アカデミー賞 2020 宴の後に
今年のアカデミー賞授賞式は韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が国際長編映画賞のみならず、作品賞・監督賞・オリジナル脚本賞の4部門に輝くという前代未聞の快挙で幕を閉じた。
そもそも韓国映画が国際長編映画賞(今年から名称が変更、昨年までは外国語映画賞)にノミネートされること自体が初めてであり、韓国人がアカデミー賞を受賞したことも今まで一度もない(日本人は「サヨナラ」でナンシー梅木が助演女優賞、「ラスト・エンペラー」で坂本龍一が作曲賞、「乱」でワダエミ、「ドラキュラ」で石岡瑛子が衣装デザイン賞、「ウィンストン・チャーチル」で辻一弘がメイクアップ賞、「千と千尋の神隠し」で宮崎駿が長編アニメーション映画賞などを受賞している)。ところがポン・ジュノ監督がいきなり4つもオスカー像を攫っていった。天才が歴史を動かす。
なお辻一弘は今年も「スキャンダル」で受賞したのだが、2019年3月に米国に帰化し、カズ・ヒロ(Kazu Hiro)に改名、日本国籍を捨てたので、最早日本人受賞者と呼べないかも知れない。
外国語映画がアカデミー作品賞を受賞するのは史上初(過去にフランス映画「アーティスト」が受賞したが、ハリウッドが舞台でダイアログも英語だった)。そもそも大半のアメリカ人は字幕で映画を観るという習慣がない(そこがフランス人との大きな違いだ)。ブルッキングス研究所メトロポリタン政策プログラムがまとめた報告書(2014年)によると、米国では生産年齢人口(16歳から64歳)の10人に1人が、英語力に問題を抱えているとされる(詳しくはこちら)。
アジア人が監督賞を受賞するのは台湾のアン・リー(「ブロークバック・マウンテン」「ライフ・オブ・パイ」)に続いて2人目となる。
僕の事前予想で的中したのは17部門。内訳は演技賞4部門すべて・脚本・脚色(原作あり)・視覚効果・メイクアップ・衣装デザイン・撮影・編集・短編ドキュメンタリー・国際長編映画・録音・作曲・短編アニメ・短編実写の各賞である。
今年出版された【なぜオスカーはおもしろいのか? 受賞予想で100倍楽しむ「アカデミー賞」 (星海社新書)】の著者、Ms.メラニーの的中が17部門なので同数 tie(昨年は僕が1部門上回った)。映画評論家・清水節 氏や「総合映画情報サイト」オスカーノユクエ氏も17部門当てた。
視覚効果賞のプレゼンターとして映画「キャッツ」に出演しているジェームズ・コーデンとレベル・ウィルソンが着ぐるみの猫姿で登場し自虐ネタを披露(動画はこちら!)。僕は大爆笑したのだが、視覚効果協会(The Visual Effects Society)は公式サイトで声明を発表し「アカデミーがVFXをジョークの的にしたことに心から失望した」と批判した。いやいや、協会も大人げないな。冗談ぐらい軽く受け流せよ!なお「キャッツ」は最低映画を決める祭典、ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)において、最低作品賞を含む最多9ノミネートを果たしている(コーデンとウィルソンも目出度く候補入り)。もう踏んだり蹴ったり。これこそ正に〈ねこふんじゃった〉だ。
また「アナと雪の女王」の主題歌〈イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに〉をオリジナル歌手イディナ・メンゼルを筆頭に、日本の松たか子ら10カ国のエルサがそれぞれの言語で歌うパフォーマンスは圧巻だった。
「パラサイト 半地下の家族」に登場するジャージャー・ラーメン(チャパゲティ+ノグリ=チャパグリ)で、ポン・ジュノの快進撃をお祝いした。唐辛子が効いて、か、辛い!でも美味い!!
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