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2021年4月25日 (日)

2021年 アカデミー賞大予想!〜今年は白人・男性が圧倒的に不利!!そして銃規制問題が焦点になる。

恒例の第93回アカデミー賞受賞予想である。2021年の授賞式は日本時間4月26日に開催される(午前スタート)。相当自信がある(鉄板)部門には◎を付けた。

  • 作品賞:「ノマドランド」◎
  • 監督賞:クロエ・ジャオ「ノマドランド」◎
  • 主演女優賞:ヴィオラ・デイヴィス「マ・レイニーのブラックボトム」
  • 主演男優賞:チャドウィック・ボーズマン「マ・レイニーのブラックボトム」◎
  • 助演女優賞:ユン・ヨジョン「ミナリ」◎
  • 助演男優賞:ダニエル・カルーヤ「Judas and the Black Messiah」◎
  • 脚本賞(オリジナル):エメラルド・フェネル「プロミシング・ヤング・ウーマン」◎
  • 脚色賞:クリストファー・ハンプトン/フロリアン・ゼレール「ファーザー」
  • 視覚効果賞:TENET テネット
  • 美術賞:ドナルド・グレアム・バート「マンク Mank」◎
  • 衣装デザイン賞:アン・ロス「マ・レイニーのブラックボトム」
  • 撮影賞:ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ「ノマドランド」
  • 長編ドキュメンタリー賞:オクトパスの神秘 海の賢者は語る
  • 短編ドキュメンタリー賞:A Concerto Is a Conversation
  • 編集賞:ミッケル・E・G・ニルソン「サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ」
  • 国際長編映画賞:アナザーラウンド(デンマーク)◎
  • 音響賞:「サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ」◎
  • メイクアップ賞:「マ・レイニーのブラックボトム」◎
  • 作曲賞:トレント・レズナー/アティカス・ロスほか「ソウルフル・ワールド」◎
  • 歌曲賞:“lo Si (Seen)” 「これからの人生」
  • 長編アニメーション賞:ソウルフル・ワールド◎
  • 短編アニメーション賞:「愛してるって言っておくね」
  • 短編実写映画賞:「隔たる世界の2人」

アカデミー賞は常に時代を写す鏡である。大プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン逮捕(2018年)に端を発する #Metoo 運動の盛り上がりと、2020年5月のジョージ・フロイド事件で爆発したブラック・ライヴズ・マター(BLM) #BlackLivesMatter の成果がここで一気に結実する。

今回「白人」で「男性」であるということは圧倒的に不利。受賞者はことごとく有色人種と女性で埋め尽くされることになるだろう。21世紀現在のアメリカ合衆国においては「白人」として生まれたこと自体が「原罪」になったと言っても過言ではない。そもそも「白人」というだけでブロードウェイ・ミュージカル『ハミルトン』のオーディションすら受けられないのだから(記事はこちら)。

『ノマドランド』で監督賞を受賞するクロエ・ジャオは中国生まれの女性。女性監督受賞は『ハート・ロッカー』のキャスリン・ビグロー以来、史上2人目である。アジア人としては『ブロークバック・マウンテン』『ライフ・オブ・パイ』で2度受賞した台湾のアン・リー、そして昨年『パラサイト』で受賞した韓国のポン・ジュノに続いて史上3人目となる。因みに日本の黒澤明は『羅生門』で名誉賞(後の外国語映画賞に相当)、ソ連で撮った『デルス・ウザーラ』で外国語映画賞を受賞したが、監督賞は受賞していない(なお外国語映画賞は2020年から国際長編映画賞に名称を改めた)。

助演女優賞を受賞するユン・ヨジョンは韓国人。アジア人女性の演技賞受賞は1957年の映画『サヨナラ』で助演女優賞に輝いたナンシー梅木(本名:梅木美代志)以来63年ぶり、史上2人目の快挙である。

今年一番予想が困難なのが主演女優賞。ヴィオラ・デイヴィスと『ノマドランド』フランシス・マクドーマンド、『プロミシング・ヤング・ウーマン』キャリー・マリガンの三つ巴の戦いである。誰が勝者になっても不思議じゃない。個人的にはお気に入りのキャリー・マリガンに是非獲ってもらいたい。僕が彼女を初めて観た映画が『17歳の肖像』(2009)。すっかり忘れていたが当時は“オードリー・ヘプバーンの再来” と呼ばれていたらしい。驚異的な演技だと僕が心底惚れ込んだのが『グレート・ギャツビー』のデイジー役と『ドライヴ』。何かね、彼女は男を狂わせる“不幸顔”なんだ。強く惹きつけられるオーラがある。なのでそろそろオスカーをあげて欲しいのだが、今年圧倒的に不利なのは彼女が白人であることなんだ。一方、ヴィオラ・デイヴィスは『フェンス』で助演女優賞を受賞しているので、今回主演女優賞に輝けば2つ目のオスカーということになる。彼女は他に『フェンス』の原作となった舞台版でトニー賞の主演女優賞、テレビドラマ『殺人を無罪にする方法』でプライムタイム・エミー賞の主演女優賞も受賞。〈演技の三冠王〉を達成した唯一の黒人俳優である。

僕の予想で一番自信が無いのは脚色賞。勢いがあるから『ノマドランド』のクロエ・ジャオかも知れない。もし彼女が獲ったら演技以外の主要部門(作品・監督・オリジナル脚本・脚色)は全て女性が制覇することになる。前代未聞の画期的事件だ。演技賞全員が有色人種というのも(実現すれば)凄いことだけどね。5年前の2016年は演技賞4部門の候補者20人が全員白人だったことで〈白すぎるオスカー〉と大反発を喰らい、スパイク・リー監督やウィル・スミスらが授賞式のボイコットを表明するなど大騒ぎになった。隔世の感がある。そうそう、今年長編アニメーション賞を受賞するピクサー映画『ソウルフル・ワールド』の主人公も黒人だしね。アニメも白人を主人公にし辛い時代になった。多様性(Diversity)が叫ばれている。

もう一つの大きな特徴は銃規制問題がクローズ・アップされるということ。短編アニメーション映画賞の有力候補『愛してるって言っておくね』は実際にあった学校での銃乱射事件をテーマにしている。短編実写映画賞の最有力候補『隔たる世界の2人』はタイム・ループものSFだが、白人警官の黒人に対する誤認・射殺問題を扱っている。さらに短編ドキュメンタリー映画賞候補『ラターシャに捧ぐ〜記憶で綴る15年の生涯〜』もロサンゼルスの商店で黒人の少女が万引きを疑われ、女店主に銃撃され死亡した事件を描く(事件の概要はこちら)。興味深いことにこの3作品、全てNetflixから配信されているんだ。

今年はNetflix配信映画が大量受賞するが、作品賞だけは譲れない。それがハリウッド映画人にとって最後の牙城なのである(監督賞は既にNetflixの『ROMA/ローマ』でアルフォンソ・キュアロンが受賞している)。

2020年は新型コロナウィルス蔓延のために大作映画が公開されず、アカデミー賞候補も大変地味なラインナップになった。特にレベルダウンが壊滅的なのが歌曲賞。どれも酷い。例年だと5秒聴いただけで「これだ!」とピンとくる曲があるのだけれど。例えばレディ・ガガが歌った『アリー/スター誕生』のシャロウ、コモンが歌った『グローリー』主題歌、『アナ雪』のレット・イット・ゴー。しかし今年はどこかで聴いたような凡庸な曲ばかり。その中で、強いて「他よりはマシ」と言えるのが“lo Si (Seen)”。歌詞がイタリア語なので不利だと言う人がいるが、そんなことはない。違うぞ、間違っている(by 『コードギアス 反逆のルルーシュ』)。嘗てアカデミー賞を受賞した『モーターサイクル・ダイアリーズ』の主題歌はスペイン語だったのだから。

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