音楽の天使が舞い降りた!!〜ミュージカル「ファントム」
梅田芸術劇場でミュージカル「ファントム」を観劇。
演出は城田優。ダブルキャストで12月7日(土)マチネと12月9日(月)ソワレの配役は以下の通り。
キャリエール(旧劇場支配人/エリックの父)役は岡田浩暉。
僕は同じガストン・ルルーの小説を原作とする、アンドルー・ロイド・ウェバー作曲「オペラ座の怪人」も、モーリー・イェストン作詞・作曲「ファントム」も大好きだ。ロイド・ウェバー版はロンドン(ウエストエンド)、ニューヨーク(ブロードウェイ)、ラスベガス(既に公演終了)でも観劇している。
- ラスベガス便りその1 《オペラ座の怪人》 2009.01.02
- オペラ座の怪人 2007.05.19
一方、モーリー・イェストン版「ファントム」は以下の公演を観ている。
- 2004年 宝塚宙組 和央ようか、花總まり、樹里咲穂(日本初演)
- 2006年 宝塚花組 春野寿美礼、桜乃彩音、彩吹真央
- 2011年 宝塚花組 蘭寿とむ、蘭乃はな、壮一帆
- 2018年 宝塚雪組 望海風斗、真彩希帆、彩風咲奈
(以上、潤色・演出は中村一徳) - 2008年 大沢たかお、徳永えり、伊藤ヨタロウ(演出:鈴木勝秀)
- 2014年 城田優、山下リオ、吉田栄作(演出:ダニエル・カトナー)
城田優 主演/ミュージカル「ファントム」 2014.10.11
正直言って、城田優の演出は凡庸でいただけない。ただ最悪だったのは鈴木勝秀で、下から2番めといったところ。一番感銘を受けたのは2014年のダニエル・カトナー版である。
まず衣装の色彩が気に入らない。赤系と青系がごちゃまぜで、カラフルと表現すれば聞こえはいいが、僕は「統一感に欠け、品がない」と思った。カオスだ。城田はアフタートークショーで「パリの雰囲気を出したかった」と説明していたが、君は実物のパリに行ったことがあるのか?あんなに色彩過多じゃないぞ。MGMミュージカル映画「巴里のアメリカ人」や「恋の手ほどき」(ヴィンセント・ミネリ監督)などでもっと勉強したほうがいい。「恋の手ほどき」(Gigi)の衣装デザイナーは「マイ・フィア・レディ」のセシル・ビートンだしね。
それからコメディ・リリーフのカルロッタや新支配人アラン・ショレへの演技指導がお粗末。大仰でわざとらしく、ちっとも笑えない。2回目の観劇で気が付いたのだが、城田が出演したミュージカル「ブロードウェイと銃弾」やWOWOWのバラエティ番組「グリーン&ブラックス」(井上芳雄主演)を演出している福田雄一の影響を受けているのではないだろうか?僕は福田の〈笑いのセンス〉が嫌いじゃないが、「ファントム」の世界観には合わないだろう。
なんだか「ファントム」がユニバーサル・スタジオが製作した安っぽいモンスター映画に貶められたような気がして、がっかりした。ただロン・チェイニーが主演したユニバーサル映画「オペラ座の怪人」(1925年)が出発点なわけだから、〈原点回帰〉ではあるのかも知れないが……。
ハロルド・プリンスが演出した格調高い舞台「オペラ座の怪人」が2004年にジョエル・シュマッカー監督で映画化され、薄っぺらいB級ホラーに成り下がった先例を思い出した。
それとファントム(エリック)のキャラクター造形が歴代の演出の中で、一番幼く感じられた。まるで駄々っ子みたい。
ただ役者としての城田は素晴らしかった。最後は号泣していて、あまりの入魂の演技でアフタートークショーでは放心状態で抜け殻のようになっていた。悪いこと言わないから、もう演出からは手を引いたほうがいいよ。
圧巻だったのは木下晴香の歌声である。透明感があってロイド・ウェバーが言う〈音楽の天使 Angel of Music〉とは彼女のことに違いないと思った。正に〈君は音楽 You Are Music〉だ!!断言しよう、ロイド・ウェバー版「オペラ座の怪人」を含め、僕が聴いた中で生涯最高のクリスティーヌだった。体が震えた。
- 生田絵梨花(乃木坂46)vs. 新星・木下晴香/ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」 2017.03.04
彼女は今年、ディズニー実写映画版「アラジン」日本語吹き替え版でジャスミン姫に抜擢され、年末のNHK紅白歌合戦でもその美声を披露する。さらに来年は舞台ミュージカル「アナスタシア」主演が控えており、もう待ち遠しくて仕方がない。
ダブルキャストの愛希れいかは宝塚歌劇団のトップ娘役時代から大好きなのだが、今回はどうしても圧倒的歌唱力の木下と比べられるので分が悪い。つくづく感じたのは「美人は15分見ていたら飽きる」ということ。ただし彼女は元々“ダンサー”なので、2幕冒頭の踊りは木下を上回っていた。だから来年の「フラッシュダンス」主演は彼女にぴったりなのではないだろうか?「ファントム」や「エリザベート」よりも本領を発揮出来るだろう。
加藤和樹は高音が苦しく、オクターブ下げて歌う場面もちらほら。アフタートークによると、主演・演出兼任で食事もろくに取らず準備に没頭し、どんどん痩せていく城田を見るに見かねて、ある日彼が弁当をこしらえて来てくれたのだそう。ぼそっと「よかったら、どうぞ」と。いいヤツだなぁ!
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