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2020年4月25日 (土)

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」追悼特別企画への投稿:大林宣彦監督の思い出

僕と大林映画の出会いは、高校二年生だった1983年5月4日、日本テレビ「水曜ロードショー」で放送された「転校生 」でした。大林宣彦自ら再編集したもので、当時の大林映画では冒頭部に必ず「A MOVIE」と表示されていましたが、本作の冒頭は「A TELEVISION」と銘打たれていました。劇場版にはない音楽(臨海学校にバスで向かう場面でシベリウス「カレリア」組曲〜行進曲)が追加されたりもしました。「この監督の映画はすごく面白い」と思い、同年7月16日から上映された「時をかける少女」を満員の映画館に観に行って、打ちのめされました。白黒で始まり、次第に画面中央から色づき始め、タイトルが登場する場面でフルカラーに。この時点で僕は滂沱の涙を流しており、「この監督を信じて生きていこう」と決意していました。

「さびしんぼう」が公開された年に大学に入学し、ロケ地巡りをするために尾道に何度も行きました。今考えれば「聖地巡礼」の走りですね。当時、大林組の拠点になっていたジャズ喫茶TOMで大林監督ご本人にお会いして「いつか見た映画、いつか見た夢。」と走り書きされたサインを頂いたり、TOMのマスターから連絡を貰い、福山市・鞆の浦で撮影中だった「日本純情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群れ」のロケを見学する機会を得たりもしました。

また大林監督の「廃市」を観て、原作者・福永武彦の大ファンになり、20代は福永文学を読み耽りました。福永の息子が芥川賞作家・池澤夏樹で、そのお嬢さんが声優の池澤春菜さん、最近何度もアトロクに出演されていますね。

その後、公式ファンクラブ「OBs Club」が組織され入会、大林監督の自伝的映画「マヌケ先生」では尾道でエキストラとして出演したりもしました(まもなく解散)。宇多丸さんも御存知の通り、「マヌケ先生」の映像は遺作「海辺の映画館 キネマの玉手箱 」に引用されています。

大林監督に最後にお会いしたのは昨年11月24日、広島国際映画祭2019で「海辺の映画館」が上映された時でした。車椅子姿でかなり体力が衰えていらっしゃいましたが、しっかり握手をしてくださいました。

「時をかける少女」から37年。大林映画と出会っていなかったら僕の人生は随分と色あせたものになっていたでしょう。大林監督、本当にありがとうございました。ただ心底残念に思うのは、監督のライフワークだった檀一雄の小説「花筐」の映画化は実現しましたが、もうひとつの念願だった福永武彦の小説「草の花」映画化が叶わなかったことです(一時期、尾美としのり・富田靖子主演で企画されました)。しかし大林チルドレンと呼ばれる監督たち(細田守・岩井俊二・手塚眞・犬童一心ら)の誰かが、その想いを継いでくれるのではないだろうか、と秘かに期待しています。

なぜなら、大林監督の劇場映画デビュー作「HOUSE ハウス」最後のモノローグにこうあるのです。

ーたとえ肉体が滅んでも、人はいつまでも誰かの心の中に、その人への想いとともに生き続けている。だから愛の物語はいつまでも語り継がれていかなければいけない。愛する人の命を永遠に生きながらえさせるために。ー

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以上、(ラップグループ)RHYMSTER 宇多丸がパーソナリティーを務めるTBSラジオ「アフター6ジャンクション」(通称:アトロク)、【さよなら大林監督。追悼特別企画<第1回 大林宣彦映画 総選挙>】へ僕が投稿したメールの内容である。

総選挙の順位は上記事に書いた通り。僕個人の密やかなベストテンも挙げておこう。

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  1. はるか、ノスタルジィ
  2. 日本純情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群れ
  3. 時をかける少女
  4. 廃市
  5. 野のなななのか
  6. なごり雪
  7. EMOTION 伝説の午後=いつか見たドラキュラ(1967年 16mmフィルム)
  8. HOUSE ハウス
  9. 麗猫伝説(1983年 TV用映画)
  10. 彼のオートバイ、彼女の島

断腸の想いで次点を新・尾道三部作の第1作「ふたり」とする。同じ赤川次郎原作「あした」も是非観てください。

「転校生」(1982年版)と「さびしんぼう」を入れなかったのは、追悼記事で旧・尾道三部作のことばかり取り上げられるから。その後も沢山の傑作を撮っておられるのです。TV用映画「可愛い悪魔」「恋人よわれに帰れ LOVER COMEBACK TO ME」も忘れ難い。

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