河村尚子と菊池洋子「2人の協奏曲」(ベートーヴェン&モーツァルト)
11月16日(土)兵庫県立芸術文化センターへ。
下野竜也/兵庫芸術文化センター管弦楽団で、
- モーツァルト:「イドメネオ」序曲
- モーツァルト:ピアノ協奏曲 第20番(独奏:菊池洋子)
- ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」序曲
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」(独奏:河村尚子)
- モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲 第10番より第1・3楽章(菊池・河村)
下野の指揮はサクサクと水捌けがよく、リズミカル。
河村の「皇帝」は力強く骨太のベートーヴェンで聴き応えがあり。
27曲あるモーツァルトのピアノ協奏曲のうち、短調は第20番ニ短調と第24番ハ短調の2曲しかない(5つあるヴァイオリン協奏曲は全て長調)。第20番はベートーヴェンの大のお気に入りで、カデンツァまで作曲している(モーツァルトのコンチェルトにベートーヴェンがカデンツァを書いたのはこの曲のみ)。そしてベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第19番の第1主題は、モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 第3楽章のロンド主題とそっくり同じである。
ベートーヴェンの「皇帝」で想い出すのは、ピーター・ウィアー監督の大傑作オーストラリア映画「ピクニック at ハンギング・ロック」だ。
女学校の生徒4人が岩山でピクニックをしているときに行方不明になる。近くに住み捜索隊に加わる青年マイクルは湖畔に浮かぶ白鳥を見ながら、いつか垣間見た美少女ミランダの面影をそこに重ねる。ここで「皇帝」第2楽章が流れる。
また後にピーター・ウィアーがハリウッドに進出し、ロビン・ウィリアムス主演で撮った「いまを生きる」でも、アメリカの全寮制学校の英語教師が、ロンドンに残してきた妻の写真を見つめながら彼女に手紙を書く場面で「皇帝」第2楽章が流れる。ウィアーにとってこの音楽は〈愛しい女性の面影〉と同義なのだ。
最後、2台のピアノのための協奏曲は中々これだけ達者なピアニスト2人が揃うのが滅多にないことなので、何とも贅沢な耳のご馳走だった。
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