クラシック音楽をどう聴くか?〜初心者のための鑑賞の手引き
クラシック音楽に興味があるけれど、どう聴いたら良いのサッパリかわからない、途方に暮れるという若い方、特に中学生・高校生に向けてこれを書いてみようと思う。勿論、大人の初心者の方も大歓迎だ。出来る限りわかり易く、奥深い森への道案内をしたい。
記事全体の構成をご紹介しよう。①「まず、何から手を付けたら良いの?」……取っ掛かりに最適の曲をご紹介する。②映画を大いに活用しよう!……ぼんやり観ているだけで良いので即効性があり、とっても効果的だ。③「演奏時間が30分以上もある交響曲とかソナタを、どう受け止めれば理解出来るの?」……そのコツを伝授する。意外と簡単。
では早速始めよう。
①「まず、何から手を付けたら良いの?」
僕の経験からお話しよう。最初にクラシック音楽って楽しい!と開眼したのは小学校4,5年生の頃。切っ掛けはヴィヴァルディの「四季」だった。
初心者にとって長大なクラシック音楽は雲を掴むようで覚束なく、聴いていると眠くなってしまう。抽象的で、具体的な絵とか形(目に見えるもの-vision)や物語がないからである。しかしヴィヴァルディの「四季」は標題音楽であり、物語がある。それを読みながら聴けば、情景が目に浮かんでくる。CDの解説書を読めば良いのだが、最近はSpotify,Amazon Musicなど定額制音楽配信(サブスクリプション)サービスを利用している方も多いだろう。そういう場合に便利なのがWikipediaである。「四季」の解説はこちら。【ヴィヴァルディ】【四季】でgoogle検索すれば、直ぐ見つけられる(キーワードに【wiki】 を加えても、加えなくても良い)。おすすめの演奏は◎ビオンディ/エウローパ・ガランテ、◯スタンデイジ/ピノック/ イングリッシュ・コンサート、◯カルミニョーラ/ヴェニス・バロック・オーケストラといったところ。
ヴィヴァルディ「四季」に似た趣向の作品としてベートーヴェン:交響曲第6番「田園」が挙げられる(【ベートーヴェン】【田園】でググる=google検索)。お勧めの演奏は◎ベーム/ウィーン・フィルか、◯ネルソンス/ウィーン・フィル、◯パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィル。同じベートーヴェン:交響曲第5番「運命」は苦難(第1楽章 ハ短調)を乗り越えて歓喜(第4楽章 ハ長調)へ!という明快なコンセプトがあるのでこれも判り易い。◎クライバー/ウィーン・フィルか、◯アーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス 、◯クルレンツィス/ムジカエテルナあたりで。この「運命」のコンセプトに追随したのがチャイコフスキー/交響曲第5番、マーラー/交響曲第5番、ショスタコーヴィッチ/交響曲第5番。ただしショスタコの場合は屈折しており、一筋縄ではいかない。
本題に戻ろう。他に標題音楽としてホルスト:組曲「惑星」(カラヤン/ベルリン・フィル)、リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェヘラザード」(デュトワ/モントリオール交響楽団)、ムソルグスキー(ラヴェル編):組曲「展覧会の絵」(ショルティ/シカゴ交響楽団)、チャイコフスキー:組曲「くるみ割り人形」(カラヤン/ベルリン・フィル)、サン=サーンス:組曲「動物の謝肉祭」(アルゲリッチ、マイスキー、クレーメルほか)、プロコフィエフ:交響的物語「ピーターと狼」、グリーグ:劇付随音楽「ペール・ギュント」組曲(カラヤン/ベルリン・フィル)、メンデルスゾーン:劇付随音楽「夏の夜の夢」(プレヴィン/ウィーン・フィル)、ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、交響詩「海」(ブーレーズ/クリーヴランド管)、レスピーギ:交響詩「ローマの松/祭り/噴水」(ローマ三部作) などが挙げられる。ローマ三部作は◎ムーティ/フィラデルフィア管か、◯バッティストーニ指揮/東京フィルハーモニー交響楽団で。
ロックが好きな人にはストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」がピッタリ。ピンク・フロイドの「原子心母」とか、エマーソン・レイク・アンド・パーマーの「タルカス」、イエス(バンド)などプログレッシブ・ロックに近い。◎クルレンツィス/ムジカエテルナか、◎ロト/レ・シエクル、◯ブーレーズ/クリーヴランド管で。
標題音楽じゃないけれど、ジャズ好きにはガーシュウィン:「ラプソディ・イン・ブルー」や「パリのアメリカ人」がお勧め。指揮&ピアノはバーンスタインかプレヴィン、レヴァインで。
またベルリオーズ:幻想交響曲は失恋のショックで悶々とし、アヘンを吸いながら作曲された狂気の音楽(サイケデリック・ミュージック)だ。すこぶる面白い!◎アバド/シカゴ交響楽団や◯ミンコフスキ/ルーヴル宮音楽隊、◯ロト/レ・シエクルの演奏でどうぞ。
小品ではデュカス:交響詩「魔法使いの弟子」、スメタナ:交響詩「モルダウ」、ムソルグスキー(リムスキー=コルサコフ編):交響詩「禿山の一夜」、ボロディン:交響詩「中央アジアの草原にて」、シベリウス:交響詩「フィンランディア」「トゥオネラの白鳥」、ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「美しく青きドナウ」「春の声」「ウィーンの森の物語」「トリッチ・トラッチ・ポルカ」、イヴァノヴィッチ:ワルツ「ドナウ川のさざなみ」、ワルトトイフェル:スケーターズ・ワルツ、メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」、マスネ:タイスの瞑想曲、ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲、スッペ:オペレッタ「軽騎兵」序曲、ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲、ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死、歌劇「ローエングリン」第三幕への前奏曲、マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲あたり。シュトラウス一家のワルツ・ポルカならウィーン・フィルの演奏で。指揮者はカルロス・クライバー、ボスコフスキー、ティーレマン、ネルソンスあたり。その他の小品は◯カラヤン/ベルリン・フィルか、◯ロビン・ステープルトン/ロイヤル・フィルで。Spotifyで【ステープルトン】と入力し、検索すれば僕が作成したプレイリストが出てくる。
女性の場合はオーケストラ曲よりもピアノ曲のほうが馴染みやすいかも知れない。モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付き」、ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」、第17番「テンペスト」、第23番「熱情」、エリーゼのために、ドビュッシー:月の光(ベルガマスク組曲)、夢、アラベスク第1番、亜麻色の髪の乙女、ショパン:革命、雨だれ、エオリアン・ハープ、英雄ポロネーズ、子犬のワルツ、シューマン:トロイメライ(子供の情景)、ノヴェレッテ第1番、リスト:愛の夢第3番、ため息(3つの演奏会用練習曲)、ラ・カンパネッラ(パガニーニ大練習曲)、グリーグ:ノクターン(抒情小曲集)といったところか。ピアニストとしてはピリス(モーツァルト)、内田光子(モーツァルト)、河村尚子(ベートーヴェン、ショパン)、ポリーニ(ベートーヴェン、ショパン)、アルゲリッチ(ショパン、シューマン)、フランソワ(ドビュッシー)、メジューエワ(ベートーヴェン、シューマン、ショパン)、ボレット(リスト)、アムラン(リスト)、ギレリス(ベートーヴェン、グリーグ)なら間違いなし。
②映画を大いに活用しよう!
映画は得体の知れないクラシック音楽を、明確なvision(視覚)に結びつける力がある。一番のお勧めはディズニーの「ファンタジア」(1940)。「ファンタジア 2000」もある。①でご紹介した小品がいくつも登場する。次に恩田陸原作の日本映画「蜜蜂と遠雷」。浜松国際ピアノコンクールがモデルになっている。またウディ・アレンの「マンハッタン」を観ればガーシュウィンの曲が大好きになるだろう。そしてMGMミュージカルの最高傑作「巴里のアメリカ人」。劇団四季が上演している舞台版を観てもいいい。あとクロード・ルルーシュ監督「愛と哀しみのボレロ」、アカデミー作品賞・監督賞に輝いた「アマデウス」。〈春の祭典〉初演時に於ける阿鼻叫喚の大混乱を活写した「シャネル&ストラヴィンスキー」や、ブラームスとクララの関係を描く「クララ・シューマン 愛の協奏曲」も面白い。また古い白黒映画だが今井正監督「ここに泉あり」と、大指揮者ストコフスキーも出演するディアナ・ダービン主演「オーケストラの少女」は名作中の名作。ジェニファー・ジョーンズ主演の美しい幻想映画「ジェニーの肖像」は全編にドビュッシーの名曲が散りばめられている。
あと大林宣彦監督「さびしんぼう」ではショパンの〈別れの曲〉、「ふたり」ではシューマンの〈ノヴェレッテ第1番〉とベートーヴェンの第九、「転校生」では〈トロイメライ〉〈タイスの瞑想曲〉〈アンダンテ・カンタービレ〉、細田守監督のアニメ版「時をかける少女」ではJ.S.バッハの〈ゴルトベルク変奏曲〉、ルキノ・ヴィスコンティ監督「ベニスに死す」ではマーラーの交響曲第5番が好きになるだろう。おっと、ヴィスコンティの「ルートヴィヒ」も忘れちゃいけない。〈ジークフリート牧歌〉〈子供の情景〉が印象的。タイムトラベルもの「ある日どこかで」はラフマニノフの〈パガニーニの主題による狂詩曲〉、中国映画「太陽の少年」は〈カヴァレリア・ルスティカーナ〉間奏曲がフィーチャーされている。またスタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」を観る前には是非、ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」を読んでおきたい。貴方がさらにディープな世界を体験したければ、ケン・ラッセル監督「マーラー」、「エルガー 〜ある作曲家の肖像〜 Elgar : Portrait of a Composer」、そしてディーリアスの晩年を描く「夏の歌 Song of Summer」をご覧あれ。
③「演奏時間が30分以上もある交響曲とかソナタを、どう受け止めれば理解出来るの?」
長大な交響曲や、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、フルートなど独奏楽器のためのソナタは、基本的に同じ構造を持っている。その共通項さえ把握しておけば、比較的聴き易くなるだろう。
古典派のハイドンからロマン派のシューマン、ブラームスあたりまで、交響曲や協奏曲、ソナタの大半は3楽章か4楽章で構成される(5楽章の「田園」など例外はあるが、ごく僅か)。全3楽章の場合は第2楽章、全4楽章の場合は第2,3楽章のことを【中間楽章】と呼ぶ。そして速度(tempo)は【開始楽章ー中間楽章ー終楽章】が、【急(fast)ー緩(slow)ー急(fast)】となっている。全4楽章の場合、【中間楽章】は【緩徐(slow)楽章】と【舞踏(dance)楽章】で構成される。ハイドンとモーツァルトの時代、【舞踏楽章】は基本にメヌエットだったが、ベートーヴェンがそれをスケルツォに変えた。イタリア語で「冗談」を意味し、語源的にはふざけた、諧謔(かいぎゃく)的音楽を指す。道化的と言い換えても良い。チャイコフスキーの場合、スケルツォの代わりにワルツを置いた。またブルックナーのスケルツォはホルンが活躍する「狩り」の音楽だ。【緩徐楽章】と【舞踏楽章】の順番はまちまち。マーラー:交響曲第6番みたいに、指揮者の解釈によって入れ替わる場合もある。
【開始(第1)楽章】は大半がソナタ形式である。【提示部ー展開部ー再現部ー結尾部(Coda)】で構成される。時に冒頭に【序奏】が置かれることがある。開始楽章は前述したようにテンポが速いが、【序奏】は対照的にゆったりしている。代表的なものにモーツァルト:交響曲第39番、ベートーヴェン:交響曲第7番、ブラームス:交響曲第1番がある。
【提示部】では主題(テーマ)が提示される。ハイドン、モーツァルトからブラームスあたりまで基本的に第二主題まで。ブルックナーの交響曲は第三主題がある。肥大化したマーラーの交響曲はもっと複雑で、第3番なんか第四主題まである。第一主題が長調の場合、第二主題は属調、第一主題が短調なら第二主題は平行調となる。例えば第一主題がハ長調(ドレミファソラシ)なら第二主題はト長調(ソラシドレミファ#)、半音階で七つ上(完全五度)。第一主題がイ短調(ラシドレミファソ)なら第二主題はハ長調(ドレミファソラシ)となる。つまり転調することで第二主題の開始が分かる。交響曲の場合、第一主題(動)は弦楽器、第二主題(静)は木管楽器が主体となる。基本的に【提示部】の終わりには繰り返し記号がある(最初に戻る)。聴衆に主題を覚えてもらうためだ。しかし指揮者によっては繰り返しを無視してサッサと次に移る人もいる。古楽器系オーケストラを振る指揮者は大抵、律儀に繰り返しを実行する(アーノンクール、ブリュッヘン、ノリントン、コープマン、ホグウッド、延原武春、鈴木秀美、ガーディナー、インマゼール、ラトル、パーヴォ・ヤルヴィ、ミンコフスキ、ロト、クルレンツィスら)。
【展開部】提示部で示された主題を様々に変奏、料理する。第一主題だけ扱われることが多い。
【再現部】提示部の主題が元の形で再現される。第二主題→第一主題の順番になることがしばしば。
【終楽章】はソナタ形式か、ロンド形式。特に協奏曲はロンド形式が圧倒的に多い。ロンド形式とは異なる主題をはさみながら、同じ旋律(ロンド主題)を何度も繰り返す。図式化すると、
A-B-A-C-A-D-...-A
つまり、常にAに戻ってくる。フランス語でrond(ロン)/ronde(ロンド)は「丸い」という意味で、英語ではround(ラウンド)となる。日本語で輪舞曲というのはそのため。
【舞踏楽章(メヌエット/スケルツォ/ワルツ)】は、ほぼ三部形式(A-B-A)だと考えて間違いない。Aを主部、Bを中間部(トリオ)という。トリオが2回登場するA-B-A-B-Aという特殊形もある(ベートーヴェン:交響曲第7番)。また複合三部形式というのもあり、主部や中間部がさらに細かくa-b-a/c-d-cで構成される。
【緩徐楽章】は一番バラエティに富む。ソナタ形式だったり、展開部を欠くソナタ形式(A-B-A-B)だったり(ベートーヴェン:交響曲第4番)、 ロンド形式だったり(ベートーヴェン「英雄」)、主題と変奏曲だったり(ベートーヴェン「運命」)する。
今まで述べてきた形式が基本形だが、時にフーガが登場することもある。代表例がモーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」やベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番、サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」、ブルックナー:交響曲第5番の終楽章。ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番は終楽章が後に独立し「大フーガ」となり、続く弦楽四重奏曲第14番は第1楽章がフーガ。
ブラームス:交響曲第4番は特殊で、第4楽章がシャコンヌ(またはパッサカリアとも言う)。たった8小節のシャコンヌ主題に、30もの変奏及びコーダが続く。これはJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番の終曲シャコンヌと併せて聴きたい。バッハのシャコンヌはストコフスキーや斎藤秀雄の編曲による管弦楽版もある。
いかがでしたか?例外もあるが、概ね基本構造はどれも同じ。何も難しいことはない。だから「ここまでが提示部(第一主題/第二主題)、この先が展開部…」といった具合に構造を意識して聴こう。これから聴く曲がどういう形式になっているか、予め解説書かWikipediaに目を通せば良い。Wikiには大抵の曲が載っているから。便利な時代になったものである。
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コメント
映画に使われたクラシックというと、昔は「逢びき」のラフマニノフ・ピアノ協奏曲2番、「恋人たち」のブラームス弦楽六重奏曲、「短くも美しく燃え」のモーツァルト・ピアノ協奏曲21番とかが定番でした。それも主にヨーロッパ系が多かったように感じます。
「審判」で使われたアルビノーニ(作曲といわれている)のアダージョはこの映画で再評価されたようですね。
「2001年宇宙の旅」でクラシックは前面に押し出され、映像の効果を高めるためにクラシック音楽を利用する作品も増えてきました。アレックス・ノースには悪いのですが、キューブリックの判断は正解だったといえるでしょう。
そんな中でインパクト絶大だったのが「地獄の黙示録」でのワーグナーの使用でした。
しかし私にとって映画のワーグナーというと「エクスカリバー」が忘れられません。
映画はアーサー王物語ですが、音楽はジークフリートの葬送行進曲やトリスタンとイゾルデが絶妙な効果で、観終わった後はあたかも「ニーベルングの指環」番外編のようにすら感じられました。
カルミナ・ブラーナも巧く使われていましたね。
ところで純粋クラシック音楽ではないのですが「ライトスタッフ」のビル・コンティはなんであんなバレバレなチャイコフスキーの盗作もどきをしたのでしょうね。
「勝利への脱出」ラストではショスタコーヴィッチもどきとか。
どうもビル・コンティにはメロディメーカーの才能はなくアレンジャーの人なのではないのかなと思っています。
投稿: どぼこん | 2021年9月16日 (木) 12時25分
「ワルキューレの騎行」は『地獄の黙示録』より先にフェリーニが『8 1/2』(1963)で印象的に使っています。やはり暴力的場面です。果たしてコッポラはこれに影響されたのでしょうか??そういえば『8 1/2』のニーノ・ロータは『ゴッドファーザー』の音楽も担当しているじゃありませんか!!
『ゴッドファーザー PART III』はマイケル(アル・パチーノ)がオペラハウスで『カヴァレリア・ルスティカーナ』を鑑賞している最中に暗殺シーンがクロスカッティングされるのですが、実はこれ、篠田正浩監督『乾いた花』(1964)の引用なんです。コッポラがフィルムを松竹から購入したことも判明しています。『乾いた花』ではヘンリー・パーセルが作曲したオペラ『ディドとエネアス』のアリアが歌われているときに殺人が実行されます。
そうそう、『崖の上のポニョ』でポニョが嵐の海を駆けて来る場面で久石譲の音楽はまんま「ワルキューレの騎行」ですね。だって父親のフジモトはポニョのことを"ブリュンヒルデ”と呼んでいますから。これは確信犯です。
『ライトスタッフ』の音楽はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲やホルストの『惑星』のパクリであることが明白なのに、ビル・コンティがこれでアカデミー作曲賞を受賞したことは絶対に納得できません。彼は『ロッキー』で受賞するべきでした。あと、『007 ユア・アイズ・オンリー』の主題歌も悪くないです。
投稿: 雅哉 | 2021年9月16日 (木) 20時41分
ワーグナーは映画との相性が良いのでしょうね。
なにしろライトモチーフの元祖ですから。
「崖の上のポニョ」はワルキューレのブリュンヒルデに何か意味があるのかなと深読みしようと思ったのですが、単に名前と音楽のパクリのようですね。何か裏事情をご存じですか?
でもどうせならヴォークリンデにすればスッキリとするのにな、と思っています。海と河の違いはありますけどね。
静かな音楽と凄惨なシーンを対位法的に使うのも一頃流行ったみたいですね。
以前TVを点けたら、いきなりG線上のアリアが流れてきたので、あれれと画面を見たら、舘ひろしが凄まじい銃撃戦を繰り広げていました。
何か意味があるのかなと見ていましたが、音楽に意味は無く、単に奇をてらっているとしか思えなくて全く効果的ではないシーンでした。
流行を取り入れたのでしょうがセンスの悪さ丸出しでスベリまくりでした。
アカデミー賞に変な受賞があるのは良くあることですね。
「バリー・リンドン」ではヘンデルのサラバンドを使っただけのレナード・ローゼンマンが受賞して、こんな楽な仕事で受賞していいのかな、と言っていたそうで、しかもきっとキューブリックの指示だったんでしょうね。
投稿: どぼこん | 2021年9月17日 (金) 00時54分
『崖の上のポニョ』の意図は明確です。つまりポニョ=ブリュンヒルデであり、宗介=ジークフリートなのです。われわれ旧人類が洪水で絶滅し(神々の黄昏/ノアの箱舟)、生き残ったふたりの間に将来生まれるであろう新人類が地球の未来を担う。だから海の生物も一旦リセットされた(デボン紀の魚が泳ぐ)。最後に登場する宗介の父母も、老人たちも幽霊。そう解釈すればスッキリします。故に決して「パクリ」といった低次元の話ではありません。詳しくは映画公開当時書いた僕のレビューを御覧ください。
映画音楽における対位法の元祖は黒澤明の『野良犬』です。研究論文にもなっています→こちら。
それと『バリー・リンドン』が受賞したのは編曲賞で、この年作曲賞を受賞したのはジョン・ウイリアムズの『ジョーズ』です。これは正当な評価と言えるのでは?
投稿: 雅哉 | 2021年9月17日 (金) 08時38分
なるほどポニョにはそんなカラクリがあったのですね。それではやはりヴォークリンデでは駄目ですね。
表面的にしか見ていないのがバレバレですね。
ローゼンマンは編曲賞でしたか納得です。
ところで対位法で最近(?)気になったのはアニメ「メトロポリス」です。
高層ビル・ジグラット崩壊シーンで流れる「愛さずにいられない」は効果的ではあるのですが、歌を使うとどうしても歌詞に引っ張られてしまいます。
ロックがビル崩壊スイッチを入れた瞬間流れる「愛し続けるよ」という歌詞内容が、あれではロックの父に対する心情をうたっているように感じられてしまいます(でもそうなのかなぁ)
「愛さずにいられない」をどうしても使いたいのなら、私としてはビル崩壊は、それこそジョン・ウィリアムズ調のスリリングな管弦楽で、ケンイチがティマを掴んでいる手が離れた瞬間に「愛さずにいられない」が流れるほうが納得できるのですが…
これも安っぽい解釈かな。
ところボタン一つでビル崩壊してしまう危険な装置はなんで作ったのでしょうね。将来解体する手間を省くためだったのでしょうかね。
投稿: どぼこん | 2021年9月17日 (金) 21時26分
手塚治虫原作りんたろう監督の『メトロポリス』は2001年5月公開ですからもう20年前ですね。何と9・11同時多発テロの年です。脚本が『アキラ』の大友克洋で、彼は生前の手塚に「僕だって(あれくらいの絵を)書けるよ」と強烈に嫉妬されたわけですが、それも勲章。手塚漫画への愛をひしひしと感じました。
僕の大好きな作品で小学生の息子にも観せました。ジャズ・オーケストラを起用した本多俊之の音楽は素敵ですが、ただ全体として作品の世界観に合っていない。微妙な齟齬を感じることも否めません。そこはかとなく浮いているんです。『マルサの女』とか軽やかな伊丹十三の映画にはピッタリなのですが。これが相性というものなのでしょう。手塚漫画の本質はペシミズム、絶望、虚無にあると思うのです。それは『紙の砦』で描かれている強烈な戦争体験と無関係ではありません。
投稿: 雅哉 | 2021年9月18日 (土) 01時15分