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2020年12月25日 (金)

高校演劇から映画へ!〜「アルプススタンドのはしの方」

映画「アルプススタンドのはしの方」の原作は2017年に全国高等学校総合文化祭(総文祭)演劇部門で、最優秀に当たる文部科学大臣賞を受賞した兵庫県立東播磨高等学校演劇部の作品。そこの顧問教諭を務めた籔博晶(現在31歳)が執筆した戯曲である。

2018年に総文祭で文部科学大臣賞を受賞した香川県立丸亀高等学校演劇部の舞台「フートボールの時間」も映画化される予定。丸亀高は女子サッカー発祥の地と言われている。監督は坂本春菜。四国新聞の記事はこちら

いま高校演劇の総文祭が熱いということを知ったのは、本広克行監督、ももいろクローバーZ主演の映画『幕が上がる』だった。先生役が黒木華で、彼女も大阪の追手門学院高等学校で「演劇部のエース」として1年時から3年間主役を務めていたという。

なお、2016年の総文祭では静岡県立伊東高等学校演劇部による『幕が上がらない』という作品が優秀賞に選ばれている。

評価:A+

Stand

映画公式サイトはこちら

原作戯曲では甲子園球場(西宮市)が舞台となるが、映画は神奈川県の平塚球場でロケされている。Wikipediaの情報で知ったのだが、3ヶ月以上粘り強く甲子園球場と交渉したが、撮影許可が降りなかったそうだ。甲子園球場関係者はアホだ。何をお高く留まっているのか。

また原作は正規部員4人のために書かれているが、映画では英語教師(リメイク公演から登場)とか、吹奏楽部部長の女の子とかが台詞のある役として加わり、両者ともいい味出している。(ちょっと鬱陶しい)熱血教師が呟く、"Don't let it bring you down"(へこたれちゃダメだ)が本作のテーマに直結している。

中屋敷法仁(なかやしきのりひと)が高校3年生の時に『贋作マクベス』 を書き、全国高等学校演劇大会・最優秀創作脚本賞受賞を受賞したエピソードなども劇中で語られて胸熱である。

映画は舞台版同様、グラウンドで展開される野球の試合を全く見せない。総てのドラマは観客席のリアクションで描かれる。このストイックな演出を踏襲したのは大正解だ。

本作には「ベンチにいない人間が、スタンドで応援することに何らかの意味はあるのか?」という大きな問いがあり、最終的に明確な答えが用意されている。そして登場人物たちの「頑張れ〜!」という応援は結局、彼ら自身に対するエールになっているという構造が実に見事だ。

頑張ったからといって、その努力が報われるとは限らない。しかし、その過程にこそ価値がある。「しょうがない」と諦めるな。「いま」を生きよう。

 いのち短し 恋せよ乙女
 あかき唇 あせぬ間に
 熱き血潮の 冷えぬ間に
 明日の月日は ないものを
 
 (『ゴンドラの唄』)

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