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2021年6月

2021年6月28日 (月)

アメリカン・ユートピア

評価:B+

ロックバンドのコンサートを撮った史上最高の記録映画といえばマーティン・スコセッシが監督したザ・バンドの解散ライヴ『ラスト・ワルツ』(1978)と、トーキング・ヘッズのライヴを収めた『ストップ・メイキング・センス』(1984)だというのが定説になっている。誰も異論はなかろう。後者の監督は後に『羊たちの沈黙』でアカデミー賞を5部門受賞するジョナサン・デミ。そのトーキング・ヘッズのヴォーカル、デイヴィッド・バーンがスパイク・リー監督と組んだ新作が『アメリカン・ユートピア』である。

Utopia

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世界ツアーの内容を練り上げ、ブロードウェイのショーとして再構成した公演の記録である。

舞台装置も小道具もない空間に繰り広げられるパフォーマンスの数々。加工しない純粋な人の声と、楽器演奏に魅了される。そこには生の躍動がある。

はっきり言って『ストップ・メイキング・センス』よりもショーとして洗練されている。つまり両者を比較すればデイヴィッド・バーンが進化し続けていることが明白になる。この時御年67歳。大したものだ。この人は飄々とした味わいがある。

スパイク・リーの演出は、特に俯瞰ショットが美しく印象的。また終盤ブラック・ライヴズ・マターを扱った楽曲で大いに盛り上がった。

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2021年6月25日 (金)

ドキュメンタリー映画「僕が跳びはねる理由」

評価:A

Boku

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現在僕は幻冬舎から出版されている岡田尊司(著)『自閉スペクトラム症 「発達障害」最新の理解と治療革命』を読んでいる。その中に東田直樹が13歳の時に書いた『自閉症の僕が跳びはねる理由』からの引用がある。こんなくだりだ。

僕が跳びはねている時、気持ちは空に向かっています。空に吸い込まれてしまいたい思いが、僕の心を揺さぶるのです。

この一節に出会ったその日に、映画館に『ファーザー』を観に行くと『僕が跳びはねる理由』の予告編をやっていた。そんなことってある!?正にシンクロニシティ(意味のある偶然の一致)だ。これはもう「観なさい」という天のお告げに違いない、そう思った。

驚いたのはこのドキュメンタリー映画、監督がイギリス人なのである。調べてみると『自閉症の僕が跳びはねる理由』は世界30カ国以上で出版されており、117万部を超えるベストセラーなのだそう。英語に翻訳したデイヴィッド・ミッチェルは息子が自閉症で、我が子の行動に困り果てていたときにこの本に出会ったという。本編に出てくるインドのお母さんが涙ながらに「直樹のエッセイを読んで初めて、自閉症の娘の苦しみが理解出来た」と語っているのがとても印象に残った。言霊の持つ力って凄い!

「普通って何?」ということを真剣に考えさせられた。

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