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2020年5月14日 (木)

わが心の歌 25選 ① 総論 (メニュー)&「いつも何度でも」「エメ Aimer」

新型コロナウィルス感染拡大により、世の中が荒(すさ)んでいる。皆が感染防御にピリピリ神経を尖らせており、うつ病を発症したり、不安や恐怖に圧倒されて凹んでいる人々も少なくない。

そこで気分転換のすゝめ。珈琲とか紅茶でも一杯飲みながら、素敵な歌でも聴いてくつろぎませんか?一息つきましょう。

「恐怖心というものが迷信や残虐を生む。恐怖心を克服することが叡智につながる」(バートランド・ラッセル:英国の哲学者。ノーベル文学賞受賞)

Spotify, Amazon Musicなど音楽配信(サブスクリプション)サービスで聴ける曲の中から厳選した。

  • いつも何度でも(木村弓)
  • One more time,One more chance(山崎まさよし)
  • なんでもないや -movie ver. (RADWIMPS - 上白石萌音)
  • Alone Again(ギルバート・オサリバン)
  • 水の上で歌う(フランツ・シューベルト)
  • ジュ・トゥ・ヴ(エリック・サティ)
  • Woman 〜“Wの悲劇”より(薬師丸ひろ子)
  • 聞かせてよ愛の言葉を(リュシエンヌ・ボワイエ)
  • 小さな空(武満徹)
  • ひこうき雲(荒井由実)
  • この空を飛べたら(中島みゆき - 加藤登紀子)
  • 時には昔の話を(加藤登紀子)
  • (They Long To Be) Close To You(カーペンターズ)
  • 打上花火(DAOKO × 米津玄師)
  • 22才の別れ(伊勢正三 - 風)
  • マイ・ウェイ(フランク・シナトラ)
  • エメ〜ミュージカル“ロミオ&ジュリエット”より(ジェラール・プレスギュルヴィック)
  • Papa Can You Hear Me ? 〜“愛のイェントル”より(バーブラ・ストライザンド)
  • Another Day Of Sun 〜“ラ・ラ・ランド”より(ジャスティン・ハーウィッツ)
  • こどものせかい 〜“マイマイ新子と千年の魔法”より(コトリンゴ)
  • The Man That Got Away 〜“スター誕生”より(ジュディ・ガーランド)
  • Unforgettable(ナット・キング・コール)
  • ノルウェイの森(ビートルズ)
  • It Had To Be You(ハリー・コニック Jr.)
  • You'll Never Walk Alone(リチャード・ロジャース)

括弧内は基本的に歌手名を書いたが、フランツ・シューベルト、エリック・サティ、リチャード・ロジャース、武満徹、ジェラール・プレスギュルヴィック、ジャスティン・ハーウィッツは作曲家名である。

19世紀(今から200年前)にシューベルトが作曲したドイツ・リートから、フランスのシャンソン(聞かせてよ愛の言葉を)やミュージカル、さらにハル・デヴィッド&バート・バカラックというコンビによる英語歌(Close To You)、日本のフォークデュオ「風」(22才の別れ)を経て、ニコニコ動画ボカロP出身の米津玄師(打上花火)まで。四つの言語、古今東西、バラエティに富む選曲になったんじゃないかなと自負している。

本当は映画『ふたり』主題歌ー大林宣彦(作詞)久石譲(作曲)「草の想い」も入れたかった。しかし残念なことに現時点ではサブスクで聴けないので断念した。

では推薦文付き各論へ。

「いつも何度でも」についてまず語ろう。言うまでもなく宮崎駿監督による国民的アニメーション映画『千と千尋の神隠し』主題歌である。レコード大賞で金賞を受賞。元々は宮崎監督が構想していた『煙突描きのリン』のために書かれたもので、その企画は結局ボツになった。しかし宮さんはこの曲を気に入り、『千と千尋』で使う事になったそう。

『千と千尋』は劇場公開された2001年夏に、当時住んでいた愛媛県新居浜市の小さな映画館で観た。花火大会の夜で、館内に花火の音が聞こえてきたことを今でも鮮明に覚えている。その後DVDで10回位鑑賞しているが、正直この歌の印象は薄かった。ところが2020年2月21日にスタジオジブリの楽曲が一斉にサブスク解禁になったので久しぶりにじっくり聴いてみると、その歌詞の素晴らしさに初めて気付き、深い感銘を受けた。

呼んでいる 胸のどこか奥で
いつも心踊る 夢を見たい

かなしみは 数えきれないけれど
その向こうできっと あなたに会える

「呼んでいる」のは誰か?それは「あなた」だろう。そして「あなた」とは、〈こころ〉の奥底にある自己SELF)ではないか、と僕は考える。

ここでアンソニー・スティーヴンズがカール・グスタフ・ユングの理論を描いた、〈こころの図〉を用いて説明しよう。〈こころ〉はドイツ語でSeele。〈魂〉とも訳され、英語ではpsycheとなる。

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円の外層にConsciousness(意識)、内層にUnconscious(無意識)があり、さらにPersonal unconscious(個人的無意識)と深層のCollective unconscious(集合的無意識)に分かれる。そして集合的無意識の中心にSELF(自己)がある。一方、表層の意識内にEGO(自我)があって、Ego-Self axis(自我ー自己軸)で自己と繋がっている。また集合的無意識内にA=Archetype(元型)が、個人的無意識の領域にはC=Complex(感情に色付けされた心的複合体)がある。

「いつも何度でも」終盤の歌詞は以下の通り。

海の彼方には もう探さない
輝くものは いつもここに
わたしのなかに 見つけられたから

「海の彼方」とは彼岸であり、日本神話で言うところの常世(とこよ)/隠世(かくりよ)を指す。住人が不老不死の理想郷で、黄泉もそこにあるとされる。キリスト教的には神のおわす天国で、プラトン哲学ではイデアだ。しかし、「わたし」のなかに見つけた「輝くもの」とは自己SELF)であり、つまり神=自己を発見したわけだ。神は「わたし」の外側にいない。この思考はユング心理学に一致する。「いつも何度でも」は自己実現を歌っていた。

プロデューサーの川村元気が『君の名は。』が受けた理由について語った言葉を借りるなら、『千と千尋の神隠し』が日本の歴代興行成績第1位になったのは、〈集合的無意識にヒットした〉ということになるだろう。

やはりサウンドトラック盤の木村弓の歌唱が良い→Spotifyではこちら

「エメ Aimer」はフランス語で「愛」のこと。フランス産ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』のナンバーで、舞台ミュージカルの中で究極の名曲だと想う。途中どんどん転調し、まるで螺旋階段を駆け上っていくような高揚感がたまらない魅力!これはミシェル・ルグランなどフランス歌曲の特徴である。めくるめく陶酔。城田優(ミュージカル・スター)と生田絵梨花(乃木坂46)のデュエット(日本語歌詞)でどうぞ→Spotifyではこちら

次回は「One more time,One more chance(山崎まさよし)」、「なんでもないや -movie ver. (RADWIMPS - 上白石萌音)」について語る予定。

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