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城田優(主演)ミュージカル「NINE」

12月6日(日)梅田芸術劇場へ。ミュージカル『ナイン』を観劇。

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マルチェロ・マストロヤンニ主演、フェデリコ・フェリーニ監督の映画史上に燦然と輝く名作『8 1/2』(1963)を原作とするこのブロードウェイ・ミュージカルは1982年に初演。トニー賞に10部門ノミネートされ、作品賞・楽曲賞・助演女優賞・衣装デザイン賞・演出賞の5部門を受賞した。2009年には『シカゴ』『メリー・ポピンズ・リターンズ』のロブ・マーシャル監督が映画化、ダニエル=デイ・ルイス、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、ニコール・キッドマン、ソフィア・ローレンといった超豪華キャストだったが、作品の出来はイマイチだった。

『8 1/2』というタイトルはこれがフェリーニ単独では8本目の監督作品であり、さらに共同監督を務めた処女作『寄席の脚光』を半分として足すと『8 1/2』作目になるという意味。主人公である映画監督のグイドはフェリーニの分身であり、妻のルイーズのモデルは自作『道』('54) 『カビリアの夜』('57) で主演した女優ジュリエッタ・マシーナである。

フェリーニがジュリエッタ・マシーナと結婚するのが1943年、23歳の時。二人は『魂のジュリエッタ』('66)撮影中に別居し、イタリアの民法が改正され離婚が自由になった1971年に離婚した。 カトリックの国イタリアでは1970年まで離婚は罪と考えられており、認められていなかった。当然、中絶も禁止されていた。

Ottoemezzo

フェリーニは子供の頃、厳格な神学校に入れられたが、9歳のある日、脱出してサーカス小屋に入り込み、一夜を過ごした事があった。やがて連れ戻されたが、このサーカス団のイメージは『道』やその後年の諸作品に繰り返し出て来る。そして子供の頃の思い出は『8 1/2』や『アマルコルド』に投影されている。

『NINE』の台本=アーサー・コピット、作詞・作曲=モーリー・イェストンというコンビは他にミュージカル『ファントム』がある。またイェストンはミュージカル『タイタニック』や『グランドホテル』の作曲家でもある。

何故NINEなのかというと、劇中に9歳時のグイドが登場すること、胎児が母親のお腹にいるのが9ヶ月であること、さらに『8 1/2』に歌と踊りという1/2が加味されたことなどが挙げられる。

僕は2005年5月にシアター BRAVA!で『ナイン THE MUSICAL』としてデヴィッド・ルヴォー演出版を観ている。出演者は別所哲也・大浦みずき・池田有希子・純名りさ・髙橋桂・井料瑠美ほか。水の都ヴェニスのイメージそのままに、巨大壁画や床面から本物の水が吹き出してくる演出が印象深かった。宝塚歌劇娘役時代の純名里沙は圧倒的歌唱力で僕を魅了したが、『ナイン THE MUSICAL』の頃は声がかすれ、衰えが顕著だった。大浦みずきはダンスに切れがなく、精彩を欠いた(2009年に肺がんで死去、享年53歳)。グイドを演じた別所哲也は誠実・実直な役者だが、如何せん〈男の色気〉がない。伊達男マストロヤンニとはかけ離れた印象だった。

今回の出演は城田優・咲妃みゆ・すみれ・屋比久知奈・春野寿美礼・前田美波里ほか。

城田は日本人とスペイン人の間に生まれたハーフであり、別所に欠けていた〈男の色気〉があった。ラテン系の顔立ちということもあり、ブロードウェイのリヴァイヴァル版『NINE』で主演したアントニオ・バンデラスに近い雰囲気。前田はフォリー・ベルジェールの場面などさすがの風格だし、他のキャストも適材適所、文句なし!

ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』で読売演劇大賞 優秀演出家賞及び菊田一夫演劇賞を受賞した藤田俊太郎の演出は悪くないのだが、日本語で歌ったり、英語で歌ったり、ときにイタリア語で喋ったりと脈絡がない。この物語は主人公の脳内世界を描いており、現実・記憶・幻想が入り乱れるその混乱(カオス)を浮き彫りにしようという戦略なのだろうが、なんだかなぁ~ピンとこなかった。冒頭部では〈城田=グイド目線〉でスクリーンに映される日本語字幕が逆さまに写ったりと確かに凝っているが、Too Much !!(やりすぎ)という感も。作品を愛していることは分かるが、“才子(さいし)才(さい)に倒れる”というか、熱意の空回り。演出に関して僕はデヴィッド・ルヴォーに軍配を上げる。

とは言え大好きな作品なのでDVDを予約注文した。12月13日(日)の千穐楽にはライブ配信も予定されている。詳細はこちら

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