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2019年11月 7日 (木)

ショパン国際ピアノ・コンクールの覇者アヴデーエワに呆れ果てる〜BBC プロムス・イン・大阪

10月31日(木)ザ・シンフォニーホールへ。BBC Proms JAPAN 2019を聴く。

トーマス・ダウスゴー/BBCスコティッシュ交響楽団、ピアノ独奏:ユリアンナ・アヴデーエワで、

  • メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」
  • チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番
  • マーラー:交響曲 第5番

看板に偽りありーすっかり騙されたと後で気が付いたのだが、ロイヤル・アルバート・ホールで毎年開催されるBBCプロムスのラスト・ナイトで演奏するBBC交響楽団と、今回来日したオケとは全く別組織だったのだ!BBC交響楽団の本拠地はロンドンで、スコティッシュ響はスコットランドのグラスゴー。なんと英国放送協会(BBC)は5つのオーケストラを組織下に置いているらしい(他にBBCウェールズ・ナショナル交響楽団など)。青天の霹靂である。NHKなんか1つだぜ!?

オーケストラの実力はフィルハーモニア管弦楽団より断然劣っており、大阪フィルハーモニー交響楽団と同レベルかな。はっきり言って在京オケの方が今や遥かに上手い。

トーマス・ダウスゴーはデンマークの指揮者。2016年に新日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会に客演し、これの評判がすこぶる良かった。僕はSNSで彼の名を知り、その後ナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)で彼がスウェーデン室内管と録音した一連のベートーヴェンやシューベルトの交響曲を聴き、すっかり魅了された。

「フィンガルの洞窟」は先鋭的で小気味よい。テンポは速く、音楽がうねる。鳴門の渦潮のイメージが思い浮かんだ。クライマックスでは猛々しい推進力を発揮した。

ユリアンナ・アヴデーエワはショパン国際ピアノ・コンクールにおいてマルタ・アルゲリッチ以来、45年ぶりの女性ピアニストの優勝者として注目を浴びた。だからチャイコフスキーのコンチェルトには大いに期待し、アルゲリッチとイーヴォ・ポゴレリッチのCD(指揮はいずれもクラウディオ・アバド)をしっかり聴き込んで臨んだのだが……。

アヴデーエワはソフト・タッチで華(はな)がなく、音像がぼやけ、指がもたつく。オケの足を引っ張り、ミスが非常に多い(間違えた鍵盤を押さえる/音が抜ける)。繊細さに欠け、響きが濁る。「ちゃんと練習したのか??」と疑問符が頭の上をぐるぐる回る。第3楽章はリズムが完全に崩壊し、酔っぱらいか、医者に薬漬けにされた患者の演奏かと思った。はっきり言ってプロ失格。もう彼女は一生聴かない。

僕が思い出したのは1983年ウラディーミル・ホロヴィッツ最初の来日公演である。坂本龍一が途中で席を立ちテレビで罵倒、音楽評論家・吉田秀和が「ひびの入った骨董品」とこき下ろした。入場料はなんと5万円だった。 僕はNHK教育テレビの放送を視聴したが、ミス・タッチだらけのお粗末な代物だった。そう、今回のアヴデーエワはちょうど、あんな感じ。

マーラーは弦が対向配置、第1楽章は野菜をザクザクぶった切るように音楽が進み、展開部はスポーツカーで沿岸のハイウェイをかっ飛ばす疾走感があった。第2楽章は巨大ハリケーンが大木をなぎ倒す。第3楽章スケルツォはシェイクスピア「夏の夜の夢」に登場する妖精パックのスキップ。彼のいたずらが周囲をかき回す。次第にリズミカルで動的となり、血湧き肉躍る。第4楽章アダージェットはシルクのように滑らかで、音色が深い。憧憬に満ちている。第5楽章は生の賛歌。太陽の陽光が燦々と降り注ぎ、エネルギッシュでギラギラしている。僕はマーラーがボヘミア(現チェコ)のカリシュト村で過ごした、楽しかった幼少期の思い出を描いているのではないかと思っている(彼がウィーンに上京するのは15歳の時)。オーソン・ウェルズ監督の名作映画「市民ケーン」で言うところのバラの蕾(Rosebud)ね。

Rose

つまりこのシンフォニーは第4楽章が青春時代(妻アルマとのめぐり逢い)、第5楽章が幼少期といった具合に原点回帰する構成となったいるわけだ。ダウスゴーは万全の解釈で、そういった情景を浮き彫りにしていった。

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アンコールはプロムスのラスト・ナイトに倣って、エルガーの「威風堂々」第1番。トリオで歌われる「希望と栄光の国」の歌詞カードが予め配布され、聴衆も歌った。ちょっと今まで耳にしたことがないくらいの超高速で、筋肉質に引き締まり、見事な演奏だった。

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