竜とそばかすの姫
評価:A+
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CGキャラクターデザインは『塔の上のラプンツェル』『ベイマックス』『アナと雪の女王』などでメインキャラクターを担当したジン・キム。インターネット上の仮想世界〈U〉のコンセプトアートを担当したのは新進気鋭のイギリス人建築家/デザイナー、エリック・ウォンという人選がユニークだ。岩崎太整、Ludvig Forssell、坂東祐太の3人が担当した音楽の充実ぶりにも目を瞠るものがある。
〈U〉における主人公の名前がベルであることからも明らかなように、本作は『美女と野獣』を下敷きにしており、彼女が沢山歌うスタイルは、ディズニーの十八番であるミュージカル・アニメーションを彷彿とさせる。日本のアニメ業界が長年不得意として来たジャンルだが、この野心的な試みは見事に成功している。
『美女と野獣』や『かえるの王さま』といった西洋の異類婚姻譚は最後、魔法が解けて王子様の姿に戻り、ヒロインと結ばれてめでたしめでたしとなる訳だが、今回はそうではなく、主人公の母性が覚醒するに至るというのが、いかにも日本人らしい発想で面白かった。
細田監督は東映アニメーション時代に短編3D立体映画『銀河鉄道999〜ガラスのクレア〜』(2000)を監督しており(詳細はこちら)、『竜とそばかすの姫』はベル(Belle)がメーテルになるまでを描いていると解釈することも可能なのではないだろうか?(実際のところ鉄道に乗り、窮地に立つ“鉄郎”を救出するために駆けつけるわけだから。)
・松本零士「銀河鉄道999」とエディプス・コンプレックス〜手塚治虫/宮﨑駿との比較論 2016.07.07
〈U〉は『サマーウォーズ』における〈OZ〉の進化系だが、細田監督の描くインターネット上の仮想空間は、他の映画でありがちな流言飛語が渦巻き、妬みや悪意に満ちた場所ではなく、遠く離れた人と人の心が通じ合い、繋がることが出来るという世界観であり、前向き思考だ。
あまりにも楽観的でご都合主義ではないかという批判も当然あるだろうが、僕は花も実もある絵空事として好意的に捉えた。考えてみれば往年のハリウッド映画はハッピー・エンドしかなかったわけで、観客に夢や希望を与え元気づけるという効能も、僕たちが愛する映画の大きな魅力の一つではないかと思うのだ。
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