新型コロナで引きこもっている貴方へー2000年以降の映画ベスト60!おまけでTVアニメ・ベスト10!
新型コロナウィルスが世界的に猛威をふるい、外出を控えている方も多いだろう。こんな時はDVD/Blu-rayやNetflix,Amazonプライム・ビデオなど動画配信サービスで映画を観たい気持ちになる。そんな貴方にお勧めの作品をご紹介しよう。
定義としては2000年1月〜2019年12月末の間に、製作された国で公開された映画を対象とする。例えば「パラサイト 半地下の家族」は日本で2020年1月の公開だが、韓国では2019年に公開されたので候補となる。
ここで20年単位で映画史を最初から振り返ってみよう。
- 1900-1919:黎明期。メリエス「月世界旅行」、グリフィス「イントレランス」など。
- 1920-1939:モンタージュ理論の確立(エイゼンシュテイン「戦艦ポチョムキン」)。サイレント(無声)映画の成熟と終焉、トーキーの台頭。チャップリン、キートン、ロイドら三大喜劇王からローレル&ハーディ、マルクス兄弟の時代へ。ミュージカル映画が花盛り。そして39年「風と共に去りぬ」で最高潮へ!
- 1940-1959:戦争を経て映画の黄金期到来。ハリウッドではワイラー、ワイルダー、ヒッチコック、フォード、ホークスら巨匠たちが精力的に活躍し、ディズニー・アニメも頂点を極めた。一方で赤狩りという暗い影も。日本では黒澤明、溝口健二、小津安二郎、木下惠介らが最も脂が乗っていた時代。イタリアではネオレアリズモ(ロッセリーニ、デ・シーカ、ヴィスコンティ)が盛んに。白黒→カラー、スタンダード→ワイドスクリーン(シネスコ、ビスタビジョン〉へ。
- 1960-1979:テレビの台頭とともに映画産業は斜陽に。大手スタジオは衰退、撮影機材の軽量化でカメラは撮影所を飛び出して街へ!フランス・ヌーヴェルヴァーグ(トリュフォー、ゴダール、レネ、マル)、松竹ヌーヴェルヴァーグ(大島渚、吉田喜重、篠田正浩)、日活ヌーヴェルヴァーグ(中平康、川島雄三)、大映ヌーヴェルヴァーグ(増村保造、鈴木清順)、独立プロの隆盛(近代映画協会、新生映画社、新東宝など)、ATG(日本アート・シアター・ギルド)設立。アヴァンギャルドの時代。アメリカはベトナム戦争、ヒッピー文化と並行してニューシネマへ。既成の価値観の否定・破壊。音楽はフォーク・ソングやロックンロール主体に。
- 1980-1999:ヨーロッパ映画やニューシネマの衰退。77年の「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」を経てルーカス、スピルバーグが時代を席巻。ハリウッド・ルネッサンス期到来、オーケストラ演奏によるゴージャスな劇伴復活。メグ・ライアン主演のロマンティック・コメディが花盛り。ハーヴェイ・ワインスタインがミラマックスという帝国を築く(「イングリッシュ・ペイシェント」「恋におちたシェイクスピア」でアカデミー作品賞受賞)。日本では角川映画の台頭、メディアミックス。大林宣彦、大森一樹、森田芳光ら自主映画出身監督が主流に。ぴあフィルムフェスティバル(PFF)アワードの時代。そしてバブル期(ホイチョイ・プロダクション「私をスキーに連れてって」「彼女が水着にきがえたら」「波の数だけ抱きしめて」、桑田佳祐「稲村ジェーン」、小田和正「いつか どこかで」、村上龍「ラッフルズホテル」、椎名桜子「家族輪舞曲」)を経てバブル崩壊。90年代は浮ついた、軽薄な時代だった。
では2000年以降の20年間はどういう時代だったのだろう?僕が選んだ代表作は以下の通り。リンクを張ってあるものは、タイトルをクリックすれば各々のレビューに飛ぶ。
- 君の名は。 (2016) 日本
- 風立ちぬ (2013) 日本
- 千と千尋の神隠し (2001) 日本
- ラ・ラ・ランド (2016)
- 蜜蜂と遠雷 (2019) 日本
- パラサイト 半地下の家族 (2019)
- ダークナイト (2008)
- 秒速5センチメートル (2007) 日本
- 桐島、部活やめるってよ (2012) 日本
- インファナル・アフェア (2003)
- 天気の子 (2019) 日本
- 花筐/HANAGATAM (2017) 日本
- マルホランド・ドライブ (2001)
- 殺人の追憶 (2003)
- インセプション (2010)
- 告白 (2010) 日本
- 1917 命をかけた伝令 (2019)
- シカゴ (2002)
- ソーシャル・ネットワーク (2010)
- ボウリング・フォー・コロンバイン (2002)
- そして父になる (2013) 日本
- ペンギン・ハイウェイ (2018) 日本
- パンズ・ラビリンス (2006)
- ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (2003)
- ハート・ロッカー (2008)
- ゼロ・グラビティ (2013)
- メッセージ (2016)
- ソング・オブ・ザ・シー 海のうた (2014)
- おくりびと (2008) 日本
- 舟を編む (2013) 日本
- オールド・ボーイ (2003)
- ダンケルク(2017)
- シン・ゴジラ (2016) 日本
- 時をかける少女 (2006) 日本 ←細田守監督アニメ版
- 別離 (2011)
- グリーン・デスティニー (2000)
- バトル・ロワイヤル (2000) 日本
- 沈黙 -サイエンス- (2016)
- 007 スカイフォール (2012)
- 海獣の子供 (2019) 日本
- ハリーポッターとアズカバンの囚人 (2004)
- クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲 (2001) 日本
- マッドマックス 怒りのデス・ロード (2015)
- ゆれる (2006) 日本
- 野のなななのか (2014) 日本
- 八日目の蝉(2011)日本
- GO (2001) 日本
- はじまりのうた (2013)
- ツリー・オブ・ライフ (2011)
- マン・オン・ワイヤー (2008)
- DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on
少女たちは傷つきながら、夢を見る (2012) 日本 - なごり雪 (2002) 日本
- アナと雪の女王 (2013)
- ビール・ストリートの恋人たち (2018)
- Mr.インクレディブル (2004)
- シティ・オブ・ゴッド (2003)
- 英国王のスピーチ (2010)
- 華麗なるギャツビー (2013)
- A.I. (2001)
- パシフィック・リム (2013)
- 不都合な真実 (2006)
- 呪怨 (2000) 日本
総じて、いくつかの特徴を挙げられるだろう。
- 日本のアニメーションの質の高さが、世界的に認知されるようになった。今や宮崎駿の名を知らない映画人なんて皆無だろう。新海誠の名も浸透しつつある。
- アジア映画の世界進出。それを象徴する事件が韓国「パラサイト 半地下の家族」のアカデミー作品賞・監督賞受賞だ。また台湾のアン・リーは「ブロークバック・マウンテン」と「ライフ・オブ・パイ/虎と漂流した227日」で2度アカデミー監督賞を受賞し、中国のチャン・イーモウが監督した「HERO 英雄」や「LOVERS」など武侠映画も世界的に大ヒットした(しかしマット・デイモンを主演に迎えた「グレートウォール」は惨憺たる失敗に終わった)。「リング」「呪怨」「仄暗い水の底から」などJ(ジャパニーズ)ホラーも立て続けにハリウッド・リメイクされた。あと「ゴジラ」が2回目のハリウッド・リメイクされ、デル・トロ監督「パシフィック・リム」ではKaijuたちが大暴れした。
- #MeToo運動が盛り上がり、ハーヴェイ・ワインスタインが逮捕された。帝国の滅亡。
- 女性監督(「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」のキャスリン・ビグロー、「ゆれる」「夢売るふたり」の西川美和、「グローリー ー明日への行進ー」のエヴァ・デュヴァネイ)や黒人監督(「ムーンライト」「ビール・ストリートの恋人たち」のバリー・ジェンキンス 、「ゲット・アウト」「アス US」のジョーダン・ピール )の躍進。
- SNS時代の到来。「ソーシャル・ネットワーク」「スティーブ・ジョブズ」など。
- アメリカのアニメーション映画はフルCGに移行した。そして、ジョン・ラセター復帰によるディズニーの完全復活を高らかに世界に宣言したのが「アナ雪」。しかし #MeToo運動の余波を被り、ラセター再び同社から放逐された。一体これからどうなる、ディズニー!?
- 映画のVFXもCGで何でも出来るようになり、アメコミ映画が隆盛を極めた。しかし逆に感覚が麻痺してしまい、特撮に対する驚きとか新鮮さを感じることがなくなってしまった(アメコミ・ヒーローの病理)。
- ここ20年くらいで地球の気候が大きく変わったことを実感し、この先どうなるんだろう?と不安を覚えることが多くなった。「天気の子」「不都合な真実」など。
「君の名は。」については過去に当ブログで語り尽くしたので、ここで繰り返さない。
- 【考察】神話としての「君の名は。」〜その深層心理にダイブする。
- 【考察】「君の名は。」もうひとつの解釈〜両性具有という見地から
- 3回目の鑑賞で気付いたこと。〜「君の名は。」超マニアック講座
- 4回目の鑑賞と新たな発見〜「君の名は。」超マニアック講座2
- 切断と結合の物語〜【考察】「君の名は。」
- ギリシャ神話(オルフェウス)と日本神話、そして新海誠「君の名は。」の構造分析
「風立ちぬ」については下記。
- ヴェネツィア国際映画祭コンペ出品決定!/宮崎駿監督「風立ちぬ」
- 宮崎駿監督「風立ちぬ」批判に徹底反論する(堀辰雄「菜穂子」を通して)
- 宮崎駿「風立ちぬ」とモネの「日傘を差す女」
- 想像力についての考察(「風立ちぬ」「桐島」そして「秒速5センチメートル」を巡って)
- 宮崎駿「風立ちぬ」とエリア・カザン~ピラミッドのある世界とない世界の選択について
多分、客観的に見れば宮崎駿の最高傑作はベルリン国際映画祭で金熊賞、さらにアカデミー長編アニメーション映画賞を受賞した「千と千尋の神隠し」だろう。文句なしだ。しかし「風立ちぬ」の魅力は宮さんが自分の抱える矛盾を肯定したことにある。ダンテ「神曲」を下敷きにしている点でも深みを増した。たとえ悪魔に魂を売り渡そうと、芸術を突き詰めるのだという覚悟に痺れる。
「ラ・ラ・ランド」については以下の記事をご参照あれ。
- ジャック・ドゥミ「港町三部作」から聖林ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」へ
- 夢と狂気のミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」
- (増補改訂版)「ラ・ラ・ランド」がオマージュを捧げた過去のミュージカル映画たち
- 「ラ・ラ・ランド」を観る前に是非予習しておきたい映画たち(優先順位付き)
- 100パーセントのミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」@IMAX!!
- 【考察】「ラ・ラ・ランド」〜セブとミアが見た夢は、何時から始まったのか?
「蜜蜂と遠雷」は言わずと知れた音楽映画の金字塔。
「ダークナイト」はジョーカーのキャラクター造形が秀逸。キーワードは虚無と混沌(カオス)。
「インファナル・アフェア」を超える香港映画は今のところない。究極のフィルム・ノワール。マーティン・スコセッシ監督が「ディパーテッド」としてハリウッド・リメイクし、アカデミー作品賞・監督賞を受賞したが、オリジナルの足元にも及ばない。
「マルホランド・ドライブ」はデヴィッド・リンチ監督の最高傑作。ある意味デヴィッド・フィンチャーの「ファイト・クラブ」と似ているとも言える。またビリー・ワイルダー「サンセット大通り」とイングマール・ベルイマン「仮面/ペルソナ」を下敷きにしている。
「インセプション」が秀逸なのは登場人物たちが現実と夢(=深層心理・仮想現実)を行き来し、さらに夢を三層に分けたこと。クリストファー・ノーラン監督は間違いなくユング心理学の影響を受けている。
「殺人の追憶」は「パラサイト 半地下の家族」と並び、紛れもなく韓国映画の金字塔。ヒリヒリとして背筋が凍りつく大傑作。ポン・ジュノ監督恐るべし。岩代太郎の音楽も出色の出来。
「ハリーポッターとアズカバンの囚人」はシリーズ三作目にして頂点を築いた。後に二度アカデミー監督賞を受賞する(「ゼロ・グラビティ」「ローマ」)アルフォンソ・キュアロンの美意識が冴え渡る。クリス・コロンバスが監督した一、二作目の出来も悪くない。
アイルランドのダブリン出身ジョン・カーニー監督の「ONCE ダブリンの片隅で」「はじまりのうた」「シング・ストリート 未来へのうた」は三部作となっている。これらが気に入ったら次はAmazon プライムのドラマ「モダン・ラブ 〜今日もNYの片隅で〜」をどうぞ。
「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」は3・11東日本大震災のドキュメンタリーとして秀逸である。あと〈会いに行けるアイドル〉〈地下アイドル〉が日本を席巻した記憶として。しかし2018年末、新潟で活躍するNGT48のメンバーだった山口真帆に対する暴行事件と、その後の運営会社ASKの対応の拙さから、すっかり世間の熱は冷めてしまった。
「呪怨」は奥菜恵や酒井法子が主演した劇場版ではなく、それより先んじて東映ビデオが発売した東映Vシネマ版(元祖)が一番怖い!これね。
続いて、TVアニメ部門。
- 魔法少女まどか☆マギカ
- コードギアス 反逆のルルーシュ
- 四畳半神話大系
- 宇宙よりも遠い場所
- 進撃の巨人
- 響け!ユーフォニアム
- ヴァイオレット・エヴァーガーデン
- 甲鉄城のカバネリ
- ちはやふる
- 鬼滅の刃
「四畳半神話大系」の湯浅政明監督は、2020年1月から放送されたアニメ「映像研には手を出すな!」で一世を風靡した。姉妹編として劇場アニメ「夜は短し歩けよ乙女」も併せてどうぞ。どちらもNetflixで配信中。
「宇宙よりも遠い場所」はニューヨーク・タイムズの「ベストTV 2018 インターナショナル部門」(The Best International Shows)に選出、激賞された。Netflixで配信中。
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