映画「ドリームプラン」でウィル・スミスはアカデミー賞受賞という悲願を達成出来るのか?
評価:B
映画公式サイトはこちら。本作でウィル・スミスのアカデミー主演男優賞受賞は確実と巷では噂されている。
実話である。世界最強のテニスプレイヤー、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を世界チャンピオンに育て上げた実父リチャードが主人公。この親父がとにかく独善的で傲岸不遜、原題"King Richard"は彼が周囲の人々から「リチャード王」と揶揄されていたことに由来する。最初このタイトルを見たときは「現代を舞台にシェイクスピア劇(『リチャード三世』)を翻案するのかな?」と思ったが、全然違った。ただ、暴君であるという共通点はある。
この主人公から『巨人の星』の星一徹を想起する人は多いだろう。やっていることは児童虐待に近いスレスレのラインだ。だから劇中で近所の人に通報され警察が来る場面があるのだが、宜なるかな。
確かにこの親なくして姉妹が世界の頂点に立つことはなかっただろう。だからといってリチャードの教育方針(子育て)が正しいと一般化することは決して出来ない。
僕は五嶋みどりと五嶋龍という世界的ヴァイオリニストを育て上げた母親のことを思い出した(娘が10歳の時に夫をはじめ家族の反対を押し切って母娘だけで渡米し、ジュリアード音楽院の教授に師事した。その後間もなく離婚)。たしかにその音楽教育のお陰で子どもたちは一流に育った。しかしみどりは22歳の時に、摂食障害とうつ病で入院を経験している。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトを神童として売り出した父レオポルドにも似たところがある。確かに彼らの力で「天才」は育った。世の中(人類)にとっては有益だった。しかし、果たして子どもたち当人にとっては幸せだったのだろうか?僕は甚だ疑問に思う。
結局、何を正しいとするかは個々の価値観で違うのだろう。
ウィル・スミスは『ALI アリ』『幸せのちから』でアカデミー主演男優賞にノミネートされたが、受賞は逃している。今回が3回目の挑戦。
なお、ウィル・スミスが原案・製作・出演を兼ね、M・ナイト・シャマランが監督した『アフター・アース』(2013)では主演した息子のジェイデン・スミスと共に最低映画の祭典として知られるラジー(ゴールデン・ラズベリー)賞でワースト主演男優賞、助演男優賞、スクリーンコンボ賞の3賞に輝き、辛酸を嘗めた。
僕は正直、『ドリームプラン』のウィル・スミスがオスカーに値する演技だとは全く思わなかった。もしアカデミー会員だったら『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のベネディクト・カンバーバッチに一票を投じる。ただ僕は昔からウィル・スミスが嫌いで、彼が『アフター・アース』でラジー賞を受賞したときは快哉を叫んだクチである。そんな先入観・色眼鏡で見ているから審美眼が濁っている可能性は否定しない。
個人の感想と最終的なアカデミー賞受賞予想とは別です。あしからず。
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コメント
ウィル・スミスですが、まー 確かに、
元々はラッパーで、フレーズのかまし具合でいつの間にか俳優、ていう 超ゆる~い、、チャラい男だったからねえー 笑
本番はどうなるでしょうねー
投稿: onscreen | 2022年3月20日 (日) 11時37分
ウィル・スミスの何が嫌って、あのお調子者のキャラですね。「何イキっていやがる。ウザいんだよ、あっち行け!」って感じでしょうか。但し繰り返しますが、個人の感情とアカデミー賞受賞予想はまた、別の話です。
投稿: 雅哉 | 2022年3月20日 (日) 12時53分