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TBSラジオ「アフター6ジャンクション」presents:さよなら大林監督。追悼特別企画<第1回 大林宣彦映画 総選挙>

(ラップグループ)RHYMSTER 宇多丸がパーソナリティーを務めるTBSラジオ「アフター6ジャンクション」(通称アトロク)で【さよなら大林監督。追悼特別企画<第1回 大林宣彦映画 総選挙>】という番組があり、有効投票総数148通で以下の順位が発表された。

  1. 時をかける少女
  2. さびしんぼう
  3. 青春デンデケデケデケ
  4. ふたり
  5. 転校生 (1982年版)
  6. この空の花 長岡花火物語
  7. HOUSE ハウス
  8. 異人たちとの夏
  9. はるか、ノスタルジィ
  10. 花筐/HANAGATAMI

僕は「はるか、ノスタルジィ」に1票を投じた。

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以下、アトロクに投稿したメール内容である。

僕のオールタイム・ベストワンは大林宣彦監督「はるか、ノスタルジィ」です。北海道・小樽市には数回ロケ地巡り(今で言う「聖地巡礼」)に行きました。劇中、重要な場面となる「はるかの丘」も発見しました。物語はこうです。

東京で小説家になった中年の主人公・綾瀬慎介(ペンネーム)は数十年ぶりに故郷・小樽を訪ねる。そこで「はるか」という少女と、バンカラ姿の学生・佐藤弘に出会う。それは青年時代の綾瀬自身だった(佐藤弘は本名)。

これはユング心理学でいうところの無意識に存在する子供元型(The Child Archetype)に遭遇する物語であり、最後に自我(意識)と元型(無意識)は融合され、自己実現に至ります。本作にはどんなに年令を重ねても、人は変われるというメッセージが込められています。

大林監督は常々、「僕はベテランの18歳」と仰っており、監督の心の中には純粋無垢な少年時代の自分、つまり子供元型が生きているということなのですね。

画面には50歳の自分と、学生時代の自分が同時に存在しています。つまり本作は時間の流れに即した「通時的」映画ではなく、「共時的」映画です(フェリーニ「8 1/2」、ベルイマン「野いちご」のように)。過去と現在、そして未来が同時に「ここ」にある。他の大林映画、例えば「さびしんぼう」でも認められる特徴です。

ヒロイン「はるか」は、どうやら綾瀬が昔恋していた三好遥子(みよしようこ)の娘ではないかということが次第に明らかにされていきます。

そして綾瀬は「はるか」の髪型を「遥子」に似せようと画策し始めます。これが、宇多丸さんが大林監督との対談で指摘されたようにヒッチコックの「めまい」そっくりなんですね。宇多丸さんの発言でハッと気がついたのですが、オープニング・クレジットで「はるか」がクルクル回転するのも「めまい」へのオマージュになっています。

物語の最後に綾瀬は「はるか」と結ばれますが、彼女が綾瀬の娘であった可能性も残されている。なんと仄暗く、罪深い映画でしょうか!宇多丸さんの仮説、「時をかける少女」における深町くん昏倒レイプ犯説に通じるものがあります。故に「めまい」同様の異常心理を含めて、「はるか、ノスタルジィ」は大林監督の本質に迫る作品だと僕は思うのです。

さらに詳しいことは下記事に書いた。

番組内で宇多丸は「はるか、ノスタルジィ」について〈背徳的な〉〈世間的な良識から言うとなかなかなタブーに触れる〉〈ちょっと妖しい、危うい〉〈結構危険な、ヤバイ話〉とコメントした。全く同感である。ジークムント・フロイトの提唱する〈エディプス・コンプレックス〉とは、身も蓋もない言い方をすれば〈お母ちゃんとセックスをしたい〉願望、潜在意識を指すが(コンプレックス=心的複合体)、本作は〈娘コンプレックス〉を描いていると解釈出来る。危険な誘惑だ。なお、大林監督は手塚治虫について、〈シスター・コンプレックス〉の作家と評している。その典型例が初期作「ロスト・ワールド」だ。

ただ、今僕が考えているのは、「はるか」は綾瀬にとって、ユング心理学における〈アニマ〉なのではないか?という解釈である。それは自分の無意識に存在する元型・魂の一部であり、ゲーテが言うところの〈永遠に女性的なるもの〉を指す。「ファウスト」におけるグレートヒェンであり、ダンテ「神曲」におけるベアトリーチェだ(さらに言えば宮崎駿「風立ちぬ」の菜穂子)。

つまり映画「はるか、ノスタルジィ」の最後に主人公・綾瀬慎介(=大林宣彦)の自我(ego)は、それまで忘却の彼方にあった子供元型(プエル・エテルヌス:永遠の少年)と融合し、さらに「はるか」=アニマ(魂)とも結合を果たし、自己実現を成し遂げた。実に美しい、ハッピー・エンドではないだろうか?

思えばこれこそが、あなたが永遠に願った真実の恋の勝利というものではなかっただろうか?さびしんぼうよ、いつまでも。
おーい、さびしんぼう。  

(映画「さびしんぼう」より)

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コメント

何度も観た映画です。はるかが綾瀬の娘は年代からありえない気がします。終戦からほどない頃、50代の綾瀬が高校を卒業する頃の話でしょうから、198xx年にははるかが40か30代後半になってしまう。はるかはお兄さんのような人の と遥子のむすめではないでしょうか。

投稿: 私もこれがベスト1です | 2020年5月29日 (金) 20時58分

私もこれがベスト1です さま

コメントありがとうございます。「はるか、ノスタルジィ」を愛する人は僕にとって同士です!嬉しい限りです。

さて、おっしゃる通り、確かにはるかが綾瀬の娘だとすると年代的に辻褄が合わないですね。では綾瀬がはるかに邂逅した時、50歳だったとしましょう。すると、はるかが生まれたのは綾瀬が34歳だったことになる。小樽から離れて16年。三好瑤子が綾瀬と別れたのが16歳だったとして、はるかを生んだのは32歳ということになる。同級生なら34歳。ちょっと考えにくくないですか?少なくとも三好瑤子を演じた石田ひかりは32歳以上に見えない。

大林映画には時空を超えたマジックがあります。そもそも50代の綾瀬と18歳の佐藤弘が同時に画面に存在し、さらにエピローグでは老人の綾瀬まで出てくる(ニーチェが言うところの「永劫回帰」)。だから通時的な辻褄合わせ・検証は、共時的な大林映画において意味を成さないと僕は思うのです。

投稿: 雅哉 | 2020年5月29日 (金) 22時27分

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