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2020年3月28日 (土)

新型コロナで引きこもっている貴方へー2000年以降の映画ベスト60!おまけでTVアニメ・ベスト10!

新型コロナウィルスが世界的に猛威をふるい、外出を控えている方も多いだろう。こんな時はDVD/Blu-rayやNetflix,Amazonプライム・ビデオなど動画配信サービスで映画を観たい気持ちになる。そんな貴方にお勧めの作品をご紹介しよう。

定義としては2000年1月〜2019年12月末の間に、製作された国で公開された映画を対象とする。例えば「パラサイト 半地下の家族」は日本で2020年1月の公開だが、韓国では2019年に公開されたので候補となる。

ここで20年単位で映画史を最初から振り返ってみよう。

  • 1900-1919:黎明期。メリエス「月世界旅行」、グリフィス「イントレランス」など。
  • 1920-1939:モンタージュ理論の確立(エイゼンシュテイン「戦艦ポチョムキン」)。サイレント(無声)映画の成熟と終焉、トーキーの台頭。チャップリン、キートン、ロイドら三大喜劇王からローレル&ハーディ、マルクス兄弟の時代へ。ミュージカル映画が花盛り。そして39年「風と共に去りぬ」で最高潮へ!
  • 1940-1959:戦争を経て映画の黄金期到来。ハリウッドではワイラー、ワイルダー、ヒッチコック、フォード、ホークスら巨匠たちが精力的に活躍し、ディズニー・アニメも頂点を極めた。一方で赤狩りという暗い影も。日本では黒澤明、溝口健二、小津安二郎、木下惠介らが最も脂が乗っていた時代。イタリアではネオレアリズモ(ロッセリーニ、デ・シーカ、ヴィスコンティ)が盛んに。白黒→カラー、スタンダード→ワイドスクリーン(シネスコ、ビスタビジョン〉へ。
  • 1960-1979:テレビの台頭とともに映画産業は斜陽に。大手スタジオは衰退、撮影機材の軽量化でカメラは撮影所を飛び出して街へ!フランス・ヌーヴェルヴァーグ(トリュフォー、ゴダール、レネ、マル)、松竹ヌーヴェルヴァーグ(大島渚、吉田喜重、篠田正浩)、日活ヌーヴェルヴァーグ(中平康、川島雄三)、大映ヌーヴェルヴァーグ(増村保造、鈴木清順)、独立プロの隆盛(近代映画協会、新生映画社、新東宝など)、ATG(日本アート・シアター・ギルド)設立。アヴァンギャルドの時代。アメリカはベトナム戦争、ヒッピー文化と並行してニューシネマへ。既成の価値観の否定・破壊。音楽はフォーク・ソングやロックンロール主体に。
  • 1980-1999:ヨーロッパ映画やニューシネマの衰退。77年の「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」を経てルーカス、スピルバーグが時代を席巻。ハリウッド・ルネッサンス期到来、オーケストラ演奏によるゴージャスな劇伴復活。メグ・ライアン主演のロマンティック・コメディが花盛り。ハーヴェイ・ワインスタインがミラマックスという帝国を築く(「イングリッシュ・ペイシェント」「恋におちたシェイクスピア」でアカデミー作品賞受賞)。日本では角川映画の台頭、メディアミックス。大林宣彦、大森一樹、森田芳光ら自主映画出身監督が主流に。ぴあフィルムフェスティバル(PFF)アワードの時代。そしてバブル期(ホイチョイ・プロダクション「私をスキーに連れてって」「彼女が水着にきがえたら」「波の数だけ抱きしめて」、桑田佳祐「稲村ジェーン」、小田和正「いつか どこかで」、村上龍「ラッフルズホテル」、椎名桜子「家族輪舞曲」)を経てバブル崩壊。90年代は浮ついた、軽薄な時代だった。

では2000年以降の20年間はどういう時代だったのだろう?僕が選んだ代表作は以下の通り。リンクを張ってあるものは、タイトルをクリックすれば各々のレビューに飛ぶ。

  1. 君の名は。 (2016) 日本
  2. 風立ちぬ (2013) 日本
  3. 千と千尋の神隠し (2001) 日本
  4. ラ・ラ・ランド (2016)
  5. 蜜蜂と遠雷 (2019) 日本
  6. パラサイト 半地下の家族 (2019)
  7. ダークナイト (2008)
  8. 秒速5センチメートル (2007) 日本
  9. 桐島、部活やめるってよ (2012) 日本
  10. インファナル・アフェア (2003)
  11. 天気の子 (2019) 日本
  12. 花筐/HANAGATAM (2017) 日本
  13. マルホランド・ドライブ (2001)
  14. 殺人の追憶 (2003)
  15. インセプション (2010)
  16. 告白 (2010)  日本
  17. 1917 命をかけた伝令 (2019)
  18. シカゴ (2002)
  19. ソーシャル・ネットワーク (2010)
  20. ボウリング・フォー・コロンバイン (2002)
  21. そして父になる (2013) 日本
  22. ペンギン・ハイウェイ (2018) 日本
  23. パンズ・ラビリンス (2006)
  24. ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (2003)
  25. ハート・ロッカー (2008)
  26. ゼロ・グラビティ (2013)
  27. メッセージ (2016)
  28. ソング・オブ・ザ・シー 海のうた (2014)
  29. おくりびと (2008) 日本
  30. 舟を編む (2013) 日本
  31. オールド・ボーイ (2003)
  32. ダンケルク(2017)
  33. シン・ゴジラ (2016) 日本
  34. 時をかける少女 (2006) 日本 ←細田守監督アニメ版
  35. 別離 (2011)
  36. グリーン・デスティニー (2000)
  37. バトル・ロワイヤル (2000) 日本
  38. 沈黙 -サイエンス- (2016)
  39. 007 スカイフォール (2012)
  40. 海獣の子供 (2019) 日本
  41. ハリーポッターとアズカバンの囚人 (2004)
  42. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲 (2001) 日本
  43. マッドマックス 怒りのデス・ロード (2015)
  44. ゆれる (2006) 日本
  45. 野のなななのか (2014) 日本
  46. 八日目の蝉(2011)日本
  47. GO (2001) 日本
  48. はじまりのうた (2013)
  49. ツリー・オブ・ライフ (2011)
  50. マン・オン・ワイヤー (2008)
  51. DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on
    少女たちは傷つきながら、夢を見る (2012) 日本
  52. なごり雪 (2002) 日本
  53. アナと雪の女王 (2013)
  54. ビール・ストリートの恋人たち (2018)
  55. Mr.インクレディブル (2004)
  56. シティ・オブ・ゴッド (2003)
  57. 英国王のスピーチ (2010)
  58. 華麗なるギャツビー (2013)
  59. A.I. (2001)
  60. パシフィック・リム (2013)
  61. 不都合な真実 (2006)
  62. 呪怨 (2000) 日本

総じて、いくつかの特徴を挙げられるだろう。

  • 日本のアニメーションの質の高さが、世界的に認知されるようになった。今や宮崎駿の名を知らない映画人なんて皆無だろう。新海誠の名も浸透しつつある。
  • アジア映画の世界進出。それを象徴する事件が韓国「パラサイト 半地下の家族」のアカデミー作品賞・監督賞受賞だ。また台湾のアン・リーは「ブロークバック・マウンテン」と「ライフ・オブ・パイ/虎と漂流した227日」で2度アカデミー監督賞を受賞し、中国のチャン・イーモウが監督した「HERO 英雄」や「LOVERS」など武侠映画も世界的に大ヒットした(しかしマット・デイモンを主演に迎えた「グレートウォール」は惨憺たる失敗に終わった)。「リング」「呪怨」「仄暗い水の底から」などJ(ジャパニーズ)ホラーも立て続けにハリウッド・リメイクされた。あと「ゴジラ」が2回目のハリウッド・リメイクされ、デル・トロ監督「パシフィック・リム」ではKaijuたちが大暴れした。
  • #MeToo運動が盛り上がり、ハーヴェイ・ワインスタインが逮捕された。帝国の滅亡。
  • 女性監督(「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」のキャスリン・ビグロー、「ゆれる」「夢売るふたり」の西川美和、「グローリー ー明日への行進ー」のエヴァ・デュヴァネイ)や黒人監督(「ムーンライト」「ビール・ストリートの恋人たち」のバリー・ジェンキンス 、「ゲット・アウト」「アス US」のジョーダン・ピール )の躍進。
  • SNS時代の到来。「ソーシャル・ネットワーク」「スティーブ・ジョブズ」など。
  • アメリカのアニメーション映画はフルCGに移行した。そして、ジョン・ラセター復帰によるディズニーの完全復活を高らかに世界に宣言したのが「アナ雪」。しかし #MeToo運動の余波を被り、ラセター再び同社から放逐された。一体これからどうなる、ディズニー!?
  • 映画のVFXもCGで何でも出来るようになり、アメコミ映画が隆盛を極めた。しかし逆に感覚が麻痺してしまい、特撮に対する驚きとか新鮮さを感じることがなくなってしまった(アメコミ・ヒーローの病理)。
  • ここ20年くらいで地球の気候が大きく変わったことを実感し、この先どうなるんだろう?と不安を覚えることが多くなった。「天気の子」「不都合な真実」など。

「君の名は。」については過去に当ブログで語り尽くしたので、ここで繰り返さない。

「風立ちぬ」については下記。

多分、客観的に見れば宮崎駿の最高傑作はベルリン国際映画祭で金熊賞、さらにアカデミー長編アニメーション映画賞を受賞した「千と千尋の神隠し」だろう。文句なしだ。しかし「風立ちぬ」の魅力は宮さんが自分の抱える矛盾を肯定したことにある。ダンテ「神曲」を下敷きにしている点でも深みを増した。たとえ悪魔に魂を売り渡そうと、芸術を突き詰めるのだという覚悟に痺れる。

「ラ・ラ・ランド」については以下の記事をご参照あれ。

蜜蜂と遠雷」は言わずと知れた音楽映画の金字塔。

ダークナイト」はジョーカーのキャラクター造形が秀逸。キーワードは虚無と混沌(カオス)。

「インファナル・アフェア」を超える香港映画は今のところない。究極のフィルム・ノワール。マーティン・スコセッシ監督が「ディパーテッド」としてハリウッド・リメイクし、アカデミー作品賞・監督賞を受賞したが、オリジナルの足元にも及ばない。

「マルホランド・ドライブ」はデヴィッド・リンチ監督の最高傑作。ある意味デヴィッド・フィンチャーの「ファイト・クラブ」と似ているとも言える。またビリー・ワイルダー「サンセット大通り」とイングマール・ベルイマン「仮面/ペルソナ」を下敷きにしている。

インセプション」が秀逸なのは登場人物たちが現実と夢(=深層心理・仮想現実)を行き来し、さらに夢を三層に分けたこと。クリストファー・ノーラン監督は間違いなくユング心理学の影響を受けている。

「殺人の追憶」は「パラサイト 半地下の家族」と並び、紛れもなく韓国映画の金字塔。ヒリヒリとして背筋が凍りつく大傑作。ポン・ジュノ監督恐るべし。岩代太郎の音楽も出色の出来。

「ハリーポッターとアズカバンの囚人」はシリーズ三作目にして頂点を築いた。後に二度アカデミー監督賞を受賞する(「ゼロ・グラビティ」「ローマ」)アルフォンソ・キュアロンの美意識が冴え渡る。クリス・コロンバスが監督した一、二作目の出来も悪くない。

アイルランドのダブリン出身ジョン・カーニー監督の「ONCE ダブリンの片隅で」「はじまりのうた」「シング・ストリート 未来へのうた」は三部作となっている。これらが気に入ったら次はAmazon プライムのドラマ「モダン・ラブ 〜今日もNYの片隅で〜」をどうぞ。

DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」は3・11東日本大震災のドキュメンタリーとして秀逸である。あと〈会いに行けるアイドル〉〈地下アイドル〉が日本を席巻した記憶として。しかし2018年末、新潟で活躍するNGT48のメンバーだった山口真帆に対する暴行事件と、その後の運営会社ASKの対応の拙さから、すっかり世間の熱は冷めてしまった。

「呪怨」は奥菜恵や酒井法子が主演した劇場版ではなく、それより先んじて東映ビデオが発売した東映Vシネマ版(元祖)が一番怖い!これね。

続いて、TVアニメ部門。

  1. 魔法少女まどか☆マギカ
  2. コードギアス 反逆のルルーシュ
  3. 四畳半神話大系
  4. 宇宙よりも遠い場所
  5. 進撃の巨人
  6. 響け!ユーフォニアム
  7. ヴァイオレット・エヴァーガーデン
  8. 甲鉄城のカバネリ
  9. ちはやふる
  10. 鬼滅の刃

「四畳半神話大系」の湯浅政明監督は、2020年1月から放送されたアニメ「映像研には手を出すな!」で一世を風靡した。姉妹編として劇場アニメ「夜は短し歩けよ乙女」も併せてどうぞ。どちらもNetflixで配信中。

「宇宙よりも遠い場所」はニューヨーク・タイムズの「ベストTV 2018 インターナショナル部門」(The Best International Shows)に選出、激賞された。Netflixで配信中。

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