最後の決闘裁判
評価:A
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『グッド・ウィル・ハンティング』(1997)でアカデミー賞/オリジナル脚本賞を受賞したベン・アフレックとマット・デイモンが久しぶりに共同脚本を手がけ、出演した。ただし今回はノンフィクションの原作がある。また女性目線で描く第三部は女性脚本家ニコール・ホロフセナーが加わった。
振り返ればリドリー・スコット監督の長編映画デビュー作は無意味な決闘を繰り返す主人公を描く『デュエリスト/決闘者』(1977)だったわけで、原点回帰と言えるのではないだろうか?本作を観ながら「自分の誇りや名誉を守るために殺し合いをするなんで実に馬鹿げているし、そもそも勝者が正義で、敗者が悪だと決着がつくわけでもない。虚しい」と思った。考えてみればそれは戦争も同じだ。歴史書というのは常に勝者の視点から書かれて来たが、『最後の決闘裁判』で描かれたように敗者側など複数の視点から観察すれば、もっと別の物語が見えてくる気がする。そういった奥行きを持った深い作品である。
リドリー・スコット監督の映画に登場する女性たちは昔から強かった。『エイリアン』のリプリーは言うに及ばず、『テルマ&ルイーズ』の主人公ふたりは女を性処理の道具くらいにしか考えていない男たちをぶっ飛ばして、空高く飛翔して行った。そして本作のヒロイン・マルグリットも当初は父親が決めた政略結婚に従うおとなしい娘のように見えるが、徐々に彼女の芯の強さが浮かび上がってくる構成になっている。
裁判の場面ではレイプ被害者なのに「お前が誘ったんだろう」的なことを言われたり、「セックスで絶頂に達したか?」と無神経なことを男たちから言われたりと、観ていていたたまれない気持ちになった。そして告発者が裁判で再び人間の尊厳を奪われるような屈辱的な目(=セカンドレイプ)に遭うという状況は、現代でも十分起こり得ることだなと空恐ろしくなった。
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