【2020年最新版】選定!中学生に観せたい映画・アニメ
「選定!中学生に観せたい映画」という記事を書いたのが2013年。あれから7年経過した。些か内容が古びた感があるので、ここでアップデートすることにした。新型コロナウィルスで非常事態宣言が発令され、遊びに出ることもままならない子どもたちを持て余している親御さんも少なくないだろう。何かの参考になれば幸いである。
新しい作品を優先して選んだが、「これだけは絶対に落とせない!」という古典的名作も残している。なお、過去にレビューを書いている作品は、タイトルをクリックすると該当記事に飛ぶようにしている。気に入るかどうかに性差があると思われる作品には男の子向け/女の子向けを明記した。
まずは基本中の基本、実写部門BEST 10。
- 蜜蜂と遠雷
- 遠い空の向こうに
- リトル・ダンサー
- ちはやふる 上の句・下の句
- 沈黙 -サイレンス-
- おくりびと
- 舟を編む
- ドリーム
- 英国王のスピーチ
- ゼロ・グラビティ
ここで紹介している「ちはやふる」は広瀬すず主演の実写映画だが、テレビ・アニメ(シリーズ)版も良い。競技かるたと百人一首(和歌)の世界を垣間見よう。
「蜜蜂と遠雷」は音楽映画の傑作中の傑作。恩田陸の原作小説も併せて読みたい。
「遠い空の向こうに」の原題はOctober Skyで、アルファベットの順番を入れ替えると原作小説のタイトルRocket Boysになる。アナグラムだ。NASAの技術者になったホーマー・ヒッカムの自伝である。
「リトル・ダンサー」(原題:ビリー・エリオット Billy Elliot)は後に舞台化され、トニー賞でミュージカル作品賞・演出賞など10部門を独占した。「ビリー・エリオット ミュージカルライブ/リトル・ダンサー」というタイトルでBlu-ray/DVDが発売されている。男らしさ/女らしさ って、一体何?という問いが本作にはある。映画の最後に名ダンサー、アダム・クーパーが踊るのにも注目!
「沈黙 -サイレンス-」は遠藤周作原作。篠田正浩監督版もあるが、マーティン・スコセッシ監督版の方が俄然出来が良い。キリシタン弾圧の歴史を学ぼう。
「おくりびと」では死と向き合うことで、生についてしっかり考えよう。
「舟を編む」は辞書編纂という作業を通して、日本語について学べる。
「ドリーム」は邦題が酷い。原題は"Hidden Figures"つまり「隠された姿」という意味で、NASAでアポロ計画に先立つマーキュリー(有人宇宙飛行)計画に携わった3人の黒人女性にスポットライトを当てる。「ライト・スタッフ」と併せて観ることで、より深く味わうことが出来るだろう。
「英国王のスピーチ」はアカデミー作品賞・監督賞を受賞。人前で上手に話すコツが詰まっている。そして、吃音の原因として幼児虐待があることを教えてくれる。
「ゼロ・グラビティ」は宇宙を舞台にしているが、物語構造は受精卵→胎児→誕生のメタファーとなっており、同時に海洋生物が陸に上がり、直立歩行するまでの人の進化についても語っている(人間の胎児は進化の過程を繰り返すー反復説)。
続いてBEST 20まで。
- シン・ゴジラ (男の子)
- 大人は判ってくれない
- スタンド・バイ・ミー
- 1917 命をかけた伝令
- ボーリング・フォー・コロンバイン
- ファースト・マン (男の子)
- ソロモンの偽証
- がんばっていきまっしょい
- 尾道三部作(転校生/時をかける少女/さびしんぼう)
- 戦場の小さな天使たち
「シン・ゴジラ」はダイアログの洪水。繰り返し観て社会勉強をしよう。
「大人は判ってくれない」の切実さを理解するのは中学生には難しいかも知れない。しかし将来きっと判る日が来る。諦めないで。
「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 」と「スタンド・バイ・ミー」は精神的に繋がっている。原作者が同じスティーヴン・キングだしね。そしてNetflixのドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」も、J・J・エイブラムス監督「SUPER 8/スーパーエイト」も「スタンド・バイ・ミー」なくして生まれなかった。
アカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画「ボーリング・フォー・コロンバイン」は銃社会アメリカについて考えさせられる。
「ファースト・マン」はアポロ11号の船長ニール・アームストロングを主人公とする実話。トム・ハンクスが主演した「アポロ13」も併せて観よう。
「ソロモンの偽証」は宮部みゆき原作のミステリ。中学生たちが主人公で、学校内裁判を開廷するという展開がユニーク。
「がんばっていきまっしょい」は愛媛県松山市の高校を舞台に、ボート部の活動に打ち込む5人の女子高校生たちの姿を描いた物語。テレビドラマにもなった(放送途中で内博貴が不祥事を起こし降板、第4話から役者が変わった)。これに似た青春映画として「幕が上がる」とか「青春デンデケデケデケ」「ヤング・ゼネレーション」も取り上げたかったのだが、どちらかといえば高校生向きかなと思い直した。特に高校演劇を扱う「幕が上がる」なんか、ニッチでディープだからね。
尾道三部作「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」は言わずと知れた大林宣彦監督の名作中の名作。まずは黙って観ろ!後悔なんてさせないから。
「1917 命をかけた伝令」と「戦場の小さな天使たち」は、戦争とは何か?について学ぶテキストとして最適。残酷描写もないしね。
さらにBEST30。
- ダンケルク
- グローリー ー明日への行進ー
- ダークナイト
- インファナル・アフェア
- グリーン・デスティニー
- ジュラシック・パーク/ジュラシック・ワールド (男の子)
- マッドマックス 怒りのデス・ロード
- 不都合な真実
- 初恋のきた道
- キッズ・リターン
「グローリー ー明日への行進ー」を観て、マーティン・ルーサー・キング牧師のことを知ろう。その際、是非キング牧師の歴史的なスピーチ"I Have A Dream"も勉強しよう。動画はこちら!併せてアカデミー作品賞・監督賞を受賞した「ガンジー」も観ておきたい。
「インファナル・アフェア」は香港映画の金字塔。フィルム・ノワールの大傑作で後にハリウッドでリメイクされた。→マーティン・スコセッシ監督「ディパーテッド」
「不都合な真実」は地球温暖化について学べるドキュメンタリー映画。アカデミー賞受賞。
北野武監督の「キッズ・リターン」はラストの決め台詞に痺れろ!中学生たちよ、大志を抱け。
あと古典的名作として、
- 風と共に去りぬ
- 嵐が丘(1939年版)
- カサブランカ (男の子)
- ローマの休日 (女の子)
- 赤い靴 (女の子)
- 七人の侍 (男の子)
- 道
- アラバマ物語
- シベールの日曜日
- まぼろしの市街戦
- 屋根の上のバイオリン弾き
- ハロルドとモード/少年は虹を渡る
- ゴッドファーザー/ゴッドファーザー PART Ⅱ
- 砂の器
- ジョーズ
- 未知との遭遇
- ロッキー
- ポセイドン・アドベンチャー
- タワーリング・インフェルノ
- バックドラフト
- アマデウス
- ショーシャンクの空に
- 櫻の園(1990年版) (女の子)
- ターミネーター/ターミネーター2 (男の子)
- リング/仄暗い水の底から
を推しておく。
「櫻の園」は1990年版と2008年版があるので要注意。中島ひろ子やつみきみほが出演している方。キネマ旬報ベスト・ワンに輝いた。
エミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」は繰り返し映画化されており、松田優作主演で舞台を鎌倉時代の日本に置き換えたバージョンまである。僕の一押しはウィリアム・ワイラー監督版。これをハリウッドで撮っていたローレンス・オリヴィエを追っかけてヴィヴィアン・リーが英国から渡米。その時なかなか決まらなかった「風と共に去りぬ」スカーレット・オハラ役をオーディションで勝ち取るという伝説を生んだ。
フランス映画「まぼろしの市街戦」(1966)は第一次世界大戦末期、フランスの田舎町が舞台。人々が町から逃亡し、取り残された精神病院の患者たちと、町を取り巻く軍隊の人間と、どちらが〈狂気〉でどちらが〈正気〉なのかという問いが本作にはある。
「ジョーズ」は当初小学生向けにお勧めしようかと考えたのだが、これを観て水恐怖症になったという人の話を聞き対象年齢を上げた。本多猪四郎監督「マタンゴ」を幼少期に観てキノコが食べられなくなったという人もいて、正にトラウマ映画だね。
「未知との遭遇」については下記事をお読みください。
「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」はパニック映画(Disaster Movies)の代表作。他に「大空港」がある。
そして長編アニメーション映画部門。
- 君の名は
- 天気の子
- セロ弾きのゴーシュ
- うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
- 海獣の子供
- かぐや姫の物語 (女の子)
- 耳をすませば (女の子)
- リズと青い鳥 (女の子)
- マイマイ新子と千年の魔法 (女の子)
- 風立ちぬ
- 木を植えた男/大いなる河の流れ
テレビ・アニメ(シリーズ)
- 魔法少女まどか☆マギカ
- コードギアス 反逆のルルーシュ
- 響け!ユーフォニアム
- 甲鉄城のカバネリ
- 進撃の巨人
「君の名は。」については過去に当ブログで語り尽くした。
- 【考察】神話としての「君の名は。」〜その深層心理にダイブする。
- 【考察】「君の名は。」もうひとつの解釈〜両性具有という見地から
- 3回目の鑑賞で気付いたこと。〜「君の名は。」超マニアック講座
- 4回目の鑑賞と新たな発見〜「君の名は。」超マニアック講座2
- 切断と結合の物語〜【考察】「君の名は。」
- ギリシャ神話(オルフェウス)と日本神話、そして新海誠「君の名は。」の構造分析
「天気の子」は以下の通り。
- 新海誠監督「天気の子」は反キリスト映画である。(速攻レビュー)
- 父親殺し〜【考察】新海誠監督「天気の子」の心理学
- 【考察】映画「天気の子」を超ディープに味わうための、7つの事項(新海誠と村上春樹)
- 【考察】新海誠監督「天気の子」の神話学
- 「天気の子」劇場用パンフレット第2弾登場!〜新海誠監督が質問に答えてくださいました。
「風立ちぬ」については下記。
- ヴェネツィア国際映画祭コンペ出品決定!/宮崎駿監督「風立ちぬ」
- 宮崎駿監督「風立ちぬ」批判に徹底反論する(堀辰雄「菜穂子」を通して)
- 宮崎駿「風立ちぬ」とモネの「日傘を差す女」
- 想像力についての考察(「風立ちぬ」「桐島」そして「秒速5センチメートル」を巡って)
- 宮崎駿「風立ちぬ」とエリア・カザン~ピラミッドのある世界とない世界の選択について
〈大切なことは言葉にならない〉〜「海獣の子供」の名台詞。
「マイマイ新子と千年の魔法」は「この世界の片隅に」の片渕須直監督作品。高校生になったら「この世界の片隅に」も観よう。
「響け!ユーフォニアム」2nd seasonは既視(マンネリ)感が強いので、1st seasonのみで十分だろう。続いてスピンオフ「リズと青い鳥」を観よう。
| 固定リンク | 0
« 【2020年最新版】選定!小学生に観せたい映画・アニメ | トップページ | TBSラジオ「アフター6ジャンクション」presents:さよなら大林監督。追悼特別企画<第1回 大林宣彦映画 総選挙> »
「Cinema Paradiso」カテゴリの記事
- クラシック通が読み解く映画「TAR/ター」(帝王カラヤン vs. バーンスタインとか)(2023.05.27)
- A24とNetflixの躍進が目立ったアカデミー賞授賞式 2023を振り返る(2023.03.15)
- 2023年 アカデミー賞大予想!(2023.03.12)
- デイミアン・チャゼル監督「バビロン」は「ラ・ラ・ランド」を露悪趣味に歪曲した映画(2023.03.10)
- イニシェリン島の精霊(2023.03.08)
「アニメーション・アニメーション!」カテゴリの記事
- 【考察】空耳力が半端ない!YOASOBI「アイドル」英語版/「推しの子」黒川あかねの覚醒(2023.06.02)
- 【考察】全世界で話題沸騰!「推しの子」とYOASOBI「アイドル」、45510、「レベッカ」、「ゴドーを待ちながら」、そしてユング心理学(2023.05.20)
- 「たぶんこれ銀河鉄道の夜」大阪・大千秋楽公演(2023.05.16)
- 【考察】文化人類学者レヴィ=ストロース的視座(構造)から見た新海誠監督「すずめの戸締まり」(2022.11.30)
「子供の情景」カテゴリの記事
- 劇団四季「オペラ座の怪人」 2022(2022.06.24)
- 中二病からの脱出〜映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(2021.03.11)
- 礼真琴、舞空瞳(主演)宝塚星組「ロミオとジュリエット」(2021.02.26)
- 今度は「不織布マスク警察」現る!/新型コロナ禍の心理学(2021.02.15)
- アカデミー長編アニメーション部門のノミネートは確実!「ウルフウォーカー」(2020.11.13)
コメント