れたら、尊敬と憧憬の眼差しで見つめ、当時の様子を根掘り葉掘り訊くだろう。

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さて30年前、僕は帝国劇場で『ミス・サイゴン』の日本初演をキム:本田美奈子、エンジニア:市村正親、クリス:岸田智史 で観ている。その後、笹本玲奈、新妻聖子、昆夏美らのキムも観たのだが、初演の感動に達することはなかった。本田はその後、急性骨髄性白血病を発症し、2005年に亡くなった。享年38歳。彼女のキムは魂を燃やし尽くすような絶唱だった。

 ・「ミス・サイゴン」の想い出 2008.10.11

またロンドンとブロードウェイでキムのオリジナル・キャストを務めたレア・サロンガの生歌も大阪で聴いた。

 ・「4 Stars」レア・サロンガ、ラミン・カリムルー/世界で活躍するミュージカル・スター夢の競演! 2013.06.29

高畑充希は2020年の公演からキムを演じることになっていたが、新型コロナ禍のため全公演中止になってしまった。待望の新キャストである。

2022年9月11日(日)ソワレ@梅田芸術劇場の配役。

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続いて9月15日(木)ソワレ。

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市村正親73歳。30年前からエンジニアを演じているわけだが、年齢的衰えを感じさせない完璧なパフォーマンス。とても「おじいちゃん」には見えない。一方の伊礼彼方は現在40歳。若くてセクシーだ。彼は沖縄県出身の父とチリ出身の母の間に生まれており、エンジニアはフランスとベトナムの混血児という設定なので、エキゾチックな雰囲気がピッタリ。

チョ・サンウンは韓国・釜山生まれで以前、三雲肇という名前で劇団四季に所属していた。モリッツ役で『春のめざめ』に出演したときの舞台を僕は観ている(主演は現在NHK大河ドラマ『鎌倉殿の十三人』に出演中の柿澤勇人)。

 ・「春のめざめ」と現代ブロードウェイ・ミュージカル論 2009.09.10

日本語の発音に覚束ない点が些かあったが、歌唱力は文句なし!僕が今まで観劇した中でトップレベルのクリスだった。

高畑充希のキムを観て、漸く本田美奈子の呪縛から解き放たれた心地がした。彼女のキャリアの最初がミュージカル『ピーターパン』であることからも分かる通り元々歌が上手いし、なにより演技力がある。最初はか細い声で、今にも消え入りそうな頼りない印象だが、男の子を授かってからは力強く歌い上げる演技プランはお見事としか言いようがない。大満足で帰途についた。

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2022年9月12日 (月)

PAC PERCUSSION !@兵庫芸文

6月25日(土)兵庫県立芸術文化センター 小ホールへ。PAC(兵庫芸術文化センター管弦楽団)パーカッション・メンバーと特別ゲスト:菅原淳(ティンパニ/パーカッション)による演奏会を聴く。

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 ・ラヴェル(池田健太 編):古風なメヌエット
 ・武満徹:雨の樹
 ・ケージ:リビングルーム・ミュージック
 ・ベック:ティンパニと打楽器アンサンブルのための協奏曲
 ・武満徹:四季
 ・プロコフィエフ(菅原淳 編):バレエ組曲「ロメオとジュリエット」

菅原淳は元・読売日本交響楽団の主席ティンパニ奏者であり、現在はバッハ・コレギウム・ジャパンやオーケストラ・リベラ・クラシカ、神戸室内管弦楽団などでバロック・ティンパニを演奏している。また武満徹『雨の樹』の初演者でもあり、奏者の並び方(横一列)や照明などで初演の雰囲気が再現され、とても貴重な体験となった。

あとプロコフィエフでは曲の途中でレナード・バーンスタイン『ウエストサイド物語』〜“トゥナイト”に脱線したり(WSSの物語はロミジュリを下敷きにしている)、チャイコフスキーが作曲した幻想序曲『ロメオとジュリエット』の旋律が飛び出したりと遊び心に満ち、愉しかった。

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2022年9月 7日 (水)

第5回 柳家喬太郎なにわ独演会 2022

9月3日(土)ドーンセンターホール@大阪市へ。柳家喬太郎を聴く。

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喬太郎は最近膝の調子が悪いそうで、通常江戸落語では使わない見台と膝隠しを前に置き、胡座をかいての口演。

昼の部

 ・柳家喬太郎:百川
 ・寒空はだか:漫談
 ・柳家喬太郎:お若伊之助(初代 三遊亭円朝 作)

夜の部

 ・柳家喬太郎:野ざらし
 ・寒空はだか:漫談
 ・柳家喬太郎:ペタリコン(三遊亭円丈 作)

客席に子供がいないこともありマクラで艶笑小噺、喬太郎作〈東京ホテトル音頭〉、そしてブルー・ライト・ヨコハマの旋律に乗せて3分で出来る『芝浜』などを披露してくれた。さらに入門前に一年半、福家書店で働いていたときの〈書店店員発注電話〉も。また映画『シン・ウルトラマン』の感想は「最高!」と(喬太郎は持ちネタに『抜けガヴァドン』などウルトラマン落語がある)。

喬太郎で『ペタリコン』を聴くのは多分これが3回目。やはり凄味がある。人間の冷酷さを演じさせたら落語家で彼の右に出るものはいない。今回初めて気がついたが、これってモロにパワーハラスメントの噺だね。因みにパワハラは和製英語であり、英訳するとAbuse of Authority(権限の乱用)とか、Workplace Bullying(職場でのいじめ)ということになるらしい。

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2022年9月 6日 (火)

ミュージカル「四月は君の嘘」

6月17日(金)兵庫県立芸術文化センターへ。ミュージカル『四月は君の嘘』を観劇した。

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そもそも2020年8月20日(木)~8月23日(日) に梅田芸術劇場で上演される予定でチケットも購入していたのだが、新型コロナウィルス禍で全公演中止になってしまった。2年経って漸く初演にこぎつけたのである。

出演は木村達成(Wキャスト)、生田絵梨花、唯月ふうか、水田航生(Wキャスト)ほか。原作は新川直司の漫画、作曲は『ジキル&ハイド』『スカーレット・ピンパーネル』『ボニー&クライド』などブロードウェイでも活躍するフランク・ワイルドホーン。訳詞と演出に上田一豪、脚本に坂口理子、音楽監督・指揮は塩田明弘。

兎に角、ワイルドホーンの楽曲が『スカピン』や『DEATH NOTE』に匹敵するくらい素晴らしい。

木村達成はイケメンで歌唱力があり、調べてみると舞台デビューはミュージカル『テニスの王子様』だそう。城田優、加藤和樹、古川雄大ら、2.5次元ミュージカル出身者の活躍が近年目覚ましい。

本作はいわゆる“難病もの”である。年若い恋人が悪性腫瘍(癌・白血病・肉腫)で死ぬ。古くは吉永小百合主演『愛と死をみつめて』(1964)、ハリウッド映画『ある愛の詩』(1970  原作:エリック・シガール)、近年では『世界の中心で、愛をさけぶ』(原作:片山恭一)、『君の膵臓をたべたい』(原作:住野よる)など大ヒット作が目白押しである。面白いことに文通を書籍化した実話を元にする『愛と死をみつめて』以外は、全て原作者が男であり、難病で死ぬのは女性である。イケメン男子が難病で死ぬ話は殆どない。男性作家の願望・夢みたいなものがこのジャンルには詰まっている。女性は恋人が若くして死ぬ話にロマンを感じないのだろう。

乃木坂46出身の生田絵梨花は元々歌が上手いのだが(幼い頃からピアノを習っており、絶対音感を持っていると思われる。音程が外れない)、最近演技力も身に付いてきたようだ。台詞が棒読みでなくなってきた。唯月ふうか共々文句なし!



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2022年9月 5日 (月)

ミュージカル「メリー・ポピンズ」

6月1日(水)梅田芸術劇場へ。ミュージカル『メリー・ポピンズ』を観劇。出演は笹本玲奈、大貫勇輔、駒田 一、知念里奈、鈴木ほのか、コング桑田ほか。

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4年前に観た感想は下記事に書いた。

 ・平原綾香、柿澤勇人(主演)ミュージカル「メリー・ポピンズ」と、その構造分析 2018.06.05

舞台版はディズニー映画を下敷きに大プロデューサー、キャメロン・マッキントッシュ(『キャッツ』『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』『ミス・サイゴン』)が制作した。映画はシャーマン兄弟が作詞・作曲を手がけているが、それに加え舞台版はアンソニー・ドリュー(作詞)、ジョージ・スタイルズ(作曲)が新曲を書いた。

物語にもいろいろ調整が加えられており、例えばジェーンとマイケルの父親ジョージ・バンクスの元子守で意地悪なユーフェミア・アンドリューは原作と舞台版に登場するが、映画版には出てこない。また笑うと宙に浮かぶアルバートおじさんの家の天井でのティーパーティーは舞台版で削除されている。メリー・ポピンズの子守唄“眠らないで”も舞台版では歌われない。さらに母親のウィニフレッド・バンクスは映画では女性参政権を獲得するための活動にのめり込んでいるが(時代設定は1910年。イギリスで30歳以上の女性に参政権が認められるのは1918年、21歳以上に拡大されるのは28年である)、舞台版では女優という設定に変更されている。

平原綾香のメリーも歌が上手く良かったが、笹本玲奈はそれを上回る出来栄え。終盤の見せ所、空中浮遊の場面では彼女が若い頃に演じたピーター・パンを思い出し、胸が熱くなった。あの時ウェンディを演じたのは神田沙也加だったなぁ……。

 ・笹本玲奈 復帰!/ブロードウェイ・ミュージカル「ピーターパン」 2010.08.09

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