音響演出が凄い!映画「サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜」
Amazonプライム・ビデオで映画『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』を鑑賞。ナショナル・ボード・オブ・レビュー(米国映画批評会議 )賞で2020年のトップ10映画の1本に選ばれ、リズ・アーメッドが主演男優賞、ポール・レイシーが助演男優賞に輝いた。またAFI(アメリカ映画協会)が選出した2020年を代表する10本にも入選している。
今年のアカデミー主演男優賞は本作のリズ・アーメッドと、『マ・レイニーのブラックボトム』の故チャドウィック・ボーズマンの一騎打ちとなるだろう。『サウンド・オブ・メタル』が作品賞にノミネートされる可能性も大いにある。
評価:A+ 公式サイトはこちら。
メタル/ハードコア・バンド(デュオ)のドラマーが難聴を患い、恋人の勧めで教会が支援する聴覚障害者のコミュニティを訪れる。そこでコミュニティの長であるジョー(ポール・レイシー)から「耳を治すのではなく心を治す」と言われる。
ジョーは主人公ルーベンに毎朝、窓から外の景色が眺められる書斎に座って、コーヒーでも飲みながらじっとしてろと言われる。「もし必要ならノートを用意しておくから、思いついたことを書き留めたらいい。誰も読みはしないから」
しかし焦燥感に駆り立てられたルーベンはこっそり有り金をはたいて内耳にインプラント手術を受けた。そしてコミュニティを去ることになる。
ジョーは別れ際、彼にこう言う。「ここ最近君は毎朝私の書斎で過ごしてきて、静寂(stillness)を感じる瞬間はなかったか?君は正しい、ルーベン。世界は動き続けている。それは全く残酷な場所になり得る。しかし私にとってはね、静寂の瞬間、その場所こそが神の王国(the kingdom of God)なんだ。そしてその場所は決して君を見捨てたりしない」実に印象深い台詞であり、本作のテーマがここに集約されている。
ジョーが推奨しているのは、喧騒を逃れて毎日静かに瞑想する時間を持て、ということだと僕は受け取った。瞑想時に自分を見つめ直すことが出来る。とりとめのないことをノートに書くのは自動筆記(Automatic writing)だ。心理学用語ではオートマティスム(Automatisme 筋肉性自動作用)という。それにより、無意識が浮かび上がってくる。非常に有効な手段であり、正にジョーはルーベンにとってのメンター/Mentor(恩師)と言えるだろう。しかし言われた時に、その重要性にルーベンは気付けない。
僕が映画における〈サウンド・デザイン〉の凄さを初めて思い知らされたのは小学生の時に映画館で観た『スター・ウォーズ』(エピソード4)だった。デザイナー、ベン・バートの名は幼心に刻みつけられた。『サウンド・オブ・メタル』のサウンド・デザインの衝撃はそれ以来と言っても決して過言ではない。間違いなく今年のアカデミー音響賞は本作で決まりだろう。なお、今まで「録音賞」と「音響編集賞」の2部門があってその違いが極めてわかり辛かったのだが、2021年から1つに統合されることが発表されている。
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