河村尚子 ピアノ・リサイタル「ベートーヴェン紀行」最終回
11月4日(月)兵庫県立芸術文化センターへ。河村尚子のリサイタルを聴く。
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30・31・32番
河村は兵庫県西宮市出身。恩田陸原作の映画「蜜蜂と遠雷」で主人公・栄伝亜夜(松岡茉優)のピアノ演奏を担当し、話題をさらった。
今回使用されたピアノはベーゼンドルファー 280VC。
第30番はテンポを積極的に動かし、力強い意志が感じられる。
第31番の第3楽章は序奏を経て、切々と「嘆きの歌」が歌われる。これはJ.S.バッハの「ヨハネ受難曲」との関連が指摘されており、十字架上のイエスを見つめるマリアの哀しみを連想させる。やがて3声のフーガが開始され、教会のステンドグラスから光が差し込む情景が幻視される。どこからか鐘の音も聴こえてくるようだ。
第32番の第1楽章は峻厳な響き。河村は叩きつけるように音を奏でる。空恐ろしい音楽に打ちのめされた。第2楽章の変奏曲は穏やかで崇高。迷える魂に救済の手が差し伸べられ、彼は浄化されて昇天する。
河村による後期ピアノ・ソナタのアルバムがリリースされるのが、楽しみだ。
| 固定リンク | 0
「クラシックの悦楽」カテゴリの記事
- 武満徹「系図(ファミリー・トゥリー)-若い人たちのための音楽詩-」を初めて生で聴く。(佐渡裕/PACオケ)(2022.01.26)
- エマニュエル・パユ(フルート) & バンジャマン・アラール(チェンバロ) デュオ・リサイタル(2021.12.11)
- ミシェル・ブヴァール プロデュース「フランス・オルガン音楽の魅惑」Vol. 1(2021.12.10)
- 厳選 序曲・間奏曲・舞曲〜オペラから派生した管弦楽の名曲ベスト30はこれだ!(2021.09.17)
コメント