三谷幸喜の舞台「大地」とフェリーニの映画「8 1/2」
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新型コロナ禍の劇場再開第1弾となり、作・演出が三谷幸喜、大泉洋、山本耕史、竜星涼、藤井隆、辻萬長らが出演した舞台『大地』( Social Distancing Version )を観た。公式サイトはこちら。
この困難な時代に〈演じる〉ことの価値を改めて問う。そして〈観客〉さえいれば、そこが劇場であろうがなかろうが〈演じる〉ことに意味はあるのだという結論に至る。
ただ三谷の全盛期の芝居(『彦馬がゆく』『12人の優しい日本人』『ショー・マスト・ゴー・オン 幕を降ろすな』『笑の大学』)と比べると、凡庸な作品という感は否めない。
しかしその物足りなさを補って余りあるのが音楽だった。なんと映画史上に燦然と輝くフェデリコ・フェリーニ監督『8 1/2』のためにニーノ・ロータが作曲したサーカス風マーチが全面的に鳴り響いたのである(栗コーダーカルテットによる演奏)。Spotifyでの試聴はこちら。
結局『大地』という凡作は哀愁を帯びたニーノ・ロータの音楽に救われた。この芝居の感動は全てそこに由来する。
劇の最後に出演者全員が1列になって音楽に合わせて行進する場面があるが、これは完全に『8 1/2』の模倣である。
『大地』を観劇することで、ニーノ・ロータの天才性を改めて思い知った次第である。彼の音楽抜きでは『8 1/2』もこれほどの高評価を得られなかったのではないだろうか?実際のところロータの死後、フェリーニ映画は腑抜けになった。
- シリーズ《映画音楽の巨匠たち》 第1回/ニーノ・ロータ 篇 2010.06.17
最後に『8 1/2』の名台詞をご紹介しよう。これは『大地』の主題でもある。
「人生は祭りだ、共に生きよう!」(E' una festa la vita, viviamola insieme! )
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