花束みたいな恋をした
評価:B+
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有村架純演じる絹がお気に入りのブログ『恋愛生存率』は、“はじまりはおわりのはじまり”をテーマにしており、次のようなことが書かれている。
出会いは常に別れを内在し、恋愛はパーティのようにいつしか終わる。だから恋する者たちは好きなものを持ち寄ってテーブルを挟み、お喋りをし、その切なさを楽しむしかないのだ。
「出会いは常に別れを内在し」というのは、考えてみれば人生そのものにも当てはまる。子供が生まれる。「こんにちは赤ちゃん」……この挨拶は既に、将来必ず訪れる親子の死別を内在している。
では恋愛とは何か?脚本家・坂元裕二(『東京ラブストーリー』『最高の離婚』『カルテット』)によるとそれは、ポップカルチャーを共有し、コミュニケーションを図るということになるだろう。具体的には『押井守』『今村夏子』『ゴールデンカムイ』『きのこ帝国』『粋な夜電波』といったものたちである。カルチャーの共有を象徴するのがイヤホーンのLとRを一本ずつ分け合って音楽を聴く行為。絹は言う。「同じ曲聴いているつもりだけで、違うの、彼女と彼は今違う音楽を聴いているの」確かに音楽を共有しているというのは幻想に過ぎないのかも知れない。しかしその幻想・錯覚こそが恋愛の本質なのではないだろうか?
結局、大学を卒業して労働に従事し、カルチャーを共有する時間がなくなって二人の恋は終わった。では彼らが過ごした5年間は無意味だったのか?
絹は国立科学博物館で開催されたミイラ展を楽しみにしていた。終わった恋もミイラのように腐らず後世に残るだろうか?一瞬の光は、それでもこころの中で輝き続けるか?その答えは鮮やかなラストシーンにしっかりと用意されている。
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