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2021年1月21日 (木)

明日海りお、千葉雄大(主演)ミュージカル・ゴシック「ポーの一族」

1月12日(火)及び18日(月)に梅田芸術劇場でミュージカル『ポーの一族』を観劇した。観客の男女比は男が5%程度(多く見積もっても10%に満たない)。宝塚大劇場の状況と大差ない。

Poe

キャストは宝塚版に引き続きエドガー:明日海りお、アラン:千葉雄大、シーラ・ポーツネル男爵夫人:夢咲ねね、メリーベル:綺咲愛里、大老ポー:福井晶一、老ハンナ/神智学協会のブラヴァツキー(二役):涼風真世ほか。台本・演出は小池修一郎。初日には原作者の萩尾望都が観劇したそう。

基本的に台本も演出家も作曲家も宝塚版と同じなので、宝塚版と梅田芸術劇場版の印象は大きく異ならなかった。小池修一郎は『エリザベート』の宝塚版と東宝版でがらっと演出・台本を変えてきたし、宝塚歌劇『華麗なるギャツビー』と井上芳雄を主演に迎えた梅芸の『グレート・ギャツビー』では音楽を一新(吉崎憲治・甲斐正人→ブロードウェイで活躍するリチャード・オベラッカー)した人なので、意外だった。構想に33年温めてきたライフワークだけに宝塚で上演した時点で理想の完成形に到達していたということなのだろう。

言うまでもないことだが、明日海りおは鉄板のはまり役なので文句なし。パーフェクト。シーラ役は宝塚版の仙名彩世より、今回の夢咲ねねの方が良かった。物腰がふわっと柔らかくエレガント。メリーベル役は可憐さという点において宝塚版の華優希に軍配を上げる。アランは宝塚版の柚香光がそもそもヴィジュアルは素晴らしいが歌ダメ・(足が上がらず)踊りダメな男役なので、千葉くんはそう見劣りしなかった。音は外さないし、そもそも柚香へのあて書きだからソロもなく歌で頑張る必要がない。容姿が美しかったらそれで良い。背丈もちょうど明日海とバランスが取れており、この組み合わせに違和感はなかった。

それにしても〈永遠の命〉を得られても日陰の身であり、子供を生むことも出来ない。血を吸うことで仲間を増やすだけ。バンパネラは哀しい。僕は〈限られた命〉である人間のほうが断然良いと改めて思った。

ひとが、〈永遠の命〉を得られたとき、それは、ひとにとって、幸福なのだろうか? 不幸なのだろうか?……本作の問いは手塚治虫『火の鳥』に繋がっている(萩尾望都は十七歳の時、手塚の『新撰組』を読んで漫画家になる決意をした。詳しくはこちら)。

『ポーの一族』は和製ミュージカルに於ける一つの到達点である。絶対見逃すな!

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コメント

僕も見ました。配信でしか見られませんでしたが、全然みられないよりマシです。宝塚版よりも原作に近くなっていてその事が良かったとおもいます。原作の持っている哲学性をものの見事に再現していました。

投稿: 最後のダンス | 2021年1月29日 (金) 23時48分

バンパネラの哀しみの本質って、自分のDNAを後世に「つなぐ」事ができないことだと思うんですよ。そりゃ自分が生き続ければいいことなんですけれど、彼らの身体は脆弱で色々と行動制限がある。寂しい存在です。

『ポーの一族』は大河ドラマですから、これから小池先生には宝塚版『ベルばら』みたいに『小鳥の巣』篇とか、『エディス』篇、『春の夢』篇、『ユニコーン』篇といった具合に明日海りお主演でシリーズ化して貰いたいですね!

投稿: 雅哉 | 2021年1月30日 (土) 03時28分

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