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長ったらしい邦題は最低だが、映画は最高!「ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語」

評価:AA

Little

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原題はシンプルに"Little Women"、原作小説と同じである。最近は説明過多の長ったらしい邦題が多くて閉口する。

  • Judy→「ジュディ 虹の彼方に」
  • The Revenant→「レヴェナント:蘇りし者」
  • The Post→「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」
  • IT→「IT/イット”それ”が見えたら、終わり」

ちなみに原作の本邦初訳では「小夫人」だったが、1933年の映画が翌34年に日本で公開されたときに「若草物語」と銘打たれ、同年に発行された翻訳本もそれに準じた題名になったそう。

1933年RKO版は後に「マイ・フェア・レディ」を撮るジョージ・キューカーが監督し、ジョー役はキャサリン・ヘップバーン(26歳)だった。ヴェネチア国際映画祭において女優賞を受賞し、アカデミー賞では作品賞・監督賞にノミネート、脚色賞を受賞した。男勝りなお転婆娘を見事に演じきったキャサリンは生涯で4回アカデミー主演女優賞を獲った大女優であり、この記録はまだ破られていない。ノミネート数ではメリル・ストリープが21回で上回ったが、受賞は3回。

マーヴィン・ルロイが監督した1949年MGM版はテクニカラーでアカデミー美術賞を受賞。エイミー役のエリザベス・テイラー(16歳)が鼻を高くするために洗濯ばさみで鼻をつまんで寝る場面が有名で、大林宣彦監督「さびしんぼう」で主人公が通う高校の女教師(秋川リサ)が言及している。儚げにベス(原作では三女だが、四女に変更されている)を演じたマーガレット・オブライエンが僕は大好きだった。めっちゃ可愛い!撮影当時11歳で、1951年に彼女は映画界から引退してしまう。ジョー役のジューン・アリスンは31歳で年を取り過ぎ。キャサリン・ヘップバーンほどの輝きがない。

1994年版はジリアン・アームストロング(女性)が監督し、ジョーをウィノナ・ライダー、エイミーをキルスティン・ダンスト、母をスーザン・サランドンが演じた。これは劇場で観たが凡庸な出来。取り立てて言うべきことはない。

33年版や49年版のジョーは驚いた時などに「クリストファー・コロンブス!」と叫ぶ。"Oh my God!"とか、"Jesus Christ !"といった感嘆詞と同じニュアンス。これは調べたところ「若草物語」特有の表現みたい。2005年にサットン・フォスター主演で上演されたブロードウェイ・ミュージカル版でも「クリストファー・コロンブス!」は採用されている。ちなみに1998年にはオペラ化もされた。

さて、今回のグレタ・ガーウィグ版で目を瞠ったのは脚色の上手さである。原作小説では「続・若草物語」でジョーが自分の原稿を出版社に持ち込む場面から始まる。そこから7年前「若草物語」時代の回想となり、その後は青色を基調とする寒色系で描かれる現在と、暖炉の炎を連想させる橙色を基調とする過去を行ったり来たりするアクロバティックな構成となっている。そして映画終盤、ジョーが長編小説を書き始めると寒色系の画面に蝋燭の炎が灯り、そこからは彼女の脳内で創造されたフィクション部分が暖色、現実世界が寒色になるという創意工夫が凝らされている。

本作のテーマは〈結婚は経済の問題である〉ということに集約されるだろう。「女が独身のまま自立するには売春宿を経営するか、女優になるしかないわね。まぁ、どちらも同じようなものだけど」という台詞を、かの大女優メリル・ストリープに言わせるとは大胆不敵!「結婚することが女の幸せであり、ゴールである」という当時の風潮に対してジョーは徹底的に抗う。

しかし原作を読んだことのある人なら知っている。「続・若草物語」の最後にジョーがベア教授と結婚することを。ジョーは原作者オルコットの分身だが、オルコット自身は生涯を独身で通した。果たしてこの矛盾とどう向き合えばいい?グレタ・ガーウィグはメタフィクションの手法を用いてこの難問を鮮やかに解決した。まさかこんな手があったとは!!心底驚かされた。

ジョーを演じたシアーシャ・ローナンは躍動感に溢れ、彼女が走っている姿を見るだけで心が高鳴った。またガーウィグの前作「レディ・バード」でもシアーシャとの相性の良さを示していたティモシー・シャラメ演じるローリーがパーフェクト。ポージングの美しさはルキノ・ヴィスコンティ監督「ベニスに死す」の美の化身タッジオ(ビョルン・アンドレセン)を彷彿とさせた。ローリーがジョーにプロポーズし、振られる場面で一瞬、音楽がマーラー/交響曲第5番 第4楽章 アダージェットそっくりの旋律を奏でる。編成も弦楽器とハープだけだし。やっぱり「ベニスに死す」を意識しているんじゃないかな?

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コメント

あとで読んだ彼女のインタビューで思わず「そうだよね!」と膝を打ったコメントがありました。

シアーシャ・ローナン
「脚本を読んだ時、ジョーは私だ!と思った(笑)

投稿: onscreen | 2020年6月27日 (土) 07時59分

正しくその通りですね!

投稿: 雅哉 | 2020年6月28日 (日) 16時08分

ありがとうございます!

投稿: onscreen | 2020年6月30日 (火) 23時37分

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