映画「コーダ あいのうた」
評価:A
CODAとは、Children of Deaf Adults=「耳の聴こえない両親に育てられた子ども」という意味。公式サイトはこちら。
障碍者を差別してはいけないのは当たり前のことだが、余りにもその意識が強すぎると却って、障碍者を「天使」とか「絶対的な善」として描いてしまうという愚行に走りかねない。その悪しき典型例が知的障害者を「聖者」になぞらえた、野島伸司脚本のテレビドラマ『聖者の行進』であり、アニメ映画化もされた漫画『聲の形』もしかり。
しかし『コーダ あいのうた』では聾唖者を腫れ物に触るように扱うのではなく、彼らだって屁をこくし、マリファナを吸うし、下品な表現で相手を罵ったりする等身大の人間として描いていることに共感した。障碍者を【健常者が感動するための道具】として見世物扱いする「感動ポルノ」とは一線を画する作品だと思う。
・感動ポルノとして消費される障害者と「聲の形」 2016.09.23
聾唖者の家族を描いている映画だという予備知識ぐらいで観始めたら、主人公の少女が歌う場面から始まったので面食らった。意表を突く作劇であり、音楽映画としても秀逸。耳が聞こえなくても振動で音楽が楽しめるというのは大きな発見だったし、特に娘の歌声が聞こえない父親が、彼女の才能を確信する場面の演出の巧さには舌を巻いた。いや〜、これぞ映画的瞬間と言えるだろう。
「家族」という名の絆(ほだし)から解き放たれて、子供が独立するというテーマは普遍的であり、幸運にも五体満足に生まれた我々にとっても決して無関係ではない。
それにしても『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』にせよ、『ヤング・ゼネレーション』にせよ、映画で高い崖から水に飛び込む場面を見ると「ああ、青春っていいな」と羨ましく思うのは、僕だけではないだろう。それは恐らく自分が閉じこもる殻を破り、外の世界に飛び出すことのメタファーでもあるのではないだろうか?
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