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映画「夏への扉 ーキミのいる未来へー」と大林版「時をかける少女」

評価:B+

Tobira

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1956年に出版されたロバート・A・ハイラインの余りにも有名な時間SF小説を三木孝浩監督が世界で初めて映画化した。主演は山崎賢人と清原果耶。清原については映画『まともじゃないのは君も一緒』のレビューで大いに語った。

6月25日(金)から公開されたが、なんと第1週目の週末興行成績ランキングでは11位と、ベストテン圏外からのスタートとなった。駄目じゃん。東宝としては期待外れの結果だろう。

三木孝浩監督は大林宣彦監督の熱狂的ファンで、高校生の時に大林映画『ふたり』をどうしても観たくて修学旅行先の東京で集団行動から抜けだし映画館に行ったという(参考記事こちら)。

彼の撮った化け猫映画『陽だまりの彼女』は『HOUSE ハウス』へのオマージュに溢れていたし、『ホットロード』は『彼のオートバイ、彼女の島』への挑戦状、そして『くちびるに歌を』では映画中盤に死んだ母親役で「ふたり」の石田ひかりか登場、オルガンを弾く場面があった(『ふたり』ではピアノでシューマンのノヴェレッテを弾く)。

そんな三木監督が『夏への扉』を映画化するなら、間違いなく『時をかける少女』を意識した作品に仕上がるだろうという確信があった。

『時をかける少女』は〈ひとが、現実よりも、理想の愛を知ったとき、それは、ひとにとって、幸福なのだろうか?不幸なのだろうか?〉という問いから始まる。そして『夏への扉』の冒頭もホーキング博士の言葉が画面に浮かび上がる。次にテレビのブラウン管に映像が流され、やがてワイド画面に移行するという流れも『時かけ』のスタンダードからビスタサイズへ、という手法を踏襲している。

猫のピートがすごく可愛かったので、それだけでも『夏への扉』の映画化としては大成功だと思う。考えてみれば大林監督にはテレビ映画『麗猫伝説』があるし、『時をかける少女』でRHYMSTER 宇多丸が唱える〈深町くん昏倒レイプ犯説〉の舞台となるタイル小路にも猫はいた。あと『夏への扉』に繰り返し登場する海も大林映画に繋がるものを感じた。さらに割れたガラスで指を切るくだりは『時かけ』への目配せなのかも。

誰が見ても本作に登場するマッド・サイエンティスト遠井博士が『バック・トゥ・ザ・フューチャー(BTTF)』のドクのパロディであることは明らかだが、原作小説がBTTFに多大な影響を与え、それが小説の映画化作品に還元された。ちゃんとループ構造になっているのが面白いなと思った。また30年前の過去に戻った主人公が少年が手に持つ雑誌にサインし、勇気づける場面はヤノット・シュワルツ監督の名作『ある日どこかで』を彷彿とさせる。大林監督は『時をかける少女』で音楽を担当した松任谷正隆に参考資料として『ある日どこかで』のフィルムを観せた。だから『時かけ』の音楽はジョン・バリーが作曲した『ある日どこかで』そっくりなのだ。そんなことどもを懐かしく想い出した。

『時かけ』で和子の「どうして時間は過ぎていくの……」という問いに対して深町は「過ぎていくんじゃない、時間はやってくるものなんだ」と答える。その言葉が『夏への扉』を観ている間中ずっと、通奏低音のように僕の耳の奥底に鳴り響いていた。

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