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2021年10月 4日 (月)

サマーフィルムにのって

評価:F (不可)

Summer

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評判が良かったから観に行ったのだが、久々に地雷を踏んだ。お粗末。

映画讃歌をテーマとする作品は少なくないが、しばしばハマりやすい落とし穴は「映画が大好きな俺って、イケてるでしょ?」という自画自賛、自己肯定感丸出しの、まるで他人のマスターベーションを強制的に見せられているような不快感である。本作はその典型で、ほとほとうんざりした。これだけの悪印象を抱いたのは原田眞人監督のデビュー作『さらば映画の友よ インディアンサマー』(1979)以来である(原田さんは今ではちゃんと立派な大人になった)。つまり「サマーフィルムにのって」は青臭いのだ。みっともなくて目を覆いたくなる。反吐が出そう。あと、しょーもない『時をかける少女』の引用にも腹が立った。これは筒井康隆に対する冒涜である。

同ジャンルのスタンリー・ドーネン監督『雨に唄えば』とか、フランソワ・トリュフォー監督『アメリカの夜』、あるいはジュゼッペ・トルナトーレ監督『ニュー・シネマ・パラダイス』の域に達するのは、並大抵のことじゃないと改めて思い知った。

本作の主人公である女子高生は勝新太郎が主演する『座頭市』などの時代劇が大好きで、同級生の友人(女)三人が集う河川敷の秘密基地(小屋)には工藤栄一監督『十三人の刺客』のポスターが貼ってあり、市川雷蔵の『大菩薩峠』や三船敏郎の『椿三十郎』が話題になったりとするわけだが、これは明らかに男の映画マニアの発想であり、女子高生の会話としてはあまりにも不自然。鼻白んでしまった。実際のところ本作は監督・脚本:松本壮史、共同脚本:三浦直之と、男ばかりで書いている。僕は今までに三千本以上の映画を観ており相当なマニアだと自認しているし、岡山映画鑑賞会とか、OBs Club(大林宣彦公認ファンクラブ)といったディープな会に参加してファン同士で語り合ったりもしてきたが、そもそも日本の時代劇が大好きな女性なんか1人として出会ったことがないぞ。黒澤映画に心酔するのも男だけだ。それに、男も含め今どきの高校生に勝新とか雷蔵ファンがいるとも思えない。全くリアリティがない。

主役の伊藤万理華は撮影当時24歳だが、ちゃんと高校生に見えた。彼女は乃木坂46の第1期生で、僕はTVの冠バラエティ番組『乃木坂って、どこ?』をグループのCDデビュー(『ぐるぐるカーテン』)前から見ていたから、彼女のことを知ったのは多分2011年である。グループの中では割と地味な存在で、シングルの選抜に選ばれずアンダーメンバーに甘んじることが多かったように記憶している。ただしアンダー(16−17名)の楽曲で3度、センターに選出されている。万理華(まりっか)が演技するのは初めて見たが、悪くない。新人女優として中々有望だと思う。乃木坂46の卒業生といえば『愛がなんだ』の深川麻衣も良かったし、西野七瀬がスナックのママを演じ好評の『孤狼の血 LEVEL2』も近いうちに是非観たい。彼女たちの未来に幸あれ!

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