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2021年5月

【考察】LGBTQ+は「種の保存に反する」のか?

まず大前提として、僕の性的嗜好はストレートである。小学生の息子がいるし、同性に惹かれたことは一度もない。そういった気持は理解できないが、だからといって否定もしない。価値観は人それぞれなのだからお互いにその違いを認め合えばいい。他者に対しては寛容でありたい。因みにLGBTQとはL(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシャル)、T(トランスジェンダー)、Q(クエスチョニング:性自認や性的指向が定まっていない/クィア:本来は「奇妙な」という意味の蔑称を自嘲的、開き直りの表現として敢えて使用)を指す。

さて2021年5月21日、自民党の簗和生(やなかずお)元国土交通政務官(42)=衆議院議員栃木3区= が党の会合で、LGBTと呼ばれる性的マイノリティーの人たちをめぐって「生物学上の種の保存に反する」との発言をしたと報じられている。この件について簗氏はNHKの取材に対し「会議は非公開のため、内容や発言について答えるのは控える」とコメントした(出典記事こちら)。一方、共同通信の取材によると「生物学上、種の保存に背く。生物学の根幹にあらがう」という趣旨の発言だったという(出典こちら)。自民党では過去にも杉田水脈・衆院議員が性的少数者のカップルに関し「生産性がない」と月刊誌に寄稿し、非難を浴びた。

彼らの無知に呆れ、笑うしかない。

ヒトに近いサルに同性愛は頻繁に見られるし、特にチンパンジーの仲間であるボノボは非常に多く、過半数を占めている(詳しくはこちら)。他の動物の同性愛についてはウィキペディアがしっかりとまとめてある(こちら)。同性愛は生物学的に自然なことだ。

動物や植物も、すべての生物の目的は種の保存、種の繁栄であると言っても過言ではない。そのための一つの戦略として突然変異がある。遺伝情報DNA(デオキシリボ核酸) を複製する途中に、誤った塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)が挿入されてしてしまう場合がある。こうして生まれた個体が、周囲の環境に相応しければ生き残るし、そうでなければ自然淘汰される。この繰り返しが進化であり、強い種が生き残る仕組みだ。新型コロナウィルスも同様であり、生き残りをかけた戦略として2021年5月現在、より感染力が強い変異株が大勢を占めようとしている(新型コロナは一本鎖RNAゲノムであるが、やはり自己増殖のために設計図のコピーを作る際、一定の頻度でエラーが発生する)。

種の保存という観点から考えると、子孫を残すことが出来なかった個体は敗者と見なされる。

ライオンは十数頭のメスライオンと、1~数頭ほどのオスライオンで群れを形成することで知られており、この群れは「プライド」と呼ばれる。産まれた仔ライオンが大きくなるとメスは群れに残り、オスはプライドから独立する。こうして放浪生活を送ることになったオスライオンは「ノマド」と呼ばれ、他のプライドを支配するオスに戦いを挑み、群れを統率する権利を勝ち取らなければならない。戦いに勝てばそのプライドに所属するすべてのメスライオンと交尾する権利を得て自分の遺伝子を残せるが、負けたオスライオンは自分の遺伝子を残せない。群れのリーダー(オス)は、数年おきに入れ替わる。 こうしてより強い種が生き残っていく。だから遺伝子を残せないオスは必ず一定数いるし、彼らもちゃんと競い合うという役割を果たしている。「種の保存に反する」わけでも、「生産性がない」わけでもない。

またここで忘れてならないのは、人間は〈自然=動物〉であるだけに留まらず、知性を持ち、〈文化〉を発展させてきたのだということ。フランスの社会人類学者レヴィ=ストロースは神話について次のように述べている。

神話とは自然から文化への移行を語るものであり、神話の目的はただ一つの問題、すなわち連続不連続のあいだの調停である。

つまり「種の保存に反する」「生産性がない」などと主張する輩は自然の中の人間=動物という一面しか見ておらず、大きな比重を占める文化的側面を無視しているのである。子供を育てて巣立たせた老夫婦には最早「生産性がない」から、御役目御免で姥捨山に遺棄すればいいのか?一生独身で通し、子孫を残さなかったベートーヴェンやシューベルト、ショパンは「種の保存に反し」ており無価値なのか?ゲイだったチャイコフスキーは?

人は「種の保存」や「生産性」のみにて生くるものに非ず。

人は医療を発展させ、平均寿命が飛躍的に伸びた。乳児死亡率は減り、子供は滅多に死ななくなった。戦時下(1941年)の「産めよ、増やせよ」政策は21世紀の現在、全く時代遅れの考え方となった。当時の日本の総人口は7350万人であり、2021年は1億2557万人。少子化とはいえこの80年間で5千万人以上(1.7倍)増えている。

平安時代の男女の平均寿命とか、大正時代の乳児死亡率と現在の比較などは下記事に詳しく書いたので、興味のある方はご一読ください。

別に自分の遺伝子を後世に残さない人がいたっていいじゃないか。それが多様性(diversity)である。LGBTQ+のシンボルが虹(レインボーフラッグ)なのは、多様性の表現だ。音楽だと半音階に相当する。

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映画「ファーザー」

評価:A+

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公式サイトはこちら

認知症の老人が主人公という物語は、有吉佐和子のベストセラー小説を豊田四郎監督が映画化した「恍惚の人」(1973)などがある。しかし本作が極めてユニークなのは、老人の主観で描く点だ。「その手があったか!」と目を見張った。

観客はまるで迷宮を彷徨うような体験をすることになる。突如時間は未来にジャンプし、過去に飛び、更にループする。また同じ名前を持つ別人が目の前に現れて混乱する。あたかも、いくつもある平行世界をポンポン横断している感覚で、SFホラーを観ているような恐怖を覚えた。アカデミー脚色賞を受賞したのも宜なるかな。

原作は舞台劇だそうで、戯曲ではどうやって描かれているのだろう、是非観たいと思った。

アンソニー・ホプキンスのアカデミー主演男優賞の受賞は番狂わせで驚いたが、映画を観たら納得した。有無を言わせぬ圧巻の演技。他の有力候補だったチャドウィック・ボーズマン(マ・レイニーのブラックボトム)やリズ・アーメッド(サウンド・オブ・メタル)が霞んでしまった。

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新型コロナウィルスと陰謀論

新型コロナウイルスを巡り、SNS上で「感染拡大はウソ」「世界の黒幕が、ワクチンで人類を管理するのが目的」といった言説が広がっている。彼らは「コロナはただの風邪。世界の資本家が各国の政府を操り、でっち上げている」「ワクチンで人間にマイクロチップを埋め込むのが目的」等と主張している(読売新聞より)。「ワクチンを打てば5年で死ぬ」と話す県議もいる(朝日新聞より)。

いわゆる〈陰謀論〉である。昔から「諸悪の根源は秘密結社フリーメイソン」とする〈陰謀論〉があったし、ナチス・ドイツは〈ユダヤ人陰謀論〉を勢力拡大に利用した。

こういった噂が拡散する根底には漠然と感じている不安や恐怖心があるだろう。イギリスの哲学者バートランド・ラッセルは次のように述べている。

「恐怖心というものが迷信や残虐を生む。恐怖心を克服することが叡智につながる」

関東大震災の時に、「朝鮮人が放火したり、井戸に毒を投下している」という流言飛語が飛び交い、虐殺事件が起こったのも恐怖心が生んだ悪夢の最たる例だろう(事件の詳細はこちら)。私たちは歴史から教訓を得ねばならない。

具体的に新型コロナウィルスのワクチンに関する〈陰謀説〉を検証してみよう、標準的なペット用マイクロチップは、通常、長さ11-13mm、直径2 mmで米粒ほどの大きさがあり、特殊なシリンジを用いて埋め込む。通常筋肉注射で用いられる注射器の針は通らない。そもそもマイクロチップをワクチンから検出した事例はあるのか?その噂は果たして「事実(fact)」か、それとも単なる「想像(imagination)」「推量(guess)」「フェイク」に過ぎないのか?

「コロナはただの風邪」という言説に対しては次の事実を説明してもらいたい。2021年5月18日時点で、アメリカ合衆国のコロナ関連死者数は58万6千人に及んでいる(ジョンズ・ホプキンス大学の報告)。これは第二次世界大戦における米軍の死者数(40万5339人)とベトナム戦争時の死者数(5万8209人)を足した合計よりも上回っている。多分彼らはこのデータが捏造だと主張し、信じないのだろう。一方、インドでは5月3日時点で21万8千人がコロナ感染で死亡している。ではアメリカでデータを捏造し、さらにインドでも捏造している首謀者って誰??

「ワクチンを打てば5年で死ぬ」という主張に対しては5年という数字がどこから来たのかきちっと説明して戴きたい。その根拠は?

あと「ワクチンで人類を管理」するというが、黒幕が陰謀を仕組んだのはファイザー製ワクチン?それともモデルナ?、ジョンソン・エンド・ジョンソン?あるいはアストラゼネカ?エッ、もしかしてすべての製薬会社を巻き込んで??ちなみに前3社はアメリカの製薬会社で、アストラゼネカはイギリスなんですけど。中国製やロシア製もある。

「インターネットに書いてあること」をそのまま信じる人がいるが、それがどういう事実に基づく説なのか、まず検証する必要があるだろう。単なる思い込みではなく、きちっとしたエビデンスはあるか?新聞記者で言うところの「裏を取る」作業が不可欠だ。昔、テレビでみのもんたが「これは健康にいい!」と紹介すると、その商品がまたたく間に店頭から消えることがあった。しかし皆さん、バナナでダイエットできましたか?ココアで健康・長寿が実現できましたか?データを取って、きちっと検証することが大切。

テレビが本当のことを言っているとも限らない。NHK特集まで組まれた佐村河内守は結局、偽作曲家だった。

〈陰謀論〉を信じやすい人々の中には多数の〈妄想性パーソナリティ障害〉罹患者が含まれると推定される。何かにつけて疑い深く、過度に人を信用できない障害のこと。客観的な根拠がなくても他人が自分を利用する、危害を加える、だますであろうと決めてかかる。また、他人が理由もなく自分に陰謀を企て、突然攻撃してくるかも知れないという疑いを持つ。一般人口の0.5〜2%にみられるとされ、決して稀なものではない。臨床症例では、男性に多く診断されている。〈権力者の病〉とも言われ、ローマ皇帝ネロやスターリン、ヒトラーがその典型例である。麻原彰晃も多分そう。統合失調症発病の前兆として現れることもある。〈妄想性パーソナリティ障害〉には明確な診断基準があるので、興味のある方はこちらをご覧あれ。

〈パーソナル障害〉に共通する特徴は「自分に強いこだわりを持っている」ことと、「とても傷つきやすい」こと。他者を信頼したり、愛することの障害であり、対等な人間関係を築けない。中でも特に〈妄想性パーソナリティ障害〉は「父親」との戦いを生涯引きずるという。「父親殺し」のテーマが人生を支配する。そしてその多くは、父親との戦いが権力や迫害者との戦いに置き換えられている。(参考文献:岡田尊司『パーソナリティ障害ーいかに接し、どう克服するか』PHP新書)

もし、あなたの周りに〈陰謀論〉を吹聴する人がいたら、一番良いのは精神科クリニックを受診してもらうことだろう。もしそれが難しいようなら、次のような問いを発してみてはどうだろうか。

「その考え方の根拠は?」
「その考えのもとになった情報は噂や思い込みではなく、確かなものか?」
「可能性ではなく、確かな事実として考えていないか?」
「その判断は事実に基づくというよりも、感情的に決めつけたものではないか?」
「その解釈はあまりに現実から離れすぎていないか?」
「出来事の一側面だけに注目し、その出来事が起こるまでの全体の流れを見落としていないか?」
(参考文献:いとうせいこう、星野概念『ラブという薬』リトル・モア)

一般に人は、因果論にとらわれやすい。「原因があって結果がある」という考え方だ。「どうして人は生きるか?」「生きる意味は何か?」という問いも、何か原因があるから自分がいまここに存在しているんだという〈思い込み〉である。父と母が性交したからだという答えでは納得できない。一回の射精で射出された2~4mlの精液中に約3億個あると言われる精子の一つと、卵子が「たまたま」出会い、受精したという説明をしたら怒り出すかも知れない。「偶然」なんて論外。もっとその先に本当の答え、「真理」がある筈だ。自分の存在は「必然」であって欲しいという強い願いが込められている。こういう思考の結果、人は神を創った。なにか絶対的な存在=「創造主」を設定し、そのお方に何らかの「目的」や「意図」があって人類が誕生したと考えれば「原因」と「結果」の空白が埋まり、安心できるというわけ。つまり宗教を信仰する人々の心理的背景には「存在の不安」がある。また「創造主」の意思で自分が生まれたのだと仮定したら、そこに存在意義が発生する。よって承認欲求が満たされる。

しかし大切な娘を飛行機の墜落とか、急性骨髄性白血病で亡くした人を例に考えてみよう。果たして彼女の早世には神の「目的」とか「意図」があるのだろうか?本人または親が何か罪を犯したために(原因)、罰を受けた(結果)のだろうか?そんな馬鹿げた発想でくよくよ悩むよりは、単なる「偶然」、「たまたま」運が悪かったのだと納得した方が諦めがつくだろう。

〈陰謀論〉を信じる人の心理的メカニズムも宗教のそれと全く同じ構造を持っている。「突如出演した新型コロナウィルスがあれよあれよという間に世界に蔓延し、感染者がバタバタ死んでいく。不安だ」「どうして世界はこんな事になってしまったのか?」「どうしてマスクをしないといけないの?」「どうしてワクチンを接種しなければいけないの?」実際にはパンデミックに至った要因は多数あり(Multi-Factor)、それらが複雑に絡み合って現在に至るわけだが、「原因」と「結果」がはっきりしなければ安心できない。しかしそこで悪の組織とか、黒幕といった〈首謀者〉を設定し、その〈陰謀〉だと解釈すればスッキリする。つまり混沌とした世界を「単純化」し、理解したいという欲望(安全欲求)を満たす作業だったのである。

人の心とは本当に厄介で、面倒くさく、そして面白い。そう思う、今日この頃なのです。

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新型コロナワクチンを接種しました。

ファイザー製・新型コロナのワクチンを2回、接種し終えた。第1回目が2021年4月21日、第2回目が3週間後の5月12日。

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新型コロナ禍とはすなわち、人類とウィルスの、生き残りをかけた戦いであると以前書いた。その戦火をくぐり抜け、なんとか生き残ることが出来たと胸を撫で下ろしている。

副反応について。第1回目の接種直後はなんの痛みもなく、「本当に薬液が注入されたのだろうか?」と心配になるくらいだった。筋肉注射8時間後くらいして局所の筋肉痛が出現し、症状は3日間くらい続いた。

第2回目の摂取直後も痛みなし。筋肉痛出現はやはり8時間後、1回目より痛みは強かった。翌日ピークに達し、徐々に症状は薄れた。

日本赤十字社和歌山医療センターの調査によると1回目の接種後に全体の1.8%が37.5℃以上の発熱をし、2回目は26.7%が発熱したそう。僕の場合どちらも発熱なし。どうやら発熱・倦怠感・頭痛・アナフィラキシーなどの副反応は女性の方が多いようである。

さて、後々に見るための備忘録として現状を記載しておく。

・2021年5月10日時点、4月12日から始まった65歳以上の高齢者のワクチン優先接種で、1回目の接種を終えた高齢者は依然として全体の1%未満にとどまっている。
・また同じ5月10日、医療従事者などで1回目の接種を終えた人は対象の61%、2回の接種を終えた人は24%ほどである(以上NHKニュースより)。
・3回目の緊急事態宣言が発令されているこんな状況下、未だに日本政府は2ヶ月後に迫った東京オリンピックを開催すると主張し続けている。
・一方、イスラエルでは、5月9日の段階で人口の62%が少なくとも1回目のワクチン接種が完了している。 100万人あたりの新規陽性者の7日間平均は、わずか5.6人(対して大阪は100万人あたり95.1人)。イギリスでは1回目のワクチン接種が50%に達し、アメリカ合衆国では1回接種した人が58.9%、完了した人は45.6%にのぼっている(5月14日NHKニュース)。
・米国疾病対策予防センター(CDC)は5月13日、新型コロナワクチン接種を終えて2週間過ぎた人は、屋外でも屋内でも原則マスクを着用しなくてよいとするガイドラインを発表した。
・ワクチン接種〈後進国〉の日本では菅内閣の支持率がどんどん落ち続けている(NHKの世論調査によると発足当時62%あった支持率が、5月10日に35%となった)。次の総選挙で自由民主党は大敗するだろう。

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